説明

位置情報あいまい化システム、情報処理装置、サーバ装置、方法およびプログラム

【課題】利用価値を残しつつ位置情報をあいまい化することができる位置情報あいまい化システム、情報処理装置、サーバ装置、位置情報あいまい化方法および位置情報あいまい化プログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置の位置情報を取得可能な位置情報取得手段10と、位置情報取得手段10が取得した位置情報と、所定のランドマークを基点として定められた領域を示す領域情報とに基づいて、位置情報をランドマークの位置を示すランドマーク位置情報に変換する位置情報変換手段20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報あいまい化システム、情報処理装置、サーバ装置、位置情報あいまい化方法および位置情報あいまい化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器にGPSなどを用いた位置情報取得機能が搭載され、取得した位置情報を利用したサービスが提供されている。しかしながら、位置情報は、個人の位置を特定できる点で個人情報である。そのため、むやみに正確な位置情報がサービス事業者に渡ることはできるだけ避けたほうがよい。
【0003】
そこで、位置情報をあいまい化してサービス事業者等に提供することが検討されている。また、ある程度あいまい化された位置情報でも、その位置が意味のある位置であれば、サービス提供や分析、研究において問題とならない場合も多い。
【0004】
位置情報あいまい化方法の一例が、非特許文献1に記載されている。非特許文献1に記載された方法では、個人情報を保護するためにk匿名性を用い、図6に示すように店舗などの付加情報を含む、k個の位置情報を含むできるだけ小さい矩形領域を計算することであいまい化している。また、非特許文献1には、さらに地図情報をあわせ、駅を含む矩形領域を考えた例が示されている。
【0005】
また、関連する技術として、特許文献1には、位置情報などのプライバシー情報を動的に隠蔽することが可能なプライバシー保護装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−009305号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Web情報を利用した駅クラスタリング手法の提案”清雄一、小池亜弥、白井康之、1D1-2, The 24th Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献に記載された方法では、駅は誰でもわかるランドマークではあるが、駅を含ませるように矩形領域を定めることによって、位置情報(この論文では、矩形情報)の粒度が大まかになりすぎる。
【0009】
また、位置情報として矩形領域を利用しており、特定の位置を示す情報ではなく、範囲情報となるため、代表点を定めて活用することができない。
【0010】
また、特許文献1に記載されたプライバシー保護装置のように、プライバシーの保護を目的として位置情報を隠蔽してしまうと、ユーザは位置情報を利用したサービス等を受けることができなくなる。
【0011】
そこで、本発明は、利用価値を残しつつ位置情報をあいまい化することができる位置情報あいまい化システム、情報処理装置、サーバ装置、位置情報あいまい化方法および位置情報あいまい化プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による位置情報あいまい化システムは、情報処理装置の位置情報を取得可能な位置情報取得手段と、位置情報取得手段が取得した位置情報と、所定のランドマークを基点として定められた領域を示す領域情報とに基づいて、位置情報をランドマークの位置を示すランドマーク位置情報に変換する位置情報変換手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明による位置情報あいまい化システムは、情報処理装置の位置情報を取得可能な位置情報取得手段と、位置情報取得手段が取得した位置情報をあいまい化する位置情報あいまい化手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明による情報処理装置は、位置情報を取得可能な位置情報取得手段と、少なくとも位置情報取得手段が取得した位置情報を含む情報をサーバ装置に送信する送信手段と、サーバ装置からあいまい化された位置情報を受信する受信手段と、少なくともあいまい化された位置情報を含む情報をサービス事業者用サーバ装置に送信する位置情報送信手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明によるサーバ装置は、情報処理装置から情報処理装置の位置情報を受信する受信手段と、受信手段が受信した位置情報がランドマークを基点とする領域に含まれるか否かを判定し、含まれると判定した場合に、ランドマークの位置をあいまい化した位置情報とするあいまい化手段と、あいまい化手段があいまい化した位置情報を情報処理装置に送信する送信手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明によるサーバ装置は、位置情報とサービス事業者用サーバ装置を特定可能なURIとを少なくとも含む情報を受信する受信手段と、受信した位置情報がランドマークを基点とする領域に含まれるかどうか否かを判定し、含まれると判定した場合に、ランドマークの位置をあいまい化した位置情報とするあいまい化手段と、あいまい化手段があいまい化した位置情報をURIで特定されるサービス事業者用サーバ装置に送信する送信手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明による位置情報あいまい化方法は、位置情報によって示される位置が、ランドマークを基点とした領域に含まれるか否かを判定し、含まれると判定した場合に、前記ランドマークの位置をあいまい化した位置情報とすることを特徴とする。
【0018】
本発明による位置情報あいまい化プログラムは、コンピュータに、位置情報を取得する位置情報取得処理と、ランドマークを基点とした領域に位置情報が含まれるか否か判定し、位置情報を含む領域を検索する検索処理と、k匿名性を満たすために各領域にそれぞれk個以上の位置情報が含まれるように領域を拡大して再計算し検索する再検索処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、利用価値を残しつつ位置情報をあいまい化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による位置情報あいまい化システムの第1の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図2】位置情報あいまい化システムの第1の実施形態の動作例を表す流れ図である。
【図3】本発明の具体的な実施例を示す説明図である。
【図4】位置情報あいまい化システムの第2の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【図5】位置情報あいまい化システムの第2の実施形態を説明するためのメッセージチャート図である。
【図6】既存技術の一例を示す説明図である。
【図7】位置情報あいまい化システムの最小の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の実施形態
次に、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明による位置情報あいまい化システムの第1の実施形態の構成例を示すブロック図である。図1を参照すると、本発明による位置情報あいまい化システムの第1の実施形態は、位置情報を取得する手段を備えたM個の情報処理装置1j(j=1〜M)と、位置情報を最近(ここでは、距離が最も近いことをあらわす)のランドマークの位置情報に対応させる信頼のできるサーバ装置2とを含む。なお、信頼のできるサーバ装置2とは、具体的には、位置情報を含めたユーザの個人情報を保護できる能力を備えていることである。また、情報処理装置1jとサーバ装置2とは、インターネット等の通信回線を介して、相互に通信可能である。
【0022】
また、本実施形態では位置情報をあいまい化するとの表現を用いるが、具体的には、ユーザの位置を認識可能な要素をある程度残しつつ、ユーザの位置を匿名化することである。
【0023】
情報処理装置1jは、具体的には、プログラムに従って動作する携帯端末装置(例えば、携帯電話機やPHS端末)などによって実現される。
【0024】
さらに情報処理装置1jは、すくなくとも、位置情報取得手段101jと、サーバ装置2に位置情報を送信する送信手段102jと、サーバ装置2から結果を取得する(具体的には、あいまい化された位置情報を受信する)受信手段103jと、あいまい化された位置情報をサービス事業者に提供するための提供手段104jとを含む。
【0025】
位置情報取得手段101jは、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。位置情報取得手段101jは、情報処理装置1jの位置情報を取得する機能を備えている。位置情報取得手段101jは、例えば、GPS衛星が発するGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて、位置情報を算出する。
【0026】
送信手段102j、受信手段103jおよび提供手段104jは、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のネットワークインタフェース部によって実現される。
【0027】
本実施形態では、M個の情報処理装置1j(j=1〜M)は、いずれも上記の手段を備えているものとする。
【0028】
サーバ装置2は、格納手段201と、受信手段202と、検索手段203と、送信手段204とを含む。サーバ装置2は、具体的には、プログラムに従って動作するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって実現される。
【0029】
格納手段201は、具体的には、光ディスク装置や磁気ディスク装置などの記憶装置によって実現される。格納手段201は、N個のランドマークの位置情報と半径情報と個数情報とを少なくとも格納する。なお、半径情報とは、位置情報によって示されるランドマークの位置を基点とした円形の領域の半径を示す。本実施形態では、ランドマークの位置を中心とした円形の領域を用いるが、必ずしもランドマークの位置が中心となる領域でなくてもよい。また、個数情報とは、位置情報と半径情報とによって特定される領域に含まれる情報処理装置の個数を示す。
【0030】
受信手段202は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のネットワークインタフェース部によって実現される。受信手段202は、情報処理装置1から送信された位置情報を受信する機能を備えている。
【0031】
検索手段203は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。検索手段203は、格納手段201が格納するN個のランドマーク(例えば、高層ビルや有名店、公共施設など)の位置情報と半径情報とを用いて、受信した位置情報を比較し、最近のランドマークを検索する機能を備えている。また、検索手段203は、例えば、受信した位置情報を最近のランドマークの位置情報(以下、ランドマーク位置情報ともいう)に変換する。
【0032】
送信手段204は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のネットワークインタフェース部によって実現される。送信手段204は、変換後のランドマーク位置情報を情報処理装置1に送信する機能を備えている。
【0033】
これらの手段は、それぞれ概略つぎのように動作する。情報処理装置1jにおいて、位置情報取得手段101jは、所定時間ごと又はユーザ操作検出時に情報処理装置1jの位置情報を取得する。そして、送信手段102jは、少なくとも取得した位置情報を含む情報をサーバ装置2に送信する。
【0034】
一方、サーバ装置2において、受信手段202は、情報処理装置1jが送信した位置情報を含む情報を受信する。そして、検索手段203は、格納手段201が格納するデータを用いて検索し、受信した位置情報がどのランドマークに属するか(すなわち、受信した位置情報をいずれのランドマークと対応させるか)を決定する。
【0035】
検索手段203は、Δt時間内(すなわち所定期間内)にサーバ装置2が受信したM個の位置情報について上記検索処理を実行し、ランドマークの位置を基点とする領域の半径の長さを調整することによって、各ランドマークに属する位置情報がk個以上になるようにする。なお、kは、事前に定められた2以上の値である。このように、1つのランドマークに複数の情報処理装置の位置情報を対応づけることで、各ユーザの位置情報の匿名性を高め、個人情報を特定し難くすることができる。
【0036】
次に、サーバ装置2の送信手段204は、受信した位置情報と対応づけたランドマークの位置情報を情報処理装置1jに送信する。すると、情報処理装置1jにおいて、受信手段103jは、ランドマークの位置情報をあいまい化された位置情報として受信する。そして、提供手段104jは、あいまい化された位置情報をサービス事業者に提供する。なお、本実施形態では、位置情報をサービス事業者に提供するとの表現を用いるが、具体的には、サービス事業者が設けているサーバ装置等に位置情報を送信することである。
【0037】
次に、図1及び図2を参照して本実施形態の全体の動作について説明する。図2は、位置情報あいまい化システムの第1の実施形態の動作例を表す流れ図である。ここでは、複数の情報処理装置1iと1台のサーバ装置2とが動作している例について説明する。
【0038】
まず、各情報処理装置1i(i=1〜M)の位置情報取得手段101i(i=1〜M)は、それぞれ位置情報を取得する(図2のステップS1)。
【0039】
次に、各情報処理装置1iの送信手段102iは、取得した位置情報を信頼の置けるサーバ装置2に送信する(図2のステップS2)。すると、サーバ装置2において、受信手段202は、位置情報を受信する。
【0040】
上述のステップS1〜S2の処理を繰り返し行い、Δt時間内にサーバ装置2は、M個の位置情報を受信したものとする(図2のステップS3)。
【0041】
次に、サーバ装置2の検索手段203は、受信した位置情報に基づいて、格納手段201が格納するランドマークの位置情報と半径情報とを用いて検索し、対応するランドマークの位置情報を抽出する。このときに、検索手段203は、格納手段201が格納しているランドマークの個数情報によって示される個数h(初期値0)を1増やす(ステップS4)。
【0042】
具体的には、検索手段203は、ランドマークの位置情報と半径情報とによって示される領域に受信した位置情報によって示される位置が含まれているか否かを判定する。そして、検索手段203は、含まれていると判定した領域の基点となるランドマークと位置情報とを対応づける。また、このとき検索手段203は、受信した位置情報を対応付けたランドマークの位置情報に変換することによってあいまい化する。
【0043】
また、検索手段203は、上記のステップS4の処理を受信したすべての位置情報について行なう(ステップS5)。
【0044】
次に、検索手段203は、個数hが1以上のランドマークを中心とする半径rからなる領域に属する位置情報の個数がk個以上になるまで、半径rをΔrだけ大きくする(ステップS6、ステップS7)。
【0045】
具体的には、検査手段203は、ランドマークの位置情報と半径情報とに基づいて定められたすべての領域において、個数hがk個未満であるか否かを判定する(ステップS6)。そして、個数hがk個未満であると判定すると、検査手段203は、該当する領域の半径rをΔrだけ大きくし(ステップS7)、処理をステップS4に移行して、ステップS4〜S6を繰り返し実行する。一方、個数hがk個未満でないと判定すると、検査手段203は、処理をステップS8に移行する。
【0046】
以上の処理によって、受信した位置情報がどのランドマークに対応するかを求める処理が終了したので、送信手段404は、各情報処理装置1iに対応づけたランドマークの位置情報を送信する(ステップS8)。
【0047】
最後に各情報処理装置1iは、受信したランドマークの位置情報をあいまい化された位置情報としてサービス事業者に提供する(ステップS9)。具体的には、提供手段104iは、サービス事業者が設けているサーバ装置等に受信したランドマークの位置情報を送信する。その後、例えば、サービス事業者のサーバ装置は、受信した位置情報に基づいて、ランドマークに関する情報(例えば、百貨店なら特売情報やクーポン券)等を配信する。
【0048】
次に、具体的な実施例を用いて本発明による位置情報あいまい化システムの動作を説明する。図3は、本発明の具体的な実施例を示す説明図である。図3に示すように、Δt=10分、Δr=100m、M=8、k=2、ランドマークの数を3にした例について説明する。
【0049】
ここでは、予めランドマーク1、ランドマーク2、ランドマーク3の各半径r1、r2、r3について、最近のランドマーク間の1/2とするように計算しておく。情報処理装置の位置pi(i=1〜10)は、図3に示した位置にあり、ランドマーク1を基点とする半径r1の領域には、p1が含まれる。また、ランドマーク2を基点とする半径r2の領域には、p2、p3、p4が含まれる。また、ランドマーク3を基点とする半径r3の領域には、p5、p6、p7、p8が含まれる。
【0050】
この場合、ランドマーク1を基点とする半径r1の領域には、含まれる情報処理装置がp1の1つだけなので、半径r1に100mを加算する。このようにして、領域を広げるとp1に加えて、p2がランドマーク1を基点とする領域に含まれることになる。これでk=2を満たす(すなわち、1つのランドマークに複数の情報処理装置の位置情報を対応づけた)ので、p1、p2に対応する情報処理装置には、ランドマーク1の位置情報を送信する。また、p3、p4に対応する情報処理装置には、ランドマーク2の位置情報を送信し、p5、p6、p7、p8に対応する情報処理装置にはランドマーク3の位置情報を送信する。
【0051】
その後、各情報処理装置は、サーバ装置から受信した位置情報をあいまい化された位置情報とみなして、サービス提供者にその位置情報を提供する。
【0052】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0053】
第1の効果は、あいまい化した位置情報が利用しやすいことである。その理由は、ランドマークの位置情報をあいまい化した位置情報としているためである。
【0054】
つまり、ランドマークの近傍の端末の位置をランドマークの位置に置換することは、端末の正確な位置をあいまい化するものの、だいたいの位置は、ランドマークの位置に置換されていることによって理解できるからである。このように、ランドマークの位置に置換することにより、サービス事業者は、当該ランドマークに関する情報(例えば、百貨店なら特売情報やクーポン券)の提供サービスを提供できる効果もあるので、ランドマークの位置に置換することは大きな意味がある。
【0055】
第2の効果は、個々の位置情報を隠すことができることである。その理由は、同一エリアに複数の正確な位置情報が含まれ、ランドマークがあいまい化された位置情報として示されるためである。
【0056】
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図4、図5を参照すると、本発明による位置情報あいまい化システムの第2の実施形態は、情報処理装置3j(j=1〜M)と信頼のおけるサーバ装置4とを含む。
【0057】
情報処理装置3jは、サーバ装置4に少なくとも位置情報とサービス事業者を特定可能なURI(Uniform Resource Identifier)とを含む情報を送信する。そして、サーバ装置4は、直接サービス事業者にあいまい化した位置情報を送信する。なお、本実施形態においてサービス事業者に情報を送信するとの表現を用いるが、具体的には、URIによって特定されるサービス事業者が設置するサーバ装置等に情報を送信することである。
【0058】
第1の実施形態と異なる点は、情報処理装置3jにおいて、サービス事業者を特定可能なURIを取得するURI取得手段303jが追加された点である。URI取得手段303jは、例えば、ユーザの操作に従って、ユーザが受けようとするサービスを提供するWebサイトのURLを取得する。
【0059】
また、サーバ装置4においては、格納手段401が、サービス提供者のURLを格納可能である点と、送信手段404が、あいまい化した位置情報を情報処理装置3iに返信するのではなく、サーバ装置4から格納しているURIを用いて、サービス事業者にあいまい化された位置情報を送る点とが異なる。これらの点以外は、本発明の第1の実施形態と同じなので流れ図での説明は省略する。
【0060】
図5は、位置情報あいまい化システムの第2の実施形態のメッセージチャート図である。図5に示すように、本実施形態では、情報処理装置3jは、最初に少なくとも位置情報とサービス事業者を特定するURIとを含む情報をサーバ装置4に送信する。すると、サーバ装置4は、受信した情報に基づいて、第1の実施形態と同様に検索処理を行い、受信した位置情報をあいまい化した位置情報(ランドマークの位置情報)を、同時に受信したURIで特定されるサービス事業者に送信する。
【0061】
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、情報処理装置から受信した位置情報をサーバ装置で変換し、変換した位置情報をサーバ装置から直接サービス事業者に送信する。そのため、サーバ装置から情報処理装置に位置情報を返信するオーバヘッドがなくなり、第1の実施形態における効果に加えて、全体の処理を簡略化することができる。
【0062】
以上のように、本発明による位置情報あいまい化システムは、ランドマークの位置情報とランドマークを基点とする円状のエリア情報取得手段と、位置情報がどのエリアに属するか判断する手段とを備えている。また、そのエリアを、k匿名性を保つためにエリアに属する位置情報の数がk個以上になるように調整する手段を備え、エリアに対応するランドマークの位置情報をあいまい化した位置情報として返信するよう動作する。このような構成を採用し、ランドマークの位置情報を示すことによって、本発明の目的を達成することができる。
【0063】
次に、本発明による位置情報あいまい化システムの最小構成について説明する。図7は、位置情報あいまい化システムの最小の構成例を示すブロック図である。図7に示すように、位置情報あいまい化システムは、最小の構成要素として、位置情報取得手段10と、位置情報変換手段20とを含む。
【0064】
図7に示す最小構成の位置情報あいまい化システムでは、位置情報取得手段10は、情報処理装置の位置情報を取得する。そして、位置情報変換手段20は、位置情報取得手段10が取得した位置情報と、所定のランドマークを基点として定められた領域を示す領域情報とに基づいて、位置情報をランドマークの位置を示すランドマーク位置情報に変換する。
【0065】
従って、最小構成の位置情報あいまい化システムによれば、利用価値を残しつつ位置情報をあいまい化することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、以下の(1)〜(5)に示すような位置情報あいまい化システムの特徴的構成が示されている。
【0067】
(1)位置情報あいまい化システムは、情報処理装置(例えば、情報処理装置1)の位置情報を取得可能な位置情報取得手段(例えば、位置情報取得手段101によって実現される)と、位置情報取得手段が取得した位置情報と、所定のランドマークを基点として定められた領域を示す領域情報(例えば、ランドマークの位置情報と半径情報によって示される)とに基づいて、位置情報をランドマークの位置を示すランドマーク位置情報に変換する位置情報変換手段(例えば、検索手段203によって実現される)とを備えていることを特徴とする。
【0068】
(2)位置情報あいまい化システムにおいて、位置情報変換手段は、ランドマーク位置情報に変換された位置情報がk(整数)以上であるか否かを繰り返し判定し、k以上でなければ領域情報を更新し、更新後の領域情報に基づいて前記位置情報を前記ランドマーク位置情報に変換するように構成されていてもよい。
【0069】
(3)位置情報あいまい化システムは、情報処理装置(例えば、情報処理装置1)の位置情報を取得可能な位置情報取得手段(例えば、位置情報取得手段101によって実現される)と、位置情報取得手段が取得した位置情報をあいまい化する位置情報あいまい化手段(例えば、検索手段203によって実現される)とを備えたことを特徴とする。
【0070】
(4)位置情報あいまい化システムにおいて、位置情報あいまい化手段は、所定のランドマークを基点とした領域(例えば、ランドマークの位置情報と半径情報とに基づいて示される)に含まれる位置情報を所定のランドマークの位置を示すランドマーク位置情報に変換することであいまい化するように構成されていてもよい。
【0071】
(5)位置情報あいまい化システムにおいて、位置情報あいまい化手段は、ランドマークを基点とした領域に含まれる位置情報がk個以上になるように領域を決定することによってk匿名性を満たすように制御するように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、個人情報の保護に配慮した位置情報を利用したサービスを提供する用途に適用可能である。本発明によれば、サービス利用者は、個人情報である正確な位置情報をサービス提供者に提示する必要なくサービスを利用することができる。サービス提供者は、位置情報がランドマークであるため、ランドマーク関連情報を提供したり、地図上での大まかな利用者の位置を用いたサービスなどを提供したりすることが可能になる。
【符号の説明】
【0073】
1j、3j 情報処理装置
2、4 サーバ装置
10 位置情報取得手段
20 位置情報変換手段
101j 位置情報取得手段
102j 送信手段
103j 受信手段
201 格納手段
202 受信手段
203 検索手段
204 送信手段
301j 位置情報取得手段
302j 送信手段
303j URI取得手段
401 格納手段
402 受信手段
403 検索手段
404 送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置の位置情報を取得可能な位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段が取得した位置情報と、所定のランドマークを基点として定められた領域を示す領域情報とに基づいて、前記位置情報を前記ランドマークの位置を示すランドマーク位置情報に変換する位置情報変換手段とを
備えたことを特徴とする位置情報あいまい化システム。
【請求項2】
位置情報変換手段は、ランドマーク位置情報に変換された位置情報がk(整数)以上であるか否かを繰り返し判定し、k以上でなければ領域情報を更新し、更新後の領域情報に基づいて前記位置情報を前記ランドマーク位置情報に変換する
請求項1記載の位置情報あいまい化システム。
【請求項3】
情報処理装置の位置情報を取得可能な位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段が取得した位置情報をあいまい化する位置情報あいまい化手段とを
備えたことを特徴とする位置情報あいまい化システム。
【請求項4】
位置情報あいまい化手段は、所定のランドマークを基点とした領域に含まれる位置情報を該所定のランドマークの位置を示すランドマーク位置情報に変換することであいまい化する
請求項3記載の位置情報あいまい化システム。
【請求項5】
位置情報あいまい化手段は、ランドマークを基点とした領域に含まれる位置情報がk個以上になるように前記領域を決定することによってk匿名性を満たすように制御する
請求項3または請求項4記載の位置情報あいまい化システム。
【請求項6】
位置情報を取得可能な位置情報取得手段と、
少なくとも前記位置情報取得手段が取得した位置情報を含む情報をサーバ装置に送信する送信手段と、
前記サーバ装置からあいまい化された位置情報を受信する受信手段と、
少なくとも前記あいまい化された位置情報を含む情報をサービス事業者用サーバ装置に送信する位置情報送信手段とを
備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置から該情報処理装置の位置情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した位置情報がランドマークを基点とする領域に含まれるか否かを判定し、含まれると判定した場合に、前記ランドマークの位置をあいまい化した位置情報とするあいまい化手段と、
前記あいまい化手段があいまい化した位置情報を前記情報処理装置に送信する送信手段とを
備えたことを特徴とするサーバ装置。
【請求項8】
位置情報とサービス事業者用サーバ装置を特定可能なURIとを少なくとも含む情報を受信する受信手段と、
受信した位置情報がランドマークを基点とする領域に含まれるか否かを判定し、含まれると判定した場合に、前記ランドマークの位置をあいまい化した位置情報とするあいまい化手段と、
前記あいまい化手段があいまい化した位置情報を前記URIで特定されるサービス事業者用サーバ装置に送信する送信手段とを
備えたことを特徴とするサーバ装置。
【請求項9】
位置情報によって示される位置が、ランドマークを基点とした領域に含まれるか否かを判定し、含まれると判定した場合に、前記ランドマークの位置をあいまい化した位置情報とする
ことを特徴とする位置情報あいまい化方法。
【請求項10】
コンピュータに、
位置情報を取得する位置情報取得処理と、
ランドマークを基点とした領域に前記位置情報が含まれるか否か判定し、前記位置情報を含む領域を検索する検索処理と、
k匿名性を満たすために各領域にそれぞれk個以上の位置情報が含まれるように領域を拡大して再計算し検索する再検索処理とを
実行させるための位置情報あいまい化プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−147199(P2012−147199A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3347(P2011−3347)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】