説明

低菌化された香辛料の製造方法

【課題】 低菌、低水分で微生物的に衛生的であり、しかも色調、風味の変質が抑えられた乾燥香辛料を提供する。
【解決手段】 気密容器内に原料香辛料を入れ、容器内を絶対圧で2〜20kPa以下に減圧した後、80℃〜140℃の水蒸気を導入し、5秒〜120秒の時間で蒸気殺菌した後、容器内が絶対圧で5〜20kPaになるまで真空乾燥を行い、更に、常温〜80℃の温度で15〜300分間の通気乾燥を行うことで、特に、オニオン、ガーリックのように糖分の多い香辛料であっても、低菌、低水分でしかも色調、風味の品質変化の少ない乾燥香辛料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低菌でありながら、香味、風味に優れた乾燥香辛料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香辛料の殺菌方法としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどを用いたガス殺菌、コバルト60などのγ線による放射線殺菌、超高圧殺菌、電磁波による加熱殺菌、水蒸気による加熱殺菌などが提案されている。しかし、我が国においては、人体への影響など社会的受容の面から、安全な、水蒸気による加熱殺菌がもっぱら行われている。
【0003】
水蒸気による加熱殺菌方法としては、まず、常圧(大気圧)下で加熱処理する方法と、加圧下で加熱処理する方法とがある。また、その際に使用する水蒸気として、飽和水蒸気と過熱水蒸気とがある。さらに、原料を連続式で処理する方法と、回分式で処理する方法とがある。これら各種の蒸気加熱殺菌方法の中から、対象とする原料の種類や品質などにより、適合する方法が選択される。すなわち、原料の香辛料が原形のままであるか粉体したものであるか、加熱による焦げやすさや変色の程度、装置、器具、容器などへの付着性、香り成分の耐熱性、目標とする菌数レベルなどが考慮されて、殺菌方法が選択される。
【0004】
殺菌処理された低菌化香辛料の品質に関していえば、色調については、加熱によりクロロフィル系の色素は褪色する傾向にあり、また、カロチノイド系の赤色色素は黄色系へのシフト、全般的に暗い色調になる傾向にあり、さらに、オニオン、ガーリックなどは褐変化する傾向にあるなど、種々の変化は避けられない。また、香りについては、低沸点成分に限らず成分が飛散する、また、いわゆる加熱臭、ムレ臭がつく、調理臭が生成する、といった好ましくない変化が生ずる。このような、殺菌処理に伴う香辛料の品質変化は、焦げの発生しない適正な処理条件においても生ずるものであり、焦げが発生した場合は、焦げ色や焦げ臭が生じるため、品質上、大きな問題を生じる。従って、目標とする菌数レベルを達成しつつ、殺菌処理された香辛料の色調と香りをいかに保持するかが、香辛料業界にとっての、従来からの、かつ喫緊の技術課題である。
【0005】
水蒸気による香辛料の具体的殺菌方法としては、常圧下で5kg/cm2以下の水蒸気で処理をし、その後、熱風による乾燥及び冷風による冷却を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法では、水蒸気による加熱時間が5〜45分間と長いため、殺菌効果のわりに香り(風味)や色調の劣化が大きい。そこで、気密容器内に処理すべき香辛料原料を入れて容器内部を減圧して容器内の空気を除去した後、容器内に水蒸気を導入して殺菌する方法が提案されている(以下、「減圧蒸気殺菌方法」という。例えば、特許文献2参照。)。この減圧蒸気殺菌方法によれば、容器内の空気を排除したうえで水蒸気を容器内に導入するため、水蒸気が原料香辛料に均一に浸透、接触することから、短時間での水蒸気処理により殺菌効果が得られる。従って、この方法によれば、色調、風味の劣化が小さい低菌香辛料が得られる。なお、この方法では、前記の蒸気殺菌後に容器内を減圧、吸引することにより、凝縮した水分が蒸発して殺菌後の香辛料が乾燥すると同時に蒸発潜熱により冷却されるという工程(真空乾燥工程)が組み合わされている。また、真空乾燥工程の効果を上げるために、別の真空冷却乾燥器に移して乾燥する方法も提案されている(特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開昭57−163463号公報
【特許文献2】特開平11−127820号公報
【特許文献3】特開平8−89560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水蒸気を用いて香辛料を加熱殺菌するにあたっては、水蒸気の凝結による原料香辛料の濡れが発生することから、殺菌後の香辛料の水分を所定のレベルまで下げる必要がある。そのため、上記した従来の蒸気殺菌方法では、殺菌工程に何らかの乾燥工程が組み合わされている。そして、前記減圧蒸気殺菌方法においては、殺菌後の真空乾燥により、理論上は処理前の香辛料の水分値(例えば3〜10%程度)までに下がることになっているため、通常、特段の乾燥工程は設定されない。しかし、実際には、減圧蒸気殺菌方法に組み合わされる真空乾燥では、ハーブ系の香辛料を除き、真空減圧を相当長時間にわたって行っても、処理前の水分値まで下がることはなく、品質保持上、また粉砕などの後工程において障害が生じる。このため、従来においては、減圧蒸気殺菌方法の香辛料への適用範囲が限られるという問題があった。特に、オニオン、ガーリックのように糖分の多い香辛料の場合には、真空乾燥では乾燥が不十分であるため、そのままでは物性的に粉砕ができないばかりでなく、乾燥が不十分で高水分のままであると、乾燥後に固結を生じる可能性が非常に高くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記のような、減圧蒸気殺菌方法を香辛料の殺菌に適用する場合の制約を除くために、殺菌後の工程を種々検討した結果、香辛料の適性に合わせた乾燥工程を組み込むことにより、減圧蒸気殺菌方法を利用して、あらゆる香辛料の低菌化が可能となり、色調、風味の面でも優れた香辛料の製造が可能となることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、乾燥香辛料を、減圧蒸気殺菌した後、真空乾燥し、さらに通気乾燥することを特徴とする低菌香辛料の製造方法に関するものである。
【0009】
前記方法としては、気密容器内に原料香辛料を入れ、該容器内を絶対圧で2〜20kPa以下に減圧した後、80℃〜140℃の水蒸気を導入し、5秒〜120秒の時間で蒸気殺菌することが好ましい。また、蒸気殺菌後の真空乾燥は、前記容器内が絶対圧で5〜20kPaになるまで行うことが好ましい。さらに、前記通気乾燥は、真空乾燥後の香辛料に対して、常温〜80℃の温度で15〜300分間行うことが好ましい。
【0010】
特に、乾燥オニオン及び乾燥ガーリックにおいては、本発明方法により、減圧蒸気殺菌後の真空乾燥に加えて、さらに通気乾燥を行うことにより、減圧蒸気殺菌方法の特性である、香辛料の色調、風味の変質防止効果を生かしながら、十分に乾燥した乾燥香辛料を製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、減圧蒸気殺菌により、香辛料の色調、風味の劣化を防止しつつ、その後の真空乾燥及び通気乾燥により元の水分量にまで十分に乾燥した乾燥香辛料を製造することができ、香辛料業界における、従来からの、また喫緊の課題であっった、低菌、低水分で微生物的に衛生的であり、しかも色調、風味の変質が抑えられた乾燥香辛料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明により乾燥香辛料を製造する方法を更に詳細に説明する。先ず、減圧蒸気殺菌工程においては、原料香辛料を気密容器内に入れ、真空ポンプなどで容器内を減圧した後、加熱した水蒸気を容器内に供給して原料香辛料と接触させ、加熱殺菌する。殺菌条件は、減圧度が絶対圧で2〜20kPa、好ましくは5〜15kPaであり、また蒸気による加熱条件は80〜140℃の範囲で、好ましくは95〜135℃の範囲、さらに加熱時間は5秒〜120秒の範囲、好ましくは10〜60秒の範囲である。これらの殺菌条件は、香辛料の種類や目標とする品質に応じて、使用する殺菌装置で許容される運転条件で適宜設定すればよい。
【0013】
前記のようにして所定の加熱処理(殺菌処理)を行った後、容器内から水蒸気を排出し、引き続き真空ポンプなどにより容器内を再度減圧する真空乾燥を行う。この真空乾燥工程における減圧度は大きいほど好ましいが、減圧度が大きくなるに従い、気体の排除が困難となるので、絶対圧が5〜20kPa程度になった時点で打ち切り、引き続いて通気乾燥を行うことが、生産性の面からは好ましい。
【0014】
前記減圧蒸気殺菌及び真空乾燥に用いる装置は特に限定されるものではなく、具体的には株式会社日阪製作所の「短時間調理殺菌装置 RIC」が例示でき、攪拌機付きの1槽タイプのものでもよく、またトレーを使用するタイプのものでもよい。
【0015】
本発明では、前記のようにして減圧蒸気殺菌及び真空乾燥を行った後、さらに通気乾燥を行う。このときの乾燥条件は、減少させるべき水分量と香辛料の種類、さらには処理量、風量によって適宜設定するが、通気する空気の温度は、常温〜80℃の範囲で選択する。通気する空気の温度が高すぎると、香辛料に焦げ、褐変、香りの変化などが生じ易く、本発明の目的を達成できない場合がある。通気する空気の好ましい温度は40〜75℃の範囲である。また、乾燥時間は、通常15分から300分の範囲で香辛料を所定の水分レベルに到達させることが品質面で好ましい。この場合に使用する通気乾燥機としては、連続式では株式会社クメタ製作所の流動層乾燥機「CFD」、「BFD」、バッチ式では黒田工業株式会社の「平型乾燥機」などが例示できるが、通気する空気を除菌できるようになっていることが必要であり、また通気する空気の温度を調整できるものが好ましい。
【0016】
本発明の対象となる香辛料としては、セージ、バジル、ローズマリー、タイム、オレガノ、パセリ、ヨモギ、シソ、ローレル、マジョラムなどの植物の葉・茎部位の香辛料、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、グリーンペッパー、赤唐辛子、パプリカ、レッドベルペパー、ナツメグ、メース、カルダモン、コリアンダー、オールスパイス、シナモン、クローブ、ウコン、パプリカ、マスタード、サンショウなどの植物の果実・花・樹皮または地下茎部位の香辛料、オニオン、ガーリック、ジンジャーなどの糖類、デンプン類を多く含む香辛料が例示される。これらの中でも、葉・茎部位の香辛料は、減圧蒸気殺菌後の真空乾燥による乾燥効果が上がりやすいのに対し、オニオン、ガーリック、ジンジャーなど糖類、デンプン類を多く含む香辛料は、減圧蒸気殺菌後の真空乾燥では乾燥効果が上がり難く、このような香辛料の場合に本発明方法は特に有効である。使用する原料香辛料の形状としては、原形のままでも、粉砕後のものでもよいが、風味の保持の面からは原形のまま殺菌した方が好ましい。
【0017】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
減圧蒸気殺菌装置として、株式会社日阪製作所製「短時間調理殺菌装置」(型式:RIC−60/60、以下「RIC殺菌機」という。)を用い、以下のようにして乾燥オニオンの殺菌及び粉砕試験を行った。
【0019】
(殺菌工程)
原料として、米国製ホワイトオニオン種乾燥スライスオニオンを使用し、RIC殺菌機に使用するバスケット14個に未殺菌原料各5kgを仕込み、通常の減圧、蒸気供給・加熱殺菌、真空乾燥を行った。減圧のレベルは、絶対圧10kPa、加熱条件は120℃、30秒、真空乾燥は20分をかけて絶対圧5kPaのところで終了とした。
【0020】
(通気乾燥工程)
殺菌終了後の原料を、黒田工業株式会社製の平型乾燥機に投入し、通気乾燥した。通気の温度は70℃、乾燥時間は30分であった。
【0021】
(比較例1)
通気乾燥を行わない以外は実施例1と同様にして殺菌を行い、放冷却後の乾燥殺菌オニオンを比較例1とした。
【0022】
(比較例2)
実施例1における減圧蒸気殺菌後の真空乾燥を20分から50分まで30分間延長し、かつ通気乾燥は行わず、殺菌を行った乾燥殺菌オニオンを比較例2とした。真空乾燥終了時の絶対圧は4.5kPaであった。
【0023】
(品質の評価)
実施例1における殺菌、通気乾燥の効果を確認するために、実施例1及び比較例1、2で殺菌、乾燥後の香辛料の菌数、水分、色調、風味の評価を行った。その結果を表1に示す。なお、水分は、株式会社ケット科学研究所製の赤外線水分計(FD−600)により、105℃、7分で測定した。
【0024】
【表1】

【0025】
表1から明らかなように、減圧蒸気殺菌後の真空乾燥時間を延長しても乾燥効果は向上しない。これに対し、実施例1のように、減圧蒸気殺菌、真空乾燥後、通気乾燥することで、原料水分量と同程度まで乾燥させることができる。
【0026】
(粉砕試験)
実施例1及び比較例1の香辛料について、粉砕試験を行った。粉砕試験は、400Lのボールミルに、殺菌、乾燥後のオニオン90kg及びデキストリン10kgを仕込み、120分間かけて粉砕し、50メッシュの篩を通過したものを製品とした。その結果、減圧蒸気殺菌して真空乾燥した後、通気乾燥した実施例1では、50メッシュの篩をパスするものが99%となり、粉砕が均一に行われたことが確認された。一方、通気乾燥をしない比較例1では、50メッシュの篩をパスしないものが7%発生し、充分に粉砕がされないことが分かった。なお、比較例2は、真空乾燥の時間を実施例より30分長くしたが乾燥効果が上がらず、水分が高いので粉砕試験は行わなかった。
【0027】
(粉砕後の品質試験)
粉砕試験において50メッシュをパスした製品の固結性を確認するために以下の試験を行った。すなわち、アルミニウム製袋に200gの香辛料を、実施例1及び比較例1それぞれ5個充填し、30cm×30cm×1cmの木製板の上から15kgの荷重をかけて常温に4週間及び12週間保持した後、固結の程度を評価した。その結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
表2に示すとおり、本発明方法によれば、減圧蒸気殺菌、真空乾燥後に通気乾燥することによって、固結しない乾燥殺菌オニオンが得られる。
【実施例2】
【0030】
RIC乾燥機を用い、以下のようにして乾燥ガーリックの殺菌及び粉砕試験を行った。
【0031】
(殺菌工程)
原料として、中国製ガーリックスライスを使用し、RIC殺菌機に使用するバスケット14個に未殺菌原料各7kgを仕込み、通常の減圧、蒸気供給・加熱殺菌、真空乾燥を行った。加熱殺菌時の減圧のレベルは、絶対圧10kPa、加熱条件は120℃、30秒とし、加熱殺菌後の真空乾燥は、20分かけて絶対圧5kPaになったところで終了とした。
【0032】
(通気乾燥工程)
減圧蒸気殺菌、真空乾燥後の原料を、黒田工業株式会社製の平型乾燥機に投入し、通気乾燥した。通気の温度は70℃、乾燥時間は60分であった。
【0033】
(比較例3)
通気乾燥を行わない以外は実施例1と同様にして殺菌を行い、放冷却後の殺菌乾燥ガーリックを比較例3とした。
【0034】
(比較例4)
実施例1における減圧蒸気殺菌後の真空乾燥を20分から80分まで60分間延長し、かつ通気乾燥は行わず、殺菌を行った乾燥殺菌ガーリックを比較例4とした。真空乾燥終了時の絶対圧は4.6kPaであった。
【0035】
(品質の評価)
実施例2における殺菌、通気乾燥の効果を確認するために、実施例2及び比較例3、4で殺菌、乾燥後の香辛料の菌数、水分、色調、風味の評価を行った結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
表3から明らかなように、減圧蒸気殺菌後の真空乾燥時間を延長しても乾燥効果が向上しない。これに対し、実施例2のように、減圧蒸気殺菌、真空乾燥後、通気乾燥することで、原料水分量と同程度まで乾燥させることができる。
【0038】
(粉砕試験)
実施例2及び比較例3の香辛料について、粉砕試験を行った。粉砕試験は、400Lのボールミルに殺菌、乾燥後のガーリック70kg、デキストリン30kgを仕込み、120分間をかけて粉砕し、50メッシュの篩を通過したものを製品とした。その結果、減圧蒸気殺菌、真空乾燥後、通気乾燥した実施例2では、50メッシュの篩をパスするものが99%となり、粉砕が均一に行われたことが確認された。一方、通気乾燥をしない比較例3では、50メッシュの篩をパスしないものが5%発生し、充分に粉砕されないことが分かった。なお、比較例4は、真空乾燥の時間を実施例より30分長くしたが乾燥効果が上がらず、水分が高いので粉砕試験は行わなかった。
【0039】
(粉砕後の品質試験)
粉砕試験において50メッシュをパスした製品の固結性を確認するために以下の試験を行った。すなわち、アルミニウム製袋に200gの香辛料を、実施例2及び比較例3それぞれ5個充填し、30cm×30cm×1cmの木製板の上から15kgの荷重をかけて常温に4週間及び12週間保持した後、固結の程度を評価した。その結果を表4に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
表4に示すとおり、本発明方法によれば、減圧蒸気殺菌、真空乾燥後に通気乾燥することによって、固結しない乾燥殺菌ガーリックが得られる。
【0042】
(比較例5)
実施例2と同じ原料を用い、常圧での蒸気殺菌・乾燥による乾燥ガーリックを製造し、比較例5とした。殺菌は、蒸気温度は98℃、品温は80℃−90℃、殺菌時間は30分であり、乾燥は60℃−80℃の温風で12時間通風後、冷風を30分通気して冷却した。得られた乾燥殺菌ガーリックについて、一般生菌数、耐熱性菌数、水分及び風味を実施例2と比較して評価した。結果を表5に示す。
【0043】
【表5】

【0044】
表5から明らかなように、品温が100℃を超えない常圧蒸気殺菌では、一般生菌及び耐熱性菌ともに減少が充分でなく、また色調や風味の変化も大きい。これに対し、実施例2では、一般生菌及び耐熱性菌いずれも充分に減少しており、しかも色調や風味の変化も少ない。
【実施例3】
【0045】
RIC乾燥機を用い、以下のようにして乾燥オニオンの殺菌及び粉砕試験を行った。
【0046】
(殺菌工程)
原料として、チョップドオニオンを使用し、RIC殺菌機に使用するバスケット14個に未殺菌原料各7kgを仕込み、通常の減圧、蒸気供給・加熱殺菌、真空乾燥を行った。減圧のレベルは、絶対圧10kPa、加熱条件は120℃、30秒、真空乾燥は10分をかけて絶対圧5kPaのところで終了とした。
【0047】
(通気乾燥工程)
殺菌終了後の原料を、黒田工業株式会社製の平型乾燥機に投入し、通気乾燥した。通気の温度は50℃、乾燥時間は90分であった。
【0048】
(比較例6)
実施例3における減圧蒸気殺菌後の真空乾燥を10分から60分、さらには100分まで、それぞれ50分間及び90分間延長し、かつ通気乾燥は行わず、殺菌を行った乾燥殺菌オニオンを比較例6−1及び比較例6−2とした。真空乾燥終了時の絶対圧は60分後で4.8kPa、100分後で4.6kPaであった。
【0049】
実施例3(真空乾燥10分+通気乾燥90分)及び比較例6−1(真空乾燥10分+50分)、6−2(真空乾燥10分+90分)で得られた各乾燥殺菌オニオンの水分量を前記と同様にして測定した。その結果を表6に示す。
【0050】
【表6】

【0051】
表6から明らかなように、減圧蒸気殺菌後の真空乾燥を50分間延長し、さらには90分延長して、真空乾燥時間を60分、100分として、真空乾燥10分に較べた水分の減少量は僅か0.3%であるのに対し、真空乾燥後に通気乾燥した実施例3では真空乾燥後に1.4%もの水分が減少し、原料の水分量とほぼ同じ程度の乾燥殺菌オニオンが得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥香辛料を、減圧蒸気殺菌した後、真空乾燥し、更に通気乾燥することを特徴とする低菌香辛料の製造方法。
【請求項2】
気密容器内に原料香辛料を入れ、容器内を2〜20kPaに減圧した後、80℃〜140℃の水蒸気を導入し、5秒〜120秒の時間で蒸気殺菌する請求項1記載の低菌香辛料の製造方法。
【請求項3】
蒸気殺菌後、前記容器内が5〜20kPaとなるまで真空乾燥する請求項1又は2に記載の低菌香辛料の製造方法。
【請求項4】
真空乾燥後の香辛料に対して、常温〜80℃の温度で15〜300分間通気乾燥を行う請求項1〜3のいずれかに記載の低菌香辛料の製造方法。
【請求項5】
前記香辛料が乾燥オニオン又は乾燥ガーリックである請求項1〜4のいずれかに記載の低菌香辛料の製造方法。