説明

低出生体重児において使用するための組成物

本発明は、低出生体重児において使用するための組成物に関する。特に、組成物は、低出生体重児において完全経腸栄養を達成するために使用されるプロバイオティクス組成物である。本発明はまた、低出生体重児用製剤の製造における特定のプロバイオティクスの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、低出生体重児において使用するための組成物に関する。特に、本組成物は、低出生体重児において完全経腸栄養を達成するために使用されるプロバイオティクス組成物である。本発明はまた、低出生体重児用製剤の製造における特定のプロバイオティクスの使用にも関する。
【0002】
[発明の背景]
新生児集中治療室において、腸管機能が未成熟であること、広域スペクトルの抗生物質の頻繁な使用、経腸栄養開始の遅れ、感染管理手順、及びミルクの殺菌は、早産児の正常な共生微生物への曝露を制限する。結果として、低出生体重(≦1500g)早産児では、特に、健康な正期産児において通常優勢なビフィズス菌及び乳酸菌に関して、遅い時期に異常なパターンで消化管にコロニーが形成される。この腸管のコロニー形成障害は、早産児を、壊死性腸炎、バクテリアルトランスロケーションのリスク増加などの好ましくない状態にかかりやすくする可能性がある。
【0003】
そのような段階で、腸管機能が未成熟であれば、完全経腸栄養はほとんど不可能となる。結果として、すべての低出生体重の新生児は、数週間、経静脈栄養を日常的に受ける。しかしながら、これは、カテーテル関連敗血症、血栓症、及び胆汁鬱滞を含む合併症の高いリスクを伴う、非常に侵襲的な技術である。
【0004】
プロバイオティクスの経腸補給は、例えば、Lancet、2007、369、1614〜1620においてDeshpande,G.らによって、Cochrane Database Syst.Rev.、2008、(1)、CD005496においてAlfaleh,K.らによって、又はArch.Dis.Child、1997、76、F101〜107においてKitajima,H.らによって記述された試験から結論付けられたように、超早産児において壊死性腸炎の発生を低減させることが分かっている。
【0005】
The Journal of Pediatrics、2008、801〜806においてIndrio,F.らもまた、人工栄養を受けている健康な早産児において、栄養摂取耐性及び胃腸の運動性に対する、食事によるプロバイオティクス補給の影響を記述している。しかしながら、この研究は、1500g以下の出生体重を有する早産児の要求には対処していない。加えて、プロバイオティクスの補給は、経腸栄養摂取量を増加させなかった。
【0006】
したがって、最近の報告は、プロバイオティクスの補給が低出生体重未熟児において腸管機能を強化させ得ることを示唆しているが、経腸栄養摂取率は向上していない。
【0007】
したがって、経静脈栄養を減らす又はさらには止めることができるように、低出生体重児において完全経腸栄養に到達する時間を短縮することが依然として必要である。したがって、非経口的栄養摂取の継続期間の推定される減少は、非常に多数の低出生体重児にとって潜在的に有益であるだろう。
【0008】
[本発明の目的]
したがって、低出生体重児における非経口的栄養摂取の頻度及び/又は継続期間を減少させることが本発明の目的である。
【0009】
[発明の概要]
この目的は、独立請求項によって達成される。従属請求項は、本発明の中心となる概念をさらに発展させる。
【0010】
したがって、第1の態様において本発明は、1500g以下の出生体重を有する乳幼児において完全経腸栄養を達成するのに使用するためのプロバイオティクス組成物に関する。
【0011】
さらなる態様において、本発明はまた、早産児用製剤の製造におけるラクトバチルス・ラムノサス及びビフィドバクテリウム・ロンガムの使用にも関する。
【0012】
以下に、添付の図面を参照して本発明をさらに記述する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】試験プロファイルを示す図である。
【図2】完全経腸栄養に到達する時間を示す図である。詳細には、すべての乳幼児(上部)及び出生体重が1500g以下の乳幼児の2つの処置群における完全経腸栄養に対するカプランマイヤー(Kaplan−Meier)曲線を示す。
【0014】
[発明の詳細な説明]
本発明において、プロバイオティクス微生物は、宿主の腸管微生物バランスを改善することによって宿主に有益な影響を与える微生物であるとみなされる(Fuller,R;1989;J.Applied Bacteriology、66:365〜378)。
【0015】
本発明によると、プロバイオティクス組成物を、1500g以下の出生体重を有する乳幼児において完全経腸栄養を達成するために使用することができることが判明した。
【0016】
一般に、1500g以下の出生体重を有する乳幼児は、早産児及び/又は子宮内発育遅延があった乳幼児である。
【0017】
早産児は、在胎週齢37週より前に生まれた新生児である。特定の実施形態において、本発明は、在胎週齢が32週未満の早産児に特に対処する。
【0018】
「完全経腸栄養を達成すること」は、乳幼児が、その健康状態に対して何の悪影響もなく食物を摂取することができることを意味する。完全経腸栄養は、乳幼児が、好ましくは下痢及び/又は逆流などの悪影響がなく、食事を吸収及び消化することができる場合に達成される。完全経腸栄養はまた、食事によって、必要とされるすべてのエネルギー及び栄養素を、胃腸管を介して乳幼児に提供することができる場合に達成される。
【0019】
したがって、組成物はまた、低出生体重児において経腸栄養管理を改善するために使用されてもよい。
【0020】
完全経腸栄養は、前記乳幼児の胃腸耐性を改善することによって達成することができる。これは、未成熟の消化及び運動機能を有し、出生時に完全にコロニー形成されている腸を有さない低出生体重児において、特に難題である。
【0021】
したがって、本発明の組成物は、低出生体重児の経腸栄養に対する耐性を改善するために使用されてもよい。
【0022】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、低出生体重児の胃腸耐性を改善するために使用することができる。
【0023】
驚くべきことに、本発明の組成物は、完全経腸栄養を達成するのに役立つだけでなく、経腸栄養摂取率を向上させ、完全経腸栄養までの時間を減少させる能力も有することが判明した。
【0024】
したがって、本発明の組成物は、非経口的栄養摂取が必要な出産後の時間の長さを減少させるために使用することができる。
【0025】
低出生体重児は、出生時の体重が1500g以下の乳幼児を意味する。
【0026】
プロバイオティクスが超未熟児において腸管機能を向上させることができる機構(複数可)は、依然として解明されていない。理論に拘束されることは望まないが、この機構は、消化管粘膜への細菌の付着の減少、腸管バリア機能の向上、虚血性傷害に対する保護、又はNF−kBを介する炎症反応の減少を含む可能性がある。
【0027】
適したプロバイオティクス微生物の例は、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、デバロマイセス属(Debaromyces)、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)及びトルロプシス属(Torulopsis)などの酵母、アスペルギルス属(Aspergillus)、リゾプス属(Rhizopus)、ムコール属(Mucor)、及びペニシリウム属(Penicillium)及びトルロプシス属などのカビ、並びにビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、クロストリジウム属(Clostridium)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、メリソコッカス属(Melissococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、バチルス属(Bacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ワイセラ属(Weissella)、アエロコッカス属(Aerococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)及びラクトバチルス属(Lactobacillus)などの細菌を含む。
【0028】
本発明において使用することができる、適したプロバイオティクス微生物の具体的な例は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cereviseae)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス・カゼイ亜種カゼイ(Lactobacillus casei subsp.casei)、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ(Lactobacillus casei Shirota)、ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ラクティス(Lactobacillus delbruckii subsp.lactis)、ラクトバチルス・ファルシミナス(Lactobacillus farciminus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)(ラクトバチルスGG(Lactobacillus GG))、ラクトバチルス・サケ(Lactobacillus sake)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ミクロコッカス・バリアンス(Micrococcus varians)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ハロフィラス(Pediococcus halophilus)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、及びスタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)を含む。
【0029】
理論に拘束されることは望まないが、ラクトバチルスGGは特に、ヒートショックシャペロンタンパク質の発現を誘導すること、及び腸細胞におけるシグナル伝達経路を活性化することによって、腸上皮細胞を酸化ストレスから保護する可能性があると考えられる。
【0030】
ラクトバチルス・アシドフィルスは、腸細胞中のオピオイド及びカンナビノイド受容体の誘導によって、Rousseaux,C.ら、Nat.Med.、2007、13、35〜37において示唆されているように、腹痛を和らげることができる。
【0031】
本発明において、プロバイオティクスは、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム又はそれらの混合物から選択されることが好ましいことが判明した。より好ましくは、プロバイオティクスは、ラクトバチルス・ラムノサスGG ATCC53103又はラクトバチルス・ラムノサスCGMCC1.3724及びATCC BAA−999で登録されているビフィドバクテリウム・ロンガムBB536である。これらの微生物株は市販されている。
【0032】
一実施形態において本発明は、バイオガイアAB(Biogaia AB)(Kungsbroplan 3A、ストックホルム、スウェーデン)から市販されているラクトバチルス・ロイテリATCC55730株、ラクトバチルス・ロイテリDSM−17938株を含む。
【0033】
プロバイオティクスは、粉末化形態、乾燥形態であってもよい。さらに、所望であれば、プロバイオティクス微生物は、例えば、糖マトリックス、脂肪マトリックス又は多糖マトリックス中にカプセル化して、生存確率をさらに増加させることができる。
【0034】
本発明のプロバイオティクス組成物は、1500g以下の出生体重を有する乳幼児において完全経腸栄養を達成するのに有用であることが分かった。
【0035】
特に、本発明のプロバイオティクス組成物は、体重が1500g以下の乳幼児において使用するために有益であることが分かった。好ましくは、乳幼児は1000〜1500gの間の出生体重を有する。実際に、この体重群において、本発明の利益がより迅速に及び/又はより高い水準まで達成されることが分かった。
【0036】
好ましくは、本発明において、完全経腸栄養を達成するための時間は、50日未満、より好ましくは40日未満、最も好ましくは30日未満である。
【0037】
したがって、本発明の組成物によって、非経口的栄養摂取に伴う合併症をより迅速に緩和することができる。
【0038】
したがって、本発明の組成物は、低出生体重児における経腸栄養管理を改善するのに使用することができる。
【0039】
本発明のプロバイオティクス組成物は、乳幼児用経口製剤の一部であってもよい。この製剤は、乳幼児用製剤において、特に低出生体重児用製剤において一般的に使用される成分を含んでいてもよい。例えば、製剤は、典型的には、脂肪、タンパク質、炭水化物、ミネラル及び微量栄養素を含む。
【0040】
脂肪は、必須脂肪酸、MCT油などの油などから選択することができる。タンパク質は、好ましくは、乳タンパク質から選択される。炭水化物は、マルトデキストリン、ラクトースなどから選択することができる。微量栄養素は、ビタミンなどを含み得る。
【0041】
製剤は、溶液であってもよく、又は再構成される粉末の形態であってもよい。そのような製剤は、前記プロバイオティクスを含む粉ミルクであってもよい。再構成のうえ、製剤を早産児に摂取させ、このようにしてその経腸栄養管理を改善することができる。
【0042】
プロバイオティクスの量は、好ましくは組成物1グラム当たり少なくとも10〜10cfu、好ましくは1グラム当たり2×10〜8×10cfuである。好ましい一実施形態において、母乳へのサプリメントとして与えられる場合、製剤は組成物1グラム当たり4×10cfuを含有することができる。別の実施形態において、製剤は、早産児用調製乳に組み込まれる場合、1グラム当たり2×10cfuを含むことができる。
【0043】
製剤は、毎日使用されることが好ましい。したがって、低出生体重児の非経口的栄養摂取への、毎日の経腸サプリメントとして使用されてもよい。これは、例えば、早産児の要求に応じて、1日1回から1日5回まで使用することができる。
【0044】
好ましくは、乳幼児は、約10〜1010cfu/日、より好ましくは約10cfu/日を摂取するべきである。これらの量であれば、十分な微生物細胞が乳幼児の胃腸管に到達して有益な影響を達成することが確実である。
【0045】
体重が1500g以下の乳幼児において完全経腸栄養を達成するのにプロバイオティクスが有用であるという本発明の発見は、Clin.Infect.Dis.、2006、42、1735〜1742においてManzoni,P.らによって立証されたように、プロバイオティクス菌株が消化管にコロニー形成する確率は出生体重の減少とともに低下するという事実から考えて、驚くべきことである。
【0046】
そのような低出生体重児において出生後に抗生物質処置を頻繁に使用すること、及び経腸栄養を頻繁に差し控える必要があることによって、経口プロバイオティクスの有効性は通常、制限されるため、この発見はなおさら予想外である。
【0047】
したがって、本発明の主な利益は、非経口的栄養摂取から経腸栄養への転換の促進にある。このことは、侵襲性の非経口的技術を回避すること又は非経口的栄養摂取を行わなければならない時間を少なくとも減少させることによって、問題の乳幼児にとって大きな負担軽減をもたらす。図2は、プラセボ組成物を摂取させた乳幼児と本発明の組成物を摂取させた乳幼児との間の、完全経腸栄養に到達する時間の差異を示している。図2はさらに、影響が、体重が1500g以下の乳幼児において顕著であることを示している。
【0048】
さらなる態様において、本発明はまた、低出生体重児用製剤の製造におけるラクトバチルス・ラムノサス及びビフィドバクテリウム・ロンガムの使用に関する。好ましくは、乳幼児用製剤は、1500g以下の出生体重を有する乳幼児用である。
【0049】
好ましくは、ラクトバチルス・ラムノサスGG ATCC53103、ラクトバチルス・ラムノサスCGMCC1.3724、ATCC BAA−999で寄託されているビフィドバクテリウム・ロンガムBB536又はそれらの混合物から選択されるプロバイオティクス菌株が、前記製剤の製造において使用される。
【0050】
製剤は、溶液であってもよく、又は再構成される粉末の形態であってもよい。そのような製剤は、前記プロバイオティクスを含む粉ミルクであり得る。再構成のうえ、製剤を低出生体重児に摂取させ、このようにして完全経腸栄養を達成することによってそれらの経腸栄養管理を改善することができる。
【0051】
プロバイオティクス組成物を、好ましくは10cfu/日の量で栄養摂取させるステップを含む、低出生体重児において完全経腸栄養を達成するための方法もまた、本発明の一部となる。
【実施例】
【0052】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明する。
【0053】
実施例1
研究集団
2つのセンター(フランス、ナントのMere小児病院(Mere−Enfant Hospital)及びフランス、パリの育児学研究所(Institut de Puericulture))が、この試験に参加した。プロトコルは、ナントの医療倫理委員会により承認され、参照番号NCT00290576で登録されている。組み入れ前に、各乳幼児について、書面による親のインフォームドコンセントを得た。この研究における登録者として適格となるためには、乳幼児は、以下の組み入れ基準を満たさなければならないとした:在胎週齢が32週未満、出生体重が1500g以下、出生後週齢が2週間以下、早産に関連するもの以外の疾患がないこと、及び組み入れ前に経腸栄養が開始されていなければならない。
【0054】
手順
試験プロファイルを図1にまとめている。乳幼児を、インハウスソフトウェア(ナント大学病院(Nantes University Hospital)、フランス)の助けを借りてプラセボ又はプロバイオティクス群に無作為化し、無作為化は、NICU(ナント又はパリ)及び出生体重カテゴリ(1500g以下、及び1500g超)に基づいて層別化した。乳幼児に、ヒト(自身の母親の搾乳された乳又はバンク乳)及び/又は早産児用調製乳を摂取させ、無作為に割り当てて、経腸栄養の開始時からNICUの退院まで、(a)マルトデキストリンのみ(プラセボ群と称する)、又は(b)1単位当たり10個の凍結乾燥細胞のラクトバチルス・ラムノサスGG(ATCC53103)及びビフィドバクテリウム・ロンガムBB536(森永乳業株式会社(Morinaga Milk Industry Co., Ltd.)、日本)並びにマルトデキストリン(プロバイオティクス群と称する)のいずれかを含有するサプリメントを1日4カプセル摂取させた。ネスレ中央研究所(Nestle Research Center)(ローザンヌ、スイス)により調製されたプラセボ及びプロバイオティクスは、密閉されたカプセルとして供給され、使用するまで4℃で保存した。カプセルを開封して、補給の日に、経腸栄養を受ける乳幼児へ投与する直前に1mLの滅菌水と混合した。
【0055】
腸管の微生物叢及び便中カルプロテクチンを追跡するために、各NICUにおいて登録された最初の24人の乳幼児に対して糞便採取を行った。糞便試料は、出生から病院を退院するまで1週間に1回採取した。腸管の微生物叢は、早産児の糞便の微生物叢において見られる主な属を単離することができる培養によって、1週間に1回解析した。並行して、腸管の微生物叢の優勢な細菌の多様性を、PCR−TTGEによって解析した。シーケンシング後に、BIBI(登録商標)、ブラスト(Blast)(登録商標)、マルチアライン(Multalin)(登録商標)及びクラスタルW(Clustal W)(登録商標)ソフトウェアなどの適切なソフトウェアを使用して、細菌の16S rRNA遺伝子配列をデータベース中のエントリと比較することによって、最も優勢な分子種を同定した。本研究において使用された2つのプロバイオティクス菌株が、培養−PCR法によって糞便試料において特異的に検出された。糞便のカルプロテクチン濃度は、市販の酵素結合免疫測定法(カルプレスト(Calprest)(登録商標)、Eurospital、トリエステ、イタリア)を使用して2連で2週おきに決定した。
【0056】
統計解析
主要評価項目は、出生後日齢14日で全体の半分を超える栄養要求を腸経路から摂取していた乳幼児のパーセントとした。主要評価項目の解析のための症例数の算出は、プロバイオティクス群で70%に対してプラセボ群で50%という予測率に基づいて行った。80%検出力及び5%αリスクを有するような差異を検出するために、1つの群当たり104人の患者が必要とされると算出された。潜在的な有害作用事象におけるプロバイオティクスの推定リスクに過度の人数の超未熟児を曝すことを回避するため、ホワイトヘッド(Whitehead)3点試験法(Whitehead J.、Statistics in practice、第2版、改訂、チチェスター、イングランド:John Wiley 1997を参照)を使用して逐次試験を行った。患者20人毎に視診及びデータの暫定的な解析を計画し、ペスト(Pest)3.0(登録商標)ソフトウェアを使用して実施した。最終的な統計解析は、SPSS(登録商標)15.0ソフトウェアを使用して実施した。スチューデントのt検定、又は適切な場合はマンホイットニー(Mann−Whitney)を、連続変数の比較のために使用し、カイ2乗(Khi−2)検定、又は適切な場合はフィッシャーの正確確率検定(Fisher’s exact test)を、カテゴリ変数の比較のために使用した。「完全経腸栄養に到達する時間」曲線をカプランマイヤー法に従ってコンピュータで計算し、ログランク(log−rank)検定を使用して統計学的比較を行った。コックス(Cox)回帰モデルを用いて、潜在的な交絡因子:在胎週齢、センター、経腸栄養の種類について調整した。ロジスティック回帰を行って、因子がプロバイオティクスによるコロニー形成と関連しているかどうかを解析した。すべての検定は両側検定であった。0.05未満のP値を有意であるとみなした。
【0057】
結果
研究の結果を、図2に示している。
【0058】
1500g以下の出生体重を有する早産児において、完全経腸栄養が達成されるまでの時間が大幅に減少していることが分かる。
【0059】
実施例2
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
本発明による典型的な組成物を、上記の表に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1500g以下の出生体重を有する乳幼児において完全経腸栄養を達成するのに使用するためのプロバイオティクス組成物。
【請求項2】
完全経腸栄養が、前記乳幼児の胃腸耐性を改善することによって達成される、請求項1に記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項3】
非経口的栄養摂取が必要な出産後の時間が減少する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
完全経腸栄養を達成するための時間が、出生後50日未満、好ましくは40日未満、より好ましくは30日未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
乳幼児が、1000〜1500gの出生体重を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
早産児が32週未満の在胎週齢を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
プロバイオティクスが、サッカロマイセス属、デバロマイセス属、カンジダ属、ピキア属及びトルロプシス属などの酵母、アスペルギルス属、リゾプス属、ムコール属、ペニシリウム属及びトルロプシス属などのカビ、ビフィドバクテリウム属、バクテロイデス属、クロストリジウム属、フゾバクテリウム属、メリソコッカス属、プロピオニバクテリウム属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、スタフィロコッカス属、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、バチルス属、ペディオコッカス属、ミクロコッカス属、ロイコノストック属、ワイセラ属、アエロコッカス属、オエノコッカス属及びラクトバチルス属などの細菌又は任意のそれらの混合物から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
プロバイオティクスが、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ロイテリ、ビフィドバクテリウム・ロンガム又はそれらの混合物から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
プロバイオティクスが、ラクトバチルス・ラムノサスGG ATCC53103、ラクトバチルス・ラムノサスCGMCC1.3724、ATCC BAA−999で寄託されているビフィドバクテリウム・ロンガムBB536、ラクトバチルス・ロイテリATCC55730、ラクトバチルス・ロイテリDSM−17938又はそれらの混合物から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
乳幼児用経口製剤の一部である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
製剤が、マルトデキストリン、ラクトースなどの炭水化物、必須脂肪酸、油などの脂肪、乳タンパク質などのタンパク質、ミネラル、微量栄養素又は任意のそれらの混合物から選択されるさらなる成分を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
プロバイオティクスの量が、組成物1グラム当たり少なくとも10〜10cfu、好ましくは2×10〜8×10cfuである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
乳幼児に毎日摂取させる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
乳幼児に1日1回から1日5回まで摂取させる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
プロバイオティクスの1日用量が、10〜1010cfu/日、好ましくは10cfu/日である、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
乳幼児用製剤の製造における、ラクトバチルス・ラムノサス、好ましくはラクトバチルス・ラムノサスGG ATCC53103及び/又はラクトバチルス・ラムノサスCGMCC1.3724、ビフィドバクテリウム・ロンガム、好ましくはATCC BAA−999で寄託されているビフィドバクテリウム・ロンガムBB536又はそれらの混合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−510800(P2012−510800A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538942(P2011−538942)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065634
【国際公開番号】WO2010/063601
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】