説明

位相差フィルム

【課題】波長分散性に優れ、光弾性係数が小さく、光学補償の用途に好適な位相差フィルムを提供することにある。
【解決手段】熱可塑性樹脂AからなるA層と熱可塑性樹脂BからなるB層が、少なくともの2層構造からなるフィルムであって、A層の波長480.4nmにおける面内位相差Re(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける面内位相差Re(548.3)(nm)の比が下記式(1)を満たし、かつA層の波長480.4nmにおける厚み方向の位相差Rth(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける面内位相差Rth(548.3)(nm)の比が下記式(2)を満たし、さらに熱可塑性樹脂Bの光弾性係数Cσ(B)が下記式(3)を満たすことを特徴とする位相差フィルム。
0.65≦Re(480.4)/Re(548.3)≦0.98・・・(1)
0.65≦Rth(480.4)/Rth(548.3)≦0.98・・・(2)
−10×10−12/Pa≦Cσ(B)≦−2×10−12/Pa・・・(3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学補償用途に好適な積層フィルムからなる位相差フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、液晶セルや偏光板、位相差フィルムなどで構成されており、その中で位相差フィルムは、視野角補償、外光の反射防止、色補償、直線偏光の円偏光への変換などの役割を負っている。近年、液晶ディスプレイの用途の多様化や大画面化、高精細化、広視野角化などが求められているため、位相差フィルムの高機能化、特に光弾性係数の低減や、波長分散性の制御は重要な課題となっている。位相差フィルムには、ポリカーボネートやセルロースエステル、ポリエステル、環状ポリオレフィンといった樹脂が提案されている。ポリカーボネート樹脂からなる位相差フィルムとして、ポリスチレンを含有することで、透明性、加工性に優れたものが開示されている(特許文献1、2)。しかし、ポリカーボネートは光弾性係数が大きいために表示装置に組み込む時に発生する応力やバックライトや使用環境においてフィルムにかかる熱の為に位相差が変化し額縁漏れが生じるという問題があった。また、負の固有複屈折をもつ層と正の固有複屈折をもつ層を積層する、光の波長が短くなるほど位相差値が小さくなる位相差板が開示されている(特許文献3)。しかし、各層を別々に延伸しその後重ね合わせるため、製造工程が増え製造コストが増えるという問題があった。また、ノルボルネン樹脂を用いたものとしては、ビニル芳香族系重合体との積層位相差フィルムが開示されている(特許文献4)。しかし、波長分散性の制御と光弾性係数の低減を両立することが困難であるという問題があった。
【特許文献1】特開2000−302988号公報
【特許文献2】特開2006−208655号公報
【特許文献3】特開2006−313335号公報
【特許文献4】特開2005−292311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題とした結果達成されたものである。すなわち本発明の目的は、波長分散性に優れ、光弾性係数が小さく、光学補償の用途に好適な位相差フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明によれば、下記に記載する位相差フィルムが提供される。すなわち、本発明は、
[1]熱可塑性樹脂AからなるA層と熱可塑性樹脂BからなるB層の少なくとも2層構造からなるフィルムであって、A層の波長480.4nmにおける面内位相差Re(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける面内位相差Re(548.3)(nm)の比が下記式(1)を満たし、かつA層の波長480.4nmにおける厚み方向の位相差Rth(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける厚み方向の位相差Rth(548.3)(nm)の比が下記式(2)を満たし、さらに熱可塑性樹脂Bの光弾性係数Cσ(B)が下記式(3)を満たすことを特徴とする位相差フィルムである。
0.65≦Re(480.4)/Re(548.3)≦0.98・・・(1)
0.65≦Rth(480.4)/Rth(548.3)≦0.98・・・(2)
−10×10−12/Pa≦Cσ(B)≦−2×10−12/Pa・・・(3)
[2]熱可塑性樹脂Aのガラス転移温度をTg(A)℃、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度をTg(B)℃として下式(4)を満たす[1]に記載の位相差フィルム。
20℃≦|Tg(A)−Tg(B)|<100℃・・・(4)
[3]位相差フィルムの未延伸時の光弾性係数をCσ(C)×10−12/Paとして下式(5)を満たす[1]または[2]に記載の位相差フィルム。
−20×10−12/Pa≦Cσ(C)≦20×10−12/Pa・・・(5)
[4]熱可塑性樹脂Aが正の複屈折を示し、熱可塑性樹脂Bが負の複屈折を示す[1]〜[3]のいずれかに記載の位相差フィルム。
[5]熱可塑性樹脂Bがポリスチレン共重合体であり、その質量平均分子量(Mwと記す)が下記式(6)を満たす[1]〜[4]のいずれかに記載の位相差フィルム。
100000≦Mw≦250000・・・(6)
[6]ヘイズが1.0%以下である[1]〜[5]のいずれかに記載の位相差フィルム。
[7]位相差フィルムの長手方向における破断点伸度が5.0%以上であり、位相差フィルムの幅方向における破断点伸度が5.0%以上である[1]〜[6]のいずれかに記載の位相差フィルムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、以下に説明する通り、波長が長くなるにつれて、位相差が大きくなる逆分散性を示し、光弾性係数が小さい位相差フィルムおよびこれを用いた表示装置を提供することができる。そのため、液晶セルや偏光板に貼り合わせた時の貼りムラや、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差、偏光フィルムの収縮などにより発生する応力による位相差変化を小さくすることができ、光の額縁漏れや色ムラを無くすことができる。さらに、本発明によればコントラストが高く、視野角特性が良好な表示を実現できる表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
熱可塑性樹脂AからなるA層と熱可塑性樹脂BからなるB層の少なくとも2層構造からなるフィルムであって、A層の波長480.4nmにおける面内位相差Re(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける面内位相差Re(548.3)(nm)の比が下記式(1)を満たし、かつA層の波長480.4nmにおける厚み方向の位相差Rth(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける厚み方向の位相差Rth(548.3)(nm)の比が下記式(2)を満たし、さらに熱可塑性樹脂Bの光弾性係数Cσ(B)が下記式(3)を満たすことが好ましい。
0.65≦Re(480.4)/Re(548.3)≦0.98・・・(1)
0.65≦Rth(480.4)/Rth(548.3)≦0.98・・・(2)
−10×10−12/Pa≦Cσ(B)≦−2×10−12/Pa・・・(3)。
【0007】
本発明の位相差フィルムにおいてA層の波長480.4nmにおける面内位相差Re(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける面内位相差Re(548.3)(nm)の比は、より好ましくは下記式(7)を満たすことであり、さらに好ましくは下記式(8)である。A層の波長480.4nmにおける面内位相差Re(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける面内位相差Re(548.3)(nm)の比が上記式(1)の範囲外である場合、ディスプレイ等の表示装置に組み込んだ際の視野角特性の低下や色相変化が生じるため好ましくない。
0.70≦Re(480.4)/Re(548.3)≦0.95・・・(7)
0.80≦Re(480.4)/Re(548.3)≦0.92・・・(8)。
【0008】
本発明の位相差フィルムにおいて、A層の波長480.4nmにおける厚み方向の位相差Rth(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける厚み方向の位相差Rth(548.3)(nm)の比は、より好ましくは下記式(9)を満たすことであり、さらに好ましくは下記式(10)である。A層の波長480.4nmにおける厚み方向の位相差Rth(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける厚み方向の位相差Rth(548.3)(nm)の比が上記式(2)の範囲外である場合、ディスプレイ等の表示装置に組み込んだ際の視野角特性の低下や色相変化が生じるため好ましくない。
0.70≦Rth(480.4)/Rth(548.3)≦0.95・・・(9)
0.80≦Rth(480.4)/Rth(548.3)≦0.92・・・(10)。
【0009】
熱可塑性樹脂Aの波長分散性を上記式(1)および(2)に制御するためには、ポリマー構造を下記の通り選択することで、達成可能である。
【0010】
本発明の位相差フィルムにおける熱可塑性樹脂Aに使用する樹脂は、原料は一般的な透明樹脂であれば特に制限されないが、波長分散性などの光学特性の点からポリエステル樹脂が好ましい。例えば、ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、フェニレンジオキシジカルボン酸、4、4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、2、6−デカリンジカルボン酸ジメチル、ノルボルナンジカルボン酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などがある。また、ジオール成分はエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、スピログリコール、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどがある。これらの中でも、波長分散性、光弾性係数、耐熱性、重合性の観点からジカルボン成分は、2、6−デカリンジカルボン酸ジメチルが好ましく、ジオール成分は、エチレングリコール、スピログリコール、9,9−ビス(4−(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが好ましい。
【0011】
本発明の位相差フィルムにおいて、熱可塑性樹脂Bの光弾性係数は、より好ましくは下記式(11)を満たすことが好ましく、さらに好ましくは下記式(12)である。
−10×10−12/Pa≦Cσ(B)≦−3×10−12/Pa・・・(11)
−10×10−12/Pa≦Cσ(B)≦−5×10−12/Pa・・・(12)。
【0012】
熱可塑性樹脂Bの光弾性係数が上記式(3)の範囲外である場合、位相差フィルムの光弾性係数が大きくなり、液晶セルや偏光板に貼り合わせた時の貼りムラや、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差、偏光フィルムの収縮などにより発生する応力による位相差変化が大きくなり、光の額縁漏れや色ムラが発生するため好ましくない。
【0013】
熱可塑性樹脂Bの光弾性係数を上記式(3)に制御するためには、ポリマー構造を下記の通り選択することで、達成可能である。
【0014】
本発明の位相差フィルムにおける熱可塑性樹脂Bに使用するポリスチレン共重合体は、イソプロペニル芳香族とビニル芳香族を含有する共重合体のことを指す。イソプロペニル芳香族の具体例としては、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、α−メチルスチレンなどがあるが好ましいのはα−メチルスチレンである。
ビニル芳香族の具体例としては、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、2、5−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、p―エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン等があるが好ましいのはスチレンである。
【0015】
本発明の位相差フィルムの積層構成については特に限定されないが、熱寸法変化などの熱特性の点から、B層(ポリスチレン共重合体)/A層(ポリエステル樹脂)/B層(ポリスチレン共重合体)の積層構成にすることが好ましい。
【0016】
本発明の位相差フィルムにおいて、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度Tgの差が上記式(4)を満たし、より好ましくは下記式(13)を満たし、さらに好ましくは下記式(14)を満たすことが好ましい。
【0017】
本発明の位相差フィルムの延伸温度は(Tg(A)−5)℃以上(Tg(A)+15)℃以下の温度範囲が好ましく、そのため、B層の延伸温度は熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度よりも十分高くなり、分子配向が生じにくい温度となるため、本発明の位相差フィルムの波長分散に及ぼす影響が小さくなる。よって、波長分散性が逆分散を示すためディスプレイ等の表示装置に組み込んだ際の視野角特性の向上や色相変化が生じにくくなるため好ましい。しかし、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂BのTgの差が20℃より小さい場合は、延伸温度における熱可塑性樹脂Bの分子配向が生じやすくなるため、本発明の位相差フィルムの波長分散に影響及ぼす影響が大きくなり、波長分散性が順分散を示すため、ディスプレイ等の表示装置に組み込んだ際の視野角特性の低下や色相変化が生じるため好ましくない。また、各熱可塑性のガラス転移温度の差が100℃以上となると、製膜時に粘度差が大きくなりフローマークの発生原因となるため好ましくない。
30℃≦|Tg(A)―Tg(B)|<100℃・・・(13)
40℃≦|Tg(A)―Tg(B)|<100℃・・・(14)。
【0018】
熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度の差を上記式(4)に制御するためには、熱可塑性樹脂AおよびBのポリマー構造を上記の通り選択することで達成可能である。
【0019】
本発明の位相差フィルムは、位相差フィルムの未延伸時の光弾性をCσ(C)×10‐12/Paとして上記式(5)を満たすことが好ましい。より好ましくは下記式(15)を満たすことが好ましく、さらに好ましくは下記式(16)である。位相差フィルムの未延伸時の光弾性係数が上記式(5)の範囲外である場合は液晶セルや偏光板に貼り合わせた時の貼りムラや、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差、偏光フィルムの収縮などにより発生する応力による位相差変化が大きくなり、光の額縁漏れや色ムラが発生するため好ましくない。
−18×10‐12/Pa≦Cσ(C)≦18×10‐12/Pa・・・(15)
−15×10‐12/Pa≦Cσ(C)≦15×10‐12/Pa・・・(16)。
【0020】
位相差フィルムの未延伸時の光弾性係数を上記式(5)に制御するためには、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを積層体とすることで、達成可能である。
【0021】
本発明の位相差フィルムの熱可塑性樹脂Aが正の複屈折を示し、熱可塑性樹脂Bが負の複屈折を示すことが好ましい。熱可塑性樹脂Aが負の複屈折を示し、熱可塑性樹脂Bが負の複屈折を示す場合、テンターにより幅方向に延伸すると延伸方向に対して垂直に遅相軸が生じるため、偏光板と張り合わせる時に光軸がずれるため好ましくない。また、熱可塑性樹脂Aが正の複屈折を示し、熱可塑性樹脂Bが正の複屈折を示す場合、延伸後の位相差発現性が大きくなりすぎるため好ましくない。
本発明の位相差フィルムは、熱可塑性樹脂Bがポリスチレン共重合体であり、その質量平均分子量が上記式(6)を満たすことが好ましい。質量平均分子量が10万未満の場合は積層フィルムの靭性が低下することや、共重合後の熱安定性が悪くなる点、黄色化しやすい点、熱可塑性樹脂Aとの積層時に粘度差によるフローマーク発生の原因になる点から好ましくない。質量平均分子量が25万を超える場合は溶融押出し時の粘度が高くなりすぎるため、製膜困難な点、熱可塑性樹脂Aとの積層時に粘度差によるフローマーク発生の原因になる点から好ましくない。ポリスチレン共重合体の質量平均分子量(Mwと記す)を上記式(6)の範囲に制御するためには、単量体と溶液を含有する原料液を反応器内に連続的に導入し、反応後の重合液を連続的に排出する連続重合法により、反応器内の攪拌羽根の回転数を制御するか、重合体の成長末端に多官官能基を有する化合物添加することにより達成可能である。より好ましくは下記式(17)を満たすことであり、さらに好ましくは下記式(18)を満たすことである。
110000≦Mw≦230000・・・(17)
115000≦Mw≦220000・・・(18)。
【0022】
本発明の位相差フィルムは、ヘイズが1.0%以下であることが好ましい。ヘイズが1.0%以上である場合は、全光線透過率が低下する点から好ましくない。より好ましくは、0.8%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下であることが好ましい。ヘイズを1.0%以下とするためには、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを積層体とすることで、達成可能である。
【0023】
本発明の位相差フィルムは、フィルムの長手方向における破断点伸度が5.0%以上であり、フィルムの幅方向における破断点伸度が5.0%以上であることがフィルムの靭性の点から好ましい。フィルムの長手方向および幅方向の破断点伸度を5.0%以上とするためには、熱可塑性樹脂Bの質量平均分子量を前記範囲で用いることにより、達成可能である。
【0024】
本発明において、熱可塑性樹脂Aに用いるポリエステル樹脂を重合するための方法は特に限定されず、公知の重合方法を用いることができ、例えばエステル交換法、直接重合法、酸クロライド法等の溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等の重合方法により、ポリエステル樹脂を得ることができる。その中でも、エステル交換反応の場合、例えば2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、スピログリコールを用いる場合、2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、スピログリコールを所定のポリマー組成となるように反応容器へ仕込む。これらを150℃で溶融後、触媒として酢酸マンガンを添加し攪拌する。150℃で、これらのモノマー成分は均一な溶融液体となる。ついで、235℃まで徐々に昇温しながらメタノールを留出させ、エステル交換反応を実施する。エステル交換反応終了後、トリメチルリン酸を加え、攪拌後に水を蒸発させる。さらに、二酸化ゲルマニュウムのエチレングリコール溶液を添加後、反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度を徐々に重合温度の285℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から133Pa以下まで減圧し、エチレングリコールを留出させる。重合反応の進行に従って反応物の粘度が上昇。所定の攪拌トルクになった時点で反応を終了し、重合装置から樹脂を水槽へストランド状に吐出する。吐出された樹脂は水槽で急冷し、巻き取り後カッターでチップとする。得られた樹脂は95℃の温水が満たされた水槽に投入し5時間水処理を行う。水処理後、脱水機を用いて樹脂から水分を除去する。このようにして本発明の熱可塑性樹脂Aを得ることができるが、上記に限定されるわけではない。
【0025】
本発明において、熱可塑性樹脂Bに用いるポリスチレン共重合体を重合するための方法はリビング重合法により製造される。リビング重合法には、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合があり、特に限定されることなく、いずれの方法においても製造することができる。この中でも、特にリビングアニオン重合法を用いる場合、例えばスチレンとαメチルスチレンとシクロヘキサンを混合した溶液を、活性アルミナを充填した5Lの容積の製造塔内を通過させて重合禁止剤であるt−ブチルカテコールを除去させる。そして、反応器内の攪拌翼を175rpmで攪拌させ、重合反応を進める。次に、重合反応器から排出されたリビングポリマーの溶液を重合停止剤溶液のある反応器内に移し、停止剤溶液を0.1kg/時の流速で導入しその後、静的ミキサーを経て完全に重合反応を停止させる。さらに、ポリマー溶液は予熱器で260℃まで加熱し、2MPaの減圧下で溶媒と未反応モノマーをポリマーから分離、回収した後に、十分に揮発成分が除去されたポリマーを、カッターでペレタイズ化しポリマーを回収する。このようにして本発明の熱可塑性樹脂Bを得ることができるが、上記に限定されるわけではない。
【0026】
ここで、本発明の熱可塑性樹脂Aとしてポリエステル樹脂と、熱可塑性樹脂Bとしてポリスチレン共重合体の積層構造からなる位相差フィルムの製造方法について、例を挙げて説明する。例えば、それぞれの樹脂をギアポンプで計量した後に、ピノールやフィードブロックを用い積層する方法や、マルチマニホールドの様に口金内で積層する方法が挙げられる。装置の積層精度やメンテナンス性の観点からフィードブロック法が好ましい。フィードブロックは積層制度を高めるためにも口金の直前に設置することが好ましい。フィードブロックを用いる方法について以下説明する。単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダー型溶融押出装置等が使用できる。溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色を防ぐ点からベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。押出し温度としては融点200℃〜300℃の範囲であればいずれかの温度で押出すことができる。キャスト方法は、溶融した樹脂をギアポンプで計量した後に、直前にフィードブロックを設置したT−ダイ口金から吐出させ、温水またはスチームにより加温されたドラム上に密着手段である静電印可法、エアーチャンバー法、エアーナイフ法、プレスロール法、ニップキャスト法などでドラムに固化させて室温まで冷却し、フィルムを得ることができる。
【0027】
また、本発明の熱可塑性樹脂Aとしてポリエステル樹脂と、熱可塑性樹脂Bとしてポリスチレン共重合体の積層構造の位相差フィルムにおいては均一な厚み、良好な平面性を得る点からニップキャスト法が好ましい。
【0028】
このような方法で製造した未延伸フィルムは、縦または/および横に一軸もしくは二軸に延伸することにより、本発明の位相差フィルムを得ることができる。延伸の方法としては、縦または横方向に一軸延伸を行う方法、縦および横方向に逐次二軸延伸または同時二軸延伸を行う方法、逐次二軸延伸後にさらに縦または横方向に再延伸を行う方法などの方法を用いることができる。この中でも、縦または/および横方向に一軸延伸、もしくは逐次二軸延伸を行う方法が、厚みや位相差および分子の配向度を制御する点から好ましい。ここで、延伸温度は、本発明の位相差フィルムのTg(A)を基準とし、(Tg(A)−5)℃以上(Tg(A)+15)℃以下の温度範囲とすることが、位相差の発現性と延伸性の両立の点から好ましい。延伸温度を(Tg(A)−5)℃よりも低くするとポリスチレン共重合体からなる熱可塑性樹脂Bの分子配向が大きくなり波長分散性が悪化するため好ましくなく、またフィルム破れが生じやすくなり、延伸温度を(Tg+15)℃より高くすると分子鎖の配向緩和により位相差発現性が低下することがある点から好ましくない。このような延伸の方法について説明すると、例えばまず得られた未配向フィルムをテンタークッリプに該フィルムの端部を噛ませテンター内の雰囲気温度を上記温度範囲のいずれかに昇温し、幅方向に1.1〜5倍のいずれかの延伸倍率で延伸する。延伸速度は50〜10000%/分が好ましい。延伸速度は遅すぎると分子配向が生じ難くなり位相差発言性が低下し、また延伸速度が早すぎると破れが生じることがある点から好ましくない。
【0029】
また、本発明の位相差フィルムには、反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理、ハードコート処理といった各種表面処理を行うことができる。
【0030】
以上のような方法で製造された位相差フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、視野角補償フィルム等の液晶光学補償フィルム等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて、本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。なお、各種物性の測定は次の方法に従って行った。
(1)面内位相差Re、厚み方向位相差Rth
測定装置:王子計測器機器(株)製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH/DSP)
サンプルホルダー:ADH−AL3
測定径:φ25mm
測定モード:波長分散特性測定
測定波長:480.4nm、548.3nm、
入射角:0°、40°
サンプルサイズ:50mm×40mm
測定値:フィルムの同じ箇所を3回測定し、各波長における位相差の平均値の比を波長分散の測
定値として用いた。
Re(480.4)(nm)、Re(548.3)(nm)の算出方法:
試料を光源に対して垂直(0°)に設置し、各測定波長での位相差を測定し、測定値から波長分散を算出した。
Rth(480.4)(nm)、Rth(548.3)(nm)の算出方法:
試料を光源に対して垂直(0°)に設置し、各測定波長での位相差を測定する。更に試料を光源に対して40°傾けた場合の各測定波長での位相差を測定した。次に0°および40°に傾けた時の各波長での位相差からNx、Ny、Nzを算出し下記式により、各波長におけるRthを算出し波長分散を算出した。Nxは遅相軸の屈折率、Nyは進相軸の屈折率、Nzは厚み方向の屈折率であり、dは厚み(μm)とする。
Rth(nm)=[{(Nx+Ny)/2}−Nz]×d
(2)光弾性係数
測定装置:大塚電子(株)製のセルギャップ検査装置(RETS−1200)
測定径:φ5mm
光源:589nm
サンプルサイズ:30mm×50mm
測定方法はフィルム厚みがd(nm)であるサンプルを支持具に挟み長手方向に9.81×10の応力σ(Pa)をかけた。この応力下での位相差R(nm)を測定した。応力をかける前の位相差をR(nm)とし下記式に代入し光弾性係数Cσ(Pa−1)を求めた。
Cσ(Pa−1)=(R−R)/(σ×d)
(3)剥離方法
株式会社オリエンテック社製引っ張り試験機(RTM−500)を用いて50mm/分の速度でT型剥離試験を行うことで、積層フィルムを剥離し、各層のフィルムを単膜で得た。
【0032】
(4)ガラス転移温度
測定装置:セイコー電子工業(株)製の示差走査熱量計(RDC220 ロボットDSC)
測定条件:窒素雰囲気下
測定温度:25℃から300℃
昇温速度:20℃/分
測定パン:Alパン
測定方法はJIS−K7121−1987の9.3項の各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をガラス転移温度とする、中間点ガラス転移温度を用いてガラス転移温を求めた。
【0033】
(5)質量平均分子量
測定装置:東ソー社製GPC(HLC−8020)
カラム:東ソー社製カラム(TSKgel GMHXL、40℃)
GPCにカラムを2本接続し、RI検出器を取り付けて、2質量%のエタノールを含有したクロロホルムを移動相に用いた。質量平均分子量の計算はポリスチレンスタンダード(東ソー社製)を使って検量線を作製し、ポリスチレン換算にて行った。
【0034】
(6)ヘイズ
測定装置:日本電色工業(株)ヘイズメーター(NDH5000)
JIS−K7136(2000)に準じて、23℃でのヘイズ(%)を3回測定し、平均値を求めた。
【0035】
(7)破断点神度
測定装置:オリエンテック社製ロボットテンシロン(RTA100)
試験片:幅10mm×長さ50mm
JIS−K7127(1999)に規定された方法により測定した。23℃、65%RH雰囲気で測定を5回行い、平均値を求めた。
【0036】
[参考例1]
(ポリエステル樹脂(1))
2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル91質量部、シクロヘキセンジカルボン酸18質量部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン153質量部、エチレングリコール235質量部の割合でそれぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込み、内容物を150℃で溶融した後、触媒として酢酸マンガン0.06質量部添加し攪拌した。30分かけて200℃まで昇温し、さらに60分かけて235℃まで昇温しながらメタノールを留出させた。所定のメタノール量が留出した後、触媒の失活剤としてトリメチルリン酸0.02質量部を含んだ水溶液を加え、5分間攪拌して水を蒸発させ、エステル交換反応を停止した。その後、二酸化ゲルマニュウム0.06質量部含んだエチレングリコール溶液を加え、装置内温度を90分かけて235℃〜290℃まで昇温しながら、装置内圧力を常圧から真空へ減圧しエチレングリコールを留出させる。重合反応の進行にしたがって反応物の粘度が上昇し、所定の攪拌トルクとなった時点で反応を終了とする。反応終了後は重合装置を窒素ガスにて常温に戻し、水槽へ吐出した。吐出されたポリエステルチップは水槽で急冷後、カッターにてカッティングしポリマーチップとした。
【0037】
[参考例2]
(ポリエステル樹脂(2))
2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル113質量部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン175質量部、スピログリコール30質量部、エチレングリコール226質量部の割合でそれぞれ計量し、参考例1と同様の方法でポリエステル樹脂のチップを得た。
【0038】
[参考例3]
(ポリエステル樹脂(3))
2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル113質量部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン175質量部、エチレングリコール232質量部の割合でそれぞれ計量し、参考例1と同様の方法でポリエステル樹脂のチップを得た。
【0039】
[参考例4]
(ポリエステル樹脂(4))
2,6−デカリンジカルボン酸ジメチル113質量部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン87質量部、スピログリコール91質量部、エチレングリコール226質量部の割合でそれぞれ計量し、参考例1と同様の方法でポリエステル樹脂のチップを得た。
【0040】
[参考例5]
(ポリエステル樹脂(5))
テレフタル酸93質量部、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン175質量部、エチレングリコール232質量部の割合でそれぞれ計量し、参考例1と同様の方法でポリエステル樹脂のチップを得た。
【0041】
[参考例6]
(ポリスチレン共重合体(1))
スチレン25質量部、α―メチルスチレン10質量部、シクロヘキサン65質量部の割合で計量し混合した溶液を貯蔵タンクに溜め窒素バブリングした後に、溶液を活性アルミナを充填した5L容積の精製塔内を通過させて重合禁止剤であるt−ブチルカテコールを除去した。
重合反応器は窒素ガスでシールし、外部から空気が混入しないようにし、重合反応器の入り口にギアポンプを設置し重合溶液が常に2.1Lとなるように制御した。また、重合溶液からは常に溶液の一部が沸騰している状態にし、内温を82℃〜84℃の間に制御した。攪拌翼の回転数は175rpmとした。重合反応器の原料入り口ち出口にはそれぞれギアポンプを取り付け、原料および重合溶液が常に2.1L/時の一定流量の液を流せる様に制御した。また、開始剤溶液は0.25L/時で重合反応器内へ導入した。
【0042】
重合反応器から排出されたリビングポリマーの溶液は、更にギアポンプを通じて重合停止剤溶液のある反応器まで導いた。停止剤溶液は0.1kg/時の流速で導入し、その後、静的ミキサーを経て完全に重合反応を停止させた。さらに、ポリマー溶液は予熱器で260℃まで加熱し、その後2MPaの減圧下で溶媒と未反応モノマーをポリマーから分離、回収した。十分に揮発成分が除去されたポリマーは、その後ロープ状に排出されて水中で冷却後、カッターでペレタイズ化しポリマーを回収した。得られたポリスチレン共重合体の質量平均分子量を測定したところ、190000であった。
【0043】
[参考例7]
(ポリスチレン共重合体(2))
スチレン11質量部、α―メチルスチレン3質量部、シクロヘキサン86質量部の割合で計量し、参考例6と同様の方法でポリスチレン共重合体のチップを得た。得られたポリスチレン共重合体の質量平均分子量を測定したところ、130000であった。
【0044】
(実施例1)
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエステル樹脂(1)を用い、熱可塑性樹脂Bとして、ポリスチレン共重合体(1)を用いた。ポリマーチップを100℃で減圧乾燥した後、ポリエステル樹脂をφ35.8mmの1軸押し出し機(設定温度270℃)を用いて、ポリスチレン共重合体の樹脂をφ26.8mmの1軸押し出し機(設定温度270℃)を用いて押し出し、積層構成がポリスチレン共重合体(B層)/ポリエステル樹脂(A層)/ポリスチレン共重合体(B層)となるようにフィードブロックを介して積層した後、リップ間隙が1.0mmのTダイ(設定温度270℃)によりシート状に押し出した。このフィルムを85℃に加温したドラムに片面を完全に密着させるようにして冷却し、未延伸の積層フィルムを得た。未延伸フィルムを135℃で横1軸に延伸し、位相差フィルムを得た。得られたフィルムは130℃で2.5倍に1軸延伸を行った。得られたポリマーのTg、波長分散性、光弾性係数、位相差フィルムのヘイズ、破断点伸度の測定結果を表1に示した。
【0045】
(実施例2)
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエステル樹脂(2)を用い、熱可塑性樹脂Bとして、ポリスチレン共重合体(1)を用いた。実施例1と同様の条件にて製膜を行い、未延伸の積層フィルムを得た。得られたフィルムは145℃で2.5倍に1軸延伸を行った。
得られたポリマーのTg、波長分散性、光弾性係数、位相差フィルムのヘイズ、破断点伸度の測定結果を表1に示した。
【0046】
(実施例3)
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエステル樹脂(3)を用い、熱可塑性樹脂Bとして、ポリスチレン共重合体(1)を用いた。実施例1と同様の条件にて製膜を行い、未延伸の積層フィルムを得た。得られたフィルムは145℃で2.0倍に1軸延伸を行った。
得られたポリマーのTg、波長分散性、光弾性係数、位相差フィルムのヘイズ、破断点伸度の測定結果を表1に示した。
【0047】
(実施例4)
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエステル樹脂(4)を用い、熱可塑性樹脂Bとして、ポリスチレン共重合体(2)を用いた。実施例1と同様の条件にて製膜を行い、未延伸の積層フィルムを得た。得られたフィルムは135℃で2.5倍に1軸延伸を行った。
得られたポリマーのTg、波長分散性、光弾性係数、位相差フィルムのヘイズ、破断点伸度の測定結果を表1に示した。
【0048】
(実施例5)
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエステル樹脂(5)を用い、熱可塑性樹脂Bとして、ポリスチレン共重合体(2)を用いた。実施例1と同様の条件にて製膜を行い、未延伸の積層フィルムを得た。得られたフィルムは130℃で1.7倍に1軸延伸を行った。
得られたポリマーのTg、波長分散性、光弾性係数、位相差フィルムのヘイズ、破断点伸度の測定結果を表1に示した。
【0049】
(比較例1)
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエステル樹脂(1)を用いた。実施例1と同様の条件にて製膜を行い、未延伸のフィルムを得た。得られたフィルムは135℃で2.5倍に1軸延伸を行った。
得られたポリマーのTg、波長分散性、光弾性係数、位相差フィルムのヘイズ、破断点伸度の測定結果を表1に示した。
【0050】
(比較例2)
熱可塑性樹脂Bとして、ポリスチレン共重合体(1)を用いた。実施例1と同様の条件にて製膜を行い、未延伸のフィルムを得た。得られたフィルムは135℃で2.5倍に1軸延伸を行った。
得られたポリマーのTg、波長分散性、光弾性係数、位相差フィルムのヘイズ、破断点伸度の測定結果を表1に示した。
【0051】
(比較例3)
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエステル樹脂(1)を用い、熱可塑性樹脂Bとして、ポリスチレン共重合体(1)を用いた。積層構成をポリエステル樹脂(A層)/ポリスチレン共重合体(B層)/ポリエステル樹脂(A層)となるようにフィードブロックを介して積層し、後は実施例1と同様の条件にて製膜を行い、未延伸の積層フィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムは145℃で2.5倍に1軸延伸を行った。
得られたポリマーのTg、波長分散性、光弾性係数、位相差フィルムのヘイズ、破断点伸度の測定結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の位相差フィルムは、光弾性率が小さく、波長分散性に優れ、短波長側における位相差が小さいという優れた光学特性を持ち、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルム等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂AからなるA層と熱可塑性樹脂BからなるB層の少なくとも2層構造からなるフィルムであって、A層の波長480.4nmにおける面内位相差Re(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける面内位相差Re(548.3)(nm)の比が下記式(1)を満たし、かつA層の波長480.4nmにおける厚み方向の位相差Rth(480.4)(nm)と波長548.3nmにおける厚み方向の位相差Rth(548.3)(nm)の比が下記式(2)を満たし、さらに熱可塑性樹脂Bの光弾性係数Cσ(B)が下記式(3)を満たすことを特徴とする位相差フィルム。
0.65≦Re(480.4)/Re(548.3)≦0.98・・・(1)
0.65≦Rth(480.4)/Rth(548.3)≦0.98・・・(2)
−10×10−12/Pa≦Cσ(B)≦−2×10−12/Pa・・・(3)
【請求項2】
熱可塑性樹脂Aのガラス転移温度をTg(A)℃、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度をTg(B)℃として下式(4)を満たす請求項1に記載の位相差フィルム。
20℃≦|Tg(A)−Tg(B)|<100℃・・・(4)
【請求項3】
位相差フィルムの未延伸時の光弾性係数をCσ(C)×10−12/Paとして下式(5)を満たす請求項1または2に記載の位相差フィルム。
−20×10−12/Pa≦Cσ(C)≦20×10−12/Pa・・・(5)
【請求項4】
熱可塑性樹脂Aが正の複屈折を示し、熱可塑性樹脂Bが負の複屈折を示す請求項1〜3のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項5】
熱可塑性樹脂Bがポリスチレン共重合体であり、その質量平均分子量(Mwと記す)が下記式(6)を満たす請求項1〜4のいずれかに記載の位相差フィルム。
100000≦Mw≦250000・・・(6)
【請求項6】
ヘイズが1.0%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項7】
位相差フィルムの長手方向における破断点伸度が5.0%以上であり、位相差フィルムの幅方向における破断点伸度が5.0%以上である請求項1〜6のいずれかに記載の位相差フィルム。

【公開番号】特開2010−49146(P2010−49146A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215058(P2008−215058)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】