説明

低圧放電灯の劣化度合検出方法及び検出装置並びに照明器具

【課題】蛍光灯などの低圧放電灯が寿命末期に達するまでの劣化度合を検出する。
【解決手段】片方のフィラメントが通電加熱されていないときの電流電圧特性X2は、ランプ電流が極性反転する前後、例えば、ランプ電圧がプラス90ボルトとマイナス90ボルトのときのランプ電流がほぼ等しくなっている。一方、片方のフィラメントが通電加熱されているときの電流電圧特性X1は、ランプ電流が極性反転する前後、例えば、ランプ電圧がプラス90ボルトとマイナス90ボルトのときのランプ電流に差が生じている。そして、この非対称性は蛍光灯の劣化、特に寿命末期における劣化(エミッタの減少)とともに特に顕著となることから、極性反転の前後におけるランプ電流の非対称性(差)を観測することにより、蛍光灯の劣化度合を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光灯などの低圧放電灯の劣化度合を検出する検出方法及び検出装置並びに、当該検出装置を搭載した照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
低圧放電灯の1種である蛍光灯は、フィラメントに塗布されている熱電子放出物質(エミッタ)が減少(消耗)すると、やがては熱電子が放出されなくなって不点灯となる。そこで従来は、2つのフィラメントのうち1つのフィラメントのエミッタが消耗して半波放電状態(エミッタレス状態)となったことを検出することにより、蛍光灯が寿命に達したと判断されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−31594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の検出方法では、一方のフィラメントがエミッタレス状態(半波放電状態)になった時点で既に蛍光灯が寿命末期を迎えてしまっており、寿命末期に達するまでの蛍光灯の劣化度合が検出できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、蛍光灯などの低圧放電灯が寿命末期に達するまでの劣化度合を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の低圧放電灯の劣化度合検出方法は、蛍光灯などの低圧放電灯の劣化度合を検出する検出方法であって、前記低圧放電灯の定常点灯時に流れるランプ電流を検出するとともに、当該ランプ電流が極性反転する前後の前記検出値を比較し、前記ランプ電流が極性反転する前後の前記検出値の差に基づいて前記低圧放電灯の劣化度合を判断することを特徴とする。
【0007】
この劣化度合検出方法において、前記ランプ電流の検出値を時間微分し、前記ランプ電流が極性反転する前後の当該検出値の時間微分値の差から前記低圧放電灯の劣化度合を判断することが好ましい。
【0008】
本発明の低圧放電灯の劣化度合検出装置は、蛍光灯などの低圧放電灯の劣化度合を検出する検出装置であって、前記低圧放電灯の定常点灯時に流れるランプ電流を検出する電流検出手段と、当該ランプ電流が極性反転する前後の前記検出値を比較し、前記ランプ電流が極性反転する前後の前記検出値の差に基づいて前記低圧放電灯の劣化度合を判断する判断手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この劣化度合検出装置において、前記判断手段は、前記ランプ電流の検出値を時間微分し、前記ランプ電流が極性反転する前後の当該検出値の時間微分値の差から前記低圧放電灯の劣化度合を判断することが好ましい。
【0010】
本発明の照明器具は、蛍光灯などの低圧放電灯を保持する器具本体と、前記低圧放電灯を点灯する安定器と、請求項3又は4の劣化度合検出装置とを備えたことを特徴とする。
【0011】
この照明器具において、前記劣化度合検出装置で検出される劣化度合が所定の上限値を超えたときに前記安定器を停止又は出力を減少させる制御装置を備えることが好ましい。
【0012】
この照明器具において、前記劣化度合検出装置で検出される劣化度合を報知する報知手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の低圧放電灯の劣化度合検出方法及び検出装置並びに照明器具は、蛍光灯などの低圧放電灯が寿命末期に達するまでの劣化度合を検出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る蛍光灯の劣化度合検出方法を説明するための説明図である。
【図2】本発明者らが行った実験装置の構成図である。
【図3】同上の実験結果を示す電流電圧特性図である。
【図4】本発明に係る蛍光灯の劣化度合検出装置、並びにその検出装置を搭載した照明器具のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の技術思想を蛍光灯の劣化度合を検出する検出方法、検出装置、照明器具に適用した実施形態について説明する。但し、本発明に係る検出方法等で劣化度合が検出可能な低圧放電灯は蛍光灯に限定されるものではない。
【0016】
まず、本発明に係る劣化度合検出方法の基本原理を説明する。本発明者らは、図2に示す実験装置を用いて、次のような実験を行った。(1)蛍光灯(高周波点灯専用形蛍光ランプ:FHF32EX-N)10を蛍光灯電子安定器11で30分間定格点灯し、準定常状態とした後に蛍光灯10の片方の電極(フィラメント)にトランス12を介してスライダック13により70ボルトの電圧を印加して交流通電加熱を行う。(2)蛍光灯10に流れるランプ電流を電流プローブ14で検出するとともに、差動プローブ15で蛍光灯10のランプ電圧を検出し、検出したランプ電流及びランプ電圧をオシロスコープ16に取り込んで記録する。(3)オシロスコープ16で記録したランプ電流及びランプ電圧を解析する。
【0017】
上述した実験で得られたランプ電流とランプ電圧の特性を図3に示す。図3の横軸は時間、縦軸はランプ電流及びランプ電圧である。図3では顕著に現れていないが、片方のフィラメントが通電加熱されて熱電子放出性能が相対的に高められている場合、電流電圧特性が非対称になっていることが判明した。この非対称性を強調するため、ランプ電流を時間微分した電流電圧特性を図1に示す。図1における実線X1は、片方のフィラメントが通電加熱されているときの電流電圧特性を示し、図1における破線X2は、何れのフィラメントも通電加熱されていないときの電流電圧特性を示している。なお、通電加熱されている方のフィラメントが劣化度合の高いフィラメント(使用時間の長いフィラメント)に相当し、通電加熱されていない方のフィラメントが劣化度合の低いフィラメント(新しいフィラメント)に相当する。
【0018】
図1に示す2つの電流電圧特性X1,X2を比較すれば、片方のフィラメントが通電加熱されていないときの電流電圧特性X2は、ランプ電流が極性反転する前後、例えば、ランプ電圧がプラス90ボルトとマイナス90ボルトのときのランプ電流がほぼ等しくなっている。一方、片方のフィラメントが通電加熱されているときの電流電圧特性X1は、ランプ電流が極性反転する前後、例えば、ランプ電圧がプラス90ボルトとマイナス90ボルトのときのランプ電流に差が生じている。これは、蛍光灯が劣化するとフィラメントのエミッタに生じるホットスポットから熱電子放出が非対称となり、ランプ電流の波形にも非対称な部分が現れるためと考えられる。そして、この非対称性は蛍光灯の劣化、特に寿命末期における劣化(エミッタの減少)とともに特に顕著となることから、極性反転の前後におけるランプ電流の非対称性(差)を観測することにより、蛍光灯の劣化度合を検出することができる。ここで、蛍光灯の劣化度合は、極性反転の前後におけるランプ電流の差から判断することもできるが、上述したようにランプ電流の時間微分値(の差)から判断する方がより容易且つ正確に判断できる。なお、「ランプ電流が極性反転する前後」とは、ランプ電流の極性が反転する直前と直後を意味するのではなく、上述のようにランプ電流の流れる向きが正極性の期間全体と負極性の期間全体を意味している。
【0019】
図4は、上述した劣化度合検出方法を実現する検出装置を搭載した照明器具を示している。この照明器具は、一対のランプソケット1,1と、商用交流電源ACから電源供給を受けて蛍光灯を点灯する蛍光灯電子安定器2と、蛍光灯の各フィラメント毎にランプ電流を検出するランプ電流検出部3,3と、制御部4と、報知部5と、器具本体6とを備える。一対のランプソケット1,1には、蛍光灯10の口金(図示せず)がそれぞれ着脱自在に接続される。また、ランプソケット1,1には予熱用のコンデンサ7が接続されている。但し、蛍光灯電子安定器2やランプ電流検出部3,3は従来周知であるから、詳細な回路構成の図示並びに説明を省略する。また、器具本体6は、例えば、金属板などによって矩形板状又は箱状に形成され、ランプソケット1,1、蛍光灯電子安定器2、ランプ電流検出部3,3、制御部4、報知部5を保持して天井や壁などに取り付けられるものである。
【0020】
制御部4は、例えば、マイクロコンピュータやメモリなどで構成されている。そして、制御部4では、ランプ電流検出部3,3の検出値を取り込んでメモリに記憶するとともに、ランプ電流が極性反転する前後の検出値の時間微分値を求めてメモリに記憶する。さらに制御部4は、メモリに記憶されている時間微分値(ランプ電流が極性反転する前後の検出値の時間微分値)を比較し、ランプ電流が極性反転する前後の検出値の時間微分値の差に基づいて蛍光灯の劣化度合を判断する。すなわち、本実施形態においては、ランプ電流検出部3,3と制御部4とで蛍光灯の劣化度合検出装置が構成されている。
【0021】
而して、フィラメントに塗布されているエミッタが減少して蛍光灯の劣化度合が進むにつれ、ランプ電流が極性反転する前後の検出値の時間微分値の差が大きくなる。故に、制御部4が、時間微分値の差を多段階に設定されたしきい値と比較することで蛍光灯の劣化度合を複数段階で判断することができる。報知部5は、例えば、複数個の発光ダイオードを具備している。そして、この報知部5は、制御部4の制御の下で同時に発光させる発光ダイオードの個数によって蛍光灯の劣化度合を報知する。例えば、劣化度合が進むにつれて同時に発光させる発光ダイオードの個数が増加する。
【0022】
上述のように本実施形態の照明器具によれば、蛍光灯10の劣化度合が報知部5で報知されるので、半波点灯状態になる前に蛍光灯10の交換を促すことができる。また、劣化度合が所定の上限値を超えたとき、制御部4が蛍光灯電子安定器2を停止又は出力を減少させれば、寿命末期の蛍光灯10を点灯させることに伴って蛍光灯電子安定器2にかかる負担を軽減することができる。なお、本実施形態では制御部4が制御装置に相当する。
【0023】
ここで、本実施形態の照明器具では、蛍光灯10の各フィラメント毎にランプ電流検出部3を設けているが、何れか一方のフィラメント側のみにランプ電流検出部3を設けてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 ランプソケット
2 蛍光灯電子安定器
3 ランプ電流検出部
4 制御部
5 報知部
6 器具本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光灯などの低圧放電灯の劣化度合を検出する検出方法であって、前記低圧放電灯の定常点灯時に流れるランプ電流を検出するとともに、当該ランプ電流が極性反転する前後の前記検出値を比較し、前記ランプ電流が極性反転する前後の前記検出値の差に基づいて前記低圧放電灯の劣化度合を判断することを特徴とする低圧放電灯の劣化度合検出方法。
【請求項2】
前記ランプ電流の検出値を時間微分し、前記ランプ電流が極性反転する前後の当該検出値の時間微分値の差から前記低圧放電灯の劣化度合を判断することを特徴とする請求項1記載の低圧放電灯の劣化度合検出方法。
【請求項3】
蛍光灯などの低圧放電灯の劣化度合を検出する検出装置であって、前記低圧放電灯の定常点灯時に流れるランプ電流を検出する電流検出手段と、当該ランプ電流が極性反転する前後の前記検出値を比較し、前記ランプ電流が極性反転する前後の前記検出値の差に基づいて前記低圧放電灯の劣化度合を判断する判断手段とを備えたことを特徴とする低圧放電灯の劣化度合検出装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記ランプ電流の検出値を時間微分し、前記ランプ電流が極性反転する前後の当該検出値の時間微分値の差から前記低圧放電灯の劣化度合を判断することを特徴とする請求項3記載の低圧放電灯の劣化度合検出装置。
【請求項5】
蛍光灯などの低圧放電灯を保持する器具本体と、前記低圧放電灯を点灯する安定器と、請求項3又は4の劣化度合検出装置とを備えたことを特徴とする照明器具。
【請求項6】
前記劣化度合検出装置で検出される劣化度合が所定の上限値を超えたときに前記安定器を停止又は出力を減少させる制御装置を備えたことを特徴とする請求項5記載の照明器具。
【請求項7】
前記劣化度合検出装置で検出される劣化度合を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項5又は6記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−48927(P2012−48927A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189056(P2010−189056)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】