説明

低レベル放射性廃棄物収納容器

【課題】低レベル放射性廃棄物を収容できて、放射能の遮断性が高く運搬時等に落下させたとしてもひび割れ等によって放射能が漏出しないようにした。
【解決手段】低レベル放射性廃棄物収納容器1は、低レベル放射性廃棄物を収納する容器本体2と、容器本体2の開口を密閉する蓋3とを備えた。容器本体2と蓋3は、薄板鋼板からなる内壁6と、内壁6の外側に設けたコンクリート層7とを積層して形成した。コンクリート層7内には鉄筋9を格子状に配設し、内壁6と鉄筋9とを波形ジベル10の頂部と底部とで溶接して内壁6とコンクリート層7を一体化した。容器本体2と蓋3はボルトによって接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電施設等で発生する汚泥、焼却灰、土、瓦礫等の低レベル放射性廃棄物を収容して保管や運搬等をするための低レベル放射性廃棄物収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災によって原子力発電所で事故が発生し、周辺地域は放射能による汚染の危険にさらされている。この周辺地域では瓦礫や土壌等が低レベルの放射能に汚染され、また、これら瓦礫等を焼却処理した焼却灰や汚染土や汚泥等の低レベル放射性廃棄物があふれている。そのため、これらの焼却灰や汚泥等の低レベル放射性廃棄物の処分方法が大きな問題となっている。
国や自治体等では低レベル放射性廃棄物をコンクリート製容器等の耐久性のある耐放射性容器に収納して一時的に仮置き保管したり地中に埋設したりすることを容認している。
【0003】
このような低レベル放射性廃棄物を収納する容器として、例えば特許文献1に記載されたものが提案されている。
この放射性廃棄物収納容器は、セメント中に小鋼球群と大鋼球群を添加してなるコンクリートによって放射性廃棄物を収容する内缶を製造し、この内缶を金属製の外缶内に装填することで構成されている。この容器によって、内部に収納された放射性廃棄物から放出される放射能がコンクリート製の内缶から外部に漏れないようにしている。
特に従来の放射性廃棄物収納容器は容器の密閉性を確保するために、外側に金属製の外缶を形成するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−276194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された放射性廃棄物収納容器は、低レベル放射性廃棄物を収納した状態で一時的に仮置きする場合や地下に埋設する場合等に運搬する必要がある。そして、運搬時等に容器を誤って落下させたりすると、金属製の外缶に直接衝撃が伝わってクラックが入ったり破損し易く、更に落下時の衝撃でコンクリート製の内缶がひび割れする等して放射性廃棄物が露出したり、放射線が外部に漏出したりするおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、放射能の遮断性が高く、運搬時等に落下させたとしてもひび割れ等によって放射能が漏出しないようにした低レベル放射性廃棄物収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による低レベル放射性廃棄物収納容器は、低レベル放射性廃棄物を収納する容器本体と、容器本体の開口を密閉する蓋とを備えており、容器本体と蓋は、薄板鋼材からなる内壁と、内壁の外側に設けられたコンクリート層とが積層されてそれぞれ構成されていることを特徴とする。
本発明の低レベル放射性廃棄物収納容器によれば、薄板鋼材からなる内壁によって密閉性を確保すると共に外側のコンクリート層によって放射能が外部に放出されるのを防止することができる。そして、運搬時等に低レベル放射性廃棄物収納容器を落下させたとしても外側のコンクリート層が緩衝材としての役割を果たして衝撃を緩和するため内壁が損傷するおそれがなく、内部に収容された放射性廃棄物が露出したり放射能が漏れ出したりすることを抑制できる。
【0008】
また、コンクリート層内には鉄筋が配設され、内壁と鉄筋とがジベルによって接合されていてもよい。
また、コンクリート層内には鉄筋が配設され、内壁と鉄筋とが連結鋼材によって接合されていてもよい。
これによって、薄板鋼材からなる内壁とコンクリート層とが高強度で一体に形成されているため、落下時に破損したりクラックが入ったりするおそれが小さい。
【0009】
また、容器本体と蓋はボルトによって密閉されていて、蓋と容器本体を連結する他のボルトに吊り金具が設けられている。
低レベル放射性廃棄物収納容器をクレーン等で吊り上げて運搬する際、吊り金具を蓋だけでなく容器本体にも他のボルトを介して連結したので、強度が高く落下や蓋の分離等を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による低レベル放射性廃棄物収納容器によれば、薄板鋼材からなる内壁によって容器内の密閉性を確保できて放射能の遮断性が高く、更に外側のコンクリート層によって放射能が外部に放出されることを確実に防止できる。しかも、運搬時等に容器を落下させたとしてもコンクリート層が緩衝材となって衝撃を緩和でき、内壁にひび割れ等が生じることを防止して内部に収納した放射性廃棄物から放射能が外部に漏出しない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態による低レベル放射性廃棄物収納容器を示す斜視図である。
【図2】第一実施形態による低レベル放射性廃棄物収納容器の縦断面図である。
【図3】図2に示す低レベル放射性廃棄物収納容器の厚み部分の内部構成を示す部分断面図である。
【図4】容器本体の底板のジベル配置構成を示す説明図である。
【図5】(a)は蓋と容器本体を接合するボルトを示す断面図、(b)は吊り金具を示す断面図である。
【図6】第二実施形態による低レベル放射性廃棄物収納容器の縦断面図である。
【図7】図6に示す低レベル放射性廃棄物収納容器の厚み部分の内部構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による低レベル放射性廃棄物収納容器について説明する。
図1乃至図5は第一実施形態による放射性廃棄物収納容器1を示す図であり、図1において低レベル放射性廃棄物収納容器1は容器本体2と蓋3とで構成されている。この低レベル放射性廃棄物収納容器1は例えば四角形箱状に形成されており、内部に瓦礫、汚染土、汚泥、焼却灰等を含む低レベル放射性廃棄物を収納する容器本体2と、容器本体2の開口をボルト4等で密閉して封止する蓋3とを備えている。
【0013】
図2に示す低レベル放射性廃棄物収納容器1の縦断面図において、容器本体2及び蓋3はその内側に薄板鉄板からなる内壁6が形成され、内壁6の外側に所定厚みのコンクリートからなるコンクリート層7が形成された二層構造とされている。なお、内壁6とコンクリート層7の角部はR加工とすることで落下時や衝突時等の衝撃を吸収できる。内壁6を構成する薄板鉄板はシームレス溶接することで形成できる。
内壁6によって容器本体2と蓋3との密閉性を確保し、コンクリート層7によって内部に収納された低レベル放射性廃棄物から放出される放射能が外部に漏出されることを防止できる。
【0014】
蓋3と容器本体2の構成について説明すると、図2及び図3において、コンクリート層7内の外面近くには格子状に鉄筋9が組み込まれており、鉄筋9と薄板鉄板の内壁6との間には帯状の鉄板を山形に折り曲げた波形ジベル10が配列されている。図3に示す拡大図において、波形ジベル10は波形形状の一方の頂部10aと他方の底部10とこれら頂部10a及び底部10bを連結する傾斜部10cとが連続して凹凸の波形に形成されている。
そして、例えば頂部10aが薄板鉄板からなる内壁6に溶接され、底部10bが鉄筋9に溶接されている。この構造により内壁6とコンクリート層7とが強固に連結されて一体化されている。また、波形ジベル10は図4に示すと共に後述するように縦横方向に格子状に配列され、それぞれ頂部10aと底部10bとで内壁6と鉄筋9に溶接で接合されている。
【0015】
図3は容器本体2の底面2aのコンクリート層7内における波形ジベル10によるトラス構造を示すものである。図3及び図4において、例えば横方向に延びる波形ジベル10と縦方向に延びる波形ジベル10とは一方の頂部10aと他方の底部10bとが上下に非接触に直交するように配設され、それぞれ頂部10aと底部10bとで内壁6と鉄筋9に溶接で接合されている。この構成は底面2aだけでなく、容器本体2の側面や蓋3のコンクリート層7内においても同一構成を有している。
【0016】
容器本体2の開口に蓋3を密閉させて、図5(a)に示すように蓋3の四隅の凹部に形成されたネジ孔を通してボルト4を挿通して容器本体2のコンクリート層7内に設けたインサート12のねじ穴12aに螺合させることになる。また、一部のねじ穴12aには図5(b)に示すように吊り金具14付きのボルト4が螺合されている。吊り金具14付きのボルト4は蓋3の四辺の少なくとも対向する2辺または4辺に取り付けるものとするが、角部でもよい。
【0017】
なお、低レベル放射性廃棄物収納容器1はトラックやトレーラー等で運搬できる外径寸法と重量とされており、例えば外寸幅1700mm×奥行き2450mm×高さ1700mmとされている。また、この容器1の容量は4.2mとされ、容器重量7トン、瓦礫、汚染土、汚泥、焼却灰等の放射性廃棄物を収納した状態で総重量15トン程度となる。また、内壁6の厚みは例えば2.3mm、コンクリート層7の厚みは150mmとすることができる。
【0018】
本実施形態による低レベル放射性廃棄物収納容器1は上述の構成を備えているから、容器本体2の内部に瓦礫、汚染土、汚泥、焼却灰等を含む低レベル放射性廃棄物を収納して蓋3で密閉し、ボルト4によって蓋3と容器本体2を接合して封止することができる。容器1の内部は容器本体2と蓋3の内面に設けた薄板鋼板からなる内壁6で密閉でき、しかも外側にコンクリート層7を形成したから放射能が外部に漏出することを防止できる。
また、この低レベル放射性廃棄物収納容器1はそのまま運搬したり、一次仮置きしたりすることができる。更に、この容器1をそのまま地下に埋設処理することもできる。
【0019】
運搬時等に誤って放射性廃棄物収納容器1を落下させたとしても、内壁6とコンクリート層7は鉄筋9と波形ジベル10によって一体化できるため強度が高く、しかも所定厚みを有する外側のコンクリート層7が緩衝材の役割を果たすことになるから内壁6の損傷を防止でき、内容物である低レベル放射性廃棄物が外部に飛散したり放射能漏れを生じたりすることを確実に防止できる。また、放射性廃棄物収納容器1の内壁6及びコンクリート層7の角部をR加工したことで落下時の損傷やクラック等を抑制できる。
また、運搬に際して、クレーン等のフックで吊り金具14に係合させることで持ち上げて移送できる。運搬の際、吊り金具14を蓋3だけでなく容器本体2にもボルト4を連結したので、強度が高く落下や蓋3の分離等を防止できる。
【0020】
なお、本発明は、上述の第一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更や置換等が可能である。
次に、本発明の第二実施形態による低レベル放射性廃棄物収納容器20について図6及び図7により説明するが、上述した第一実施形態と同一または同様な部分、部品には同一の符号をもちいて説明する。
本第二実施形態による低レベル放射性廃棄物収納容器20はコンクリート層7内に波形ジベル10は設けられておらず、鉄筋によってコンクリート層7を強化して内壁6と一体化させている点において第一実施形態と相違し、その余の構成で共通する。
【0021】
本第二実施形態による低レベル放射性廃棄物収納容器20は、図6及び図7に示すように、容器本体2と蓋3のコンクリート層7内において、格子状の鉄筋9がコンクリート層7の厚み方向に離間して二列に配列されている。そして、図7に示すように、これら二列の鉄筋9に略直交する方向に略L字形状をなすL字鉄筋21が配設されて溶接され、L字の屈曲部21aが内壁6に溶接されている。また、L字鉄筋21は鉄筋9の延在方向に所定間隔で取り付けられている。これによって、内壁6とコンクリート層7が一体化されている。
本第二実施形態による低レベル放射性廃棄物収納容器20は、上述した構成によって、第一実施形態による低レベル放射性廃棄物収納容器1と同様の効果を得られる。
【0022】
なお、コンクリート層7内において、内壁6と鉄筋9を連結する連結鋼材はL字鉄筋21に限定されるものではなく、内壁6と鉄筋9を連結できる鋼材であれば適宜形状の鋼材を採用できることはいうまでもない。
また、上述の各実施形態では、低レベル放射性廃棄物収納容器1、20を四角形箱状に形成したが、これに限定されることなく適宜形状を採用でき、例えば円筒形状やドラム缶形状等でもよい。
【符号の説明】
【0023】
1,20 低レベル放射性廃棄物収納容器
2 容器本体
3 蓋
4 ボルト
6 内壁
7 コンクリート層
9 鉄筋
10 波形ジベル
14 吊り金具
21 L字鉄筋
21a 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低レベル放射性廃棄物を収納する容器本体と、該容器本体の開口を密閉する蓋とを備えており、前記容器本体と蓋は、内側に設けられた薄板鋼材からなる内壁と、該内壁の外側に設けられたコンクリート層とが積層されてそれぞれ構成されていることを特徴とする低レベル放射性廃棄物収納容器。
【請求項2】
前記コンクリート層内には鉄筋が配設され、前記内壁と鉄筋とがジベルによって接合されている請求項1に記載された低レベル放射性廃棄物収納容器。
【請求項3】
前記コンクリート層内には鉄筋が配設され、前記内壁と鉄筋とが連結鋼材によって接合されている請求項1に記載された低レベル放射性廃棄物収納容器。
【請求項4】
前記容器本体と蓋はボルトによって密閉されていて、前記蓋と容器本体を連結する他のボルトに吊り金具が設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載された低レベル放射性廃棄物収納容器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−83513(P2013−83513A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222857(P2011−222857)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)