説明

低温で窒素酸化物を除去するためのバナジウム/チタニア系触媒、及びこれを用いる窒素酸化物の除去方法

【解決手段】窒素酸化物除去用バナジウム/チタニア系触媒、及びこれを用いて燃料ガス内の窒素酸化物を除去する方法を開示する。三酸化バナジウム及び/又は四酸化バナジウムを含むバナジウム/チタニア系触媒は、広い温度範囲、特に低温で窒素酸化物を除去する優れた能力を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は比較的低温で窒素酸化物を除去するためのバナジウム/チタニア系触媒に関するものである。より詳しくは、本発明は、三酸化二バナジウム(V)及び/又は四酸化二バナジウム(V)を含み、広い温度帯域、特に比較的低温で窒素酸化物を除去する能力に優れたバナジウム/チタニア系触媒、及びこれを用いる窒素酸化物の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、窒素酸化物は,産業用ボイラー、ガスタービン、火力発電所、廃棄物焼却設備、船舶用エンジン、石油化学プラントなどの固定源から発生する。窒素酸化物を除去する技術は、大きく3種に区分することができる。一番目の技術としては、窒素酸化物の発生をあらかじめ防止するために、化石燃料を処理して、これに含まれた窒素化合物を除去する燃料脱窒化方法がある。二番目技術としては、使用する燃料によってそれぞれ燃焼方法が異なるので、過剰空気注入、段階的燃焼などによって燃焼条件を改善する方法がある。そして、最後の技術としては、発生した窒素酸化物を排気ガス処理によって除去する後処理方法がある。
燃料脱窒化方法の場合、石炭に含まれた窒素化合物を除去するために、高温の反応条件で水素を使用して長期間反応させても、全体窒素化合物の約16%だけが除去されると報告されている。また、燃焼条件改善法の場合には、窒素酸化物排出条件と熱効率の逆相関関係のため、最大30〜40%以上の効率を得ることは事実上不可能なものと知られている。
したがって、後処理方法による窒素酸化物除去技術が窒素酸化物除去効率の側面で優秀であるので、実際に商用化工程に適用されている。
このような後処理方法は湿式法及び乾式法に区分されるが、湿式法の場合、窒素酸化物及び硫黄酸化物を同時に除去することができるという利点を持っているので、少量の窒素酸化物が発生する工程に適用されて来た。しかし、前記方法を適用するためには、水に対するNOの溶解性が良くないから、水溶液状でNOを吸収させる前にNOに酸化させなければならないので、工程の経済性面で望ましくなく、NOをNOに酸化させる過程で副産物として生成するNO及びNを再処理しなければならない問題点が発生する。
前記のような問題点のため、後処理技術の中でも乾式法が活発に研究されている。乾式法は、触媒の使用なしに約850〜1050℃の高温で窒素酸化物をアンモニア噴射のみで選択的に窒素及び水分に還元させる選択的非触媒的還元法(Selective Non−Catalytic Reduction;SNCR)及び触媒を使用して約150〜450℃の比較的低温領域で窒素酸化物を窒素及び水分に還元させる選択的触媒還元法(Selective Catalytic Reduction;SCR)がある。前者の場合、比較的低費用で50%以上の窒素酸化物を除去することができるという利点を持っているが、排出される未反応アンモニアがアンモニウム塩(ammonium salt)などを形成して、反応機の後段にある装置にプラギング(plugging)または腐食現象を誘発することができ、操業温度帯域が狭いため運転の困難さがある。したがって、固定源から発生する窒素酸化物を除去するために、経済的及び技術的側面で選択的触媒還元法が最も脚光を浴びている。
選択的触媒還元法は、下記反応式1〜4のように、触媒の存在下で、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)などの窒素酸化物を、還元剤としてアンモニアを使用して窒素及び水分に還元させる。ただ、排気ガス中には酸素が含まれているので、実質的には反応式3及び4によって窒素酸化物が除去される。
〔反応式1〕
6NO+4NH→5N+6H
〔反応式2〕
6NO+8NH→7N+12H
〔反応式3〕
4NO+4NH+O→4N+6H
〔反応式4〕
2NO+4NH+O→3N+6H
しかし、前記過程では、還元剤として使用すべきアンモニアが酸素と反応して下記反応式5〜8のように窒素及び窒素酸化物を生成する。
〔反応式5〕
4NH+3O→2N+6H
〔反応式6〕
4NH+4O→2NO+6H
〔反応式7〕
4NH+5O→4NO+6H
〔反応式8〕
4NH+7O→4NO+6H
一般に、アンモニア酸化反応は、反応温度が高温に上昇するにつれて活発に起り、窒素酸化物の還元反応と互いに競争的に発生することになり、温度によって窒素酸化物の転換率が変わることになる。水分が含まれない場合には、反応式6による反応はほとんど発生しなく、特に反応式7及び8によって窒素酸化物が発生するので抑制すべき反応であるが、これは、反応温度が増加するにつれて反応速度が増加することになる。
一方、排ガス中には一般的に水分及び硫黄酸化物が存在するが、これらが触媒上で塩を生成して触媒の活性を低下させる。このように、触媒が被毒される主な原因になる反応は下記反応式9〜12のようになされる。
〔反応式9〕
2NH+HO+2NO→NHNO+NHNO
〔反応式10〕
2SO+O→2SO
〔反応式11〕
NH+SO+HO→NHHSO
〔反応式12〕
SO+HO→HSO
前記反応式9の場合、二酸化窒素とアンモニアが反応して硝酸塩(Ammonium nitrate)を形成する反応であり、このような硝酸塩は150℃以上では分解されて触媒被毒を形成しないものと知られている。しかし、実際工程において、アンモニアは150℃以上の温度で噴射されるため、究極に、触媒の被毒は、反応式10によって生成された三酸化硫黄が反応式11によって硫酸塩を形成して、触媒表面で分解しないで残留することにより引き起こされる。また、前記反応式12によって硫酸が生成されて、触媒層及び後段の設備を腐食させる原因を提供することになる。
前記反応式10による三酸化硫黄生成反応は高温で活発に起るので、これを最小化して、前記反応式11及び12によって硫酸塩及び硫酸の生成を抑制することができる低温で優れた窒素酸化物の選択的還元反応を達成することができる触媒開発が要求されている。
一般に、選択的触媒還元技術に使用される触媒は、貴金属触媒から塩基性金属触媒まで多様な触媒が提案されて来た。このような活性物質を担持する担体の役目が大きいと知られている。これに関連し、最近の選択的触媒還元反応触媒はほぼ大部分が活性成分としてバナジウムを中心として研究されており、五酸化二バナジウム(V)をチタニア(TiO)、アルミナ(Al)、またはシリカ(SiO)に沈澱させるかあるいは担持させて使用することにより、優れた選択的触媒還元反応を得ることができると知られている。特に、最も重要な担体の選定基準は硫黄成分に対する耐久性であり、これを考慮し、大部分の商用化触媒の場合には主にチタニアを担体として使用する。また、前記反応式10によって生成される三酸化硫黄を減少させるための方法として、タングステン、モリブデンなどを添加させた触媒の開発が活発に進行されている。
これに係る従来の技術は次のようである。
米国特許番号第4,152,296号は、担体重量を基準として少なくとも0.1%、望ましくは0.35〜1.35%のバナジウム元素を含むように、バナジウムサルフェート(VSO)、バナジルサルフェート(VOSO)またはこれらの混合物をTiO担体に担持し、アンモニアと不活性ガスの混合ガスを300〜520℃で、前記担持された担体と反応させて排煙脱窒触媒を製造する方法を開示している。この時、製造された触媒は0.3〜0.45cc/gの空隙体積、20〜50m/gの非表面積を持つ。
米国特許番号第4,182,745号においては、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミニウムなどの耐熱性多孔性物質を担体にしてヘテロポリ酸(silicotungstic acid、 silicomolybdic acid、phosphotungstic acid、 phosphomolybdic acidなど)の遷移金属(Cu、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niなど)塩を担持させた後、乾燥及び焼成過程を経って製造される、250〜450℃の活性帯域を持つ排煙脱窒用触媒を開示している。前記特許は、担体選定基準として非表面積50m/g以上、空隙体積0.2〜1.5cc/gを持つことが望ましいと説明している。
米国特許番号第4,929,586号は、アナターゼ結晶構造を持つチタニア(TiO)担体にV、MoO、WO、Fe、CuSO、VOSO、SnO、Mn、Mnなどの活性成分を担持させたNOx除去用触媒を開示しており、350℃付近で90%前後のNOx転換率を持つと報告している。前記特許において、担体として使用されたTiOは600Å以下の空隙直径を持つ空隙の微細空隙率(micropore porosity)が0.05〜0.5cc/cc、600Å以上の空隙直径を持つ空隙の粗空隙率(macropore porosity)が0.05〜0.5cc/cc、そして全体空隙率が最大0.8cc/ccの範囲であると説明している。
米国特許番号第5,045,516号は、TiOに三酸化モリブデン(molybdenum trioxide)及び10%以下の五酸化二バナジウムを担持させた窒素酸化物低減用触媒の製造方法を開示している。前記特許の場合、排ガス中の砒素化合物のような触媒毒による触媒の非活性化を防止するために、TiO組成において、カルシウムの含量を500ppm以下、鉄含量を100ppm以下に制限し、結晶構造においても、60%以上のアナターゼ型構造に構成されており、そして10〜100nmの平均粒子大きさ、10〜30nmの平均空隙半径、及び10〜80m/gのBET表面積を有するように限定した。
米国特許番号第6,054,408号においては、アナターゼ型TiOに0.01〜5重量%の三酸化モリブデン及び0.01〜5重量%の五酸化バナジウムを担持させた窒素酸化物低減用触媒を開示している。前記特許において、担体として使用するTiOの場合、結晶構造で、ルチル型の割合を5%以下に制限しており、ナトリウム、カリウム及び鉄の含量を500ppm以下、そして燐の含量を0.5%以下に制限している。
米国特許番号第4,952,548号は、Ti:Mo及び/又はW:Vの比を80〜96.5:3〜15:0.5〜5の比にする窒素酸化物除去用触媒を開示している。特に、TiO表面上に重金属吸着による被毒を防止するために、TiOの結晶大きさを制限しているが、これは、Sherrerの式によって、(101)面で結晶大きさ185〜300Åの範囲を持つ。
米国特許番号第4,916,107号は、チタン酸化物;タングステン酸化物;及びバナジウム、鉄、ニオビオム及びモリブデンからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物からなる窒素酸化物除去用触媒を開示している。具体的に、担体として使用されたTiOは主にアナターゼ型であり、非表面積50±15m/g、1次粒子平均大きさ30nm、乾燥損失1.5重量%、強熱損失2重量%、そしてTiO99.5%、Al0.3重量%、SiO0.2重量%、Fe0.01重量%及びHCl0.3重量%からなるものとして記載している。
前述した特許らは、大部分担体として使用されたチタニアの物理的な性質を特定しているが、担体上に担持された活性金属酸化物の性状及びこれによる格子酸素の反応参加性が選択的触媒還元法に及ぶ影響については全然言及していない。また、前記特許らは、大部分活性金属として使用されるバナジウムが五酸化二バナジウムであることを明示している。
このように、現在常用化した排ガスの脱窒触媒はV/TiO系列触媒の活性及び二酸化硫黄に対する耐被毒性を増進させるために、タングステン、モリブデンなどが添加された形態である。しかし、260℃以下の温度では低い脱窒効率を示す問題点を持っている。また、大部分の脱窒工程では、従来のV/TiO系列の触媒を脱硫設備の後段部に設置しているが、この場合、100℃以下に低くなった排ガスの温度を高めるために、追加的な動力が必要である実情である。実際に、排ガスの温度を約100℃高めるのに全体発電所発電容量の約5〜10%の莫大な量の動力を消耗すると知られている。前記のように常用化した排煙脱窒工程は、触媒の高温活性に依存して構成された高エネルギー消費型工程である。
したがって、既存の設備に脱窒工程をさらに適用させる場合、V/TiO系触媒の触媒活性温度である350℃前後の温度領域の設置空間が狭小で相対的に温度が低い空間に前記触媒を設置しなければならないので、追加の熱源を提供しなければならない。また、高温での操業は、触媒層の熱的疲労を加速化して寿命を短縮させるだけでなく、前述したように、二酸化硫黄の酸化反応が増加するため、硫酸アンモニウムのような触媒毒が形成される問題点を招いている。
したがって、従来のV/TiO系触媒とは異なり、260℃以下の低温領域でも高い活性を維持することにより、経済性向上、触媒毒形成物質の抑制、触媒寿命の延長などのような課題を一挙に解決することができるバナジウム/チタニア系触媒が要求されて来た。
従来に常用化したV/TiO触媒の場合、300℃以上の高温領域で高活性を得ることができるが、約220℃以下の低温領域で急激に活性が減少する。この温度帯は活性化エネルギーが低くて触媒の酸化/還元反応を具現しにくい。このような理由で、窒素酸化物の転換率が低く、これによる未反応アンモニアの排出濃度も高くなる。処理されなかった排ガス内の窒素酸化物とアンモニアの有害性のほかに、アンモニアは排ガス内の硫黄化合物、水分と反応してアンモニウム塩を形成して触媒を非活性化させる。このような問題点を克服するため、低温でも酸化及び/又は還元能力に優れた触媒が開発されなければならない。
【発明の開示】
【0003】
したがって、本発明は前記のような従来の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、高温だけでなく低温でも高活性を有するバナジウム/チタニア系触媒を提供することである。この触媒は比較的低温で高活性を有する触媒を製造するのに有用なチタニア担体を含む。
本発明のほかの目的は、前記バナジウム/チタニア系触媒を使用して燃料ガス内の窒素酸化物を除去する選択的触媒還元法を提供することである。
本発明のさらにほかの目的及び利点は以降の説明に部分的に提示して前記説明から部分的に明らかになるか、あるいは本発明の実施により分かる。
本発明の目的によれば、排ガス内に含有された窒素酸化物の選択的還元除去用バナジウム/チタニア系触媒において、酸化物形態のバナジウムは触媒を基準として0.1〜10重量%でチタニアに担持され、この時、担持されたバナジウムの重量基準としてV4+とV3+の和が34atoms/cm重量%以上であり、Ti3+とTi2+の和が415atoms/cm重量%以上であり、前記単位は担持されたバナジウムの重量%で分けた触媒の単位体積(cm)当たり非化学量論的原子価と定義されるバナジウム/チタニア系触媒が提供される。
前記本発明による触媒は、前述した触媒を、金属板、金属纎維、セラミックフィルター及びハニカムよりなる群から選択される構造物上にコートして使用するか、チューブ、ダクト及び/又は壁体上にコートして得られた空気予熱機またはボイラーであることを特徴とする。
本発明のほかの目的によれば、前述した触媒の存在下で150〜450℃の温度及び1,000〜60,000hr−1の空間速度(GHSV)範囲内で還元剤としてアンモニアを使用して選択的触媒還元を実施することからなる、燃料ガス内の窒素酸化物を選択的に還元及び除去する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本発明の前記及びほかの目的、特徴及び利点は添付図面を参照する以降の詳細な説明からより明らかに理解可能であろう。
図1は実施例及び比較例によって製造された触媒を使用して温度による窒素酸化物の転換率を示すグラフである。
図2A及び図2Bは実施例5の触媒のTi 2p及びV 2pのXPS分析結果をそれぞれ示すグラフである。
図3Aは本発明の実施例1〜10及び比較例1〜3の触媒に対して、単位体積当たり4+価と3+価のバナジウム原子数をバナジウムの重量%で分けた値と200℃、220℃及び300℃での窒素酸化物除去率との関係を示すグラフであり、図3Bは本発明の実施例1〜10及び比較例1〜3の触媒に対して、単位体積当たり3+価と2+価のチタン原子数をバナジウムの重量%で分けた値と200℃、220℃及び300℃での窒素酸化物除去率との関係を示すグラフである。
図4Aは量論的に形成された完全なアナターゼ形態のチタニアのエネルギー水準と電子密度(DOS、Density of State)に対する電算模似の結果であり、図4BはTiから一つの酸素を人為的に引いてTiに還元された化合物の電算模似の結果である。
図5はバナジウムが担持されていない製造例1のチタニア担体のTi 2pのXPS分析結果を示すグラフである。
図6は製造例1〜10及び比較製造例1〜5のチタニアにおいて、バナジウムが担持されていないチタニアのO/Tiのモル比と、200℃、220℃及び300℃での窒素酸化物除去率との関係を示すグラフである。
図7は実施例1、4、5、7、9、10及び比較例1、3、4、5の触媒の再酸化特性を導出するために、各触媒に対して400℃でアンモニアを使い30分間還元させた後、180℃で窒素酸化物とアンモニアが流入される反応で酸素を一時に供給した後、反応時間による窒素酸化物の転換率の変化を示すグラフである。
図8は実施例1の触媒に対して200℃の温度条件下で二酸化硫黄及び水分が同時に存在する排ガスを流入させた場合、時間による窒素酸化物転換率及び未反応アンモニアの排出を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、選択的触媒還元方法による窒素酸化物除去において、低温で高い活性を示すバナジウム/チタニア系触媒に関するものである。したがって、本発明は、バナジウム/チタニア系触媒の表面特性から、活性に影響を及ぼす因子を導出して、触媒表面特性に影響を及ぼすチタニア担体の特性を提示する。また、本発明の触媒による選択的触媒還元方法による窒素酸化物除去及び酸化/還元特性と再酸化特性を提示して触媒の特性が反応に及ぶ影響を導出する。
本発明の詳細な説明に先立ち、アンモニアを還元剤とする選択的触媒還元反応の基本的な特徴及びそのメカニズムを説明することにより、要求される触媒の要件及び特性を説明する。選択的触媒還元反応は触媒の次のような特性に影響される。
1)チタニア上のバナジウム酸化物表面の安定度
2)バナジウム酸化物の構造
3)V=O結合の数と強度
4)表面バナジウム酸化物の酸点
5)バナジウム酸化物触媒の還元能力
前記の条件で、1)チタニア上のバナジウム酸化物表面の安定度は、担持されたバナジウム酸化物が他の形態に変わって触媒としての機能を失うか非活性化することを説明したもので、これは触媒が持つべき基本的な特性である。
2)担持されたバナジウム酸化物の構造は、バナジウム酸化物が大きくポリメリックバナデート(polymeric vanadate)、モノメリックバナデート(monomeric vanadate)、及び五酸化二バナジウム結晶(crystallite V)に区分されるが、既存の研究によれば、ポリメリックバナデートがモノメリックバナデートより活性が高くて、これらの構成分布が活性に影響を及ぼすと知られている。
3)V=Oの結合の数及び強度は、反応速度がV=Oの数に比例し、かつアンモニアの吸着点を提供するという研究結果によるものである。
4)表面バナジウム酸化物の酸点は大きく二つで、ルイス酸点とブレンステッド酸点である。各酸点でアンモニアが吸着される形態が異なり、選択的触媒還元反応がアンモニアの吸着から始まるため重要に扱われる。
5)バナジウム酸化物触媒の還元力能力は、本発明で扱う酸化及び/又は還元反応の重要な因子で、触媒の還元力が反応物の還元特性を決定することになる。触媒の還元特性とともに触媒の酸化が重要に扱われる。非化学量論的なバナジウム酸化物及び/又はチタン酸化物を含む触媒は、選択的触媒反応が進行されるうちに気相の酸素を円滑に受けて触媒内の格子酸素を生成し、格子酸素は活性化する。したがって、触媒の酸化能力は触媒の活性を維持する特性になる。脱窒効率の高い触媒の活性化した格子酸素は低温でも反応に容易に参加する。このような過程は、アンモニアによる窒素酸化物の選択的除去のメカニズムにおいて主な段階になる。
現在、選択的触媒還元法による窒素酸化物除去メカニズムとしては、気相のアンモニア及び窒素酸化物が共に触媒上に吸着されて反応するLangmuir−Hinshelwoodメカニズム;アンモニアのみが触媒上に吸着され、前記吸着されたアンモニア化合物と気相の窒素化合物が反応するEley−Ridealメカニズム;及び前記2種のメカニズムが共存することができるというDualsiteメカニズムが知られている。
特に、酸化物形態のバナジウム/チタン系触媒の存在下でアンモニアを還元剤として窒素酸化物を選択的に除去する場合には、前述したDual siteメカニズムにしたがうと知られている。前記メカニズムによる窒素酸化物の選択的還元過程を段階的な反応式で表示すれば次のようである。
〔反応式13〕
NH+V5+−OH⇔V5+−ONH
〔反応式14〕
5+−ONH+V5+=O⇔V5+−ONH−V4+−OH
〔反応式15〕
NO+V5+−ONH−V4+−OH→N+HO+V5+−OH+V4+−OH
〔反応式16〕
2V4+−OH⇔HO+V3++V5+=O
〔反応式17〕
+2V3+→2V5+=O
前記反応メカニズムによれば、触媒上で反応式15によって触媒上の格子酸素が反応に参加し、酸素が抜けた空間には反応式17によって気相の酸素が満たされる。前記のような格子酸素の反応参加及び気相酸素による補充の推力は結局活性成分であるバナジウム酸化物の電子移動の容易性に起因する酸化及び/又は還元能力である。前記反応式13〜17によれば、アンモニアを還元剤として使用して窒素酸化物を選択的に還元、除去する一連の酸化/還元反応であり、各段階別にバナジウムの酸化価が電子移動によって5+価から3+価まで変化していることが分かる。すなわち、触媒に存在する非化学量論的なバナジウムは格子酸素を容易に受けるかまたは渡すことにより、前記メカニズムでバナジウムが5+価から3+価まで変わることになる。
このような非化学量論的に構成されたバナジウム酸化物の形成は、チタニアにバナジウム前駆体を担持した後、乾燥及び焼成過程を経ることによって、バナジウムのチタンより高い酸素親和力によって、チタニアの格子酸素はバナジウム原子に提供される。チタニア担体に含有された酸素は大きく吸着酸素と格子酸素がある。吸着酸素は、バナジウム担持時に反応に寄与するところがほとんどない。格子酸素は、チタンと結合した酸素、水分の酸素及び/又は水素と結合して水酸化基を形成する酸素、及び炭素と結合した酸素がある。この中で、非化学量論的なバナジウムを形成させることができる酸素はチタンと結合した酸素である。したがって、チタンに結合した酸素とチタンの比が活性に影響を及ぼすことができる。したがって、チタニアは還元され、バナジウムはチタニアの還元によって提供された酸素をチタンとともに共有することにより、バナジウム酸化物が形成される。この時、チタニアの酸素を提供することができる程度によって、バナジウム酸化物の形成程度に違いが生ずることになる。すなわち、チタニアの還元程度によって触媒表面上に担持されたバナジウム酸化物の酸化価分布に影響を及ぼす。これら酸化価の分布によって選択的触媒還元反応による窒素酸化物の除去率に影響を及ぼすが、特に低温でバナジウム/チタニア系触媒を使用して選択的還元反応がなされる場合には、酸化価変化に起因する電子によって格子酸素の反応参加程度及び気相酸素の格子酸素への再酸化可否がさらに大きく作用する。このような触媒の還元特性及び/又は再酸化特性は触媒内で酸化及び/又は還元反応を誘発する電子の転移程度が決定する。触媒に非化学量論的なバナジウム化合物が形成されることにより、電子の転移はさらに活発になり、触媒の還元及び/又は再酸化が増大して、選択的触媒還元反応による一酸化窒素の除去が優秀になる。したがって、有效電子と電子の駆動力増大のために、触媒は多量の非化学量論的なバナジウム酸化物が形成されなければならない。
これから、本発明による触媒をより具体的に説明する。
まず、本発明による触媒の製造方法を説明すれば、バナジウム前駆体を水溶液上に溶解させる。この時、前記バナジウム前駆体の溶解度を増大させるために、有機酸を添加させて一緒に溶解することが望ましい。その後、前記水溶液に、担体として使用するチタニアを投入することで、スラリー(Slurry)を製造する。
前記スラリーを約50〜70℃に加熱しながら撹拌させて水分を蒸発させるが、この時、真空蒸発器を使用することが望ましい。その後、約80〜120℃、望ましくは約100℃前後の温度で5〜30時間乾燥させた後、350〜450℃の空気または窒素雰囲気で約1〜10時間焼成させて触媒を製造する。
本発明で使用するバナジウム前駆体は特に制限されるものではないが、アンモニウムメタバナデート(NHVO)またはバナジウムオキシトリクロライド(VOCl)などのようなバナジウム前駆体が望ましい。
また、本発明において、担体として使用されるチタニアの還元程度によって、担持されるバナジウム酸化物の種類及び表面分布の割合が変化し、これにより低温での窒素酸化物除去活性が決定される。
たとえ、担体として使用されるチタニアのその外の特性、すなわち非表面積、気孔体積、平均気孔大きさなどは本発明の特徴を達成する決定的な要素ではないにもかかわらず、触媒の基本的な特性を達成するためには、約30〜350m/gの非表面積、約0.1〜0.8cc/gの気孔体積、及び約30〜400Åの平均気孔大きさを持つことが望ましい。
そして、前述したように、本発明の特徴を達成するための決定的な要素はバナジウムに対して格子酸素を円滑に提供することができるチタニアであり、このような特性はチタニアの水素による還元反応によって導出することができる。
これと関連し、本発明において、チタニアの還元程度を評価するために、H−TPR(Temperature Programmed Reduction)方法が利用される。H−TPR方法は、平均直径150μm以下に粉砕されたチタニア50mgを、5体積%の水素を30cc/minの流速で流しながら常温から900℃まで10℃/minの速度で昇温させて、消耗する水素の濃度を検出する方式で施行される。この時、チタニアは、表面に吸着された水分を除去するために、250℃で30分間窒素雰囲気において前処理される。
こうして得たチタニア単位重量当たり消耗される水素量は1,384μmol/g以上を持たなければならない。前記消耗される水素量は本発明による多様な実験によって導出した値であり、これらいくつかの例を下記製造例及び比較製造例を通じて示した。
また、バナジウムが担持されていないチタニアの、チタンに対する酸素の原子数比O/Tiが1.47〜2.0の範囲で存在することが望ましい。これも多様な実験例によって確認し、代表的な例を図6に多様に示した。前記範囲を持つチタニアを担体として製造した触媒は低温脱窒効率が比較的高いことを確認することができる。
前記O/Tiのモル比が1.47〜2.0の範囲に属する場合に活性が増加し、特に、O/Tiモル比が2.0に増加することによって、チタニアが含む酸素が増加するので、還元反応で提供可能な酸素も増加し活性が増加する。したがって、チタニアの還元反応時に水素消耗量が増加することができ、またバナジウム前駆体が担持されて焼成される過程でチタニアの酸素を円滑に受けることにより、活性の高いバナジウム酸化物を形成させることができる。
したがって、O/Tiのモル比が約2.0付近であるとき、最大の活性を現わすので、チタニアは化学量論的なTiOに近いほど活性が高いと言える。しかし、O/Tiのモル比が2.0以上に増加する場合には、外部エネルギーによって励起された電子は過酸化した酸素に転移されることにより、チタニア及びバナジウム担持触媒内部で電子を消耗するので、実際に反応物との電子やり取りは減少する。したがって、チタニアの還元は円滑でなく、バナジウム前駆体担持後焼成過程で酸素が円滑に提供されることができない。また、チタニアの格子酸素は、チタニア製造の時、高温焼成によって増加することができる。したがって、高温での熱処理によって非表面積が減少してチタニアとバナジウムの接触機会が減少することができるので、バナジウムの酸化物形成に不利になることがある。
一方、前述した方法によって、本発明による触媒の特性を分析、決定するための手段としてXPS(X−ray photoelectron spectroscopy)を使用する。XPSは、触媒の製造段階で、活性成分の化学的状態変化の調査に特に有用に使用されることができる。本発明において、XPSを使用してバナジウムに格子酸素を提供して、V5+の外に、V+x(x≦4)及び非化学量論的なチタン原子を識別するための方法は次のようである。
まず、前述した方法によって製造された触媒を約100℃の温度で約24時間乾燥して、触媒内に含有されている水分をまったく除去した後、XPS器機(代表的には、VG Scientific社の商品名ESCALAB 201)を使用して、触媒表面に形成された酸化物の種類及び割合を求めることができる。分析の際、励起ソース(excitation source)としてアルミニウムX−線モノクロマチック(Al Kα monochlomatic;1486.6eV)を使用し、真空度を約10〜12mmHgに維持するために、表面スパッタリング(sputtering)及びエッチング(etching)を行わずに分析する。その後、触媒表面上に存在するバナジウム、チタン、酸素及び炭素元素の存在は、広範囲走査スペクトル(wide scanning spectrum)で分析して、各元素が結合した結合エネルギー(binding energy)及び強度(intensity)を確認する。前記スペクトル上に現われた各元素の特性ピーク(peak)を、その元素を含んでいる酸化物の固有結合エネルギーを基準として分離して、触媒表面に存在する酸化物の種類及びその分布の割合を分析する。ピークはLorentzian−Gaussian法によって分離した。
一般に、図5から分かるように、Ti4+は結合エネルギー、すなわち結合エネルギーがTi 2p3/2で458.8eV、Ti 2p1/2で464.5eVと現われる。また、Ti4+が還元されて形成される酸化物であるTi3+はTi 2p3/2で457.9eV、Ti 2p1/2で463.6eVと現われ、そしてTi2+はTi 2p3/2で456.3eV、Ti 2p1/2で462eVと現われる。
チタンと結合した酸素はO 1sで求められるもので、一般にチタンと結合したO−Tiと、物理吸着された水分や水酸化基に含まれた−OHと、炭素と結合したC−Oとから構成され、それぞれ529.9eV、530.2eV、531.6eVと現われる。これは、チタニアにおいて、Ti 2pとO 1sを分析することで酸素とチタンの構成モル比を求めることができるが、前述したように、このモル比が窒素酸化物除去活性と非常に高い相関関係があるものと現われた。このような相関関係は本発明の製造例によって確認し、その結果は図6から確認することができる。
また、本発明によれば、バナジウム酸化物の種類及び分布の割合は、前述したメカニズムで説明したように、触媒上で反応物と活性成分であるバナジウム間の電子移動の容易性を示す直接的な特性値である。ちなみに、XPS分析によれば、図2Bに示すように、V5+は結合エネルギーがV 2p3/2で517.2eV、V4+はV 2p3/2から516.1eV、V3+はV 2p3/2で515.1eVと現われる。
前記方法によって得られたTiy+及び/又はVx+の原子数は、XPS分析で得られた広さ(単位時間当り得られる特性光電子の数)を原子感度定数(atomic sensitivity factor)を考慮して計算して、試料の単位体積(cm)当たり該当元素の原子数を求めた。しかし、この値はチタニア担体に対するバナジウムの担持量によって変わることができる。チタニア担体に担持されるバナジウムの担持量は通常0.1〜10重量%が望ましく、より望ましくは1〜5重量%である。したがって、該当触媒のバナジウム担持量で分けることで一般化した値を導出し、その単位は担持されたバナジウムの重量%で分けた触媒の単位体積(cm)当たり非化学量論的原子価と定義されて、atoms/cm重量%になり、本発明によれば、担体に担持されたバナジウムの重量基準としてVx+(x≦4)として表示されるV4+とV3+の和が34atoms/cm重量%以上、Tiy+(y≦3)として表示されるTi3+とTi2+の和が415atoms/cm重量%以上であることが望ましい。また、本発明の実施例及び比較例を含む多様な例を図3Aに示す。
このような結果の作用を考えて見れば、Vx+(x≦4)が存在する時、低温でも選択的触媒還元反応によって窒素酸化物を除去することができることは、三酸化バナジウムを初めとしてバナジウムに対する酸素の化学結合のモル比が化学的に非化学量論的なバナジウム酸化物は5+価のVに比べて部分的に還元されることにより、自由電子を含むことができるからである。したがって、四酸化バナジウムは1モル電子を、三酸化バナジウムは2モル電子を含むので、低い活性化エネルギーによって電子の駆動が可能である。高温では活性化エネルギーが大きいため、酸化及び/又は還元反応に参加し得る電子が駆動可能であるが、低温で電子の駆動可否は触媒の特性になり、その特性が電子の容易な反応参加をはかる自由電子の存在有無に寄る。このような自由電子は、Vの還元された形態であるVなどのVOxに存在することができる。したがって、従来の触媒とは異なり、触媒の活性は、チタニア担体上に存在するバナジウム酸化物の多様な酸化価及びその酸化価の分布によって向上する。
還元能力に優秀なチタニアは、バナジウムが担持される過程で酸素親和力に優れたバナジウムにチタニアの格子酸素をより容易に伝達させることにより、チタニア支持体は還元され、バナジウムは酸化する。したがって、チタニア支持体の格子酸素を円滑に受けることにより、チタンとバナジウムは酸素ブリッジ(bridge)で連結され、このような過程で互いに異なる酸化価を持つ二つの金属間の不均衡によって金属酸化物の還元が誘発されて、Tiy+(y≦3)及び/又はVx+(x≦4)が形成される。すなわち、チタニアの格子酸素は4+価のチタンに結合した関係で、バナジウムが担持されてから還元される過程でV4+の形態を取りやすく、この過程でチタニアは還元される。形成されたV4+の一部はV5+に安定化されるために、二つのV4+が互いに結合してV5+とV3+に形成され、一部はV4+に結合して存在することになる。このように製造された触媒は非化学量論的な酸化物を形成し、このような触媒は選択的触媒還元反応による窒素酸化物の除去能力が優秀であると言える。
しかし、後述する本発明による実施例によって分かるように、本発明の範疇を脱する担体及び触媒の場合、チタニア担体の還元は円滑でなく、これによりチタニアの還元はもちろん、V4+とV3+の形成が難しい。また、図6によれば、これらチタニアのO/Ti比は1.3〜1.4で、格子酸素も不足であって還元が円滑でなくなる。
また、一部の比較例に相当するチタニア(比較製造例4及び5)の場合には、O/Tiの比が約2.15で、酸素の分率が高いが活性が低いことを確認した。これは、バナジウムが担持されて焼成される過程で、チタニアの還元力が低くてチタニアとバナジウムが界面で結合しないで気相の酸素を取ることによりバナジウム酸化物を形成させるが、このような過程で形成されたバナジウム酸化物はチタニアの還元によって形成されてチタニアと酸素ブリッジを形成したバナジウム酸化物とはその特性が違う。したがって、これらチタニア上に形成されたV4+とV3+は、アンモニウムメタバナデートが気相の酸素を取って焼成される過程で生成された単純な非化学量論的なバナジウム酸化物であることが分かる。
したがって、選択的触媒還元反応において、窒素酸化物の除去効率を持つためには、触媒上に存在する非化学量論的なバナジウムの数が一定量以上ではなければならなく、同時にチタニアの酸素とチタンの比が前述したように1.47〜2.0でなければならない。
一方、本発明において、バナジウムが担持される前後のチタニア、すなわち化学量論的なTi(TiO)と非化学量論的に構成されたTiの半導体的特性を調査するために、前記触媒に対して電算模似を行う。電算模似によって、エネルギー水準による電子密度(DOS、Density of State)を導出し、各酸化物に対する相対的な価電子帯(Valence band、以下VB)、CBのエネルギー水準、及びバンドギャップエネルギー(Bandgap energy)を導出し、一例を図4A及び図4Bに示した。フェルミ準位とCBのエネルギー水準から外部エネルギーによる電子転移について説明することにより、非化学量論的比形成による選択的触媒還元反応効率の増大を説明する。これについては、後述する実験例3でより具体的に明示する。
また、本発明においては、窒素酸化物除去用触媒の酸化還元能力を評価するために、TPSR(Temperature Programmed Surface Reaction)を実施する。触媒の還元能力を評価するために、H−TPR(Temperature Programmed Reduction)を実施し、触媒の酸化能力を評価するために、O−TPO(Temperature Programmed Oxidation)を実施する。また、触媒の再酸化速度を評価するために、酸素−再酸化実験を実施する。これについても後述する実験例で詳細に説明する。
実験例に先立ち簡単に説明すれば、バナジウムが担持された触媒のH−TPRは、400℃で30分間30cc/minの空気雰囲気で前処理された50mgの触媒を300℃で90分以上30cc/minの窒素を流して、吸着された酸素を除去し、これを常温に下降させて5体積%の水素を30cc/minの流速で流し、10℃/minの昇温速度で900℃まで昇温しながら、排出される水素濃度を質量分析計またはガスクロマトグラフィの熱伝導度検出器で分析することで、反応温度による水素消耗量を計算して得、反応温度による水素消耗量から水素還元が開始される温度と水素還元が最大になる温度を導出する。本発明によって製造された触媒は408℃以下で水素還元が始まり、506℃以下で最大水素還元されなければならない。
また、O−TPOは、触媒0.3gが充填された反応器に0.5体積%のアンモニアを50cc/minの流量で流し、10℃/minの昇温速度で400℃まで昇温させた後、400℃で30分間維持して還元させた。常温に温度を下降させた後、還元された触媒に対して1体積%の酸素を供給しながら10℃/minの昇温速度で600℃まで昇温させ、消耗される酸素の濃度を質量分析計でモニタリングする。反応温度による酸素消耗量から、酸化反応が最大になる温度を導出する。本発明によって製造された触媒は405℃以下で最大の酸素消耗量を持つ。
酸素−再酸化実験は、触媒を5000ppmのアンモニアを流しながら10℃/minの昇温速度で400℃まで昇温した後、400℃で30分間維持して還元して前処理し、還元された触媒に対し、初期に酸素なしに窒素酸化物800ppmとNH/NOxのモル比が1となるようにアンモニアを注入させ、選択的触媒還元反応を180℃で進行する途中200ppmの酸素を投入しながら一酸化窒素の濃度をモニタリングする。一酸化窒素の濃度から時間による窒素酸化物の転換率を導出し、この結果から、転換率の増加程度によって再酸化能力を評価する。本発明によって製造された触媒は、再酸化によって、一酸化窒素の転換率が最大9%以上、そして60分後に8%以上増加しなければならない。
このように、前述した特性を持つ本発明による触媒は窒素酸化物の選択的還元除去用に使用でき、また硫黄酸化物を含む排ガス内の窒素酸化物の除去用に適する。
窒素酸化物を除去する工程の場合、前記触媒の存在下で約150〜450℃の温度、望ましくは180〜350℃、及び約1000〜60000hr−1、望ましくは3000〜30000hr−1の空間速度範囲内で実行されるが、これは、従来のV/TiO系列触媒の活性温度帯域と比べると、低温での活性が強化した結果である。
この時、窒素酸化物の選択的還元除去のためには、NH/NOxのモル比が0.6〜1.2の範囲となるように、還元剤であるアンモニアを供給することが要求されるが、もし0.6未満の場合には、還元剤の不足によって窒素酸化物除去効率が低下する問題があり、1.2を超える場合には、未反応アンモニアが排出される問題がある。特に、二酸化硫黄のような硫黄酸化物が含まれている排ガス内の窒素酸化物を除去する場合には、前記条件のうち、未反応アンモニアの排出を最大限抑制することにより、硫酸アンモニウムの生成による触媒被毒現象を効果的に防止することができる。本発明による触媒を利用して窒素酸化物を除去する時、排ガス内に0〜500ppmの二酸化硫黄を含むことができる。
排ガス内に含有された二酸化硫黄は触媒表面で三酸化硫黄に酸化され、この三酸化硫黄は水分と未反応アンモニアと反応してアンモニウムビサルフェートを形成させる。形成された塩は触媒表面を覆うことにより、触媒は非活性化する。非活性化を抑制するためには、二酸化硫黄の酸化を抑制するかまたは未反応アンモニアの排出を抑制するかまたは生成された塩を低温で分解しなければならない。触媒の非活性化に対する実験として、窒素酸化物150ppm、酸素15体積%、水分8体積%、二酸化硫黄150ppmを流入させ、空間速度60,000hr−1、NH/NOxの比0.9の条件で80日間長期活性実験を実施して触媒の非活性化を評価することができる。
また、本発明による触媒は、金属板、金属纎維(fiber)、セラミックフィルター、またはハニカムのような構造物にコートして使用するか、または空気予熱機、またはボイラーのような装置のチューブ群、ダクト及び/又は壁体上にコートして使用することができる。また、少量のバインダーを添加した後、粒子型またはモノリス(monolith)型に押出加工して使用することができる。この時、触媒を望ましくは約1〜10μmの粒子大きさに均一に粉碎してコートまたは押出すが、このようなコーティング及び押出過程は当業界で広く知られている。しかし、1μm未満の場合には、微粉砕段階によって経済性面で望ましくなく、10μmを超える場合には、コーティング物または押出物の均一性及び接着力が低下する問題があるので、これを考慮して製造する。
本発明は下記の実施例によってより明確に理解することができ、下記の実施例の本発明の例示目的に過ぎないもので、発明の領域を制限しようとするものではない。
製造例1〜10、及び比較製造例1〜5
1)チタンと結合した酸素のモル数とチタンのモル数の比(O/Ti)測定
担体であるチタニアを準備し、各実施例に適用するために、下記表1のように製造例1〜10、及び比較製造例1〜5で比較して示した。チタンと結合した酸素のモル数とチタンのモル数の比(O/Ti)を測定するために、チタニアをXPS(X−ray photoelectron spectroscopy、VG Scientific社の商品名ESCALAB 201)で分析する。
まず、下記表1の製造例1、チタニアのTi 2pを図5に示した。図5に示すように、バナジウムが担持される前のチタニアは、活性にかかわらず4+価のチタンのみが存在し、このような特性は他のすべてのチタニアに対しても同一であった。したがって、このような特性が反応活性を左右しないとと言える。
また、チタニアのTi 2pとともにO 1sを分析した。酸素には、チタンと結合した酸素(O−Ti)と、物理的に吸着された水または水酸化基に含まれた酸素(−OH)と、炭素と結合した酸素(C−O)とが存在する。これらはそれぞれ529.9eV、530.2eV及び531.6eV付近の結合エネルギーを持つ。
同じ方法で、製造例1〜10及び比較製造例1〜5のチタニアのO 1sもピーク分離した。O 1sとして現われる酸素のうち、チタンと結合した酸素のモル数と4+価チタンのモル数の比(O/Ti)を計算して見た結果、チタニアはTiO2としてだけ存在するものでなく、そのモル比が2以上であることもでき、その以下でもあることができる。したがって、O/Tiモル比が反応性に及ぶ影響を調査するために、200℃〜300℃での窒素酸化物除去率O/Tiモル比との関係を図6に示した。図6から分かるように、低温である200℃では、O/Tiモル比が一定水準、すなわち1.47〜2.0であるとき、低温脱窒効率が比較的高く、このようなチタニアを担体とする触媒が選択的触媒還元反応の担体として適当であることが分かる。
【表1】


2)チタニアの還元程度評価
バナジウム/チタニア系触媒製造用チタニア支持体の還元程度を評価するため、下記表1の製造例1、5及び7、比較製造例1、3〜4のチタニアを準備し、H−TPR(Temperature Programmed Reduction)を実施してチタニアを分析した。
−TPR方法:水素による還元能力を評価するために下記文献を参照して実施した:
参考文献:
1)D.A.Bulushev外、Journal of Catalysis 205(2002)115−122
2)M.A.Reiche外、Catalysis Today 56(2000)347−355
3)F.Arena外、Applied Catalysis A:General 176(1999)189−199
:50mgのチタニアに対し、30cc/minの流速で5重量%の水素を流入させ、常温から900℃まで10℃/分の速度で昇温する時の水素濃度をガスクロマトグラフィの熱伝導度検出計で連続してモニタリングすることで、チタニアが水素によって還元される過程で消耗される水素の量(μmol/g)を測定した結果、製造例1は2012μmol/g、製造例5は2130μmol/g、製造例7は1384μmol/gであり、比較製造例1は682μmol/g、比較製造例3は684μmol/g、比較製造例4は706μmol/g、及び比較製造例5は1050μmol/gであった。この時、前記チタニア試料は、実験の実施に先立ち、吸着された水分を除去するために、窒素を流して250℃から30分間前処理した。
実施例1〜10及び比較例1〜5
0.91gのアンモニウムメタバナデート(NHVO;Aldrich Chemical Co.の商品名20555−9)を30mLの蒸溜水に溶解させた。溶解度を高め、バナジウム酸化価調節のために、1.4gのシュウ酸を前記水溶液に添加して溶解させた。前記水溶液に、前記製造例1〜10及び比較製造例1〜5によるチタニア支持体20gを投入してスラリー形態に製造した後、前記スラリーを、真空蒸発器によって70℃及び撹拌の条件下で加熱させ、100℃の温度で24時間乾燥させた。その後、400℃の温度及び空気雰囲気で6時間焼成させ、元素分析器(Perkin Elmer社の商品名Optima 3000XL)で分析した結果、使用されたチタニアの重量基準でバナジウム2.0重量%が担持されている触媒が製造されたことを確認することができた。また、Micrometritics Co.のASAP 2010Cを使用し、BET(Brunauer−Emmett−Teller)式によって測定した非表面積(m/g)、MAC Science Co.のMX18X HF−SRAでXRDを分析して得られた半値幅(B)、回折角(θ)をScherrer's公式に代入して計算した平均粒子大きさ(mm)及びチタニア結晶の混合比を計算するために、アナターゼとルチルの主特性ピークである2θ=25゜と27.5゜を式W=1/(1+1.265(I/I))(ここで、Wはアナターゼの割合、Iは(110)面のルチルの特性ピーク面積、Iは(101)面のアナターゼの特性ピーク面積である)によって計算して得たアナターゼ:ルチルの割合を下記表2に示した。
また、こうして得られたTiOの支持体にバナジウムが担持された触媒を下記の実験はいよって分析した。
実験例1−各触媒に対する温度による窒素酸化物の転換率分析
下記表2による各触媒を使用し、温度による窒素酸化物の転換率を求めて添付する図1に示した。この時、反応器の温度は150〜400℃の範囲で変化させ、供給された窒素酸化物の濃度は800ppm、NH/NOxのモル比は1.0に調節した。また、酸素濃度は3体積%に、水分の濃度は6体積%に維持し、空間速度は60,000hr−1に維持した。反応前、触媒に吸着されている水分及び酸化価の影響を排除するために、400℃の温度及び空気雰囲気で1時間維持した後、反応温度まで冷却させた。
図1を参照すれば、各触媒に対する窒素酸化物の転換率は、比較例4及び比較例5による触媒を除き、400℃の高温で高水準を維持したが、250℃以下の温度では、本発明による実施例1〜10による触媒のみが高活性を維持していることが分かる。
このような傾向は150〜250℃の低温でよりはっきり現れた。低温領域で実施例1〜実施例10による10個の触媒はどの程度の活性を持っているが、比較例1〜比較例5による触媒の場合には活性が高くないかまたは非常に低かった。
したがって、同じ方法で製造され同一量のバナジウムが担持されたとしても、製造された触媒の物性によって窒素酸化物の選択的触媒還元方法による除去率が互いに異なることを確認することができる。
実験例2−触媒の表面上に形成されたチタン及びバナジウム酸化物の種類及び分布分析:
触媒の表面上に形成されたチタン及びバナジウム酸化物の種類及び分布を測定するため、XPS(VG Scientific社の商品名ESCALAB 201)を使った。
例えば、実施例5の触媒に対し、バナジウムが担持された後、触媒のTi 2p及びV 2pのXPS分析結果をそれぞれ図2A及び図2Bに示した。添付する図2Aを参照すれば、バナジウムがチタニアに担持された後、チタニアのチタンは多様な酸化価を持つ。すなわち、Ti4+の外にTi3+及び/又はTi2+などの非化学量論的なチタン酸化物が存在し、これらはTiOに対して還元された形態である。
また、図2Bを参照すれば、バナジウムが担持された触媒において、バナジウム酸化物もV4+及び/又はV3+など非化学量論的なバナジウム酸化物が触媒表面に存在することが分かる。
したがって、チタン及びバナジウム酸化物に対し、それぞれ非化学量論的に形成された酸化物の単位体積当たり原子数(atom/cm)を下記表2に示した。
従来の研究及び発明では、バナジウム担持触媒の場合、バナジウム酸化物はVであってV5+として存在し、この時、チタニアはTiOの化学量論的に安定した形態で存在すると知られていたが、下記表2、図2A及び図2Bから分かるように、バナジウム酸化物で多様な酸化価が発見され、これにより非化学量論的なバナジウムであるVx+(x≦4)が大部分の触媒で発見された。
また、図3A及び図3Bには、実施例1〜10及び比較例1〜3の触媒に対し、単位体積当たり非化学量論的なチタン原子及びバナジウム原子の数をバナジウム担持百分率で表す値と窒素酸化物除去率を比較するグラフを示した。図3Aから分かるように、200℃と220℃での窒素酸化物除去率と非化学量論的なバナジウムの原子数と高い相関関係を持ち、非化学量論的なバナジウムの原子数が多いほど窒素酸化物を除去効率が増加することが分かる。したがって、低温で高い窒素酸化物の除去率を持つ触媒は非化学量論的なバナジウムの原子数が高くなければならない特性を持つ。しかし、300℃での窒素酸化物除去率は触媒の非化学量論的なバナジウムの数とは大きな関連がないので、非化学量論的なバナジウムの数が低温脱窒に影響を及ぼすと言える。また、図3Bからも、非化学量論的なチタンの数も300℃での窒素酸化物除去率とは大きな関係がないが、200℃及び220℃の低温での窒素酸化物除去率と非常に大きな相関関係を持つことが分かる。これは、バナジウム前駆体がチタニア担体に担持されて焼成される過程でチタニアの酸素を取ることによりチタニアが還元されるからである。したがって、非化学量論的なバナジウムとチタンは関係があり、これらの数が低温での窒素酸化物除去に影響を与えることを確認することができる。
このような結果を総合して見る時、望ましい非化学量論的な原子数は、担持されたバナジウムの重量%を基準として、V4+及びV3+の和であるVx+(x≦4)が34atoms/cm以上、Ti3+及びTi2+の和であるTiy+(y≦3)が415atoms/cm以上である。
【表2】


前記製造例及び実験例から分かるように、本発明による、還元による水素消耗が高い触媒の場合が比較的高い活性を持つことを確認することができる。したがって、低温で選択的触媒還元反応が進行されるためには、1,384μmol/g以上の水素還元特性を持たなければならない。
また、活性が高くない触媒の支持体は水素還元の程度が低い。これは、チタニア支持体の還元能力が触媒の活性に影響を及ぼし、前記支持体の還元特性はバナジウムがチタニア支持体に担持される過程に影響を及ぼして、触媒の非化学量論的比の形成に重要な要素になることができると理解することができた。
すなわち、比較例1〜3の触媒は、チタニア担体の還元が円滑でないため、V4+及びV3+の形成が難しく、O/Tiのモル比も1.3〜1.4で格子酸素も不足である。また、前述したように、比較製造例4及び5の場合、O/Tiのモル比が約2.15で酸素の分率が高いにもかかわらず活性が低いことは、バナジウムが担持されて焼成される過程で、チタニアの還元力が低くてチタニアとバナジウムの界面で結合が起こらなくて気相の酸素を取ることにより、バナジウム酸化物を形成させ、このような過程で形成されたバナジウム酸化物はチタニアの還元によって形成されてチタニアと酸素ブリッジを形成したバナジウム酸化物とはその特性が違うからであると思われる。したがって、比較製造例4及び5の支持体上に形成されたV4+とV3+はアンモニウムメタバナデートが気相の酸素を取って焼成される過程で生成された単純な非化学量論的なバナジウム酸化物である。したがって、選択的触媒還元反応において、窒素酸化物の除去効率を持つためには、触媒上に存在する非化学量論的なバナジウムの数が一定量以上でなければならなく、同時にチタニアの酸素とチタンの比が前述した1.47〜2.0の範囲でなければならない。
実験例3
本発明による非化学量論的に構成された触媒の活性が高いことをフェルミ準位の変化で説明するため、触媒内でチタニア酸化物の半導体的なエネルギー準位の変化を確認しようと電算模似した。この時に適用されるチタニアはまったく酸化したアナターゼ形態のチタニアで、化合物の量論的構成はTiOである。本電算模似でチタニアの還元に対する影響を導出するために、チタニアから酸素原子を除去することで還元を具現した。非化学量論的比がTiOであることを考慮する時、まったく酸化したTiOは、これと化学量論的比が同一なTiの電気化学的現象をモニタリングし、還元されたチタニアを具現するために、前記Tiから酸素原子一つを除去したTiに対する電気化学的変化をモニタリングすることにより具現する。したがって、バナジウムが担持されて還元されたチタニア酸化物は本発明で電算模似する化合物とは違いがあるが、これらの電気化学的特性を現わすために誇張して設定され、チタニアの還元による電気化学的差の傾向を告知するためである。
図4Aは量論的に形成された完全なアナターゼ形態のチタニア(本実施例のチタニアは、電算模似のために、TiOの量論的化合物をTiにする)のエネルギー水準と電子密度(DOS、Density of State)に対する電算模似の結果を示す。電子密度を電算模似した結果において、x軸のEFはフェルミ準位を示す。EFを中心として両側にシグナルが形成され、その間に谷が形成される形態である。この二つのシグナルのなかで、左側がVBに対するシグナルであり、右側がCBに対するシグナルである。したがって、VB側シグナルの右側端部のエネルギーがVBの端であり、CB側シグナルの左側端部のエネルギーがCBの端であり、これら両端間の間隔がバンドギャップエネルギーになる。したがって、チタニアに対し、フェルミ準位は各バンドの端間に存在し、特にVBに近く位置する特徴がある。
図4BはTiから酸素一つを人為的に引いてTiに還元された化合物の電算模似の結果を示す。これはチタニア支持体にバナジウム化合物が形成される過程でチタニアの格子酸素がバナジウムと共有結合する過程を模似したもので、チタニアの格子酸素がバナジウムで共有されてチタニアが還元されることにより現われるエネルギー準位の変化を示すためである。図4Bにおいて、フェルミ準位がCBより高いエネルギーレベルに位置し、フェルミ準位で電子密度が急激に増加する。したがって、フェルミ準位とCB間では、電子の移動が金属と同一程度に円滑に進行することができる電気的特性を持つことになる。よって、還元されたチタン酸化物Tiはまったく酸化したTiより低いエネルギーによってフェルミ準位の電子をCBに転移させることができ、これにより、これを選択的触媒還元反応に適用した時、非化学量論的比を形成する還元されたチタニアは化学量論的比を持つまったく酸化したチタニアに比べて、低温で活性を持つ触媒の支持体になることができる。バナジウム原子の担持によって非化学量論的比が形成されたチタニアはバンドギャップエネルギー及びフェルミ準位の変化を誘発し、これによって電子の転移現象が有利になる。
実験例4
前記実施例1、4、5、7及び比較例1、3〜5による触媒に対してH−TPRを実施した。
−TPRは、50mgの触媒に対し、30cc/minの流速で5体積%の水素を流入させながら常温から900℃まで昇温させ、水素濃度を質量分析計で連続的にモニタリングしながら実施した。本実験を実施する前、試料に吸着された水分を除去し、触媒の活性化のために空気を流して400℃で30分間酸化させ、さらに300℃で窒素を流しながら90分間前処理して吸着酸素を除去した。
この結果で、水素還元開始温度と最大水素還元温度は還元に対する間接的な評価因子になるので、これを下記表3にまとめた。下記表3に示すように、大部分の触媒の最大水素還元温度は500℃前後で、互いに類似する。しかし、水素還元が開始する温度は活性が低い触媒であるほど高温であることを確認することができる。したがって、活性の高い触媒は低温での還元特性が優秀であると言え、このような特性により、低温で格子酸素を容易に反応に参加させることができる。したがって、触媒の水素還元開始温度は408℃以下であり、最大水素還元温度が506℃以下の触媒が低温でも触媒活性を維持することができることが分かる。
【表3】


実験例5
前記実施例1、2、5、7、10及び比較例1、3〜5による触媒に対し、触媒再酸化に必要な温度を把握するため、O−TPO(Temperature Programmed Oxidation)実験を実施した。
製造された触媒0.3gが充填された反応器に0.5体積%のアンモニアを50cc/minの流量で流し、昇温速度10℃/minの速度で400℃まで昇温させた後、400℃で30分間維持させて還元させた。常温に温度を下降させた後、還元された前記触媒に対して1%の酸素を供給し、昇温速度10℃/minの速度で600℃まで昇温し、この時に消耗される酸素の濃度を質量分析計でモニタリングして、下記表4に示した。下記表4から分かるように、活性の高い触媒であるほど最大酸素消耗温度は低くなる。したがって、触媒の最大酸素消耗温度が約405℃以下の触媒が低温でも触媒活性を維持することができることが分かる。
【表4】

実験例6
前記実施例1、4、5、7、9、10及び比較例1、3〜5による触媒に対し、触媒再酸化程度を把握するため、酸素−再酸化実験を実施した。
酸素−再酸化実験は、製造された触媒を5000ppmのアンモニアを流しながら10℃/minの昇温速度で400℃まで昇温した後、400℃で30分間維持して還元させた。初期に酸素なしに窒素酸化物800ppmとNH/NOxのモル比が1となるようにアンモニアを注入させ、選択的触媒還元反応を200℃で進行する途中、200ppmの酸素を投入しながら一酸化窒素の濃度をモニタリングした。この時、二酸化窒素は検出されないので、排出される窒素酸化物は全て一酸化窒素である。したがって、これを基準として窒素酸化物の転換率を計算し、これを図7に示した。添付した図7において、酸素注入時点は0分である。
図7において、活性に優れた実施例の触媒は、酸素投入後に急激に一酸化窒素転換率が増加する。しかし、その他の比較例1、3〜5触媒の一酸化窒素の転換率増加はあまり大きくなく、特に比較例1は比較例3〜5より活性が高いにもかかわらず、大きな差がないことは、供給される酸素の濃度が非常に低いことから説明される。これから、還元過程で抽出された触媒の格子酸素がさらに再酸化して活性を回復することが確認され、特に活性の高い触媒の場合、再酸化が非常に円滑に進行されると言える。
したがって、前記実験例4のH−TPRとともに考慮する時、触媒の還元及び再酸化の容易な触媒が低温で選択的触媒還元法によって窒素酸化物を除去すると言える。
図7の結果から、還元の程度が高いチタニアを担体とする触媒が気相の酸素による再酸化が有利であると言え、本実験例のような条件で、窒素酸化物転換率の増加幅が最大9%以上、60分後に8%以上増加した触媒が低温でも活性を持つことができる。
実験例7
実施例1による触媒を使用し、200℃で水分8体積%及び二酸化硫黄150ppmと同時に注入する反応条件で、時間による窒素酸化物の転換率及び未反応アンモニア排出を図8に示した。この時、供給された窒素酸化物の濃度は150ppm、NH/NOxのモル比は0.9に調節した。また、酸素濃度は15体積%に維持し、空間速度は60,000hr−1に維持した。反応前、触媒に吸着されている水分及び酸化価の影響を排除するために、400℃の温度及び空気雰囲気で1時間維持した後、反応温度まで冷却させた。
図8に示すように、水分による触媒の非活性化程度はなく、前記条件で初期に僅かな未反応アンモニアが排出されるが、以後には全然未反応アンモニアの排出を確認することができなかった。したがって、二酸化硫黄が投入されてもアンモニアが選択的に窒素酸化物と全部反応するので、触媒の非活性化を誘発するアンモニウムビサルフェートが形成されることができなく、これにより、三酸化硫黄、水分及びアンモニアの反応によって触媒毒である硫酸アンモニウムが生成されなかったので、反応活性の減少はほとんどなかった。
【産業上の利用可能性】
【0006】
以上説明したように、本発明は、V5+の外にV4+及び/又はV3+が形成され、Ti4+のほかにTi3+及び/又はTi2+が形成される、低温で高い活性を現わすバナジウム/チタニア系触媒を提供する。この際、非化学量論的なバナジウム原子の存在によって、触媒が電子を受けることができ、活発に転移される電子が格子酸素によって還元を、そして気相の酸素によって酸化を促進させることができる。すなわち、触媒が気相の酸素を容易に受けて活性化した格子酸素を生成し、よって活性化した格子酸素は触媒の還元に酸化して窒素酸化物を分解させる。この際、還元された触媒は気相の酸素を受けて再酸化させる。したがって、本発明による触媒は、窒素酸化物を除去する選択的触媒還元方法によって優れた酸化及び/又は還元能力と高い活性を持つ。
また、本発明は、比較的低温で窒素酸化物が除去されるため、窒素酸化物の除去効率が向上し、反応されなかったアンモニアが還元されるため、アンモニウムビサルフェート及び/又は硝酸アンモニウムなどの塩の形成が抑制され、この塩が比較的低温で分解されるため、触媒の寿命が増大し装置の腐食が減少する。
以上本発明を例示の目的で説明したが、ここで使用した用語は制限よりは説明のためのものであることを理解しなければならない。前記教示から本発明の多くの修正及び変形が可能である。したがって、本発明は、添付する特許請求の範囲内で、前述したもの以外に実施可能であることが理解しなければならない。

【図1】







【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的触媒還元法によって燃料ガスから窒素酸化物を選択的に除去するためのバナジウム/チタニア系触媒において、前記バナジウムは酸化物形態であって、触媒を基準として0.1〜10重量%の量でチタニアに担持され、
ここで、V4+とV3+の和は34atoms/cm重量%以上、Ti3+とTi2+の和は415atoms/cm重量%以上であり、前記和の単位は担持されたバナジウムの重量%で分けた触媒の単位体積(cm)当たり非化学量論的原子価に定義されることを特徴とする、バナジウム/チタニア系触媒。
【請求項2】
前記チタニアは、チタンに対する酸素のモル比(O/Ti)が1.47〜2.0であることを特徴とする、請求項1に記載のバナジウム/チタニア系触媒。
【請求項3】
前記チタニア担体は、H−TPR実験で測定される、チタニア単位重量当たり消耗される水素量が1,384μmol/g以上であり、前記H−TPR実験は、前記チタニア50mgを10℃/minの昇温速度で常温から900℃まで加熱しながら、前記チタニアに5体積%の水素を30cc/minの流量で流入させる条件で実施されることを特徴とする、請求項1に記載のバナジウム/チタニア系触媒。
【請求項4】
前記触媒は、H−TPR実験による水素還元を408℃以下で開始して506℃で最大に達成するが、前記H−TPR実験は、前記触媒を常温から900℃まで加熱しながら水素5体積%を30cc/minの流量で前記触媒に流入させる条件で実施する、請求項1に記載のバナジウム/チタニア系触媒。
【請求項5】
前記触媒は、O−TPO実験による最大酸素消耗温度が405℃であるが、前記O−TOP実験は、触媒を10℃/minの昇温速度で常温から400℃まで加熱しながらアンモニア0.5体積%を50cc/minの流量で前記触媒に流入させ、400℃で30分間維持させて還元させ、常温まで冷却させた後、10℃/minの昇温速度で600℃まで加熱させながら酸素1体積%を前記触媒に流入させる条件で実施することを特徴とする、請求項1に記載のバナジウム/チタニア系触媒。
【請求項6】
前記触媒は、窒素酸化物の転換率が触媒の再酸化実験によって最大9%以上、60分後に8%以上増加するが、前記再酸化実験は、触媒を10℃/minの昇温速度で400℃まで加熱させながらアンモニア5000ppmを前記触媒に流入させ、400℃で30分間維持して還元させる条件で実施し、選択的触媒還元法を、酸素なしに窒素酸化物(NOx)800ppmとアンモニアをNH/NOxのモル比が1となるように前記触媒に注入させながら180℃で加熱し、所定時間後、酸素200ppmを窒素酸化物及びアンモニアとともに触媒にさらに注入させることを特徴とする、請求項1に記載のバナジウム/チタニア系触媒。
【請求項7】
前記バナジウムは、アンモニウムメタバナデート又はバナジウムクロライドのバナジウム前駆体から誘導されることを特徴とする、請求項1に記載のバナジウム/チタニア系触媒。
【請求項8】
前記触媒は、押出加工された粒子型またはモノリス(monolith)型であることを特徴とする、請求項1に記載のバナジウム/チタニア系触媒。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のバナジウム/チタニア系触媒を、金属板、金属纎維、セラミックフィルター及びハニカムよりなる群から選択される構造物上にコートさせたことを特徴とする、選択的触媒還元法によって燃料ガスから窒素酸化物を選択的に除去するための触媒体。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のバナジウム/チタニア系触媒を、チューブ、ダクト及び/又は壁体上にコートしたことを特徴とする、空気予熱機。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のバナジウム/チタニア系触媒を、チューブ、ダクト及び/又は壁体上にコートしたことを特徴とする、ボイラー。
【請求項12】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のバナジウム/チタニア系触媒の存在下で、150〜450℃の温度及び1,000〜60,000hr−1の空間速度(GHSV)で還元剤としてアンモニアを使用して選択的触媒還元法を実施することからなることを特徴とする、燃料ガス内の窒素酸化物を選択的に還元及び除去する方法。
【請求項13】
前記アンモニアは、前記燃料ガスの窒素酸化物に0.6〜1.2のモル比で供給されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記燃料ガスは、500ppm以下の二酸化硫黄を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2007−520327(P2007−520327A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509209(P2005−509209)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002665
【国際公開番号】WO2005/030389
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506102765)韓国電力技術株式会社 (2)
【氏名又は名称原語表記】KOREA POWER ENGINEERING COMPANY,INC.
【住所又は居所原語表記】360−9 Mabuk−ri,Guseong−eup,449−713 Yongin−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】