低熱侵入電流リード装置
【課題】通電電流が大きい時には電気抵抗を低くし、無通電もしくは通電電流が小さい時には熱侵入を小さく抑えることができる低熱侵入電流リード装置を提供する。
【解決手段】低熱侵入電流リード装置において、正の線膨張係数を持つターン形状の電流リード導体1と、熱伝導接続部3を介して前記電流リード導体1と軸方向に全体が接触せず一部のみ接続させるように配置される、負の線膨張係数を持つ材料2とを具備することを特徴とする。
【解決手段】低熱侵入電流リード装置において、正の線膨張係数を持つターン形状の電流リード導体1と、熱伝導接続部3を介して前記電流リード導体1と軸方向に全体が接触せず一部のみ接続させるように配置される、負の線膨張係数を持つ材料2とを具備することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超電導ケーブルを鉄道のき電線に応用する場合や超電導応用機器などに用いられる低熱侵入電流リード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高温超電導ケーブルを鉄道のき電線に応用する場合などでは、液体窒素で冷却された超電導ケーブルとトロリー線を接続するために、電流リードにより低温領域と室温領域を接続しなければならない。また、従来の電力用超電導ケーブルでは、き電線からの電力の取り出し口は少なくて済むが、き電線に超電導ケーブルを応用した場合には、数百mおきにき電線とトロリー線を接続する必要があるため、極低温に冷やされた超電導ケーブルと室温のトロリー線とを頻繁に結ぶことになる。
【0003】
こうした超電導ケーブルをき電線に応用する場合の電流リードに要求される性能は、大電流を通電可能で、熱侵入が小さいことである。
【0004】
また、き電線に超電導ケーブルを応用した場合、それぞれの電流リードに電流が流れる時間は、そのセクションに電車が在線する時のみで、電力用ケーブルの場合と比べると断続的であり、流れる電流量の変動が大きいと言った特徴がある。したがって、電流が流れているときは抵抗が小さく大電流を流すことができ、電流が小さいときや電流が流れていない時には熱侵入を小さく抑えることができるような電流リードが望まれる。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電流リードに大きな電流を流そうとする場合には導体の断面積を大きくし、導体の長さも短くして電気抵抗をできるだけ抑えねばならないが、一方で、熱侵入を小さくするためには、導体の断面積を小さくし導体を長くしなければならない。つまり、相反する要求を満たさなければならないといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みて、通電電流が大きい時には電気抵抗を低くし、無通電もしくは通電電流が小さい時には熱侵入を小さく抑えることができる低熱侵入電流リード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕低熱侵入電流リード装置において、正の線膨張係数を持つターン形状の電流リード導体と、熱伝導接続部を介して前記電流リード導体と軸方向に全体が接触せず一部のみ接続させるように配置される、負の線膨張係数を持つ材料とを具備することを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記電流リード導体がスパイラル状の電流リード導体であることを特徴とする。
【0009】
〔3〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周に配置することを特徴とする。
【0010】
〔4〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の内周に配置することを特徴とする。
【0011】
〔5〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周及び内周に配置することを特徴とする。
【0012】
〔6〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周の一部に配置することを特徴とする。
【0013】
〔7〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の内周の一部に配置することを特徴とする。
【0014】
〔8〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周及び内周の一部に配置することを特徴とする。
【0015】
〔9〕上記〔1〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記電流リード導体がミアンダ状の電流リード導体であることを特徴とする。
【0016】
〔10〕上記〔9〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の片面に配置することを特徴とする。
【0017】
〔11〕上記〔9〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の両面に配置することを特徴とする。
【0018】
〔12〕上記〔9〕〜〔11〕の何れか一項記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の外周に配置することを特徴とする。
【0019】
〔13〕上記〔12〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の外周の一部に配置することを特徴とする。
【0020】
〔14〕上記〔1〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記熱伝導接続部が、前記材料との接触面積が小さくなるような断面形状を有することを特徴とする。
【0021】
〔15〕上記〔1〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記熱伝導接続部は、前記材料と電流リード導体の中央部のみで固定されることより構成され、該中央部以外はフリーにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、無通電時もしくは通電電流が小さい時には、正の線膨張係数を持つターン(スパイラル又はミアンダ)形状の電流リード導体の発熱がないかもしくは小さいため、温度は低いので電流リード導体は縮み、負の線膨張係数を持つ材料は膨張して、電流リード導体のターン間には隙間ができて一本の長い導体として作用し、電流リード導体の断面積も小さいので、伝熱距離が長く細い導体として、熱侵入を抑えることができる。
【0023】
一方、通電電流が大きい時には、電流リード導体に電流が流れ、その電流値が大きくなると、電流リード導体の断面が小さく抵抗値が大きいため、電流リード導体は発熱し温度が上昇する。その温度上昇に伴い、正の線膨張係数を持つ電流リード導体は膨張し、負の線膨張係数を持つ材料は収縮するため電流リード導体ターン間の隙間がなくなりお互いに接触するため、電流リード導体は円筒形状または矩形の断面積が大きく長さが短い電流リード導体として、電気的抵抗が小さくなり、電気抵抗による発熱が抑えられる。つまり、熱侵入量は増加するが大電流を通電可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の低熱侵入電流リード装置は、正の線膨張係数を持つ電流リード導体と、熱伝導接続部を介して前記電流リード導体と軸方向に全体が軸方向に全体が接触せず一部のみ接続させるように配置される、負の線膨張係数を持つ材料とを具備する。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の第1実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図1(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図、図1(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図である。図2は本発明の第1実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図2(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図、図2(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図である。
【0027】
これらの図において、1はスパイラル状に形成されている銅などの正の線膨張係数を持つ電流リード導体(例えば、ターン形状の銅導体)、2は電流リード導体1のスパイラルの外周に、熱伝導接続部3を介して電流リード導体1に全体が接触固定しないように、電流通過方向に配置される負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)、3は電流リード導体1に設けられ電流リード導体1と負の線膨張係数を持つ材料2を接続する熱伝導接続部である。なお、この熱伝導接続部3は、前記材料2との接触面積が小さくなるような断面形状(熱伝導接続部3の先端が小さい形状、ただし、熱伝達は良い方がよい)を有することが望ましい。例えば、その接続形状を突起状形状などにして、負の線膨張係数を持つ材料2との接続面積が小さくなるような形状であることが望ましい。つまり、電流リード導体1の伸び縮みと負の線膨張係数を持つ材料2の伸び縮みがお互いにできるだけ拘束されないようにすることが重要である。なお、電流リード導体1と熱伝導接続部3は一体としてもよい。
【0028】
また、電流リード導体1は、電流が流れて各ターン間がくっついた際に、大電流を通電可能なように、各ターン間の接触面積を大きくすることが望ましい。
【0029】
このように構成したので、図1(a)や図2(a)に示すように、電流が小さいときや電流が流れていないときには、電流リード導体1は発熱しておらず、材料2は延びた状態にあるため、スパイラル状の電流リード導体1の各ターン間には隙間が生じて、実質的に電流リード導体1の断面積は小さく、長さは長くなった状態にある。つまり、電流が小さいときや電流が流れていないときには熱侵入を小さく抑えることができる。
【0030】
一方、電流が流れているときには、図1(b)や図2(b)に示すように、発熱により電流リード導体1は膨張し、材料2は縮むのでスパイラル状の電流リード導体1の各ターン間の隙間は互いに密着することになり、結果としてスパイラル状の電流リード導体1は、円筒形状になり、電流リード導体1の断面積が大きくなるとともにその長さは短くなる。
【0031】
すなわち、大きな電流を流そうとする場合には導体の断面積を大きくし、導体の長さも短くして電気抵抗をできるだけ抑えることができ、電流が小さいときや電流が流れていないときには導体の断面積を小さくし導体を長くすることにより、熱侵入を小さく抑えることができる。
【0032】
図3は本発明の第2実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図3(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図、図3(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図である。図4は本発明の第2実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図4(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図、図4(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図である。
【0033】
これらの図において、1はスパイラル状に形成されている銅などの正の線膨張係数を持つ電流リード導体(例えば、ターン形状の銅導体)、4は電流リード導体1のスパイラルの内周に、熱伝導接続部5を介して電流リード導体1に全体が接触固定しないように、電流通過方向に配置される負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)、5は電流リード導体1に設けられ電流リード導体1と負の線膨張係数を持つ材料4を接続する熱伝導接続部である。なお、この熱伝導接続部5は、前記材料4との接触面積が小さくなるような断面形状(熱伝導接続部5の材料4側の先端が小さい形状)を有することが望ましい。例えば、その接続形状を突起状形状などにして、負の線膨張係数を持つ材料4との接続面積が小さくなるような形状であることが望ましい。
【0034】
また、電流リード導体1は、電流が流れて各ターン間がくっついた際に、大電流を通電可能なように、各ターン間の接触面積を大きくすることが望ましい。
【0035】
このように構成したので、図3(a)や図4(a)に示すように、電流が小さいときや電流が流れていないときには、電流リード導体1は発熱しておらず、材料4は延びた状態にあるため、スパイラル状の電流リード導体1の各ターン間には隙間が生じて、実質的に電流リード導体1の断面積は小さく、長さは長くなった状態にある。つまり、電流が小さいときや電流が流れていないときには熱侵入を小さく抑えることができる。
【0036】
一方、電流が流れているときには、図3(b)や図4(b)に示すように、加熱により電流リード導体1は膨張し、材料4は縮むのでスパイラル状の電流リード導体1の各ターン間の隙間は互いに密着することになり、結果としてスパイラル状の電流リード導体1は、円筒形状になり、電流リード導体1の断面積が大きくなるとともにその長さは短くなる。
【0037】
図5は本発明の第3実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図5(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図、図5(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図である。図6は本発明の第3実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図6(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図、図6(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図である。
【0038】
この実施例では、第1実施例における正の線膨張係数を持つ電流リード導体1のスパイラルの外周に、熱伝導接続部3を介して電流リード導体1に全体が接触固定しないように配置される負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)2だけでなく、更に、第2実施例におけるように、電流リード導体1のスパイラルの内周にも、熱伝導接続部5を介して負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)4を配置するようにした。
【0039】
ここでも、第1実施例と同様に、この熱伝導接続部3,5は、前記材料2,4との接触面積が小さくなるような断面形状(熱伝導接続部の先端が小さい形状)を有することが望ましい。例えば、その接続形状を突起状形状などにして、負の線膨張係数を持つ材料2との接続面積が小さくなるような形状であることが望ましい。
【0040】
また、電流リード導体1は、電流が流れて各ターン間がくっついた際に、大電流を通電可能なように、各ターン間の接触面積を大きくすることが望ましい。
【0041】
このように、電流リード導体1を負の線膨張係数を持つ材料2と4によってスパイラルの内周、外周両面から変位させるようにしたので、より確実に電流リード導体1の変位を行わせることができる。
【0042】
図7は本発明の第4実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図、図8は本発明の第5実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図である。
【0043】
これらの実施例では、負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)6,8を、上記第1,第2実施例のように、電流リード導体1のスパイラルの全周に配置するのではなく、その周囲の一部分(例えば、1/2)にのみ配置するようにしたものである。また、その配置範囲は全周の1/4の周囲に配置するようにしてもよい。
【0044】
図9は本発明の第6実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図である。
【0045】
この実施例では、図9に示すように、かかる負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)6,8を電流リード導体1のスパイラルの外周と内周の両方に一部分だけ配置するようにしてもよい。
【0046】
図10は本発明の第7実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す平面図であり、図10(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す平面図、図10(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す平面図である。図11は本発明の第7実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す側面図であり、図11(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す側面図、図11(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す側面図である。
【0047】
この実施例では、正の線膨張係数を持つ電流リード導体11がミアンダ状で、その折り返し部分が柔軟であり、その片面に電流通電方向と垂直方向に負の線膨張係数を持つ材料12を配置し、その材料12は熱伝導接続部13により電流リード導体11に取り付けられるように構成されている。
【0048】
このように構成したので、図10(a)や図11(a)に示すように、電流が小さいときや電流が流れていないときには、電流リード導体11は発熱しておらず材料12は延びた状態にあるため、ミアンダ状の電流リード導体11の各ターン(折り返し)間には隙間が生じて、実質的に電流リード導体11の断面積は小さく、長さは長くなった状態にある。つまり、電流が小さいときや電流が流れていないときには熱侵入を小さく抑えることができる。
【0049】
一方、電流が流れているときには、図10(b)や図11(b)に示すように、ミアンダ状の電流リード導体11の発熱により導体11は膨張し、材料12は縮むのでミアンダ状の電流リード導体11の各ターン間は互いに密着することになり、結果としてミアンダ状の電流リード導体11は矩形形状になり、電流リード導体11の断面積が大きくなるとともにその長さは短くなる。
【0050】
すなわち、大きな電流を流そうとする場合には導体の断面積を大きくし、導体の長さも短くして電気抵抗をできるだけ抑えることができ、電流が小さいときや電流が流れていないときには導体の断面積を小さくし導体を長くすることにより、熱侵入を小さく抑えることができる。
【0051】
図12は本発明の第8実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す平面図であり、図12(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す平面図、図12(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す平面図である。図13は本発明の第8実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す側面図であり、図13(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す側面図、図13(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す側面図である。
【0052】
この実施例では、ミアンダ状で、その折り返し部分が柔軟である正の線膨張係数を持つ電流リード導体11の両面に、通電電流方向と垂直方向に線膨張係数が非常に小さいか負の線膨張係数を持つ材料12,14を配置し、その材料12,14は熱伝導接続部13,15により電流リード導体11に取り付けられるように構成されている。
【0053】
このように構成したので、ミアンダ状の電流リード導体11の片面にのみ材料12を配置した第7実施例に比べて、ミアンダ状の電流リード導体11の両面に材料12,14を配置するようにしたので、ミアンダ状の電流リード導体11の変位をより確実なものとすることができる。
【0054】
図14は本発明の効果の確認試験の平面模式図であり、図14(a)は導体の温度が低い状態を示す図、図14(b)は導体の温度が高い状態を示す図である。図15はその確認試験の側面模式図であり、図15(a)は導体の温度が低い状態を示す図、図15(b)は導体の温度が高い状態を示す図である。
【0055】
これらの図において、21〜23は銅の導体、24はその導体21〜23の両面に熱伝導接続部25を介して配置される負の線膨張係数を持つザイロン繊維からなる材料である。ここで、導体21と22との間の抵抗を抵抗1とし、導体22と23との間の抵抗を抵抗2とする。
【0056】
そこで、室温の場合と液体窒素で冷却して温度を変えた場合の導体21〜23間の抵抗を測定して抵抗の変化を調べた。
【0057】
図16は図14及び図15における確認試験の結果を示す図であり、図16(a)は抵抗1の変化を示す図、図16(b)は抵抗2の変化を示す図である。
【0058】
これらの図において、Rは抵抗、Tは温度を示しており、RL は導体が接触しており抵抗が0の場合、RH は導体が接触しておらず、抵抗が∞の場合を示している。
【0059】
これらの図から明らかなように、導体の温度が高くなると、導体21と22間及び導体22と23の間の隙間がなくなり、導体間が接触して抵抗1,2はそれに伴って低くなることが実証できた。
【0060】
次に、例えば、図5に示すような、負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)2,4と熱伝導接続部3,5との接触部位は四角形状となっているが、これに代えて更に接触面積が小さくなるような断面形状にすることができる。
【0061】
図17は本発明の実施例を示す熱伝導接続部と負の線膨張係数を持つ材料との接触面積が小さくなるような断面形状を示す拡大図である。
【0062】
図17(a)は熱伝導接続部33,35を断面が半円形状になるようにして、負の線膨張係数を持つ材料32と34に接触面積が小さくなるようして接触させるようにしたり、図17(b)で示すように、熱伝導接続部43,45を断面が三角形状になるようにして、負の線膨張係数を持つ材料42と44に接触面積が小さくなるようして接触させるようにしてもよい。
【0063】
図18は本発明の実施例を示す熱伝導接続部と負の線膨張係数を持つ材料との接触面積が小さくなるような形状を示す拡大図である。
【0064】
この実施例では、低熱侵入電流リード装置において、熱伝導接続部51は、負の線膨張係数を持つ材料52と電流リード導体53の中央部54のみで固定されることより構成され、この中央部54以外はフリー部55とするようにした。
【0065】
このように構成することにより、中央部54のみで固定されて確実に接触し、その中央部54以外では自由に移動することができる。
【0066】
なお、上記実施例では、負の線膨張係数を持つ材料を用いるようにしたが、線膨張係数が非常に小さい材料の場合でも適宜適用可能である。
【0067】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の低熱侵入電流リード装置は、高温超電導ケーブルを鉄道のき電線に応用した場合の電流リードに適している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図5】本発明の第3実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図6】本発明の第3実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図7】本発明の第4実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図である。
【図8】本発明の第5実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図である。
【図9】本発明の第6実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図である。
【図10】本発明の第7実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す平面図である。
【図11】本発明の第7実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す側面図である。
【図12】本発明の第8実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す平面図である。
【図13】本発明の第8実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す側面図である。
【図14】本発明の効果の確認試験の平面模式図である。
【図15】本発明の効果の確認試験の側面模式図である。
【図16】図14及び図15における確認試験の結果を示す図である。
【図17】本発明の実施例を示す熱伝導接続部と負の線膨張係数を持つ材料との接触面積が小さくなるような断面形状を示す拡大図である。
【図18】本発明の実施例を示す熱伝導接続部と負の線膨張係数を持つ材料との接触面積が小さくなるような形状を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0070】
1,11,53 正の線膨張係数を持つ電流リード導体
2,4,6,8,12,14,24,32,34,42,44,52 負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)
3,5,13,15,25,33,35,43,45,51 熱伝導接続部
21〜23 銅の導体
54 電流リード導体の中央部
55 電流リード導体のフリー部
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超電導ケーブルを鉄道のき電線に応用する場合や超電導応用機器などに用いられる低熱侵入電流リード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高温超電導ケーブルを鉄道のき電線に応用する場合などでは、液体窒素で冷却された超電導ケーブルとトロリー線を接続するために、電流リードにより低温領域と室温領域を接続しなければならない。また、従来の電力用超電導ケーブルでは、き電線からの電力の取り出し口は少なくて済むが、き電線に超電導ケーブルを応用した場合には、数百mおきにき電線とトロリー線を接続する必要があるため、極低温に冷やされた超電導ケーブルと室温のトロリー線とを頻繁に結ぶことになる。
【0003】
こうした超電導ケーブルをき電線に応用する場合の電流リードに要求される性能は、大電流を通電可能で、熱侵入が小さいことである。
【0004】
また、き電線に超電導ケーブルを応用した場合、それぞれの電流リードに電流が流れる時間は、そのセクションに電車が在線する時のみで、電力用ケーブルの場合と比べると断続的であり、流れる電流量の変動が大きいと言った特徴がある。したがって、電流が流れているときは抵抗が小さく大電流を流すことができ、電流が小さいときや電流が流れていない時には熱侵入を小さく抑えることができるような電流リードが望まれる。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電流リードに大きな電流を流そうとする場合には導体の断面積を大きくし、導体の長さも短くして電気抵抗をできるだけ抑えねばならないが、一方で、熱侵入を小さくするためには、導体の断面積を小さくし導体を長くしなければならない。つまり、相反する要求を満たさなければならないといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みて、通電電流が大きい時には電気抵抗を低くし、無通電もしくは通電電流が小さい時には熱侵入を小さく抑えることができる低熱侵入電流リード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕低熱侵入電流リード装置において、正の線膨張係数を持つターン形状の電流リード導体と、熱伝導接続部を介して前記電流リード導体と軸方向に全体が接触せず一部のみ接続させるように配置される、負の線膨張係数を持つ材料とを具備することを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記電流リード導体がスパイラル状の電流リード導体であることを特徴とする。
【0009】
〔3〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周に配置することを特徴とする。
【0010】
〔4〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の内周に配置することを特徴とする。
【0011】
〔5〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周及び内周に配置することを特徴とする。
【0012】
〔6〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周の一部に配置することを特徴とする。
【0013】
〔7〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の内周の一部に配置することを特徴とする。
【0014】
〔8〕上記〔2〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周及び内周の一部に配置することを特徴とする。
【0015】
〔9〕上記〔1〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記電流リード導体がミアンダ状の電流リード導体であることを特徴とする。
【0016】
〔10〕上記〔9〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の片面に配置することを特徴とする。
【0017】
〔11〕上記〔9〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の両面に配置することを特徴とする。
【0018】
〔12〕上記〔9〕〜〔11〕の何れか一項記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の外周に配置することを特徴とする。
【0019】
〔13〕上記〔12〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の外周の一部に配置することを特徴とする。
【0020】
〔14〕上記〔1〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記熱伝導接続部が、前記材料との接触面積が小さくなるような断面形状を有することを特徴とする。
【0021】
〔15〕上記〔1〕記載の低熱侵入電流リード装置において、前記熱伝導接続部は、前記材料と電流リード導体の中央部のみで固定されることより構成され、該中央部以外はフリーにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、無通電時もしくは通電電流が小さい時には、正の線膨張係数を持つターン(スパイラル又はミアンダ)形状の電流リード導体の発熱がないかもしくは小さいため、温度は低いので電流リード導体は縮み、負の線膨張係数を持つ材料は膨張して、電流リード導体のターン間には隙間ができて一本の長い導体として作用し、電流リード導体の断面積も小さいので、伝熱距離が長く細い導体として、熱侵入を抑えることができる。
【0023】
一方、通電電流が大きい時には、電流リード導体に電流が流れ、その電流値が大きくなると、電流リード導体の断面が小さく抵抗値が大きいため、電流リード導体は発熱し温度が上昇する。その温度上昇に伴い、正の線膨張係数を持つ電流リード導体は膨張し、負の線膨張係数を持つ材料は収縮するため電流リード導体ターン間の隙間がなくなりお互いに接触するため、電流リード導体は円筒形状または矩形の断面積が大きく長さが短い電流リード導体として、電気的抵抗が小さくなり、電気抵抗による発熱が抑えられる。つまり、熱侵入量は増加するが大電流を通電可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の低熱侵入電流リード装置は、正の線膨張係数を持つ電流リード導体と、熱伝導接続部を介して前記電流リード導体と軸方向に全体が軸方向に全体が接触せず一部のみ接続させるように配置される、負の線膨張係数を持つ材料とを具備する。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の第1実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図1(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図、図1(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図である。図2は本発明の第1実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図2(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図、図2(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図である。
【0027】
これらの図において、1はスパイラル状に形成されている銅などの正の線膨張係数を持つ電流リード導体(例えば、ターン形状の銅導体)、2は電流リード導体1のスパイラルの外周に、熱伝導接続部3を介して電流リード導体1に全体が接触固定しないように、電流通過方向に配置される負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)、3は電流リード導体1に設けられ電流リード導体1と負の線膨張係数を持つ材料2を接続する熱伝導接続部である。なお、この熱伝導接続部3は、前記材料2との接触面積が小さくなるような断面形状(熱伝導接続部3の先端が小さい形状、ただし、熱伝達は良い方がよい)を有することが望ましい。例えば、その接続形状を突起状形状などにして、負の線膨張係数を持つ材料2との接続面積が小さくなるような形状であることが望ましい。つまり、電流リード導体1の伸び縮みと負の線膨張係数を持つ材料2の伸び縮みがお互いにできるだけ拘束されないようにすることが重要である。なお、電流リード導体1と熱伝導接続部3は一体としてもよい。
【0028】
また、電流リード導体1は、電流が流れて各ターン間がくっついた際に、大電流を通電可能なように、各ターン間の接触面積を大きくすることが望ましい。
【0029】
このように構成したので、図1(a)や図2(a)に示すように、電流が小さいときや電流が流れていないときには、電流リード導体1は発熱しておらず、材料2は延びた状態にあるため、スパイラル状の電流リード導体1の各ターン間には隙間が生じて、実質的に電流リード導体1の断面積は小さく、長さは長くなった状態にある。つまり、電流が小さいときや電流が流れていないときには熱侵入を小さく抑えることができる。
【0030】
一方、電流が流れているときには、図1(b)や図2(b)に示すように、発熱により電流リード導体1は膨張し、材料2は縮むのでスパイラル状の電流リード導体1の各ターン間の隙間は互いに密着することになり、結果としてスパイラル状の電流リード導体1は、円筒形状になり、電流リード導体1の断面積が大きくなるとともにその長さは短くなる。
【0031】
すなわち、大きな電流を流そうとする場合には導体の断面積を大きくし、導体の長さも短くして電気抵抗をできるだけ抑えることができ、電流が小さいときや電流が流れていないときには導体の断面積を小さくし導体を長くすることにより、熱侵入を小さく抑えることができる。
【0032】
図3は本発明の第2実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図3(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図、図3(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図である。図4は本発明の第2実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図4(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図、図4(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図である。
【0033】
これらの図において、1はスパイラル状に形成されている銅などの正の線膨張係数を持つ電流リード導体(例えば、ターン形状の銅導体)、4は電流リード導体1のスパイラルの内周に、熱伝導接続部5を介して電流リード導体1に全体が接触固定しないように、電流通過方向に配置される負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)、5は電流リード導体1に設けられ電流リード導体1と負の線膨張係数を持つ材料4を接続する熱伝導接続部である。なお、この熱伝導接続部5は、前記材料4との接触面積が小さくなるような断面形状(熱伝導接続部5の材料4側の先端が小さい形状)を有することが望ましい。例えば、その接続形状を突起状形状などにして、負の線膨張係数を持つ材料4との接続面積が小さくなるような形状であることが望ましい。
【0034】
また、電流リード導体1は、電流が流れて各ターン間がくっついた際に、大電流を通電可能なように、各ターン間の接触面積を大きくすることが望ましい。
【0035】
このように構成したので、図3(a)や図4(a)に示すように、電流が小さいときや電流が流れていないときには、電流リード導体1は発熱しておらず、材料4は延びた状態にあるため、スパイラル状の電流リード導体1の各ターン間には隙間が生じて、実質的に電流リード導体1の断面積は小さく、長さは長くなった状態にある。つまり、電流が小さいときや電流が流れていないときには熱侵入を小さく抑えることができる。
【0036】
一方、電流が流れているときには、図3(b)や図4(b)に示すように、加熱により電流リード導体1は膨張し、材料4は縮むのでスパイラル状の電流リード導体1の各ターン間の隙間は互いに密着することになり、結果としてスパイラル状の電流リード導体1は、円筒形状になり、電流リード導体1の断面積が大きくなるとともにその長さは短くなる。
【0037】
図5は本発明の第3実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図5(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図、図5(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す縦断断面図である。図6は本発明の第3実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図であり、図6(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図、図6(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す横断断面図である。
【0038】
この実施例では、第1実施例における正の線膨張係数を持つ電流リード導体1のスパイラルの外周に、熱伝導接続部3を介して電流リード導体1に全体が接触固定しないように配置される負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)2だけでなく、更に、第2実施例におけるように、電流リード導体1のスパイラルの内周にも、熱伝導接続部5を介して負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)4を配置するようにした。
【0039】
ここでも、第1実施例と同様に、この熱伝導接続部3,5は、前記材料2,4との接触面積が小さくなるような断面形状(熱伝導接続部の先端が小さい形状)を有することが望ましい。例えば、その接続形状を突起状形状などにして、負の線膨張係数を持つ材料2との接続面積が小さくなるような形状であることが望ましい。
【0040】
また、電流リード導体1は、電流が流れて各ターン間がくっついた際に、大電流を通電可能なように、各ターン間の接触面積を大きくすることが望ましい。
【0041】
このように、電流リード導体1を負の線膨張係数を持つ材料2と4によってスパイラルの内周、外周両面から変位させるようにしたので、より確実に電流リード導体1の変位を行わせることができる。
【0042】
図7は本発明の第4実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図、図8は本発明の第5実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図である。
【0043】
これらの実施例では、負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)6,8を、上記第1,第2実施例のように、電流リード導体1のスパイラルの全周に配置するのではなく、その周囲の一部分(例えば、1/2)にのみ配置するようにしたものである。また、その配置範囲は全周の1/4の周囲に配置するようにしてもよい。
【0044】
図9は本発明の第6実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図である。
【0045】
この実施例では、図9に示すように、かかる負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)6,8を電流リード導体1のスパイラルの外周と内周の両方に一部分だけ配置するようにしてもよい。
【0046】
図10は本発明の第7実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す平面図であり、図10(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す平面図、図10(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す平面図である。図11は本発明の第7実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す側面図であり、図11(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す側面図、図11(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す側面図である。
【0047】
この実施例では、正の線膨張係数を持つ電流リード導体11がミアンダ状で、その折り返し部分が柔軟であり、その片面に電流通電方向と垂直方向に負の線膨張係数を持つ材料12を配置し、その材料12は熱伝導接続部13により電流リード導体11に取り付けられるように構成されている。
【0048】
このように構成したので、図10(a)や図11(a)に示すように、電流が小さいときや電流が流れていないときには、電流リード導体11は発熱しておらず材料12は延びた状態にあるため、ミアンダ状の電流リード導体11の各ターン(折り返し)間には隙間が生じて、実質的に電流リード導体11の断面積は小さく、長さは長くなった状態にある。つまり、電流が小さいときや電流が流れていないときには熱侵入を小さく抑えることができる。
【0049】
一方、電流が流れているときには、図10(b)や図11(b)に示すように、ミアンダ状の電流リード導体11の発熱により導体11は膨張し、材料12は縮むのでミアンダ状の電流リード導体11の各ターン間は互いに密着することになり、結果としてミアンダ状の電流リード導体11は矩形形状になり、電流リード導体11の断面積が大きくなるとともにその長さは短くなる。
【0050】
すなわち、大きな電流を流そうとする場合には導体の断面積を大きくし、導体の長さも短くして電気抵抗をできるだけ抑えることができ、電流が小さいときや電流が流れていないときには導体の断面積を小さくし導体を長くすることにより、熱侵入を小さく抑えることができる。
【0051】
図12は本発明の第8実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す平面図であり、図12(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す平面図、図12(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す平面図である。図13は本発明の第8実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す側面図であり、図13(a)は電流が小さいときや電流が流れていないときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す側面図、図13(b)は電流が流れているときの低熱侵入電流リード装置の状態を示す側面図である。
【0052】
この実施例では、ミアンダ状で、その折り返し部分が柔軟である正の線膨張係数を持つ電流リード導体11の両面に、通電電流方向と垂直方向に線膨張係数が非常に小さいか負の線膨張係数を持つ材料12,14を配置し、その材料12,14は熱伝導接続部13,15により電流リード導体11に取り付けられるように構成されている。
【0053】
このように構成したので、ミアンダ状の電流リード導体11の片面にのみ材料12を配置した第7実施例に比べて、ミアンダ状の電流リード導体11の両面に材料12,14を配置するようにしたので、ミアンダ状の電流リード導体11の変位をより確実なものとすることができる。
【0054】
図14は本発明の効果の確認試験の平面模式図であり、図14(a)は導体の温度が低い状態を示す図、図14(b)は導体の温度が高い状態を示す図である。図15はその確認試験の側面模式図であり、図15(a)は導体の温度が低い状態を示す図、図15(b)は導体の温度が高い状態を示す図である。
【0055】
これらの図において、21〜23は銅の導体、24はその導体21〜23の両面に熱伝導接続部25を介して配置される負の線膨張係数を持つザイロン繊維からなる材料である。ここで、導体21と22との間の抵抗を抵抗1とし、導体22と23との間の抵抗を抵抗2とする。
【0056】
そこで、室温の場合と液体窒素で冷却して温度を変えた場合の導体21〜23間の抵抗を測定して抵抗の変化を調べた。
【0057】
図16は図14及び図15における確認試験の結果を示す図であり、図16(a)は抵抗1の変化を示す図、図16(b)は抵抗2の変化を示す図である。
【0058】
これらの図において、Rは抵抗、Tは温度を示しており、RL は導体が接触しており抵抗が0の場合、RH は導体が接触しておらず、抵抗が∞の場合を示している。
【0059】
これらの図から明らかなように、導体の温度が高くなると、導体21と22間及び導体22と23の間の隙間がなくなり、導体間が接触して抵抗1,2はそれに伴って低くなることが実証できた。
【0060】
次に、例えば、図5に示すような、負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)2,4と熱伝導接続部3,5との接触部位は四角形状となっているが、これに代えて更に接触面積が小さくなるような断面形状にすることができる。
【0061】
図17は本発明の実施例を示す熱伝導接続部と負の線膨張係数を持つ材料との接触面積が小さくなるような断面形状を示す拡大図である。
【0062】
図17(a)は熱伝導接続部33,35を断面が半円形状になるようにして、負の線膨張係数を持つ材料32と34に接触面積が小さくなるようして接触させるようにしたり、図17(b)で示すように、熱伝導接続部43,45を断面が三角形状になるようにして、負の線膨張係数を持つ材料42と44に接触面積が小さくなるようして接触させるようにしてもよい。
【0063】
図18は本発明の実施例を示す熱伝導接続部と負の線膨張係数を持つ材料との接触面積が小さくなるような形状を示す拡大図である。
【0064】
この実施例では、低熱侵入電流リード装置において、熱伝導接続部51は、負の線膨張係数を持つ材料52と電流リード導体53の中央部54のみで固定されることより構成され、この中央部54以外はフリー部55とするようにした。
【0065】
このように構成することにより、中央部54のみで固定されて確実に接触し、その中央部54以外では自由に移動することができる。
【0066】
なお、上記実施例では、負の線膨張係数を持つ材料を用いるようにしたが、線膨張係数が非常に小さい材料の場合でも適宜適用可能である。
【0067】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の低熱侵入電流リード装置は、高温超電導ケーブルを鉄道のき電線に応用した場合の電流リードに適している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図5】本発明の第3実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図6】本発明の第3実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す図である。
【図7】本発明の第4実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図である。
【図8】本発明の第5実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図である。
【図9】本発明の第6実施例を示す低熱侵入電流リード装置における負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)からなる導体の配置を示す図である。
【図10】本発明の第7実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す平面図である。
【図11】本発明の第7実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す側面図である。
【図12】本発明の第8実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す平面図である。
【図13】本発明の第8実施例を示す低熱侵入電流リード装置とその通電電流による作用を示す側面図である。
【図14】本発明の効果の確認試験の平面模式図である。
【図15】本発明の効果の確認試験の側面模式図である。
【図16】図14及び図15における確認試験の結果を示す図である。
【図17】本発明の実施例を示す熱伝導接続部と負の線膨張係数を持つ材料との接触面積が小さくなるような断面形状を示す拡大図である。
【図18】本発明の実施例を示す熱伝導接続部と負の線膨張係数を持つ材料との接触面積が小さくなるような形状を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0070】
1,11,53 正の線膨張係数を持つ電流リード導体
2,4,6,8,12,14,24,32,34,42,44,52 負の線膨張係数を持つ材料(例えばザイロン)
3,5,13,15,25,33,35,43,45,51 熱伝導接続部
21〜23 銅の導体
54 電流リード導体の中央部
55 電流リード導体のフリー部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)正の線膨張係数を持つターン形状の電流リード導体と、
(b)熱伝導接続部を介して前記電流リード導体と軸方向に全体が接触せず一部のみ接続させるように配置される、負の線膨張係数を持つ材料とを具備することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項2】
請求項1記載の低熱侵入電流リード装置において、前記電流リード導体がスパイラル状の電流リード導体であることを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項3】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項4】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の内周に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項5】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周及び内周に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項6】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周の一部に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項7】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の内周の一部に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項8】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周及び内周の一部に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項9】
請求項1記載の低熱侵入電流リード装置において、前記電流リード導体がミアンダ状の電流リード導体であることを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項10】
請求項9記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の片面に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項11】
請求項9記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の両面に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項12】
請求項9〜11の何れか一項記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の外周に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項13】
請求項12記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の外周の一部に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項14】
請求項1記載の低熱侵入電流リード装置において、前記熱伝導接続部が、前記材料との接触面積が小さくなるような断面形状を有することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項15】
請求項1記載の低熱侵入電流リード装置において、前記熱伝導接続部は、前記材料と電流リード導体の中央部のみで固定されることより構成され、該中央部以外はフリーにすることを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項1】
(a)正の線膨張係数を持つターン形状の電流リード導体と、
(b)熱伝導接続部を介して前記電流リード導体と軸方向に全体が接触せず一部のみ接続させるように配置される、負の線膨張係数を持つ材料とを具備することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項2】
請求項1記載の低熱侵入電流リード装置において、前記電流リード導体がスパイラル状の電流リード導体であることを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項3】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項4】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の内周に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項5】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周及び内周に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項6】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周の一部に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項7】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の内周の一部に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項8】
請求項2記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記スパイラル状の電流リード導体の外周及び内周の一部に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項9】
請求項1記載の低熱侵入電流リード装置において、前記電流リード導体がミアンダ状の電流リード導体であることを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項10】
請求項9記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の片面に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項11】
請求項9記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の両面に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項12】
請求項9〜11の何れか一項記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の外周に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項13】
請求項12記載の低熱侵入電流リード装置において、前記材料を前記ミアンダ状の電流リード導体の外周の一部に配置することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項14】
請求項1記載の低熱侵入電流リード装置において、前記熱伝導接続部が、前記材料との接触面積が小さくなるような断面形状を有することを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【請求項15】
請求項1記載の低熱侵入電流リード装置において、前記熱伝導接続部は、前記材料と電流リード導体の中央部のみで固定されることより構成され、該中央部以外はフリーにすることを特徴とする低熱侵入電流リード装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−250972(P2007−250972A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74453(P2006−74453)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
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