説明

低収縮AEコンクリートの調製方法及び低収縮AEコンクリート

【課題】乾燥収縮率を400μ以下に低減し、同時に凍結融解抵抗性にも優れた硬化体を得ることができる低収縮AEコンクリートの調製方法及びそのような低収縮AEコンクリートを提供する。
【解決手段】少なくともポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、乾燥収縮低減剤、セメント分散剤、空気量調節剤及び水を用いて低収縮AEコンクリートを調製するに際し、ポルトランドセメントの一部として特定の高炉スラグ微粉末を特定割合で用い、また細骨材の一部として特定の高炉スラグ細骨材を特定割合で用い、更に乾燥収縮低減剤を特定割合で用いて、且つ単位量率を特定範囲となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低収縮AEコンクリートの調製方法及び低収縮AEコンクリートに関する。近年、コンリート構造物の長寿命化や高品質化の観点から、コンリート構造物には特に乾燥収縮によるひび割れの発生を抑制することが要求されている。例えば、コンリート構造物の乾燥収縮によるひび割れを抑制するためには、一般建築物においては乾燥収縮率を600μ以下程度にする必要があるといわれており、なかでも鉄筋の拘束部材断面が大きい建築物の場合には乾燥収縮率を400μ以下程度にする必要があるといわれている。また一方で、寒冷地のコンリート構造物には同時に耐凍害性を確保する必要があることから、特に凍結融解抵抗性に優れていることが要求されている。本発明は、乾燥収縮率を400μ以下に低減することによって乾燥収縮によるひび割れの発生を抑制し、同時に凍結融解抵抗性に優れたコンクリート構造物(以下、単に硬化体という)を得ることができる低収縮AEコンクリートの調製方法及び低収縮AEコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬化体の乾燥収縮を低減する手段として、AEコンクリートの調製時に各種の乾燥収縮低減剤を使用することが知られている(例えば特許文献1参照)。一般に、乾燥収縮低減剤はAEコンクリートに多く添加すればするほど、その収縮低減効果が上昇する傾向があるため、大きな効果を期待する場合には練り混ぜ水の一部として無視できない程の量(例えばコンクリート1m当たり5kg以上)を使用することになる。しかし、硬化体の乾燥収縮を低減することと凍結融解抵抗性を強くすることは二律背反現象であるため、乾燥収縮低減剤を多く使用すればするほど、凍結融解抵抗性が低下するという問題がある。そのため、かかる問題に対する改善提案も報告されている(例えば特許文献2〜6参照)。しかし、乾燥収縮率を400μ以下に低減し、同時に凍結融解抵抗性にも優れた硬化体を得るというハイレベルな段階には到っていないというのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO82/03071号公報
【特許文献2】特開平11−349367号公報
【特許文献3】特開2002−338315号公報
【特許文献4】特開2004−91259号公報
【特許文献5】特開2008−273766号公報
【特許文献6】特開2010−6626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、乾燥収縮率を400μ以下に低減し、同時に凍結融解抵抗性にも優れた硬化体を得ることができる低収縮AEコンクリートの調製方法及びそのような低収縮AEコンクリートを提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、少なくともポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、乾燥収縮低減剤、セメント分散剤、空気量調節剤及び水を用いて低収縮AEコンクリートを調製するに際し、ポルトランドセメントの一部として特定の高炉スラグ微粉末を特定割合で用い、また細骨材の一部として特定の高炉スラグ細骨材を特定割合で用い、更に乾燥収縮低減剤を特定割合で用いて、且つ単位量率を特定範囲となるようにすることが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、少なくともポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、乾燥収縮低減剤、セメント分散剤、空気量調節剤及び水を用いて低収縮AEコンクリートを調製するに際し、ポルトランドセメントの一部として、下記の高炉スラグ微粉末を単位量70〜300kg/mの割合で用い、また細骨材の一部として下記の高炉スラグ細骨材を単位量180〜830kg/mの割合で用い、更に乾燥収縮低減剤を単位量3〜30kg/mの割合で用いて、且つ下記の数1で求められる単位量率が25〜55%となるようにすることを特徴とする低収縮AEコンクリートの調製方法に係る。また本発明は、かかる調製方法によって得られる低収縮AEコンクリートに係る。
【0007】
高炉スラグ微粉末:JIS−A6206に記載されたものであって、粉末度が4500〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末。
【0008】
高炉スラグ細骨材:JIS−A5011−1に記載されたものであって、高炉スラグ細骨材の粒度による区分に含まれるもの。
【0009】
【数1】

【0010】
本発明に係る低収縮AEコンクリートの調製方法(以下、単に本発明の調製方法という)は、少なくともポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、乾燥収縮低減剤、セメント分散剤、空気量調節剤及び水を用いて低収縮AEコンクリートを調製する方法である。
【0011】
本発明の調製方法において、ポルトランドセメントとしては早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント及び中庸熱ポルトランドセメントから選ばれるものを使用できる。なかでも、より優れた凍結融解抵抗性の硬化体を得るために、早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0012】
本発明の調製方法では、ポルトランドセメントの少なくとも一部として高炉スラグ微粉末を用いる。用いる高炉スラグ微粉末は、JIS−A6206に記載されたものであって、粉末度が4500〜13000cm/gのもの、好ましくは5000〜9000cm/gのものである。かかる特定の粉末度の高炉スラグ微粉末をポルトランドセメントの一部に置き換えて使用する理由は、優れた凍結融解抵抗性の硬化体を得るためである。一般に高炉スラグ微粉末の粉末度は4000cm/g程度であるが、粉末度が4500より小さい高炉スラグ微粉末を用いると、充分な凍結融解抵抗性を有する硬化体を得ることができない。本発明の調製方法では、かかる高炉スラグ微粉末を、AEコンクリート1m当たりの使用量、すなわち単位量が70〜300kg/mの割合で用い、好ましくは90〜280kg/mの割合で用いる。
【0013】
また本発明の調製方法では、細骨材の一部として高炉スラグ細骨材を用いる。用いる高炉スラグ細骨材は、JIS−A5011−1に記載されたものであって、高炉スラグ細骨材の粒度による区分に含まれるものである。なかでも、高炉スラグ細骨材としては、粒度による区分が5mm高炉スラグ細骨材及び/又は2.5mm高炉スラグ細骨材が好ましく、更に粗粒率を2.0〜3.1の範囲に調製したものが好ましい。本発明の調製方法では、かかる高炉スラグ細骨材を、単位量180〜830kg/mの割合で用い、好ましくは単位量200〜750kg/mの割合で用いる。かかる高炉スラグ細骨材としては、その由来は特に制限されないが、高炉水砕スラグ細骨材が好ましい。以上説明した高炉スラグ細骨材以外の細骨材としては、川砂、海砂、山砂、砕砂等の天然の細骨材が挙げられる。尚、ここで粗粒率(F.M.と略記される)は、80、40、20、10、5、2.5、1.2、0.6、0.3及び0.15(単位はmm)の各ふるいからなる1組のふるいを用いて高炉スラグ細骨材をふるい分け試験し、各ふるい毎でふるいを通らない高炉スラグ細骨材の元の高炉スラグ細骨材全量に対する重量百分率を求め、更にその和を求めて、かかる和を100で除した値であり、それ自体はセメントコンクリート用語として一般的に使用されている用語である。
【0014】
本発明の調製方法でも、粗骨材としては、公知の川砂利、砕石、石灰砕石、軽量骨材等を使用でき、また水としては水道水を使用できる。
【0015】
また本発明の調製方法でも、乾燥収縮低減剤としては公知のものを使用できるが、なかでも(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。本発明の調製方法では、かかる乾燥収縮低減剤を、単位量3〜30kg/mの割合で用いるが、好ましくは5〜25kg/mの割合で用いる。
【0016】
更に本発明の調製方法でも、セメント分散剤としては公知のものを使用できるが、なかでもポリカルボン酸塩系のものが好ましく、水溶性ビニル共重合体から成るポリカルボン酸塩系のものがより好ましい。かかるセメント分散剤としては、例えば特開昭58−74552号公報や特開平1−226757号公報に記載のものが挙げられる。本発明の調製方法では通常、かかるセメント分散剤を、セメント100質量部当たり0.05〜2質量部の割合で用いる。
【0017】
更にまた本発明の調製方法でも、空気量調節剤としては公知のものを使用できる。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルベンゼンスルホン酸塩、ロジン石けん、高級脂肪酸石けん、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等の空気量調節剤を使用できる。本発明の調製方法では通常、かかる空気量調節剤を、セメント100質量部当たり0.001〜0.01質量部の割合で用いる。
【0018】
そして本発明の調製方法では、前記した数1で求められる単位量率が25〜55%となるようにすることが重要であり、好ましくは30〜50%となるようにすることが重要である。単位量率がかかる数値の範囲から外れると、本発明の所期の効果が充分に得られない。
【0019】
本発明の調製方法では、調製する低収縮AEコンクリートの空気量を特に制限するものではないが、連行空気量は3〜7容量%となるようにするのが好ましく、3.5〜6容量%とするのがより好ましい。
【0020】
本発明の調製方法では、以上説明したように、少なくともポルトランドセメント、その一部として高炉スラグ微粉末、細骨材、その一部として高炉スラグ細骨材、乾燥収縮低減剤、セメント分散剤、空気量調節剤及び水を用いてこれらを練り混ぜ、低収縮AEコンクリートを調製するが、練り混ぜ手順は特に制限されない。
【0021】
本発明の調製方法では、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて適宜、消泡剤、防錆剤、急結剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、防水剤等の添加剤を併用することができる。
【0022】
本発明の調製方法によると、乾燥収縮率を400μ以下に低減し、同時に凍結融解抵抗性に優れた低収縮AEコンクリートを調製することができる。その理由としては、主に以下の1)〜4)が協力して作用するためと推察される。すなわち、1)ポルトランドセメントの一部を粉末度の高い高炉スラグ微粉末に置換して用いることによって、得られる硬化体の凍結融解抵抗性を大きく改善する、2)細骨材の一部を高炉スラグ細骨材に置換して用いることによって、得られる硬化体の乾燥収縮率を充分に低減する、3)前記1)の効果により得られる硬化体が強い凍結融解抵抗性を保持するため、乾燥収縮低減剤の添加量を制限せずに所定量を混入できることによって、得られる硬化体の乾燥収縮率を大幅に低減する、4)単位量率が所定の範囲となるようにした比較的単位水量の少ない低収縮AEコンクリートにすることによって、ベースとなる低収縮AEコンクリート自身に起因する乾燥収縮率が大きくならないようにする。
【0023】
本発明に係る低収縮AEコンクリートは以上説明した本発明の調製方法によって得られるものである。かかる低収縮AEコンクリートのなかでも、得られる硬化体の乾燥収縮率が150〜400μ(150×10−6〜400×10−6)となるものが好ましい。
【0024】
本発明に係る低収縮AEコンクリートは、建設現場で打設される低収縮AEコンクリートとしてだけでなく、コンクリート製品工場で加工される二次製品用の低収縮AEコンクリートとしても適用できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、得られる硬化体が優れた圧縮強度を発現するだけでなく、乾燥収縮率が低く、しかも凍結融解抵抗性が強いという効果がある。
【0026】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【実施例】
【0027】
試験区分1(低収縮AEコンクリートの調製)
実施例1〜7
表1に記載の調合条件で、50Lのパン型強制練りミキサーに、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、高炉スラグ細骨材、砕砂、空気量調節剤(竹本油脂社製のAE調節剤、商品名AE−300)、セメント分散剤(竹本油脂社製のポリカルボン酸塩系セメント分散剤、商品名チューポールHP−11)及び乾燥収縮低減剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)のそれぞれ所要量を水(水道水)の所要量と共に投入して45秒間練り混ぜた。次に、粗骨材の所要量を投入して60秒間練り混ぜ、目標スランプが12±1cm、目標空気量が4.5±0.5%の範囲とした低収縮AEコンクリートを調製した。尚、空気量調節剤及びセメント分散剤の使用量は下記の通りとした(これらは以下同じ)。
空気量調節剤:ポルトランドセメントの単位量及び高炉スラグ微粉末の単位量の合計100部に対し、0.002〜0.007部となる割合で用いた。
セメント分散剤:ポルトランドセメントの単位量及び高炉スラグ微粉末の単位量の合計100部に対し、0.5〜1.5部(固形分換算で0.12〜0.38部)となる割合で用いた。
【0028】
比較例1〜12
表1に記載の調合条件で、50Lのパン型強制練りミキサーに、ポルトランドセメント、砕砂、空気量調節剤(実施例1〜7と同じ)、セメント分散剤(実施例1〜7と同じ)及び乾燥収縮低減剤(実施例1〜7と同じ)等のそれぞれ所要量を水(水道水)の所要量と共に投入して45秒間練り混ぜた。次に、粗骨材の所要量を投入して60秒間練り混ぜ、目標スランプが12±1cm、目標空気量が4.5±0.5%の範囲とした低収縮AEコンクリートを調製した。
【0029】
実施例8〜12
表1に記載の調合条件で、50Lのパン型強制練りミキサーに、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、高炉スラグ細骨材、砕砂、空気量調節剤(実施例1〜7と同じ)、セメント分散剤(実施例1〜7と同じ)及び乾燥収縮低減剤(ジエチレンジプロピレングリコールモノブチルエーテル)のそれぞれ所要量を水(水道水)の所要量と共に投入して45秒間練り混ぜた。次に、粗骨材の所要量を投入して90秒間練り混ぜ、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±0.5%の範囲とした低収縮AEコンクリートを調製した。
【0030】
比較例13〜16
表1に記載の調合条件で、50Lのパン型強制練りミキサーに、ポルトランドセメント、砕砂、空気量調節剤(実施例1〜7と同じ)、セメント分散剤(実施例1〜7と同じ)及び乾燥収縮低減剤(実施例1〜7と同じ)等のそれぞれ所要量を水(水道水)の所要量と共に投入して45秒間練り混ぜた。次に、粗骨材の所要量を投入して60秒間練り混ぜ、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4.5±0.5%の範囲とした低収縮AEコンクリートを調製した。
【0031】
比較例17及び18
比較例13〜16と同様にして、それぞれ表1に示した単位量率=24.4%又は単位量率=60.0%の調合条件とした低収縮AEコンクリートを調製した。

























【0032】
【表1】

【0033】
表1において、
P−1:高炉スラグ微粉末(粉末度=6000、密度=2.90g/cm
P−2:高炉スラグ微粉末(粉末度=8000、密度=2.88g/cm
PR−1:高炉スラグ微粉末(粉末度=4000、密度=2.91g/cm
C−1:早強ポルトランドセメント(粉末度=4520、密度=3.14g/cm
C−2:普通ポルトランドセメント(粉末度=3300、密度=3.16g/cm
SG−1:高炉スラグ細骨材(粒度による区分=5mm、粗粒率=2.55、密度=2.77g/cm
SG−2:高炉スラグ細骨材(粒度による区分=2.5mm、粗粒率=2.71、密度=2.72g/cm
砕砂:津久見産砕砂(密度=2.67g/cm
粗骨材:秩父産石灰砕石(密度=2.70g/cm
A−1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
A−2:ジエチレンジプロピレングリコールモノブチルエーテル
【0034】
試験区分2(低収縮AEコンクリートの評価)
試験区分1で調製した各例の低収縮AEコンクリートについて、調製直後の空気量及びスランプを下記のように求め、結果を表2にまとめて示した。また各例の低収縮AEコンクリートから得た硬化体について、乾燥収縮率、凍結融解抵抗性の指標としての凍結融解耐久性指数及び圧縮強度を下記のように求め、結果を表2にまとめて示した。
【0035】
・空気量(容量%):調製直後のコンクリートについて、JIS−A1128に準拠して測定した。
・スランプ(cm):空気量の測定と同時に、JIS−A1101に準拠して測定した。
【0036】
・乾燥収縮率:JIS−A1129に準拠し、各例の低収縮AEコンクリートを20℃×60%RHの条件下で保存した材齢26週の供試体について、コンパレータ法により乾燥収縮ひずみを測定し、乾燥収縮率を求めた。この数値は小さいほど、乾燥収縮が小さいことを示す。
・凍結融解耐久性指数(300サイクル):各例の低収縮AEコンクリートの硬化体について、JISA1148に準拠して測定した値を用い、ASTM−C666−75の耐久性指数で計算した値を示した。この数値は、最大値が100で、100に近いほど、凍結融解に対する抵抗性が優れていることを示す。
・圧縮強度(N/mm):各例の低収縮コンクリートの硬化体について、JIS−A1108に準拠し、材齢7日と材齢28日で測定した。





























【0037】
【表2】

【0038】
表2において、
*1:材料分離して所望の流動性が得られなかったので測定しなかった。
乾燥収縮率の場合は400μ(400×10−6)以下、凍結融解耐久性指数の場合は80%以上をクリアしたときを記号○、またクリアできなかったときを記号×で示した。
【0039】
表2の結果からも明らかなように、各実施例の低収縮AEコンクリートは、流動性が確保されると同時に、得られる硬化体の乾燥収縮率が400μよりも小さく、同時に凍結融解耐久性指数が高く、必要とされる充分な圧縮強度が得られている。これに対して各比較例の低収縮AEコンクリートの場合では、すなわち、高炉スラグ微粉末を使用しなかった場合、また粉末度が所定の範囲から外れた高炉スラグ微粉末を使用した場合、また高炉スラグ細骨材を使用しなかった場合、また高炉スラグ細骨材の単位量を所定の範囲から外れて使用した場合、また乾燥収縮低減剤の単位量を所定の範囲から外れて使用した場合、また単位量率が所定の範囲から外れた場合などでは、各実施例の低収縮AEコンクリートのような結果が得られていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポルトランドセメント、細骨材、粗骨材、乾燥収縮低減剤、セメント分散剤、空気量調節剤及び水を用いて低収縮AEコンクリートを調製するに際し、ポルトランドセメントの一部として、下記の高炉スラグ微粉末を単位量70〜300kg/mの割合で用い、また細骨材の一部として下記の高炉スラグ細骨材を単位量180〜830kg/mの割合で用い、更に乾燥収縮低減剤を単位量3〜30kg/mの割合で用いて、且つ下記の数1で求められる単位量率が25〜55%となるようにすることを特徴とする低収縮AEコンクリートの調製方法。
高炉スラグ微粉末:JIS−A6206に記載されたものであって、粉末度が4500〜13000cm/gの高炉スラグ微粉末。
高炉スラグ細骨材:JIS−A5011−1に記載されたものであって、高炉スラグ細骨材の粒度による区分に含まれるもの。
【数1】

【請求項2】
ポルトランドセメントが早強ポルトランドセメントである請求項1記載の低収縮AEコンクリートの調製方法。
【請求項3】
高炉スラグ微粉末が粉末度5000〜9000cm/gのものであり、かかる高炉スラグ微粉末を単位量90〜280kg/mの割合で用いる請求項1又は2記載の低収縮AEコンクリートの調製方法。
【請求項4】
高炉スラグ細骨材が、粒度による区分が5mm高炉スラグ細骨材及び/又は2.5mm高炉スラグ細骨材であって、粗粒率を2.0〜3.1の範囲に調製したものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の低収縮AEコンクリートの調製方法。
【請求項5】
乾燥収縮低減剤が(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルであり、かかる乾燥収縮低減剤を単位量5〜25kg/mの割合で用いる請求項1〜4のいずれか一つの項記載の低収縮AEコンクリートの調製方法。
【請求項6】
乾燥収縮低減剤がジエチレングリコールモノブチルエーテルである請求項5記載の低収縮AEコンクリートの調製方法。
【請求項7】
セメント分散剤がポリカルボン酸塩系セメント分散剤である請求項1〜6のいずれか一つの項記載の低収縮AEコンクリートの調製方法。
【請求項8】
空気量が3〜7容量%となるようにする請求項1〜7のいずれか一つの項記載の低収縮AEコンクリートの調製方法。
【請求項9】
単位量率が30〜50%となるようにする請求項1〜8のいずれか一つの項記載の低収縮AEコンクリートの調製方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つの項記載の低収縮AEコンクリートの調製方法によって得られる低収縮AEコンクリート。
【請求項11】
得られる硬化体の乾燥収縮率が150〜400μとなるものである請求項10記載の超低収縮AEコンクリート

【公開番号】特開2012−116712(P2012−116712A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268620(P2010−268620)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】