説明

位置情報検出システム

【課題】従来の環境の中で容易に移動局の位置情報の精度を向上させることが可能な位置情報検出システムを提供する。
【解決手段】移動局において、複数種の移動体無線通信システムが提供する位置情報の信頼度に応じた重み係数を重み係数記憶部102に記憶し、複数種の移動体無線通信システムの送信局から送信される位置情報を無線信号通信部101により受信し、無線信号通信部101が受信した位置情報の頻度の分布を捉え、それぞれの位置情報が属する移動体無線通信システム毎に、位置確率算出部103によりそれぞれの位置情報の頻度に対してそれぞれの重み係数を乗じて位置情報の補正頻度を算出し、位置情報判定部104が算出された位置情報の補正頻度に基づき位置情報の平均値を求めることで移動局の位置情報を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体無線通信の分野において、移動局の位置を検出する方式・装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やPHS(Personal Handyphone System)などの移動局の位置検出方法としては、その移動局の位置登録を行った基地局の無線ゾーンの範囲での位置検出や、GPS(Global Positioning System)機能を追加することによる位置検出を行っている。しかしながら、前者は基地局の無線ゾーンの範囲という比較的広い範囲での位置判定しかできず、また後者は携帯端末に追加する機能ということもあり、簡易なGPS機能しか搭載できなかった。そのため、より簡易に位置情報の精度を向上させるということが課題であった。
【0003】
この課題を解決するために、区域毎に位置識別情報を送信する電子マーカ装置を多数固定的に配置し、電子マーカ装置からの無線信号を受信した移動局が、自動的に位置識別情報を通信網を介してサーバ装置に通知する方法がある。ここで、サーバ装置は通知された位置識別情報により位置情報データベースを参照して移動局の位置情報を検出し、その位置情報を移動局に提供する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、複数の携帯電話送信局からの無線信号の受信レベルにより伝播距離を計算する重み付け計算方法を用いた位置検出装置があるが、無線信号の受信レベルの変動によって検出結果が大きな誤差を含んだ結果になる可能性があり、位置情報の精度としては十分なものとは言えなかった。特に基地局の直近を移動した場合には極端に無線信号の受信レベルが変動し、位置の誤検出が発生するという問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、位置情報により移動局の移動速度を算出し、あらかじめ設定されている移動速度の最大値を超えた場合には位置情報を補正したり、基地局の近傍を通過した場合には、他の基地局と比較して非常に大きな受信レベルになることより、この基地局からの受信信号に含まれる位置情報を基準位置とすることで精度向上を図ったりしている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−32535号公報
【特許文献2】特許第3558927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の方法において、区域毎に位置識別情報を送信する電子マーカ装置を多数固定的に配置する方法は、実現した場合には移動局の位置検出を高い精度で行うことができる可能性があるが、実際に新たな設備として電子マーカ装置を多数固定的に広く配置し維持することにはコスト面を含めて多くの困難な課題が予想され、実現できたとしてもサービス可能地域は限定的とならざるを得ない。
【0008】
また、移動局の移動速度を常にチェックしたり、基地局の近傍を通過した際に得た位置情報を用いたりして絶えず位置情報を補正する方法は、位置情報の精度向上に有効である。しかし、これら方式で補正が可能なのは、高速移動をしたと判断されたときや基地局の近傍を移動したときなど、移動局がある特定の状態にあるときに限られるため、十分な解決策とは言えなかった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、移動体無線通信の分野において、移動局が置かれた状態によらず、また新たな設備投資を求める必要もなく、従来の環境の中で容易に移動局の位置情報の精度を向上させることが可能な位置情報検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、携帯無線基地局、無線LAN等の近距離無線通信基地局、自局以外の移動局、GPS等複数種の移動体無線通信システムの送信局から送信される位置情報を含む信号を受信し、それらの位置情報の頻度に対してそれぞれの移動体無線通信システムに応じた重み係数を乗じて位置情報の頻度補正を行う統計的手法を用いることにより、検出する移動局の位置情報の精度を向上させるものである。
【0011】
そのために、本発明の位置情報検出システムは、前記複数種の移動体無線通信システムの送信局から送信される位置情報を含む信号を受信する無線信号通信部と、前記複数種の移動体無線通信システム毎の重み係数を記憶する重み係数記憶部と、前記無線信号通信部により得られた位置情報の頻度の分布を捉え、それぞれの位置情報が属する移動体無線通信システム毎に前記位置情報の頻度に対してそれぞれの重み係数を乗じて位置情報の補正頻度を算出する位置確率算出部と、前記位置確率算出部により算出された位置情報の補正頻度に基づき移動局の位置情報を判定する位置情報判定部と、を備える。
【0012】
さらに、本発明の位置情報検出システムは、前記位置情報判定部が判定する移動局の位置情報として、前記位置確率算出部により算出された位置情報の補正頻度の分布における位置情報の平均値を採用するものである。
【0013】
上記構成によれば、重み係数記憶部に記憶する重み係数をそれぞれの移動体無線通信システムから送信される位置情報の信頼度に応じた値とすることができ、それぞれの送信局から受信される位置情報の頻度が移動体無線通信システム毎の位置情報の信頼度に応じた重み係数を用いて補正されるため、それぞれの送信局から得られる位置情報に含まれる誤差が統計的に緩和され、位置検出精度を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明の位置情報検出システムは、前記重み係数記憶部が重み係数の複数のセットを記憶し、重み係数のデフォルト値を用いて前記位置情報判定部により判定された位置情報に従って重み係数のセット変更することができるものである。
【0015】
上記構成によれば、重み係数のデフォルト値を用いて暫定的に得られた位置情報に基づいて重み係数を変更することが可能となり、地域的な条件等に応じて最適な重み係数を選択すること可能となるため、さらに位置情報の精度を向上させることが可能になる。
【0016】
さらに、本発明の位置情報検出システムは、前記無線信号通信部により得られた位置情報の頻度があらかじめ設定した時間内に所定の数値に達したときに前記位置確率算出部が算出した位置情報の補正頻度を前記位置情報判定部に出力するものである。
【0017】
上記構成によれば、位置情報の頻度が一時に所定の度数に達したとき、もしくは一時に所定の度数に達しない場合はある一定の時間内に所定の度数に達したときに、位置情報の補正頻度を位置情報判定部に出力するようにすることができるため、移動経路をトレースすることが可能となる。
【0018】
さらに、本発明の位置情報検出システムは、移動局の位置情報を地図画面上の地点として表示する表示装置を有し、前記位置情報判定部は、前記位置確率算出部により算出された位置情報の補正頻度の分布に基づき、判定した移動局の位置情報の確度を決定し、前記表示装置に表示する地図画面上の地点の表示サイズを前記位置情報の確度に応じて変更するものである。
【0019】
上記構成によれば、地図画面上の位置情報地点の表示サイズが、位置情報の補正頻度の分布に基づき決定された位置情報の確度に応じた大きさとなるため、移動局の位置情報の精度を視覚的に確認することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動局が複数種の移動体無線通信システムの送信局から送信される位置情報を含む信号を受信し、それぞれの送信局から受信される位置情報の頻度が移動体無線通信システム毎の位置情報の信頼度に応じた重み係数を用いて補正されるため、受信号レベルの変動等による位置情報に含まれる誤差が統計的に緩和され、移動局の置かれた状態によらず位置検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る位置情報検出システムの構成を示すブロック図である。
【0022】
図1における位置情報検出システムは、多数の送信局からの信号を入力し、それぞれのシステムと通信を行なう無線信号通信部101と、各送信局から受信する位置情報に重み付けを行なうための重み係数を保持する重み係数記憶部102と、各送信局から受信する位置情報の確からしさを算出する位置確率算出部103と、最も確からしい位置情報を判定する位置情報判定部10とを備える。
【0023】
無線信号通信部101は、携帯無線基地局、無線LAN等の近距離無線通信基地局、自局以外の移動局、GPS等複数種の移動体無線通信システムの送信局から送信される位置情報を含む信号を受信する。
【0024】
重み係数記憶部102は、複数種の移動体無線通信システム毎に、それらに属する送信局から送信される位置情報の推定精度に比例した重み係数を記憶する。
【0025】
位置確率算出部103は、無線信号通信部101が各送信局から受信した位置情報の頻度分布を把握し、それぞれの位置情報が属する移動体無線通信システム毎に、それぞれの位置情報の頻度に対してそれぞれのシステムの重み係数を乗じて位置情報の補正頻度を算出する。これにより、それぞれの位置情報に対して移動体無線通信システム毎の位置情報の推定精度に応じた確率的な補正が行われる。
【0026】
位置情報判定部104は、位置確率算出部103が算出したそれぞれの位置情報の補正頻度の分布により平均位置を計算することで最も確からしい位置情報を判定する。これにより、複数種の移動体無線通信システムから得られた位置情報に含まれる誤差が統計的に緩和され、位置検出精度を向上させることができる。
【0027】
図2から図4は、位置情報判定部104により位置情報の判定を行う過程を具体的に説明する図である。
【0028】
図2は、4種類の送信局システムから20サンプルの信号を無線通信部101で受信し、それぞれの位置情報の頻度分布をヒストグラムに表現したものである。さらに、その位置情報の頻度分布により位置情報判定部104が計算した平均位置を仮判定位置として示している。各送信局からの位置情報をもとに移動局の位置を判定していることが分かる。
【0029】
図3は、位置確率算出部103により、図2に示したそれぞれの位置情報の頻度に重み係数記憶部102から得られた重み係数を乗じた結果である位置情報の補正頻度の分布をヒストグラムに表現したものである。さらに、その位置情報の補正頻度の分布により位置情報判定部104が計算した平均位置を補正された判定位置として示している。各送信局からの位置情報をもとに補正された位置を判定していることが分かる。
【0030】
また、本実施の形態において、重み係数記憶部102に重み係数の複数のセットを記憶させ、状況に応じて位置確率算出部103が適切な重み係数のセットを選択して位置情報の補正頻度の算出を行うことができる。
【0031】
図4は、図2に示した仮判定位置をもとに重み係数記憶部102から得られる重み係数のセットを変更し、新たな重み係数を用いて位置確率算出部103が算出した位置情報の補正頻度の分布をヒストグラムに表現したものである。さらに、その位置情報の補正頻度の分布により位置情報判定部104が計算した平均位置を最終的な判定位置として示している。各送信局からの情報をもとに新たに補正された位置を判定していることが分かる。
【0032】
このように、暫定的に得られた位置情報に基づいて重み係数を変更することにより、例えば、重み係数のデフォルト値を用いて判定された位置情報に従って重み係数のセット変更することができる。これにより、地域的な条件等に応じて最適な重み係数を選択すること可能となるため、さらに位置情報の精度を向上させることが可能になる。
【0033】
また、本実施の形態において、位置確率算出部103により算出された位置情報の補正頻度の分布に基づき、位置情報判定部104は判定した移動局の位置情報の確度を決定し、表示装置に移動局の位置情報を地図画面上の地点として表示する際に、表示する地点の大きさを決定された位置情報の確度に応じた大きさとすることができる。
【0034】
図5は、表示装置に表示した地図画面上に、本発明により得られた位置情報をマッピングしたものである。移動局の位置情報を明示的に確認することができる。
【0035】
図6は、表示装置に表示した地図画面上に本発明により得られた位置情報をマッピングする際に、得られた位置精度の確度が低い場合に表示する地点の面積を大きくすることで位置情報の確度を明示したものである。移動局の位置情報と併せて、その位置情報の精度を明示的に確認することができる。
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、それぞれの移動体無線通信システムに依存する位置算出精度の誤差を統計的に緩和することが可能になり、より精度の高い移動局の位置検出を実現することができる。
【0037】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の位置情報検出システムによれば、移動局が複数種の移動体無線通信システムの送信局から送信される位置情報を含む信号を受信し、それぞれの送信局から受信される位置情報の頻度が移動体無線通信システム毎の位置情報の信頼度に応じた重み係数を用いて補正されるため、受信号レベルの変動等による位置情報に含まれる誤差が統計的に緩和され、移動局の置かれた状態によらず位置検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態に係る位置情報検出システムの構成を示すブロック図。
【図2】複数種の移動体無線通信システムから受信した位置情報の頻度分布例を示すヒストグラム。
【図3】複数種の移動体無線通信システムから受信した位置情報の頻度に重み係数を適用して算出した位置情報の補正頻度分布例を示すヒストグラム。
【図4】複数種の移動体無線通信システムから受信した位置情報の頻度に変更された重み係数セットを適用して算出した位置情報の補正頻度分布例を示すヒストグラム。
【図5】表示装置に表示した地図画面上に本発明により判定された位置情報をマッピングした例を示す図。
【図6】表示装置に表示した地図画面上に本発明により判定された位置情報をマッピングする際に、表示する地点の面積を位置精度の確度応じた大きさでマッピングした例を示す図。
【符号の説明】
【0040】
101 無線信号通信部
102 重み係数記憶部
103 位置確率算出部
104 位置情報判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体無線通信により移動局の位置を検出する位置情報検出システムであって、
複数種の移動体無線通信システムの送信局から送信される位置情報を含む信号を受信する無線信号通信部と、
前記複数種の移動体無線通信システム毎の重み係数を記憶する重み係数記憶部と、
前記無線信号通信部により得られた位置情報の頻度の分布を捉え、それぞれの位置情報が属する移動体無線通信システム毎に前記位置情報の頻度に対してそれぞれの重み係数を乗じて位置情報の補正頻度を算出する位置確率算出部と、
前記位置確率算出部により算出された位置情報の補正頻度に基づき移動局の位置情報を判定する位置情報判定部と、
を備える位置情報検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の位置情報検出システムであって、
前記位置情報判定部が判定する移動局の位置情報は、前記位置確率算出部により算出された位置情報の補正頻度の分布における位置情報の平均値である、位置情報検出システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の位置情報検出システムであって、
前記重み係数記憶部は、重み係数の複数のセットを記憶し、重み係数のデフォルト値を用いて前記位置情報判定部により判定された位置情報に従って重み係数のセット変更することができる、位置情報検出システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の位置情報検出システムであって、
前記無線信号通信部により得られた位置情報の頻度があらかじめ設定した時間内に所定の数値に達したときに、前記位置確率算出部は算出した位置情報の補正頻度を前記位置情報判定部に出力する、位置情報検出システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の位置情報検出システムであって、
移動局の位置情報を地図画面上の地点として表示する表示装置を有し、
前記位置情報判定部は、前記位置確率算出部により算出された位置情報の補正頻度の分布に基づき、判定した移動局の位置情報の確度を決定し、前記表示装置に表示する地図画面上の地点の表示サイズを前記位置情報の確度に応じて変更する、位置情報検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−272742(P2009−272742A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119679(P2008−119679)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】