説明

低融解性ポリウレタンエラストマー

本発明は、一般に、ポリウレタンエラストマー組成物;およびより好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物に関する。一実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、低融解点を有すると同時に、エラストマー様式においてもなお挙動する。一実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、およびジオール鎖伸長剤の反応から調製される。別の実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、ポリエステルポリオール成分、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)成分、および5個の炭素もしくは7個以上の炭素のいずれかを、ジオールのOH基の間に有する直線状ジオール鎖伸長剤の反応から調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、ポリウレタンエラストマー組成物;およびより好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物に関する。一実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、低融解点を有すると同時に、エラストマー様式においてもなお挙動する。一実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、およびジオール鎖伸長剤の反応から調製される。別の実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、ポリエステルポリオール成分、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)成分、およびジオールのOH基の間に5個の炭素もしくは7個以上の炭素のいずれかを有する直線状ジオール鎖伸長剤の反応から調製される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、通常、ポリオール化合物を、ジイソシアネートおよび鎖伸長剤と反応させることによって生成され、硬質セグメント部分および軟質セグメント部分を有する直線状ポリマー分子構造を有する。この一般的レシピに従って形成される熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、一般に、2つの主要なクラスに入る:(1)良好なエラストマー特性および135℃より高い融解点(10℃/分の加熱速度における示差走査熱量測定(DSC)によって決定される)を示すTPU;または(2)エラストマーよりプラスチックのように挙動し、135℃より低い融解点を有するTPU。
【0003】
特許文献1は、ローラースケートホイールにおいて使用するための、高弾性および高透明性を有する熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)をキャスト(cast)することに関する。そこで開示されるように、特許文献1のTPUは、ポリエーテルもしくはポリカプロラクトンポリオール、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、および式OH−(CH−OH(ここでxは、5〜約16の整数である)を有する少なくとも1種のジオール鎖伸長剤の組み合わせから形成される。さらに、この特許のMDI成分は、4,4’−MDI、約0〜約60重量% 2,4’−MDI、および約6重量%より少ない2,2’−MDIを含むと開示される。
【0004】
特許文献2は、高弾性および高透明性を有する熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)をキャストすることに関する。そこで開示されるように、特許文献2のTPUは、ポリエーテルポリオール、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、および式OH−(CH−OH(ここでxは、5〜約16の整数である)を有する少なくとも1種のジオール鎖伸長剤の組み合わせから形成される。さらに、この特許のMDI成分は、少なくとも70重量% 4,4’−MDIを含むと開示される。これは、特許文献2に開示されるように、上記2,4’−MDIアイソマーもしくは2,2’−MDIアイソマーのいずれかの含有量の増加が、このように生成された上記TPUエラストマーの弾性の望ましくない減少をもたらすことが理由である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,990,258号明細書
【特許文献2】米国特許第6,221,999号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、一般に、ポリウレタンエラストマー組成物;およびより好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物に関する。一実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、低い融解点を有すると同時に、エラストマー様式においてもなお挙動する。一実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、およびジオール鎖伸長剤の反応から調製される。別の実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、ポリエステルポリオール成分、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)成分、およびジオールのOH基の間に5個の炭素もしくは7個以上の炭素のいずれかを有する直線状ジオール鎖伸長剤の反応から調製される。
【0007】
一実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物に関し、上記組成物は、(a)1種以上のポリアジペート、1種以上のポリアゼレート、1種以上のポリブチレート、1種以上のポリカーボネート、もしくはこれらの2種以上の適切な組み合わせから選択される、少なくとも1種のポリエステルポリオール;(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;および(c)少なくとも1種のジオール鎖伸長剤の反応生成物を含み、ここで上記少なくとも1種の鎖伸長剤は、以下の式:
OH−(CH−OH
に従う1種以上の化合物を含み、
ここでxは、5に等しいか、または7〜約30の範囲の整数であるかのいずれかであり、上記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約95重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、(a)1種以上のポリアジペート、1種以上のポリアゼレート、1種以上のポリブチレート、1種以上のポリカーボネート、もしくはこれらの2種以上の適切な組み合わせから選択される、少なくとも1種のポリエステルポリオール;(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;および(c)少なくとも1種のジオール鎖伸長剤、の反応生成物を含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物に関し、ここで上記少なくとも1種の鎖伸長剤は、以下の式:
OH−(CH−OH
に従う1種以上の化合物を含み、
ここでxは、8〜約25の範囲の整数であり、上記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約95重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含み、上記少なくとも1種のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約2,000〜約15,000の範囲にある。
【0009】
なお別の実施形態において、本発明は、(a)少なくとも1種のポリエステルポリオール;(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;および(c)少なくとも1種のジオール鎖伸長剤、の反応生成物を含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物から形成される、押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルムに関し、ここで上記少なくとも1種の鎖伸長剤は、以下の式:
OH−(CH−OH
に従う1種以上の化合物を含み、
ここでxは、5に等しいか、または7〜約30の範囲の整数であるかのいずれかであり、上記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約95重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む。
【0010】
なお別の実施形態において、本発明は、(a)少なくとも1種のポリエステルポリオール;(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;および(c)少なくとも1種のジオール鎖伸長剤の反応生成物を含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物から形成される、押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルムに関し、ここで上記少なくとも1種の鎖伸長剤は、以下の式:
OH−(CH−OH
に従う1種以上の化合物を含み、
ここでxは、8〜約25の整数であり、上記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約95重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含み、上記少なくとも1種のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約2,000〜約15,000の範囲にある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般に、ポリウレタンエラストマー組成物;およびより好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物に関する。一実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、低い融解点を有すると同時に、エラストマー様式においてもなお挙動する。一実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、およびジオール鎖伸長剤の反応から調製される。別の実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、ポリエステルポリオール成分、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)成分、および直線状ジオール鎖伸長剤の反応から調製され、上記直線状ジオール鎖伸長剤は、上記ジオールのOH基の間に、5個の炭素もしくは7個以上の炭素のいずれかを有する。
【0012】
一実施形態において、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、フィルムおよび/もしくは他の材料を調製するために利用され得る。このようなTPUフィルムおよび/もしくは他の材料は、種々の技術(ペレットからの押し出し成形が挙げられるが、これらに限定されない)によって形成され得る。本発明は、本明細書で開示されるTPUエラストマー組成物から形成されるフィルムのみに限定されないことが注意されるべきである。
【0013】
別の実施形態において、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、例えば、縫い目なしもしくは継ぎ目なしの衣類において使用するために、衣類産業において使用するのに適したフィルムを調製するために利用され得る。
【0014】
一実施形態において、本明細書で記載されるポリウレタンエラストマー組成物は、当該分野で公知の多くの方法によって調整され得る。一実施形態において、1回で完全な(one−shot)重合プロセスは、上記反応物の全てが、同時にもしくは実質的に同時に合わされかつ反応させられる場合に利用される。1つの場合において、このような1回で完全なプロセスは、押し出し成形機において行われ得る。別の実施形態において、本発明のTPUは、種々の工程毎の添加工程(例えば、当該分野で公知のような無作為融解重合プロセス)において重合され得る。
【0015】
用語「ポリウレタンエラストマー組成物」とは、本明細書全体を通じて使用される場合、ポリウレタンエラストマーを形成するために使用される必要な試薬を含む組成物、またはあるプロセスもしくは機構によって試薬を形成するポリウレタンエラストマーの反応後の組成物に言及し得る。上記のように、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーポリマーは、ポリエステルポリオール成分、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)成分、およびジオールのOH基の間に5個の炭素もしくは7個以上の炭素のいずれかを有する直線状ジオール鎖伸長剤の反応生成物を含む。
【0016】
一実施形態において、本発明に従うポリウレタンエラストマー組成物は、約120℃未満の、樹脂のKolfer融解温度を有する。別の実施形態において、本発明に従うポリウレタンエラストマー組成物は、ASTM D412に従って試験される場合に、約20%未満、もしくはさらに約15%未満の、室温(すなわち、20℃〜23.5℃)における200%引っ張り硬化(tensile set)を有する。なお別の実施形態において、本発明に従うポリウレタンエラストマー組成物は、100% 延びまでの3サイクルが、約10%未満もしくはさらに約5%未満である後に、引っ張り硬化を有する。
【0017】
当業者に公知のように、熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物が生成される方法は、このような熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の物理的特性および化学的特性に影響を及ぼす。さらに、熱可塑性ポリウレタンエラストマー生成物が形成される方法は、このような熱可塑性ポリウレタンエラストマー生成物の物理的特性および化学的特性に影響を及ぼす。このことを考慮すると、2つの異なる方法(例えば、溶液 対 バルク重合)を介して類似の生成物へと生成される同一のポリウレタンエラストマー組成物は、異なる物理的特性および化学的特性を有する。
【0018】
ポリオール:
上記のように、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ポリエステルポリオール成分の反応生成物である。「ポリエステルポリオール成分」とは、上記ポリエステルポリオール成分が、少なくとも約1,000、少なくとも約1,500、もしくはさらに少なくとも約2,000の数平均分子量(M)を有する1種以上のポリエステルポリオールの組み合わせから形成されることを意味する。ここで本明細書および特許請求の範囲の他の箇所において、個々の範囲の限定は、開示されていない範囲を形成するために組み合わせられ得る。一実施形態において、適切なポリエステルポリオールとしては、ポリアジペート、ポリアゼレート、ポリブチレート、ポリカーボネート、およびこれらの2種以上の適切な組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
別の実施形態において、本発明とともに利用される上記1種以上のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約1,000〜約15,000、もしくは約1,500〜約12,000、もしくは約2,000〜約10,000、もしくはさらに約2,000〜約5,000の範囲にある。
【0020】
「全体の数平均分子量」とは、本発明のポリエステルポリオール成分の数平均は、そこに含まれる上記1種以上のポリエステルポリオールの異なる分子量および割合に基づいて、計算されることを意味する。このように、上記範囲の外の数平均分子量を有するポリエステルポリオールは、混合ポリエステルポリオール成分の全体の数平均分子量が、上記範囲のうちの1つ以上の中に入る限りにおいて、本発明において利用され得る。
【0021】
別の実施形態において、1種以上のポリエステルポリオールのブレンドは、本発明において利用され得る。別の実施形態において、本発明のポリエステルポリオール部分は、適切な単一のポリエステルポリオールから選択される。
【0022】
本発明における使用に適したポリエステルポリオールは、Inolexから(例えば、Lexorez(登録商標) 1600−55、1640−55もしくは1100−35);Polyurethane Specialtiesから(例えば、Millester(登録商標) 11−55、23もしくは9−55)市販されている。
【0023】
ポリイソシアネート:
本発明のポリウレタンエラストマーポリマーは、イソシアネート成分を含むポリウレタンエラストマー組成物から形成される。比較的長い直線状のポリウレタンエラストマー鎖を形成するために、二官能性もしくはさらに多官能性のイソシアネートが、利用される。一実施形態において、1種以上のジイソシアネートが利用される。適切なポリイソシアネートが、例えば、Bayer Corporation(Pittsburgh, Pa.)、The BASF Corporation(Parsippany,N.J.)、The Dow Chemical Company(Midland, Mich.)およびHuntsman Chemical(Utah)が挙げられるが、これらに限定されない会社から市販されている。本発明のポリイソシアネートは、一般に、式R(NCO)を有し、ここでnは2である。Rは、2〜約20個の炭素原子を有する、芳香族、脂環式、脂肪族、もしくはこれらの組み合わせであり得る。ポリイソシアネートの例としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、トルエン−2,4−ジイソシアネート(TDI)、トルエン−2,6−ジイソシアネート(TDI)、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート(H12MDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、1,3−フェニレンジイソシアネートおよび1,4−フェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(PMDI)、m−キシレンジイソシアネート(XDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、イソホロンジイソシアネート、異性体、ダイマー、トリマー、およびこれら2つ以上の混合物もしくは組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
別の実施形態において、本発明のポリウレタンエラストマーポリマーは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)成分を含むポリウレタンエラストマー組成物から形成される。当業者に公知のように、MDIは、4,4’−MDIおよび他の異性体(例えば、上記2,4’−MDI異性体および2,2’−MDI異性体)から構成される異性体混合物である。このことを考慮すると、一実施形態において、本発明とともに使用されるポリイソシアネートは、このようなMDIが、主に上記4,4’−MDI異性体を含む場合にMDIを含む。主に、このようなMDI成分のうちの少なくとも約95重量%が、4,4’−MDIによって形成されるか、または少なくとも約97重量% 4,4’−MDI、もしくはさらには少なくとも約98重量% 4,4’−MDI、もしくはさらには少なくとも約99重量% 4,4’−MDIによって形成されることが意味される。
【0025】
鎖伸長剤:
鎖伸長剤は、本発明のポリウレタンエラストマー組成物の生成において使用される。一実施形態において、本発明とともに利用される鎖伸長剤は、2個のOH基が末端となる長い直線状炭化水素鎖を有する鎖伸長剤から選択される。別の実施形態において、本発明とともに利用される鎖伸長剤は、以下の一般式:
OH−(CH−OH
を有するジオール鎖伸長剤から選択され、
ここでxは、5に等しいか、または少なくとも7の整数である。別の実施形態において、xは、5に等しいか、または7〜約30の範囲の整数である;あるいはxは、約8〜約25の範囲にあるか、あるいはxは、約9〜約20の範囲にあるか、あるいはxは、約12〜約15の範囲にあるか、あるいはxは、さらに約9〜約12の範囲にある。一実施形態において、xは、5、9もしくは12に等しい。
【0026】
別の実施形態において、本発明の鎖伸長剤は、1,12−ドデカンジオール(C12−ジオール)である。なお別の実施形態において、上記鎖伸長剤のうちの2種以上は、本発明とともに使用するための混合された鎖伸長剤成分を形成するために組み合わされ得る。なお別の実施形態において、上記で議論されている鎖伸長剤以外の第2の鎖伸長剤は、上記鎖伸長剤のうちの1種以上と混合されて、本発明とともに使用するための混合鎖伸長剤成分を形成し得る。
【0027】
利用される上記1種以上の鎖伸長剤の合計ヒドロキシル基 対 上記のポリエステルポリオール成分の合計ヒドロキシル基のモル量もしくは比は、一般に、約0.1〜約5.0、もしくは約0.2〜約4.0、もしくはさらに約0.4〜約2.5である。
【0028】
重合プロセスおよびさらなる添加剤:
上記のように、本発明の熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマーは、(1)ポリエステルポリオール成分;(2)1種以上のポリイソシアネート;および(3)1種以上の鎖伸長剤の反応から形成される。ポリウレタンを形成するための多くの方法が公知であり、これらとしては、上記ポリエステルポリオール成分と、上記ポリイソシアネート成分とを反応させ、次いで、これを鎖伸長する、複数工程プロセスが挙げられる。
【0029】
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、一実施形態において、当該分野で公知のように「1回で完全な」重合プロセスによって生成され、ここで上記ポリエステルポリオール成分、ポリイソシアネート成分、および上記鎖伸長剤は、一緒に添加され、混合され、そして重合される。望ましくは、上記ポリエステルポリオール成分および上記鎖伸長剤は、1つの流れにおいて添加され、上記ポリイソシアネートは、第2の流れにおいて添加される。ある場合において、上記1回で完全な重合プロセスは、押し出し形成機の中で行われる。上記モノマーは、上記重合反応のために供給され、上記反応は、約60℃〜約220℃、もしくは約100℃〜約210℃、もしくはさらに約120℃〜約200℃の範囲の温度において行われる。上記種々の成分が反応し、かつ本発明の熱可塑性ポリウレタンを形成することを可能にする適切な混合時間は、一実施形態において、約1分間〜約10分間、もしくは約2分間〜約7分間、またはさらには約3分間〜約5分間である。
【0030】
ポリイソシアネート官能基 対 上記混合ポリオール成分および鎖伸長剤の合計ヒドロキシル基のモル比は、一実施形態において、約0.90〜約1.10、もしくはさらには約0.95〜約1.05である。
【0031】
上記重合した本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマーの重量平均分子量は、一般に、約10,000〜約500,000、もしくは約25,000〜約400,000、もしくはさらに約50,000〜約300,000の範囲に及ぶ。
【0032】
上記で同定された成分に加えて、本発明のTPUエラストマー組成物はまた、必要に応じて、種々の添加剤、顔料、染料、充填剤、潤滑剤、UV吸収剤、ワックス、抗酸化剤、濃化剤などを含み、これらは、当業者に公知のもしくは文献中で公知のように、従来の量において利用され得る。一般に利用される添加剤は、上記熱可塑性ポリウレタンエラストマーに望ましい特性を付与する。充填剤としては、タルク、シリケート、クレイ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0033】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物が、色彩もしくは色相を有することが望ましい場合、任意の従来の顔料もしくは染料が、従来の量において利用され得る。よって、当業者に公知のまたは文献において公知の任意の顔料(例えば、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックなど)、ならびに種々の染料が利用され得るが、ただし、これらは、種々のウレタン反応を妨害しない。
【0034】
本発明の熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマーは、任意の所望の最終製品へと押し出し成形され得るか、または形成され得るか、あるいは冷却され、貯蔵もしくはバルク輸送のためにペレット化もしくは顆粒化され得る。上記押し出し成形物は、押し出し後に、所望の最終エンドユーズ製品を与えるいくつかの他の様式で直ぐに処理され得る。
【0035】
本発明は、以下の実施例を参照しながらよりよく理解される。これら実施例は、本発明を例示するのに役立つ。本発明は、以下に示される実施例のみに限定されないことが注意されるべきである。
【実施例】
【0036】
(実施例)
表1および表2は、比較実施例1〜6の種々のポリウレタンエラストマー調合物を例示する。表3〜8は、本発明に従う実施例1〜18を示す。
【0037】
以下で例示される熱可塑性ポリウレタンエラストマーポリマーは、ランダム溶融重合法によって調製される。この方法において、上記ポリエステルポリオール成分および上記鎖伸長剤(例えば、1,12−ドデカンジオール(C12−ジオール))は、約120℃の温度で一緒に混合され、機械的スターラーを備えた反応器に供給される。また、上記ポリエステルポリオール成分/鎖伸長剤組み合わせに添加するために、予め加熱したポリイソシアネート(例えば、120℃の適切なMDI成分)が上記反応器に供給される。得られたTPUは、DSCによって、T(ガラス転移温度)、およびT(溶融温度)およびT(結晶化温度)について試験される。次いで、上記物質は、Kofler T試験のために5ミルフィルムへと圧縮成形され、引っ張り硬化試験のために30ミルフィルムへと圧縮成形される。これら種々の試験の結果を、表1〜8に報告する。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
【表6】

【0044】
【表7】

【0045】
【表8】

上記で議論されるように、本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物は、任意の適切な物品を形成するために使用され得る。例示的な物品としては、ペレットおよびフィルムが挙げられる。
【0046】
本発明は、本明細書で詳述される特定の実施形態を特に参照しながら詳細に記載してきたが、他の実施形態は、同じ結果を達成し得る。本発明のバリエーションおよび改変は、当業者に明らかであり、本発明は、全てのこのような改変および等価物を、添付の特許請求の範囲において網羅することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物であって、該組成物は、
以下の反応生成物:
(a)1種以上のポリアジペート、1種以上のポリアゼレート、1種以上のポリブチレート、1種以上のポリカーボネート、もしくはこれらの2種以上の適切な組み合わせから選択される、少なくとも1種のポリエステルポリオール;
(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;および
(c)少なくとも1種のジオール鎖伸長剤
を含み、ここで該少なくとも1種の鎖伸長剤は、以下の式:
OH−(CH−OH
に従う1種以上の化合物を含み、
ここでxは、5に等しいか、または7〜約30の範囲の整数であるかのいずれかであり、該少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約95重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約1,000〜約15,000の範囲にある、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約2,000〜約10,000の範囲にある、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項4】
xは、約8〜約25の範囲の整数である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項5】
xは、約9〜約20の範囲にある、請求項4に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項6】
xは、約9〜約12の範囲にある、請求項4に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項7】
xは、5に等しい、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項8】
前記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約97重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物から形成される熱可塑性ポリウレタンフィルム。
【請求項10】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物であって、該組成物は、
以下の反応生成物:
(a)1種以上のポリアジペート、1種以上のポリアゼレート、1種以上のポリブチレート、1種以上のポリカーボネート、もしくはこれらの2種以上の適切な組み合わせから選択される、少なくとも1種のポリエステルポリオール;
(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;および
(c)少なくとも1種のジオール鎖伸長剤、
を含み、ここで該少なくとも1種の鎖伸長剤は、以下の式:
OH−(CH−OH
に従う1種以上の化合物を含み、
ここでxは、8〜約25の範囲の整数であり、該少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約95重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含み、前記少なくとも1種のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約2,000〜約15,000の範囲にある、
組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約2,500〜約10,000の範囲にある、請求項10に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項12】
xは、約9〜約20の範囲の整数である、請求項10に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項13】
xは、約9〜約12の範囲にある、請求項12に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項14】
前記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約97重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む、請求項10に記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
【請求項15】
請求項10に記載の化合物から形成される、熱可塑性ポリウレタンフィルム。
【請求項16】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物から形成される、押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルムであって、該組成物は、
以下の反応生成物:
(a)少なくとも1種のポリエステルポリオール;
(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;および
(c)少なくとも1種のジオール鎖伸長剤
を含み、ここで該少なくとも1種の鎖伸長剤は、以下の式:
OH−(CH−OH
に従う1種以上の化合物を含み、
ここでxは、5に等しいか、または7〜約30の範囲の整数であるかのいずれかであり、ここで該少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約95重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む、
フィルム。
【請求項17】
前記少なくとも1種のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約1,000〜約15,000の範囲にある、請求項16に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項18】
前記少なくとも1種のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約2,000〜約10,000の範囲にある、請求項16に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項19】
前記少なくとも1種のポリエステルポリオールは、1種以上のポリアジペート、1種以上のポリアゼレート、1種以上のポリブチレート、1種以上のポリカーボネート、もしくはこれらの2種以上の適切な組み合わせから選択される、請求項16に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項20】
xは、約8〜約25の範囲の整数である、請求項16に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項21】
xは、約9〜約20の範囲にある、請求項20に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項22】
xは、約9〜約12の範囲にある、請求項20に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項23】
xは、5に等しい、請求項16に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項24】
前記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約97重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む、請求項16に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項25】
前記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約98重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む、請求項24に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項26】
前記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約99重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む、請求項24に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項27】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物から形成される、押し出し成形された熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルムであって、該組成物は、
以下の反応生成物:
(a)少なくとも1種のポリエステルポリオール;
(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;および
(c)少なくとも1種のジオール鎖伸長剤
を含み、ここで該少なくとも1種の鎖伸長剤は、以下の式:
OH−(CH−OH
に従う1種以上の化合物を含み、
ここでxは、8〜約25の範囲の整数であり、該少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約95重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含み、該少なくとも1種のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約2,000〜約15,000の範囲にある、
フィルム。
【請求項28】
前記少なくとも1種のポリエステルポリオールの全体の数平均分子量は、約2,500〜約10,000の範囲にある、請求項27に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項29】
前記少なくとも1種のポリエステルポリオールは、1種以上のポリアジペート、1種以上のポリアゼレート、1種以上のポリブチレート、1種以上のポリカーボネート、もしくはこれらの2種以上の適切な組み合わせから選択される、請求項27に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項30】
xは、約9〜約20の範囲にある、請求項27に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項31】
xは、約9〜約12の範囲にある、請求項30に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。
【請求項32】
前記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも約97重量%のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む、請求項27に記載の押し出し成形された、熱可塑性ポリウレタンエラストマーフィルム。

【公表番号】特表2011−506688(P2011−506688A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538182(P2010−538182)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/086557
【国際公開番号】WO2009/079360
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】