説明

位置情報信頼度決定プログラム及び位置情報信頼度決定装置

【課題】移動端末の位置情報の信頼度を決定する。
【解決手段】スマートフォンなど、不特定のユーザが追加・改変したアプリケーションプログラムやドライバを実行可能な移動端末で取得される位置情報を取得し(S20)、移動端末が周辺の検知端末から直接的に取得する検知端末の情報を取得し(S21)、移動端末の位置情報に基づいて、移動端末が検知端末の情報を取得可能な範囲(検出範囲)を求め、当該検出範囲内に存在する位置近傍端末の情報を取得し(S22)、検知端末の情報と位置近傍端末の情報との差異に基づいて、移動端末で取得される位置情報の各回信頼度を決定する(S24〜S34)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、位置情報信頼度決定プログラム及び位置情報信頼度決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの移動端末においては、GPS(Global Positioning System)などから得られる位置情報を利用したコンテンツ(ゲームなど)が、開発され、ユーザによって利用されつつある。
【0003】
このような移動端末用コンテンツでは、ユーザによる位置情報詐称操作が行われないようにするための対策が採られてきた。例えば、従来は、携帯電話上での制限(HTMLソースを見ることができないなどの制限)を利用し、セッション管理やリダイレクトなどのWeb機能を用いた対策が採られてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−80084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、スマートフォンやノートPCなどの端末では、http(HyperText Transfer Protocol)などの通信プロトコルを用いて送受信される情報をユーザが見ることができる。このため、ユーザは、HTMLやJava(登録商標)script等のソースを変更できる。また、ユーザは、スマートフォンなどで取得された位置情報(例えばGPS情報)を書き換えることもできる。このため、上述した従来の携帯電話と同様の位置情報詐称対策では不十分である。
【0006】
なお、特許文献1には、位置情報をサーバに送信する携帯端末とサーバから成るシステムにおいて、位置情報の正しさを判別する方法が開示されている。この方法では、携帯端末がサーバに対して位置情報を送信する際に、サーバから予め受信していたデータから生成される識別子を位置情報に添付する。そして、サーバでは、同じデータを用いて作成した識別子と、位置情報に添付されている識別子とを比較することで、位置情報の正しさを判別する。この特許文献1の方法では、識別子を生成した後の位置情報の改ざんの有無は判別できるが、識別子を生成する前に書き換えられた位置情報を判別することはできない。
【0007】
本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、移動端末の位置情報の信頼度を精度よく決定することが可能な位置情報信頼度決定プログラム及び位置情報信頼度決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載の位置情報信頼度決定プログラムは、不特定のユーザが追加・改変したアプリケーションプログラムやドライバを実行可能な端末の位置情報の信頼度を決定する位置情報信頼度決定プログラムであって、端末で取得される当該端末の位置情報を取得し、前記端末が周辺の第1の装置から直接的に取得する当該第1の装置の情報を取得し、前記端末の位置情報に基づいて、前記端末が前記第1の装置の情報を取得可能な範囲を求め、当該範囲内に存在する第2の装置の情報を取得し、前記第1の装置の情報と前記第2の装置の情報との差異に基づいて、前記端末で取得される位置情報の信頼度を決定する、処理をコンピュータに実行させる位置情報信頼度決定プログラムである。
【0009】
本明細書に記載の位置情報信頼度決定装置は、不特定のユーザが追加・改変したアプリケーションプログラムやドライバを実行可能な端末の位置情報の信頼度を決定する位置情報信頼度決定装置であって、端末で取得される当該端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記端末が周辺の第1の装置から直接的に取得する当該第1の装置の情報を取得する第1の装置情報取得部と、前記端末の位置情報に基づいて、前記端末が前記第1の装置の情報を取得可能な範囲を求め、当該範囲内に存在する第2の装置の情報を取得する第2の装置情報取得部と、前記第1の装置情報取得部で取得された前記第1の装置の情報と前記第2の装置情報取得部で取得された前記第2の装置の情報との差異に基づいて、前記端末で取得される位置情報の信頼度を決定する決定部と、を備える位置情報信頼度決定装置である。
【発明の効果】
【0010】
本明細書に記載の位置情報信頼度決定プログラム及び位置情報信頼度決定装置は、移動端末の位置情報の信頼度を精度よく決定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る情報処理システムの構成を概略的に示す図である。
【図2】図2(a)は、移動端末のハードウェア構成図であり、図2(b)は、サーバのハードウェア構成図である。
【図3】移動端末及びサーバの機能ブロック図である。
【図4】図4(a)は、送信データを示す図であり、図4(b)は、各回信頼度リストを示す図であり、図4(c)は、位置詐称可能性端末リストを示す図であり、図4(d)は、位置信頼度リストを示す図である。
【図5】図5(a)は、検知端末及び位置近傍端末の一例を示す概略図であり、図5(b)は、図5(a)の各端末を纏めた表である。
【図6】位置信頼度管理部の処理を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS12の処理を示すフローチャートである。
【図8】図8(a)〜図8(d)は、図6、図7の処理において作成されるリストを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について、図1〜図8に基づいて詳細に説明する。図1には、一実施形態に係る情報処理システム100の構成が概略的に示されている。図1に示すように、情報処理システム100は、端末としての移動端末10と、位置情報信頼度決定装置としてのサーバ50とを備える。移動端末10は情報処理システム100内に複数存在しており、当該複数の移動端末10とサーバ50とは、インターネットなどのネットワーク70を介して接続されている。
【0013】
移動端末10は、不特定のユーザが追加・改変したアプリケーションプログラムやドライバを実行可能な端末であり、具体的には、スマートフォンやノートPCなどであるものとする。
【0014】
サーバ50は、移動端末10に対して、ゲームなどのコンテンツサービスを提供するとともに、移動端末10の位置情報の信頼度を管理する機能を有している。
【0015】
図2(a)には、移動端末10のハードウェア構成図が示され、図2(b)には、サーバ50のハードウェア構成図が示されている。図2(a)に示すように移動端末10は、CPU90、ROM92、RAM94、記憶部(ここではHDD(Hard Disk Drive))96、絶対位置取得装置93、近距離通信装置95、ネットワークインタフェース97等を備えている。移動端末10の構成各部は、バス98に接続されている。移動端末10では、ROM92あるいはHDD96に格納されているプログラム、をCPU90が実行することにより、図3に示す各部の機能が実現される。ネットワークインタフェース97は、無線LAN、3G(第3世代モバイルネットワーク)などのインタフェースを含む。絶対位置取得装置93は、GPS衛星からの信号を受信して移動端末10の位置(絶対位置)を取得する。近距離通信装置95は、Bluetooth(登録商標)インタフェースであるものとする。
【0016】
また、図2(b)に示すように、サーバ50は、CPU190、ROM192、RAM194、記憶部(HDD)196、ネットワークインタフェース197、及び可搬型記憶媒体用ドライブ199等を備えている。サーバ50の構成各部は、バス198に接続されている。サーバ50では、ROM192あるいはHDD196に格納されているプログラム(位置情報信頼度決定プログラムなど)、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ199が可搬型記憶媒体191から読み取ったプログラム(位置情報信頼度決定プログラムなど)をCPU190が実行することにより、図3の各部の機能が実現される。
【0017】
図3には、移動端末10及びサーバ50の機能ブロック図が示されている。図3に示すように、移動端末10は、CPU90がプログラムを実行することで、周囲情報取得部12、位置情報取得部18、送信データ生成部16、ゲーム実行部20、通信部14としての機能を発揮する。また、サーバ50は、CPU190がプログラムを実行することで、サービス提供部32、通信部34、位置信頼度管理部36としての機能を発揮する。なお、図3では、移動端末10及びサーバ50のHDD等により実現される記憶部24,38も図示している。
【0018】
以下、移動端末10の各機能について説明する。
【0019】
周囲情報取得部12は、近距離通信装置95を介して、周囲の移動端末10と通信し、当該周囲の移動端末10から端末の情報(ID)を逐次取得する。すなわち、周囲情報取得部12は、移動端末10が存在する場所でセンシングしなければ取得できない情報を取得する。近距離通信装置95がBluetooth(登録商標)インタフェースである場合、スキャン動作により、一定距離内(検出範囲内)の任意のBluetooth(登録商標)搭載の移動端末のユニークなID(例えばMACアドレス)をリストアップすることができる。周囲情報取得部12で取得された移動端末の情報(ID)は、取得日時とともに記憶部24に格納される。
【0020】
位置情報取得部18は、絶対位置取得装置93を介して取得される移動端末10の絶対位置(緯度、経度、標高)を取得する。位置情報取得部18で取得された絶対位置は、取得日時とともに記憶部24に格納される。
【0021】
送信データ生成部16は、記憶部24からデータを取得して送信データを生成する。送信データは、取得日時に関連付けられている情報を纏めたデータである。具体的には、送信データは、図4(a)に示すように、取得日時と、当該取得日時における端末の位置(絶対位置(緯度、経度、標高))と、周囲情報(周囲情報取得部12が取得した移動端末のID)とを含む。なお、図4(a)の送信データは、移動端末10ごとに生成される。また、送信データ生成部16は、送信データを、通信部14を介して、サーバ50に送信する。
【0022】
ゲーム実行部20は、サーバ50(サービス提供部32)から提供されるゲームコンテンツを実行する。例えば、ゲーム実行部20は、位置情報取得部18で取得された絶対位置情報を利用したゲームを実行し、適宜、通信部14、34を介して、サービス提供部32と通信する。このゲームにおいて、移動端末10の絶対位置情報は、重要な意味を持つものとする。例えば、位置情報が目的の位置と合致した場合に、ユーザに高いポイントやアイテムが付与されたり、ゲーム空間上の国や領土を取ることができるなど、ユーザ(移動端末10)の実際の位置が、ゲームの進行にかかわるものとする。このため、スマートフォンなど不特定のユーザが追加・改変したアプリケーションプログラムやドライバを実行可能な端末において、仮に、絶対位置情報が改変されてしまうと、ゲームにおけるユーザ間の公平性が担保できなくなるおそれがある。
【0023】
通信部14は、図2のネットワークインタフェース(無線LANや3G)を介して、サーバ50と情報のやり取りを行う。例えば、送信データ生成部16で生成された送信データをサーバ50へ送信したり、ゲーム実行部20とサーバ50のサービス提供部32との間のやり取りを仲介する。
【0024】
次に、サーバ50の各機能について説明する。
【0025】
サービス提供部32は、各移動端末10のゲーム実行部20に対してゲームコンテンツを配信するとともに、ゲーム実行部20におけるゲームの進行状況に応じた処理(例えば、位置情報に応じたポイントの付与など)を行う。
【0026】
通信部34は、各移動端末10の送信データ生成部16から送信されてくる送信データを受信し、記憶部38に記憶したり、ゲーム実行部20とサービス提供部32との間のやり取りを仲介したりする。
【0027】
位置信頼度管理部36は、各移動端末10から送信されてくる位置情報の信頼度を決定し、管理する。具体的には、位置信頼度管理部36は、位置情報取得部としての端末位置情報取得部42と、第1の装置情報取得部としての第1の端末情報取得部44と、第2の装置情報取得部としての第2の端末情報取得部46と、決定部としての位置信頼度決定部48とを有する。
【0028】
端末位置情報取得部42は、記憶部38に記憶されている移動端末の送信データを取得する。この送信データ(図4(a)参照)には、前述したように端末位置情報も含まれている。第1の端末情報取得部44は、周囲情報取得部12が取得した移動端末10の周辺の移動端末(「検知端末」と呼ぶ)から直接的に取得した位置近傍端末の情報(ID)を、送信データから抽出し、取得する。例えば、図5(a)において、移動端末10が「Z」で表されている場合に、○で示す移動端末a,b,cと、△で示す移動端末e,fが「検知端末」であったものとする。
【0029】
第2の端末情報取得部46は、移動端末10の位置情報に基づいて、移動端末10が周囲の端末の情報を取得できる範囲(検出範囲)を求め、当該範囲内に存在する移動端末(「位置近傍端末」と呼ぶ)の情報を取得する。検出範囲内に存在する移動端末の情報は、送信データから取得することができる。図5(a)では、破線円で示す範囲が、「Z」で示される移動端末10の検出範囲であるものとする。この場合、検出範囲(破線円内)に存在する端末a,b,c,m,n,o,pが位置近傍端末となる。なお、本実施形態では、上記検知端末(a,b,c,e,f)が第1の装置に相当し、位置近傍端末(a,b,c,m,n,o,p)が第2の装置に相当するものとする。
【0030】
位置信頼度決定部48は、位置近傍端末と検知端末の情報との差異に基づいて、移動端末10の位置情報の信頼度を決定する。図5(a)の場合、本来、検知端末となるべき端末は、位置近傍端末a,b,c,m,n,o,pであるのに対し、m,n,o,pは、検知端末となっていない。また、e,fは検知端末とはならないはずであるのに、検知端末となっている。位置信頼度決定部48は、このような位置近傍端末と検知端末の間の矛盾に基づいて、移動端末10(図5(a)では移動端末Z)の位置情報の信頼度を決定する。
【0031】
記憶部38は、移動端末10側から送信されてくる送信データを格納するとともに、図4(b)に示す各回信頼度リスト、図4(c)に示す位置詐称可能性端末リスト、及び図4(d)に示す位置信頼度リストを格納する。
【0032】
図4(b)の各回信頼度リストは、各移動端末の1回の位置情報取得時における、信頼度を記録するリストである。この各回信頼度リストには、日時と、各回信頼度と、グループ(着目する端末と共謀している可能性のあるグループに属する移動端末10のID)と、が格納される。また、各回信頼度リストは、移動端末10ごとに作成されるものである。図4(c)の位置詐称可能性端末リストは、日時と、位置を詐称している可能性のある移動端末のIDとを格納する。図4(d)の位置情報信頼度リストは、ある移動端末の、ある期間における信頼度を格納する。
【0033】
次に、上記のように構成される情報処理システム100における処理(位置信頼度の決定処理)について、図6、図7のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ説明する。
【0034】
なお、図6、図7の処理の前提として、ゲームを実行している各移動端末10では、周囲情報取得部12が、近距離通信装置95を介して検出端末の情報を一定の間隔で取得して、記憶部24に格納しているものとする。また、各移動端末10では、位置情報取得部18が、絶対位置取得装置93を介して移動端末10の絶対位置情報を一定の間隔で取得して、記憶部24に格納しているものとする。そして、送信データ生成部16は、記憶部24に格納されている情報から、図4(a)のような送信データを生成して、当該生成した送信データを所定タイミングでサーバ50に対して送信しているものとする。なお、図4(a)の送信データは、移動端末ごとに生成されており、各送信データには、移動端末を識別するための識別番号が振られているものとする。
【0035】
図6の処理では、まず、ステップS10において、端末位置情報取得部42が、所定時間が経過するまで待機する。そして、所定時間が経過した段階で、ステップS12に移行する。すなわち、図6では、ステップS12〜S16の処理を、所定時間間隔で実行するようになっている。
【0036】
ステップS12に移行すると、各移動端末10の各回信頼度算出処理が行われる。ここで、各回信頼度とは、ステップS12〜S16が1回行われたときに算出される信頼度を意味する。ステップS12では、図7のフローチャートに沿った処理が実行される。
【0037】
図7の処理では、まず、ステップS20において、端末位置情報取得部42が、1つの移動端末に着目し、当該移動端末のアップロード情報を取得する。ここでは、ステップS20で着目された移動端末が移動端末Zであったものとする。なお、アップロード情報とは、各移動端末10から記憶部38に記憶された送信データ(図4(a))を意味する。
【0038】
次いで、ステップS21では、第1の端末情報取得部44が、アップロード情報から検知端末の情報を取得する。図4(a)、図5(a)の場合であれば、第1の端末情報取得部44は、周囲情報の欄に記録されている移動端末の情報(ID)「a,b,c,e,f」を取得する。
【0039】
次いで、ステップS22では、第2の端末情報取得部46が、同時刻において検出範囲内に位置する端末(位置近傍端末)を検索する。ここで、検出範囲は、前述したように、図5(a)の破線で示すような近距離通信装置95の通信範囲を意味する。したがって、第2の端末情報取得部46は、着目している移動端末Zの位置を中心とした通信範囲を検出範囲として特定し、当該検出範囲内に同時刻において存在している移動端末を位置近傍端末として特定する。この場合、第2の端末情報取得部46は、各移動端末の送信データ(図4(a)参照)に基づいて位置近傍端末を特定する。図5(a)の場合、位置近傍端末は、a,b,c,m,n,o,pとなる。
【0040】
次いで、ステップS24では、位置信頼度決定部48が、検知端末(a,b,c,e,f)と位置近傍端末(a,b,c,m,n,o,p)とを照合する。
【0041】
次いで、ステップS26では、位置信頼度決定部48が、検知端末であるが位置近傍端末でない端末があるか否かを判断する。ここでの判断が肯定された場合には、ステップS28に移行する。一方、ここでの判断が否定された場合には、ステップS30に移行する。図5(a)の場合、破線円内において×で示される移動端末e,fがこれに該当する(図5(b)(図5(a)を纏めた表)参照)ので、ステップS26の判断は肯定されてステップS28に移行する。
【0042】
ステップS28に移行すると、位置信頼度決定部48は、検知端末であり位置近傍端末である端末(正常な端末)と、検知端末であるが位置近傍端末でない端末を位置詐称可能性端末リストに登録する。これらを登録するのは、移動端末Zから位置が遠いにもかかわらず検知端末となるということはありえないため、正常な端末と検知端末であるが位置近傍端末でない端末のいずれかは、位置詐称端末であると考えられるからである。この場合、図8(a)に示すような位置詐称可能性端末リストに、日時と、位置詐称可能性端末を入力する。位置詐称可能性端末の欄には、検知端末であり位置近傍端末である端末(正常な端末)のグループ(a,b,c)(図5(b)参照)と、検知端末であるが位置近傍端末でない端末e,f(図5(b)参照)が登録される。
【0043】
次いで、ステップS30では、位置信頼度決定部48が、検知端末でないが位置近傍端末である端末があるか否かを判断する。ここでの判断が否定された場合には、ステップS36に移行するが、肯定された場合には、ステップS32に移行する。図5(a)、図5(b)の場合、移動端末m,n,o,pが、検知端末でないが位置近傍端末である端末に該当するので、ステップS30の判断は肯定されて、ステップS32に移行する。
【0044】
ステップS32に移行した場合、位置信頼度決定部48は、検知端末でないが位置近傍端末である端末の個数を取得する。図5(a)、図5(b)の場合、位置信頼度決定部48は、端末の個数として「4」(m,n,o,p)を取得する。
【0045】
次いで、ステップS34では、位置信頼度決定部48は、各回信頼度を算出する。具体的には、次式(1)に基づいて、各回信頼度h’を算出する。なお、各回信頼度の初期値hは、例えば1(最大値)であるものとする。
h’=h−γ×(検知端末でなく位置近傍端末である端末の個数/検出範囲内総個数) …(1)
【0046】
ここで、γは定数であり、例えば1/3などの値とすることができる。一例として、h=1、γ=1/3と仮定すると、図5(a)、図5(b)の場合には、
h’=1−(1/3)×(4/7)=17/21≒0.81
となる。位置信頼度決定部48は、上記のようにして算出された各回信頼度h’を図8(b)に示す各回信頼度リストに登録する。また、位置信頼度決定部48は、各回信頼度リストに、正常な端末と判断されたグループに属する端末も登録する。なお、γの値は、例えば、情報処理システム100の管理者等が適宜設定することができるものとする。
【0047】
なお、ステップS30の判断が否定された場合には、上式(1)の算出処理を行わないため、各回信頼度はh(最大値)のまま維持される。
【0048】
上記ステップS30の判断が否定されてステップS36に移行した場合、あるいはステップS34を経てステップS36に移行した場合には、位置信頼度決定部48は、全移動端末に着目したか否かを判断する。ここでの判断が否定された場合には、ステップS20に戻る。そして、未だ着目していない端末に着目して、アップロード情報を取得(S20)した後は、ステップS21以降の処理が実行される。一方、ステップS36の判断が肯定された場合には、図7の全処理を終了し、図6のステップS14に移行する。なお、ステップS14に移行する段階では、図8(b)に示す各回信頼度リストが、移動端末ごとに作成(又は更新)されていることになる。
【0049】
図6のステップS14に移行すると、位置信頼度決定部48は、位置詐称可能性端末リストの端末の各回信頼度を更新する。具体的には、位置詐称可能性端末リストに記載されている移動端末については、その各回信頼度h’を、補正値αを用いて補正し、新たな各回信頼度h”を算出する。
h”=h’−α …(2)
【0050】
例えば、α=1/3であり、位置詐称可能性端末リストに移動端末Zが記載されていた場合には、新たな各回信頼度h”は、h”=0.81−(1/3)≒0.48となる(図8(c)参照)。一方、位置詐称可能性端末リストに移動端末Zが記載されていなかった場合には、各回信頼度はh’のまま維持される。なお、αの値は、例えば、情報処理システム100の管理者等が適宜設定することができるものとする。ただし、γとαは0より大きく1より小さい数とし、α+γは1を超えないものとする。
【0051】
次いで、ステップS16では、位置信頼度決定部48が、信頼度を算出したい期間の各回信頼度の平均値を位置情報信頼度Hとして算出する。具体的には次式(3)に基づいて、位置情報信頼度Hを算出する。
H=(算出したい期間の各回信頼度の和)/(算出したい期間の各回信頼度の個数) …(3)
【0052】
なお、信頼度を算出したい期間は、管理者等が適宜設定することができる。例えば、管理者は、現在の時刻から所定時間前までの期間等を設定することができる。なお、信頼度を算出したい期間分の信頼度の値が、未だ算出されていない場合には、ステップS16の処理を行わないこととしてもよい。この場合、図6の処理を繰り返し、信頼度を算出したい期間分の信頼度の値が蓄積された段階で、ステップS16の処理を行うこととしてもよい。ステップS16が行われた場合、位置信頼度決定部48は、図8(d)の位置情報信頼度リストに、位置情報信頼度Hを、移動端末のIDと位置情報信頼度Hを算出した期間とともに登録する。
【0053】
以上の処理が完了すると、ステップS10に戻る。そして、ステップS12〜S16が所定時間間隔で繰り返されることになる。
【0054】
以上のようにして、図8(d)の位置情報信頼度リストに登録された移動端末の位置情報信頼度Hは、情報処理システム100の管理者が適宜参照することができるものとする。この場合、管理者は、位置情報信頼度Hを位置情報詐称端末の指標値として用いることができる。また、管理者は、位置情報信頼度Hが低い端末について、各回信頼度リスト(図8(c))のグループ欄に登録されている端末の出現回数を調べることもできるものとする。この場合、管理者は、特定の端末の組み合わせの出現回数が特に多い場合には、それらの端末を、信頼度が低い端末群、複数で位置情報を詐称している端末群と判断することができる。
【0055】
以上詳細に説明したように、本実施形態によると、スマートフォンなど、不特定のユーザが追加・改変したアプリケーションプログラムやドライバを実行可能な移動端末で取得される位置情報を取得し(S20)、移動端末が周辺の検知端末から直接的に取得する検知端末の情報を取得し(S21)、移動端末の位置情報に基づいて、移動端末が検知端末の情報を取得可能な範囲(検出範囲)を求め、当該検出範囲内に存在する位置近傍端末の情報を取得し(S22)、検知端末の情報と位置近傍端末の情報との差異に基づいて、移動端末で取得される位置情報の各回信頼度を決定する(S24〜S34)。これにより、たとえ、移動端末で取得される位置情報が詐称されたとしても、検知端末(近距離通信装置95で情報が得られた端末)と位置近傍端末(検知端末となるべき端末)との間に矛盾が生じるので、この矛盾に基づいて位置情報の信頼度(各回信頼度)を決定することで、信頼度を精度よく決定することができる。したがって、位置情報の信頼度に基づいて位置情報を詐称する端末を発見することができるので、当該端末に対する警告等を行うことが可能となる。また、このような信頼度の決定、管理を実現することで、ユーザの位置詐称に対する抑止効果も期待できる。
【0056】
なお、特開2010−206702号公報には、位置情報を送信する携帯端末と無線基地局、署名サーバを含むシステムにおいて、位置情報の偽造を防止する方法が提案されている。この方法では、各無線基地局に、自局識別情報を追加した署名元データを作成するための特別な機能が必要となったり、携帯端末は、その無線基地局内に存在している必要がある。これに対し、本実施形態では、各無線基地局に特別な機能を設ける必要がなく、また、移動端末がどこに存在していても位置情報の信頼度を算出することができるという利点がある。
【0057】
また、本実施形態では、各回信頼度を算出する場合、位置近傍端末であるが検知端末でない端末の数に基づいて、位置情報の信頼度を減算することとしている。これにより、本来は近距離通信装置95を介して通信できるはずであるが実際には通信ができていない端末(図5(a)の端末m,n,o,p)の数に基づき、適切な信頼度を得ることができる。また、本実施形態では、本来は近距離通信装置95を介して通信できるはずの端末のうち、実際には通信ができていない端末の割合に基づく信頼度の算出を行っているので、適切な信頼度を得ることができる。
【0058】
また、本実施形態では、検知端末であるが位置近傍端末でない端末が存在する場合に、検知端末であるが位置近傍端末でない端末、及び検知端末であるとともに位置近傍端末である端末で取得される位置情報の信頼度を減算する。これにより、より適切な信頼度の算出が可能となる。
【0059】
なお、上記実施形態では、絶対位置取得装置93は、GPS衛星との通信結果から絶対位置を得ることとしたが、これに限られるものではない。絶対位置取得装置93は、ある無線電波の発信装置(無線LANアクセスポイントなど)から受信した無線電波の強度から絶対位置を得ることとしてもよい。
【0060】
なお、上記実施形態では、近距離通信装置95がBluetooth(登録商標)インタフェースである場合について説明したが、これに限らず、近距離通信装置95は無線LANインタフェースであってもよい。この場合、移動端末の周囲情報取得部12は、無線LANインタフェースを用いて、周辺の無線LANアクセスポイントの情報を取得する。すなわち、この場合には、周辺の無線LANアクセスポイントが、第1、第2の装置に相当することになる。また、近距離通信装置95として、Bluetooth(登録商標)インタフェースと無線LANインタフェースを併用してもよい。この場合、移動端末と無線LANアクセスポイントのそれぞれが、第1、第2の装置に相当することになる。
【0061】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。
【0062】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0063】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0064】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【0065】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) 不特定のユーザが追加・改変したアプリケーションプログラムやドライバを実行可能な端末の位置情報の信頼度を決定する位置情報信頼度決定プログラムであって、端末で取得される当該端末の位置情報を取得し、前記端末が周辺の第1の装置から直接的に取得する当該第1の装置の情報を取得し、前記端末の位置情報に基づいて、前記端末が前記第1の装置の情報を取得可能な範囲を求め、当該範囲内に存在する第2の装置の情報を取得し、前記第1の装置の情報と前記第2の装置の情報との差異に基づいて、前記端末で取得される位置情報の信頼度を決定する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする位置情報信頼度決定プログラム。
(付記2) 前記信頼度を決定する処理では、前記コンピュータに、前記第2の装置であるが前記第1の装置でない装置の数に基づいて、前記端末で取得される位置情報の信頼度を低める処理を実行させることを特徴とする付記1に記載の位置情報信頼度決定プログラム。
(付記3) 前記信頼度を決定する処理では、前記コンピュータに、前記第1の装置であるが前記第2の装置でない装置が存在する場合に、前記第1の装置であるが前記第2の装置でない装置、及び前記第1の装置であるとともに前記第2の装置である装置に該当する端末で取得される位置情報の信頼度を低める処理を実行させることを特徴とする付記1又は2に記載の位置情報信頼度決定プログラム。
(付記4) 不特定のユーザが追加・改変したアプリケーションプログラムやドライバを実行可能な端末の位置情報の信頼度を決定する位置情報信頼度決定装置であって、端末で取得される当該端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記端末が周辺の第1の装置から直接的に取得する当該第1の装置の情報を取得する第1の装置情報取得部と、前記端末の位置情報に基づいて、前記端末が前記第1の装置の情報を取得可能な範囲を求め、当該範囲内に存在する第2の装置の情報を取得する第2の装置情報取得部と、前記第1の装置情報取得部で取得された前記第1の装置の情報と前記第2の装置情報取得部で取得された前記第2の装置の情報との差異に基づいて、前記端末で取得される位置情報の信頼度を決定する決定部と、を備える位置情報信頼度決定装置。
(付記5) 前記決定部は、前記第2の装置であるが前記第1の装置でない装置の数に基づいて、前記端末で取得される位置情報の信頼度を低めることを特徴とする付記4に記載の位置情報信頼度決定装置。
(付記6) 前記決定部は、前記第1の装置であるが前記第2の装置でない装置が存在する場合に、前記第1の装置であるが前記第2の装置でない装置、及び前記第1の装置であるとともに前記第2の装置である装置に該当する端末で取得される位置情報の信頼度を低めることを特徴とする付記4又は5に記載の位置情報信頼度決定装置。
【符号の説明】
【0066】
10 移動端末(端末)
50 サーバ(位置情報信頼度決定装置)
42 端末位置情報取得部(位置情報取得部)
44 第1の端末情報取得部(第1の装置情報取得部)
46 第2の端末情報取得部(第2の装置情報取得部)
48 位置信頼度決定部(決定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不特定のユーザが追加・改変したアプリケーションプログラムやドライバを実行可能な端末の位置情報の信頼度を決定する位置情報信頼度決定プログラムであって、
端末で取得される当該端末の位置情報を取得し、
前記端末が周辺の第1の装置から直接的に取得する当該第1の装置の情報を取得し、
前記端末の位置情報に基づいて、前記端末が前記第1の装置の情報を取得可能な範囲を求め、当該範囲内に存在する第2の装置の情報を取得し、
前記第1の装置の情報と前記第2の装置の情報との差異に基づいて、前記端末で取得される位置情報の信頼度を決定する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする位置情報信頼度決定プログラム。
【請求項2】
前記信頼度を決定する処理では、前記コンピュータに、前記第2の装置であるが前記第1の装置でない装置の数に基づいて、前記端末で取得される位置情報の信頼度を低める処理を実行させることを特徴とする請求項1に記載の位置情報信頼度決定プログラム。
【請求項3】
前記信頼度を決定する処理では、前記コンピュータに、前記第1の装置であるが前記第2の装置でない装置が存在する場合に、前記第1の装置であるが前記第2の装置でない装置、及び前記第1の装置であるとともに前記第2の装置である装置に該当する端末で取得される位置情報の信頼度を低める処理を実行させることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置情報信頼度決定プログラム。
【請求項4】
不特定のユーザが追加・改変したアプリケーションプログラムやドライバを実行可能な端末の位置情報の信頼度を決定する位置情報信頼度決定装置であって、
端末で取得される当該端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記端末が周辺の第1の装置から直接的に取得する当該第1の装置の情報を取得する第1の装置情報取得部と、
前記端末の位置情報に基づいて、前記端末が前記第1の装置の情報を取得可能な範囲を求め、当該範囲内に存在する第2の装置の情報を取得する第2の装置情報取得部と、
前記第1の装置情報取得部で取得された前記第1の装置の情報と前記第2の装置情報取得部で取得された前記第2の装置の情報との差異に基づいて、前記端末で取得される位置情報の信頼度を決定する決定部と、を備える位置情報信頼度決定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−178715(P2012−178715A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40550(P2011−40550)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】