説明

位置調整装置および発光分光分析装置

【課題】位置調整を容易に行うことができる位置調整装置および発光分光分析装置を提供すること。
【解決手段】調整用マーク投影部12b,12cは、被測定物3の表面3aのZ方向位置と、レーザ光の焦点位置とが近いほど、基準点ポインタ13により標示される基準点Pに近い位置に、調整用ポインタ14b,14cを投影する。よって、2本の調整用ポインタ14の交点と基準点Pとが一致しているか否かによって、Z方向における表面3aの位置とレーザ光の焦点位置とが一致しているか否かを示すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置調整装置および発光分光分析装置に関し、特に、位置調整を容易に行うことができる位置調整装置および発光分光分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を被測定物に照射、プラズマ化し、そのプラズマ内で発生する元素特有の発光を計測することにより、被測定物中の元素成分と濃度とを特定する発光分光分析装置が知られている。このような発光分光分析装置によれば、例えば、発光スペクトルに現れているスペクトル(輝度スペクトル)の強度からその元素の定量分析を行うことができる。
【0003】
図7は、従来の発光分光分析装置におけるレーザ光の照射と、そのレーザ光の照射によって発生するプラズマとの関係を、模式的に示す図である。図7に示すように、従来の発光分光分析装置においては、光源から出射されたレーザ光100は、レンズ102によって集光され、被測定部104に案内される。
【0004】
ここで、図7(a)に示すように、レンズ102によって集光されたレーザ光の焦点位置と被測定物104の表面位置とが一致していれば、レーザ光が集中的に照射され、被測定物104表面において充分に大きいプラズマ105を発生させることができる。一方、図7(b)に示すように、被測定物104の表面がレーザ光の焦点位置から離隔していれば、レーザ光のエネルギーが分散され、充分な大きさのプラズマ105を発生させることができない。
【0005】
そこで、特許文献1には、CCDカメラを用いてレーザ照射位置をモニターすることができるように構成した分析装置が開示されている。このようにすれば、作業者は、プラズマ発光形状を視認しながら作業を行うことができ、測定信頼性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2004−226252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術では、プラズマ発光形状が正しい状態であるか否かを、作業者自身が判断しなければならず、経験が浅い作業者では、正確な調整を行うことが困難であるという問題点があった。
【0007】
なお、検査対象物の正確な位置合わせを要求する分析装置や測定装置は、発光分光分析装置に限られず、多種多様に存在する。例えば、赤外分光分析装置や分光蛍光光度計などの分光分析装置、蛍光X線分析装置、X線回折装置を挙げることができる。さらに、検査対象物をカメラなどで撮影して得られた画像データを分析することにより、検査対象物の物性を分析するような分析装置や測定装置においても、検査対象物を正確に位置合わせすることが要求される。
【0008】
また、対象物の位置合わせが必要な装置は分析装置や測定装置以外にも多数存在する。例えば、レーザ加工装置などの各種加工装置においても、加工対象物を正確に位置合わせすることが要求される場合がある。これらの位置合わせが必要な各種装置においても、上記分析装置と同様に、経験の少ない作業者では正確な位置合わせを行うことが困難であるという、問題点があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、位置調整を容易に行うことができる位置調整装置および発光分光分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、請求項1記載の位置調整装置は、調整対象面における所定の基準点を標示する基準点標示手段と、前記調整対象面に交わる第1方向における前記調整対象面の位置が、既定位置に近いほど、前記基準点標示手段により標示される前記基準点に近い位置に、調整用マークを投影する調整用マーク投影手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の位置調整装置は、請求項1記載の位置調整装置において、前記調整用マーク投影手段は、前記既定位置と、前記調整対象面上の基準点の第1方向位置とが一致する状態において、前記基準点標示手段により標示される基準点に、前記調整用マークを投影することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の位置調整装置は、請求項2記載の位置調整装置において、前記調整用マーク投影手段は、ライン状の調整用マークを前記調整対象面に投影することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の位置調整装置は、請求項3記載の位置調整装置において、前記調整用マーク投影手段は、前記調整対象面に投影されるライン状の調整用マークの長手方向と前記第1方向とに平行な面に対して斜めの方向に進行するライン状の光を、前記調整対象面へ向けて照射することにより、前記ライン状の調整用マークを投影することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の位置調整装置は、請求項3または4のいずれかに記載の位置調整装置において、前記調整用マーク投影手段は、互いに交差する少なくとも2本のライン状の調整用マークを前記調査対象面へ投影するものであり、前記調整対象面における基準点の第1方向位置が前記既定位置に一致する場合、前記少なくとも2本のライン状の調整用マークは、前記基準点で交差することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の位置調整装置は、請求項1から5のいずれかに記載の位置調整装置において、前記基準点標示手段は、前記調整対象面上の基準点を交点とする十字状の標示マークを、前記調整対象面へ投影するものであることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発光分光分析装置は、レーザ光を被測定物に照射し、被測定物に含まれる成分をプラズマ化させて分析することにより、被測定物に含まれる成分を分析するものであって、レーザ光を出射するレーザ光源と、そのレーザ光源からのレーザ光を被測定物に案内する導光光学系と、被測定物の表面である調整対象面上の基準点を標示する基準点標示手段と、前記レーザ光の光軸方向における前記調整対象面の位置が、前記導光光学系により案内されるレーザ光の焦点位置に近いほど、前記基準点標示手段により標示される前記基準点に近い位置に、調整用マークを投影する調整用マーク投影手段とを備える。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の位置調整装置によれば、調整用マーク投影手段は、第1方向における調整対象面の位置が既定位置に近いほど、基準点に近い位置に調整用マークを投影する。したがって、調整対象面に投影される調整用マークが基準点に近づくように、調整対象面の第1方向位置と既定位置との間の位置関係を調整することにより、第1方向における調整対象面の位置と既定位置とを近づけることができる。また、調整対象面に投影される調整用マークが基準点から離れるように、調整対象面の第1方向位置と既定位置との間の位置関係を調整することにより、第1方向における調整対象面の位置を既定位置から離隔させることができる。したがって、調整用マークを目印として位置調整を容易に行うことができるという効果がある。
【0018】
請求項2記載の位置調整装置によれば、請求項1記載の位置調整装置の奏する効果に加え、既定位置と、調整対象面上の基準点の第1方向位置とが一致する状態において、基準点に調整用マークが投影される。よって、調整用マークが基準点に投影されるように、調整対象面の第1方向位置と既定位置との位置調整を行う、という容易な作業で、調整対象面の第1方向位置と既定位置とを一致させることができるという効果がある。
【0019】
請求項3記載の位置調整装置によれば、請求項2記載の位置調整装置の奏する効果に加え、ライン状の調整用マークが基準点を通るように、調整対象面の第1方向位置と既定位置との位置関係を調整する、という容易な作業で、調整対象面の第1方向位置と既定位置とを一致させることができるという効果がある。
【0020】
請求項4記載の位置調整装置によれば、請求項3記載の位置調整装置の奏する効果に加え、前記調整用マーク投影手段は、前記調整対象面に投影される調整用マークの長手方向と前記第1方向とに平行な面に対して斜めの方向に進行するライン状の光を、前記調整対象面へ向けて照射することにより、前記ライン状の調整用マークを投影するので、ライン状のマークの投影位置は、第1方向における調整対象面の位置に応じたものとなる。したがって、調整対象面の第1方向位置が既定位置に対してどれだけずれているかを、基準点とライン状調整用マークとの位置関係によって表すことができるという効果がある。
【0021】
請求項5記載の位置調整装置によれば、請求項3または4のいずれかに記載の位置調整装置の奏する効果に加え、調整対象面における基準点の第1方向位置と既定位置とが一致する場合、少なくとも2本のライン状の調整用マークが基準点で交差するので、調整対象面の第1方向位置が既定位置と一致したか否かを視覚的に明確に認識させることができるという効果がある。
【0022】
請求項6記載の位置調整装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の位置調整装置の奏する効果に加え、前記基準点標示手段は、前記調整対象面上の基準点を交点とする十字状の標示マークを前記調整対象面へ投影するので、視覚的に分かり易く基準点を表示することができるという効果がある。
【0023】
請求項7記載の発光分光分析装置によれば、調整用マーク投影手段は、レーザ光の光軸方向における調整対象面の位置が、導光光学系により案内されるレーザ光の焦点位置に近いほど、基準点標示手段により標示される基準点に近い位置に調整用マークが投影される。よって、調整対象面に投影される調整用マークが基準点に近づくように、被測定物の光軸方向位置とレーザ光の焦点位置との位置関係を調整する、という容易な作業で、レーザ光の光軸方向における調整対象面の位置と、レーザ光の焦点位置とを近づけることができ、位置調整を容易に行うことができるという効果がある。また、調整対象面を、レーザ光の焦点位置からあえてずらし、調査対象面に照射されるレーザ光の密度を減少させようとする場合には、調整用マークが基準点からずれるように、被測定物の光軸方向位置とレーザ光の焦点位置との位置関係を調整すれば良いので、この場合にも、位置調整を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の位置調整装置および発光分光分析装置の第1実施形態である発光分光分析装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
図1は、第1実施形態の発光分光分析装置1の概略構成を示す図である。発光分光分析装置1は、レーザマイクロプローブ発光分光分析法(LMA:Laser Microprobe Analyzer)を利用した発光分析装置であり、被測定物3にレーザ光を照射し、被測定物3に含まれる成分をプラズマ化させて分析することにより、被測定物3に含まれる測定対象成分の含有率を測定できる装置である。特に、本実施形態の発光分光分析装置1は、被測定物3の位置調整を容易に行うことができるように構成されたものである。
【0026】
図1に示すように、発光分光分析装置1は、レーザ光を出射するレーザ発振器2と、レーザ発振器2からのレーザ光を被測定物3に案内する対物レンズ4と、レーザ光を受けた被測定物3が生成したプラズマ5から放射されるプラズマ光を集光する集光レンズ6と、集光レンズ6により集光されたプラズマ光を測定し、そのスペクトルをコンピュータ10へ出力する分光器8と、レーザ発振器2がレーザ光を出力するタイミング及び分光器8がプラズマ光を測定するタイミングを制御するゲートコントローラ9と、分光器8から入力されるスペクトルに基づいて、被測定物3の測定結果を算出し表示するコンピュータ10と、被測定物3を保持するステージ11と、位置合わせ用のポインタを被測定物3の表面3aへ投影するポインタ投影ユニット12とを有している。
【0027】
レーザ発振器2は、後述のゲートコントローラ9からレーザ制御信号が入力された場合に、例えば、レーザエネルギー30mJでパルス幅10nsのYAGレーザ光を出力する。対物レンズ4は、レーザ発振器2から出力されるレーザ光を集光して、被測定物3に照射するためのレンズである。なお、本実施形態では、対物レンズ4で案内されるレーザ光の光軸Lに平行な方向をZ方向と称することとする。
【0028】
被測定物3が、対物レンズ4により集光されたレーザ光を受けると、被測定物3の表面3aの一部が蒸発励起しプラズマ5が生成される。プラズマ5は、レーザ光の照射終了と共に再結合が始まり、数μ秒から数十μ秒の間は被測定物3の構成元素が励起状態の原子となり、この励起状態の原子が下準位に遷移するとき、原子数に比例したプラズマ光を放射する。即ち、それぞれの原子は、固有の波長のプラズマ光を放射するので、このプラズマ5から放射されるプラズマ光の所定の波長における強度を測定することによって、目的とする測定対象成分の含有率を得ることができる。
【0029】
集光レンズ6は、被測定物3が生成するプラズマ5のプラズマ光を集光させて、分光器8に入力するためのレンズである。集光レンズ6は、プライマリプルーム5aから外れた部位に焦点が合わされている。プライマリプルーム5aに焦点を合わせてプラズマ光を集光するよりも、プライマリプルーム5aから外れた部位に焦点を合わせてプラズマ光を集光することで、分光器8により測定される測定ノイズを抑制することができるので、高精度に測定することができる。
【0030】
分光器8は、後述のゲートコントローラ9から測定制御信号が入力された場合に、集光レンズ6により集光されるプラズマ光を測定し、測定したプラズマ光のスペクトルを生成する。分光器8は、生成したスペクトルをコンピュータ10へ出力する。コンピュータ10では、分光器8より入力されたスペクトルのスペクトル線強度の値を用いて、測定対象成分の含有量を算出する。
【0031】
ゲートコントローラ9は、後述のコンピュータ10からトリガ信号が入力されると、レーザ光の出力開始を指令するレーザ制御信号をレーザ発振器2へ出力し、また、プラズマ光の測定の測定時間帯(測定開始タイミングおよび測定時間幅)を既定する測定制御信号を分光器8へ出力する。
【0032】
ステージ11は、被測定物3を載置するためのテーブルと、テーブルをZ方向に搬送するためのZ方向搬送用モータ(図示しない)とを有し、パーソナルコンピュータ10から入力される位置制御命令に従って、テーブルをZ方向の任意の位置に移動可能に構成されている。つまり、テーブルの移動に伴って被測定物3も移動する。よって、ステージ11の位置を適宜調整して、被測定物3の表面3aのZ方向位置と、対物レンズ4により案内されるレーザ光の焦点位置とを一致させることにより、被測定物3の表面3aにレーザ光を集中的に照射して充分な大きさのプラズマ5を発生させ、高精度な分析を実現することができる。
【0033】
ポインタ投影ユニット12は、被測定物3の表面3aに位置合わせ用のポインタを投影するためのものである。なお、ポインタ投影ユニット12の詳細は図2を参照して後述するが、本実施形態のポインタ投影ユニット21は、表面3aにポインタを投影するためのポインタ光を、3方向から照射するように構成される。しかしながら、図の複雑化を避けるため、図1においては、1方向から照射するポインタ光のみ図示している。
【0034】
図2は、ポインタ投影ユニット12と、ポインタ投影ユニット12によって被測定物3の表面3aに投影されるポインタとの関係を模式的に示す図である。特に、図2(a)は、Z方向における表面3aの位置と、レーザ光の焦点位置とが一致している状態を示す斜視図と上面図であり、図2(b)は、Z方向における表面3aの位置と、レーザ光の焦点位置とが不一致の状態を示す斜視図と上面図である。なお本実施形態においては、Z方向に対し垂直な一方向をX方向と称し、Z方向とX方向とに垂直な方向をY方向と称することとする。
【0035】
図2に示すように、ポインタ投影ユニット12には、赤色半導体レーザ光源で構成される標示マーク投影部12aと、同じく赤色半導体レーザ光源で構成される調整用マーク投影部12b,12cとが設けられる。
【0036】
標示マーク投影部12aは、ポインタ光15を被測定物3の表面3aへ向けて照射することにより、点状の基準点ポインタ13を表面3aに投影する。ここで、標示マーク投影部12aが照射するポインタ光15は、その光軸が、対物レンズ4により集光されたプラズマ生成用のレーザ光と一致するように予め調整されている。
【0037】
したがって、ポインタ光15によって表面3aに投影される基準点ポインタ13は、対物レンズ4によって集光されたレーザ光が照射される点P(以下、基準点Pと称する)上に投影される。図2(a),図2(b)に示すように、表面3aのZ方向位置に関わらず、基準点ポインタ13は必ず基準点P上に投影され、基準点Pを標示する。よって、ユーザは、基準点ポインタ13により表面3a上のレーザ照射位置を容易に知ることができる。したがって、基準点ポインタ13が投影されるよう、被測定物3のX方向位置またはY方向位置を適宜調整することにより、レーザ光の照射位置に被測定物3を位置合わせすることができる。また、被測定物3が載置されていない状態で、ポインタ光15を照射すれば、基準点ポインタ13はステージ11上に投影されることとなるので、ユーザは、基準点ポインタ13の投影位置上に、被測定物3を載置すれば良い。
【0038】
なお、レーザ発振器2からプラズマ生成用のレーザ光を出射する間、標示マーク投影部12aは、レーザ光の光路から待避するように構成される。このようにすれば、レーザ光の照射時に標示マーク投影部12aが影となることを抑制できる。
【0039】
調整用マーク投影部12bは、X方向を長手方向とするライン状のポインタ光16bを表面3aへ照射することにより、ライン状の調整用ポインタ14bを表面3aに投影する。調整用マーク投影部12cは、Y方向を長手方向とするライン状のポインタ光16cを表面3aへ照射することにより、ライン状の調整用ポインタ14cを表面3aに投影する。したがって、表面3aには、互いに交差する2本の調整用ポインタ14b,14cが投影されることとなる。
【0040】
図2(a)に示すように、調整用マーク投影部12b,12cは、表面3aにおける基準点PのZ方向位置とレーザ光の焦点位置とが一致する状態において、2本の調整用ポインタ14b,14cがそれぞれ基準点Pを通過するように、すなわち、2本の調整用ポインタ14b,14cが基準点ポインタ13で標示される基準点Pで交差するように、調整用ポインタ14b,14cを投影する。
【0041】
すなわち、2本の調整用ポインタ14b,14cの交点と基準点Pとが一致しているか否かによって、表面3aのZ方向位置とレーザ光の焦点位置とが一致しているか否かを、操作者に視覚的に明確に認識させることができる。
【0042】
そして、調整用マーク投影部12b,12cは、表面3aのZ方向位置がレーザ光の焦点位置から離隔すればするほど、基準点Pから離隔した位置に調整用ポインタ14b,14cを投影する。換言すれば、Z方向における表面3aの位置と、レーザ光の焦点位置とが近いほど、基準点ポインタ13により標示される基準点Pに調整用マーク14b,14cが近づくように、調整用マーク14b,14cを投影する。
【0043】
したがって、調整用ポインタ14b,14cの交点が基準点Pに近づくように、例えば、ステージ11のZ方向位置を調整することにより、Z方向における表面3aの位置とレーザ光の焦点位置とを近づけることができる。よって、例えば経験の浅い作業者であっても、調整用ポインタ14b,14cを目印として、位置調整を容易に行うことができる。すなわち、調整用ポインタ14b,14cの交点が基準点Pに投影されるように位置調整を行う、という容易な作業で、表面3aのZ方向位置と、レーザ光の焦点位置とを一致させることができる。なお、測定対象の元素の種類によっては、表面3aを、レーザ光の焦点位置からあえてずらし、表面3aに照射されるレーザ光の密度を減少させることが好ましい場合もある。そのような場合においても、本実施形態の発光分光分析装置1によれば、調整用ポインタ14b,14cの交点が基準点Pからずれるように位置調整を行うことにより、ユーザが適切な位置関係を定めることができる。
【0044】
図3は、調整用マーク投影部12bが照射するポインタ光16bの進行方向と、そのポインタ光16bによって投影される調整用ポインタ14bとの関係を模式的に示す図であって、図3(a)は、Z方向における表面3aの位置とレーザ光の焦点位置とが一致する状態を示す図であり、図3(b)は、Z方向における表面3aの位置とレーザ光の焦点位置とが不一致である状態を示す図である。なお、図2を参照して説明したように、発光分光分析装置1は、調整用マーク投影部12bと調整用マーク投影部12cとにより、2本の調整用ポインタ14b,14cを表面3aに投影するよう構成されているが、図面を見易くし、理解を容易にするために、図3(a),図3(b)においては、調整用マーク投影部12cおよび調整用ポインタ14cの図示を省略している。
【0045】
なお、図3(a),図3(b)においては、ポインタ光16bの進行方向を説明するための平面17を図示している。図3(a),図3(b)に示すように、平面17は、ポインタ光16bによって投影される調整用ポインタ14bの長手方向とZ方向とに平行な平面である。なお、平面17は、ポインタ光16の進行方向の特徴を説明するために想定した仮想的な面であって、発光分光分析装置1に物理的に設ける必要はない。
【0046】
図3(a),図3(b)に示すように、本実施形態の調整用マーク投影部12bは、平面17に対し、斜めの方向(すなわち平面17に対し非平行)に進行するポインタ光16bを照射する。
【0047】
このようにすれば、斜め方向に進行するポインタ光16bからなる面と、表面3aとの交線部分に、ライン状の調整用ポインタ14bが投影されることとなる。よって、表面3aのZ方向位置が変化すれば、表面3aにおける調整用ポインタ14bの投影位置もそれに応じて変更する。
【0048】
例えば、Z方向における表面3aの位置がレーザ光の焦点位置と一致する場合は、図3(a)に示すように、調整用ポインタ14bが基準点P上に投影される。一方、Z方向における表面3aの位置がレーザ光の焦点位置から離隔すればするほど、図3(b)に示すように、表面3aにおける調整用ポインタ14bは、基準点Pから遠ざかる。
【0049】
このように、本実施形態の発光分光分析装置1によれば、表面3aのZ方向位置がレーザ光の焦点位置に対してどれだけずれているかを、基準点Pと調整用ポインタ14bとの位置関係で表すことができる。
【0050】
さらに、本実施形態の発光分光分析装置1によれば、表面3aのZ方向位置に応じて調整用ポインタ14bの投影位置が変化するので、表面3aに凹凸や起伏が存在する場合には、その形状に応じて調整用ポインタ14bが歪む。これに対し、表面3aが完全に平坦で、且つXY平面に対して表面3aが平行である場合、調整用ポインタ14bは、X方向に平行な直線として投影されることとなる。なお、図3においては図示を省略しているが、調整用ポインタ14cも、Y方向に平行な一直線として投影される。
【0051】
図4(a)は、表面3aがXY平面に対し平行である場合に、表面3aおよびステージ11上に投影される調整用ポインタ14b,14cを示す図である。図4(a)に示すように、表面3aがXY平面に対し平行である場合、調整用ポインタ14bはX方向に平行となり、調整用ポインタ14cはY方向に平行となるため、調整用ポインタ14b,14cは、表面3a上にて互いに垂直に交差する。
【0052】
図4(b)は、表面3aがXY平面に対し傾きを有する場合の被測定物3を示す側面図と上面図である。上述したように、調整用ポインタ14b,14cの投影位置は、表面3aのZ方向位置に応じて変動する。よって、図4(b)に示すように表面3aが傾いている場合、表面3aに投影される調整用ポインタ14cはX方向に対し傾きを有することとなる。
【0053】
その結果、図4(b)に示すように、表面3aに投影される調整用ポインタ14b,14cは垂直では交わらない。このように、本実施形態の発光分光分析装置1によれば、調整用ポインタ14b,14cが垂直に交わるか否かに基づいて、表面3aがXY平面に対し平行な面であるか否かを表すことができる。また、ユーザは、調整用ポインタ14b,14cを見ながら、例えばステージ11の角度を変更するなどして被測定物3の傾きを変化させることにより、表面3aがXY平面に対し平行となるように調整することができる。
【0054】
次に、図5を参照して、第2実施形態の発光分光分析装置1について説明する。上述した第1実施形態の発光分光分析装置1において、標示マーク投影部12aが表面3aに投影する基準点ポインタ13は点状であった。これに対し、第2実施形態の発光分光分析装置1は、点状の基準点ポインタ13に代えて、十字状の基準点ポインタ20を投影する標示マーク投影部22a,22bが、標示マーク投影部12aに代えて設けられる。なお、この標示マーク投影部22a,22bは、ライン状のポインタ光を出力する赤色半導体レーザ光源で構成される。
【0055】
なお、第2実施形態の発光分光分析装置1において、第1実施形態の発光分光分析装置1と同一の構成および作用については同一の符号を付し、説明および図示を省略する。
【0056】
図5(a)は、第2実施形態の発光分光分析装置1に設けられる標示マーク投影部22a,22bと、標示マーク投影部22a,22bによって表面3aに投影される基準点ポインタ20a,20bとの関係を模式的に示す図である。なお、第1実施形態の発光分光分析装置1と同様に、表面3aにはライン状の調整ポインタ14b,14cも投影されるが、図5(a)においては、図面を見易くするために、調整ポインタ14b,14cの図示をあえて省略している。
【0057】
図5(a)に示すように、標示マーク投影部22aは、Y方向を長手方向とするポインタ光23aを表面3aへ向けて照射する。よって、表面3aには、ポインタ光23aによって、Y方向を長手方向とするライン状の基準点ポインタ20aが投影されることとなる。
【0058】
ここで、標示マーク投影部22bは、基準点Pを通るYZ平面(図示せず)上から、YZ平面に平行に進行するポインタ光23aを照射する。したがって、ポインタ光23aによって、基準点Pを通りY方向を長手方向とするライン状の基準点ポインタ20aが投影される。この基準点ポインタ20aの投影位置は、表面3aのZ方向位置に拘わらず、常に一定である。
【0059】
同様に、標示マーク投影部22bは、基準点Pを通るZX平面(図示せず)上から、ZX平面に平行に進行するポインタ光23bを照射する。このポインタ光23bはX方向を長手方向とするライン状のポインタ光である。したがって、ポインタ光23bによって、基準点Pを通りX方向を長手方向とするライン状の基準点ポインタ20bが、表面3aに投影される。この基準点ポインタ20bの投影位置も、表面3aのZ方向位置に拘わらず、常に一定である。
【0060】
第2実施形態の発光分光分析装置1によれば、表面3aのZ方向位置に関わらず、基準点ポインタ20a,20bが基準点Pで必ず交差する。すなわち、表面3aの基準点Pを交点とする十字状の標示マークを、表面3aへ投影することができる。よって、第2実施形態の発光分光分析装置1によれば、基準点20a,20bによって、視覚的に分かりやすく基準点Pを標示することができる。
【0061】
図5(b)を参照して、基準点ポインタ20a,20bと共に、調整用ポインタ14b,14cが投影されている状態を説明する。
【0062】
図5(b)は、第2実施形態の発光分光分析装置1において、基準点ポインタ20a,20bと共に、調整用ポインタ14b,14cが投影された被測定物3を示す斜視図である。
【0063】
第1実施形態において説明したように、Z方向における表面3aの位置とレーザ光の焦点位置とが一致する場合、調整用ポインタ14b,14cは、基準点Pにおいて交差する。一方、Z方向における表面3aの位置とレーザ光の焦点位置とが不一致の場合は、調整用ポインタ14b,14cの交点が基準点Pからずれる。
【0064】
したがって、図5(b)に示すように、基準点ポインタ20a,20bによって標示される基準点Pと、調整用ポインタ14b,14cの交点が一致している否か、すなわち、Z方向における表面3aの位置とレーザ光の焦点位置とが一致しているか否かが視覚的に明確に判断することができ、位置調整の作業をより容易化することができる。
【0065】
なお、本第2実施形態では、ライン状のポインタを投影する標示マーク投影部22a,22bを用いていたが、これに代えて、十字状のポインタを投影する部材を用いるように構成しても良い。このようにすれば、ポインタ投影ユニット12の部品点数を削減できる。
【0066】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0067】
例えば、上記実施形態では、ユーザが目視にて調整用ポインタ14b,14cを確認し、その交点が基準点Pに一致するようにステージ11を調整するものとして説明したが、他の方法によって、位置調整を実現するものであっても良い。
【0068】
例えば、表面3aをカメラで撮影し、撮影により得られた画像データをコンピュータ10によって解析することにより、調整用ポインタ14b,14cと基準点Pとの位置関係を算出し、その算出した位置関係に従って、ステージ11のZ方向移動量を決定し、その移動量を用いて、ステージ11のZ方向位置を自動的に調整するように構成しても良い。このようにすれば、高精度な位置調整を自動で行わせることができると共に、ユーザの操作負担が軽減する。すなわち、X方向およびY方向における、基準点Pと調整マーク14b,14cとのズレ量は、Z方向におけるレーザ光の焦点位置と表面3aとのズレ量と相関するので、基準点Pと調整マーク14b,14cのズレ量を計る、又はCCD画面上で画素数を計ることにより、レーザ光の焦点位置と表面3aとのズレ量を定量的に簡易に計ることが出来る。したがって、表面3aをレーザ光の焦点位置に合わせることが容易となる。また、レーザ光の照射密度を低減させるために、表面3aをレーザ光の焦点位置からあえて離隔させる場合があるが、このような場合にも、定量的に測定されるレーザ光の焦点位置と表面3aとのズレ量を用いて、希望するデフォーカス位置に移動させることが出来る。
【0069】
なお、上述の実施形態では、ステージ11を移動させることにより、表面3aのZ方向位置を変化させ、表面3aとレーザ光の焦点位置との相対的な位置関係を調整するものとして説明したが、これに代えて、レーザ光の焦点位置を変化させることにより、Z方向における表面3aの位置とレーザ光の焦点位置との位置関係を調整するように、発光分光分析装置1を構成しても良い。但し、この場合は、変更後のレーザ光焦点位置と、調整用ポインタ14b,14cの交点とが一致するように、レーザ光の焦点位置の変化に合わせて、調整用マーク投影部12b,12cによるポインタ光16b,16cの照射角度が変化さる必要がある。
【0070】
また、上記実施形態では、基準点ポインタ13、または基準点ポインタ20a,20bを表面3aに投影していたが、基準点ポインタを投影することに代えて、例えば、ステージ11等に基準点ポインタを予め付しておくように構成しても良い。
【0071】
図6は、変形例の基準点ポインタ24と、基準点ポインタ24の交点上に載置された被測定物3との関係を模式的に示す図である。図6に示すように、例えば、レーザ発振器2(図1参照)から照射されるレーザ光の光軸とステージ11とが交わる点を交点とする十字状の基準点ポインタ24を、ステージ11上に予め付しておく構成としても良い。この場合、作業者には、十字状の基準点ポインタ24の交点に被測定物3を載置させる。このようにすれば、十字状の基準点ポインタ24の交点部分は、被測定物3を載置することによって見えなくなるものの、ユーザは基準点ポインタ24の可視範囲から、その交点位置を予測し、その交点位置の直上に当たる表面3aの基準点Pを予測することができる。そして、表面3aに投影される調整用ポインタ14b,14cの交点が、予測される基準点Pに一致するように位置を調整することにより、上記実施形態と同様に、レーザ光の焦点位置と表面3aのZ方向位置との位置関係を、好適に調整することができる。
【0072】
また、上記実施形態は、レーザマイクロプローブ発光分光分析法(LMA:Laser Microprobe Analyzer)を利用した発光分光分析装置1に本発明を適用する場合について説明したが、位置合わせや位置決め、位置の調整を要する全ての装置、例えば、蛍光X線分析装置、X線回折装置、赤外分光分析装置や分光蛍光光度計などの分光分析装置、レーザー加工装置、撮像装置のフォーカスを合わせることが必要な画像処理を用いた分析装置などの各種装置に対し、本発明を適用することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、互いに交差する2本の調整用ポインタ14b,14cを投影していたが、1本の調整用ポインタを投影するものであっても良い。この場合、そのライン状の調整用ポインタが基準点Pを通るように、表面3aのZ方向位置を調整するという容易な作業で、表面3aのZ方向位置を、レーザ光の焦点位置に一致させることができる。なお、3本以上の調整用ポインタを投影するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1実施形態の発光分光分析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、被測定物の表面のZ方向位置とレーザ光の焦点位置とが一致している状態を示す斜視図であり、(b)は、被測定物の表面のZ方向位置とレーザ光の焦点位置とが不一致の状態を示す斜視図である。
【図3】ポインタ光の進行方向と、そのポインタ光によって投影される調整用ポインタの向きとの関係を模式的に示す図である。
【図4】(a)は、表面がXY平面に対し平行である場合に、表面およびステージ11上に投影される調整用ポインタを示す図であり、(b)は、表面がXY平面に対し傾きを有する場合の被測定物を示す側面図と上面図である。
【図5】(a)は、第2実施形態の発光分光分析装置に設けられる標示マーク投影部と、標示マーク投影部によって表面に投影される基準点ポインタとの関係を模式的に示す図であり、(b)は、第2実施形態の発光分光分析装置において、基準点ポインタと共に、調整用ポインタが投影された被測定物を示す斜視図である。
【図6】変形例の基準点ポインタと、基準点ポインタの交点上に載置された被測定物との関係を模式的に示す図である。
【図7】従来の発光分光分析装置におけるレーザ光の照射と、そのレーザ光の照射によって発生するプラズマとの関係を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 分析装置(位置調整装置)
2 レーザ発振器(レーザ光源)
3 被測定物
3a 表面(調整対象面)
4 対物レンズ(導光光学系)
5 プラズマ
12a 標示マーク投影部(基準点標示手段)
12b,12c 調整用マーク投影部(調整用マーク投影手段)
14b,14c 調整用ポインタ(調整用マーク)
16 ライン状の光
17 平面(面)
22a,22b 標示マーク投影部(基準点標示手段)
24 基準点ポインタ(基準点標示手段)
P 基準点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整対象面における所定の基準点を標示する基準点標示手段と、
前記調整対象面に交わる第1方向における前記調整対象面の位置が、既定位置に近いほど、前記基準点標示手段により標示される前記基準点に近い位置に、調整用マークを投影する調整用マーク投影手段とを備えることを特徴とする位置調整装置。
【請求項2】
前記調整用マーク投影手段は、前記既定位置と、前記調整対象面上の基準点の第1方向位置とが一致する状態において、前記基準点標示手段により標示される基準点に、前記調整用マークを投影することを特徴とする請求項1記載の位置調整装置。
【請求項3】
前記調整用マーク投影手段は、
ライン状の調整用マークを前記調整対象面に投影することを特徴とする請求項2記載の位置調整装置。
【請求項4】
前記調整用マーク投影手段は、
前記調整対象面に投影されるライン状の調整用マークの長手方向と前記第1方向とに平行な面に対して斜めの方向に進行するライン状の光を、前記調整対象面へ向けて照射することにより、前記ライン状の調整用マークを投影することを特徴とする請求項3記載の位置調整装置。
【請求項5】
前記調整用マーク投影手段は、
互いに交差する少なくとも2本のライン状の調整用マークを前記調査対象面へ投影するものであり、
前記調整対象面における基準点の第1方向位置が前記既定位置に一致する場合、前記少なくとも2本のライン状の調整用マークは、前記基準点で交差することを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の位置調整装置。
【請求項6】
前記基準点標示手段は、
前記調整対象面上の基準点を交点とする十字状の標示マークを、前記調整対象面へ投影するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の位置調整装置。
【請求項7】
レーザ光を被測定物に照射し、被測定物に含まれる成分をプラズマ化させて分析することにより、被測定物に含まれる成分を分析する発光分光分析装置であって、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
そのレーザ光源からのレーザ光を被測定物に案内する導光光学系と、
被測定物の表面である調整対象面上の基準点を標示する基準点標示手段と、
前記レーザ光の光軸方向における前記調整対象面の位置が、前記導光光学系により案内されるレーザ光の焦点位置に近いほど、前記基準点標示手段により標示される前記基準点に近い位置に、調整用マークを投影する調整用マーク投影手段とを備えることを特徴とする発光分光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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