説明

位相シフト回路、半導体集積回路及びジャイロセンサシステム

【課題】検波タイミング信号の精度を改善し、且つ、位相シフト回路の面積を低減する。
【解決手段】位相シフト回路14は、検波回路16の検波タイミングを制御するタイミング信号を生成し、コンパレータ140と、カウント信号生成部142と、位相差測定部144と、タイミング信号生成部146と、を備える。コンパレータは、キャリア成分の信号レベルに応じた2値信号を生成する。カウント信号生成部は、2値信号の第1エッジを0度とするときの第1エッジに対する位相角をカウントし、カウントした位相角が90度を超えたときに出力レベルが反転するカウント信号を生成する。位相差測定部は、2値信号とカウント信号との位相差を測定し、キャリア成分がゼロクロスするタイミングの情報を含む時間信号を生成する。タイミング信号生成部は、カウント信号及び時間信号に基づいて、検波回路16の検波タイミングを制御するタイミング信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、位相シフト回路、半導体集積回路及びジャイロセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
角速度信号を生成する半導体集積回路は、一般に、ジャイロセンサと、キャリア成分抽出回路と、位相シフト回路と、検波回路と、タイミング信号生成回路とを備える。ジャイロセンサは、物体の運動を検出し、運動に応じたジャイロ出力信号を生成する。ジャイロ出力信号は、角速度成分及びキャリア成分を含む。角速度成分は、物体の角速度に対応する。キャリア成分は、物体の共振周波数に対応する。キャリア成分抽出回路は、ジャイロ出力信号からキャリア成分を抽出する。位相シフト回路は、キャリア成分の位相を90度だけシフトし、検波回路の検波タイミングを制御する検波タイミング信号を生成する。検波回路は、検波タイミング信号に基づいて、ジャイロ出力信号からキャリア成分を除去し、角速度信号を生成する。
【0003】
しかしながら、従来の位相シフト回路は、抵抗素子及び容量素子等の受動素子を含むアナログ回路である。受動素子の製造ばらつきや位相シフト回路の動作環境(例えば温度)に起因して、検波タイミング信号の精度が低下する。また、受動素子は、一般に面積が大きいので、位相シフト回路の面積も大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−204038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、検波タイミング信号の精度を改善し、且つ、位相シフト回路の面積を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の位相シフト回路は、角速度成分及びキャリア成分を含むジャイロ出力信号の角速度成分に対応する角速度信号を生成する検波回路の検波タイミングを制御する検波タイミング信号を生成する。位相シフト回路は、コンパレータと、カウント信号生成部と、タイミング信号生成部と、を備える。コンパレータは、キャリア成分の信号レベルに応じて位相角0度及び180度のタイミングを示す2値信号を生成する。カウント信号生成部は、2値信号に基づく位相角0度のタイミングからカウントを開始し、位相角90度をカウントしたタイミングを示すカウント信号を生成する。タイミング信号生成部は、カウント信号による位相角90度のタイミングと2値信号による位相角180度のタイミングとの時間差に基づいて、検波回路の検波タイミングを制御する検波タイミング信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態のジャイロセンサシステム1のブロック図。
【図2】本実施形態の位相シフト回路14のブロック図。
【図3】本実施形態の位相シフト回路14の信号波形図。
【図4】本実施形態のカウント信号生成部142を実現する論理回路図。
【図5】本実施形態の検波回路16の信号波形図。
【図6】本実施形態のタイミング信号生成部146の第1例のブロック図。
【図7】本実施形態のタイミング信号生成部146の第2例のブロック図。
【図8】従来の検波回路の信号波形図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
本実施形態のジャイロセンサシステム1の構成について説明する。図1は、本実施形態のジャイロセンサシステム1のブロック図である。
【0010】
図1に示すように、ジャイロセンサシステム1は、半導体集積回路10と、ジャイロセンサ20とを備える。
【0011】
ジャイロセンサ20は、物体の運動(例えば振動)を検出し、運動に応じたジャイロ出力信号90を生成する。ジャイロ出力信号90は、角速度成分91及びキャリア成分92を含む。角速度成分91は、物体の角速度に対応する。キャリア成分92は、物体の共振周波数に対応する。
【0012】
半導体集積回路10は、ジャイロ出力信号90から角速度信号96を生成する。角速度信号96は、物体の角速度を示す信号である。半導体集積回路10は、キャリア成分抽出回路12と、位相シフト回路14と、検波回路16とを備える。
【0013】
キャリア成分抽出回路12は、ジャイロ出力信号90からキャリア成分92を抽出する。
【0014】
位相シフト回路14は、キャリア成分92の位相をキャリア周波数において90度だけシフトし、検波回路16の検波タイミングを制御する検波タイミング信号94を生成する。
【0015】
本実施形態の位相シフト回路14の構成について説明する。図2は、本実施形態の位相シフト回路14のブロック図である。図3は、本実施形態の位相シフト回路14の信号波形図である。
【0016】
図2に示すように、位相シフト回路14は、コンパレータ140と、カウント信号生成部142と、位相差測定部144と、タイミング信号生成部146とを備える。
【0017】
コンパレータ140は、正弦波形を有するキャリア成分92の信号レベルに応じた矩形波形を有する2値信号80を生成する。例えば、コンパレータ140は、キャリア成分92の信号レベルが負から正へ変わるときにハイレベルの2値信号80を出力し、キャリア成分92の信号レベルが正から負へ変わるときにロウレベルの2値信号80を出力する(図3を参照)。即ち、2値信号80では、位相角が0度のときに立ち上がりエッジ80Hが現れ、位相角が180度のときに立ち下がりエッジ80Lが現れる。換言すると、コンパレータ140は、位相角0度及び180度のタイミングを示す2値信号80を生成する。
【0018】
カウント信号生成部142は、2値信号80の第1エッジ(例えば、立ち上がりエッジ80H)を0度とするときの第1エッジに対する位相角をカウントし、カウントした位相角(以下、「カウント値」という)が90度を超えたときに出力レベルが反転するカウント信号82を生成する。カウント信号82の立ち上がりエッジ82Hは、キャリア成分92の立ち上がりがゼロクロスするタイミング92Hに現れる。即ち、カウント信号82は、キャリア成分92の立ち上がりがゼロクロスするタイミング92Hの情報を含む。例えば、カウント信号生成部142は、所定のステップで2値信号80の立ち上がりエッジ82Hに対する位相角をカウントし、カウント値が90度を超えたときに、2値信号80の信号レベルをハイレベルからロウレベルに変更する。即ち、カウント信号82では、位相角が0度のときに立ち上がりエッジ82Hが現れ、位相角が90度を超えたときに立ち下がりエッジ82Lが現れるように、カウント値が90°を超えたときに信号レベルを反転させる。換言すると、カウント信号生成部142は、2値信号80に基づく位相角0度のタイミングからカウントを開始し、位相角90度をカウントしたタイミングを示すカウント信号82を出力する。立ち下がりエッジ82Lの位相角は、90度より大きい(図3を参照)。カウント信号生成部142のカウントする時間分解能のステップ間隔が短いほど、立ち下がりエッジ82Lの位相角と90度との差が小さくなる。
【0019】
カウント信号生成部142は、アナログ回路及び論理回路の何れでも良い。好ましくは、カウント信号生成部142は論理回路である。図4は、本実施形態のカウント信号生成部142を実現する論理回路図である。図4に示すように、カウント信号生成部142は、発振器1421と、ロジックカウンタ1422とを備える。発振器1421は、ロジックカウンタ1422のステップを制御するステップ制御信号70を生成する。発振器1421の発振周波数は、キャリア成分92の周波数より十分に高く、且つ、キャリア成分92の周波数と非同期である。ロジックカウンタ1422は、ステップ制御信号70に応じたステップで2値信号80の立ち上がりエッジ82Hに対する位相角をカウントし、カウント信号82を生成する。発振器1421の発振周波数が高いほど、カウント信号生成部142のステップ間隔が短くなり、その結果、立ち下がりエッジ82Lの位相角と90度との差が小さくなる。
【0020】
位相差測定部144は、カウント信号82の出力レベルが反転する基準エッジ(例えば、立ち下がりエッジ82L)と2値信号80の180度エッジ(第2エッジ)との時間間隔Tを測定し、測定した時間間隔Tを示す時間信号84を生成する。例えば、位相差測定部144は、2値信号80の立ち下がりエッジ80Lとカウント信号82の立ち下がりエッジ82Lとの時間間隔Tを測定し、測定した時間間隔Tを示す時間信号84を生成する(図3を参照)。時間信号84の立ち下がりエッジ84Lは、キャリア成分92の立ち下りがゼロクロスするタイミング92Lに現れる。即ち、時間信号84は、キャリア成分92の立ち下りがゼロクロスするタイミング92Lの情報を含む。カウント信号生成部142のステップ間隔が短いほど、キャリア周波数の1/4周期の時間に近づく。位相差測定部144は、アナログ回路である。
【0021】
タイミング信号生成部146は、カウント信号82の基準エッジから時間信号84が示す時間間隔Tの2倍の位相角の分だけ時間が経過したときに信号レベルが反転するような検波タイミング信号94を生成する。即ち、タイミング信号生成部146は、カウント信号82による位相角90度のタイミングと2値信号80による位相角180度のタイミングとの時間差に基づいて、検波タイミング信号94を生成する。具体的には、タイミング信号生成部146は、カウント信号82による位相角90度のタイミングから上記時間差の2倍の時間が経過するまでのタイミングを示す検波タイミング信号94を生成する。例えば、タイミング信号生成部146は、カウント信号82の立ち下がりエッジ82Lに同期してハイレベルの信号を出力し、時間信号84に対応する時間間隔Tの2倍の間隔が経過したときにロウレベルの信号を出力する。即ち、検波タイミング信号94では、カウント信号82の立ち下がりエッジ82Lの位相角で立ち上がりエッジ94Hが現れ、立ち上がりエッジ94Hから時間間隔Tの分だけずれた位相角で立ち下がりエッジ94Lが現れる。
【0022】
検波回路16は、検波タイミング信号94に基づいて、ジャイロ出力信号90からキャリア成分92を除去し、角速度成分91に対応する角速度信号96を生成する。図5は、本実施形態の検波回路16の信号波形図である。図5に示すように、検波タイミング信号94がハイレベルにある区間94Aの長さは、時間間隔Tの2倍(即ち2T)である。一方、区間94Aに対応するキャリア成分92は、正の第1成分90A及び負の第2成分90Bである。ジャイロ信号90に対して検波タイミング信号94がハイレベルにある区間の時を抽出することで、区間94Aでは、第1成分90Aが第2成分90Bと完全に相殺される。その結果、角速度信号96では、区間94Aに対応する領域が利用可能レンジ96Aとなり、利用可能レンジ96Aに挟まれた領域がロスレンジ96Bとなる。
【0023】
本実施形態のタイミング信号生成部146の第1例について説明する。図6は、本実施形態のタイミング信号生成部146の第1例のブロック図である。
【0024】
図6に示すように、タイミング信号生成部146は、制御回路1461と、電荷電圧変換回路1462と、電圧比較器1463とを備える。
【0025】
制御回路1461は、カウント信号82及び時間信号84に基づいて、電荷電圧変換回路1462のチャージ及びディスチャージを制御する充放電制御信号60を生成する。
【0026】
例えば、制御回路1461は、カウント信号82の立ち下がりエッジ82Lのタイミングで、電荷電圧変換回路1462に電荷をチャージする充電制御信号を生成する。また、制御回路1461は、時間信号84の立ち下がりエッジ84Lのタイミングで、電荷電圧変換回路1462にチャージされた電荷をディスチャージする放電制御信号を生成する。また、制御回路1461は、検波タイミング信号94の立ち下がりエッジ94Lの後のタイミングで、電荷電圧変換回路1462の状態をリセットするリセット制御信号を生成する。制御回路1461は、リセット制御信号の生成、チャージ制御信号の生成及びディスチャージ制御信号の生成を順番に繰り返す。
【0027】
電荷電圧変換回路1462は、コンデンサを有する。電荷電圧変換回路1462は、充放電制御信号60に基づいて、電荷のチャージ、電荷のディスチャージ、又は状態のリセットを行い、状態電圧信号62又は初期電圧信号64を生成する。
【0028】
例えば、電荷電圧変換回路1462は、充電制御信号を受け取ると、所定時間だけコンデンサに充電電流を流す。これにより、充電電流が流れた時間に比例した分の電荷がコンデンサにチャージされる。この場合、チャージが完了した後の電荷電圧変換回路1462の電圧を示す状態電圧信号62が生成される。
【0029】
また、電荷電圧変換回路1462は、放電制御信号を受け取ると、所定時間だけコンデンサに、充電電流とは逆向きの放電電流を流す。コンデンサには、放電電流が流れた時間に比例した分の電荷がコンデンサからディスチャージされる。この場合、チャージが完了した後の電荷電圧変換回路1462の電圧を示す状態電圧信号62が生成される。
【0030】
また、電荷電圧変換回路1462は、リセット制御信号を受け取ると、コンデンサとグラウンド端子とを接続する。これにより、コンデンサにチャージされた電荷が消失する。この場合、リセットが完了した後の電荷電圧変換回路1462の電圧を示す初期電圧信号64が生成される。
【0031】
即ち、制御回路1461は、電荷電圧変換回路1462に対して、カウント信号82による位相角90度のタイミングから所定のペースで電荷の蓄積を開始させ、2値信号80による位相角180度のタイミングで電荷の蓄積に代わって所定のペースで電荷の放電を開始させる。
【0032】
電圧比較器1463は、初期電圧信号64及び状態電圧信号62の信号レベルを比較し、信号レベルの差に応じた検波タイミング信号94を生成する。即ち、電圧比較器1463は、電荷電圧変換回路1462の電圧と電荷の蓄積を開始する前の電荷電圧変換回路1462の電圧との比較結果に基づいて検波タイミング信号94を生成する。このとき、電圧比較器1463は、信号レベルの符号(即ち、初期電圧信号64及び状態電圧信号62の大小関係)が逆転したときに極性が変化するように、検波タイミング信号94を生成する。例えば、電圧比較器1463は、状態電圧信号62が初期電圧信号64以下の場合にはロウレベルの検波タイミング信号94を生成し、状態電圧信号62が初期電圧信号64より大きい場合にはハイレベルの検波タイミング信号94を生成する。これにより、図3の検波タイミング信号94が生成される。
【0033】
本実施形態のタイミング信号生成部146の第2例について説明する。図7は、本実施形態のタイミング信号生成部146の第2例のブロック図である。
【0034】
図7に示すように、タイミング信号生成部146は、制御回路1461と、電荷電圧変換回路1462と、電圧比較器1463と、電圧保持回路1464とを備える。
【0035】
制御回路1461は、カウント信号82及び時間信号84に基づいて、電荷電圧変換回路1462のチャージ及びディスチャージを制御する充放電制御信号60と、電圧保持回路1464の電圧の保持を制御する保持制御信号61とを生成する。
【0036】
例えば、制御回路1461は、カウント信号82の立ち下がりエッジ82Lのタイミングで、電荷をチャージする充電制御信号を生成する。また、制御回路1461は、時間信号84の立ち下がりエッジ84Lのタイミングで、保持制御信号61及びリセット制御信号を生成する。また、制御回路1461は、時間信号84の立ち下がりエッジ84Lと略同じタイミングで、再び電荷をチャージする充電制御信号を生成する。また、制御回路1461は、検波タイミング信号94の立ち下がりエッジ94Lの後のタイミングで、再びリセット制御信号を生成する。制御回路1461は、立ち下がりエッジ82Lのタイミングでの充電制御信号の生成、時間信号84の立ち下がりエッジ84Lのタイミングでの保持制御信号61、リセット制御信号、及び充電制御信号の生成、並びに検波タイミング信号94の立ち下がりエッジ94Lの後のタイミングでのリセット制御信号の生成を順番に繰り返す。
【0037】
電荷電圧変換回路1462は、コンデンサを有する。電荷電圧変換回路1462は、充放電制御信号60に基づいて、電荷のチャージ、電荷のディスチャージ、又は状態のリセットを行い、状態電圧信号62を生成する。
【0038】
例えば、電荷電圧変換回路1462は、充電制御信号を受け取ると、所定時間だけコンデンサに充電電流を流す。これにより、充電電流が流れた時間に比例した分の電荷がコンデンサにチャージされる。この場合、チャージが完了した後のコンデンサの両端の電圧を示す状態電圧信号62が生成される。
【0039】
電圧保持回路1464は、保持制御信号61を受け取ると、状態電圧信号62をホールドし、ホールドした状態電圧信号(以下、「ホールド信号」という)63を出力する。即ち、電圧保持回路1464は、電荷電圧変換回路1462の電圧を保持する。なお、電圧保持回路1464は、保持制御信号61が入力されていないときは、状態電圧信号62をホールドせずに出力する。
【0040】
また、電荷電圧変換回路1462は、保持制御信号61と共にリセット制御信号を受け取ると、状態電圧信号62をホールドした後に、コンデンサとグラウンド端子とを接続する。これにより、コンデンサにチャージされた電荷が消失する。
【0041】
その後、再び、電荷電圧変換回路1462は、充電制御信号を受け取ると、コンデンサに充電電流を流す。これにより、充電電流が流れた時間に比例した分の電荷がコンデンサにチャージされ、コンデンサの両端の電圧を示す状態電圧信号62が生成される。
【0042】
即ち、制御回路1461は、電荷電圧変換回路1462に対して、カウント信号82による位相角90度のタイミングから所定のペースで電荷の蓄積を開始させ、2値信号80による位相角180度のタイミングで電圧保持回路1464に電荷電圧変換回路1462の電圧を保持させると共に電荷電圧変換回路1462の電荷を電荷の蓄積開始前の状態まで一気に放電させ、所定のペースで電荷の蓄積を再び開始させる。
【0043】
電圧比較器1463は、状態電圧信号62及びホールド信号63の信号レベルを比較し、信号レベルの差に応じた検波タイミング信号94を生成する。即ち、電圧比較器1463は、電荷の蓄積が再び開始された電荷電圧変換回路1462の電圧と電圧保持回路1464に保持された電圧との比較結果に基づいて検波タイミング信号94を生成する。このとき、電圧比較器1463は、信号レベルの符号(即ち、状態電圧信号62及びホールド信号63の大小関係)が逆転又は一致したときに極性が変化する(立ち下がりエッジ94Lとなる)ように、検波タイミング信号94を生成する。なお、この場合の立ち上がりエッジ94Hは、最初の電荷のチャージが開始されるカウント信号82の立ち下がりエッジ82Lのタイミングとなる。
【0044】
本実施形態の比較例について説明する。図8は、従来の検波回路の信号波形図である。
【0045】
図8に示すように、従来の検波回路では、素子のばらつきや温度条件によって、検波タイミングが90度、270度からの同じ方向にずれ、キャリア成分の正領域及び負領域が互いに完全に相殺できず、残留成分が残る。その結果、キャリア成分の残留成分によるオフセット成分が発生し、ダイナミックレンジが狭くなる。さらに角速度信号のロスレンジが増え、検出感度が落ちる。その結果、角速度信号の利用可能ダイナミックレンジが狭くなる。
【0046】
これに対して、本実施形態では、図5に示すように、区間94Aでは、第1成分90Aが第2成分90Bとほぼ完全に相殺される。その結果、キャリア成分の残留成分によるオフセット成分をほぼ0にすることができる。さらに90度の検波タイミングの時間精度を上げることができるため、角速度のロスレンジ96Bを小さくなり検出感度が向上する。この結果、角速度信号の利用可能ダイナミックレンジを広くすることができる。さらに位相シフト回路14の面積を低減することができる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化される。また、上述した実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明が形成可能である。例えば、上述した実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ジャイロセンサシステム
10 半導体集積回路
12 キャリア成分抽出回路
14 位相シフト回路
140 コンパレータ
142 カウント信号生成部
1421 発振器
1422 ロジックカウンタ
144 位相差測定部
146 タイミング信号生成部
1461 制御回路
1462 電荷電圧変換回路
1463 電圧比較器
1464 電圧保持回路
16 検波回路
20 ジャイロセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角速度成分及びキャリア成分を含むジャイロ出力信号の前記角速度成分に対応する角速度信号を生成する検波回路の検波タイミングを制御する検波タイミング信号を生成する位相シフト回路であって、
前記キャリア成分の信号レベルに応じて位相角0度及び180度のタイミングを示す2値信号を生成するコンパレータと、
前記2値信号に基づく位相角0度のタイミングからカウントを開始し、位相角90度をカウントしたタイミングを示すカウント信号を生成するカウント信号生成部と、
前記カウント信号による位相角90度のタイミングと前記2値信号による位相角180度のタイミングとの時間差に基づいて、前記検波回路の検波タイミングを制御する検波タイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、を備える位相シフト回路。
【請求項2】
前記タイミング信号生成部は、前記カウント信号による位相角90度のタイミングから前記時間差の2倍の時間が経過するまでのタイミングを示す前記検波タイミング信号を生成する、請求項1に記載の位相シフト回路。
【請求項3】
前記タイミング信号生成部は、
電荷電圧変換回路と、
前記電荷電圧変換回路に対して、前記カウント信号による位相角90度のタイミングから所定のペースで電荷の蓄積を開始させ、前記2値信号による位相角180度のタイミングで前記電荷の蓄積に代わって前記所定のペースで電荷の放電を開始させる制御回路と、
前記電荷電圧変換回路の電圧と前記電荷の蓄積を開始する前の前記電荷電圧変換回路の電圧との比較結果に基づいて前記検波タイミング信号を生成するための電圧比較器と、を備える請求項1又は2に記載の位相シフト回路。
【請求項4】
前記タイミング信号生成部は、
電荷電圧変換回路と、
前記電荷電圧変換回路の電圧を保持するための電圧保持回路と、
前記電荷電圧変換回路に対して、前記カウント信号による位相角90度のタイミングから所定のペースで電荷の蓄積を開始させ、前記2値信号による位相角180度のタイミングで前記電圧保持回路に前記電荷電圧変換回路の電圧を保持させると共に前記電荷電圧変換回路の電荷を前記電荷の蓄積開始前の状態まで一気に放電させ、前記所定のペースで電荷の蓄積を再び開始させる制御回路と、
電荷の蓄積が再び開始された前記電荷電圧変換回路の電圧と前記電圧保持回路に保持された電圧との比較結果に基づいて前記検波タイミング信号を生成するための電圧比較器と、を備える請求項1又は2に記載の位相シフト回路。
【請求項5】
角速度成分及びキャリア成分を含むジャイロ出力信号の前記角速度成分に対応する角速度信号を生成する半導体集積回路であって、
前記ジャイロ出力信号から前記キャリア成分を抽出するキャリア成分抽出回路と、
前記キャリア成分の信号レベルに応じて位相角0度及び180度のタイミングを示す2値信号を生成するコンパレータと、
前記2値信号に基づく位相角0度のタイミングからカウントを開始し、位相角90度をカウントしたタイミングを示すカウント信号を生成するカウント信号生成部と、
前記カウント信号による位相角90度のタイミングと前記2値信号による位相角180度のタイミングとの時間差に基づいて、前記検波回路の検波タイミングを制御する検波タイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記検波タイミング信号に基づいて、前記ジャイロ出力信号から前記キャリア成分を除去し、前記角速度成分に対応する角速度信号を生成する検波回路と、を備える半導体集積回路。
【請求項6】
角速度成分及びキャリア成分を含むジャイロ出力信号を生成するジャイロセンサと、
前記ジャイロ出力信号から前記キャリア成分を抽出するキャリア成分抽出回路と、
前記キャリア成分の信号レベルに応じて位相角0度及び180度のタイミングを示す2値信号を生成するコンパレータと、
前記2値信号に基づく位相角0度のタイミングからカウントを開始し、位相角90度をカウントしたタイミングを示すカウント信号を生成するカウント信号生成部と、
前記カウント信号による位相角90度のタイミングと前記2値信号による位相角180度のタイミングとの時間差に基づいて、前記検波回路の検波タイミングを制御する検波タイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記検波タイミング信号に基づいて、前記ジャイロ出力信号から前記キャリア成分を除去し、前記角速度成分に対応する角速度信号を生成する検波回路と、を備えるジャイロセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202873(P2012−202873A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68724(P2011−68724)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】