説明

位置決め装置

【課題】複数の種類のワークに共用で使用できる位置決め装置を低コストで提供する。
【解決手段】ワークW1の位置決めを行う位置決め装置1に、ワークW1の前後方向(L方向)の一端部(自由端部)が載置され、ワークW1を支持すると共に、ワークW1の前後方向(L方向)の位置を規定する第1支持部30と、ワーク30の高さ方向(H方向)の両端部を支持し、ワークW1の高さ方向(H方向)の位置を規定する第2支持部50と、第1支持部30及び第2支持部50に支持されているワークW1の側面部W1bに荷重を加え、ワークW1を横幅方向(W方向)に変形させて押し広げ、ワークW1の横幅方向(W方向)の位置を規定する押し広げロッド40とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの位置決めを行う位置決め装置に関し、例えば、形状の異なるワークに対して共用で使用することができる位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車の生産ラインでは、同一ライン上に複数車種のワークを流し、各車種に対応した加工作業を施すことが一般的に行われている。このような、同一ライン上に複数車種のワークを流す多品種ラインでは、各作業領域において、ワークの形状毎に、専用のワークの位置決め装置が設置されていた。
しかし、生産ラインの各作業領域に、ワークの形状毎に専用の位置決め装置を設置した場合、広い設置スペースが必要になるという問題があった。
【0003】
そして、上記の設置スペースの問題を解決する手段として、特許文献1には、異なる形状のワークに共用で使用できる位置決め装置の構成が提案されている。
ここで、図5を参照しながら、特許文献1に記載された従来技術の位置決め装置(位置決め機構)の構成を説明する。
【0004】
図示するように、位置決め装置100は、NC制御される直交3軸のNC制御軸を有するロケータ107を複数備え、このロケータ107のそれぞれが3軸方向に動作自由度を有している。
また、ロケータ107は、ワークW2を把持するクランプ、ワークW2に形成される孔部に挿入されるロケートピン等を備えており、NC制御により任意の位置に、クランプやロケートピンを制御できるようになっている。
そして、従来技術の位置決め装置100は、上記の構成により、複数の種類の形状の異なるワークW2に汎用的に対応して位置決めすることができ、その結果、生産ラインの作業領域の省スペース化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−190627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の位置決め装置は、NC制御される直交3軸の制御軸を有するロケータを多数配置する構成を採用しているため、位置決め装置が高額なものとなり、生産ラインのコストアップの招くという技術的課題を有している。
なお、上記の位置決め装置は、ワークに形成される孔部にロケートピンを挿入してワークの位置決めを行っているため、孔部が形成されていないワークには対応できないという技術的課題も有している。
【0007】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、複数の種類のワークに共用で使用できる位置決め装置を低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明は、ワークの位置決めを行う位置決め装置において、前記ワークの前後方向の一端部が載置され、該ワークを支持すると共に、該ワークの前後方向の位置を規定する第1支持部と、前記ワークの高さ方向の両端部を支持し、該ワークの高さ方向の位置を規定する第2支持部と、前記第1支持部及び前記第2支持部に支持されている前記ワークの側面部に荷重を加え、該ワークを横幅方向に変形させて押し広げ、該ワークの横幅方向の位置を規定する押し広げ手段とを備えることを特徴としている。
【0009】
このように本発明の位置決め装置は、ワークを第1支持部及び第2支持部にセットして2軸方向(前後方向、高さ方向)の位置決めをした後、押し広げ手段によりワークを押し広げることにより、ワークを変形させて横幅方向の位置を規定することができるようになっている。
そのため、本発明の位置決め装置は、位置決めする対象のワークに形状が異なるものが混在していても、ワークの一端部側の輪郭が重なるような類似する形状を有し且つ弾性変形するもの(例えば、自動車用のバンパー等)であれば、ワークの一端側を第1支持部及び第2支持部に当接させて2軸方向(前後方向、高さ方向)の位置を規定し、その後、ワークを押し広げて横幅方向の位置を規定することにより、3軸方向(前後方向、高さ方向、横幅方向)の位置決めを行うことができる。
すなわち、本発明の位置決め装置は、弾性変形する類似形状のワークに対して、共用で使用することができるため(汎用性が高いため)、専用治具等の投資コストを軽減できると共に、生産ラインの省スペース化を図ることができる。
【0010】
また、本発明の位置決め装置は、上述した従来技術の位置決め装置(図5参照)のように、直交3軸の制御軸を有する高額なロケータを多数配置するのではなく、第1支持部及び第2支持部と、ワークを横幅方向に押し広げる押し広げ手段とにより、3軸方向の位置決めを行うように構成されている。そのため、本発明の位置決め装置は、上述した従来技術の位置決め装置(図5参照)に比べて、低コストでの提供が可能となり、設備コストの削減を図ることができる。
また、本発明によれば、押し広げ手段によりワークを横幅方向に押し広げることにより、位置決めを行っているため、孔部が形成されていないワークの位置決めにも対応することができる。
【0011】
また、前記押し広げ手段により押し広げられた前記ワークの側面部に吸着し、該押し広げられた状態にワークを保持する保持手段を備えることが望ましい。
このように保持手段を設けることにより、押し広げ手段により横幅方向に押し広げて変形させたワークをその状態で維持することができるため、位置決めされたワークの加工を正確に行うことができる。
【0012】
また、前記ワークの横幅方向に沿って往復自在に移動可能なスライド部を備え、前記押し広げ手段及び前記保持手段は、前記スライド部に搭載されており、前記押し広げ手段は、前記スライド部の移動と共に移動してワークの側面部に当接し、該当接した側面部を押圧し、該ワークを横幅方向に変形させて押し広げ、前記保持手段は、前記押し広げ手段が該ワークを横幅方向に変形させて押し広げると、該ワークの側面部に吸着するようになされていることが望ましい。
このように本発明は、横幅方向(1軸方向)に沿って往復移動するスライド部により、押し広げ手段を移動させて、ワークの側面部を押圧して、該ワークを横幅方向に押し広げるようになされている。
すなわち、本発明は、1軸駆動する駆動機構(例えば、1軸駆動のサーボ機構等)により押し広げ手段を動作させることができるため、上述した従来技術の位置決め装置に比べて、コストを抑えた位置決め装置を提供することができる。
【0013】
また、前記第1支持部は、前記ワークとの当接部が半円形状になされていることが望ましい。
このようにワークとの当接部を半円形状に形成したのは、押し広げ手段によりワークを押し広げる際に、ワークがキズ付くのを防止するためである。また、ワークとの当接部を半円形状に形成することにより、ワークの形状が違っても、確実に、第1支持部の上にワークを着座させることができるためである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の種類のワークに共用で使用できる位置決め装置を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の位置決め装置の模式図である。
【図2】本発明の実施形態の位置決め装置によるワークの位置決め作業の手順を示した模式図である。
【図3】本発明の実施形態の位置決め装置によるワークの位置決め動作を示した模式図である。
【図4】弾性変形可能なワークのW方向の押し広げ量と、L方向及びH方向の位置決め精度との関係を模式的に示した図である。
【図5】従来技術の位置決め装置の概略構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の位置決め装置について説明する。
先ず、本発明の実施形態の位置決め装置の概略構成について図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態の位置決め装置の模式図であり、図1(a)は、本実施形態の位置決め装置にワークをセットした状態を示した模式図であり、図1(b)は、図1(a)に示すA部を拡大して示した模式図であり、図1(c)は、図1(a)の位置決め装置及びワークを側面から見た模式図である。
【0017】
また、以下では、位置決めの対象となるワークW1が、正面部W1aと、その正面部W1aの左右両端から折れ曲がった側面部W1bとを有する自動車用のバンパーである場合を例にするが、あくまでもこれは一例である。また、前記バンパーは、合成樹脂により形成され、弾性変形可能になされているものとする。
また、本実施形態では、ワークW1の位置を規定する直交する3軸方向を、ワークW1が取り付けられる車両を基準にした車両の高さ方向(H方向)、車両の横幅方向(W方向)、車両前後の長さ方向(前後方向(L方向))で示す。
【0018】
図示するように、位置決め装置1は、生産ラインの作業台等に設置される矩形枠状の基台10と、基台10の4角の近傍にそれぞれ設置され且つ横幅方向(W方向)に沿って往復移動可能になされたスライダ22(図1(b)参照)を有するスライド機構20と、スライダ22に搭載されている第1支持部(L基準部)30と、スライダ22に搭載されている押し広げロッド(押し広げ手段)40及び吸着パッド(保持手段)45(図1(b)参照)と、各スライド機構20と並列に基台10に設置された第2支持部(H基準部)50とを備えている。
【0019】
また、位置決め装置1には、スライド機構20の駆動を制御する制御部(図示せず)が設けられており、作業者が前記制御部を操作することにより、スライド機構20のスライダ22が駆動するようになっている。
なお、前記制御部は、例えば、CPU、メモリ等を備えたコンピュータにより構成することができる。この場合、前記CPUが前記メモリに格納された制御プログラムを実行することにより、スライド機構20の駆動が制御される。
【0020】
そして、図1(c)に示すように、ワークW1は、その両側面部W1bの自由端(L方向の一端部)が第1支持部30の上に載置され支持(当接)されることにより、L方向の位置が規定されるようになっている。また、ワークW1は、その高さ方向(H方向)の両端部が第2支持部50に支持(当接)されることにほり、ワークW1のH方向の位置が規定されるようになっている。
【0021】
また、各スライダ22に搭載されている押し広げロッド40及び吸着パッド45は、いずれも、第1支持部30及び第2支持部50に支持されているワークW1の側面部W1bの内側面に相対向して配置されている。
そして、押し広げロッド40は、スライド機構20の駆動により動作するスライダ22とともに移動してワークW1の側面部W1bの内側面に当接し、その当接した側面部W1bを押圧し(側面部W1bにW方向の荷重を加えて)、ワークW1を変形させて押し広げる。また、スライド機構20は、予め設定されている位置にスライダ22(及び押し広げロッド40)を停止させるようになされており、これにより、ワークW1のW方向の位置が規定される。
また、吸着パッド45は、押し広げロッド40が押し広げたワークW1の側面部W1bに吸着し、ワークW1を押し広げた状態を維持できるようになっている。
【0022】
そして、本実施形態の位置決め装置1は、位置決めする対象のワークW1のなかに形状が異なるものが混在していても、ワークW1の一端側の輪郭がある程度似ている形状であれば、その一端側を第1支持部30及び第2支持部50に支持(当接)させることにより、2軸方向(L方向、H方向)の位置決めを行うことができ、さらに、ワークW1を押し広げることによりW方向の位置決めを行うことができる。
すなわち、本実施形態の位置決め装置1は、位置決めする対象のワークW1のなかに形状が異なるものが混在していても、ワークW1の一端側の輪郭がある程度似ている形状であれば、3軸方向(L方向、H方向、W方向)の位置決めに共用で使用できる。
【0023】
このように、本実施形態の位置決め装置1は、生産ラインに形状が異なるワークW1が混在している場合においても、それが弾性変形する類似形状のものであれば共用で使用することができるため、専用治具等の投資コストを軽減できると共に、生産ラインの省スペース化を図ることができる。
また、本実施形態の位置決め装置1は、上述した従来技術の位置決め装置(図5参照)のように、直交3軸の制御軸を有する高額なロケータを多数配置する構成ではなく、W方向(1軸方向)に移動するスライド機構20により、押し広げロッド40を移動させてワークW1の位置決めを行うため、従来技術の位置決め装置(図5参照)に比べて、装置コストを抑制することができる。
【0024】
つぎに、本実施形態の位置決め装置1の各構成について詳細に説明する。
図1(a)に示すように、スライド機構20は、矩形枠状の基台10の4角部の近傍において、それぞれ、基台10から立設している一対の柱状支持部12a、12bに支持されている。なお、スライド機構20は、基台10の長辺方向(図示するW方向)と平行に配置されている。
また、図1(b)に示すように、各スライド機構20は、上面部にW方向と平行に延設されたガイド部(図示せず(ガイド溝や、ガイドレール等))が形成された本体部21と、前記ガイド部に摺動自在に支持されている板状のスライダ22とを備えている。
また、本体部21は、前記ガイド部に沿って、スライダ22を往復自在に移動させる1軸方向の駆動機構を備えている。
【0025】
そして、位置決め装置1には、上述した制御部(図示せず)からの指示により、前記駆動機構を駆動させ、前記ガイド部に沿ってスライダ22を所定位置に移動させることができるようになされている。
なお、前記駆動機構の構成は、具体的に限定されるものではないが、例えば、前記駆動機構に、サーボモータを備えるサーボ機構を用いることができる。
このようにサーボ機構を用いることにより、スライダ22を最適位置に移動させる高精度な制御ができるため、正確な位置決めを実現することができる。
【0026】
また、図1(b)に示すように、スライダ22には、上面が半円形状になされた第1支持部30と、柱状の保持部材47とが搭載されており、この保持部材47が、押し広げロッド40及び吸着パッド45を保持している。
そして、押し広げロッド40は、一端部が支持部材47に支持され、他端部(先端部)が、第1支持部30に支持されたワークW1の側面部W1bの内側面と相対向するように配置されている。
また、吸着パッド45は、一端部が支持部材47に支持され、他端部(先端部)の吸着面が、第1支持部30に支持されたワークW1の側面部W1bの内側面と相対向するように配置されている。
なお、吸着パッド45は、ワークW1の側面部W1bに吸着できるようになされていればよく、その具体的な構成について特に限定されるものではない。
【0027】
また、図1(a)及び図1(c)に示すように、第2支持部50は、円柱形状になされており、スライド機構20を支持している柱状支持部12a、12bに並列させて基台10に立設した柱状支持部14a、14bに支持されている。また、第2支持部50は、スライド機構20の外側(基台10のH方向における外側)に配置されている。
なお、第2支持部50が、H方向の任意の位置に移動できるようになされていてもよい。例えば、基台10に、柱状支持部14a、14bを、H方向に沿って移動自在に支持するスライド機構を設け、柱状支持部14a、14bを移動させることにより、第2支持部50のH方向の位置を調節できるようにする。この構成により、H方向の形状が大きく異なるワークW1や、H方向における位置決めの位置が異なるワークW1に対しても対応することができる。
【0028】
つぎに、本実施形態の位置決め装置1によるワークW1の位置決め作業について、図2及び図3を用いて説明する。
図2は、本発明の実施形態の位置決め装置によるワークの位置決め作業の手順を示した模式図である。なお、図2(a)は、位置決め装置にワークをセットする前の状態を示した模式図であり、図2(b)は、位置決め装置にワークがセットされた状態を示した模式図であり、図2(c)は、ワークがセットされた位置決め装置が、ワークを横方向に押し広げている状態を示した模式図である。
また、図3は、本実施形態の位置決め装置によるワークの位置決め動作を示した模式図である。なお、図3(a)は、本実施形態の位置決め装置にワークをセットした際の、ワークと、位置決め装置との関係を示した模式図であり、図3(b)は、本実施形態の位置決め装置の押し広げロッドがワークの側面部を押圧している状態を示した模式図であり、図3(c)は、本実施形態の位置決め装置の吸着パッドが押し広げられたワークを保持している状態を示した模式図であり、図3(d)は、位置決め装置により、位置決めされたワークを示した模式図である。
【0029】
具体的には、本実施形態の位置決め装置1によりワークW1の位置決めを行う場合、図2(a)及び図2(b)に示すように、作業者がワークW1を持って、位置決め装置1の上にワークW1をセットする。
なお、上記の場合、位置決め装置1の第1支持部30に、ワークW1の両側面部W1bの自由端を当接させて載置すると共に、第2支持部50に、ワークW1の上下両端部を当接させる。
これにより、図3(a)に示すように、ワークW1が第1支持部30に当接して、ワークW1のL方向の位置が規定され、ワークW1のH方向の両端部が第2支持部50に当接して、ワークW1のH方向の位置が規定される。
なお、第1支持部30は、ワークW1と当接する上面が半円形状になされているためワークW1がキズ付くことを防止できる。また、ワークW1との当接部が半円形状に形成されているため、ワークW1の形状が違っても、確実に、第1支持部30の上にワークW1を着座させることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、位置決めする対象のワークW1に形状が異なるものが混在していても、ワークW1の一端側(図3(a)に示す下端側)の輪郭が類似する形状を有していれば、ワークW1の一端側(図3(a)に示す下端側)を第1支持部30及び第2支持部50に当接させることにより、2軸方向(L方向、H方向)の位置決めを行うことができる。
すなわち、本実施形態の位置決め装置1は、図3(a)の実線で示すワークW1に対しても、破線で示すワークW1に対しても共用で使用することができる。
【0031】
つぎに、図2(c)及び図3(b)に示すように、位置決め装置1の制御部(図示せず)を操作してスライド機構20を駆動させ、スライド機構20の上に搭載された押し広げロッド40を移動させ、この押し広げロッド40でワークW1の両側面部W1bを押圧して、ワークW1をW方向に変形させて押し広げる。これにより、ワークW1のW方向の位置が規定される。
【0032】
また、押し広げロッド40によるワークW1の押し広げ量は、ワークW1の種類に応じて定められており、スライド機構20により制御されている。
なお、本願の発明者は、ワークW1の位置決めについて研究を重ねた結果、図4に示すように、合成樹脂等により形成された弾性変形可能なワークW1は、W方向の押し広げ量が所定量(最適量)を超えると、L方向及びH方向の歪みが発生し、位置決めの精度が低下していく傾向があることを見出した。また、W方向の押し広げ量が所定量(最適量)を超えなければ、ワークW1を押し広げても、L方向及びH方向の歪みが小さく、位置決めの精度に影響を与えないことを見出した。
【0033】
そのため、本実施形態では、予め、ワークW1の種類毎に、所定量(最適量)を考慮して押し広げ量を算出しておき、スライド機構20の駆動を制御するコントローラ(図示せず)に、その算出した押し広げ量を設定できるようにしている。
これにより、位置決め装置1は、弾性変形する類似形状のワークW1に対して、精度の高い位置決めを実現することができる。
【0034】
図3に戻り、ワークW1の位置決め作業の説明を続ける。
上述した図3(b)に示すように、押し広げロッド40によるワークW1のW方向への押し広げが完了すると、吸着パッド45によるワークW1の保持作業が行われる。
【0035】
具体的には、図3(c)に示すように、位置決め装置1の吸着パッド45が、押し広げロッド40が押し広げたワークW1の両側面部W1bに吸着し、ワークW1を押し広げた状態を維持する。これにより、図3(d)に示すように、位置決め装置1により、ワークW1が、3軸方向(L方向、H方向、W方向)に位置決めされる。
なお、位置決め装置1により、ワークW1が、3軸方向(L方向、H方向、W方向)に位置決めされた後は、ワークW1に対して各種の加工が施される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の位置決め装置1によれば、弾性変形する類似形状のワークW1に対して、共用で使用することができるため(汎用性が高いため)、専用治具等の投資コストを軽減できると共に、生産ラインの省スペース化を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態の位置決め装置1は、上述した従来技術の位置決め装置(図5参照)のように、直交3軸の制御軸を有する高額なロケータを多数配置するのではなく、押し広げロッド40を駆動する1軸の駆動機構を備える構成を採用しているため、上述した従来技術の位置決め装置(図5参照)に比べて、設備コストの削減を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、押し広げロッド40によりワークW1を横幅方向に押圧して押し広げることにより、位置決めを行っているため、孔部が形成されていないワークW1の位置決めにも対応することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0039】
例えば、上述した実施形態の説明では、ワークW1が自動車用のバンパーである場合を示したが、弾性変形できるワークであれば、本実施形態の位置決め装置1を利用することができる。
【0040】
また、上述した実施形態では、吸着パッド45が、第1支持部30に支持されたワークW1の側面部W1bの内側面と相対向するように配置され、当該側面部W1bの内側面に吸着するように構成されているが、特にこれに限定されるものではない。
例えば、吸着パッド45は、第1支持部30に支持されたワークW1の側面部W1bの外側面と相対向するように配置され、ワークW1の側面部W1bの外側面に吸着するように構成されていてもよい。
【0041】
また、例えば、上述した実施形態では、スライド機構20が4つ設けられており、4つのスライド機構20にそれぞれ搭載されている押し広げロッド40により、ワークW1を押し広げているが、特にこれに限定されるものではない。ワークW1の両側面部W1bのうちの一方を固定保持しておいて、他方の側面部W1だけに荷重を加えて、ワークW1をW方向に押し広げるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
W1 ワーク
W1a 正面部(ワーク)
W1b 側面部(ワーク)
1 位置決め装置
10 基台
12a、12b 柱状支持部
14a、14b 柱状支持部
20 スライド機構
21 本体部(スライド機構)
22 スライダ(スライド機構)
30 第1支持部(L基準部)
40 押し広げロッド(押し広げ手段)
45 吸着パッド(保持手段)
47 支持部材
50 第2支持部(H基準部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの位置決めを行う位置決め装置において、
前記ワークの前後方向の一端部が載置され、該ワークを支持すると共に、該ワークの前後方向の位置を規定する第1支持部と、
前記ワークの高さ方向の両端部を支持し、該ワークの高さ方向の位置を規定する第2支持部と、
前記第1支持部及び前記第2支持部に支持されている前記ワークの側面部に荷重を加え、該ワークを横幅方向に変形させて押し広げ、該ワークの横幅方向の位置を規定する押し広げ手段とを備えることを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記押し広げ手段により押し広げられた前記ワークの側面部に吸着し、該押し広げられた状態にワークを保持する保持手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記ワークの横幅方向に沿って往復自在に移動可能なスライド部を備え、
前記押し広げ手段及び前記保持手段は、前記スライド部に搭載されており、
前記押し広げ手段は、前記スライド部の移動と共に移動してワークの側面部に当接し、該当接した側面部を押圧し、該ワークを横幅方向に変形させて押し広げ、
前記保持手段は、前記押し広げ手段が該ワークを横幅方向に変形させて押し広げると、該ワークの側面部に吸着するようになされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記第1支持部は、前記ワークとの当接部が半円形状になされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−79067(P2011−79067A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230687(P2009−230687)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】