説明

低反応性β−グルカンの製造方法

【課題】医薬、農薬、肥料、飼料、食品、工業、化粧品等の用途において、末端にアミノ基を有する活性成分と化学的相互作用(メイラード反応等)を起こさず、安定的に配合できるβ−グルカンを提供する。
【解決手段】糖残基3以上のβ−グルカンを、pH7.0以上で40℃以上に加熱することを含む、低反応性β−グルカンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖残基が3以上の低反応性β−グルカンの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、医薬、農薬、肥料、飼料、食品、工業、化粧品等の用途において、末端にアミノ基を有する活性成分と化学的相互作用(メイラード反応等)を起こさず、安定的に組成物に配合できるβ−グルカンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬、農薬、肥料、飼料、食品、工業、化粧品等の固形製剤において、活性成分にβ−グルカン粉末である結晶セルロ−スやセルロース粉末を添加し製剤とすることで、活性成分に結合性、崩壊性を付与でき、錠剤や顆粒剤等の製剤としての形状が保持できること、消化管で速やかに製剤が崩壊することにより活性成分の薬効を効果的に発現できること等の効果が得られる。
【0003】
結晶セルロースの中でも、圧縮成形性に優れるものは、低打圧で打錠できるため打圧で失活する活性成分の活性維持が可能である、顆粒含有錠とできる、少量添加で硬度を付与できるため、嵩高い活性成分の錠剤化や多種類の活性成分を含む薬剤の錠剤化が可能で、場合によっては小型化できる、液状成分の担持性に優れ、打錠障害を抑制できる等の利点を有する。
【0004】
しかしながら、従来の結晶セルロースやセルロース粉末では、還元末端に反応性の高い還元基(アルデヒド基)を有していることから、末端にアミノ基を有する活性成分とアミノカルボニル結合を形成して着色する場合があり、そのような活性成分の製剤中へ結晶セルロースやセルロース粉末を添加できないという課題があった。
【0005】
結晶セルロース、セルロース粉末の還元末端を不活性化する方法としては、(1)水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤により還元末端をアルコールとする方法、(2)亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤により還元末端をカルボン酸にする方法、(3)酵素的処理により還元末端を化学修飾する方法等が挙げられる。しかしながら(1)、(2)においては最終的に得られる結晶セルロース、セルロース粉末中に還元剤、酸化剤が残留する、反応中に解重合が進み成形性が低下する等の安全性の問題、機能低下の問題があった。また(3)においては、転移酵素や水解酵素が糖転移反応により糖鎖が付加される場合、そのほとんどが非還元末端側から反応が進行するため、結晶セルロース、セルロース粉末の酵素による還元末端の化学修飾は不可能と考えられていた。
【0006】
しかしながら、本発明は、上述のいずれの方法も用いず、アルカリを用いた簡便な処理により、低反応性β−グルカンを製造する方法を見出したものである。
従来、β−グルカンの還元末端に非還元性糖を結合させた低反応性β−グルカンおよびそれを得る製造方法としては以下のものがあった。
【0007】
特許文献1及び非特許文献1にはArthrobacter sp.K−1株が産生するβ−フラクトフラノシダーゼの転移反応が記載されているが、β−グルカンの例としてはグルコース残基が2であるセロビオースを基質とした生成物が記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、グルコース残基が3以上のβ−グルカンにフラクトースが結合した生成物や、結晶セルロース、セルロース粉末の還元末端にフラクトースが結合した生成物について、これらが本来有する成形性や崩壊性等の機能を保持しつつ、さらにアミノ基を有する活性成分との反応を不活性化することが示されている。
【0009】
これらの文献では、特殊な酵素が必要となるため、酵素の生産性が悪く、コスト高になる問題があった。また、上記の糖転移反応では、ショ糖のフラクトースを、β−グルカンに結合させる場合、グルコースが副生し、副生物の処理等の問題も孕んでいた。これに対し、本発明は、上記の優れた機能を有する糖残基が3以上の低反応性β−グルカンを製造する方法において、特殊な酵素を用いず、副生物の処理も必要なく、簡便に製造する方法に関する。
【0010】
【非特許文献1】澱粉科学、第39巻、第2号、p.135〜142(1992)
【特許文献1】特開平4−91795号公報
【特許文献2】国際公開WO2005/052008
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑み、医薬、農薬、肥料、飼料、食品、工業、化粧品等の用途において、末端にアミノ基を有する活性成分と化学的相互作用(メイラード反応等)を起こさず、安定的に組成物に配合できるβ−グルカンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、β−グルカンの還元末端をフラクトシル化をするにあたり、鋭意検討した結果、β−グルカンをpH7.0以上で40℃以上で加熱することによって低反応性β−グルカンを製造できることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち本発明は、下記の通りである。
【0013】
(1) 糖残基数が3以上のβ−グルカンを、pH7.0以上で40℃以上で加熱することを含む、低反応性β−グルカンの製造方法。
(2) β−グルカンの糖残基数が3〜800である、(1)に記載の低反応性β−グルカンの製造方法。
(3) β−グルカンがセルロース系物質である、(1)又は(2)に記載の低反応性β−グルカンの製造方法。
(4) β−グルカンが、結晶セルロース、又はセロトリオースである、(1)から(3)の何れかに記載の低反応性β−グルカンの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、医薬、農薬、肥料、飼料、食品、工業、化粧品等の用途において、末端にアミノ基を有する活性成分と化学的相互作用(メイラード反応等)を起こさず、安定的に組成物に配合できる低反応性β−グルカンを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法に用いるβ−グルカンは糖残基の数が3以上である必要がある。糖残基の数が3未満の場合は、セルロース分子鎖間の水素結合が弱く、水溶解性が強くなり十分な崩壊作用が得られない。上限は特に規定しないが、糖残基量が多すぎると、β−グルカンを粉末にした場合に、繊維性が発現し成形性、崩壊性が低下するので1000が一応の目安である。成形性、崩壊性のバランスに優れているためには、糖残基の数が3〜800が好ましく、さらに6〜800が好ましく、特に40〜450が好ましい。
【0016】
上記のβ−グルカンのなかでも、セルロース系物質を用いることが好ましい。
ここで用いるセルロース系物質としては、水溶性であっても、水不溶性であってもよい。セルロース系物質としては、例えば、木材、竹、麦藁、稲藁、コーンコブ、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。また、本発明には、上記の動植物が産生する天然セルロース系物質に加え、天然セルロース系物質を一旦、化学的・物理的に溶解、または膨潤させた後、再生して得られる再生セルロース系物質、およびセルロース系原料を化学的に修飾させたセルロース誘導体系物質を用いてもよい。これらのセルロース系物質は、工業的には、パルプ、セルロース粉末、結晶セルロース等の天然セルロース系原料、レーヨン等の再生セルロース、アルカリセルロース、リン酸膨潤セルロース等の各種再生セルロース系原料、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、セルロースアセテート、硝酸セルロース、セルロースアセテート・サクシネート、メチルセルロース、エチルセルロース等の各種セルロース誘導体系原料のいずれでもよい。但し、得られるβ−グルカンを医薬品、食品、化粧品に用いるには、天然セルロース系原料を使用することがより好ましい。原料としてこれらのうち1種のセルロース系物質を使用しても、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
【0017】
活性成分が安定的に存在しうるか否かは、活性成分とβ−グルカンの等量混合物を40℃、75%下での保存安定性試験による着色状態で簡便に見ることができる。β−グルカンは還元末端を有しているため、末端にアミノ基を有する活性成分とアミノカルボニル結合を形成し着色するメイラード反応を起こすことが知られているが、本発明のβ−グルカン粉末は、表面を不活性化しているため着色反応を起こさないという優れた効果を有する。本発明の効果は特に1級アミンを有する活性成分に有功である。
【0018】
本発明の製造方法におけるpHは7.0以上にする必要がある。7.0以上にすることで、驚くべきことに、β−グルカンのメイラード反応が著しく抑制される。pHは高い程、上述の効果が大きいため、その上限は特に設定されない。但し、セルロース系材料を用いる場合は、pHが高すぎると、天然セルロースから再生セルロースへの変換が進むため、食品として用いるには好ましくない。好ましいpHの範囲は14以下であり、より好ましくは12以下である。
【0019】
ここでpHを制御するために、酸、アルカリ、塩類等のpH調製剤を用いることができる。これらの種類については、特に制限はないが、酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等のプロトン酸、ギ酸、酢酸等のカルボン酸等が好適に使用できる。また、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ニ水素ナトリウム等が好適に使用できる。さらに塩類を併用してもよい。ここで使用される酸、アルカリ、塩類は、例えば「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)にpH調製剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0020】
また、これらのpH調製剤の濃度についても特に制限はないが、好ましくは10mM〜10Mであり、より好ましくは、1M以下であり、特に好ましくは500mMである。
【0021】
本発明の製造方法における加熱温度は、40℃以上である。加熱温度が高いほど、本発明の効果が高い。そのため、その上限は設定されず、100℃以上であってもよい。その場合は、圧力にも制限はない。加熱処理に要する時間は、特に限定されないが、セルラーゼが失活しない程度に調整する必要があり、一般的には10分以上24時間以下、好ましくは20分以上12時間以下である。
【0022】
本発明の製造方法で得られたβ−グルカンは、本発明のβ−グルカンと1種以上の活性成分を含む組成物とすることができる。活性成分とは、医薬品薬効成分、農薬成分、肥料成分、飼料成分、食品成分、化粧品成分、色素、香料、金属、セラミックス、触媒、界面活性剤等をいい、粉体状、結晶状、油状、液状、半固形状などいずれの形態でも良く、細粒、顆粒等の形態を有していても良い。また溶出制御、苦味低減等の目的でコーティングを施したものであってもよい。活性成分は、それ単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
例えば医薬品薬効成分としては、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、鎮暈薬、小児鎮痛薬、健胃薬、制酸薬、消化薬、強心薬、不整脈用薬、降圧薬、血管拡張薬、利尿薬、抗潰瘍薬、整腸薬、骨粗鬆症治療薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬、抗菌剤、頻尿改善剤、滋養強壮剤、ビタミン剤など、経口で投与されるものが対象となる。薬効成分は、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0024】
本発明でいう組成物は、活性成分、及び本発明のβ−グルカン粉末の他に、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤等の他の成分を含有することも自由である。また他の成分は希釈剤として使用することも自由である。
【0025】
結合剤としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、トレハロース等の糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、グルコナンナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、結晶セルロース(例えば、旭化成株式会社製、「アビセル」PH−101、PH−101D、PH−101L、PH−102、PH−301、PH−301Z、PH−302、PH−F20、PH−M06、M15、M25、「セオラス」KG−801、KG−802等)、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機化合物類等が挙げられことができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0026】
結晶セルロースの中でも、圧縮成形性に優れるものは、低打圧で打錠できるため打圧で失活する活性成分の活性維持が可能である、顆粒含有錠とできる、少量添加で硬度を付与できるため、嵩高い活性成分の錠剤化や多種類の活性成分を含む薬剤の錠剤化が可能で、場合によっては小型化できる、液状成分の担持性に優れ、打錠障害を抑制できる等の利点を有する。
【0027】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、結晶セルロース、粉末セルロース等のセルロース類、クロスポビドン、クロスポビドンコポリマー等の合成高分子等が挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0028】
流動化剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物類を挙げることができ、それ単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0029】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等が挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0030】
矯味剤としては、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、1−メントール等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0031】
香料としては、オレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、ウイキョウ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油等の油類、緑茶末等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0032】
着色剤としては、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン、リボフラビンなどを挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0033】
甘味剤としては、アスパルテーム、サッカリン、ギリチルリチン酸二カリウム、ステビア、マルトース、マルチトール、水飴、アマチャ末等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0034】
本発明でいう組成物の例としては、医薬品に用いる場合、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、エキス剤、丸剤、ドライシロップ剤等の固形製剤が挙げられ、例えば押出造粒、破砕造粒、流動層造粒、高速攪拌造粒、転動流動造粒等の公知の方法により製造できる。またドリンク等の液剤を公知の方法で製造することができる。医薬品に限らず、菓子、健康食品、食感改良剤、食物繊維強化剤等の食品、固形ファンデーション、浴用剤、動物薬、診断薬、農薬、肥料、セラミックス触媒等に利用されるものであってもよい。
【0035】
本発明でいう組成物の例としては、生産性、服用性、取扱いのよさから、錠剤とするのが好ましい。錠剤は直接打錠法、乾式顆粒圧縮法、湿式顆粒圧縮法、後末法等で得られ、予め圧縮成形した錠剤を内核とする多核錠であってもよいが、コスト、簡便性の観点から直接打錠により得られた錠剤が特に好ましい。
【0036】
また本発明でいう組成物は、味のマスキング、防湿等の目的でコーティングが施されていても良い。コーティング剤としては例えばセルロース系コーティング剤(エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート等)、アクリルポリマー系コーティング剤(オイドラギットRS、オイドラギットL、オイドラギットNE等)、シェラック、シリコン樹脂等が挙げられ、これらを単独または2つ以上組み合わせて用いても良い。これらのコーティング剤の使用方法は公知の方法を用いることができる。コーティング剤は有機溶媒に溶解しても、水に懸濁させてもよい。水に懸濁させた状態で医薬品活性成分や他の成分とともに造粒することも自由である。
【0037】
また、本発明のβ−グルカン粉末は、医薬、食品用途等において、ビフィズス菌の増殖因子、食物繊維等として整腸効果が期待され、これらの目的で組成物に添加することも自由である。
【0038】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1
結晶セルロース(旭化成ケミカルズ製 PH−101)を、10質量%の水分散体とし、100mMのリン酸緩衝液で、pH9、80℃で2時間加熱処理した。加熱処理後は、遠心分離と、pHが中性になるまで、水洗を繰り返し、得られた沈殿物を40℃のオーブン中で6時間乾燥し、粉末を得た。また、粉末X線回折により、天然セルロース(セルロースI)型結晶のみが認められた。L−アルギニンとの等量混合物の保存安定
性試験(40℃、75%RH、密栓保存、2週間)により確認した。白色度の低下率は4%(開始時99%、試験後95%)であった。見た目にも白色を維持していた。
【0040】
実施例2
実施例1の結晶セルロースを、セロトリオース(SIGMA−ALDRICH製)に代えて、NaOHを用いてpH8、80℃で2時間加熱処理した。加熱処理後、塩酸により溶液を中性にして、乾燥した後、実施例1と同様に保存安定性試験を行った。白色度の低下率は6%(開始時99%、試験後94%)であった。見た目にも白色を維持していた。
【0041】
比較例1
結晶セルロース(旭化成ケミカルズ製 PH−101)を加熱処理せずに、L−アルギニンとの等量混合物を保存安定性試験(40℃、75%RH、密栓保存、2週間)したところ、白色度の低下率は10%(開始時99%、試験後89%)であった。見た目に明らかに黄変していた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、医薬、農薬、肥料、飼料、食品、工業、化粧品等の用途において、末端にアミノ基を有する活性成分と化学的相互作用(メイラード反応等)を起こさないため安定性の問題や機能低下の問題のない組成物を提供でき、主として医薬、食品用途等の分野において好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖残基数が3以上のβ−グルカンを、pH7.0以上で40℃以上で加熱することを含む、低反応性β−グルカンの製造方法。
【請求項2】
β−グルカンの糖残基数が3〜800である、請求項1に記載の低反応性β−グルカンの製造方法。
【請求項3】
β−グルカンがセルロース系物質である、請求項1又は2に記載の低反応性β−グルカンの製造方法。
【請求項4】
β−グルカンが、結晶セルロース、又はセロトリオースである、請求項1から3の何れかに記載の低反応性β−グルカンの製造方法。

【公開番号】特開2009−185168(P2009−185168A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26213(P2008−26213)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】