説明

位置決めナット

【課題】位置決め対象部材に開口したボルト貫通孔を貫通してその背後の閉じた空間から突出するボルトに該背後側の閉じた空間内で螺合して該位置決め対象部材を該ボルトの軸方向のいずれかの位置に位置決めする位置決めナットであって、該位置決め対象部材の表側から容易に操作可能である位置決めナットを提供すること。
【解決手段】ナット本体1aと、その端面から突出する回転被操作部1bとで構成し、操作手段2aを一端に配した内周に雌ねじを有しない操作用ナット状部材2と組み合わせる。回転被操作部1bは、ナット本体1aの端部に配した筒状受動基部1b1と、その先端から延長した半割受動係止部1b2とで構成する。操作用ナット状部材2は、その一端に操作手段2aを有し、操作手段2aは、操作用ナット状部材2の端部に配した筒状駆動基部2a1と、これから突出させた半割駆動係止部2a2とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め対象部材に開口したボルト貫通孔を貫通してその背後の閉じた空間から突出するボルトに該背後側の閉じた空間内で螺合して該位置決め対象部材を該ボルトの軸方向のいずれかの位置に位置決めする位置決めナットであって、該位置決め対象部材の表側から操作可能な位置決めナットに関する。
【背景技術】
【0002】
位置決め対象部材のボルト貫通孔を貫通するボルトに当該の位置決め対象部材を位置決めする場合で、位置決めナットが該位置決め対象部材の背後に位置し、かつその背後側が何らかの障害により該位置決めナットに操作を加えることができなくなっている場合、即ち、実質的に背後側が閉じた空間となっているような場合に、該位置決め対象部材の正面側から操作可能に構成した位置決めナットは提供されていない。提案されてもいないと思われる。
【0003】
特許文献1は、自動販売機等の高さ調整脚に関するものであるが、これは、鍔部とこれに立設固定した雄ねじと、該雄ねじの上端に立設固定回り止めロッドで脚本体を構成し、該脚本体の雄ねじに雌ねじを螺合し、高さ調整対象の自動販売機等の底板を該雌ねじの上端に載置し、同時にその中央の回り止めロッドを該底板に開口した回り止め穴に昇降自在かつ回転不能に貫通させたものである。
【0004】
従ってこの特許文献1の高さ調節脚によれば、前記雌ねじを回転操作すれば、その回転方向に従って該雌ねじを昇降させることができる。それ故、その上に載っている底板を昇降調節することができる。しかしこの特許文献1の高さ調節脚の構成では、前記自動販売機等の底板の下方が何らかの事情で閉じた空間となっている場合には、雌ねじの回転操作はできないので、高さ調整はできないことになる。
【0005】
特許文献2は、床材の支持脚に関するものであるが、これは、基板に立設したボルト体にナット部を螺合し、該ナット部上に円盤状の支持パネルを固設し、該支持パネル上に相互に回転自在に床パネル受けを配したものである。
【0006】
従って前記支持パネルを回転させると、同時にナット部が回転し、その回転方向に従ってナット部が昇降し、これに伴って昇降する支持パネルを介して床パネル受けも昇降することになる。なお、床パネル受けは、支持パネルに相互に回転自在であるように配してあるため、以上の支持パネルの回転によっても静止状態を維持できる。
【0007】
この特許文献2の床材の支持脚も、以上のように、床パネル受けの下方の支持パネル及びナット部を回転させるものであり、床パネルの下方が何らかの事情で閉じられた場合には、その昇降調節操作を行うことはできない。
【0008】
特許文献3は、座付アジャスター機構に関するものであり、これは、中央に雌ねじを備えた板状の座と、該座の雌ねじに螺合貫通したアジャスターねじであって、同時に該座の直上にロックナットを螺合し、上端に摘みを備え、かつ下端にパッドを備えたアジャスターねじとで構成したものである。
【0009】
これは、昇降調節が必要な装置の底部に穴を開け、該穴からパッド及びアジャスターねじの座より下方の部分を下方に突き出した上で、該座を該穴に固設し、前記摘みを回転操作することにより、アジャスターねじの下方への突き出し長さを調節し、対象装置の高さ調節を行うものである。装置の上方で高さ調節を行うものであるが、これはアジャスターねじが動かすことの可能なものであり、固定されたボルトのいずれかの位置に位置決め対象を位置決めするものではない。
【0010】
【特許文献1】特開2003−187312号公報
【特許文献2】特開平05−10020号公報
【特許文献3】特開2000−146085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、位置決め対象部材に開口したボルト貫通孔を貫通してその背後の閉じた空間から突出するボルトに該背後側の閉じた空間内で螺合して該位置決め対象部材を該ボルトの軸方向のいずれかの位置に位置決めする位置決めナットであって、該位置決め対象部材の表側から容易に操作可能である位置決めナットを提供することを解決の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1は、閉じた空間内のいずれかの部位に固定され、位置決め対象である対象部材に開口したボルト貫通孔を貫通して該閉じた空間から突出するボルトに該閉じた空間内で螺合して、該対象部材を該ボルトの軸方向のいずれかの位置に位置決めする位置決めナットであって、
前記ボルトに螺合可能なナット本体と、該ナット本体の前記対象部材の内面に接する面に構成した、前記閉じた空間外から該ボルトと前記ボルト貫通孔の周面との隙間を通じて装入する操作手段で回転操作可能な回転被操作部とで構成し、
かつ前記操作手段を備えた、前記ボルトに摺動外装可能な雌ねじを備えない操作用ナット状部材と組み合わせてなる位置決めナットである。
【0013】
本発明の2は、本発明の1の位置決めナットに於いて、
前記回転被操作部を、
前記ナット本体の端部からその雌ねじ部に沿って筒状に延長した、前記対象部材のボルト貫通孔に緩やかに装入可能な筒状受動基部と、
該筒状受動基部から更に周方向180度の角度幅分だけ延長した半割受動係止部とで構成し、
前記操作手段を、
前記操作用ナット状部材の端部からその内周に沿って筒状に延長した筒状駆動基部と、
該筒状駆動基部から更に周方向180度の角度幅分だけ延長した半割駆動係止部とで構成したものである。
【0014】
本発明の3は、本発明の1の位置決めナットに於いて、
前記回転被操作部を、
前記ナット本体の端部からその雌ねじ部に沿って筒状に延長した筒状受動基部と、
該筒状受動基部から更に各々周方向90度の角度幅で相互に周方向180度の中心間角度間隔で延長した二つの4分割受動係止部とで構成し、
前記操作手段を、
前記操作用ナット状部材の端部からその内周に沿って筒状に延長した筒状駆動基部と、
該筒状駆動基部から更に各々周方向90度の角度幅で相互に周方向180度の中心間角度間隔で延長した二つの4分割駆動係止部とで構成したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1の位置決めナットによれば、位置決め対象部材の背後でボルトに螺合している位置決めナットを、操作用ナット状部材で該位置決め対象部材の表側から回転操作してそのボルト上を自由に移動させ、これを通じて容易に位置決め対象部材の位置決めを行うことができる。
【0016】
操作用ナット状部材は、これを、位置決め対象部材の表側で、前記ボルトに外装し、かつ位置決めナット側に移動させ、その操作手段を前記ボルト貫通孔を通じて該位置決めナットの回転被操作部に係止させる。その後、該操作用ナット状部材をソケットレンチ等の手段を用いて所望の回転方向に回転させることにより、該位置決めナットを回転させ、ボルト上をその回転方向に従った方向に移動させ、これに伴って前記位置決め対象部材の位置決めを行うことができる。前記したように、容易に位置決め対象部材の表側で位置決めナットを自由に操作することが可能であり、その背後側で位置決めナットを操作できない場合であっても問題がない。
【0017】
なお、ここで、閉じた空間とは、位置決めナットが文字通り完全に閉じた空間内にある場合のみを意味しているわけではなく、直接にその空間内で位置決めナットの操作をすることができないような場合、そのような空間を閉じた空間と称している。
【0018】
本発明の2の位置決めナットによれば、位置決め対象部材の背後でボルトに螺合している位置決めナットで該位置決め対象部材の位置決めを行う場合は、以下のように容易かつ確実にそれを行うことが可能である。
【0019】
位置決めナットを、以上のように、位置決め対象部材の背後に配した場合、その回転被操作部である筒状受動基部及び半割受動係止部を、前記ボルトを貫通させたボルト貫通孔内に進入状態にしておくものとする。他方、操作用ナット状部材を該位置決め対象部材の表側で該ボルトに外装させ、更にこれを該位置決めナット側に移動させ、その操作手段である筒状駆動基部及び半割駆動係止部を該ボルト貫通孔に進入させる。
【0020】
このとき、前記回転被操作部と操作手段との周方向の角度が対応する関係になっている場合は相互が直ちに係止することになるが、なかなかそのように対応する関係になっていることはないので、該操作用ナット状部材を位置決めナット側に押しながら若干回転操作すれば、対応する関係になった瞬間に該操作用ナット状部材は進行し、位置決めナットの回転被操作部の半割受動係止部と操作用ナット状部材の操作手段の半割駆動係止部との内側面相互が当接し、両者は係止状態となる。
【0021】
この後、操作用ナット状部材を回転操作すれば、操作手段及び回転被操作部を介して、位置決めナットは対応する回転方向に回転し、ボルト上を当該回転に対応する方向に移動することになる。こうして位置決めナットを所望の方向に自在に動かすことが可能であり、これを通じて位置決め対象部材を自在に位置決めすることができる。しかもこれらの構成は簡明であり、容易に製作可能な利点もある。
【0022】
本発明の3の位置決めナットによれば、位置決め対象部材の背後でボルトに螺合している位置決めナットで該位置決め対象部材の位置決めを行う場合は、本発明の2の位置決めナットと同様に、以下のように容易かつ確実にそれを行うことが可能である。
【0023】
位置決めナットを、以上のように、位置決め対象部材の背後に配した場合、その回転被操作部である筒状受動基部及び4分割受動係止部を、前記ボルトを貫通させたボルト貫通孔内に進入状態にしておくものとする。他方、操作用ナット状部材を該位置決め対象部材の表側で該ボルトに外装させ、更にこれを該位置決めナット側に移動させ、その操作手段である筒状駆動基部及び4分割駆動係止部を該ボルト貫通孔に進入させる。
【0024】
このとき、前記回転被操作部と操作手段との周方向の角度が対応する関係になっていれば相互が直ちに係止することになるが、多くの場合はそのような対応関係になっていないので、該操作用ナット状部材を位置決めナット側に押しながら若干回転操作すると、回転中に対応する関係になった瞬間に該操作用ナット状部材は進行し、位置決めナットの回転被操作部の4分割受動係止部と操作用ナット状部材の操作手段の4分割駆動係止部との内側面相互が当接し合い、両者は係止状態となる。
【0025】
この後、操作用ナット状部材を回転操作すれば、操作手段及び回転被操作部を介して、位置決めナットが対応する回転方向に回転し、ボルト上を当該回転に対応する方向に移動することになる。こうして位置決めナットを所望の方向に自在に移動させることが可能であり、これを通じて位置決め対象部材を自在に移動させ所望の位置に位置決めすることができることになる。しかもこれらの構成は簡明であり、容易に製作可能な利点も有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
この実施例の位置決めナット1は、図1(a)〜(f)に示すように、基本的に、ナット本体1aと、該ナット本体1aの端面に突出させた回転被操作部1bとで構成し、操作手段2aを一端から突出させた内周に雌ねじを有しない操作用ナット状部材2と組み合わせてなるものである。
【0028】
前記ナット本体1aは、対象のボルトbに螺合可能な雌ねじ部fsをその内周に備えたものとし、前記回転被操作部1bを備えた端面を位置決め対象部材Bに接する側の面として用いる。
【0029】
前記回転被操作部1bは、図1(d)〜(f)に示すように、前記ナット本体1aの端部からその雌ねじ部fsに沿って筒状に延長した筒状受動基部1b1と、該筒状受動基部1b1の先端から更に延長した半割受動係止部1b2とで構成する。該筒状受動基部1b1は、その外径を前記位置決め対象部材Bのボルト貫通孔BHに緩やかに装入可能なものに設定する。また該半割受動係止部1b2は、その周方向の幅を180度の角度幅となるように設定する。
【0030】
前記操作用ナット状部材2は、図1(a)〜(c)に示し、前記したように、その一端から操作手段2aを突出させたものであり、該操作手段2aは、同図に示すように、該操作用ナット状部材2の端部からその内周に沿って筒状に延長した筒状駆動基部2a1と、該筒状駆動基部2a1から更に延長した半割駆動係止部2a2とで構成したものである。該筒状駆動基部2a1は、前記位置決めナット1の筒状受動基部1b1のそれと全く同様に、その外径を前記位置決め対象部材Bのボルト貫通孔BHに緩やかに装入可能なものに設定する。また該半割駆動係止部2a2は、これも前記位置決めナット1の半割受動係止部1b2と全く同様にその周方向の幅を180度の角度幅となるように設定する。
【0031】
なお、以上の位置決めナット1及び操作用ナット状部材2は、それぞれその全体を金属で一体に構成する。
【0032】
以上の実施例の位置決めナット1及び操作用ナット状部材2を用いて、図2に示すように、周側部から下側(背後側)に向かって側板を垂下させた態様の位置決め対象部材Bの高さ方向の位置決めを行う例を説明する。
【0033】
直立するボルトbは下部で固定されており、前記位置決めナット1は、このボルトbに予め回転被操作部1bを上にした状態で螺合しておき、その後に、位置決め対象部材Bを該ボルトbにセットする。該位置決め対象部材Bは、予め定まっている取り付け方に従い、図2(a)に示すように、側板の下向き状態で、その中央のボルト貫通孔BHにボルトbを貫通させてセットする。このとき、該位置決め対象部材Bのボルト貫通孔BHの内周面と該ボルトbとの間には、位置決めナット1の回転被操作部1bを進入状態にさせる。こうして該位置決め対象部材Bの下面は位置決めナット1の上面に当接する状態となる。
【0034】
この図2(a)に示す状態で、位置決めナット1を回転操作し、これを昇降調節すれば、位置決め対象物Bを昇降調節できることは明らかであるが、該位置決め対象物Bは、その周囲から側板を垂下させており、容易にその内部の位置決めナット1を回転操作することはできない。即ち、該位置決めナット1は前記した意味で閉じた空間内に位置している。
【0035】
そこで、図2(a)に示すように、前記操作用ナット状部材2を、その操作手段2aを下向きにした状態で前記ボルトbにその上端から外装し、図2(b)に示すように、下降させる。その操作手段2aをボルト貫通孔BHに上方から挿入し、これを位置決めナット1の回転被操作部1bに係止させる。多くの場合は、単に操作手段2aをボルト貫通孔BH内に下降させただけでは、両者は係止状態にならないので、操作用ナット状部材2を若干回転操作する。操作手段2aと回転被操作部1bとが該回転の過程で相互に対応する関係になると、同図に示すように、その瞬間に操作用ナット状部材2の操作手段2aが下降し、その半割駆動係止部2a2と位置決めナット1の回転被操作部1bの半割受動係止部1b2との内側面相互が当接するに至り、両者は係止状態となる。
【0036】
この後、同図に示すように、ソケットレンチsw等を用いて、操作用ナット状部材2を回転操作すれば、操作手段2a及び回転被操作部1bを介して、位置決めナット1は対応する回転方向に回転し、ボルトb上を当該回転に対応する方向に移動することになる。こうして位置決めナット1を所望の方向に自在に動かすことが可能であり、これを通じて位置決め対象部材Bを自在に位置決めすることができる。この例では、矢印a1に示すように、上方から見て左回りに回転させたので、図2(b)に示すように、位置決めナット1は上昇し、これに伴って位置決め対象部材Bも上昇させられ、位置決めされることになる。
【0037】
この後、位置決めナット1の上端面に載った状態の位置決め対象部材Bを、単に載った状態による位置決め以上に固定する必要がある場合は、場合により、図2(c)に示すように、操作用ナット状部材2をセットした状態のまま、その上からボルトbに締付ナット3を螺合し、かつ矢印a2に示すように回転して締め付けることにより、該操作用ナット状部材2を介して、位置決めナット1と該締付ナット3とで、該位置決め対象部材Bを位置決め固定する。
【0038】
これは、図2(c)に示すように、操作用ナット状部材2の下面が、その操作手段2aと位置決めナット1の回転被操作部1bとの係止状態で、位置決め対象部材Bの上面に当接状態にある場合に適用する。
【0039】
他の場合は、図2(d)に示すように、操作用ナット状部材2を取り除いた上で、締付ナット3をボルトbに螺合し、かつ矢印a3に示すように回転操作して、位置決めナット1と該締付ナット3とで直接に位置決め対象部材Bを締付固定する。
【0040】
これは、図2(d)から理解できるように、操作用ナット状部材2の下面が、その操作手段2aと位置決めナット1の回転被操作部1bとの係止状態で、位置決め対象部材Bの上面に当接状態にあるか否かに拘わらず適用できる。
なお、図2中、wはワッシャーである。
【0041】
以上のようにこの実施例の位置決めナット1によれば、これが閉じた空間に位置してその空間内で直接に操作できない場合であっても、その外側から容易に位置決め操作が可能である利点を有し、しかもその構成も簡明であり、容易に製作可能な利点もある。
【0042】
次に他の実施例について略述する。
他の実施例の位置決めナット11は、図3(a)〜(f)に示すように、基本的に、ナット本体11aと、該ナット本体11aの端面に突出させた回転被操作部11bとで構成し、操作手段12aを一端から突出させた内周に雌ねじを有しない操作用ナット状部材12と組み合わせてなるものである。
【0043】
前記ナット本体11aは、対象のボルトに螺合可能な雌ねじ部FSをその内周に備えたものとし、前記回転被操作部11bを備えた端面を位置決め対象部材に接する側の面として用いる。
【0044】
前記回転被操作部11bは、図3(d)〜(f)に示すように、前記ナット本体11aの端部からその雌ねじ部FSに沿って筒状に延長した筒状受動基部11b1と、該筒状受動基部11b1の先端から更に各々周方向90度の角度幅で相互に周方向180度の中心間角度間隔で延長した二つの4分割受動係止部11b2、11b2とで構成する。該筒状受動基部11b1は、その外径を前記位置決め対象部材のボルト貫通孔に緩やかに装入可能なものに設定する。
【0045】
前記操作用ナット状部材12は、図3(a)〜(c)に示し、前記したように、その一端から操作手段12aを突出させたものであり、該操作手段12aは、同図に示すように、該操作用ナット状部材12の端部からその内周に沿って筒状に延長した筒状駆動基部12a1と、該筒状駆動基部12a1から更に各々周方向90度の角度幅で相互に周方向180度の中心間角度間隔で延長した二つの4分割駆動係止部とで構成したものである。該筒状駆動基部12a1は、前記位置決めナット11の筒状受動基部11b1のそれと全く同様に、その外径を前記位置決め対象部材のボルト貫通孔に緩やかに装入可能なものに設定することとする。
【0046】
なお、以上の位置決めナット11及び操作用ナット状部材12は、いずれもその全体を金属で一体に構成する。
【0047】
従ってこの他の実施例の位置決めナット11によれば、位置決め対象部材の背後でボルトに螺合している位置決めナット11で該位置決め対象部材の位置決めを行う場合は、前記実施例の位置決めナット1と同様に容易かつ確実にそれを行うことが可能である。
【0048】
位置決めナット11を、前記実施例の位置決めナット1と同様に、位置決め対象部材の背後に配した場合、その回転被操作部11bである筒状受動基部11b1及び4分割受動係止部11b2、11b2を、前記ボルトを貫通させたボルト貫通孔内に進入状態にしておくものとする。他方、操作用ナット状部材12を該位置決め対象部材の表側で該ボルトに外装させ、更にこれを該位置決めナット11側に移動させ、その操作手段12aである筒状駆動基部12a1及び4分割駆動係止部12a2、12a2を該ボルト貫通孔に進入させる。
【0049】
このとき、前記回転被操作部11bと操作手段12aとの周方向の角度が対応する関係になっていれば相互が直ちに係止することになるが、多くの場合はそのような対応関係になっていないので、該操作用ナット状部材12を位置決めナット11側に押しながら、或いは自重による荷重をかけながら若干回転操作すると、回転中に対応する関係になった瞬間に該操作用ナット状部材12は進行し又は下降し、図4(a)、(b)に示すように、位置決めナット11の回転被操作部11bの二つの4分割受動係止部11b2、11b2と操作用ナット状部材12の操作手段12aの二つの4分割駆動係止部12a2、12a2との内側面相互が当接し合い、両者は係止状態となる。
【0050】
従って、この後、操作用ナット状部材12を回転操作すれば、操作手段12a2及び回転被操作部11bを介して、位置決めナット11が対応する回転方向に回転し、ボルト上を当該回転に対応する方向に移動することになる。こうして位置決めナット11を所望の方向に自在に移動させることが可能であり、これを通じて位置決め対象部材を自在に移動させ所望の位置に位置決めすることができることになる。しかもこれらの構成は簡明であり、容易に製作可能な利点も有している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)は実施例の操作用ナット状部材の側面図、(b)は断面図、(c)は正面図、(d)は実施例の位置決めナットの側面図、(e)は断面図、(f)は正面図。
【図2】実施例の位置決めナットを用いて位置決め対象部材の位置決めを行う過程を示した説明図で、(a)は位置決めナットで支持される位置決め対象部材の上方からボルトに操作用ナット状部材を外装しようとしている状態を示す断面説明図、(b)はボルトに外装し、その操作手段が位置決めナットの回転被操作部と係止状態となった操作用ナット状部材を回転操作して、位置決めナットを上昇移動させた状態を示す断面説明図、(c)は位置決めナットによる位置決め対象部材の位置決め状態を、操作用ナット状部材を介在させた状態で、締付ナットを締め付けて固定した状態を示す断面説明図、(d)は位置決めナットによる位置決め対象部材の位置決め状態を、操作用ナット状部材を取り外した上で、締付ナットを締め付けて固定した状態を示す断面説明図。
【図3】(a)は他の実施例の操作用ナット状部材の側面図、(b)は断面図、(c)は正面図、(d)は他の実施例の位置決めナットの側面図、(e)は断面図、(f)は正面図。
【図4】(a)は他の実施例の操作用ナット状部材の操作手段と他の実施例の位置決めナットの回転被操作部とを係止させた状態の側面図、(b)は他の実施例の操作用ナット状部材の操作手段と他の実施例の位置決めナットの回転被操作部とを係止させた状態の断面図。
【符号の説明】
【0052】
1 位置決めナット
1a ナット本体
1b 回転被操作部
1b1 筒状受動基部
1b2 半割受動係止部
2 操作用ナット状部材
2a 操作手段
2a1 筒状駆動基部
2a2 半割駆動係止部
3 締付ナット
11 位置決めナット
11a ナット本体
11b 回転被操作部
11b1 筒状受動基部
11b2 4分割受動係止部
12 操作用ナット状部材
12a 操作手段
12a1 筒状駆動基部
12a2 4分割駆動係止部
a1、a2、a3 矢印
b ボルト
fs 雌ねじ部
sw ソケットレンチ
w ワッシャー
B 位置決め対象部材
BH ボルト貫通孔
FS 雌ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じた空間内のいずれかの部位に固定され、位置決め対象である対象部材に開口したボルト貫通孔を貫通して該閉じた空間から突出するボルトに該閉じた空間内で螺合して、該対象部材を該ボルトの軸方向のいずれかの位置に位置決めする位置決めナットであって、
前記ボルトに螺合可能なナット本体と、該ナット本体の前記対象部材の内面に接する面に構成した、前記閉じた空間外から該ボルトと前記ボルト貫通孔の周面との隙間を通じて装入する操作手段で回転操作可能な回転被操作部とで構成し、
かつ前記操作手段を備えた、前記ボルトに摺動外装可能な雌ねじを備えない操作用ナット状部材と組み合わせてなる位置決めナット。
【請求項2】
前記回転被操作部を、
前記ナット本体の端部からその雌ねじ部に沿って筒状に延長した、前記対象部材のボルト貫通孔に緩やかに装入可能な筒状受動基部と、
該筒状受動基部から更に周方向180度の角度幅分だけ延長した半割受動係止部とで構成し、
前記操作手段を、
前記操作用ナット状部材の端部からその内周に沿って筒状に延長した筒状駆動基部と、
該筒状駆動基部から更に周方向180度の角度幅分だけ延長した半割駆動係止部とで構成した請求項1の位置決めナット。
【請求項3】
前記回転被操作部を、
前記ナット本体の端部からその雌ねじ部に沿って筒状に延長した筒状受動基部と、
該筒状受動基部から更に各々周方向90度の角度幅で相互に周方向180度の中心間角度間隔で延長した二つの4分割受動係止部とで構成し、
前記操作手段を、
前記操作用ナット状部材の端部からその内周に沿って筒状に延長した筒状駆動基部と、
該筒状駆動基部から更に各々周方向90度の角度幅で相互に周方向180度の中心間角度間隔で延長した二つの4分割駆動係止部とで構成した請求項1の位置決めナット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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