説明

低密度軟質ポリウレタン発泡体成形用組成物

【課題】高密度で且つ軟質で、発泡体のセル径が平均0.5mm以下の均質なポリウレタン発泡体を得るための組成物。
【解決手段】ポリイソシアネート成分(A)、ポリオール成分(B)、発泡剤(C)からなるポリウレタン発泡体成形用組成物であって、ポリイソシアネート成分(A)は、末端イソシアネート基が官能基数2.0〜2.4を有する有機ポリイソシアネートであり、ポリオール成分(B)は、ポリオールの総数を100重量部としたとき、(B−1);官能基数2.5〜3.5、数平均分子量5000〜8000で、且つ10〜30%のエチレンオキサイドのブロック重合付加物を含むポリオールを20〜100重量部含み、発泡剤(C)は、水であることを特徴とするポリウレタン発泡体成形用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟質ポリウレタン発泡体成形用組成物に関し、更に詳しくは、発泡剤として水を使用した、高密度軟質ポリウレタン発泡体成形用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スポンジ硬度70以下の軟質プラスチックが、シリコン・ポリウレタン等のプラスチックゲルとして知られ、緩衝材・防振材・衝撃吸収材として使用されている。
例えば、特許文献1には、官能基数2.3〜4.0のポリオキシポリプロピレンポリオールとポリイソシアネート化合物との反応から得られる末端に活性イソシアネート基を有するプレポリマーに、β−メチル−δ−バレロラクトンを開環重合して得られるポリオールオリゴマーを架橋剤として反応させたポリウレタン樹脂から構成された軟質エラストマー組成物が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、分子量700〜2,000の末端に1級ヒドロキシル基を有するポリオール若しくは、官能基数3、分子量6,000〜8,000の末端に1級ヒドロキシル基を部分的に有するポリオールと理論量より少ないポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートを反応させて得られることを特徴とする耐熱性に優れたゴム硬度5以下の軟質組成物が開示されている。
【0004】
上記特許文献1または2に記載の組成物より得られる反応生成物は、スポンジ硬度70以下の軟質であり、緩衝材・防振材・衝撃吸収材として使用されている。これら反応生成物の密度は、一般的に1.0〜1.3g/cmであり、重量が大きいものが多い。
【0005】
一方で、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、発泡剤(たとえば水)、及び整泡剤等を反応させて得られるポリウレタン発泡体は、既に公知であり、軟質ポリウレタンフォームとしてよく知られている。従来の軟質ポリウレタンフォームのみかけ密度は、0.018〜0.10g/cmの範囲で、多くは0.02〜0.05g/cmである。
【0006】
また、自動車用内装材・各種の衝撃保護材料に使用される半硬質ポリウレタンフォームは、みかけ密度0.10〜0.15g/cmの範囲のものが多い。このような半硬質ポリウレタンフォームは、型内にオーバーパック法で一体成形させ、より高密度化と製品密度の安定化を図っている。そのため、硬度としては一般的にかなり硬いものが多く、スポンジ硬度75〜80であるものが多い。
【0007】
高密度ポリウレタンフォームとしては他に、軟質RIM成形として知られる自動車部材がある。これらは、バンパー・エアスポイラー・フェンダー等の自動車の外装部材として使用される。密度は0.7〜1.1g/cm、スポンジ硬度80〜85で、型内にオーバーパック法で一体成形させるために高密度でかなり硬いものである。
【特許文献1】特開平05−310878
【特許文献2】特開2001−316448
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、公知のポリウレタン発泡体においては、みかけ密度が0.7〜0.15g/cm程度の高密度で、且つスポンジ硬度70以下程度の低硬度のポリウレタン発泡体は一般的ではない。
この理由としては、軟質で低硬度のポリウレタン発泡体を従来技術で作製しようとした場合、イソシアネート等の反応物が外気の影響を受けやすい結果、生成物の密度と硬度がばらつきやすく、均質な製品が安定的にできにくいことが理由としてあった。
【0009】
また、水発泡(すなわち、発生する炭酸ガスにより発泡させる)によるポリウレタン発泡体の場合、発泡過程において、硬化が未完了の段階における樹脂の骨格強度が弱いために、フォームの泡を支えきれずに、泡の崩壊・収縮をきたし、軟質発泡体が出来にくいことも理由としてあった。
【0010】
上記課題に鑑み、本発明は、高密度(みかけ密度が0.15〜0.70g/cm)で、且つ極めて軟質(スポンジ硬度70以下)で、さらには発泡体のセル径が0.5mm以下の均質なポリウレタン発泡体を得ることを目的とする。かかる発泡体は、緩衝材・吸音材・防振材として極めて有効である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のポリウレタン発泡体成形用組成物は、請求項1に記載のように、
ポリイソシアネート成分(A)、ポリオール成分(B)、発泡剤(C)からなるポリウレタン発泡体成形用組成物であって、
ポリイソシアネート成分(A)は、末端イソシアネート基が官能基数2.0〜2.4を有する有機ポリイソシアネートであり、
ポリオール成分(B)は、ポリオールの総数を100重量部としたとき、
(B−1);官能基数2.5〜3.5、数平均分子量5000〜8000で、且つ10〜30%のエチレンオキサイドのブロック重合付加物を含むポリオールを20〜100重量部含み、
発泡剤(C)は、水である、ことを特徴とする。
請求項2に記載のように、前記(B−1)のポリオールは、官能基数2.5〜3.5、数平均分子量5000〜8000で、且つ10〜30%のエチレンオキサイドのブロック重合付加物を含むポリマーポリオールであることが好ましい。
また、請求項3に記載のように、前記ポリオール成分(B)は、さらに(B−2);官能基数2.5〜3.5、数平均分子量500〜8000のポリオールを20重量部未満含むことが好ましい。
請求項4に記載のように、前記発泡剤(C)の混合割合は、ポリオール成分(B)100重量部中0.3〜5重量部であることが好ましい。
請求項5に記載のように、前記ポリイソシアネート成分(A)の使用量は、ポリオール成分(B)+発泡剤(C)の理論量の40〜90%の使用量であることが好ましい。
請求項6に記載のように、本発明のポリウレタン発泡体は、みかけ密度が0.07〜0.7g/cmで且つ、スポンジ硬度70以下であることを特徴とする。
請求項7に記載のように、本発明のポリウレタン発泡体は、発泡体のセル径が平均して0.5mm以下であることを特徴とする。
請求項8〜10に記載のように、本発明の防振材、衝撃吸収材、防音材は、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡体成形用組成物から得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のポリウレタン発泡体成形用組成物について詳細に説明する。
本発明のポリウレタン発泡体成形用組成物は、
ポリイソシアネート成分(A)、ポリオール成分(B)、発泡剤(C)からなるポリウレタン発泡体成形用組成物であって、
ポリイソシアネート成分(A)は、末端イソシアネート基が官能基数2.0〜2.4を有する有機ポリイソシアネートであり、
ポリオール成分(B)は、ポリオールの総数を100重量部としたとき、
(B−1);官能基数2.5〜3.5、数平均分子量5000〜8000で、且つ10〜30%のエチレンオキサイドのブロック重合付加物を含むポリオールを20〜100重量部含有し、
発泡剤(C)は、水である
ことを特徴とする。
【0013】
本発明において、特に、ポリオール成分(B)は、ポリオール(B−1)と含有することを特徴とする。
ここで、前記ポリオール(B−1)としては、官能基数2.5〜3.5、数平均分子量5000〜8000で、且つ10〜30%のエチレンオキサイドのブロック重合付加物を含むポリオールであることを特徴とする。
【0014】
前記ポリオール成分(B−1)としては、好ましくは、ポリオキシポリアルキレンポリオール(ポリエーテルポリオール)が挙げられる。
これらポリオキシポリアルキレンポリオールとしては、低分子量の活性水素化合物を開始剤としてアルキレンオキサイドを開環附加重合させた公知の化合物を用いることが出来る。
【0015】
前記開始剤としての低分子量の活性水素化合物とは、水,エチレングリコール,プロピレングリコール,ジエチレングルコール,ブタンジオール,ヘキサンジオール,グリセリン,若しくはトリメチロールプロパン等の官能基数2〜3の多価アルコールを挙げることができる。
【0016】
また、本発明においては、前記アルキレンオキサイドの総量のうち、エチレンオキサイドを開環附加ブロック重合させたものを含有していることが必要である。このエチレンオキサイドのブロック重合付加物含有量としては、前記ポリオール成分(B−1)の10〜30%であることが必要であり、特に、15〜30%含有していることが好ましい。
【0017】
前記エチレンオキサイドのブロック重合付加物の含有量が前記ポリオール成分(B−1)中10%未満のときは、発泡体の均質なセル径が得られず、セル径が0.3〜5mmの不均質になるという問題がある。
一方、含有量が30%を超えるときは、得られた発泡体の吸水率が悪くなり、また、外気水蒸気の影響を受けやすく、得られる発泡体の安定したみかけ密度が得られなくなる。
【0018】
また、ポリオール成分(B−1)は単一の化合物であっても良いし、これらの条件を満たす2種類以上の化合物を混合して使用することもできる。
たとえば、前記ポリオキシポリアルキレンポリオールには、同じ条件を満たしたポリマーポリオールを含んでいても良い。ここでポリマーポリオールは、ポリオキシポリアルキレンポリオール中に、アクリルニトリル、スチレン等のビニルモノマー若しくはその混合モノマーをラジカル重合し生成するポリマー粒子を分散させたポリエーテルポリオールを言う。
【0019】
前記ポリオール(B−1)は、官能基数2.5〜3.5、数平均分子量5000〜8000であることを特徴とする。
官能基数2.5未満の時には、水発泡(発生する炭酸ガスによる発泡)での発泡過程及び硬化段階において、樹脂の骨格強度が弱いために、発泡生成物の泡(フォーム)を支えきれずに泡の崩壊・収縮をきたす。
一方で、官能基数3.5を超える時には、発泡生成物のスポンジ硬度が70以上となるために好ましくない。
【0020】
また、前記ポリオール(B−1)の数平均分子量が5000未満のときは、製品発泡体のスポンジ硬度が70以上となるために好ましくない。
一方で、数平均分子量が8000を超えるときは、樹脂の骨格強度が弱いために発泡生成物の泡(フォーム)を支えきれずに泡の崩壊・収縮をきたすために好ましくない。
【0021】
本発明において、ポリオール成分(B−1)の使用量は、ポリオールの総数を100重量部としたとき、20〜100重量部が必要である。発泡体の均質なセル径を得るためには、ポリオール成分(B−1)の使用量が多いほど好ましい。
ポリオール成分(B−1)の含有量が20重量部未満のときは、生成発泡体の均質なセル径が得られず、セル径が0.3〜5mmの不均質になり、好ましくない。この原因としては、発泡剤としての水と、ポリオール成分との相溶性が欠けるためと推定される。
【0022】
次に、ポリオール成分(B−2)について説明する。
本発明において、ポリオール成分(B)は、さらに(B−2);官能基数2.5〜3.5、数平均分子量500〜8000のポリオールを20重量部未満含むことが好ましい。
【0023】
ここでポリオール成分(B−2)としては、ポリオール成分(B−1)の条件を満たさないポリオキシポリアルキレンポリオール、例えば公知のポリエステル系ポリオール、ポリテトラメチレン−ポリオキシグリコール、ひまし油系ポリオール、ε−カプロラクトン系ポリオール、β−メチル−δーバレロラクトン系ポリオール、カーボネート系ポリオール等を用いてもよく、これらの2種以上を併用することも出来る。
【0024】
ここで、ポリオール成分(B−2)において、官能基数が2.5未満のときには、水発泡(炭酸ガス発泡)で発泡する発泡過程の硬化途中段階で樹脂の骨格強度が弱いためにフォームの泡を支えきれずに泡の崩壊・収縮をきたすため好ましくない。一方、官能基数が3.5を超えるのときは、製品発泡体のスポンジ硬度が70以上となるために好ましくない。
【0025】
ポリオール成分(B−2)において、数平均分子量が500未満の場合は、製品発泡体のスポンジ硬度が70以上となるために好ましくない。一方、数平均分子量が8000を超える場合は、水発泡(炭酸ガス発泡)で発泡する発泡過程の硬化途中段階で樹脂の骨格強度が弱いために、フォームの泡を支えきれずに泡の崩壊・収縮をきたす。
【0026】
次に、本発明における発泡剤(C)について説明する。
本発明において、発泡剤(C)は水であることが好ましい。ポリウレタンフォーム生成において、水は、ポリイソシアネート(A)のイソシアネート基と反応してアミノ基になり、生成されたアミノ基は、速やかに残存イソシアネート基と反応して最終的に尿素結合を形成して樹脂骨格の一部となるが、副生成物として炭酸ガスを発生し、これが発泡ガスとして働くことは公知のことである。
【0027】
前記発泡剤(C)の混合割合としては、ポリオール成分(B)100重量部に対して0.3〜5重量部であることが好ましい。
水の量が0.3重量部未満のときは、発泡体のみかけ密度が0.7g/cmを超えるために好ましくなく、5重量部を超える場合には、みかけ密度が0.07g/cm未満となるために好ましくない。
【0028】
次に、本発明におけるポリイソシアネート成分(A)について説明する。
本発明に用いるポリイソシアネート成分(A)は、前記ポリオール成分(B)の水酸基に対して反応性のイソシアネート基を1分子中に2個以上有する有機ポリイソシアネートが用いられる。
【0029】
上記有機ポリイソシアネートの例としては、一般的な芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及び脂環族ポリイソシアネート等の化合物を用いることが出来る。
例えば、トリレンジイソシアネート(TDI),ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI),液状変性MDI,キシリデンジイソシアネート(XDI),ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI),シクロヘキシルジイソシアネート、ポリメリックMDI及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
上記化合物のうち、とりわけ、MDI、液状変性MDI,ポリメリックMDIが好ましい。
これら有機ポリイソシアネートは単独で用いることができるし、または2種以上の化合物を混合して用いることもできる。
【0030】
本発明において、ポリイソシアネート成分(A)の使用量は、ポリオール成分(B)+発泡剤(C)の理論量より40〜90%の使用量であることが好ましい。
すなわち、ポリオール混合物(B)と有機ポリイソシアネート(A)と水(発泡剤(C))を整泡剤(D)の介在下で化学反応させるに際して、ポリオールの水酸基(OH)に対するイソシアネートのイソシアネート基(NCO)の当量比(NCO/OH)が0.40〜0.90が好ましい。
【0031】
上記当量比が0.90を越える場合は、得られるポリウレタン発泡体のセル径が、均一ではあるが径1mmと大きくなるため好ましくない。
また、当量比が0.40未満の場合は、水発泡(炭酸ガス発泡)で発泡する発泡過程の硬化途中段階で、樹脂の骨格強度が弱いためにフォームの泡を支えきれず、泡の崩壊・収縮をきたすために好ましくない。
【0032】
これらの原因は定かではないが、NCO/OH=0.40〜0.90とすることにより、ポリオール成分が過剰となり、反応課程において水(C)と整泡剤(D)の分散性をよくするため、好ましい特性を有するポリウレタン発泡体が得られるものと推定される。
【0033】
本発明に用いるポリイソシアネート成分(A)としては、官能基数2.0〜2.4を有することが必要であり、さらに、官能基数2.2〜2.4であることが好ましい。
官能基数2.0未満のときには、当該フォームは高分子化できないため好ましくない。一方で、官能基数2.4を超えるときは、製品発泡体のスポンジ硬度が70を超えることとなるために好ましくない。
【0034】
以上、ポリイソシアネート成分(A)、ポリオール成分(B)、発泡剤(C)からなる本発明のポリウレタン発泡体成形用組成物の各成分について説明したが、本発明のポリウレタン発泡体成形用組成物には、さらに整泡剤(D)を含んでいても良い。
整泡剤(D)としては、例えばオルガノポリシロキサン、アルキルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等を挙げることができる。
(D)の配合量は、全ポリオール100重量部に対して0〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。
【0035】
また、本発明におけるポリウレタン発泡体生成用組成物には、必要に応じて、添加剤を添加することも可能である。
添加剤としては、たとえば、可塑剤が挙げられる。可塑剤は、前記ポリオール成分(B)とポリイソシアネート成分(A)の合計量を100重量部としたとき、可塑剤15重量部未満に限って混合することが出来る。
可塑剤を添加すると、その添加量が多くなるにつれて、得られる発泡体の硬度は低下し、同時に反発性が高くなる。従って、可塑剤の添加によって発泡体硬度と反発性をある程度制御することが可能になる。
ただし、可塑剤を15重量部以上添加すると、組成物の機械的特性を損ない、耐熱温度が低下し、また、可塑剤を原因とするブリージングを起こしやすくなる。
適用可能な可塑剤の種類としては、通常のポリウレタン樹脂用の可塑剤、例えばジオクチルフタレート,ジブチルフタレート,トリスクロロエチルフォスフェート,トリスクロロプロピルフォスフェート等が挙げられる。
【0036】
また、上記可塑剤の他の添加剤としては、各種安定剤等を添加することも可能である。
たとえば、組成物の耐久性,安定性の向上を図るために、熱安定剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,紫外線安定剤,充填剤等を、支障のない限りにおいて、1種または2種以上混合して用いることも出来る。
さらに、前述したもの以外にも、顔料,染料,難燃剤,分散剤,界面活性剤,水分吸着剤等を適宜添加することも可能である。
【0037】
次に、本発明のポリウレタン発泡体生成用組成物の化学反応について、以下説明する。
上記説明してきた通り、ポリオール成分(B)、発泡剤(C)、整泡剤(D)およびポリイソシアネート成分(A)は、それぞれ常温、もしくは加温した状態で、これら成分を混合し、化学反応させたのち、本発明におけるポリウレタン発泡体を得る。
【0038】
本発明においては、上記に挙げたポリイソシアネート成分(A)を、理論量より少ない前記ポリオール成分(B)と公知の技術を用いて反応せしめ、末端に活性イソシアネート基を有するプレポリマーとして用いることもできる。
プレポリマーとして用いる場合は、ポリオール化合物(B)と有機ポリイソシアネート(A)との反応が確実に進行しやすくなり、均質な組成物が得やすいために好ましい。
【0039】
ここで、有機ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)及び水(C)との間のウレタン化反応を行わせるに当たって、適宜のウレタン化触媒を用いることができる。このウレタン化触媒としては、第3級アミン化合物や有機金属化合物等の公知の触媒を用いることが可能である。例えば、トリエチレンジアミン,N,N‘−ジメチルヘキサメチレンジアミン,N,N‘−ジメチルブタンジアミン,オクチル酸鉛,ラウリル酸ジブチル錫、等が好適である。ただし、このウレタン化触媒を用いることは本発明の必須の要件ではない。
【0040】
生成反応において、(C)、(D)の各成分は予め(B)に混合させておいてもよい。
その他、添加剤を混合する場合には、予めポリオール(B)に混合させておくか、または各成分の混合時に添加してもよい。
【0041】
前述の各成分を十分に混合したのち、常温〜120℃の金型に流し込み、常温〜120℃で10分〜30秒ウレタン化反応を起こさせる。しかる後に金型から取り出すことによって本発明の軟質ポリウレタン発泡体が得られる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
表1及び表2に示す処方量に従って、ポリオール成分(B)、水(C)、及びポリイソシアネート成分(A)との反応により得られるポリウレタン発泡体を調整した。
なお、表中の「ポリオール」,「イソシアネート」,「水」、「触媒」,「可塑剤」,「整泡剤」欄における数値の単位は、重量部数を示す。
【0043】
ポリウレタン発泡体を得るための生成反応は下記の手順により行った。
まず、各成分をスタンドミキサー(1000rpm/min)で20秒間混合し反応を開始させ、当該混合物を200×200mm×200mm高さのポリプロピレン製オープンボックスに最終高さが100〜200mmになる量を注型して、常温で所定時間反応を継続したのち脱型し、引き続き常温で3日間養生することによって、200×200mm、厚み100〜200mmのブロック状のポリウレタン発泡体を得た。
発泡反応の反応条件は、いずれもタックフリータイムが2〜6分となるように触媒量を調整した。
【0044】
得られたポリウレタン発泡体は下記のような評価方法により評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0045】
(みかけ密度の測定)
表中の「みかけ密度」は、JIS K7222に準じて測定した。
【0046】
(スポンジ硬度の測定)
表中「硬度C」は、「スポンジ硬度」を示し、JIS S6050に準じてバネ式スポンジ硬度計(アスカーC硬度計:東京計器)を用いて測定した。
【0047】
(セル径の測定)
表中の「セル径」は、顕微鏡で発泡体のセル中心間の距離を10点測定した結果の平均値の数値である。
【0048】
(収縮率の測定)
表中「1次収縮」は、発泡反応が終了し、24時間経過後の発泡体の収縮率を外形寸法で測定した。結果を、下記のA、B、C、Dの4グレードに分けて評価しその結果を表に示した。
A:1%以内の収縮
B:1%〜3%の収縮
C:3%〜10%の収縮
D:原型を止めない収縮若しくは10%以上の収縮
【0049】
(防振性の測定)
実施例の試料に対し、防振性の測定を行った。
表中の「防振性(tanδ)」は、測定機「Dynamic Mechani−cal Thermal Analyzer:Polymer Laboratories社」で、30×5×2mmの試験片の曲げ試験にて周波数10Hzにて測定した結果の数値である。
なお、比較のため、2種類のポリウレタンゲル及び天然ゴムで同様の測定を行い結果数値を表中に示した。
【0050】
(衝撃吸収性の測定)
表中「衝撃吸収率」は、5.35gの鋼球を690mmの高さから5mmの鋼板上に自然落下させ、鋼板下の1トンロードセルが受ける瞬間最大衝撃値(kg)を「x」とした時、同様の試験により厚み10mmの測定物が受けた衝撃値(「y」kgとする)から、衝撃吸収率〔=(1−y/x)×100%〕〕とした数値である。
なお、比較のため、2種類のポリウレタンゲル及び天然ゴムで同様の測定を行い結果数値を表中に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0054】
以上の評価結果より、本発明により得られたポリウレタン発泡体は、みかけ密度が0.2〜0.7g/cmの高密度でありながらスポンジ硬度70以下の軟質発泡体であり、且つポリウレタン発泡体のセル径が0.5mm以下の均質な新しいポリウレタン発泡体といえる。
【0055】
また、防振性(tanδ)の結果によれば、本開発の軟質発泡体の「tanδ」は0.3以上であり(天然ゴムのtanδは0.16である。)、ポリウレタンゲルに匹敵する防振性を示し、しかもポリウレタンゲルに比べて軽量の極めて優れた防振材料といえる。
【0056】
「衝撃吸収率」の結果より、本開発の軟質発泡体の衝撃吸収率は、92%以上(天然ゴムの衝撃吸収率は約70%)であり、ポリウレタンゲルに匹敵する衝撃吸収性を示し、しかもポリウレタンゲルに比べて軽量の極めて優れた衝撃吸収材料といえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分(A)、ポリオール成分(B)、発泡剤(C)からなるポリウレタン発泡体成形用組成物であって、
ポリイソシアネート成分(A)は、末端イソシアネート基が官能基数2.0〜2.4を有する有機ポリイソシアネートであり、
ポリオール成分(B)は、ポリオールの総数を100重量部としたとき、
(B−1);官能基数2.5〜3.5、数平均分子量5000〜8000で、且つ10〜30%のエチレンオキサイドのブロック重合付加物を含むポリオールを20〜100重量部含み、
発泡剤(C)は、水である
ことを特徴とするポリウレタン発泡体成形用組成物。
【請求項2】
前記(B−1)のポリオールが、官能基数2.5〜3.5、数平均分子量5000〜8000で、且つ10〜30%のエチレンオキサイドのブロック重合付加物を含むポリマーポリオールであることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン発泡体成形用組成物。
【請求項3】
ポリオール成分(B)は、さらに(B−2);官能基数2.5〜3.5、数平均分子量500〜8000のポリオールを20重量部未満含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタン発泡体成形用組成物。
【請求項4】
前記発泡剤(C)の混合割合が、ポリオール成分(B)100重量部中0.3〜5重量部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン発泡体成形用組成物。
【請求項5】
ポリイソシアネート成分(A)の使用量が、ポリオール成分(B)+発泡剤(C)の理論量の40〜90%の使用量であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン発泡体成形用組成物。
【請求項6】
みかけ密度が0.07〜0.7g/cmで且つ、スポンジ硬度70以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン発泡体成形用組成物より得られるポリウレタン発泡体。
【請求項7】
発泡体のセル径が平均して0.5mm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン発泡体成形用組成物より得られるポリウレタン発泡体。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の発泡体成形用組成物から得られる防振材。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の発泡体成形用組成物から得られる衝撃吸収材。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の発泡体成形用組成物から得られる防音材。

【公開番号】特開2009−280658(P2009−280658A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132440(P2008−132440)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(506104943)有限会社ポリシス研究所 (5)
【Fターム(参考)】