説明

位置決め固定装置

【目的】本考案は、工作機械の本体上にワークを高精度に位置決め固定する作業の作業性を改善し、短時間で正確なワークの位置決め固定作業を行なうことを最も主要な特徴とする。
【構成】ベースプレート21に固定された第1のワーク保持体25および第2のワーク保持体39に位置決め基準面26a,40aを備えたワーク保持部26,40を形成し、第1、第2のワーク保持体25,39にそれぞれワーク2のクランプ体35,47を装着し、ワーク2の基準面2aを位置決め基準面26a,40aに当接させた状態でワーク2をワーク保持部26,40にクランプすることにより、ワーク2を所定の位置に位置決め固定する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は例えば工作機械の本体に位置決め対象のワークを位置決め固定する位置決め固定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、例えばプレス金型のカム型等のワークを形削り加工する場合には工作機械の本体にワークを高精度に位置決めして固定する必要がある。図7は工作機械本体のマシンテーブル1にワーク2を位置決めして固定する従来の位置決め固定装置の概略構成を示すものである。
【0003】
図7中で、3は所定の加工精度で成形されたカム型等のワーク2の本体である。このワーク本体3の両端にはフランジ部4,4が形成されている。さらに、このワーク本体3の一側部には凹陥部5が形成されており、この凹陥部5に形削り加工の加工対象となる取付け部材6が取付けられている。なお、6a,6bはこの取付け部材6の形削り加工面である。
また、マシンテーブル1には略T形の締付溝7が形成されており、この締付溝7を利用して複数のクランプ工具8…が装着されている。
【0004】
このクランプ工具8には長穴状のガイド孔9が形成されたクランプ体10が設けられている。このクランプ体10の一端部には高さ調整用の脚部11が固定されている。そして、このクランプ体10の他端部はワーク本体3のフランジ部4上に乗せられている。
【0005】
さらに、クランプ体10のガイド孔9内には固定ボルト12の先端部が挿入されている。この固定ボルト12の基端部はマシンテーブル1の締付溝7内にスライド可能に挿入された台座に固定されている。そして、この固定ボルト12の先端部に螺着される固定ナット13の螺進動作にともないクランプ体10によってワーク本体3のフランジ部4がマシンテーブル1側に圧接固定されるようになっている。
【0006】
そして、マシンテーブル1上にワーク2を高精度に位置決め固定する作業時には複数のクランプ工具8…の固定ナット13を締め付ける前に、ワーク本体3の凹陥部5における取付け部材6の取付け面5aにダイヤルゲージ14を当て、この状態で、ダイヤルゲージ14の表示を目視しながらマシンテーブル1を図中矢印方向に移動し、ダイヤルゲージ14の表示の変動をなくすようにワーク本体3の取付け位置を微調整することにより、ワーク本体3の取付け面5aの平行を出す芯出し操作が行なわれる。そして、ワーク本体3の取付け位置の微調整が終了した時点で、複数のクランプ工具8…の固定ナット13がそれぞれ締め付け固定されるようになっている。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
上記従来構成のものにあってはマシンテーブル1上にワーク2を高精度に位置決め固定する作業時にダイヤルゲージ14の表示を目視しながらマシンテーブル1を図中矢印方向に移動し、ダイヤルゲージ14の表示の変動をなくすようにワーク本体3の取付け位置を微調整する面倒な作業が必要となっているので、マシンテーブル1上にワーク2を高精度に位置決め固定する作業の作業性が悪く、その作業時間が長くなる問題があった。
【0008】
さらに、ワーク2の位置決め固定に使用するクランプ工具8…の数が多く、それぞれ独立に設けられているので、各クランプ工具8をそれぞれ所定の位置にセットする作業が面倒なものとなり、ワーク2の位置決め固定作業の作業性の向上を図る上で問題があった。
【0009】
この考案は上記事情に着目してなされたもので、工作機械の本体上にワークを高精度に位置決め固定する作業の作業性を改善し、短時間で正確なワークの位置決め固定作業を行なうことができる位置決め固定装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この考案は工作機械の本体に着脱可能に装着されるベースプレートと、このベースプレートに固定された第1のワーク保持体と、前記ベースプレートに沿って前記第1の保持体と接離する方向に移動可能に支持された第2のワーク保持体と、前記第1、第2のワーク保持体に形成され、前記第2のワーク保持体の移動方向に沿う位置決め基準面を備えたワーク保持部と、前記第1、第2のワーク保持体にそれぞれ装着され、ワークを前記ワーク保持部に着脱可能にクランプするクランプ体とを具備し、前記ワークの基準面を前記位置決め基準面に当接させた状態で前記クランプ体によって前記ワークを前記ワーク保持部にクランプすることにより、前記ワークを所定の位置に位置決め固定するものである。
【0011】
【作用】
上記の構成において、工作機械の本体上にワークを位置決め固定する作業時にはベースプレート上の第1、第2のワーク保持体の各ワーク保持部間にワークを架設状態で載置したのち、ワークの基準面を位置決め基準面に当接させた状態でクランプ体によってワークをワーク保持部にクランプすることにより、ワークを所定の位置に位置決め固定して工作機械の本体上にワークを高精度に位置決め固定する作業の作業性を改善するようにしたものである。
【0012】
【実施例】
以下、この考案の一実施例を図1乃至図6を参照して説明する。図1および図2は工作機械本体のマシンテーブル1に例えばプレス金型のカム型等のワーク2を位置決めして固定する位置決め固定装置の概略構成を示すもので、21はマシンテーブル1に着脱可能に装着されるベースプレートである。
【0013】
このベースプレート21の上面には図3(A),(B)に示すように固定用の一対のねじ穴22,22が形成されており、これらのねじ穴22,22の両側には略平行に並設された略T形の一対のガイド溝23,23がそれぞれ形成されている。なお、図3(A)中にはねじ穴22,22の片側のガイド溝23,23のみを示す。
【0014】
さらに、ベースプレート21の下面には図3(B)に示すようにマシンテーブル1の締付溝7内に嵌着される複数のキー24が固定されている。これらのキー24はベースプレート21の下面の適宜のか所に設けられている。
【0015】
また、ベースプレート21の上面には略中央位置に第1のワーク保持体25がマシンテーブル1の締付溝7と直交する方向に沿って配設されている。この第1のワーク保持体25の上面には図4(A)に示すように左右一対の凹陥状のワーク保持部26,26が形成されている。
【0016】
さらに、第1のワーク保持体25のワーク保持部26,26間の縦壁部27の上面には一対のねじ挿通孔28,28と3つのクランプ装置取付け孔29…とが形成されている。
【0017】
また、第1のワーク保持体25の下面には図4(B)に示す溝部30が形成されている。そして、この第1のワーク保持体25は下面の溝部30内にベースプレート21の上部が挿入される状態で第1のワーク保持体25がベースプレート21上に嵌着され、この状態でねじ挿通孔28,28に挿入される固定ねじ31,31の先端がベースプレート21のねじ穴22,22に螺着されて第1のワーク保持体25がベースプレート21に固定されている。
【0018】
さらに、クランプ装置取付け孔29内には図6(A)に示すクランプ装置32が装着されている。このクランプ装置32にはばね受け部材33、コイルばね34、クランプ体35、カラー36、座金37および取付けボルト38がそれぞれ設けられている。
【0019】
ばね受け部材33にはクランプ装置取付け孔29内に挿入される円筒部33aおよび図4(C)に示すようにクランプ装置取付け孔29の下部に形成された大径穴29a内に装着されるフランジ部33bがそれぞれ設けられている。
【0020】
また、このばね受け部材33の軸心部にはねじ穴33cが形成されている。さらに、このばね受け部材33の円筒部33aの外周面にはコイルばね34が装着されている。
【0021】
また、カラー36の外径寸法はクランプ装置取付け孔29と略同径に形成されており、このカラー36の軸心部には取付けボルト38のボルト挿通孔36aが形成されている。そして、このカラー36はクランプ装置取付け孔29内に挿入された状態で組み込まれている。
【0022】
さらに、クランプ体35は第1のワーク保持体25のワーク保持部26,26間の縦壁部27の上に装着されている。このクランプ体35には中央に取付けボルト38のボルト挿通孔35aが形成されており、このボルト挿通孔35aの両側に第1のワーク保持体25の両側のワーク保持部26内にそれぞれ延出された延出部35bが形成され、これらの延出部35bの下面に押圧突起35cがそれぞれ形成されている。
【0023】
また、クランプ体35の取付けボルト38は座金37、クランプ体35およびカラー36の各ボルト挿通孔内に順次挿通され、ばね受け部材33のねじ穴33cに螺着されている。そして、この取付けボルト38の捩じ込み操作にともないコイルばね34からのばね力がカラー36を介してクランプ体35に伝達されるようになっている。
【0024】
一方、ベースプレート21上には第1のワーク保持体25の両側にこの第1のワーク保持体25と接離する方向に移動可能に支持された第2のワーク保持体39がそれぞれ配設されている。
【0025】
この第2のワーク保持体39の上面には第1のワーク保持体25側と対向する側面のみに凹陥状のワーク保持部40が形成されている。そして、この第2のワーク保持体39のワーク保持部40と第1のワーク保持体25のワーク保持部26との間にワーク2が架設状態でセットされるようになっている。
【0026】
また、第2のワーク保持体39のワーク保持部40および第1のワーク保持体25のワーク保持部26には第2のワーク保持体39の移動方向に沿う位置決め基準面40a,26aがそれぞれ形成されている。そして、第2のワーク保持体39のワーク保持部40と第1のワーク保持体25のワーク保持部26との間に架設状態でセットされたワーク2の基準面2aを各ワーク保持部40,26の位置決め基準面40a,26aに当接させることにより、ワーク2を所定の位置に位置決めすることができるようになっている。
【0027】
さらに、この第2のワーク保持体39のワーク保持部40とは反対側の側壁部41の上面には図5(A)に示すように一対のねじ挿通孔42,42と3つのクランプ装置取付け孔43…とが形成されている。
【0028】
また、第2のワーク保持体39の下面には第1のワーク保持体25の溝部30と同様の溝部44が形成されている。そして、この第2のワーク保持体39は下面の溝部44内にベースプレート21の上部が挿入される状態でベースプレート21上に摺動可能に装着されている。
【0029】
なお、この第2のワーク保持体39のねじ挿通孔42,42に挿入される取付けねじ45,45の先端にはベースプレート21のガイド溝23,23内に挿入される図示しないベアリング部材が固定されている。
【0030】
さらに、クランプ装置取付け孔43内には第1のワーク保持体25のクランプ装置32と略同様の構成のクランプ装置46が装着されている。なお、このクランプ装置46はクランプ体47の形状が異なる点以外は第1のワーク保持体25のクランプ装置32と同じ構成なので、ここではその説明を省略する。
【0031】
また、このクランプ装置46のクランプ体47は図6(C),(D)に示すように一端部側に取付けボルト38のボルト挿通孔47aが形成されており、他端部側に第2のワーク保持体39のワーク保持部40内に延出された延出部47bが形成され、この延出部47bの下面に押圧突起47cが形成されている。
【0032】
さらに、ベースプレート21上には第2のワーク保持体39の移動操作装置48が配設されている。そして、この移動操作装置48によって第2のワーク保持体39を第1のワーク保持体25と接離する方向に移動操作するようになっている。
【0033】
次に、上記構成の作用について説明する。工作機械本体のマシンテーブル1上にワーク2を位置決め固定する作業時にはまず、マシンテーブル1にベースプレート21を設置する。
【0034】
続いて、ベースプレート21上の所定の位置に第1のワーク保持体25を固定する。この場合、第1のワーク保持体25には予め、クランプ装置32…が装着されている。
【0035】
さらに、第1のワーク保持体25を固定したのち、第2のワーク保持体39を第1のワーク保持体25と接離する方向に移動し、第1のワーク保持体25と第2のワーク保持体39との間の間隔をワーク2の大きさに合わせて調整した状態で第2のワーク保持体39をベースプレート21上に固定する。この場合、第2のワーク保持体39には予め、クランプ装置46…が装着されている。
【0036】
このように第1のワーク保持体25および第2のワーク保持体39がベースプレート21上に固定されたのち、第2のワーク保持体39のワーク保持部40と第1のワーク保持体25のワーク保持部26との間にワーク2を架設状態でセットする。
【0037】
このワーク2のセット作業時にはワーク2の基準面2aを各ワーク保持部40,26の位置決め基準面40a,26aに当接させることにより、ワーク2を所定の位置に高精度に位置決めすることができる。そのため、この状態で第2のワーク保持体39および第1のワーク保持体25の全てのクランプ体47…,35…の各取付けボルト38を締付け固定することにより、ワーク2の位置決め固定作業が終了する。
【0038】
そこで、上記構成のものにあってはワーク2の位置決め固定作業時にはベースプレート21上の第1、第2のワーク保持体25,39の各ワーク保持部26,40間にワーク2を架設状態で載置したのち、ワーク2の基準面2aを各ワーク保持部26,40の位置決め基準面26a,40aに当接させた状態でクランプ体35…,47…によってワーク2をワーク保持部26,40にクランプすることにより、簡単にワーク2を所定の位置に位置決め固定することができる。そのため、工作機械本体上にワーク2を高精度に位置決め固定する作業の作業性を従来に比べて改善することができ、短時間で正確なワーク2の位置決め固定作業を行なうことができる。
【0039】
なお、この考案は上記実施例に限定されるものではない。例えば、上記実施例ではベースプレート21の上面に固定された第1のワーク保持体25の両側に第2のワーク保持体39を配設した構成のものを示したが、第1のワーク保持体25の片側のみに第2のワーク保持体39を配設する構成にしてもよい。
さらに、その他この考案の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
【0040】
【考案の効果】
この考案によれば工作機械の本体に着脱可能に装着されるベースプレートと、このベースプレートに固定された第1のワーク保持体と、前記ベースプレートに沿って前記第1の保持体と接離する方向に移動可能に支持された第2のワーク保持体と、前記第1、第2のワーク保持体に形成され、前記第2のワーク保持体の移動方向に沿う位置決め基準面を備えたワーク保持部と、前記第1、第2のワーク保持体にそれぞれ装着され、ワークを前記ワーク保持部に着脱可能にクランプするクランプ体とを設け、前記ワークの基準面を前記位置決め基準面に当接させた状態で前記クランプ体によって前記ワークを前記ワーク保持部にクランプすることにより、前記ワークを所定の位置に位置決め固定するようにしたので、工作機械の本体上にワークを高精度に位置決め固定する作業の作業性を改善し、短時間で正確なワークの位置決め固定作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例の概略構成を示す斜視図。
【図2】位置決め固定装置を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図。
【図3】ベースプレートを示すもので、(A)は平面図、(B)は縦断面図。
【図4】第1のワーク保持体を示すもので、(A)は平面図、(B)は(A)のL1 −L1 線断面図、(C)は(A)のL2 −L2 線断面図。
【図5】第2のワーク保持体を示すもので、(A)は平面図、(B)は(A)のL3 −L3 線断面図。
【図6】(A)は第1のワーク保持体のクランプ機構を示す縦断面図、(B)は第1のワーク保持体のクランプ体を示す平面図、(C)は第2のワーク保持体のクランプ体を示す縦断面図、(D)は同平面図。
【図7】従来の位置決め固定装置を示す斜視図。
【符号の説明】
1…マシンテーブル,2…ワーク,21…ベースプレート,25…第1のワーク保持体,26,40…ワーク保持部,26a,40a…位置決め基準面,35,47…クランプ体,39…第2のワーク保持体。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 工作機械の本体に着脱可能に装着されるベースプレートと、このベースプレートに固定された第1のワーク保持体と、前記ベースプレートに沿って前記第1の保持体と接離する方向に移動可能に支持された第2のワーク保持体と、前記第1、第2のワーク保持体に形成され、前記第2のワーク保持体の移動方向に沿う位置決め基準面を備えたワーク保持部と、前記第1、第2のワーク保持体にそれぞれ装着され、ワークを前記ワーク保持部に着脱可能にクランプするクランプ体とを具備し、前記ワークの基準面を前記位置決め基準面に当接させた状態で前記クランプ体によって前記ワークを前記ワーク保持部にクランプすることにより、前記ワークを所定の位置に位置決め固定することを特徴とする位置決め固定装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【公開番号】実開平5−20838
【公開日】平成5年(1993)3月19日
【考案の名称】位置決め固定装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−69069
【出願日】平成3年(1991)8月29日
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)