説明

低水吸収性の疎水性結合剤混合物

本発明は、2成分被覆剤の製造に適する、特に厚い層の適用に適する溶媒不含の結合剤混合物ならびにその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、高い塗厚み適用のための2成分被覆組成物の製造に適する溶媒不含の結合剤混合物、ならびに、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の溶媒不含の被覆系は、大まかには、2成分エポキシ樹脂(2K EP)系および2成分ポリウレタン(2K PU)系に分けることができる。
【0003】
2K EP系に基づく被覆物は、良好な機械的強度と、溶媒および化学物質に対する高い耐性とを合わせ持つ。さらに、これらは非常に良好な基材接着を特徴とする。明らかな欠点は、特に低温で2K EP被覆物の弾性が劣っていることである(例えば、非特許文献1)。この脆性は、被覆物による劣った亀裂ブリッジングを導き、その結果として、基材への攻撃がここで起こりうる。別の欠点は、有機酸に対する極めて低い安定性である。これは、特に、有機酸が廃棄産物として放出される食品部門における適用のためには問題である。
【0004】
対照的に、硬度と弾性のバランスのとれた組合せが、2K PU被覆物の顕著な特性であり、2K EP被覆物を超える最大の利点である。さらに、同等の溶媒および化学物質耐性を備えた上で、2K PU被覆物の有機酸に対する耐性は、2K EP被覆物よりも相当に良好である。
【0005】
環境的な理由から、被覆組成物は、特に高い塗厚み適用(例えば、床被覆など)の場合には、溶媒不含のものであるべきである。これは、結合剤成分の粘度が低いものであるべきことを意味する。
【0006】
2K PU系に基づく高い塗厚み適用において、水とイソシアネートの反応の結果として、CO2の生成による膨れの危険が存在する。その結果、極めて低い水吸収性の粗原料が、このような被覆物を湿った環境においても膨れなしに適用しうるために重要である。一般に、ヒドロキシ官能性成分が、ポリイソシアネート成分よりも高親水性である。従って、疎水性のヒドロキシ官能性成分を使用するのが特に重要である。
【0007】
2K PU被覆物のヒドロキシ官能性結合剤成分は、多種多様の化学構造に基づくことができる(例えば、非特許文献2)。ポリエステルポリオールは、低い粘度を持ち、比較的低い水吸収性を特徴とする。しかし、加水分解に対するポリエステルポリオールの安定性は低く、このことにより、これらを金属基材の腐蝕防止のためおよび無機(アルカリ性)基材の被覆のために使用する可能性が大きく制限される。ポリアクリレート ポリオールに基づく2K PU被覆物は、加水分解に対する良好な耐性を特徴とする。しかし、ここでの欠点は、比較的高い粘度レベルである。対照的に、ポリエーテルポリオールは、低粘度および加水分解に対する高い安定性を示すが、高い水吸収性が欠点である。
【0008】
特許文献1は、ヒドロキシ官能性のポリエステル-ポリアクリレート結合剤を記載している。これらの生成物は、これらから製造された2K PU被覆物において、低粘度および良好な機械的強度を示す。しかし、加水分解に対する安定性は不十分であり、水吸収性は、床被覆または腐蝕防止分野における高い塗厚み適用のためには高すぎる。
【0009】
特許文献2は、ポリエーテル アクリレートを記載している。加水分解に対して安定であり、低粘度であるが、これらの生成物も、高い塗厚み適用のためには高すぎる水吸収性を有する。
【0010】
溶媒不含のポリオールにおける十分な疎水性は、従来技術においてはヒマシ油の使用により達成されることが多い。しかし、ヒマシ油を用いて製造された2K PU被覆物は、床被覆において適用するためには柔らかすぎる(例えば、非特許文献3)。
【0011】
【非特許文献1】クンストシュトッフ-ハンドブッフ(Kunststoff-Handbuch)、第7巻;ポリウレタン(Polyurethane)、第2版、G.Oertel(編)、Hanser出版、Munich、Vienna、1983年、p.556-8
【非特許文献2】レアブッフ・デア・ラッケ・ウント・ベシーヒトゥンゲン(Lehrbuch der Lacke und Beschichtungen)、第2巻;p.205-209、H. Kittel, S. Hirzel出版、Stuttgart、Leipzig、1998年
【特許文献1】欧州特許出願公開第0580054号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0825210号明細書
【非特許文献3】サウンダース(Saunders)、フリッシュ(Frisch);ポリウレタン(Polyurethanes)、Chemistry and Technology、第1部 Chemistryのp.48-53、314および第2部 Technologyの第X章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、2成分系の製造に適し、高い塗厚み適用において膨れなしに適用することができ、そして十分な硬度を保持する、低粘度の溶媒不含の結合剤混合物を提供することであった。膨れのない適用は、低い水吸収性を意味し、これは同時に適切なポットライフを確保すべきである。さらに、本発明の結合剤を用いて製造した被覆物は、良好な弾性、化学耐性および酸耐性を保持しているべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、非ヒドロキシ官能性のアクリルおよびスチレンモノマーに基づく疎水性ポリエーテルポリアクリレートを含んでなる結合剤混合物の提供によって達成された。
本発明は、溶媒不含の結合剤混合物であって、
(A1)非ヒドロキシ官能性のアクリルおよびスチレンモノマーの混合物またはそのコポリマー、
(A2)ヒドロキシ官能性ポリエーテル(A2)、
(A3)所望により、分子量Mnが32〜1000である(A2)以外のヒドロキシ官能性化合物、
からなる成分の反応生成物である疎水性ポリエーテルポリアクリレート(A)を含んでなり、8%未満、好ましくは5%未満の水吸収性(21日後および23℃で測定)を有する溶媒不含の結合剤混合物を提供するものである。
【0014】
疎水性ポリエーテルポリアクリレート(A)に加えて、本発明の結合剤混合物は、好ましくは脂肪アルコール(B)、好ましくはヒマシ油を含有する。
同様に、本発明により提供されるのは、本発明の結合剤混合物およびポリイソシアネート(C)を含み、NCO:OH当量比が0.5:1〜2.0:1、好ましくは0.8:1〜1.5:1である、2成分ポリウレタン被覆組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
適するポリイソシアネート成分(C)は、少なくとも2の平均NCO官能価および少なくとも140g/モルの分子量を有する有機ポリイソシアネートである。特に適するのは、(i)分子量範囲140〜300g/モルの未修飾の有機ポリイソシアネート、(ii)300〜1000g/モルの範囲内の分子量を有するペイントポリイソシアネート、ならびに、(iii)ウレタン基を含み、かつ1000g/モルを超える分子量を有するNCOプレポリマー、または(i)〜(iii)の混合物である。
【0016】
群(i)のポリイソシアネートの例は、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、1-イソシアナト-1-メチル-4-(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,12-ジイソシアナトドデカン、シクロヘキサン 1,3-および1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート異性体、トリイソシアナトノナン(TIN)、2,4-ジイソシアナトトルエンまたはそれと2,6-ジイソシアナトトルエンとの混合物(好ましくは、混合物を基準に35重量%までの2,6-ジイソシアナトトルエン)、2,2'-、2,4'-、4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタンまたはジフェニルメタン系列の工業等級ポリイソシアネート混合物、あるいは、記載したイソシアネートの任意の所望の混合物である。ここで好ましいのは、ジフェニルメタン系列のポリイソシアネートの使用であり、特に好ましいのは、異性体混合物の形態での使用である。
【0017】
群(ii)のポリイソシアネートは、自体既知のペイントポリイソシアネートである。用語「ペイントポリイソシアネート」とは、本発明においては、(i)として例示した種類の単純ジイソシアネートの通常のオリゴマー化反応によって得られる化合物またはこれら化合物の混合物であると理解される。適するオリゴマー化反応の例には、カルボジイミド化、二量化、三量化、ビウレット化、尿素形成、ウレタン化、アロファネート化および/または環化(オキサジアジン構造の形成を伴う)が含まれる。「オリゴマー化」の過程において、記載した反応の2またはそれ以上が、同時にまたは連続して起こる場合が多い。
【0018】
この「ペイントポリイソシアネート」(ii)は、好ましくは、ビウレットポリイソシアネート、イソシアヌレート基を含むポリイソシアネート、イソシアヌレートおよびウレトジオン基を含むポリイソシアネート混合物、ウレタンおよび/またはアロファネート基を含むポリイソシアネート、または、イソシアヌレートおよびアロファネート基を含むポリイソシアネート混合物であり、単純ジイソシアネートに基づく。
【0019】
この種のペイントポリイソシアネートの製造は既知であり、例えば、独国特許出願公開第1595273号明細書、独国特許出願公開第3700209号明細書および独国特許出願公開第3900053号明細書、または、欧州特許出願公開第0330966号明細書、欧州特許出願公開第0259233号明細書、欧州特許出願公開第0377177号明細書、欧州特許出願公開第0496208号明細書、欧州特許出願公開第0524501号明細書、または、米国特許第4385171号明細書に記載されている。
【0020】
群(iii)のポリイソシアネートは、一方の上に例示した種類の単純ジイソシアネートおよび/またはペイントポリイソシアネート(ii)ならびに他方の300g/モルを超える分子量を有する有機ポリヒドロキシル化合物に基づく、通常のイソシアナト官能性プレポリマーである。ウレタン基を含む群(ii)のペイントポリイソシアネートは、分子量範囲62〜300g/モルの低分子量ポリオール(適するポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロールまたはこれらアルコールの混合物である)の誘導体であるのに対して、群(iii)のNCOプレポリマーは、300g/モルを超える、好ましくは500g/モルを超える、より好ましくは500〜8000g/モルの分子量を有するポリヒドロキシル化合物を用いて製造される。具体的なこの種のポリヒドロキシル化合物は、1分子あたりに2〜6個、好ましくは2〜3個のヒドロキシル基を含み、エーテル、エステル、チオエーテル、カーボネートおよびポリアクリレートポリオールならびにこのようなポリオールの混合物からなる群から選択される化合物である。
【0021】
NCOプレポリマー(iii)の製造において、上記の比較的高分子量のポリオールを、上記の低分子量ポリオールとブレンドして使用することもでき、こうして、ウレタン基を含む低分子量のペイントポリイソシアネート(ii)と比較的高分子量のNCOプレポリマー(iii)の混合物が直接的に導かれる。これらも同様に、本発明に係る出発成分(C)として適する。
【0022】
NCOプレポリマー(iii)またはそれとペイントポリイソシアネート(ii)との混合物を製造するために、上に例示した種類のジイソシアネート(i)または(ii)として例示した種類のペイントポリイソシアネートを、比較的高分子量のヒドロキシル化合物またはそれと例示した種類の低分子量ポリヒドロキシル化合物との混合物と、1.1:1〜40:1、好ましくは2:1〜25:1のNCO/OH当量比で反応させてウレタンを生成させる。所望により、過剰の蒸留可能な出発ジイソシアネートを用いて、このジイソシアネートを反応後に蒸留によって除去することができる。こうして、モノマーを含まないNCOプレポリマー、即ち、出発ジイソシアネート(i)と真のNCOプレポリマー(iii)の混合物が得られ、これも同様に成分(A)として使用することができる。
【0023】
有機ポリエーテルポリアクリレート成分(A)は、3.0〜10重量%、好ましくは5.0〜9重量%のヒドロキシル基含量、ならびに、23℃で200〜3000mPa.s、好ましくは400〜2800mPa.sの粘度を有する。
【0024】
成分(A)は、重合開始剤(D)ならびに所望によりさらなる助剤および添加剤の存在下での、
(A1)10〜50重量部、好ましくは15〜40重量部の非ヒドロキシ官能性のアクリルおよびスチレンモノマーの混合物またはそのコポリマー、ここで、スチレンモノマーの分画は成分(A1)を基準に10〜80%、好ましくは20〜50%である;
(A2)15〜90重量部、好ましくは20〜85重量部の、2またはそれ以上のOH官能価を有する1またはそれ以上のヒドロキシ官能性ポリエーテル;および
(A3)0〜50重量部の、(A2)以外の32〜1000の分子量Mwを有するヒドロキシ官能性化合物、ここで、(A2)および(A3)の混合物は少なくとも30重量部の(A2)を含有する;
のフリーラジカル付加重合によって製造される。
【0025】
重合の後に、0〜80重量部、好ましくは10〜60重量部の脂肪アルコール(B)、好ましくはヒマシ油を添加する。
【0026】
モノマー(A1)は、50〜400g/モル、好ましくは80〜220g/モルの分子量範囲のモノ不飽和化合物である。非ヒドロキシ官能性のアクリレートには、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルまたはシクロアルキルエステル(アルキル、シクロアルキル基に1〜18個、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する)、例えば、記載した酸のメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソプロピル、イソブチル、t-ブチル、異性体のペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシルまたはオクタデシルエステルなど、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルが含まれる。スチレンの代わりに、ビニルトルエンを使用することもできる。また、モノマーの混合物を使用することもできる。好ましいモノマー(A1)は、スチレン、メチルメタクリレートおよびブチルアクリレートである。
【0027】
適するヒドロキシ官能性成分(A2)には、108〜2000g/モル、好ましくは192〜1100g/モルの分子量範囲を有する1価または多価アルコール(エーテル基を含む)、またはこのようなアルコールの混合物が含まれる。好ましいのは、1分子あたりに2個またはそれ以上のヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオール、例えば、開始剤分子(例えば、水、エーテル基を含まない多価アルコール、アミノアルコールまたはアミン)を用いる環状エーテル(例えば、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、ブチレンオキシドまたはテトラヒドロフラン)の付加反応によって常法により得られるポリエーテルポリオールである。特に好ましいのは、繰返し単位の合計を基準に少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%の、構造:-CH(CH3)CH2O-の繰返し単位から構成されるポリエーテルである。
【0028】
この目的に適する開始剤分子は、多価アルコール、例えばエチレングリコール、プロパン-1,2-および-1,3-ジオール、ブタン-1,2-、1,3-、-1,4-および-2,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、3-メチルペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチル-2-ブチルプロパン-1,3-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、9〜18個の炭素原子を有する比較的高分子量のα,ω-アルカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタン-1,2,4-ジオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ビス(トリメチロールプロパン)、ペンタエリトリトール、マンニトールまたはメチルグリコシドなどである。好ましいのは、3またはそれ以上の官能価を有する開始剤、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、ヘキサントリオール、ペンタエリトリトール、2-アミノエタノール、エチレンジアミンとともに、プロピレンオキシドまたはテトラヒドロフランに基づくエーテルである。
【0029】
適するアミノアルコールの例は、2-アミノエタノール、2-(メチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、ジイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールまたはこれらの混合物である。
【0030】
特に適する多官能アミンは、脂肪族または環式脂肪族アミン、例えばエチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルプロパン、4,4-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,12-ドデカンジアミンまたはこれらの混合物である。
【0031】
2またはそれ以上の官能価を有する上記ポリエーテルポリオールの他に、適切であれば、モノヒドロキシポリエーテルを、単独でまたはより高い官能価のポリエーテルポリオールとの混合物として使用することもできる。モノヒドロキシポリエーテルは、上記の環状エーテルとモノアルコール、特に直鎖または分岐鎖の脂肪族または環式脂肪族モノヒドロキシアルカン(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノールまたはステアリルアルコールなど)との、あるいは、第二級の脂肪族または環式脂肪族モノアミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N-メチルステアリルアミン、ピペリジンまたはモルホリンなど)との付加反応によって、上記ポリエーテルポリオールと同様にして得ることができる。しかし、特に好ましいのは、比較的高い官能価のポリエーテルポリオール、特にポリエーテル分子あたりに2または3個のヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオールを使用することである。
【0032】
同様に、成分(A)の製造のために、少なくとも2の官能価を有する分子量32〜1000g/モルのヒドロキシ化合物を、成分(A3)として使用することができる。この場合、分子量32〜350g/モルの低分子量ヒドロキシ化合物、例えば、-1,2-、-1,3-、-1,4-および-2,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、3-メチルペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、9〜18個の炭素原子を有する比較的高分子量のα,ω-アルカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ビス(トリメチロールプロパン)、ペンタエリトリトール、マンニトールまたはメチルグリコシドが使用される。同様に、分子量1000g/モルまでのポリウレタン化学から自体既知のヒドロキシポリエステル、ヒドロキシポリエステルアミド、ヒドロキシポリカーボネートまたはヒドロキシポリアセタールを使用することもできる。
【0033】
適する脂肪アルコール(B)は、1個またはそれ以上のヒドロキシル基を含む化合物である。このヒドロキシル基を、8個以上、特に12個以上の炭素原子を有する飽和、不飽和、分岐または未分岐のアルキル基に結合させることができる。これらは、さらなる基、例えば、エーテル、エステル、ハロゲン、アミド、アミノ、尿素、およびウレタン基などを含むことができる。具体的な例は、ヒマシ油、12-ヒドロキシステアリルアルコール、オレイルアルコール、エルシルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキジルアルコール、ガドレイルアルコール、エルシルアルコール、ブラシジルアルコールまたはダイマージオール(=ダイマー脂肪酸メチルエステルの水素化生成物)であり、ヒマシ油が好ましい。
【0034】
本発明の結合剤混合物中に含まれるポリエーテルポリアクリレート成分(A)の製造において、成分(A1)の成分(A2およびA3)の合計に対する重量比は10:90〜50:50、好ましくは15:85〜40:60であり、成分(A2)の成分(A3)に対する重量比は30:70〜100:0であり、成分(A1)、(A2)および(A3)の合計の成分(B)に対する重量比は100:0〜20:80、好ましくは100:0〜40:60である。
【0035】
ポリエーテルポリアクリレート(A)は、例えば欧州特許出願公開第580054号明細書に記載されており自体既知であるフリーラジカル重合によって、供給法で製造される。一般的に言うと、少なくとも50重量%、好ましくは100重量%の成分(A2)を重合容器に入れ、80〜220℃の反応温度に加熱する。次いで、モノマー混合物(A1)、成分(A2)および(A3)の分画(適切であれば)、および重合開始剤(D)を計量して入れる。添加終了後に、最初の反応温度より低い0〜80℃、好ましくは0〜50℃の温度でさらに撹拌することによって、反応を完結させる。成分(B)は、重合が終了点に到達した後にのみ添加する。
【0036】
また本発明は、本発明の結合剤混合物の製造方法であって、成分(A2)を初めに導入して加熱し、次いで、モノマー混合物(A1)、適切であれば成分(A2)および(A3)の分画、および重合開始剤(D)を計量して入れ、そして重合させることを特徴とする方法をも提供する。好ましくは、脂肪アルコール(B)をその後に添加する。
【0037】
適する重合開始剤(D)の例には、ジベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルピバレートまたはブチルペルオキシベンゾエート、さらにアゾ化合物、例えば、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,3-ジメチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンニトリル)が含まれる。他の工業的に利用可能なフリーラジカル開始剤を使用することもできる。好ましいのはペルオキシドであり、特に好ましいのはジクミルペルオキシドおよびジ-tert-ブチルペルオキシドである。
【0038】
完全なモノマー変換を達成するために、少量の開始剤の後添加によって再活性化を行うことが必要になることもある。例外的に反応終了後に不十分な変換がわかり、比較的多量の出発化合物が反応混合物中になお存在しているときに、これらを蒸留によって除去することができるか、または、反応温度での加熱を伴う開始剤によるさらなる再活性化によって反応させることができる。
【0039】
ポリエーテルポリアクリレート(A)の製造において、適切であれば、助剤および添加剤を使用することもできる。これらは、例えば、分子量調節物質(例えば、n-ドデシルメルカプテン、tert-ドデシルメルカプタンなど)、低重合傾向を有するα-オレフィン[欧州特許出願公開第471258号明細書(第5頁第24〜36行)に記載]ならびに誘導体化ジエン[欧州特許出願公開第597747号明細書(第1頁第40〜58行、第3頁第1〜11行)に記載]である。これらの化合物は、成分(A)の合計重量を基準に、20重量%まで、好ましくは10重量%までの量で使用される。
【0040】
所望であれば、ポリエーテルポリアクリレート(A)の光安定性および気候安定性のさらなる改善を達成するために、ペイント技術において既知の酸化防止剤および/または光安定剤を、本発明の溶媒不含の結合剤混合物に安定剤として添加することができる。しかし、本発明の被覆組成物を、安定剤を含まない形態で使用するのが好ましい。
【0041】
適する酸化防止剤の例には、立体障害フェノール、例えば4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール(BHT)、あるいは他の置換フェノール(IrganoxR 系列、Ciba Geigy、Basle)、チオエーテル(例えばIrganoxR PS、Ciba Geigy、Basle)またはホスファイト(例えばIrgaphosR、Ciba Geigy、Basle)が含まれる。
【0042】
適する光安定剤の例には、「HALS(Hindered Amine Light Stabilizers)」アミン、例えばTinuvinR 622DまたはTinuvinR 765 (Ciba Geigy、Basle)など、さらに置換ベンゾトリアゾール、例えばTinuvinR 234、TinuvinR 327またはTinuvinR 571 (Ciba Geigy、Basle)などが含まれる。
【0043】
本発明の結合剤混合物を含んでなる被覆組成物を製造するために、成分(A)および(C)を、NCO:OH当量比が0.5:1〜2.0:1、好ましくは0.8:1〜1.5:1になるような割合で互いに混合する。個々の成分のこの混合中または混合後に、所望により被覆組成物技術の通常の助剤および添加剤を混合することができる。これらには、例えば、レベリング剤、粘度調節添加剤、顔料、充填剤、艶消剤、UV安定剤および酸化防止剤、さらに架橋反応のための触媒が含まれる。
【0044】
本発明の結合剤混合物を含んでなる被覆組成物を用いて、溶媒不含の2成分ポリウレタン被覆物を製造する。これらの被覆物は、少なくとも50のショアーD硬度(DIN 53505)を有する。
【0045】
また、本願は、本発明の結合剤混合物を含んでなる溶媒不含の2成分ポリウレタン被覆物をも提供する。
【0046】
本発明の結合剤混合物を用いて、金属基材を機械的損傷および腐蝕から保護するため、ならびに、無機基材(例えばコンクリートなど)を環境作用および機械的損傷から保護するための被覆物を製造するのが好ましい。被覆厚みは、0.5〜10mm、好ましくは0.7〜6mmの範囲内である。
【0047】
同様に、本発明の溶媒不含の結合剤混合物を含んでなる被覆組成物で被覆された基材が本発明により提供される。
【実施例】
【0048】
使用した成分
DesmodurR VL:4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートに基づくポリイソシアネート;NCO含量 31.5%および23℃での粘度 90mPa.sを有する;Bayer AG、Leverkusen。
DesmophenR 550U:プロピレンオキシドに基づく分岐ポリエーテル;数平均分子量 437g/モル、23℃での粘度 55mPa.sおよびOH含量 11.7%を有する;Bayer AG、Leverkusen。
【0049】
実施例1〜6
ポリエーテルポリアクリレートの製造のための一般的操作手順:
パート1
DesmophenR 550U (56.2g)
パート2
メチルメタクリレート (7.5g)
スチレン (7.5g)
ブチルアクリレート (1.9g)
パート3
ジ-tert-ブチルペルオキシド (1.9g)
パート4
ヒマシ油 (25g)
【0050】
パート1の成分を反応容器中で165℃に加熱し、撹拌する。3時間かけてパート2を連続的に計量して入れ、これと平行して3.5時間かけてパート3を連続的に計量して入れる。3時間後に、パート3の添加を中断し、混合物を140℃まで冷却する。温度を140℃まで低下させた後、パート3の残りを計量して入れる。140℃でさらに2時間の後、生成物を室温まで冷却し、適切であればパート4を混合する。
【0051】
生成物の組成ならびにOH含量、粘度および水吸収性を表1に挙げる。
【表1】

【0052】
実施例10〜18
結合剤混合物の製造およびその使用のための一般的操作手順:
ポリイソシアネートおよびポリエーテルポリアクリレートを、適切であれば触媒および添加剤と混合し、均一になるまで混合した。次いで、この結合剤混合物を試験基材に適用した。組成および最終ショアーD硬度を表2に挙げる。
【表2】

本発明の実施例(1〜6)は、低い水吸収性を低い粘度とともに保持し、同時に被覆物において高い硬度を示す。実施例7は高い水吸収性および粘度を示す。ヒマシ油を添加すると、実施例7からの混合物は曇った状態になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒不含の結合剤混合物であって、
(A1)非ヒドロキシ官能性のアクリルおよびスチレンモノマーの混合物またはそのコポリマー、
(A2)ヒドロキシ官能性ポリエーテル(A2)、
(A3)所望により、分子量Mnが32〜1000である(A2)以外のヒドロキシ官能性化合物、
からなる成分の反応生成物である疎水性ポリエーテルポリアクリレート(A)を含んでなり、8%未満の水吸収性(21日後および23℃で測定)を有する溶媒不含の結合剤混合物。
【請求項2】
水吸収性が5%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の溶媒不含の結合剤混合物。
【請求項3】
疎水性ポリエーテルポリアクリレート(A)に加えて、脂肪アルコール(B)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の溶媒不含の結合剤混合物。
【請求項4】
脂肪アルコール(B)がヒマシ油であることを特徴とする、請求項3に記載の溶媒不含の結合剤混合物。
【請求項5】
結合剤混合物の粘度が200〜3000mPa.s(23℃)であり、OH含量が3〜10重量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の溶媒不含の結合剤混合物。
【請求項6】
成分(A2)が、分子あたりに2個またはそれ以上のヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオールであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の溶媒不含の結合剤混合物。
【請求項7】
成分(A2)が、繰返し単位の合計を基準に少なくとも50%の、構造:-CH(CH3)CH2O-の繰返し単位から構成されるポリエーテルであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の溶媒不含の結合剤混合物。
【請求項8】
請求項1に記載の溶媒不含の結合剤混合物の製造方法であって、成分(A2)を初めに導入して加熱し、次いで、モノマー混合物(A1)、適切であれば成分(A2)および(A3)の分画、および重合開始剤(D)を計量して入れ、そして重合させることを特徴とする方法。
【請求項9】
重合後に脂肪アルコール(B)を添加することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の結合剤混合物およびポリイソシアネート(C)を含み、NCO:OH当量比が0.5:1〜2.0:1である2成分ポリウレタン被覆組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の結合剤混合物を含んでなる2成分ポリウレタン被覆物。
【請求項12】
少なくとも50のショアーD硬度(DIN 53505)を有することを特徴とする、請求項11に記載の2成分ポリウレタン被覆物。
【請求項13】
金属基材または無機基材の保護のための被覆物を製造するための、請求項1に記載の溶媒不含の結合剤混合物の使用。
【請求項14】
請求項1に記載の溶媒不含の結合剤混合物を含んでなる被覆組成物で被覆された基材。

【公表番号】特表2006−503163(P2006−503163A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545805(P2004−545805)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011055
【国際公開番号】WO2004/037896
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】