説明

低乱用性薬学的製剤

本発明は、減少された乱用潜在性を有する精神作用薬の薬学的組成物、処方精神作用薬の剤形の乱用潜在性を減少する方法を導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減少された乱用潜在性を有する処方箋が必要な精神活性化薬物製剤の剤形、および処方箋が必要な精神活性化薬物の剤形の乱用潜在性を減少する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処方箋が必要な精神活性化薬物(prescription psychoactive drugs)は、患者が慢性または激しい痛みを管理すること、感情または行動のバランスを回復させること、睡眠障害を制御すること、または肥満症と戦うことを補助し得る。しかしながら、このような処方医薬品(prescription medications)が乱用されると、嗜癖を含む結果は、危険であり得、致命的でさえあり得る。3つのクラスの一般的に乱用される処方薬(すなわち、オピオイド、鎮静薬およびトランキライザーを含む中枢神経系(CNS)抑制薬ならびに興奮薬)の乱用に関連する危険性が、よく文献に記載されている。
【0003】
オピオイド(opioids)は、モルヒネ、コデイン、および関連薬物、例えばオキシコドン(ペルコダン(Percodan)およびオキシコンチン(OxyContin))、ヒドロコドン(ヴァイコディン(Vicodin))、およびメペリジン(デメロール(Demerol))を含み、そして通常、痛みを緩和するために処方される。処方されるように摂取されれば、オピオイドは、予期しない副作用無しで痛みを効果的に管理するために使用され得る。オピオイドの慢性的な使用は、耐性を生じさせ得、このことは、使用者が同一の効果を得るためにより高い用量を摂取しなければならないことを意味する。長期間の使用はまた、身体的依存および嗜癖へと至り得る。薬物の個々の不連続な使用時に禁断症状が生じ得る。禁断症状としては、不安、筋肉痛および骨痛、不眠、下痢、嘔吐、鳥肌を伴うコールドフラッシュ(cold flashes)、ならびに不随意の脚運動が挙げられる。オピオイドを常習する人は、該薬物を過剰摂取する傾向が強くなり、これは致死的であり得る。
【0004】
最も一般的に処方されるCNS抑制薬(CNS depressants)の中でも、例えばメフォバルビタール(メバレル(Mebaral))およびペントバルビタールナトリウム(ネンブタール(Nembutal))などのバルビツレート類は、不安症、緊張、および睡眠障害を治療するために処方され、ならびに、例えばジアゼパム(ヴァリウム(Valium))およびアルプラゾラム(ザナックス(Xanax))などのベンゾジアゼピン系類は、典型的に、不安症、急性ストレス反応、およびパニックアタック(panic attacks)の治療のために処方される。例えばトリアゾラム(ハルシオン(Halcion))およびエスタゾラム(プロサム(ProSom))などの他のベンゾジアゼピン類は、睡眠障害の短期間の治療のために処方される。CNS抑制薬の種々のクラスが異なって作用するが、それらは全て、睡眠障害または不安に苦しむ人において、有利な眠気を催すかまたは気分を落ち着かせる効果を生じさせる。しかし、これらの薬物を長期間に渡って使用すると、身体に耐性が発達し、初期の効果を得るためにより多い用量が必要になる。加えて、連続使用は身体的依存へ至り得、そして使用を減少させるかまたは停止すると、禁断症状へと至り得る。バルビツレート類およびベンゾジアゼピン類は、いずれも乱用について潜在性を有し、そして処方時のみ使用されるべきである。オピオイドの場合と同様に、これらの薬物の過剰摂取は致死的であり得る。
【0005】
興奮薬(stimulants)は、心拍数、血圧および代謝を増加させ、高揚感および活気を提供し、そして精神的警戒を増加させる。メチルフェニデート(リタリン(Ritalin))およびデキストロアンフェタミン(アデロール(Adderall)およびデキセドリン(Dexedrine))などの興奮薬は、睡眠発作(narcolepsy)、注意欠陥/過活動性障害、および他の治療に応答しなかったうつ病の治療のために処方される。それらはまた、肥満症の短期間の治療のためにも使用され得る。ヒトは、興奮薬が生じさせ得る幸福で増強された活気の感覚に中毒となり得る。しかし、短期間に渡って繰り返し高用量の興奮薬を摂取することは、敵意または妄想の感情へと至り得る。更に、高用量の興奮薬を摂取することは、危険なまでに高い体温および不規則な心拍を生じさせ得る。
【0006】
これら3クラスの薬物の乱用潜在性は、大きな関心事である。これは、特に、オピオイドおよび興奮薬について真実であり、したがって、それらは、麻薬取締局(Drug Enforcement Agency (DEA))によって、スケジュールII薬物(精神的または身体的依存を生じさせる強い傾向を伴う高い乱用潜在性を有するが、いくつかの承認された医療用途を有する物質)として分類されている。
【0007】
医療用精神活性化薬物の種々の剤形が、入手可能または可能である。これらには、カプセル剤、錠剤、経皮パッチおよび液体懸濁剤が挙げられる。例えば、メチルフェニデート(リタリン(Ritalin))は、経口、錠剤および徐放性錠剤(extended-release tablet)剤形で入手可能である。デキストロアンフェタミン(アデラール(Adderall))は、即時放出性錠剤(immediate-release tablet)および徐放性カプセル剤形で入手可能である。メチルフェニデート、アンフェタミン、フェンタニール、3−メチルフェンタニール、モルヒネ、エトルフィンなどは、経皮パッチに組み込まれ得る。フェンタニールパッチ(デュラジェシック(Duragesic))は既に市場に存在しており、そしてメチルフェニデートパッチ(Methypatch)はFDAレビュー下にある。即時放出性および徐放性形態の薬物の液体懸濁剤がまた、可能である。徐放性システムは、エチルセルロースのさらなるコーティングと共に薬物イオン交換複合粒子を使用することによって、処方され得る。イオン交換技術は、アンフェタミン、メチルフェニデート、ヒドロコドン、コデイン、モルヒネなどの多くのイオン性薬物について、信頼性の高い液体制御放出を可能にする。
【0008】
これらの種々の剤形は、適切に摂取または投与されると、価値ある医療利点を提供するが、乱用について高い潜在性をも有する。例えば、徐放性剤形は、粉砕するかまたは噛み砕き、そして次いで飲み込むか鼻から吸い込む(snorting)ことによって、あるいは水などに混合または溶解しそして注射することによって、乱用される。経皮パッチは、噛まれて、制御された物質のバッカル、舌下、または経口吸収による迅速な開始を提供し得る。更には、パッチの正常な投与後の相当な薬物残渣が非常に一般的である。このような残渣は、乱用のために抽出および濃縮され得る。液体懸濁剤は、同様に濃縮されそして乱用され得る。
【0009】
これらの問題を考慮して、減少された乱用潜在性を有する精神活性化薬物の新規でかつ改善された剤形が所望されている。薬物の剤形の乱用潜在性を減少させることに対していくつかの試みが、米国特許において見られる。例えば、剤形へのオピオイド拮抗薬の混合(米国特許第4401672号、米国特許第4457933号、米国特許第5162341号、米国特許第5236714号、米国特許第6277384号、米国特許第6228863号)、シトクロムP450 2D6酵素阻害剤の使用(米国特許第6124282号)、および剤形への水溶性/ゲル化性材料の混合(米国特許第4070494号)が挙げられる。しかしながら、これらの試みは、依然として、スノーティングまたはスモーキングまたは不適切な経口投与による医薬の乱用を人に抑止させるという効果の点で、理想からかけ離れている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、精神活性化薬物や他の乱用薬の剤形の乱用潜在性を減少させること、および乱用潜在性を減じた精神活性化薬物の剤形を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、スノーティング(snorting)/注射などによる乱用を抑止することにおいて増加された効果を有する、オピオイド、CNS抑制薬、興奮薬の経口剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の剤形の精神活性化薬物(psychoactive drug)(すなわち中央神経系に影響を与える薬物)は、剤形において医療用として承認されており、乱用潜在性を有する薬物であれば特に限定されない。前記薬物としては、オピオイド、中央神経系(CNS)抑制薬や興奮薬(例えば、商標アデロールXR(Adderall XR)、メタデータCD(Matadate CD)、カディアン(Kadian)、オラモルフSR(Oramorph SR)、MSコンチン(MS Contin)、オキシコンチン(Oxycontin)などの市販薬物)のそれぞれ単独または組み合わせを含む。
【0012】
多くの麻酔剤(narcotic drugs)や興奮薬(すなわち、硫酸アンフェタミン、アンフェタミンアスパルテート、アンフェタミンサッカレート、硫酸モルヒネ、塩酸オキシコドン、塩酸メチルフェニデートなど)は、正電荷を有するアミノ基を含む塩基性薬物である。本発明の一つの目的は、この化学的性質を利用する。これらの塩基性薬物は、負電荷を有する薬剤(以下、「抑止物質」という)と反応し、水性環境中でイオン会合性複合体(ion-associated complex)を形成し得る。これらのイオン会合性複合体の吸収は、結果としての低水溶性のため阻害される。
【0013】
一つの局面では、ラウリル硫酸ナトリウムやスルホコハク酸ジオクチルナトリウムなどのアニオン界面活性剤は、正電荷を有するアミン薬物と相互作用させて低水溶解性複合体を形成するために用いられる。これは、たとえば、不活性の不均一マトリックスからのマレイン酸クロルフェニラミンの放出におけるアニオン界面活性剤の影響について研究し、マレイン酸クロルフェラミンとアニオン界面活性剤の低水溶解性複合体の形成が、低界面活性剤濃度において放出を最小限に減速することを見出したウェルら(Wells et al.)に由来する(Drug Dev. Ind. Pharm., 1992, 18(2), 175-186)。さらに、ラオら(Rao et al.)は、「グアーガムマトリックス(guar gum matrix)からのリファンピシン(rifampicin)の放出におけるラウリル硫酸ナトリウムの影響」についての論文を出した(Indian Journal of Pharmaceutical Sciences, 2000, Sep-Oct, 62(5), 404-406)。また彼らは、ラウリル硫酸ナトリウムの濃度を15%に増加したとき、放出が徐々に最小限にまで遅くなり、これは低水溶解性錯体の形成に起因すると述べた。またさらに、マツチナーら(Matschiner et al.)は、エリスロマイシンとラウリル硫酸ナトリウムの間でのイオン対を形成を特徴付け、モル比1:1での複合体形成の仮説を確認した(Pharmazie, 1995, 50(JuIy)1 462-464)。
【0014】
さらに、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性マトリックスポリマーと相互作用し、水中においてより粘調なゲルを形成することが知られている。このより粘調なゲル層は、一般的に溶解速度の低下を招く。
【0015】
さらなる局面では、アクリル酸ポリマー、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、スチレンジビニルベンゼンスルホネート、カラギーナンなどの多くのイオン性ポリマーもまた正電荷を有する薬物と複合体を形成し得る。複合体は、薬物化合物のアミノ基とポリマーのカルボニル基の間でのイオン引力により形成される。水中に分散したとき、これらのポリマーの親水性能は、媒体に粘度を付与し、さらに薬物の放出と吸収を阻害する。
【0016】
本発明の別の局面では、正電荷を有するアミン薬物は、アルラレッド(allura red)、アマランス(amaranth)、ブリリアントブルー(brilliant blue)、カンタキサンチン(canthaxanthin)、カルミンエリスロシン(carmine erythrosine)、インディゴカルミン(indigo carmine)、ポンソー4R(ponceau 4R)、キノリンイエロー(quinoline yellow)、タートラジン(tartrazine)、チモールブルー(thymol blue)、ブロモチモールブルー(bromothymol blue)、ブロモクレゾールグリーン(bromocresol green)、ブロモピロガロールレッド(bromopyrogallol red)、フェノールレッド(phenol red)、クレゾールレッド(cresol red)などの負電荷を有する色素と反応して、水溶液中にイオン会合性複合体を形成し得、薬物の選択的な抽出を阻止する。
【0017】
さらに、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、メグルミン(meglumine)、リン酸カルシウムなどのアルカリ剤は、アミノ薬物の塩形態を遊離塩基に転換するために用い得る。一般的に、遊離塩基は、その塩よりもより低い溶解性を有する。たとえば、pH1.5と7.4の場合における硫酸モルヒネの水溶解度は、それぞれ90.1mg/mL、1.3mg/mLである。pH1.5と7.4の場合における塩酸オキシコドンの水溶解度は、それぞれ182.1 mg/mLと6.1 mg/mLである。アルカリ剤の添加による水溶解度の劇的な減少は、薬物の迅速な溶解の回避および急激な効能を最小限にするために用い得、それは通常薬剤乱用者が切望する。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、抑止物質は、たとえば、活性炭素、ケイ酸マグネシウムアルミニウムまたは活性アルミナなどの吸収物質であり得る。これらの物質は、特に解毒または固体抽出分野において、過去に体内吸収薬物に用いられていた。したがって、これらは、乱用潜在性を最小限にするために本発明においても有用となり得る。
【0019】
上記物質のいずれかを剤形に用いる目標は、人システムにおいて乱用薬物の使用可能性をほとんどなくすことであって、その結果ほとんど「高値」が得られない。したがって、これらの剤形は、薬物乱用者に望ましくない。
【0020】
物質乱用のためのスノーティング(snorting)またはスモーキング(smoking)が広まっており、そして、乱用潜在性を有する薬物製品とのイオン性相互作用が有効であり得る物質の使用は薬物乱用を思いとどまらせることを意味する。そのような前記物質は、薬物の剤形が適切に投与される場合にはその抑止物質(deterrent substance)がその抑制効果を発現しないが、経鼻(スノーティング(snorting))、吸入(スモーキング(smoking))、経口、バッカルまたは舌下投与、または注射のために、剤形が噛み砕かれるか、粉砕される(crushed)かまたは化学的に抽出される場合には抑制効果を発現する方法で、乱用潜在性を有する薬物の剤形へ組み込まれる。
【0021】
抑止物質は、剤形中の薬物から離れた存在として、顆粒、ビーズ(beads)またはミニ錠剤(mini-tablets)などに組み込まれ得、これは、引き続いて、該抑止物質の漏れ(leakage)を防止し、そして正常な用量投与条件下での該抑止物質の吸収を最小化または防止するために、好適なバリアコーティングでコートされる。これらの顆粒/ビーズ/ミニ錠剤は、剤形(すなわち、カプセル、錠剤など)に関心のある薬物と組み合わせられる。
【0022】
顆粒、ビーズおよびミニ錠剤のサイズは、該顆粒が本発明の剤形に組み込まれ得る限り、限定されない。典型的に、顆粒およびビーズは、50μm〜4000μmのサイズを有する。ミニ錠剤は、典型的に、一般的な錠剤(>5/32インチ直径)よりも顕著に小さいサイズを有する。
【0023】
抑止物質を含有し、薬物を含まない顆粒、ビーズまたはミニ錠剤が、活性薬学的成分(API)を含む顆粒、ビーズまたはミニ錠剤と共にカプセル封入される、または混合される場合、該顆粒、ビーズまたはミニ錠剤は、好ましくは同一のサイズのものであり、それぞれのビーズが区別または分離されることを困難にする。
【0024】
経皮パッチ製剤(transdermal patch formulation)で使用される場合、該抑止物質は、好適なバリアコーティングでコートされた前記の顆粒、ビーズ、またはミニ錠剤の形態で使用され得る。
【0025】
少なくとも一つの抑止物質は、該薬剤が組み込まれる薬学的製剤の剤形の重量に対して、10〜70重量%、そして好ましくは10〜50重量%、そして最も好ましくは10〜40重量%のトータル量で使用される。該薬剤は、1以上の前述の物質であり得る。無傷のユニット(すなわち、該物質を含有する過度にコーティングされたミニ錠剤やペレット剤)から放出されず、そして薬理学的効果を有さず、活性成分の放出プロフィールに対して影響を有さないため、抑止物質を非放出の形態で有することが好ましい。
【0026】
抑止物質の顆粒、ビーズ、ミニ錠剤または錠剤は、ローラー圧縮(roller compacting)、流動床または他の好適なコーティング装置における溶液/スラリー/粉末層、錠剤プレスなどの種々の公知の薬学的方法により製造され得る。特に好ましい実施形態としては、非パレーユシード(non-pareil seeds)などのコアシードが、抑止物質の層でコーティングされ、該層状化コアシードにバリアーコーティングが適用される。代替的に、顆粒、ビーズまたはミニ錠剤のコアが抑止物質で主に構成され、そして該コアはそのようなバリヤーコーティングでコートされる。
【0027】
該抑止物質の漏れを最小化または防止するため、そして用量投与の正常条件下での該物質の吸収を最小化するために、抑止物質を含有する顆粒、ビーズまたはミニ錠剤に適用されるバリアコーティング(barrier coating)は、保護コーティング、腸溶性コーティング(enteric coating)または徐放性コーティングあるいはこれらのコーティングの種々の組合せであり得る。
【0028】
好ましい形態において、抑止物質を含有しそして薬物を含有しない顆粒、ビーズまたはミニ錠剤は、GI管に存在する条件下では溶解または放出しない、非溶解性(non-dissolving)の薬学的に許容されるポリマーコーティングでコートされる。このようなコーティングを用いると、抑止物質は、好適に投与される場合は人体において放出されず、そして該非溶解性コーティングでコートされた顆粒、ビーズまたはミニ錠剤を含む薬物製剤が処方箋の目的外のために粉砕される場合にのみ、放出される。このように、抑止物質は正常処方経路下においては、該薬物の作用を妨害しない(すなわち、該薬物と複合体を形成する)。
【0029】
バリアコーティングは、水もしくは好適な有機溶媒中のポリマー溶液を使用してまたは水性ポリマーディスパージョンを使用することによって、パンコーティングまたは流動床コーティングなどのような従来のコーティング技術により適用され得る。
【0030】
保護コーティング(protective coating)として有用な材料は、当該分野において周知であり、そして例えば、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ(ブチルメタクリレート(2−ジメチルアミノエチル)メタクリレート、メチルメタクリレート)、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーなどのセルロース誘導体が挙げられる。提案されるコーティングレベルは、1〜6%、好ましくは2〜4%(w/w)である。
【0031】
腸溶性コーティング層(enteric coating layer)は、4.5よりも高いpHで、特定の遅延時間後、または該コーティングされたユニットが胃を通過した後、溶解する、任意のpH感受性ポリマーであり得る。好ましい遅延時間は、2〜6時間の範囲内である。好適な腸溶性ポリマーとしては、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、および共重合化メタクリル酸/メタクリル酸メチルエステル(例えば、商標オイドラギットL100(EUDRAGIT L100)、オイドラギットL100-55(EUDRAGIT L100-55)、オイドラギットL 30 D-55(EUDRAGIT L 30 D-55)またはオイドラギットS100(EUDRAGIT S100)で販売されている材料)あるいは腸溶性コーティングを得るために使用される類似の化合物が挙げられる。提案されるコーティングレベルは、5〜30%、好ましくは10〜20%(w/w)である。
【0032】
GI管において溶解しない薬学的に許容されるコーティングとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、およびポリ(トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)が挙げられる。好適なコーティングレベルは、抑止物質の早期の漏れを防止するレベルであり、そして使用されるコーティングに依存する。コーティングレベルの範囲は、例えば1〜60%(w/w)である。
【0033】
一つの実施形態では、抑止物質を含むコアは、オイドラギットE100(Eudragit E100)などの酸可溶性コーティング剤でコーティングされ、オイドラギットFS 30(Eudragit FS 30)などの他のアルカリ可溶性コーティング剤が適用される。したがって、コア中の物質はG1管において放出されない、なぜなら粒子が、外層は溶解する比較的アルカリ性の低いG1管に到達したとき、酸に溶解する内部コーティングは溶解しないからである。
【0034】
さらに、本発明の組成物に必要に応じてさらにオーバーコーティング層(overcoating layer)を設けることができる。オパドライ(OPADRY)(登録商標), オパドライII(OPADRY II)(登録商標) (カラーコン(Colorcon)社販売)や、カラーコン社製の対応の着色および無色グレードは、ペレットが粘着性になることを防ぎ、製品に色を付与するために使用され得る。加えて、着色剤および乳白剤を含むかまたは含まないコリコート(Kollicoat IR )(BASF社販売)が、オーバーコーティング層として用い得る。保護または着色コーティングの提案されるレベルは、1〜6%、好ましくは2〜3%(w/w)である。
【0035】
以下の実施例は、本発明のいくつかの局面を示すが、本発明はこれらの実施例の範囲または精神に限定されるものではない。
[実施例]
【実施例1】
【0036】
ラウリル硫酸ナトリウムを含むビーズの製造
ラウリル硫酸ナトリウム(200g)を、タルク(50g)と微結晶セルロース(750g)とともに、造粒化液体であるイソプロピルアルコールを用いて高剪断造粒機(high shear granulator)により顆粒状にした。湿潤塊(wet mass)を1.2mmスクリーンサイズを用いて押出し、押出速度は約30rpm〜50rpmである。押出物は、約400rpm〜1000rpmに速度設定されたspheronizer / marumarizer中で球状化された。得られた球状ペレットを40℃のオーブン中で乾燥させた。
【実施例2】
【0037】
酢酸セルロースでコーティングされたラウリル硫酸ナトリウムを含むペレットの製造
酢酸セルロース(60g)を、攪拌パドル(stirring paddle)を用いてアセトンと酢酸エチル(1:1比、全量1200g)に溶解する。セルロースアセテートコーティング溶液をヴルスター(Wurster)カラムを用いて流動床中のラウリル硫酸ナトリウムビーズ(540g)に噴霧した。噴霧速度は、約5〜15g/分である。内部温度を40〜50℃に設定し、床温度を30〜35℃に維持する。適切な流動化を維持するために空気流量は1秒あたり約5〜8mである。
【実施例3】
【0038】
スルホコハク酸ジオクチルナトリウムとDowex 50X8-200を含むミニ錠剤の製造
スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(150g)、Dowex 50X8-200(350g)、微結晶セルロース(480g)をV型混合機で10分間混合する。ステアリン酸マグネシウム(10g)と二酸化ケイ素(10g)を粉末混合物中に添加し、5分間混合した。潤滑化された粉末混合物を7/32”円形工具(round tooling)を有するロータリープレスにより、ミニ錠剤を圧縮する。目的とするタブレットの重量は90mgであり、タブレットの硬度は5kpであり、もろさ(friability)は0.8%未満であった。
【実施例4】
【0039】
酢酸セルロースでコーティングされたスルホコハク酸ジオクチルナトリウムとDowex 50X8-200を含むミニ錠剤の製造
酢酸セルロース(60g)を、攪拌パドル(stirring paddle)を用いてアセトンと酢酸エチル(1:1比、全量1200g)に溶解する。酢酸セルロースコーティング溶液をサイドベントパン(side-vented pan)中のスルホコハク酸ジオクチルナトリウム/Dowex 50X8-200のミニ錠剤(540g)に噴霧する。パン速度は、約10〜20rpmである。噴霧速度は、約5〜15g/分である。内部温度は、40〜50℃に設定し、床の温度は30〜35℃に維持する。空気流量は30〜45cfmである。
【0040】

実施例2〜4からのビーズとミニ錠剤は、活性ビーズやミニ錠剤としてまったく同じ外観を有するようにオーバコートされ得る。引き続いて、該ビーズとミニ錠剤は活性単位と共にカプセル封入され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性な薬学的成分として精神活性化薬物、および少なくとも1つの吸着剤または水溶液環境中で該薬物とイオン性結合をする物質を含み、
該吸着剤またはイオン性結合物質が、適切に投与されたときには該薬物と相互作用しないが、破砕されるか剤形から抽出されたときには相互作用をする形態である、
減少された乱用潜在性を有する剤形。
【請求項2】
前記吸着剤またはイオン性結合物質が、顆粒、ビーズまたはミニ錠剤中に含まれ、薬物を含まない、請求項1記載の剤形。
【請求項3】
前記顆粒、ビーズまたはミニ錠剤が、薬学的に許容される保護コーティングまたは腸溶性コーティングでコートされている、請求項2記載の剤形。
【請求項4】
前記保護コーティングが、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ(ブチルメタクリレート(2−ジメチルアミノエチル)メタクリレート、メチルメタクリレート)およびポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる、請求項3記載の剤形。
【請求項5】
前記pH感受性ポリマーが、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、および共重合化メタクリル酸/メタクリル酸メチルエステルからなる群から選ばれる、請求項3記載の剤形。
【請求項6】
前記顆粒、ビーズまたは錠剤が、胃腸管中で溶解しないコーティングでコートされている、請求項2記載の剤形。
【請求項7】
前記胃腸管中で溶解しないコーティングが、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)およびポリ(トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)からなる群から選ばれる、請求項6記載の剤形。
【請求項8】
前記吸着剤が、活性炭、ケイ酸マグネシウムアルミニウムおよびアルミナからなる群から選ばれる、請求項1記載の剤形。
【請求項9】
前記薬物にイオン性結合する物質が、アニオン界面活性剤、アクリル酸ポリマー、スチレン−ジビニルベンゼンスルホネート、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、負電荷を有する色素およびアルカリ剤からなる群から選ばれる、請求項1記載の剤形。
【請求項10】
前記アニオン界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウムおよびスルホコハク酸ジオクチルナトリウムから選ばれる、請求項9記載の剤形。
【請求項11】
前記負電荷を有する色素が、アルラレッド、 アマランス、 ブリリアントブルー、 カンタキサンチン、カルミンエリスロシン、 インディゴカルミン、ポンソー4R、 キノリンイエロー、タートラジン、 チモールブルー、ブロモチモールブルー、ブロムクレゾールグリーン、 ブロモピロガロールレッド、フェノールレッドおよびクレゾールレッドから選ばれる、請求項9記載の剤形。
【請求項12】
前記アルカリ剤が、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、メグルミンおよびリン酸カルシウムから選ばれる、請求項9記載の剤形。
【請求項13】
酸可溶性コーティングが、ミニ錠剤、顆粒またはビーズに適用され、アルカリ可溶性の別のコーティングがそれに適用される、請求項3記載の剤形。

【公表番号】特表2008−516981(P2008−516981A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537002(P2007−537002)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/037259
【国際公開番号】WO2006/044805
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(506339316)スパーナス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】