説明

低純度水からの高純度水の製造方法及び製造装置

【課題】本発明に係る低純度水から高純度水の製造方法は、海水を用いてガスハイドレートを経由して淡水を得る技術の問題点を究明し、その解決を図り、それを基にして、海水に限定せず、汚水を含めた低純度水から高純度水を得る。
【解決手段】ガスハイドレートを形成することのできる一種若しくは二種以上のガスと低純度水とを、低純度水の氷点より高い温度であって且つガスハイドレートを形成する条件下で接触させて、低純度水に懸濁する固体のガスハイドレートを得る工程と、ガスハイドレート状態を実質的に維持しつつ、ガスハイドレート形成過程で用いた低純度水を脱水し、ガスハイドレートに付着する成分を洗浄水で洗浄する工程と、ガスハイドレート状態よりも高温あるいは低圧にすることにより、ガスハイドレートをガスと高純度水にする工程と、をこの順序で行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低純度水からの高純度水の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的に真水が不足している。他方、地球上には海水、汚水など、不純物の多い水は十分にある。このような低純度水から真水のような高純度水を得ることは強く要望されている中で、海水からの淡水化については、幾つかの技術が知られているが、いずれも技術的に難がある。
【0003】
海水の淡水化技術としては、熱源を用いて海水を加熱して蒸気を取り出し、その蒸気を冷却して淡水を得る蒸発法と、膜を用いて海水中の塩分を分離する膜法、その他の技術がある。
【0004】
このうち、蒸発法は、水を蒸発させるために大量の熱が必要であり、また、高温海水による装置の腐食という問題がある。
【0005】
また、膜法は耐塩性、耐久性に優れ且つ海水中の塩分を通さない半透膜としての材料に難点があるとともに、海水を逆浸透膜モジュールに入れる前に、通常6〜7MPaの圧力まで加圧する必要があるという欠点が存在する。
【0006】
その他の技術としては、例えば、凍結法、太陽熱利用法、ガスハイドレート法(特開平11−319805号公報)があるが、まだ開発段階にあり、飲料水として実用化されたとの情報は得られていない。
【0007】
ここでガスハイドレートとは、クラスレートハイドレートとも呼ばれ、水分子がその水素結合により形成する籠状の結晶格子の中に、ハイドレート形成ガス分子が取り込まれたガス水和物であり、一定の温度と圧力の条件下で形成される氷状固体包接物である。
【0008】
ここでガスハイドレートの形成する温度が低いほど圧力は低く済むものの、水の氷点以下の温度では水が氷になることでハイドレートの形成速度が水の場合と比べ遅い。そこで、氷点温度が−4℃に下げられる海水を用いて、海水の氷点温度より少し高い温度でハイドレートを形成する。即ち、このような条件でハイドレートを形成するようなガスを選択して、ハイドレートを作り、ハイドレートの籠状結晶を構成する分子が純粋な水であることを利用して、ハイドレートから淡水を得ようとするものである。
【0009】
ところが、この技術は今に至っても実用化されていない。着想としては素晴らしいのであるが、工業化に至り得ない問題がある。
【0010】
また、E.Dendy Sloan Jr. Clathrate Hydrate of Natural Gases Third Edition 2007の中で幾つかの淡水化技術が挙げられているが、これも実用化に到っていない。この中には15年にわたって海水からの淡水化を研究している報告もあり、その困難さが明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−319805号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】E.Dendy Sloan Jr. Clathrate Hydrate of Natural Gases Third Edition 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、海水を用いてガスハイドレートを経由して淡水を得る技術の問題点を究明し、その解決を図り、それを基にして、海水に限定せず、汚水を含めた低純度水から高純度水を得ることにある。
【0014】
それとともに、飲料水として使用可能なレベルの水を得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下の諸知見を基にしてなされたものである。すなわち、特許文献1を追試してみたところ、塩分濃度が若干低下した程度の水に過ぎず、飲料水として使用できるものではなく、淡水化を多段階で行なっても同様であることが分かった。
【0016】
尚、本発明でいう、「低純度水」とは、海水とか汚水のような不純物の多い水を意味し、「高純度水」とは低純度水より純度の高い水という意味で用いており、高純度水が真水のような飲料水に限定されるものではない。
【0017】
また、既述の先行技術においては、海水に対するものとして淡水という表現を用いているが、本発明では海水の淡水化に限定されない。淡水の代わりに高純度水という表現を用いている。海水の淡水化に限れば、淡水と高純度水とは同じ意味である。
【0018】
本発明は、長年、ガスハイドレートから得られる水についての基礎的研究から得られたものである。ガスハイドレートは結晶成長で数百ミクロン程度の大きさになるが、そこまで行かないものもある。
【0019】
一方、ガスハイドレートの籠状結晶の集まりからなる結晶構造について、I型の場合、一辺の大きさが12Åの立方晶系であり、II型の場合、一辺の大きさが17.3Åの立方晶系であり、H型の場合、aが12.3Å、cが10.2Åの六方晶系である。
【0020】
したがって、ガスハイドレートは、このような結晶構造の集まりになっているわけである。仮に、ガスハイドレートが直径50ミクロンの球として、結晶の大きさを15Åの立方晶系と仮定すると、少なくとも何兆個もの結晶が存在することになる。
【0021】
結晶の中には当然ながら、水分子とガスしか存在してなく、結晶の外側に塩分がはじき出される。結晶成長が比較的ゆっくり行われれば、塩分の析出は外側に析出されていくものの、急激な結晶成長であれば、微結晶の間に塩分が残される可能性は否定できない。
【0022】
一方、ガスハイドレートの内部にある塩分を洗浄で洗い出すことは至難の業である。しかしながら、発明者が検討したところによれば、ガスハイドレートを十分に洗浄すれば、飲料水として使用可能な程度の高純度の水が得られることが分かった。これに対して、先行技術での洗浄は甚だ不十分であり、洗浄方法さえ適切なものを採用すれば、飲料水として使用可能な程度の高純度の水が得られる。
【0023】
さらに、低純度水から飲料水になり得る程度の高純度水を得るのには、高純度水で洗浄する必要があるが、洗浄に用いる高純度水を得られる高純度水より少なくする必要がある。この要請に応えつつ、上記知見を基に、本発明者らは、下記発明をなすに至った。
【0024】
(1)第1の低純度水から高純度水の製造方法は、ガスハイドレートを形成することのできる一種若しくは二種以上のガスと低純度水とを、低純度水の氷点より高い温度であって且つガスハイドレートを形成する条件下で接触させて、低純度水に懸濁する固体のガスハイドレートを得る工程と、ガスハイドレート状態を実質的に維持しつつ、ガスハイドレート形成過程で用いた低純度水を脱水し、ガスハイドレートに付着する成分を洗浄水で洗浄する工程と、ガスハイドレート状態よりも高温あるいは低圧にすることにより、ガスハイドレートをガスと高純度水にする工程と、をこの順序で行なうことを特徴としている。
【0025】
本発明の低純度水から高純度水の製造方法によれば、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水より数倍以上の量の、飲料水として使用可能な程度の高純度水が得られる。また、その過程で得られる排水は農業用水、工業用水、生活用水等として使用可能である。
【0026】
(2)第2の低純度水から高純度水の製造方法は、ガスハイドレートに付着する成分を洗浄する工程における洗浄水が、始めは低純度水であり、徐々に若しくは順次、純度の高い水を用いることを特徴としている。
【0027】
本発明の低純度水から高純度水の製造方法によれば、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水の使用がより一層抑制され、飲料水として使用可能な程度の高純度水が得られる。
【0028】
(3)第3の低純度水から高純度水の製造方法は、ガスハイドレートに付着する成分を低純度水で洗浄する工程が、新たな低純度水とガスハイドレートとの攪拌工程と、低純度水に懸濁するガスハイドレート中の低純度水を排出する工程とを有するとともに、この2工程が一回若しくは繰り返しなされることを特徴としている。
【0029】
本発明の低純度水から高純度水の製造方法によれば、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水の使用がより一層抑制され、飲料水として使用可能な程度の高純度水が得られる。
【0030】
(4)第4の低純度水から高純度水の製造方法は、ガスハイドレートに付着する成分を洗浄する工程における洗浄水の最終段階での高純度水での洗浄が、ガスハイドレートを網目状基板上に堆積させ、若しくは下方から送り込むとともに、高純度水をガスハイドレートの上から流しつつ、高純度水より比重の軽いガスハイドレートが水の浮力により浮くことを利用して上層のガスハイドレートを洗浄の場から除くことを特徴としている。
【0031】
本発明の低純度水から高純度水の製造方法によれば、ガスハイドレートが水より比重の軽い場合においては、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水の使用がより一層抑制され、飲料水として使用可能な程度の高純度水が得られる。
【0032】
(5)第5の低純度水から高純度水の製造方法は、ガスハイドレートに付着する成分を洗浄する工程における洗浄水の最終段階での高純度水での洗浄が、網目状基板上に薄板状にガスハイドレートを敷き、上から高純度水による噴霧をし、洗浄後の高純度水を網目状基板の網目より排水させることを特徴としている。
【0033】
本発明の低純度水から高純度水の製造方法によれば、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水の使用がより一層抑制され、飲料水として使用可能な程度の高純度水が得られる。
【0034】
(6)第6の低純度水から高純度水の製造方法は、低純度水が海水であることを特徴としている。
【0035】
本発明の低純度水から高純度水の製造方法によれば、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水より数倍以上の量の、飲料水として使用可能な程度の高純度水が海水より得られる。
【0036】
(7)第7の低純度水から高純度水の製造方法は、低純度水が汚水であることを特徴としている。
【0037】
本発明の低純度水から高純度水の製造方法によれば、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水より数倍以上の量の、飲料水として使用可能な程度の高純度水が汚水より得られる。
【0038】
(8)第1の低純度水から高純度水の製造装置は、ガスハイドレートの原料の供給手段と、ガスハイドレートの原料をガスハイドレート形成条件下でガスハイドレートを形成するガスハイドレート形成槽と、ガスハイドレート形成槽と兼用若しくは別個に用意され、ガスハイドレート形成時に用いられた低純度水を脱水し、形成されたガスハイドレートを洗浄水で洗浄する洗浄槽と、洗浄されたガスハイドレートがそれまで保持していたガスハイドレート状態よりも、高温又は低圧にして高純度水を得るガスハイドレート分解槽と、を備えてなることを特徴としている。
【0039】
本発明の低純度水から高純度水の製造装置によれば、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水より数倍以上の量の、飲料水として使用可能な程度の高純度水が得られる。
【0040】
(9)第2の低純度水から高純度水の製造装置は、洗浄槽が、形成されたガスハイドレートを低純度水で洗浄する洗浄槽と、低純度水で洗浄されたガスハイドレートを高純度水で洗浄する洗浄装置と、を備えてなることを特徴としている。
【0041】
本発明の低純度水から高純度水の製造装置によれば、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水の使用がより一層抑制され、飲料水として使用可能な程度の高純度水が得られる。
【0042】
(10)第3の低純度水から高純度水の製造装置は、ガスハイドレートを高純度水で洗浄する洗浄装置が、ガスハイドレートを網目状基板上に堆積させ、若しくは下方から送り込むとともに、高純度水をガスハイドレートの上から流しつつ、高純度水より比重の軽いガスハイドレートを洗浄槽の側壁上方に設けられた排出口よりガスハイドレートを単独または水とともにガスハイドレート分解槽に移送することを特徴としている。
【0043】
本発明の低純度水から高純度水の製造装置によれば、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水の使用がより一層抑制され、飲料水として使用可能な程度の高純度水が得られる。
【0044】
(11)第4の低純度水から高純度水の製造装置は、ガスハイドレートを高純度水で洗浄する洗浄装置が、網目状基板上に薄板状にガスハイドレートを敷き、上から高純度水による噴霧をし、洗浄後の高純度水を網目状基板の網目より排水させることを特徴としている。
【0045】
本発明の低純度水から高純度水の製造装置によれば、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水の使用がより一層抑制され、飲料水として使用可能な程度の高純度水が得られる。
【0046】
(12)第5の低純度水から高純度水の製造装置は、網目状基板がベルトコンベア式になっていることを特徴としている。
【0047】
本発明の低純度水から高純度水の製造装置によれば、連続的に高純度水が得られる。
【0048】
(13)第6の低純度水から高純度水の製造装置は、洗浄槽が洗浄槽の下方に攪拌羽根と攪拌軸とを有し、洗浄槽の上方中心部に漏斗部、漏斗下部から洗浄槽側壁より次工程に連通する連通口とを有し、攪拌により洗浄されたガスハイドレートは漏斗の上端から漏斗、連通口を通じて次工程に移ることを特徴としている。
【0049】
本発明の低純度水から高純度水の製造装置は、ガスハイドレート形成条件を実質的に維持する条件下で、形成されたガスハイドレートがスムーズに移行させることができる。
【0050】
(14)第7の低純度水から高純度水の製造装置は、ガスハイドレートを形成する原料ガスが送入される内管と形成されたガスハイドレートを通す外管よりなり、深海まで到達する長さを有し、内管先端付近には内管と外管との間へガスが抜ける穴を有するとともに外筒先端に海水を通す多孔膜があり、先端部でガスハイドレートが形成される二重管と、ガスハイドレート形成時に用いられた海水を脱水し、形成されたガスハイドレートを洗浄水で洗浄する洗浄槽と、洗浄されたガスハイドレートを、それまで保持していたガスハイドレート状態よりも高温又は低圧にすることにより高純度水を得るガスハイドレート分解槽と、を備えてなることを特徴としている。
【0051】
本発明の低純度水から高純度水の製造装置によれば、ガスハイドレートを海中で形成させることができる。
【0052】
(15)第8の低純度水から高純度水の製造装置は、洗浄槽が、形成されたガスハイドレートを低純度水で洗浄する洗浄槽と、低純度水で洗浄されたガスハイドレートを高純度水で洗浄する洗浄装置と、を備えてなることを特徴としている。
【0053】
本発明の低純度水から高純度水の製造装置によれば、ガスハイドレートを海中で形成させることができるとともに、製造に使用する飲料水として使用可能な程度の高純度水の使用がより一層抑制され、飲料水として使用可能な程度の高純度水が得られる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、海水とか汚水などの低純度水から飲料水になり得る程度、数値でいえば100ppm以下の不純物に抑えられる高純度水が工業的に得られる。ちなみに平均的な水道水は40〜200ppmであり、名水の天然水・湧水、理想的な飲料水は39ppm以下である。また、その過程で得られる排水は農業用水、工業用水、生活用水等として使用可能である。しかも、適切に行う限り、本発明に用いた洗浄水に対し、飲料用水として使用可能な高純度水の量は数倍以上得られる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を実施する一形態を示す半図解式縦断面図である。
【図2】本発明を実施する別の一形態を示す半図解式縦断面図である。
【図3】本発明を実施するさらに別の一形態を示す半図解式縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の製造方法について説明する。本発明の製造方法では、ガスハイドレートを公知の方法により得る。
【0057】
ガスハイドレートを得るのには、ガスハイドレートを形成することのできる一種若しくは二種以上のガスと低純度水とを、低純度水の氷点より高い温度であって且つガスハイドレートを形成する条件下で接触させることによって得ることができる。
【0058】
ガスハイドレートは、よく知られているように、ガスハイドレートの構造がI型とII型の場合、ハイドレート相と氷相と水相とガス相の4重点(Q)と、ハイドレート相と水相と液化ガス相とガス相の4重点(Q)との間における温度と圧力で形成される。
【0059】
ガスハイドレートの構造がH型の場合には、ハイドレート相と氷相と水相とガス相と炭化水素の液体相の5重点(Q)と、H型ハイドレート相と氷相と水相とガス相と炭化水素の液体相の5重点(Q)との間における温度と圧力で形成される。
【0060】
したがって、ガスの選択に伴い、ガスハイドレートを形成する温度と圧力が制限される。より正確に言えば、これら4重点(QとQ)の間、あるいは5重点(QとQ)の間の平衡温度より過冷却な温度でガスハイドレートが形成される。本発明でいうガスハイドレートの形成条件とは、このような過冷却状態を指す。また、ガスハイドレートの形成は、発熱反応であるので、この点からも過冷却にする必要がある。
【0061】
また、ある種のガスについては、常圧で安定なガスハイドレート構造をとる温度が知られている(例えば、非特許文献の表2.5)。
【0062】
また、通常、水の存在下において、ガスハイドレートの形成は低温ほど低圧力で形成できるが、水が固体になる条件下では反応速度が遅くなるので、水の氷点以下では実用的ではない。この点から、海水は塩水であるので、氷点降下が起き、ガスハイドレードの形成条件は塩分のない水に較べて、広く選択可能である。
【0063】
この点から、海水を水の原料として用いる場合には、海水の氷点より高く、且つ圧力が低い条件でガスハイドレートができるガスが好適である。具体的には5MPa以下、中でも3MPa以下、特に好ましくは2MPa以下でガスハイドレートを形成するガスが装置コストの面から用いられる。
【0064】
このような観点から、ブタン、イソブタン、プロパン、シクロプロパン、テトラヒドロフラン、プロピレン、塩素、CHCHF、CHCClFなどは非常に低い圧力でガスハイドレートができる点で好ましい。尚、ガスは循環して使えるので、コストをあまり考慮する必要がない。
【0065】
得られたガスハイドレートの物性面から考えると以下のようなことが云える。先ず、ガスハイドレートの粒径は海水との分離性、輸送の容易性から粒径の大きいものが好ましい。例えば、メタンハイドレートの平均粒径は50〜150μmであり、この点で好ましい。
【0066】
また、ガスハイドレート中のゲスト分子であるガスの占める割合よりも、ホスト分子である水の占める割合が多い方が当然ながら好ましい。
【0067】
また、ある種のガスハイドレート、例えば、メタンとか炭酸ガスのハイドレートにおいては、ハイドレートの安定領域を超えた条件下である期間、特異な自己保存(Anomalous Self-Preservation)が観察される。
【0068】
メタンについていえば、ガスハイドレートの特異な保存状況(Anomalous preservation regime)から外れても、280°Kで約10分程度はガスハイドレートの50%のものがガスハイドレート状態を維持する(非特許文献1の図3.36参照)ので、圧力を常圧にして、処理をすることができるという操作上の容易性を有する。この点でメタンとか炭酸ガスなどの特異的な自己保存現象が観察されるガスは効果的なものとして挙げられる。
【0069】
ガスハイドレートはガスを結晶核として結晶生成を起こすが、本発明においては、できるだけガスハイドレートの大きさが大きいほど、洗浄効率が良いので、結晶成長を促進させることが好ましい。結晶成長を促進させる上で、水スプレー方式よりも気液攪拌方式の方が好ましい。なお、ガスはガスハイドレートを形成しないガスが包含されていても差し支えなく、ガスハイドレートを形成することのできるガスは一種であっても、二種以上であってもよい。
【0070】
ガスハイドレート形成過程で用いられた、例えば海水のような、低純度水は、ガスハイドレートの外壁に析出した不純物により、かなりの程度、高濃度の不純物を溶解している。したがって、ガスハイドレートを形成した後、ガスハイドレート形成過程で用いられた低純度水は脱水される。その際、ガスハイドレート状態を実質的に維持しつつなされる。
【0071】
次に、本発明の製造方法は、前記ガスハイドレート状態を実質的に維持しつつ、ガスハイドレートに付着する成分を洗浄する。
【0072】
洗浄水としては、始めは低純度水であり、徐々に若しくは順次、純度の高い水を用いるのが好ましい。低純度水が海水の場合、最初は海水(平均的には3.5%程度の塩分濃度)を洗浄水とし、次いで2000ppm程度の塩水を洗浄水とし、最後に50ppm程度の塩水を洗浄水とするのが一例である。その場合でも、最初は低純度水を用いてできる限り、ガスハイドレート形成体の外壁に付着する塩分を除くのが望ましい。
【0073】
原理的には、洗浄水が低純度水(海水)であれば、海水による洗浄により、ガスハイドレート外壁に付着する塩分は、海水の塩分濃度程度にまで下げることが可能である。そのようなレベルにするのには、ガスハイドレートと低純度水との両方が流動する攪拌とかガスハイドレートがほぼ固定されていて低純度水が例えば、噴霧、流水のような流動状態になることが必要であって、これによってガスハイドレート形成体の外壁に付着する成分が除かれる。
【0074】
液を交換することなく、攪拌させたのでは液中の濃度が高まってしまい、効率的でないので、攪拌後の液を攪拌槽から排出させ、新たな低純度水を攪拌槽に導入し、攪拌するという過程を繰り返すのがよい。このような洗浄で、低純度水の不純物濃度より若干高い濃度の不純物が付着したままの状態となったガスハイドレートが得られる。
【0075】
洗浄により、ガスハイドレート構造をできるだけ残しながらガスハイドレートに付着する成分をできるだけ除去する。ガスハイドレート構造を残すためには、洗浄過程における温度、圧力は依然として平均的にはガスハイドレート状態を実質的に維持する条件下に置かれるべきであるが、ガスハイドレートに付着する成分を除去する洗浄水の温度は、水の溶解性を高めるべく、高い温度が好まれる。
【0076】
両者のバランスの中で、洗浄水の温度は選択される。ガスハイドレート状態を実質的に維持する条件下とは、メタンとか炭酸ガスなどが示す特異な保存状況も包含するため、本発明において、「ガスハイドレート状態を実質的に維持」とは、洗浄水とガスハイドレートを混合する過程で洗浄水の熱でガスハイドレートが部分的に壊れることは勿論、50%程度までガスハイドレートが壊れる状態までを意味する。この意味で、前述の特異的な自己保存現象が観察されるガスは、洗浄工程の要する時間によっては当初から、場合によっては途中から、そのような特異的な自己保存現象が観察される条件で洗浄を行うことが可能であり、利便性が高い。
【0077】
また、このような観点から、ガスハイドレートを形成するゲスト分子としてはQが高いものとか、Qがない場合、若しくは知られていない場合には、低圧且つ0℃以上の温度でガスハイドレートを形成するものが好適である。
【0078】
前者の場合には、好ましくは2℃以上、より好ましくは3℃以上、特に好ましくは5℃以上でガスハイドレートを形成するものが用いられ、後者の場合には、好ましくは5MPa以下、より好ましくは3MPa以下、特に好ましくは1MPa以下でガスハイドレートを形成するものが用いられる。
【0079】
そのようなものを例示すると、塩素(QのT=28.3℃、P=0.84MPa)、炭酸ガス(QのT=9.9℃、P=4.44MPa)、エチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、シクロプロパン(QのT=16.21℃、P=0.559MPa)、CHCHF(QのT=14.90℃、P=0.430MPa)、CHCClF(QのT=13.09℃、P=0.229MPa)、C(QのT=5.8℃、P=0.556MPa)、HS(QのT=29.7℃、P=2.239MPa)、C(QのT=14.8℃、P=3.39MPa)が挙げられる。中でも低圧で可能な、塩素、シクロプロパン、CHCHF、CHCClF、Cや、上述の特異的な自己保存が観察されるメタン、炭酸ガスが特に好ましい。
【0080】
次に、前記ガスハイドレート形成条件を実質的に維持しつつ、ガスハイドレートに付着する成分を高純度水で洗浄するのが好ましい。ここで高純度水としては、いきなり、不純物が100ppm以下のような水を用いるのではなく、徐々に若しくは順次、純度の高い水を使用して洗浄するのがよい。
【0081】
このようにすることで、洗浄後の水を有効利用することが可能であるとともに、純度の高い水を少量使って、飲料水として使用可能な高純度水を大量に得ることが可能である。
【0082】
洗浄方法も、低純度水以外の水を用いるときには、攪拌よりも、洗浄水の使用量を少なくする洗浄方法が必要である。その一つの方法としては、ガスハイドレートを網目状基板上に堆積させ、若しくは下方から送り込むとともに、高純度水をガスハイドレートの上から流しつつ、高純度水より比重の軽いガスハイドレートが水の浮力により浮くことを利用して上層のガスハイドレートを洗浄の場から除く方法である。この場合、高純度水は噴霧状のように細かい水滴状にしてガスハイドレートに均一に洗い流す方式が好ましい。また、別の方法としては、網目状基板上に薄板状にガスハイドレートを敷き、上から高純度水による噴霧をし、洗浄後の高純度水を網目状基板の網目より排水させる方法が挙げられる。また下方から送り込む方式の場合には、先に洗浄に用いた水とともに送り込み、その浮力を利用するのがよい。
【0083】
次に、ガスハイドレート状態の温度或いは圧力を、より高温あるいは低圧にすることにより、ガスハイドレートをガスと高純度水にする。ガスは循環使用してもよいし、環境に差し支えなければ、大気中に放出してもよい。
【0084】
次に本発明製造装置の好適な態様について、添付図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明を実施する一形態を示す半図解式縦断面図である。ここでは低純度水として、海水の場合で説明する。
【0085】
ガスハイドレートを形成する原料である海水は、海水貯蔵タンク1から、あるいは直接、定量ポンプ2を経由して、必要に応じて、クーラー3で冷却されてガスハイドレート形成槽4へ送られる。例えば、シクロプロパンをガスハイドレートの原料とする場合には、2.8℃、常圧で安定なガスハイドレートが得られる(非特許文献1の表2.5参照)ので、製造する場所、季節によってはクーラー3を不要とする。また、塩素をガスハイドレートの原料とする場合には、9.7℃、常圧で安定なガスハイドレートが得られる(非特許文献1の表2.5参照)ので、これまた、製造する場所、季節によってはクーラー3を不要とする。しかも、塩素であるから、得られた水の殺菌も併せて行える効果もある。
【0086】
また、ガスハイドレートを形成するもう一つの原料であるガスは、ガスボンベ5から、必要に応じて、コンプレッサー6を経由して、クーラー7で冷却されてガスハイドレート形成槽4へ送られ、ガスハイドレート形成槽4の下方に設けられたガス噴出管8から噴出する。
【0087】
ガスハイドレート形成槽4でガスハイドレートが形成できる温度と圧力の条件下に置かれ、攪拌手段9でガスと海水が攪拌混合されてガスハイドレートが形成される。
【0088】
ガスハイドレートが形成されてくると、ガスハイドレートは海水と比重が異なるので、その違いにより分離することができる。例えば、メタンガスハイドレートの場合には0.94であり、海水より比重が小さいので、ガスハイドレート形成槽4の中で海水の表面に浮上してくる。これに対し、ジメチルペンタンの場合には1.291(計算値)であり、逆に海水より比重が大きいので、沈む。この違いに応じて対応していく必要がある。
【0089】
海水より比重が小さい場合には、形成されたガスハイドレートは海水とともに、ガスハイドレート形成槽4から次の工程である、ガスハイドレートに付着する塩分を低純度水(海水)で洗浄する、洗浄槽10に連通口11を経由して移される。
【0090】
逆に、海水より比重が大きい場合には、海水とガスハイドレートとの分離は遠心分離で除き、次の処理に用いられる液と混合されて次の処理槽に移される。この方法は海水より比重が小さい場合でも採用できる方法である。
【0091】
生成したガスハイドレートを低純度水で洗浄する洗浄槽10には、攪拌手段13の他に、攪拌後の低純度水の排出口14と、新たな低純度水の取入口15とを有する。
【0092】
ガスハイドレート形成槽4でのガスハイドレート形成過程において攪拌されている場合、ガスハイドレート表面に析出する塩分をある程度溶解しているので、ガスハイドレート形成過程での海水はかなりの塩分濃度であり、さらに塩分を溶解する余力は乏しいので、洗浄槽10において、ガスハイドレート形成過程での海水が同伴されている場合には、ガスハイドレート状態を実質的に維持する条件下で排出口14からこの海水のみを排出させる。
【0093】
排出口14を閉じ、低純度水(海水)を取入口15から取り入れ、ガスハイドレート表面に析出している塩分を、低純度水(海水)でできる限り、溶解させるべく、攪拌した後、攪拌混合で塩分が高濃度になった低純度水を排出口14から排出し、また新たな低純度水を取り入れて攪拌することを繰り返す。攪拌の代わりに流水で洗浄してもよい。無論、これらの操作はガスハイドレート状態を実質的に維持する条件下でなされる。
【0094】
攪拌混合しても塩分濃度の上昇が認め難くなったところで、ハイドレートを海水とともにボール弁16より、次の工程である、中純度水で洗浄する洗浄装置17へ移す。
【0095】
中純度水で洗浄する洗浄装置17は、ベルトコンベアとして回転する網目状基板18と、中純度水噴霧装置19と、連通管20と、排出口21とよりなる。ここで中純度水とは、低純度水より純度が高い水であるが、後述の高純度水より純度の低い水であるという意味で用いている。
【0096】
中純度水としては、後述の、純度の高い高純度水で洗浄した後の排液が通常そのまま使用されるが、必要に応じ、本発明で得られた高純度水の一部や低純度水をさらに混ぜた混合液が混合槽22で作られる。
【0097】
ボール弁16より中純度水で洗浄する洗浄装置17へ洗浄液とともに移されたガスハイドレートは、ベルトコンベアとして回転する網目状基板18上に敷かれる。必要に応じ、網目状基板18を振動させることで、ガスハイドレートは薄板状にほぼ均一に網目状基板18上に敷かれる。
【0098】
ガスハイドレートはその上から中純度水噴霧装置19より噴霧される中純度水により洗浄され、ベルトコンベアの端から連通管20を経由し高純度水で洗浄する洗浄装置23に移される。他方、洗浄に用いた液は排出口21より排出される。中純度水で洗浄する洗浄槽17のこれらの操作も、ガスハイドレート状態を実質的に維持しつつある条件下でなされる。
【0099】
高純度水で洗浄する洗浄装置23は、中純度水噴霧装置19と同様に、ベルトコンベアとして回転する網目状基板24と、高純度水噴霧装置25と、連通管26と、排出口27とよりなる。ここで高純度水とは、製造される高純度水と同程度の純度の高い水である。
【0100】
連通管20により高純度水で洗浄する洗浄装置23に移ったガスハイドレートは、ベルトコンベアとして回転する網目状基板24上に落下する。必要に応じ、網目状基板24を振動させることで、ガスハイドレートは薄板状にほぼ均一に網目状基板24上に敷かれる。ガスハイドレートはその上から高純度水噴霧装置25より噴霧される高純度水により洗浄され、ベルトコンベアの端から連通管26を経由しガスハイドレート分解槽28に移される。
【0101】
他方、洗浄に用いた液は網目状基板24の網目より排出されて、高純度水で洗浄する洗浄装置23の底に溜まり、排出口27よりポンプで揚水されて混合槽22に移され、攪拌装置29により、洗浄液中の塩分濃度を均一化した上で、中純度水で洗浄する洗浄装置17の洗浄液の原料になる。
【0102】
ガスハイドレート分解槽28ではガスハイドレート条件から外すことにより、ガスハイドレートを分解させることができる。
【0103】
具体的にはガスハイドレートをガスと水に分解することが可能な温度、圧力条件下に置かれる。得られた水は淡水タンク24へ移され、ガスは図示していないが、環境を汚さないものであれば、放出してもよいし、循環使用されてもよい。循環使用する場合にはガスボンベ5は不要であり、ガスの排気口からコンプレッサーを経由してクーラー7に戻される。
【0104】
ガスハイドレートの比重が1より小さい場合には、洗浄槽としては、図2に示すような構造のものであってもよい。洗浄槽10,17が、洗浄槽の下方に攪拌羽根31と攪拌軸32とを有し、洗浄槽の上方中心部に漏斗部33、漏斗下部34から洗浄槽側壁より次工程に連通する連通口35とを有し、攪拌により洗浄されたガスハイドレートは漏斗の上端から漏斗、連通口を通じて次工程に移るようにしてもよい。以上の説明では、ガスハイドレート形成槽4と、ガスハイドレートに付着する塩分を低純度水で洗浄する洗浄槽10を別々にする場合であるが、洗浄槽10は形成槽4と兼用してもよい。
【0105】
上記説明は陸上においてガスハイドレートを形成させる例で述べたが、ガスハイドレートの形成を海中で行なってもよい。その装置を図3に基づいて説明する。図3は、深海に送り込まれたガスハイドレート形成管100の先端部を示す半図解式縦断面図である。ここで本発明で「深海」とは、海水温度が10℃以下の所を指す。その深さは当然ながら緯度によって異なる。
【0106】
海水温度が低いほど、ガスハイドレート形成条件に必要とされる温度にまで冷却に要する温度は少なくて済むが、反面、水深が大きなものになるので、送入ガスの圧力もそれに応じて大きくなるから、その得失で適宜の深さが選択される。深海に送り込まれたガスハイドレート形成管100は、内管101と外管102の二重管となっている。このうち、外筒102は深海まで到達する長さを有し、外筒102の先端には海水を通す多孔膜104がある。
【0107】
また、内管101は、ガスハイドレートを形成する原料ガスの加圧貯蔵タンク(図示せず)より、ガスハイドレートを形成する原料ガスがガスハイドレート形成管100の先端部に向けて送入される。
【0108】
ここで、内管101の先端付近には内管から外筒との間へガスが抜ける孔103を複数有する。多孔膜104からは海水が高い圧力で外筒102と内管101の間の空間105に入り込んでくる。
【0109】
他方、内管101からはガスが孔103から空間105に入り込んでくる。この空間105の圧力、温度がガスハイドレートの形成条件にあれば、ガスハイドレートが形成される。即ち、この空間105はガスハイドレート形成場である。このような観点から温度はある程度低い海水が好都合である。
【0110】
形成されたガスハイドレートは多孔膜104から浸入してくる海水の圧力と内管から孔103を通じて浸入してくるガスにより、内管101と外筒102の間の空間を通って上方に向かって浮上する。次いで、ガスハイドレートは海水に同伴されて、低純度水で洗浄する洗浄槽8へ送られる。これ以後は先に説明したものと同様であるので、説明を省略する。
【0111】
以上の説明はいずれも海水で行なったが、汚水の場合でも同様に適用できる。汚水の場合は含まれているものが塩分以外のものもあり、それらがガスハイドレート外壁に付着しているので、それらをできるだけ除去する手段を適宜選択する必要がある。その中で水溶性の成分については海水の場合と同様な方法が採用できる。
【0112】
一般的にいえば、フィルターなどで除けるものはフィルターで除いた後、タンク1の中で相分離するものは静置あるいは遠心分離などの方法により水溶性成分を含む水相と、油性成分を含む油相に分離し、水相については海水の場合と同様な方法が採用される。これに対し、有機物など非水溶性のものを含む油相は、例えば燃料にするとか、特定成分が燃料以外の用途に有用である場合には、それ以外を吸着剤などの手段を用いて除くなどの方法がとられる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明によれば、海水、汚水などの低純度水から飲料水になり得る程度の高純度水を得ることができる。その過程で得られる排水は農業用水、工業用水、生活用水等として使用可能である。その製造工程で使われるガスは再利用することができ、環境への負荷もない。
【符号の説明】
【0114】
1・・・海水貯蔵タンク
2・・・定量ポンプ
3・・・クーラー
4・・・ガスハイドレート形成槽
5・・・ガスボンベ
6・・・コンプレッサー
7・・・クーラー
8・・・ガス噴出管
9・・・攪拌手段
10・・・低純度水で洗浄する洗浄槽
11・・・連通口
13・・・攪拌手段
14・・・攪拌後の低純度水の排出口
15・・・新たな低純度水の取入口
16・・・ボール弁
17・・・中純度水で洗浄する洗浄装置
18・・・ベルトコンベアとして回転する網目状基板
19・・・中純度水噴霧装置
20・・・連通管
21・・・排出口
22・・・混合槽
23・・・高純度水で洗浄する洗浄装置
24・・・ベルトコンベアとして回転する網目状基板
25・・・高純度水噴霧装置
26・・・連通管
27・・・排出口
28・・・ガスハイドレート分解槽
29・・・攪拌装置
30・・・淡水タンク
31・・・攪拌羽根
32・・・攪拌軸
101・・・内管
102・・・外筒
103・・・孔
104・・・多孔膜
105・・・空間(ガスハイドレート形成場)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスハイドレートを形成することのできる一種若しくは二種以上のガスと低純度水とを、低純度水の氷点より高い温度であって且つガスハイドレートを形成する条件下で接触させて、低純度水に懸濁する固体のガスハイドレートを得る工程と、ガスハイドレート状態を実質的に維持しつつ、ガスハイドレート形成過程で用いた低純度水を脱水し、ガスハイドレートに付着する成分を洗浄水で洗浄する工程と、ガスハイドレート状態よりも高温あるいは低圧にすることにより、ガスハイドレートをガスと高純度水にする工程と、をこの順序で行ない、
前記洗浄水は、ガスハイドレート状態を実質的に維持しつつ、ガスハイドレートの外壁に付着した不純物を除去できる条件に置かれていることを特徴とする低純度水から高純度水の製造方法。
【請求項2】
ガスハイドレートに付着する成分を洗浄する工程における洗浄水が、始めは低純度水であり、徐々に若しくは順次、純度の高い水を用いることを特徴とする請求項1に記載の低純度水から高純度水の製造方法。
【請求項3】
ガスハイドレートに付着する成分を低純度水で洗浄する工程が、新たな低純度水とガスハイドレートとの攪拌工程と、低純度水に懸濁するガスハイドレート中の低純度水を排出する工程とを有するとともに、この2工程が一回若しくは繰り返しなされる請求項2に記載の低純度水から高純度水の製造方法。
【請求項4】
ガスハイドレートに付着する成分を洗浄する工程における洗浄水の最終段階での高純度水での洗浄が、ガスハイドレートを網目状基板上に堆積させ、若しくは下方から送り込むとともに、高純度水をガスハイドレートの上から流しつつ、高純度水より比重の軽いガスハイドレートが水の浮力により浮くことを利用して上層のガスハイドレートを洗浄の場から除く請求項2または3に記載の低純度水から高純度水の製造方法。
【請求項5】
ガスハイドレートに付着する成分を洗浄する工程における洗浄水の最終段階での高純度水での洗浄が、網目状基板上に薄板状にガスハイドレートを敷き、上から高純度水による噴霧をし、洗浄後の高純度水を網目状基板の網目より排水させる請求項2または3に記載の低純度水から高純度水の製造方法。
【請求項6】
低純度水が海水である請求項1〜5のいずれか一項に記載の低純度水からの高純度水の製造方法。
【請求項7】
低純度水が汚水である請求項1〜5のいずれか一項に記載の低純度水からの高純度水の製造方法。
【請求項8】
ガスハイドレートの原料の供給手段と、ガスハイドレートの原料をガスハイドレート形成条件下でガスハイドレートを形成するガスハイドレート形成槽と、ガスハイドレート形成槽と兼用若しくは別個に用意され、ガスハイドレート形成時に用いられた低純度水を脱水し、形成されたガスハイドレートを洗浄水で洗浄する洗浄槽と、洗浄されたガスハイドレートがそれまで保持していたガスハイドレート状態よりも高温又は低圧にして高純度水を得るガスハイドレート分解槽と、を備え、
前記洗浄水は、ガスハイドレート状態を実質的に維持しつつ、ガスハイドレートの外壁に付着した不純物を除去できる条件に置かれていることを特徴とする低純度水からの高純度水の製造装置。
【請求項9】
洗浄槽が、形成されたガスハイドレートを低純度水で洗浄する洗浄槽と、低純度水で洗浄されたガスハイドレートを高純度水で洗浄する洗浄装置と、を備えてなる請求項8の低純度水からの高純度水の製造装置。
【請求項10】
ガスハイドレートを高純度水で洗浄する洗浄装置が、ガスハイドレートを網目状基板上に堆積させ、若しくは下方から送り込むとともに、高純度水をガスハイドレートの上から流しつつ、高純度水より比重の軽いガスハイドレートを洗浄槽の側壁上方に設けられた排出口よりガスハイドレートを単独または水とともにガスハイドレート分解槽に移送する請求項9に記載の低純度水からの高純度水の製造装置。
【請求項11】
ガスハイドレートを高純度水で洗浄する洗浄装置が、網目状基板上に薄板状にガスハイドレートを敷き、上から高純度水による噴霧をし、洗浄後の高純度水を網目状基板の網目より排水させる請求項9に記載の低純度水からの高純度水の製造装置。
【請求項12】
網目状基板がベルトコンベア式になっている請求項11に記載の低純度水から高純度水の製造装置。
【請求項13】
洗浄槽が、洗浄槽の下方に攪拌羽根と攪拌軸とを有し、洗浄槽の上方中心部に漏斗部、漏斗下部から洗浄槽側壁より次工程に連通する連通口とを有し、攪拌により洗浄されたガスハイドレートは漏斗の上端から漏斗、連通口を通じて次工程に移る請求項8または9に記載の低純度水から高純度水の製造装置。
【請求項14】
ガスハイドレートを形成する原料ガスが送入される内管と形成されたガスハイドレートを通す外管よりなり、深海まで到達する長さを有し、内管先端付近には内管と外管との間へガスが抜ける穴を有するとともに外筒先端に海水を通す多孔膜があり、先端部でガスハイドレートが形成される二重管と、ガスハイドレート形成時に用いられた海水を脱水し、形成されたガスハイドレートを洗浄水で洗浄する洗浄槽と、洗浄されたガスハイドレートを、それまで保持していたガスハイドレート状態よりも高温又は低圧にすることにより高純度水を得るガスハイドレート分解槽と、を備え、
前記洗浄水は、ガスハイドレート状態を実質的に維持しつつ、ガスハイドレートの外壁に付着した不純物を除去できる条件に置かれていることを特徴とする海水からの高純度水の製造装置。
【請求項15】
洗浄槽が、形成されたガスハイドレートを低純度水で洗浄する洗浄槽と、低純度水で洗浄されたガスハイドレートを高純度水で洗浄する洗浄装置と、を備えてなることを特徴とする請求項14に記載の海水からの高純度水の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−56507(P2011−56507A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236147(P2010−236147)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【分割の表示】特願2010−522771(P2010−522771)の分割
【原出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(504229815)株式会社CDMコンサルティング (12)
【Fターム(参考)】