説明

位相変調素子

【課題】電極間における抵抗が低くすることができ、かつ、光の伝播損失を低くすることができる位相変調素子を提供する。
【解決手段】半導体材料により形成される光導波路と、前記光導波路の両側側面に各々接続される半導体材料により形成される接続構造部と、前記接続構造部の各々に接続される電極部と、を有し、前記接続構造部は、前記電極部との接続部分に不純物元素がドープされた不純物領域を有しており、前記不純物領域は、前記光導波路と前記接続構造部との接続部分における前記光導波路に対し垂直方向の延長線上とはならない部分に形成されていることを特徴とする位相変調素子により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相変調素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における情報通信の増大に伴い、光通信及び光伝送における超高速化と大容量化の検討がなされている。このような光通信においては、様々な光変調器や光スイッチが用いられている。
【0003】
例えば、図1及び図2に示されるような構造の光の位相を変調することのできる位相変調素子(屈折率変調光素子)がある。この位相変調素子は、Si(シリコン)からなる光導波路210の側面の両側に、櫛形構造部220及び230を有しており、櫛形構造部220及び230において光導波路210と接続されている側とは反対側に、電極240及び250が設けられている。
【0004】
この位相変調素子では、櫛形構造部220における電極240との接続部分には、シリコンに対しp型となる不純物元素が高濃度にドープされており、p型領域221が形成されている。また、櫛形構造部230において電極250との接続部分には、シリコンに対しn型となる不純物元素が高濃度にドープされており、n型領域231が形成されている。
【0005】
位相変調素子は、電極240及び250間に電圧を印加し、櫛形構造部220及び230を介し、光導波路210内にキャリアを注入することにより、光導波路210における屈折率を変化させ、光導波路210内を伝播する光の位相を変調するものである。
【0006】
このような位相変調素子においては、電極240及び250間における抵抗は、櫛形構造部220及び230における幅と長さに依存する。従って、櫛形構造部220及び230の幅を広くし、長さを短くすれば、電極240及び250間における電気抵抗を低くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−64838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図1及び図2に示される位相変調素子では、光導波路210内を伝播する光は、櫛形構造部220及び230に漏れ出した光が、櫛形構造部220及び230におけるp型領域221及びn型領域231において吸収されるため、光の伝播損失が生じる。
【0009】
従って、このような位相変調素子において、電極240及び250間における電気抵抗を下げるために、櫛形構造部220及び230の幅を広く、短くした場合、光導波路210内を伝播する光の伝播損失が多くなり、光導波路としての特性が低下してしまう。また、光導波路210内を伝播する光の伝播損失を抑えるため、櫛形構造部220及び230の幅を狭く、長くした場合、電極240及び250間における電気抵抗が高くなり、位相変調における変化が小さくなり、消費電力等も多くなってしまう。
【0010】
このため、電極間における抵抗が低く、かつ、光の伝播損失が低い構造の位相変調素子が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施の形態の一観点によれば、半導体材料により形成される光導波路と、前記光導波路の両側側面に各々接続され、半導体材料により形成される接続構造部と、前記接続構造部の各々に接続される電極部と、を有し、前記接続構造部は、前記電極部との接続部分に不純物元素がドープされた不純物領域を有しており、前記不純物領域は、前記光導波路と前記接続構造部との接続部分における前記光導波路に対し垂直方向の延長線上とはならない部分に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
開示の位相変調素子によれば、電極間における抵抗が低くすることができ、かつ、光の伝播損失を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の位相変調素子の斜視図
【図2】従来の位相変調素子の構造図
【図3】従来の位相変調素子の説明図
【図4】第1の実施の形態における位相変調素子の斜視図
【図5】第1の実施の形態における位相変調素子の構造図
【図6】第1の実施の形態における位相変調素子の説明図
【図7】位相変調素子における入射波長に対する透過光強度の特性図
【図8】第1の実施の形態における位相変調素子の製造方法の工程図(1)
【図9】第1の実施の形態における位相変調素子の製造方法の工程図(2)
【図10】第1の実施の形態における位相変調素子の製造方法の工程図(3)
【図11】第2の実施の形態における位相変調素子の斜視図
【図12】第2の実施の形態における位相変調素子の構造図
【図13】第3の実施の形態における位相変調素子の斜視図
【図14】第3の実施の形態における位相変調素子の構造図
【図15】第4の実施の形態における位相変調素子の斜視図
【図16】第4の実施の形態における位相変調素子の構造図
【図17】第5の実施の形態における位相変調素子の構造図
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0015】
〔第1の実施の形態〕
(位相変調素子)
図1及び図2に示される位相変調素子では、光導波路210と電極240及び250の間に設けられている櫛形構造部220及び230は直線的に形成されている。従って、図3に示されるように、光導波路210より略垂直方向に延びる櫛形構造部220及び230に漏れ出した光は、直線的に形成された櫛形構造部220及び230内を伝播し、不純物元素が高濃度にドープされたp型領域221及びn型領域231まで到達する。このようにp型領域221及びn型領域231にまで到達した光は、p型領域221及びn型領域231において吸収されるため、光の伝播損失が生じる。尚、図3では、この位相変調素子において光導波路210に光を伝播させた場合における光の強度分布を一点鎖線で示す。
【0016】
次に、本実施の形態における屈折率変調素子について説明する。図4及び図5に示されるように、本実施の形態における屈折率変調素子は、光導波路10と、光導波路10の両側に接続された接続構造部20及び30と、接続構造部20に接続された電極部40と、接続構造部30に接続された電極部50を有している。即ち、光導波路10と電極部40及び50との間に、接続構造部20及び30が形成されている構造のものである。光導波路10、接続構造部20及び30は、Si(シリコン)により形成されており、また、電極部40及び50は、光導波路10にキャリアを注入するためのものであり、高濃度にドープしたSi層上に、金属材料、例えば、Au(金)、Al(アルミニウム)等により形成されている。
【0017】
接続構造部20は、第1の接続領域21、第2の接続領域22及びp型領域23を有している。第1の接続領域21は、光導波路10に接続されており、光導波路10に対し略垂直に延びた形状で複数形成されている。第2の接続領域22は、第1の接続領域21と接続されており、第1の接続領域21に沿う方向に対し略垂直に延びた形状で形成されている。p型領域23は、シリコンに対しp型となる不純物が高濃度にドープされた領域であり、第2の接続領域22と電極部40との間に形成されており、第2の接続領域22に沿う方向に対し略垂直に延びた形状で複数形成されている。
【0018】
接続構造部30は、第1の接続領域31、第2の接続領域32及びn型領域33を有している。第1の接続領域31は、光導波路10に接続されており、光導波路10に対し略垂直に延びた形状で複数形成されている。第2の接続領域32は、第1の接続領域31と接続されており、第1の接続領域31に沿う方向に対し略垂直に延びた形状で形成されている。n型領域33は、シリコンに対しn型となる不純物が高濃度にドープされた領域であり、第2の接続領域32と電極部50との間に形成されており、第2の接続領域32に沿う方向に対し略垂直に延びた形状で複数形成されている。尚、p型領域23及びn型領域33を第3の接続領域という場合がある。
【0019】
本実施の形態における位相変調素子では、p型領域23及びn型領域33は、第1の接続領域21及び31と略平行となるように形成されている。また、第1の接続領域21が延びる方向の延長線上には、p型領域23が存在しないように形成されており、同様に、第1の接続領域31が延びる方向の延長線上には、n型領域33が存在しないように形成されている。即ち、第1の接続領域21及び31の延びる方向と、p型領域23及びn型領域33の延びる方向とは重ならないように形成されている。言い換えるならば、光導波路10と第1の接続領域21との接続部分において、光導波路10に対し垂直方向には、p型領域23が存在しない形状で形成されている。同様に、第1の接続領域31との接続部分において、光導波路10に対し垂直方向には、n型領域33が存在しない形状で形成されている。
【0020】
図6に示されるように、本実施の形態における位相変調素子は、光導波路10内を伝播する光は、光導波路10に対し略垂直方向に接続された第1の接続領域21及び31から第2の接続領域22及び32までは漏れ出す。しかしながら、p型領域23及びn型領域33までは殆ど漏れ出すことはないため、p型領域23及びn型領域33において吸収される光を減らすことができる。即ち、光導波路10より第1の接続領域21及び31まで漏れ出した光は、第2の接続領域22及び32を取り囲む低屈折率材料との境界面で光の染み出しが遮断され、光導波路10、第1の接続領域21及び31内に光が閉じ込められる。よって、不純物がドープされている領域に光が染み出すことはなくなるため、p型領域23及びn型領域33における光の吸収を減らすことができ、光導波路10を伝播する光の伝播損失を低減させることができる。尚、図6において、一点鎖線は、本実施の形態における位相変調素子において、光導波路10に光を伝播させた場合における光の強度分布を示す。
【0021】
更に、本実施の形態における位相変調素子では、第1の接続領域21及び31、第2の接続領域22及び32、p型領域23及びn型領域33を太く短く形成することができるため、電極部40及び50間における低抵抗化が可能となる。
【0022】
以上より、本実施の形態における位相変調素子では、光導波路10を伝播する光の伝播損失を低減することができ、更には、電極部40及び50間における抵抗を低くすることができる。よって、光の伝播損失が低く、消費電力の低い位相変調素子を得ることができる。
【0023】
尚、本実施の形態における位相変調素子は、例えば、入射する光の波長が1.55μmに対応しているものであり、光導波路10は、幅が約500nm、高さが約250nmで形成されている。また、接続構造部20及び30における第1の接続領域21及び31は、光導波路10の側面の両側に、光導波路10に対し略垂直方向に延びた形状で、約290nm周期で複数形成されている。第1の接続領域21及び31における幅は約90nm、長さは約300nmとなるように形成されており、第2の接続領域22及び32は、第1の接続領域21及び31の光導波路10と接続されており、光導波路10と略平行となるように形成されている。
【0024】
第2の接続領域22及び32は、第1の接続領域21及び31において光導波路10と接続されている側とは反対側が各々接続されるように形成されている。p型領域23は、第2の接続領域22に対し略垂直に延びた形状で形成されており、n型領域33は、第2の接続領域32に対し略垂直に延びた形状で形成されている。即ち、p型領域23及びn型領域33は、第1の接続領域21及び22と略平行となるように形成される。
【0025】
また、p型領域23は、幅が約90nm、第2の接続領域22と電極部40との間における長さが、約100nmとなるように形成されており、第1の接続領域21の延長上には重ならないように形成されている。即ち、第1の接続領域21の延長線上にはp型領域23が存在していない形状となるように形成されている。同様に、n型領域33は、幅が約90nm、第2の接続領域32と電極部50との間における長さが、約100nmとなるように形成されており、第1の接続領域31の延長上には重ならないように形成されている。即ち、第1の接続領域31の延長線上にはn型領域33が存在していない形状となるように形成されている。更に、より一層伝播損失を低減させるため、隣接する第1の接続領域21に沿った2つの延長線の略中間の位置にp型領域23が形成され、隣接する第1の接続領域31に沿った2つの延長線の略中間の位置にn型領域33が形成されていることが好ましい。
【0026】
尚、本実施の形態における位相変調素子は、第1の接続領域21及び31に沿った方向の延長上に、p型領域23及びn型領域33が形成されていない構造であればよい。即ち、第1の接続領域21及び31に沿った方向の延長上に、p型領域23及びn型領域33が設けられていると、光導波路10より漏れ出した光が、p型領域23及びn型領域33まで伝播し吸収されるため光の伝播損失が大きくなる。従って、第1の接続領域21及び31に沿った方向の延長上に、p型領域23及びn型領域33が形成されていない構造であれば、このような光の伝播損失を低減させることができる。
【0027】
また、第1の接続領域21及び31における幅及び長さは、p型領域23及びn型領域33における幅及び長さと異なっていてもよい。抵抗を低くするためには、p型領域23及びn型領域33における幅は、第1の接続領域21及び31における幅よりも広く形成されていることが好ましい。また、本実施の形態における説明に用いた図面では、第1の接続領域21及び31、p型領域23及びn型領域33は周期的な構造のものが記載されているが、第1の接続領域21及び31、p型領域23及びn型領域33は周期的に形成されている必要はない。更に、p型領域23は、p型領域23が延びる方向において、第2の接続領域22の一部に入り込むように形成され、n型領域33は、n型領域33が延びる方向において、第2の接続領域32の一部に入り込むように形成されていることが好ましい。このように形成することにより、より一層抵抗を低くすることができるからである。
【0028】
p型領域23は、シリコンに対しp型となる不純物元素が、1×1017〜1×1020cm−3の範囲内でドープされており、n型領域33は、シリコンに対しn型となる不純物元素が、1×1017〜1×1020cm−3の範囲内でドープされている。本実施の形態における位相変調素子では、電極部40及び50間に、約1Vの電圧を印加することにより、光導波路10内を伝播する光の位相を変調することができる。
【0029】
(光の伝播特性)
次に、本実施の形態における位相変調素子の光の伝播特性について説明する。図7は、計算により得られた結果を示すものであり、従来構造の位相変調素子と、本実施の形態における位相変調素子とにおいて、入射波長と透過光強度の関係を示すものである。従来の構造の位相変調素子とは、図2に示す構造の位相変調素子において、光導波路210の全長が約60nmであって、幅が約90nmの櫛形構造部220及び230が光導波路210の側面に約295nmの周期で接続されているものである。また、本実施の形態における位相変調素子とは、図5に示す位相変調素子において、光導波路10の全長が約60nm、接続構造部20及び30の幅は約90nm、接続構造部20及び30が光導波路10の側面に約295nmの周期で接続されているものである。尚、光導波路10と電極部40及び50との間の長さは、約550nmとなるように形成されている。
【0030】
図7に示されるように、ストップバンドの長波長領域、具体的には、入射波長が1.6μm〜2.0μmにおいては、透過光強度は、本実施の形態における位相変調素子の方が、図2に示す従来の構造の位相変調素子よりも損失が小さい。よって、ストップバンドよりも長波長の光を入射させた場合には、本実施の形態における位相変調素子の方が、光導波路を伝播する光の吸収を低く抑えることができる。
【0031】
また、図7に示されるように、位相変調素子では、1.55μmにおいて入射した光の大部分が反射されるストップバンド領域が出現する。このストップバンドのバンドエッジ付近では、共振器の遅延作用を得ることができる。この遅延作用により、バンドエッジ付近における入射波長において変調器動作を行なうと、一定の光導波路の屈折率変化に対する光の位相変化を増大させることができる。これにより、より少ない電力で、より高い変調効率を得ることができる。この場合においても、図2等に示す従来の位相変調素子では、n型領域及びp型領域における光の吸収が大きいため、バンドエッジは、本実施の形態における位相変調素子に比べて緩やかなものとなる。即ち、本実施の形態における位相変調素子では、バンドエッジ付近の光を用いることにより、変調効率が高く、電極間抵抗が低く、かつ、光の損失を少なくすることができる。
【0032】
尚、上述した説明では、Si系の材料を用いた位相変調素子について説明したが、メンブレン状の化合物半導体光導波路等、他の半導体材料を用いた場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0033】
(他の半導体材料を用いた位相変調素子)
次に、他の半導体材料を用いた位相変調素子について説明する。他の半導体材料を用いた位相変調素子としては、SiGeを用いた位相変調素子が挙げられ、例えば、SiGeを用いて光導波路10、接続構造部20及び30が形成されているものが挙げられる。
【0034】
SiGeを用いた位相変調素子では、光導波路10内にキャリアを導入することなく、光導波路における屈折率を変調することができる。即ち、Franz-Keldysh効果を用いて光の位相の変調を行なことができる。従って、この位相変調素子は、電圧を印加することにより位相変調を行なうものであり、p型領域及びn型領域を形成する必要がない。しかしながら、SiGeを用いた位相変調素子においても、p型領域23及びn型領域33を形成することにより、光導波路10に、より効率よく電圧を印加することができるため、低電圧で位相変調等を行なうことができ、特性を向上させることができる。
【0035】
尚、上記説明では、SiGeを用いた位相変調素子について説明したが、Franz-Keldysh効果を得ることのできる材料であれば、SiGe以外の材料を用いた場合においても同様である。
【0036】
(位相変調素子の製造方法)
次に、本実施の形態における位相変調素子の製造方法について、図8から図10に基づき説明する。
【0037】
最初に、図8(a)に示すようにSOI(Silicon on Insulator)基板を準備する。具体的には、シリコン基板60上に、酸化シリコンであるSiOボックス層61が形成され、更にSiOボックス層61上にSi層62が積層形成されているSOI基板を準備する。
【0038】
次に、図8(b)に示すように、Si層62上に、SiO膜63を形成する。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)により、Si層62上に、SiO膜63を成膜することにより形成する。
【0039】
次に、図8(c)に示すように、SiO膜63上にレジストパターン64を形成する。このレジストパターン64は、光導波路10、接続構造部20及び30を除いた領域に開口部を有するものであり、SiO膜63上にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより形成する。
【0040】
次に、図9(a)に示すように、レジストパターン64の形成されていない領域におけるSiO膜63をRIE(Reactive Ion Etching)により除去し、更に、レジストパターン64を除去する。これによりSiOマスク63aを形成する。このSiOマスク63aは、光導波路10、接続構造部20及び30が形成される領域におけるSi層62上に形成される。
【0041】
次に、図9(b)に示すように、SiOマスク63aの形成されていない領域のSi層62をRIEにより除去し、更に、SiOマスク63aを除去する。これにより、光導波路10、第1の接続領域21及び31、第2の接続領域21及び32が形成される。この際、p型領域23及びn型領域33となる領域におけるSi層62も残存する。
【0042】
次に、図9(c)に示すように、p型領域23及びn型領域33となる領域におけるSi層62に、不純物元素をイオン注入することにより、p型領域23及びn型領域33を形成する。具体的には、p型領域23となる領域に開口部を有するレジストパターンを作製し、p型の不純物元素であるB(ボロン)をイオン注入する。これにより、レジストパターンの形成されていない領域にはBがイオン注入され、p型領域23を形成することができる。この後、n型領域33の形成される領域に開口部を有するレジストパターンを作製し、n型の不純物元素であるP(リン)をイオン注入する。これにより、レジストパターンの形成されていない領域にはPがイオン注入され、n型領域33を形成することができる。
【0043】
次に、図10に示すように、所望の領域にCVD等により酸化シリコンであるSiO膜65を形成した後、p型領域23に電気的に接続される金属部40aと、n型領域33に電気的に接続される金属部50aとをスパッタリング等により形成する。尚、図10は、作製された位相変調素子の断面構造を示すものであり、図10(a)は、p型領域23及びn型領域33が形成されている部分における断面図であり、図10(b)は、第1の接続領域21及び31が形成されている部分における断面図である。以上により、本実施の形態における位相変調素子を作製することができる。この位相変調素子の製造方法により製造される位相変調素子は、金属部40a及び金属部50aが、p型領域23及びn型領域33の上部に形成されるものであるが、本実施の形態における位相変調素子は、このような構造のものも含むものである。
【0044】
また、本実施の形態における位相変調素子の製造方法においては、前述した製造方法において、Si層62のエッチング工程と、イオン注入の工程との順序を逆にした製造方法であってもよい。具体的には、図9(a)に示す状態、即ち、SiOマスク63aが形成されている状態において、Si層62においてp型領域23及びn型領域33が形成される領域に、各々の領域を形成するための不純物元素のイオン注入を行なう。この際、SiOマスク63aを介してイオン注入が行なわれるが、SiOマスク63aの膜厚が20nmであるため、SiOマスク63aを透過しSi層62におけるp型領域23及びn型領域33となる領域に、不純物元素のイオン注入を行なうことができる。イオン注入を行なった後、SiOマスク63aの形成されていない領域におけるSi層62をRIEにより除去し、SiOマスク63aを除去することにより、図9(c)に示されるものと同様の構造のものを作製することができる。
【0045】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態とは異なる構造の位相変調素子である。
【0046】
図11及び図12に基づき本実施の形態における位相変調素子について説明する。本実施の形態における位相変調素子は、光導波路10の両側に電極部40及び50が配置されており、光導波路10と電極部40との間には、接続構造部120が形成されており、光導波路10と電極部50との間には、接続構造部130が形成されているものである。
【0047】
接続構造部120は、光導波路10の側面に接続された第1の接続領域121と、第1の接続領域121に接続された第2の接続領域122と、第2の接続領域122に接続されたp型領域123を有している。第1の接続領域121は光導波路10に対し略垂直方向に延びた形状で形成されており、第2の接続領域122は第1の接続領域121に対し略垂直方向に延びた形状で形成されている。p型領域123は第2の接続領域122に対し略垂直方向に延びた形状で形成されている。従って、第1の接続領域121とp型領域123とは略平行となるように形成され、光導波路10と第2の接続領域122とは略平行となるように形成されている。
【0048】
同様に、接続構造部130は、光導波路10の側面に接続された第1の接続領域131と、第1の接続領域131に接続された第2の接続領域132と、第2の接続領域132に接続されたp型領域133を有している。第1の接続領域131は光導波路10に対し略垂直方向に延びた形状で形成されており、第2の接続領域132は第1の接続領域131に対し略垂直方向に延びた形状で形成されている。n型領域133は第2の接続領域132に対し略垂直方向に延びた形状で形成されている。従って、第1の接続領域131とn型領域133とは略平行となるように形成され、光導波路10と第2の接続領域132とは略平行となるように形成されている。
【0049】
本実施の形態における位相変調素子は、接続構造部120及び130において、第1の接続領域121及び131に沿った延長部分には、p型領域123及びn型領域133が形成されていない。従って、光導波路10内を伝播する光は、光導波路10及び接続構造部120及び130における第1の接続領域121及び131内に閉じ込めることができる。これにより、光の伝播損失を減少させることができ、また、電極部40及び50間における電気抵抗を低くすることができる。
【0050】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0051】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態とは異なる構造の位相変調素子である。
【0052】
図13及び図14に基づき本実施の形態における位相変調素子について説明する。本実施の形態における位相変調素子は、光導波路10の両側に電極部40及び50が配置されており、光導波路10と電極部40との間には、接続構造部160が形成されており、光導波路10と電極部50との間には、接続構造部170が形成されているものである。
【0053】
接続構造部160は、光導波路10の側面に接続された第1の接続領域161と、第1の接続領域161に接続されたp型領域162を有している。第1の接続領域161は光導波路10に対し略垂直方向に延びた形状で形成されており、p型領域162の延長方向と光導波路10の延長方向とのなす角の角度θが30°以下となるように、第1の接続領域161とp型領域162とが接続されている。
【0054】
同様に、接続構造部170は、光導波路10の側面に接続された第1の接続領域171と、第1の接続領域171に接続されたn型領域172を有している。第1の接続領域171は光導波路10に対し略垂直方向に延びた形状で形成されており、n型領域172の延長方向と光導波路10の延長方向とのなす角の角度θが30°以下となるように、第1の接続領域171とn型領域172とが接続されている。
【0055】
以上のように、本実施の形態における位相変調素子は、光導波路10の延長方向とp型領域162及びn型領域172の延長方向となす角の角度θが30°以下となるように形成したものである。光導波路10の延長方向とp型領域162及びn型領域172の延長方向とのなす角の角度θが30°以下とすることにより、第1の接続領域161及び171よりも奥に形成されているp型領域162及びn型領域172までは殆ど光は伝播しなくなる。このことは発明者の検討の結果、知見として得られたものである。従って、光導波路10を伝播する光は第1の接続領域161を介しp型領域162までは漏れ出すことなく、また、第1の接続領域171からn型領域172までは漏れ出すことがない。これにより、光の伝播損失を低減させることができる。また、第1の接続領域161とp型領域162とが斜めに接続されており、第1の接続領域171とn型領域172とが斜めに接続されているため、電極部40及び50間における電気抵抗を低くすることができる。更には、接続構造部170及び180においては、直線的な形状に近い形状になるため位相変調素子の製造がしやすくなる。
【0056】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0057】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態とは異なる構造の位相変調素子である。
【0058】
図15及び図16に基づき本実施の形態における位相変調素子について説明する。本実施の形態における位相変調素子は、光導波路10の両側に電極部40及び50が配置されており、光導波路10と電極部40との間には、接続構造部180が形成されており、光導波路10と電極部50との間には、接続構造部190が形成されているものである。
【0059】
接続構造部180は、光導波路10の側面に接続された第1の接続領域181及び、第1の接続領域181に接続されたp型領域182を有している。第1の接続領域181及びp型領域182は連続して直線的に形成されており、接続構造部180は、光導波路10に対する角度ψが、30°以下となるように接続されている。また、第1の接続領域181及びp型領域182は、光導波路10から垂直方向に漏れ出した光が、直接p型領域182まで到達することのない形状で形成されている。即ち、p型領域182は、光導波路10と接続構造部180との接続部分において、光導波路10に対し略垂直方向の延長線上とはならない部分に形成されている。言い換えるならば、p型領域182は、光導波路10と接続構造部180との接続部分において、光導波路10に対し略垂直方向の延長線上には形成されていない。
【0060】
同様に、接続構造部190は、光導波路10の側面に接続された第1の接続領域191及び、第1の接続領域191に接続されたn型領域192を有している。第1の接続領域191及びn型領域192は連続して直線的に形成されており、接続構造部190は、光導波路10に対する角度ψが、30°以下となるように接続されている。また、第1の接続領域191及びp型領域192は、光導波路10から垂直方向に漏れ出した光が、直接n型領域192まで到達することのない形状で形成されている。即ち、n型領域192は、光導波路10と接続構造部190との接続部分における光導波路10に対し略垂直方向の延長線上とはならない部分に形成されている。言い換えるならば、n型領域192は、光導波路10と接続構造部190との接続部分において、光導波路10に対し略垂直方向の延長線上には形成されていない。
【0061】
本実施の形態における位相変調素子では、光導波路10の延びる方向と接続構造部180及び190の延びる方向とのなす角の角度ψを30°以下で形成することにより、光導波路10を伝播する光が漏れ出し難い構造となる。よって、第1の接続領域181及び191を介し、p型領域182及びn型領域192における光の吸収を減らすことができ、伝播損失を低減させることができる。また、第1の接続領域181とp型領域182及び第1の接続領域191とn型領域192は、各々直線的に形成されているため、より一層製造しやすいという利点を有している。
【0062】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0063】
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第4の実施の形態における位相変調素子を有する位相変調素子である。
【0064】
具体的に、図17に基づき本実施の形態における位相変調素子として、第1の実施の形態における位相変調素子を有する構造のものについて説明する。図17に示す位相変調素子は、光導波路210が繋がった形状、即ち、リング状で形成されており共振器を形成しているものであり、光導波路210の領域211においては、直線状に形成された光導波路200と近接するように配置されている。光導波路210の周囲には、第1の実施の形態における位相変調素子221、222、223が配置されており、各々の位相変調素子221、222、223は、電極部240及び250と接続されている。本実施の形態における位相変調素子では、電極部240及び250間に電圧を印加することにより、光導波路210における共振周波数を変化させることができ、光導波路200を伝播する光の位相を変調することができる。また、本実施の形態における位相変調素子では、第1の実施の形態における位相変調素子を有しているため、低い消費電力で、光導波路210を伝播する光の伝播損失が低く、変調効率の高い位相変調素子を得ることができる。尚、上記説明では、第1の実施の形態における位相変調素子を有するものについて説明したが、第1の実施の形態における位相変調素子に代えて、第2から第4の実施の形態における位相変調素子を用いた場合においても同様である。
【0065】
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0066】
上記の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
半導体材料により形成される光導波路と、
前記光導波路の両側側面に各々接続され、半導体材料により形成される接続構造部と、
前記接続構造部の各々に接続される電極部と、
を有し、
前記接続構造部は、前記電極部との接続部分に不純物元素がドープされた不純物領域を有しており、
前記不純物領域は、前記光導波路と前記接続構造部との接続部分における前記光導波路に対し垂直方向の延長線上とはならない部分に形成されていることを特徴とする位相変調素子。
(付記2)
前記接続構造部は、前記光導波路に接続される第1の接続領域と、前記第1の接続領域に接続される第2の接続領域と、前記第2の接続領域と前記電極部とを接続する第3の接続領域を有しており、
前記第3の接続領域は、前記不純物領域となるものであって、
前記第1の接続領域と前記第3の接続領域とは平行に形成されており、
前記第1の接続領域の延びる方向と、前記第3の接続領域の延びる方向とは重ならない形状であることを特徴とする付記1に記載の位相変調素子。
(付記3)
前記第1の接続領域は複数設けられており、隣接する2つの前記第1の接続領域に沿った2つの延長線の中間の位置に、前記第3の接続領域が形成されていることを特徴とする付記2に記載の位相変調素子。
(付記4)
前記第2の接続領域は、前記第1の接続領域及び前記第3の接続領域に垂直に形成されているものであることを特徴とする付記2または3に記載の位相変調素子。
(付記5)
前記接続構造部は、前記光導波路と前記電極部との間で直線的に形成されており、
前記光導波路の延びる方向と、前記接続構造部の延びる方向のなす角度は、30°以下であることを特徴とする付記1に記載の位相変調素子。
(付記6)
前記接続構造部は、前記光導波路に接続された第1の接続領域と、前記第1の接続領域と前記電極部との間に形成された第4の接続領域とを有しており、
前記第4の接続領域は、前記不純物領域となるものであって、
前記第4の領域の延びる方向の延長線と前記光導波路の延びる方向とのなす角度は、30°以下であることを特徴とする付記1に記載の位相変調素子。
(付記7)
前記接続構造部は、前記光導波路の側面に一定の間隔で複数形成されていることを特徴とする付記1から6のいずれかに記載の位相変調素子。
(付記8)
前記光導波路及び前記接続構造部は、SiまたはSiGeにより形成されているものであることを特徴とする付記1から7のいずれかに記載の位相変調素子。
(付記9)
前記光導波路は、前記接続構造部が形成されている部分を除き酸化シリコンにより囲まれていることを特徴とする付記8に記載の位相変調素子。
(付記10)
前記光導波路は基板の上方にリング状に形成されているものであることを特徴とする付記1から9のいずれかに記載の位相変調素子。
(付記11)
前記光導波路に近接して設けられた他の光導波路を有することを特徴とする付記10に記載の位相変調素子。
【符号の説明】
【0067】
10 光導波路
20 接続構造部
21 第1の接続領域
22 第2の接続領域
23 p型領域(第3の接続領域)
30 接続構造部
31 第1の接続領域
32 第2の接続領域
33 n型領域(第3の接続領域)
40 電極部
40a 電極部
50 電極部
50a 電極部
60 シリコン基板
61 SiOボックス層
62 Si層
63 SiO
63a SiOマスク
64 レジストパターン
65 SiO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料により形成される光導波路と、
前記光導波路の両側側面に各々接続され、半導体材料により形成される接続構造部と、
前記接続構造部の各々に接続される電極部と、
を有し、
前記接続構造部は、前記電極部との接続部分に不純物元素がドープされた不純物領域を有しており、
前記不純物領域は、前記光導波路と前記接続構造部との接続部分における前記光導波路に対し垂直方向の延長線上とはならない部分に形成されていることを特徴とする位相変調素子。
【請求項2】
前記接続構造部は、前記光導波路に接続される第1の接続領域と、前記第1の接続領域に接続される第2の接続領域と、前記第2の接続領域と前記電極部とを接続する第3の接続領域を有しており、
前記第3の接続領域は、前記不純物領域となるものであって、
前記第1の接続領域と前記第3の接続領域とは平行に形成されており、
前記第1の接続領域の延びる方向と、前記第3の接続領域の延びる方向とは重ならない形状であることを特徴とする請求項1に記載の位相変調素子。
【請求項3】
前記接続構造部は、前記光導波路と前記電極部との間で直線的に形成されており、
前記光導波路の延びる方向と、前記接続構造部の延びる方向のなす角度は、30°以下であることを特徴とする請求項1に記載の位相変調素子。
【請求項4】
前記光導波路及び前記接続構造部は、SiまたはSiGeにより形成されているものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の位相変調素子。
【請求項5】
前記光導波路は基板の上方にリング状に形成されているものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の位相変調素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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