説明

低減されたVOC放出レベルをもつ、2つキャップ(ジキャップ)された不飽和ポリエステルでラミネートされたポリエステル樹脂

本発明は、第一に不飽和カルボン酸、その対応する無水物、又はそれらの混合物と、一価アルコール、DCPD、及び水を反応させること、そして、前記第一ステップの生成物をポリオール及び任意選択で、不飽和基含有オイル、その対応する脂肪酸又はそれらの混合物と反応させることにより調製される低スチレン含有量樹脂の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年10月8日に出願された、米国仮出願第60/416805号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、より高いレベルのスチレンを含む樹脂システムと比較して、揮発性有機化合物(VOC)の低減された放出量を示す低スチレン含量樹脂に関する。さらに具体的には、本発明は樹脂及びスチレンの合計の質量を基準にして、(典型的には35質量%未満の)低レベルのスチレンしか含有しない不飽和ポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【0003】
低VOC不飽和ポリエステルシステムについての仕事の多くは、放出低減の方法としてワックスの使用に焦点をおいてきた。硬化の間、最初に樹脂中に溶解又は分散されたワックスは、加工される物品の表面上に薄膜を形成する。このフィルムは、スチレンを硬化部の表面から揮発させないようにする物理的なバリアとして作用する。これはスチレンの放出を低減する。不幸にも、このワックス状フィルムは、本質的に層間接着を弱め、複数層からなる構成を用いて作られる成型物品の強度を低下させる。ワックスの使用に代わるものとしては、不飽和ポリエステルの分子量を低下することがある。より低い分子量のポリエステルは、適当な作業粘度を保つために、より少ないスチレンの使用しか必要としない。ポリエステル合成において分子量を低減する一つの通常の方法は、他のものに対して、一つの反応剤の濃度を高くすることである。別の手法は、成長する鎖をキャップするために単官能基を用いることである。ジシクロペンタジエン(DCPD)ベースの樹脂は、後者の手法のよい例である。DCPDはカルボン酸末端基と置換して、スチレンへのポリエステル樹脂の溶解度を高める。しかし、DCPD基は副反応を起こして、広い分子量分布をもたらしうる。広い分子量分布をもつポリマーは、粘度が高くなり、そしてより多くのスチレンを必要とする傾向がある。より多くのDCPDを添加することは、分子量をさらに低下させ且つより多くの副反応が起こる。加えて、DCPDベースの樹脂は、腐食性環境で性能が劣り、しかもそれらの機械特性は不飽和ポリエステル樹脂について一般的なもののうちの低級なところに位置する。一般には、DCPD含有量が多ければ多いほど、それだけ性能はより低くなる。
【0004】
DCPCによるキャッピングの代替は、最近の米国特許(第6,107,446号及び同6,222,005号)に記載されたように、低分子量アルコールでキャッピングすることであり、これらの内容を本願に明確に援用する。上記‘446及び‘005特許は、積層用途に用いることのできる、低い酸価(AV)及び水酸基価(HV)をもつ低粘度樹脂を製造するための方法を記載している。‘446及び‘005特許の方法は、相当量のアルコールが無水マレイン酸と反応され(無水マレイン酸のモル当たり、0.5〜1.0モルのアルコール)、続いてグリコールと反応されることを必要とする。グリコールとの反応においては、アルコールの多くは蒸留で水とともに除去される。最終樹脂中に結合されるアルコールの効率は、約25%である。アルコールは精製後に再利用されるが、それは追加のステップ及び出費である。より少ないアルコールを用いることもできるが、結合される効率は改善されず且つ極性末端基の数が増加する。加えて、この方法を用いて作られる樹脂のいくらかは、空気−積層体界面において、硬化の間、空気阻害を受けやすい。これは、べたつきのある表面−所望しない特性−をもつ積層体をあたえる。
【特許文献1】米国特許第6,107,446号明細書
【特許文献2】米国特許第6,222,005号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
‘446及び‘005特許に記載されたアルコールキャッピング法にDCPDを添加することは、必要とされるアルコール量を低減し、且つ用いられるアルコールがポリマー中に組み込まれる効率を高めることができることが発見された。実施例に示したように、本方法によって必要とされるエタノールの量は最大50%まで減少し、且つDCPDが添加された場合はエタノール保持率が2倍になる。たとえ少量のDCPD(10〜15モル/100モル無水マレイン酸)の混合でさえ表面硬化を改善して、積層体がべたつきなしに乾燥する。本発明の方法によって調製された樹脂は、従来の低い粘度のスチレン樹脂にみられる性能の欠点に悩むことはない。
【0006】
(本発明の簡単なまとめ)
低いスチレンレベルで使用可能な粘度を達成するために、本発明の方法はエステル化又はエステル交換反応を利用し、そこでは一価水酸基アルコールとジシクロペンタジエン(DCPD)残基との反応に由来した小さなアルキル基が、ポリエステル鎖の末端に付加される。アルコール及びDCPDの両者は、非極性連鎖末端であり、通常キャップとも称され、そしてカルボン酸又はグリコール水酸基などの極性末端基と置き換わる。これは、不飽和ポリエステル樹脂、又はより少ないスチレンしか必要としない「ジキャップ(dicap)」樹脂を与える。積層する樹脂中のより少ないスチレンは、本発明の樹脂が開放金型法(open-molding techniques)を使用して本発明の樹脂が商品に成形されるときにVOC放出を低減する。
【0007】
(発明の詳細な説明)
上記ジキャップ樹脂は、少なくとも2つのカルボキシル官能基を有し且つエチレン性不飽和基、すなわち、C=C結合、を含むカルボン酸、その対応する無水物、又は適切な酸/無水物の混合物を、メタノール又はエタノールなどの飽和一価アルコール又はアルコール混合物、DCPD、及び水、と反応させることによって調製される。DCPC及びアルコールは、カルボン酸/無水物、及び水と、任意の順番で又は同時に反応されることができる。カルボン酸又は無水物は最初にアルコールと反応され、さらに水及びDCPDの添加を続いて行うことができるか、又は全ての成分が一緒に反応されることができる。通常、一つの反応器が全反応に用いられうる。これはワンポット(one-pot)法とよばれる。それに代えて、カルボン酸又は無水物、水、及びDCPDを第一の容器内で反応させ、さらに第二の容器内でアルコール、及びカルボン酸又は無水物を反応させ、次にその2つの容器の内容物を混合し、さらにグリコール又はグリコール類を添加して最終のジキャップ樹脂を調製することによって、上記反応が実施されうる。これはツーポット(two-pot)法とよばれる。
【0008】
好ましい方法は、反応器の大きさ及び製造設備の配置に左右される。多くの製造設備においては、ワンポット法が好まれる。いずれかの方法を使用して、アルコール、及びカルボン酸又は無水物、及びDCPD、及び水、の間の反応は、大気条件下、約158〜300°Fで、撹拌などの任意の混合形態で実施される。
【0009】
不飽和ポリエステル樹脂の製造に通常用いられる添加剤が使用できる。これらには、重合禁止剤、触媒、及びその他同様のものが含まれる。反応の進行は、混合物の酸価の測定(ASTM D1639−90)によって追跡されうる。実質的に全てのアルコール及びDCPDがカルボン酸/無水物(ワンポット法)と反応した後は、中間体はカルボン酸/無水物、モノエステル、及びジエステルの混合物であり、DCPD及びアルコールはエステルのアルコール部分を構成すると考えられる。この時点で、第二ステップである、グリコールが添加され且つ混合物は撹拌などのいくつかの形態の混合をされながら355〜430°Fに加熱される。好ましくは蒸留によって揮発成分が除去され、混合物の酸価(ASTM D1639−90)及び粘度(ASTM D1545−89)が、所望する終点に達するまで観測される。加えて、グリコールとの反応は、大豆油などのエチレン性不飽和基を含むオイルの存在下で実施されることができる。反応混合物は冷却され、そしてスチレンが添加されて所望する積層用樹脂が得られる。樹脂の貯蔵安定性を長くするために、重合禁止剤がスチレンに添加されることができる。本発明に有用な不飽和カルボン酸及び対応する無水物の例は、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及び無水マレイン酸、を含む。加えて、その他の酸、無水物、又は酸のエステルが、その化学組成物をいくぶん変えるために添加されることができる。そのような酸及び無水物の例は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、無水フタル酸、ナジク(nadic)酸無水物、メチルナジク酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ジメチルテレフタレート、及びその他同様のもの、を含む。マレイン酸及び無水マレイン酸が好ましい。
【0010】
飽和一価アルコールの例は、標準温度及び圧力で約300°F未満の沸点を有するアルコール類であり、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びその他同様のもの、を含む。メタノール及びエタノールなどの第一級アルコールが好ましい。
【0011】
ジシクロペンタジエンは、本発明の方法において、キャッピング剤として用いられる。様々な等級のDCPDがある。低級DCPDは典型的には、0.1質量%より多いC−5トリマーを含む。ポリエステルグレードのDCPDは典型的には、0.1質量%未満のC−5トリマーしか含まない。好ましくは、ポリエステルグレードのDCPDが用いられる。ポリエステルグレードのDCPDはエクイスター(Equistar)社から入手可能である。
【0012】
広範囲のポリオールが本発明の方法に用いられうる。含まれるものは、通常のジオール類、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール;グリコールエーテル類、例えば、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコール;及び、ポリオキシアルキレングリコール類、例えば、ポリオキシエチレングリコール、及びポリオキシプロピレングリコール、である。トリオール及びさらに多官能ポリオール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びそれらのオキシアルキレン化付加体もまた使用されうる。好ましくは、ポリオール類は脂肪族又は脂環族であり、そして任意選択でC−O−C連鎖を含む。
【0013】
不飽和基を含有するオイル類の例は、ヒマシ油、ピーナッツ油、アマニ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、ナタネ油、大豆油、及びキリ油、を含む。加えて、オイルに代えて脂肪酸が用いられうる。例としては、ヒマシ油の代わりのリシノール酸である。エポキシ化大豆油などの変性油もまた使用されうる。大豆油の使用が好ましい。投入した全成分から、集めた揮発成分を引いた合計質量を基準にして、最大45質量%までのオイルが使用されうる。好ましくは、5質量%〜45質量%のオイルが使用される。より好ましくは10質量%〜30質量%のオイルが、本方法において使用される。不飽和ポリエステル樹脂の合成に通常用いられるその他の原料、例えば溶媒、異性化及び/又は縮合触媒、促進剤など、が本発明方法に使用できる。溶媒の例は、当技術分野で一般に公知のものであり、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及び溶媒混合物、を含むがこれらに限定されない。一般に用いられる重合禁止剤には、ヒドロキノン、p−ベンゾキノン、ジ−t−ブチルヒドロキノン、t−ブチルカテコール、フェノチアジン、及びその他同様のもの、が含まれる。縮合反応を促進するために用いられる触媒には、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、亜鉛塩(例えば酢酸塩)、有機錫化合物(ジブチル錫オキシド)、及び当業者に公知のその他の物質、が含まれる。異性化触媒には、モルホリン及びピペリジンなどの有機アミン類、が含まれる。
【0014】
以下の例においては、いくつかのジキャップ樹脂が、本発明の方法によって製造された。以下の略語が用いられる:EG−エチレングリコール、DPG−ジプロピレングリコール、DCPD−ジシクロペンタジエン、AV−酸価(ASTM D1639−90)、HV−水酸基価(ASTM E222−94)、TS−引張強度(psi)、TM−引張モジュラス(ksi)及びELG−伸び(%)(これらは、ASTM D638に準拠して測定された。)、HDT−荷重下での熱曲げたわみ(℃)(ASTM D648−97)。
【0015】
一般に、本発明の方法は、約90〜175°Fで、無水マレイン酸をエタノールと反応させることによって実施される。この反応が完結したときに、水及びDCPDが添加され、そして温度が260°Fに上げられる。このステップの間は、冷却が必要とされる可能性がある。DCPDとの反応には、AVの変化(低下)が引き続いておこる。それに代わり、無水マレイン酸、エタノール、及びDCPDが、一段階(ワンステップ)で反応されることもできる。目標のAVが達成されたら(AVは、無水マレイン酸、水、エタノール、及びDCPDの使用量に左右される。)、所望のグリコール類、オイル類、重合禁止剤、及び触媒が添加され、且つ温度が380〜420°Fに上げられる。揮発成分は蒸留によって除去される。目標とするAV及びガードナー・ホルト(Gardner-holt)粘度(ストークス、ASTM D1545−76に準拠する(樹脂部/スチレン部))に達するまで、縮合が継続される。生成樹脂は、重合禁止剤を含有するスチレンで希釈され、そして最終的なAV、HV、及び最終的な粘度(cps)が測定され、測定にはブルックフィールド粘度計を用い、これはブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ社(11 Commerce Blvd., Middleboro MA 02346)から入手できる。
【0016】
〔比較例C1、並びに実施例1及び2〕
(比較例C1)
無水マレイン酸(900g)、エタノール(287g)、及びジプロピレングリコール(DPG、394g)を80℃で2.8時間反応させた。DPG(172.4g)、ヒドロキノン(0.175g)、トリフェニルホスファイト(0.175g)、及び酢酸亜鉛・2水和物(1.04g)を加え、蒸留物を除去しながら、混合物を203°Fで3.3時間反応させた。この混合物を150℃に冷却した。DPG(566.3g)、ピペリジン(1.69g)及びヒドロキノン(0.106g)を加え、混合物を210℃で13.4時間反応させた。得られた生成物(2,000g)は、26のAV、及び47のHVを有していた。この樹脂のスチレン溶液の粘度は、約18%のスチレンレベルで3710cpsだった。生成物のNMR分析は、投入したエタノールの約16%が生成物中に保持されていることを示した。
【0017】
(実施例1. 本発明の方法を用いた、エタノール及びDCPDでキャップされた樹脂の調製)
無水マレイン酸(500.0g)及びエタノール(164.4g)を、79℃で2時間反応させた。DCPD(168.2g)及び水(27.5g)を加え、さらに混合物を125℃に加熱した(125℃に温度を保つために冷却が必要だった)。125℃における反応時間は4時間だった。DPG(273.6g)、ヒドロキノン(0.11g)、トリフェニルホスファイト(0.11g)を添加し、そして、蒸留物を除去しながら、混合物を196℃で2時間反応させた。この混合物を夜通しで冷却した。翌朝、DPG(273.6g)、ピペリジン(1.06g)、及びヒドロキノン(0.05g)を添加し、そして、蒸留物を除去しながら、混合物を196℃で10.5時間加熱した。生成物(1,200g)は、26のAV、24のHVを有していた。この樹脂のスチレン溶液の粘度は、約18%のスチレンレベルで2,508cpsだった。
【0018】
(実施例2. 本発明の方法を用いた、エタノール及びDCPDでキャップされた樹脂の調製)
無水マレイン酸(1772.4g)、水(65.2g)、エタノール(249.6g)、及びDCPD(310.4g)を40〜49℃で、必要な冷却をしながら0.5時間反応させた。混合物を82℃に加熱し、そして温度をその温度に2時間保った。DPG(1744.8g)及びピペリジン(4g)を加え、そして、反応混合物を204℃に加熱し、さらに蒸留物を除去しながら9.8時間保った。生成物(4,000g)は、20のAV、及び18のHVを有していた。樹脂のスチレン溶液の粘度は、約27%のスチレンレベルで1,680cpsだった。NMR分析は、22%のエタノールが生成物中に保持されていることを示した。
【0019】
これらの例は、本発明の方法が、HV及び類似のスチレンレベルにおける粘度が、より低い樹脂を与えることを示している。さらに重要なことには、実施例2及び比較例C1に示されているように、必要とされるエタノールの量がC1における145g/Kg生成物、から、実施例2における62g/Kg生成物へと、56%低下している。保持されているエタノールもまた、18%から22%へ増加しており、さらに本発明の方法の高い有効性を示している。
【0020】
〔比較例C3及び実施例3〕
(比較例C3.標準のUPR法を用いたDCPD樹脂の調製)
水(92.7g)、DCPD(699.7g)、及び無水マレイン酸(約1時間間隔をあけて添加した2回の250gの投入量に分けた500.0g)を撹拌下、127℃で、221のAVに到達するまで反応した(2.8時間)。次に、EG(66.5g)、DEG(227.1g)、DPG(273.6g)、ピペリジン(1.19g)、トリフェニルホスファイト(0.19g)、及びヒドロキノン(0.28g)を添加し、そして混合物を385°Fで4.5時間反応させた。生成物は25のAV及び54のHVを有していた。樹脂のスチレン溶液の粘度は、約17%のスチレンレベルで770cpsだった。この樹脂から、樹脂のみの成形物を作った(20%スチレン、2.7%ビニルトルエン、室温硬化と60℃で2時間の後硬化)。特性は以下のとおりだった:TS−5,641、TM−427、ELG−1.6、及びHDT−59。
【0021】
(実施例3. 本発明の方法を用いた、エタノール及びDCPDでキャップされた樹脂の調製)
無水マレイン酸(700.0g)及びエタノール(164.4g)を79℃で1.7時間反応させた。水(64.2g)及びDCPD(706.4g)を添加し、そして、混合物を127℃に加熱し且つ233のAVに到達するまで保った。温度を127℃に維持するために冷却が必要だった。反応時間は3時間だった。次に、EG(88.6g)、DEG(75.7g)、ヒドロキノン(0.17g)、トリフェニルホスファイト(0.17g)を加え、そして、蒸留物を除去しながら、混合物を196℃で3時間反応させた。この反応混合物を夜通しで冷却させた。翌日、DEG(227.1g)、ピペリジン(1.52g)、及びヒドロキノン(0.08g)を添加し、そして、混合物を197℃に6.5時間加熱した。生成物は27のAV及び25のHVを有していた。この樹脂のスチレン溶液の粘度は、約17%のスチレンレベルで792cpsだった。この樹脂から、樹脂のみの成型物を作った(20%スチレン/2.9%ビニルトルエン、室温硬化と60℃で2時間の後硬化)。特性は以下のとおりだった:TS‐7,236、TM‐476、ELG‐2.0、及びHDT‐74。NMR分析は、仕込んだエタノールの約33%が生成物中に保持されていることを示していた。
【0022】
本発明の方法によって製造した上記樹脂は、標準のポリエステル法を用いて調製されたDCPD樹脂と比較した場合、より低いHV、より優れた機械特性、及びより高いHDTを有している。比較例1と比べると、エタノール保持は2倍(33対16%)だった。
【0023】
〔比較例C4及び実施例4〕
(比較例C4. 標準のUPR法を用いたDCPD DEG−UP樹脂の調製)
以下のモル比を有する樹脂を調製するために比較例C3の方法を用いた:無水マレイン酸(1.00mol)、水(1.01mol)、DCPD(1.04mol)、及びDEG(0.60mol)。生成物は、28のAV及び46のHVを有していた。この樹脂のスチレン溶液の粘度は、約17%のスチレンレベルで735cpsだった。この樹脂から樹脂のみの成形物を作った(熱硬化)。特性は以下のとおりだった:TS−5,869、TM−555、ELG−1.2、及びHDT−89。
【0024】
(実施例4. 本発明の方法を用いた、エタノール及びDCPDでキャップされたDEG UP樹脂の調製)
以下のモル比を有する樹脂を調製するために実施例3の方法を用いた:無水マレイン酸(1.00mol)、エタノール(0.48mol)、水(0.50mol)、並びにDCPD(0.75mol)及びDEG(0.60mol)。生成物は、26のAV及び28のHVを有していた。樹脂のスチレン溶液の粘度は、約17%のスチレンレベルで593cpsだった。この樹脂から樹脂のみの成形物を作った(熱硬化)。特性は以下のとおりだった:TS−8,459、TM−529、ELG−2.0、及びHDT−96。
【0025】
本発明の方法によって製造した樹脂は、標準のポリエステル法を用いて調製したDCPD樹脂と比較した場合、より低いHV及びより優れた機械特性を有している。
【0026】
〔比較例C5及び実施例5〕
(比較例5)
以下のモル比を有する樹脂を調製するために比較例C1の方法を用いた:無水マレイン酸(1.00mol)、エタノール(0.65mol)、及びDPG(0.98mol)。生成物のNMR分析は、組み込まれたエタノールと無水マレイン酸由来成分とのモル比は13.4/100であることを示した。最初の割合は65/100だった。マレイン酸が失われていないとすると、最初/最後のエタノールの割合は13.4/65又は21%エタノール保持率である。
【0027】
(実施例5.本発明の方法を用いた、エタノール及びDCPDでキャップされたDEG UP樹脂の調製)
以下のモル比を有する中間体を調製するために、実施例3で示した方法の第1のステップを用いた:無水マレイン酸(100mol)、エタノール(48mol)、水(50mol)、及びDCPD(75mol)。反応は、214のAVに到達するまで、127℃で行った。実施例3で用いた方法は、第2及び第3ステップを組み込むことによって修飾し(0.6molの1:2 EG:DG、ヒドロキノン、ピペリジン、トリフェニルホスファイト添加)そして、混合物は385°Fで反応させた。生成物のNMR分析は、無水マレイン酸に由来する成分に対して組み込まれたエタノールのモル比が、19.6/100であることを示した。最初の割合は48/100だった。マレイン酸が失われていないとすると、最初/最後のエタノールの割合は19.6/48、又は41%エタノール保持率である。本発明の方法によって製造した樹脂はより少ないエタノールを用い、そして、用いたエタノールのより多くが生成物中に保持されている。これは、本方法の経済性を証明し、そして再利用又は廃棄されなければならないエタノールの量を低減する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
A.第一のステップにおいて、少なくとも2つのカルボキシル官能基を有する不飽和カルボン酸、その対応する無水物、又はそれらの混合物を、飽和の一価アルコール、水、及びジシクロペンタジエンと反応させ、そして
B.第二のステップにおいて、前記第一のステップの生成物を、不飽和基を含むオイル、それと対応する脂肪酸、又はそれらの混合物が任意選択により存在する下で、ポリオールと反応させる、
を含む、不飽和ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記第一のステップにおいて、前記水及びジシクロペンタジエンが、前記不飽和カルボン酸、その対応する無水物、又はそれらの混合物と反応され、かつ、一価アルコールが前記不飽和カルボン酸、その対応する無水物、又はそれらの混合物と反応され、それぞれの反応が別個の容器内において行われ、そして次に混合されて前記第一のステップの反応が完結される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第一のステップにおいて、前記一価アルコール、ジシクロペンタジエン、及び水が、前記不飽和カルボン酸、その対応する無水物、又はそれらの混合物に順次添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一のステップにおいて、前記不飽和カルボン酸、その対応する無水物、又はそれらの混合物、一価アルコール、ジシクロペンタジエン、及び水、が同時に反応させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記不飽和カルボン酸又はその対応する無水物が、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、又はそれらの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記飽和一価アルコールが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、又はそれらの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオールが、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、又はそれらの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記第一のステップにおいて、芳香族ジカルボン酸、その対応する無水物、又はモノ−若しくはジエステルが前記反応に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記芳香族ジカルボン酸、その対応する無水物、又はモノ−若しくはジエステルが、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、及びそれらの混合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
以下のステップ:
A.第一のステップにおいて、マレイン酸、フマル酸、及び無水マレイン酸からなる群から選択される不飽和ジカルボン酸又はその対応する無水物又はそれらの混合物を、メタノール及びエタノールからなる群から選択される飽和一価アルコール、DCPD、及び水と反応させること、及び
B.第二のステップにおいて、ヒマシ油、ピーナッツ油、アマニ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、ナタネ油、大豆油、及びキリ油からなる群から選択される、含有するオイル又はその対応する脂肪酸が任意選択で存在する下で、前記第一のステップの生成物を、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、及びポリオキシプロピレングリコールからなる群から選択されるポリオールと反応させること、
を含む、ポリエステル樹脂の製造方法。

【公表番号】特表2006−502286(P2006−502286A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543447(P2004−543447)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/031705
【国際公開番号】WO2004/034017
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(501014393)アシュランド インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】