説明

位置測位装置および位置測位方法

【課題】装置構成を簡易化し、消費電力を改善できる位置測位装置および位置測位方法を提供する。
【解決手段】位置測位装置に、所定の識別子の情報と所定の識別子を送信する送信機の位置情報とを関連付けて記憶する記憶手段と、受信した識別子が所定の識別子に該当するか否かを判別する識別子判別手段と、受信した所定の識別子の受信回数を算出する受信回数算出手段と、受信した所定の識別子に対応する位置情報および受信回数に基づいて、異なる2台の送信機を結ぶ線分に直交する垂直線を求め、垂直線を用いて位置の測位を行う測位手段とを備えることにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機の位置検出を行う位置測位装置および位置測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の空間において、物体の存在する位置や、自分の居る位置を、電波を利用して測位する方法については、さまざまな方法が提案されている。
【0003】
電波を利用した測位方法として最も代表的な方法は、電波の到達時間差を利用する方法である。電波の到達時間差を利用する測位方法について、図1を参照して説明する。図1において、送信機1の位置をX、送信機2の位置をX、送信機3の位置をX、受信機によって送信機1の信号を受信した時刻をT、受信機によって送信機2の信号を受信した時刻をT、受信機によって送信機3の信号を受信した時刻をT、光速をcとすると、受信機の位置Xは三角測量の原理から以下の連立方程式を解くことにより得られる。
‖X−X‖−‖X−X‖=c(T−T
‖X−X‖−‖X−X‖=c(T−T
本方法を利用した測位システムとしてGPS(Global Positioning System)がある。
【0004】
また、電波を利用した他の測位方法は、受信機で測定された電界強度から、受信機と送信機との距離を測定し、この距離に基づいて受信機の位置を測位するものである。具体的な方法について説明する。図1において、送信機1の位置をX、送信機2の位置をX、送信機3の位置をX、受信機と送信機1との距離をl、受信機と送信機2との距離をl、受信機と送信機3との距離をlとする。自由空間損失を仮定すると、送信機と受信機との距離は、受信機における電界強度の減衰をΓ、送信機の送信周波数に対応する波長をλ、円周率をπとすると、√(Γλ/16π)を計算することで得られる。したがって、受信機の位置Xは、三角測量の原理から以下の連立方程式を解くことにより得られる。
‖X−X‖−‖X−X‖=l−l
‖X−X‖−‖X−X‖=l−l
尚、上述した従来技術のうち電波を利用して測位する技術は、出願人が出願時点で知る限りにおいて文献公知ではない。
【0005】
また、出願人は出願時点までに本発明に関連する先行技術文献を発見することができなかった。よって、先行技術文献情報を開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した背景技術には以下の問題がある。
【0007】
電波の到達時間差を利用する測位方法においては、各送信機間で同期している必要がある。また、到達時間差を計測するための高い時間分解能を有する測定装置が必要となる。このため、装置構成が複雑となり、システムの消費電力が大きくなる問題がある。特に屋内においては各送信機と受信機間の距離差が短く、各電波間の到達時間差が短くなるため本問題が顕著に現れる。
【0008】
一方、受信機で測定された電界強度から測位を行う方法においては、距離に対する電界強度の減衰率が測位の対象となる特定の空間同士で異なるため、減衰率を一意に定めることができない問題がある。そのため、測位システムの運用前にあらかじめ減衰率を観測しておく必要がある。また、屋内のように物が頻繁に移動し、測位の対象となる特定の空間の特徴が頻繁に変化する場合、減衰率を頻繁に更新する必要がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、装置構成を簡易化し、消費電力を改善できる位置測位装置および位置測位方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の位置測位装置は、所定の識別子と所定の識別子を送信する送信機の位置情報とを関連付けて記憶する記憶手段と、受信した識別子が所定の識別子に該当するか否かを判別する識別子判別手段と、所定の識別子の受信回数を算出する受信回数算出手段と、受信した所定の識別子に対応する位置情報および受信回数に基づいて、異なる2台の送信機を結ぶ線分に直交する垂直線を求め、垂直線を用いて位置の測位を行う測位手段とを備える。
【0011】
このように構成することにより、各送信機が送信する識別子の受信回数に基づいて、受信機の位置を測位することができる。
【0012】
また、本発明にかかる位置測位方法は、識別子を受信するステップと、受信した識別子が所定の識別子に該当するか否かを判別するステップと、受信した所定の識別子の受信回数を算出するステップと、受信した所定の識別子に対応する位置情報および受信回数に基づいて、異なる2台の送信機を結ぶ線分に直交する垂直線を求め、垂直線を用いて位置の測位を行うステップと、測位位置を提示するステップとを有する。
【0013】
このようにすることにより、受信した識別子の受信回数に基づいて、受信機の位置を測位することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施例によれば、装置構成を簡易化し、消費電力を改善できる位置測位装置および位置測位方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0016】
本発明の第1の実施例にかかる位置測位装置について、図2を参照して説明する。
【0017】
本実施例にかかる位置測位装置100は、RFID受信機100と、RFID受信機100と有線または無線により接続される識別子データベース100とを備える。図2では識別子データベース100がRFID受信機100とは別の場所にある場合を示すが、識別子データベース100をRFID受信機100に内蔵するようにしてもよい。
【0018】
本実施例にかかる位置測位装置100は、対象空間10内に配置されたRFIDタグ200から送信された識別子を含む識別信号をRFID受信機100で受信し、識別子の受信回数と識別子データベース100に格納されている各識別子の位置情報に基づいて、RFID受信機100の位置を測位する。
【0019】
RFIDタグ200は、位置測位装置100を運用する前に、RFID受信機100が移動する範囲内に予め配置される。例えば、RFIDタグ200は「つくえ」に、RFIDタグ200は「テーブル」に、RFIDタグ200は「いす」に、RFIDタグ200は「ベッド」に、RFIDタグ200は「たんす」に配置される。
【0020】
各RFIDタグ200は異なる識別子を有し、配置された位置に固定され、移動することがない。例えば、「つくえ」に配置されたRFIDタグ200は識別子「ABCDEF」を有し、「テーブル」に配置されたRFIDタグ200は識別子「GHIJKL」を有し、「いす」に配置されたRFIDタグ200は識別子「MNOPQ」を有し、「ベッド」に配置されたRFIDタグ200は識別子「RSTUVW」を有し、「たんす」に配置されたRFIDタグ200は識別子「XYZABC」を有する。
【0021】
また、各識別子は、RFIDタグ200を配置した位置と関連付けられ、識別子データベース100に格納される。例えば、識別子データベース100に格納されるデータは、図3および図4に示すように、例えば識別子と位置情報である。位置情報としてはそのRFIDタグ200を配置した座標や配置した位置に存在する物体の名称である。この位置情報は、運用するシステムごとに統一される。
【0022】
また、RFIDタグ200が移動した場合には、識別子データベース100に格納されるRFIDタグ200の位置情報を変更してもよいし、RFIDタグ200を、そのRFIDタグ200の位置情報により示される場所に移動してもよい。
【0023】
位置測位装置100とRFIDタグ200は、位置測位システムを構成する。
【0024】
次に、本実施例にかかるRFIDタグ200について、図5を参照して説明する。本実施例にかかるRFIDタグ200は、変調部201と、変調部201と接続され、アンテナを備える送信部202と、送信部202と接続された送信制御部203と、送信制御部203と接続された送信タイミング算出部204とを備える。
【0025】
RFIDタグ200には、上述したように例えば「ABCDEF」のように、それぞれ固有の識別子が割り当てられる。この識別子は識別信号として、変調部201および送信タイミング算出部204へ入力される。
【0026】
変調部201に入力された識別子は、電波によって送信可能となるように変調が施される。この場合、識別子に対して誤り訂正符号によって符号化を行うことやCRC(Cyclic Redundancy Check)符号を付加することをしてもよい。変調部201を介することにより識別子を変調した信号が得られる。変調方式はFSK(周波数シフトキーイング)を用いる。FSKを用いることで、複数のRFIDタグ200から複数の信号が位置測位装置100に送信された場合、位置測位装置100では電力が大きい信号の方が受信されるキャプチャ効果が顕著に現れる。このため、位置測位装置100は受信電力の高い信号を利用して位置の測定を行うことができる。変調部201は生成した変調信号を、送信部202へ入力する。
【0027】
変調部201から入力された変調信号は、送信部202により、アンプによって増幅されアンテナを介して送信される。ここで、送信部202は、送信制御部203からの制御信号が送信可能を示す場合にのみ送信する。つまり、本実施例にかかるRFIDタグ200は連続的に識別子を送信するのではなく、間欠的に送信を行う。
【0028】
送信タイミング算出部204は、入力された識別子に基づいて、識別子を送信する時間間隔を算出する。送信タイミング算出部204は、識別子の送信間隔を常に一定ではなく、互いに異なるように設定する。例えば、識別子を数値化し、その数値を基に乱数を発生させ、得られた乱数の値を送信時間間隔とし、識別子を1回送信する。この処理は、識別子が送信されるたびに行われる。すなわち識別子を1回送信するたびに乱数を発生させ、得られた乱数の値を送信時間間隔として、次の送信間隔を決定する。算出された送信時間間隔は送信制御部203へ入力される。
【0029】
送信制御部203では、送信タイミング算出部204で算出された識別子の送信時間間隔に応じて、送信部202に送信可能を示す制御信号を入力する。
【0030】
次に、本実施例にかかる位置測位装置100について、図6を参照して説明する。ここでは、RFID受信機100に、識別信号データベース100が内蔵されている場合について説明する。
【0031】
本実施例にかかる位置測位装置100は、アンテナを備える受信部101と、受信部101と接続された復調部102と、復調部102と接続された識別子判別部103と、識別子判別部103と接続された受信回数算出手段としてのカウンタ部104と、識別子判別部103およびカウンタ部104と接続された記憶手段としてのデータ記憶部105と、データ記憶部105と接続された測位部107、およびアンテナを備えるデータ通信部106と、測位部107と接続される測位結果表示部108とを備える。データ記憶部105は、識別子データベース100を備える。
【0032】
受信部101では、RFIDタグ200により送信された識別子が変調された信号を、アンテナを介して受信し、受信した信号をアンプで増幅し、増幅した信号を復調部102へ入力する。
【0033】
復調部102は、受信部101から入力された信号に対し、RFIDタグ200の変調方式に基づいて復調を行う。RFIDタグ200で誤り訂正符号によって符号化が行われている場合やCRC符号が付加されている場合は、復調部102は、誤り訂正およびCRC符号の確認処理を行う。復調された信号は識別子判別部103へ入力される。
【0034】
識別子判別部103は、復調部102から入力された信号から、RFIDタグ200の識別子であるか否かを判別する。すなわち、本位置測位システムで用いられるRFIDタグであるか否かを判別する。識別子判別部103は、RFIDタグ200の識別子であると判別した場合、その識別子をカウンタ部104に入力する。
【0035】
カウンタ部104は、予め設定された所定の時間内で、識別子判別部103から入力された識別子毎にその入力回数をカウントする。すなわち、カウンタ部104は、識別子判別部103において本位置測位システムで用いられるRFIDタグの識別子であると判別された識別子毎に、各識別子の受信回数を求める。カウンタ部104は、所定の時間の経過後、識別子毎にカウントされた識別子の受信回数の情報をデータ記憶部105に入力し、カウント結果をリセットする。
【0036】
データ記憶部105は、識別子データベース100に直接アクセスし、識別子を送信するRFIDタグの位置情報を取得し、各識別子に対応する位置情報とカウンタ部104より入力された識別子毎の受信回数の情報とを関連付け、組にして記憶する。
【0037】
識別子データベース100を内蔵しない位置測位装置の場合には、データ通信部106を介して、識別子データベース100にアクセスし、各識別子を送信するRFIDタグの位置情報を取得する。この場合、無線により識別子データベース100にアクセスするようにしてもよいし、有線によりアクセスするようにしてもよい。
【0038】
測位部107は、データ記憶部105に記憶された情報を基に、識別子を受信した位置、例えば位置測位装置100の位置を測位する。測位部107は、データ記憶部105に記憶されている識別子毎の受信回数からRFIDタグ200と位置測位装置100の位置関係を算出し、位置測位装置100の位置を測位する。
【0039】
例えば、測位部107は、データ記憶部105に記憶された識別子のうち、少なくとも3個の識別子を用いて、位置測位装置100の位置を推定する。具体的には、最初に、少なくとも3個の識別子のうち、任意の2個の識別子を抽出し、抽出した識別子に対応する位置を結ぶ線分を、各識別子の受信回数に応じて内分する内分点を求める処理を行う。次に、求めた内分点を通り、線分と直交する垂直線を求める処理を行う。全ての識別子の組み合わせについて同様の処理を行う。次に、求められた垂直線の交点を求める処理を行う。この交点を、位置測位装置100の位置と推定する。ここで、垂直線が交わらない場合には、垂直線により囲まれる領域を、位置測位装置100の位置と推定する。
【0040】
測位結果表示部108は、測位部107により算出された位置測位装置100の位置をユーザーに提示する。例えば、識別子データベース100に記憶された位置情報が「つくえ」、「テーブル」、「いす」などのような具体的なものの名称である場合、ものの名称を用いて、位置測位装置100の位置を提示する。例えば、「「つくえ」、「テーブル」、「いす」に囲まれた領域内で「いす」に近い領域」のような形式で測位結果を表示する。
【0041】
また、識別子データベース100に記憶されたの位置情報が座標情報である場合、RFIDタグ200の座標に基づいて表示する。例えば、位置測位装置100の位置を、RFIDタグ200の座標との位置関係により表示する。
【0042】
次に、本実施例にかかる位置測位方法について、図7を参照して説明する。
【0043】
本実施例にかかる位置測位方法では、位置を知りたい場所に位置測位装置100を配置し、処理を開始する。
【0044】
最初に、位置測位装置100は、識別子判別部103において、識別子が受信されたか否かを判断する(ステップS702)。識別子が受信された場合(ステップS702:YES)、識別子判別部103は受信した識別子と識別子データベース100に記憶されている識別子とを照合し、受信した識別子が識別子データベース100に記憶されているか否かを判断する(ステップS704)。
【0045】
識別子が受信できない場合(ステップS702:NO)および受信した識別子が識別子データベース部100に記憶された識別子ではない場合(ステップS704:NO)、位置測位装置100の識別子判別部103は測位に使用できる識別子が受信されていないと判断し、測位不能であることを回答し、ユーザーに提示し(ステップS706)、終了する。
【0046】
一方、受信した識別子が識別子データベース100に記憶されている場合(ステップS704:YES)、識別子判別部103は、その識別子をカウンタ部104に入力し、RFIDタグ200から送信される識別子を一定時間受信する(ステップS708)。
【0047】
次に、カウンタ部104は、入力された識別子の数を識別子毎にカウントし、その結果をデータ記憶部105に記憶する。測位部107は、データ記憶部105に記憶された識別子毎のカウント結果(受信回数)を参照し、受信した識別子の種類が複数か否かを判断する(ステップS710)。
【0048】
受信した識別子の種類が複数ではない場合(ステップS710:NO)、受信した識別子を送信したRFIDタグが存在する位置の近くに、位置測位装置100があると判断し、受信した識別子を送信したRFIDタグの位置情報を回答し(ステップS712)、この識別子に対応する位置情報から、位置測位装置100の位置の測位結果をユーザーに提示する(ステップS714)。例えば、「「つくえ」の近くにいます」や「座標(x1、y1)周辺」、画面上に位置を示す情報を表示するなどの方法でユーザーに提示する。
【0049】
一方、受信された識別子の種類が複数である場合(ステップS710:YES)、各識別子について、カウンタ部104は受信された回数をカウントし、その結果をデータ記憶部105に記憶する(ステップS716)。
【0050】
次に、測位部107は、データ記憶部105に記憶された識別子のうち、少なくとも3個の識別子を用いて、位置測位装置100の位置を推定する(ステップS718)。具体的には、図8に示すように、少なくとも3個の識別子のうち、任意の2個の識別子を抽出し、抽出した識別子に対応する位置を結ぶ線分を、各識別子の受信回数に応じて内分する内分点を求める。次に、求めた内分点を通り、線分と直交する垂直線を求める。全ての識別子の組み合わせについて同様の処理を行う。次に、求められた垂直線の交点を求める。この交点を、位置測位装置100の位置と推定する。図8において、RFIDタグ1の識別子の受信回数はr、RFIDタグ2の識別子の受信回数はr、RFIDタグ3の識別子の受信回数はrであり、l12はRFIDタグ1の位置とRFIDタグ2の位置とを結んだ線分をr:rに内分する点を通り、この線分と直交する垂直線、l23はRFIDタグ2の位置とRFIDタグ3の位置とを結んだ線分をr:rに内分する点を通り、この線分と直交する垂直線、l13はRFIDタグ1の位置とRFIDタグ3の位置とを結んだ線分をr:rに内分する点を通り、この線分と直交する垂直線である。
【0051】
垂直線を求める方法について具体的に説明する。例として、l12を求める場合について説明する。l23およびl13についても同様に求めることができる。RFIDタグ1の座標を(X,Y)、RFIDタグ2の座標を(X,Y)とする。RFIDタグ1とRFIDタグ2とを結ぶ線分は、y=(Y−Y)x/(X−X)+Y−(Y−Y)X/(X−X)である。RFIDタグ1とRFIDタグ2とを結ぶ線分をr:rに内分する点は、((r+r)/(r+r),(r+r)/(r+r))となる。
【0052】
RFIDタグ1とRFIDタグ2とを結ぶ線分に直交する直線の傾きは−(X−X)/(Y−Y)であるので、傾きが−(X−X)/(Y−Y)で、点((r+r)/(r+r),(r+r)/(r+r))を通る直線が求める垂直線となる。したがって、求める垂直線の式は、y=−(X−X)x/(Y−Y)+(r+r)/(r+r)+(X−X)(r+r)/((Y−Y)(r+r))となる。
【0053】
このようにして求めた3本の垂直線l12、l23、およびl13の交点をRFID受信機の位置であると推定する。ここで、3本の垂直線l12、l23、およびl13が交わらない場合、垂直線l12、l23、およびl13で囲まれた領域に位置測位装置100が存在すると推定する。
【0054】
また、2個の識別子が受信された場合は、2個の識別子に対応する位置を結ぶ線分を各識別子の受信回数に応じて内分する内分点を通り、線分と直交する垂直線が1本となるため、RFID受信機はその垂直線上に位置すると推定される。
【0055】
3個以上の識別子を用いて、位置測位装置100の位置を推定することにより、垂直線により示される領域は狭くなるため、位置測位装置100の位置の推定精度を向上させることができる。
【0056】
次に、位置測位装置100の位置の推定結果を基に、位置測位装置100の位置をユーザーに提示する(ステップS720)。例えば、識別子データベース100に格納された位置情報が、「つくえ」、「いす」、「タンス」といった具体的なものの名称である場合、ものの名称を用いて、位置測位装置100の位置を提示する。例えば、「「つくえ」、「いす」、「タンス」に囲まれた領域内で「タンス」に近い領域」のような形式で測位結果を表示する。
【0057】
また、識別子データベース100に記憶された位置情報が座標情報である場合、RFIDタグ200の座標に基づいて表示する。例えば、位置測位装置100の位置を、RFIDタグ200の座標との位置関係により表示する。また、ステップS718において推定された位置測位装置100の位置を表す領域を色付けして表示するようにしてもよい。
【0058】
本実施例にかかる位置測位装置100は、同一時刻に複数の識別子が送信された場合、キャプチャ効果による影響または、スペクトラム拡散通信方式の特性によって、位置測位装置100に最も近いRFIDタグからの識別子が受信される。このため、位置測位装置100が、あるRFIDタグAからの離れ、他のRFIDタグBに近付くにしたがって、RFIDタグAの識別子の受信回数は減少する。このため、RFIDタグと位置測位装置100との位置関係を算出でき、位置測位装置100の位置を測位できる。
【0059】
次に、本発明の第2の実施例にかかる位置測位装置について説明する。
【0060】
本実施例にかかる位置測位装置の構成は、図2を参照して説明した位置測位装置と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0061】
次に、本実施例にかかるRFIDタグ200の構成について、図9を参照して説明する。
【0062】
本実施例にかかるRFIDタグ200は、図5を参照して説明したRFIDタグに、変調部201および送信部202と接続された拡散部205と、拡散部205と接続された拡散符号生成部206とを備える。
【0063】
本実施例にかかるRFIDタグ200の変調部201は、識別子を電波によって送信可能となるように変調を施す。この場合、第1の実施例と同様に、識別子に対して誤り訂正符号によって符号化を行うことやCRC符号を付加することをしてもよい。また、本実施例では、振幅変調、位相変調、周波数変調など任意の変調方式を用いることができる。
【0064】
拡散部205は、変調部201から入力された識別子を変調した信号に対し、所定の拡散符号を乗じる。拡散符号を乗じることにより識別子を変調した信号を周波数領域上に拡散させる。拡散部205で拡散された識別子の変調信号は、送信部202へ入力される。
【0065】
拡散部205で使用する拡散符号は、拡散符号生成部206で生成される。例えば、拡散符号として、M系列等の符号体系に基づいて予め計算された符号を使用してもよい。
【0066】
次に、本実施例にかかる位置測位装置100について、図10を参照して説明する。
【0067】
本実施例にかかる位置測位装置100は、図6を参照して説明した位置測位装置に、受信部101および復調部102と接続された逆拡散部109と、逆拡散部109と接続された拡散符号生成部110とを備える。
【0068】
拡散符号生成部110は、RFIDタグ200が使用する全ての拡散符号を算出し、算出した拡散符号を逆拡散部109へ入力する。
【0069】
逆拡散部109は、受信部101から入力された信号に対し、拡散符号生成部110から入力された拡散符号に対応した逆拡散処理を行う。逆拡散部109は、逆拡散した信号を復調部102へ入力する。
【0070】
本実施例にかかる位置測位装置100は、第1の実施例において説明した位置測位装置と異なり、RFIDタグ200の変調方式は任意である。しかし、拡散処理を行うことで、同一時刻に複数の識別子が位置測位装置100に送信された場合、位置測位装置100では受信電界強度が大きくなる位置測位装置100に近いRFIDタグの識別子が受信されるため、第1の実施例と同様の効果を実現できる。
【0071】
復調部102は、逆拡散部109から入力された信号に対し、RFIDタグ200の変調方式に基づいて復調を行う。RFIDタグ200で誤り訂正符号によって符号化が行われている場合やCRC符号が付加されている場合は、第1の実施例と同様に、復調部102は、誤りの訂正およびCRC符号の確認処理を行う。
【0072】
位置測位方法については、図7を参照して説明した位置測位方法と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
以上述べたように、本実施例によれば識別子の受信回数から位置測位装置の位置を測位することが可能となり、簡易な構成で位置測位装置を構築することができる。また、各送信機間で同期を取る必要や、高い時間分解能を持つ計測器を不用とし、到達時間差による方法に比べ簡易な装置構成で測位システムを構築できる。
【0074】
上述した実施例においては、RFIDタグが固定物、例えば「つくえ」などに取り付けられ、その位置と識別子とが関連付けられる場合について説明したが、RFIDタグがあらゆる物に搭載され、測位とは関係なく識別子情報を送信する場合に、位置測定に利用可能な測定用タグ、例えば固定物に取り付けられ、その位置と識別子との関連付けが行われる上位層タグ、上位層タグに関連付けられている下位層タグを予めデータベースに記憶しておき、このデータベースを参照して例えば、識別子判別部において上位層タグか下位層タグかを判別するようにしてもよい。また、位置測定用タグから直接位置情報に関するデータを入手するようにしてもよい。この場合、位置情報は最低1回受信すればよい。
【0075】
また、上述した実施例においては、2次元空間における位置測位装置および位置測位方法について説明したが、3次元空間にも容易に拡張可能である。また、本実施例においては測位手段、すなわち識別子を送受信する対象としてRFIDタグ、RFID受信機を用いる場合について説明したが、PHS(Personal Handyphone System)、無線LANなど他の無線システムを用いた場合でも、同様の原理により適用可能である。さらに、光や音波等を利用する通信システムにおいても、各送信機を識別子等で判別でき、受信機でその受信回数を計測できれば本実施例と同様に測位システムを構築可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明にかかる位置測位装置および位置測位方法は、無線機の位置検出を行うシステムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】測位システムの構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる測位システムを示す説明図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる識別子データベースに格納されているデータを示す説明図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる識別子データベースに格納されているデータを示す説明図である。
【図5】本発明の一実施例にかかるRFIDタグの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施例にかかる位置測位装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施例にかかる位置測位処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施例にかかる位置測位処理を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施例にかかるRFIDタグの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の一実施例にかかる位置測位装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0078】
100 位置測位装置
200 RFIDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の識別子の情報と前記所定の識別子を送信する送信機の位置情報とを関連付けて記憶する記憶手段;
受信した識別子が前記所定の識別子に該当するか否かを判別する識別子判別手段;
受信した前記所定の識別子の受信回数を算出する受信回数算出手段;
受信した前記所定の識別子に対応する位置情報および受信回数に基づいて、異なる2台の送信機を結ぶ線分に直交する垂直線を求め、前記垂直線を用いて位置の測位を行う測位手段;
を備えることを特徴とする位置測位装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置測位装置において:
前記測位手段は、異なる2台の送信機に対応する識別子の受信回数の比を、前記送信機に対する距離の比として前記線分を内分する内分点を求め、前記内分点を通るように前記垂直線を求めることを特徴とする位置測位装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位置測位装置において:
前記識別子判別手段は、受信した識別子に基づいて、この識別子を送信した送信機が位置測位に利用できるか否かを判別することを特徴とする位置測位装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の位置測位装置において:
前記測位手段は、受信した識別子の種類が1種類である場合、前記受信した識別子を送信した送信機の位置を測位位置とすることを特徴とする位置測位装置。
【請求項5】
識別子を受信するステップ;
受信した識別子が所定の識別子に該当するか否かを判別するステップ;
受信した所定の識別子の受信回数を算出するステップ;
受信した所定の識別子に対応する位置情報および受信回数に基づいて、異なる2台の送信機を結ぶ線分に直交する垂直線を求め、前記垂直線を用いて位置の測位を行うステップ;
測位位置を提示するステップ;
を有することを特徴とする位置測位方法。
【請求項6】
請求項5に記載の位置測位方法において:
前記測位するステップは、
異なる2台の送信機に対応する識別子の受信回数の比を、前記送信機に対する距離の比として前記線分を内分する内分点を求めるステップ;
前記内分点を通るように前記垂直線を求めるステップ;
を有することを特徴とする位置測位方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の位置測位方法において:
前記判別するステップは、受信した識別子に基づいて、この識別子を送信した送信機が位置測位に利用できるか否かを判別するステップを有することを特徴とする位置測位方法。
【請求項8】
前記測位するステップは、
受信した識別子の種類が1種類である場合、受信した識別子を送信した送信機の位置を測位位置とするステップを有することを特徴とする位置測位方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−118881(P2006−118881A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304521(P2004−304521)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】