説明

低燃費トラックタイヤトレッド

【課題】低燃費性能を向上したタイヤを提供する。
【解決手段】乗り物のホイールのタイヤは、周方向のグルーブによって分離されたトレッドを構成する互いに隣接するトレッドリブを含む対称的な五リブトレッド構造を有する。中間グルーブは、ショルダグルーブの軸線方向の幅よりも広い軸線方向の幅を有し、中央リブは、中間リブおよびショルダリブの軸線方向の幅よりも広い軸線方向の幅を有する。中央リブ、中間リブおよびショルダリブの軸線方向の幅は、トレッド全体の軸線方向の幅に対して好ましい所定の範囲内にあり、各々の中間グルーブの軸線方向の幅は、トレッド全体の軸線方向の幅に対して好ましい所定の範囲内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して乗り物のタイヤに関し、特に、トレッドの低燃費性能向上させることを目的としたトラックタイヤのトレッドパターンに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤによって実現される転がり抵抗性能および低燃費性(Fuel mileage efficiency)を維持しつつ適切なレベルのウエット性能およびスノー性能を実現する商用トラックステアタイヤが必要とされている。さらに、このようなタイヤは、タイヤトレッドの有効寿命を延ばすために高レベルのコーナリング剛性(Cornering stiffness)およびトレッド耐摩耗性を実現することが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、機能面で競合する上記の目的を果たし、それによって、ユーザに許容される全体的なタイヤ性能を実現するトレッドパターンを有する商用トラックタイヤが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、乗り物のホイールのタイヤは、周方向グルーブによって分離された互いに隣接するトレッドリブを含む対称的な五リブトレッド構造を有する。本発明によれば、トレッドの中間グルーブは、ショルダグルーブの軸線方向の幅よりも広い軸線方向の幅を有し、中央リブは、中間リブおよびショルダリブの軸線方向の幅よりも広い軸線方向の幅を有する。
【0005】
他の態様では、中央リブ、中間リブおよびショルダリブの軸線方向の幅は、トレッド全体の軸線方向の幅に対して好ましい所定の範囲内にあり、各々の中間グルーブの軸線方向の幅は、トレッド全体の軸線方向の幅に対して好ましい所定の範囲内にある。
【0006】
別の態様では、トレッドは、赤道中心線に対して対称的であり、各リブおよび各グルーブが好ましい所定の軸線方向の幅を有するように構成される。
【0007】
定義
タイヤの「アスペクト比」は、タイヤの断面の高さ(SH)とタイヤの断面の幅(SW)との比に100%を掛け、百分率として表したものである。
【0008】
「非対称的トレッド」は、タイヤの中心面すなわち赤道面EPに対して対称的でないトレッドパターンを有するトレッドを意味する。
【0009】
「軸線方向」は、タイヤの回転軸に平行なラインまたは方向を意味する。
【0010】
「チェーファー」は、タイヤビードの外側に配置され、コードプライがリムに接触して磨耗したり切れたりするのを防止し、かつたわみをリムの上方に分散させる材料の狭いストリップである。
【0011】
「周方向」は、軸線方向に垂直な環状のトレッドの面の周縁に沿って延びるラインまたは方向を意味する。
【0012】
「赤道中心面(CP)」は、タイヤの回転軸に垂直であり、かつトレッドの中心を通過する平面を意味する。
【0013】
「フットプリント(Footprint)」は、速度が零であり、かつ標準荷重および標準空気圧下にあるときに、平坦な面に接触するタイヤトレッドの接触部分または接触領域を意味する。
【0014】
「グルーブ(Groove)」は、トレッドの周囲に沿って直線状、曲線状またはジグザグに周方向または横方向に延びるトレッドの細長い空隙領域を意味する。周方向および横方向に延びる複数のグルーブが共通部分を有することもある。「グルーブの幅」は、対象となるグルーブまたはグルーブ部分によって占有されるトレッド表面積を、そのようなグルーブまたはグルーブ部分の長さで割った値に等しい。したがって、グルーブの幅は、グルーブの全長にわたるグルーブの平均幅である。グルーブは、タイヤにおいて深さが一定でなくてもよい。グルーブの深さは、トレッドの円周に沿って変化していてもよく、また、1つのグルーブの深さは一定であって他のグルーブの深さと異なっていてもよい。このような狭いまたは広い複数のグルーブは、それらのグルーブが相互に連結する広い周方向グルーブと比べて深さが実質的に浅い場合、関連するトレッド領域においてリブ状の特性を維持する傾向のある「タイバー」を形成する。
【0015】
「車内側」は、タイヤがホイールに取り付けられ、ホイールが乗り物に取り付けられたときに、タイヤの、乗り物に最も近い側を意味する。
【0016】
「横方向」は、軸線方向を意味する。
【0017】
「横方向縁部」は、標準荷重および標準タイヤ空気圧下で測定された軸線方向において最も外側のトレッド接触パッチまたはフットプリントに接し、赤道中心面に平行なラインを意味する。
【0018】
「正味接触面積」は、トレッドの全周に沿った横方向縁部同士の間の地面接触トレッド部材の総面積を、横方向縁部同士の間のトレッド全体の総面積で割った値を意味する。
【0019】
「非方向性トレッド」は、好ましい順走行方向を有さず、かつトレッドパターンを好ましい走行方向に揃えるうえで乗り物上の1つまたは2つ以上の特定のホイール位置に位置する必要のないトレッドを意味する。逆に、方向性トレッドパターンは、特定のホイール位置を必要とする好ましい走行方向を有する。
【0020】
「車外側」は、タイヤがホイールに取り付けられ、ホイールが乗り物に取り付けられたときに、タイヤの、乗り物から最も遠い側を意味する。
【0021】
「蠕動」は、空気のような閉じ込められた物質を管状の経路に沿って送る波状の収縮による動作を意味する。
【0022】
「半径方向」は、半径方向においてタイヤの回転軸に向かうかあるいは回転軸から離れる方向を意味する。
【0023】
「リブ」は、少なくとも1つの周方向グルーブと、そのような別のグルーブまたは横方向縁部と、によって形成されたトレッド上の周方向に延びるゴムストリップを意味する。リブ、グルーブによって横方向には分割されない。
【0024】
「サイプ(Sipe)」は、タイヤのトレッド部材に成形され、トレッド面を細分してトラクション(Traction)を向上させる小さい長穴を意味する。サイプは、概して幅が狭く、タイヤのフットプリントにおいて開放されたままになるグルーブとは異なり、タイヤフットプリントにおいて閉塞される。
【0025】
「トレッド部材」または「トラクション部材」は、グルーブに隣接する形状を有することによって形成されるリブまたはブロック部材を意味する。
【0026】
「トレッドアーク幅」は、トレッドの横方向縁部同士の間で測定されたトレッドの円弧長を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】タイヤトレッドを含むタイヤの等角図である。
【図2】タイヤトレッドの平面図である。
【図3】タイヤおよびトレッドの側面図である。
【図4】トレッド部分の拡大等角図である。
【図5】トレッドの五リブ構造に関する摩擦エネルギー密度のグラフである。
【図6】タイヤトレッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明について、一例として添付の図面を参照して説明する。
【0029】
まず、図1、図2、図3、図4および図6を参照する。タイヤ10が周方向トレッド12を有する従来の手段によって構成されている。トレッド12は、赤道中心線に対して対称的であることが好ましい。トレッド12は、一対のショルダリブ14,16と、一対の中間リブ18,20と、赤道中心線上の中央リブ22と、を含む、周方向に互いに離して配置された5つのリブを有している。互いに隣接するショルダリブと中間リブは、それぞれ、連続する周方向グルーブ24,26によって分離されている。中間リブは、それぞれ、中間グルーブ28,30によって中央リブから分離されている。
【0030】
トレッド12は、5つの周方向リブおよび4つの周方向グルーブの個々の幅の全体的な和に等しい軸線方向の幅を有している。図2では、幅W1,W2,W3,W4およびW5が、それぞれ、リブ14,18,22,20および16の軸線方向の幅を示している。同様に、グルーブ幅G1,G2,G3およびG4が、それぞれ、グルーブ24,28,30および26の軸線方向の幅に対応するように示されている。図2では、各グルーブおよび各リブの軸線方向の幅が、トレッドの軸線方向の幅に沿って互いに異なることに留意されたい。中央リブ22は、それに隣接する中間リブ18,20やショルダリブ14,16よりも広い幅を有し、中央リブ22の軸線方向の幅W3は、トレッド全体の軸線方向の幅の17%〜22%の範囲内であることが好ましい。中間リブ18,20の軸線方向の幅W2,W4は、それぞれ、トレッド全体の軸線方向の幅の10%〜15%の範囲内であることが好ましい。ショルダリブ14,16は、それぞれ、トレッド全体の軸線方向の幅の17%〜21%の範囲内の軸線方向の幅W1,W5を有していることが好ましい。さらに、中間グルーブ28,30がショルダグルーブ24,26よりも広いことに留意されたい。中間グルーブ28,30は、それぞれ、トレッド全体の軸線方向の幅の4%〜9%の範囲内の軸線方向の幅G2,G3を有していることが好ましい。ショルダグルーブ24,26の軸線方向の幅G1,G4は、それぞれ、トレッド全体の軸線方向の幅の2%〜4%の範囲内であることが好ましい。
【0031】
ショルダリブ14,16、中間リブ18,20および中央リブ22は、周方向グルーブの境界に接続するそれぞれの縁部に沿って一連のエッジサイプ(Edge sipe)40を有している。また、中間リブ18,20および中央リブ22は、それぞれ、各リブを横切って縁部から縁部まで延びる横方向ブレード(Lateral blade)42であって、周方向に並んだ一連の横方向ブレード42を有している。
【0032】
上記の五リブタイヤトレッド12では、コーナリングおよび制動時にタイヤを使用することによって発生する摩擦エネルギーを全体的に低下させることによって、タイヤの燃費性能が向上する。図5は、従来のリブ幅の分布(実線)および本発明のリブ幅の分布(破線)に対する蓄積された摩擦エネルギー密度(Accumulated Frictional Energy Density)[kJ/m]のグラフを示している。この2つの構成は、リブ幅の分布のみが異なり、全体的なキャビティ形状は同一である。図5のグラフに示されているように、リブおよびグルーブの軸線方向の幅が上述のそれぞれの好ましい範囲内になるように構成された本発明のトレッドの五リブ構造は、トレッドの蓄積された摩擦エネルギー密度を全体的に低下させる。摩擦エネルギー密度の低下によって、トレッド12の摩耗が低減し、したがって、タイヤトレッドの耐摩耗性が高くなる。トレッド領域の寿命が延びると、タイヤの燃費性能が高くなり、エンドユーザに対する有用性が高くなる。さらに、タイヤトレッドの形状により、トレッドの密度が高くなることによってショルダ領域の剛性が増すので、ショルダの摩耗が低減し、一方、不規則な摩耗プロセスが軽減される。このことは、トレッド幅に沿って摩擦エネルギー密度分布が均等であることによって示されている。したがって、このタイヤトレッドは、その軸線方向のフットプリントの全体にわたってより均等に磨耗する。この五リブ構造では、タイヤによって実現される燃費性が向上するだけでなく、コーナリング剛性も改善される。コーナリング力はトレッドの磨耗の主要因子であるので、コーナリング剛性が高くなることによっても、タイヤトレッドの燃費性が向上する。
【0033】
本明細書における本発明の説明を考慮して本発明の変形が可能である。本発明を例示するためにある代表的な実施形態とその説明を示したが、当業者は、本発明の範囲から逸脱せずに実施形態およびその説明に様々な変更および修正を施すことができることが明らかであろう。したがって、特許請求の範囲に規定される本発明の対象となる全範囲内の変更を前述の実施形態に施せることを理解されたい。
【0034】
すなわち、中央リブの軸線方向の幅は、トレッド全体の軸線方向の幅の18%〜21%の範囲内、19%〜20%の範囲内または19.25%〜19.75%の範囲内であっても良い。各々の中間リブの軸線方向の幅は、トレッド全体の軸線方向の幅の11%〜14%の範囲内または12%〜13%の範囲内であっても良い。各々の中間グルーブの軸線方向の幅は、トレッド全体の軸線方向の幅の4%〜8.5%の範囲内、5%〜7.5%の範囲内または6%〜6.5%の範囲内であっても良い。各々のショルダグルーブの軸線方向の幅は、トレッド全体の軸線方向の幅の2%〜3.5%の範囲内であっても良い。また、2つの中間グルーブは実質的に同等の軸線方向の幅を有していて良く、2つのショルダグルーブは実質的に同等の軸線方向の幅を有していて良い。さらに、2つの中間リブは実質的に同等の軸線方向の幅を有していて良く、2つのショルダリブは実質的に同等の軸線方向の幅を有していて良い。
【符号の説明】
【0035】
10 タイヤ
12 トレッド
14,16 ショルダリブ
18,20 中間リブ
22 中央リブ
24,26 ショルダグルーブ
28,30 中間グルーブ
40 エッジサイプ
42 横方向ブレード
G1、G2、G3、G4 グルーブの軸線方向の幅
W1、W2、W3、W4、W5 リブの軸線方向の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物のホイールのタイヤであって、
中央リブと、前記中央リブの横方向の両側に位置し、それぞれ周方向の第1および第2の中間グルーブによって前記中央リブから離れている第1および第2の中間リブと、それぞれ前記第1および第2の中間リブの軸線方向の外側に位置し、周方向の第1および第2のショルダグルーブによってそれぞれの前記中間リブから離れている第1および第2のショルダリブと、を少なくとも有するタイヤのトレッドを有し、
前記中間グルーブが、それぞれ、前記ショルダグルーブの軸線方向の幅よりも広い軸線方向の幅を有し、前記中央リブが、前記中間リブおよび前記ショルダリブのそれぞれの軸線方向の幅よりも広い軸線方向の幅を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記中央リブの軸線方向の幅は、前記トレッド全体の軸線方向の幅の17%〜22%の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
各々の前記中間リブの軸線方向の幅は、前記トレッド全体の軸線方向の幅の10%〜15%の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
各々の前記中間グルーブの軸線方向の幅は、前記トレッド全体の軸線方向の幅の4%〜8.5%の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
各々の前記ショルダグルーブの軸線方向の幅は、前記トレッド全体の軸線方向の幅の2%〜4%の範囲内であることを特徴とする、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記中央リブの軸線方向の幅は、前記トレッド全体の軸線方向の幅の18%〜21%の範囲内であることを特徴とする、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
各々の前記中間リブの軸線方向の幅は、前記トレッド全体の軸線方向の幅の11%〜14%の範囲内であることを特徴とする、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
乗り物のホイールのタイヤであって、
中央リブと、前記中央リブの横方向の両側に位置し、それぞれ周方向の第1および第2の中間グルーブによって前記中央リブから離れている第1および第2の中間リブと、それぞれ前記第1および第2の中間リブの軸線方向の外側に位置し、周方向の第1および第2のショルダグルーブによってそれぞれの前記中間リブから離れている第1および第2のショルダリブと、を有する5つの周方向リブを有する対称的なタイヤのトレッドを有し、
前記第1および第2の中間グルーブが、前記第1および第2のショルダグルーブの実質的に同等の軸線方向の幅よりも広い実質的に同等の軸線方向の幅を有し、前記中央リブが、前記第1および第2の中間リブおよび前記第1および第2のショルダリブの実質的に同等の軸線方向の幅よりも広い軸線方向の幅を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項9】
前記中央リブの軸線方向の幅は、トレッド全体の軸線方向の幅の19%〜20%の範囲内であることを特徴とする、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
各々の前記中間リブの軸線方向の幅は、前記トレッド全体の軸線方向の幅の12%〜13%の範囲内であることを特徴とする、請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
各々の前記中間グルーブの軸線方向の幅は、トレッド全体の軸線方向の幅の5%〜7.5%の範囲内であることを特徴とする、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項12】
各々の前記ショルダグルーブの軸線方向の幅は、前記トレッド全体の軸線方向の幅の2%〜3.5%の範囲内であることを特徴とする、請求項11に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記中央リブの軸線方向の幅は、前記トレッド全体の軸線方向の幅の19.25%〜19.75%の範囲内であることを特徴とする、請求項12に記載のタイヤ。
【請求項14】
各々の前記中間リブの軸線方向の幅は、前記トレッド全体の軸線方向の幅の6%〜6.5%の範囲内であることを特徴とする、請求項13に記載のタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−60188(P2013−60188A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198295(P2012−198295)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【出願人】(590002976)ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー (256)
【氏名又は名称原語表記】THE GOODYEAR TIRE & RUBBER COMPANY
【住所又は居所原語表記】1144 East Market Street,Akron,Ohio 44316−0001,U.S.A.