説明

低風圧鳥害防止器

【課題】空気抵抗が少なく、強風時であっても受ける風圧が小さい低風圧鳥害防止器を提供する。
【解決手段】一対のプラスチック成形体1a,1bが合着状態にて回転自在に取り付けられる回転式鳥害防止器であって、該各プラスチック成形体1a,1bは、両端部の半円弧状リム2,3と、該両円弧状リムの間に一体に成形された3本の平行な棒状部4,5,6とを備え、該棒状部のうちの2本の棒状部4,6は半円弧状リムの両端部の外縁から延設された横断面略半円形のものであり、他の1本の棒状部5は半円弧状リムの中間部の外縁から延設された横断面略円形のものであり、プラスチック成形体1a,1bを合着状態とすることにより該棒状部4,6が横断面略円形に重ね合わされた状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力線や通信線などの架空ケーブルに野鳥が止まって閃絡や糞害等をもたらすのを防止する低風圧鳥害防止器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1〜3に記載された鳥害防止器は、中央に透孔を設けてなる左右一対の環状の支持体と、この支持体の周縁沿いに互いに間隔を置いて配置され、両端部を該支持体に夫々止着してなる複数本の棒材とから籠状の回転体を形成し、電線等の架空ケーブルを該支持体の透孔に貫挿することにより該回転体を回転自在なるようにし、カラス等の野鳥が該棒材に止まろうとすると、その野鳥の体重で該回転体が回転して止まれないようになり、鳥害を防止できるものである。
【0003】
また、下記特許文献4,5は、プラスチックの射出成形により両端部の円弧状リムと該円弧状リムの間に架する複数本の棒状部とを一体に成形するとともに、一対の該プラスチック成形体どうしを互いの円弧状リムの内周側が架空ケーブルを間にして向かい合うように配置して連結ピンを用いて合着することにより、架空ケーブルの外周に回転自在なるように取り付けられる鳥害防止器を示すものである。このようなプラスチック一体成形による鳥害防止器は所要部品点数が少なく組立が簡単であることから上記鳥害防止器よりも低コストで製造できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−77529号公報
【特許文献2】特公平5−86125号公報
【特許文献3】特開2006−20557号公報
【特許文献4】特開2006−180818号公報
【特許文献5】特開2007−244232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のプラスチック一体成形による回転式鳥害防止器は、特許文献3,4に示されたように、6本もの棒状部があったので、重量が重くて回転し難いうえに、その棒状部が帯板形状であったので、空気抵抗が大きく、強風時に大きな風圧を受けるために、架空ケーブルおよび電柱に掛かる負荷が鳥害防止器を取り付けることによって非常に大きくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、架空ケーブルの外周に一対のプラスチック成形体が合着状態にて回転自在に取り付けられる回転式鳥害防止器であって、該各プラスチック成形体は、両端部の半円弧状リムと、該両円弧状リムの間に一体に成形された3本の平行な棒状部とを備え、該棒状部のうちの2本は半円弧状リムの両端部の外縁から延設された横断面略半円形のものであり、他の1本の棒状部は半円弧状リムの中間部の外縁から延設された横断面略円形のものであり、一対の該プラスチック成形体を合着状態とすることにより横断面略半円形の該各棒状部が横断面略円形に重ね合わされた状態で架空ケーブルの外周に取り付けられるようにしたことを特徴とする低風圧鳥害防止器。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る鳥害防止器は、空気抵抗が少なく、強風時に受ける風圧を小さくすることができるので、架空ケーブルおよび電柱に掛かる負荷が大幅に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る低風圧鳥害防止器の分解斜視図。
【図2】本発明に係る低風圧鳥害防止器の組立途中の斜視図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】本発明に係る低風圧鳥害防止器の合着状態の斜視図。
【図5】本発明に係る低風圧鳥害防止器の合着状態の側面図。
【図6】図5のB−B線断面図。
【図7】図5のC−C線断面図。
【図8】本発明に係る低風圧鳥害防止器の使用状態を示す斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明の実施形態を図面とともに説明する。ポリカーボネート(PC)、ポリカエービーエス(PC/ABS)、硬質ポリエチレン(PE)などの耐候性を有する合成樹脂を射出成形することにより形成された一対のプラスチック成形体1aとプラスチック成形体1bを図1に示す。このプラスチック成形体1aとプラスチック成形体1bとは、同一形状の部分と異なる形状の部分があるので、先ず同一形状部分から説明する。該各プラスチック成形体1a,1bは、両端部に半円弧状リム2,3が形成され、該両円弧状リム2,3の間に3本の棒状部4,5,6が平行に一体に成形される。これらの棒状部のうちの2本の棒状部4,6は半円弧状リム2,3の両端部の外縁から延設されたもので、図7に示されたように、その横断面形状は略半円形である。また、他の1本の棒状部5は半円弧状リム2,3の中間部の外縁から延設されたもので、その横断面形状は略円形である。また、これらの棒状部4,5,6の長手方向途中にこれらの棒状部4,5,6を結ぶ半円環状の連結体7〜11を該各棒状部と直交する面内に一体に形成している。なお、これらの連結体7〜11のうち連結体7,9,11は横断面が楕円形の細軸状に形成され、連結体8と連結体11は横断面が長円形の幅広帯状に形成されたもので、これらの連結体7〜11により棒状部4,5,6が補強される。
【0010】
また、一方の円弧状リム2の外面に半筒部2aを一体に成形し、該半筒部2aの先端に外向鍔2bを一体に成形している。また、他方の円弧状リム3の外面に半筒部2aより大径の半筒部3aを一体に成形し、該半筒部3aの先端に内向鍔3bを一体に成形している。これらは複数の回転式鳥害防止器を長手方向に互いに連結するためのものである。なお、2c,3cは半筒部2a,半筒部3aに通気および軽量化を兼ねて形成された長孔である。以上がプラスチック成形体1aとプラスチック成形体1bとが同一形状の部分である。
【0011】
次に形状がプラスチック成形体1aとプラスチック成形体1bとで異なる部分を説明する。一方のプラスチック成形体1aは、前記棒状部4の外側であって該棒状部4の長手方向に適宜間隔を置いて4つの支軸12を一体に成形している。また、他方のプラスチック成形体1bは、棒状部4の外側であって該棒状部4の長手方向に適宜間隔を置いて4つの軸受13を一体に成形している。そして該支軸12を軸受13中に回転自在に嵌合することにより、図2、図3に示したように、プラスチック成形体1aとプラスチック成形体1bとが蝶番のように開閉自在に組み立てられる。
【0012】
また、一方のプラスチック成形体1aの棒状部6の外側に4つの起立片14が棒状部6の長手方向に適宜間隔を置いて一体に成形され、該起立片14に連結ピン15が一体に成形され、該連結ピンの先端部16を雁首状に成形してなる。なお、17は該先端部16を金型により一体に成形するために必要な型抜孔である。また、他方のプラスチック成形体1bの棒状部6の外側に前記各連結ピン15と相対する係合部18が形成され、該係合部18に長方形状の係合孔19が形成される。また、該係合部18の周縁部は該係合孔19の内側を囲うように門形にリブ20が一体に成形され、該リブ20の上壁面21にスリット状の開口22を形成している。
【0013】
このプラスチック成形体1aとプラスチック成形体1bとは予め上記のように開閉自在に組み立てられ、図8に示した電線等の架空ケーブル23に対しては、該プラスチック成形体1aとプラスチック成形体1bとで該架空ケーブル23を挟むように両成形体を重ね合わせ、連結ピン15の先端部16を係合部18の係合孔19に対向させた状態でヤットコやペンチのような挟工具を使用して起立片14と係合部18とを挟着することにより、各連結ピン15の先端部16を係合部18の係合孔19に強制的に差し込む。そのとき連結ピン15がいったんは弾性的に撓んで先端部16が係合孔19を通過したところで弾性復元により該先端部16が該係合孔19に係合することから、図4〜図7に示した合着状態が維持される。この合着状態では、図7に示されるように、プラスチック成形体1aの横断面略半円形の棒状部4とプラスチック成形体1bの横断面略半円形の棒状部4とが横断面略円形に重ね合わされた状態となり、プラスチック成形体1aの横断面略半円形の棒状部6とプラスチック成形体1bの横断面略半円形の棒状部6も横断面略円形に重ね合わされた状態となる。このため両プラスチック成形体1a,1bの棒状部4,6はこの合着により外観上は1本の棒状になり、空気抵抗が小さくなって強風時にも過大な風圧を受けないで済むようになる。また、このようにプラスチック成形体1aとプラスチック成形体1bとを合着状態にすることにより、互いの半筒部2aどうし、および、半筒部2bどうしも合着して筒状になるとともに、連結体7〜11どうしもこの合着により外観上円環状になる。
【0014】
また、この鳥害防止器を図8に示したように複数個長手方向に連結するには、一方の半筒部2aの外周に他方の半筒部3aを被せて、互いの外向鍔2bと内向鍔3bを係合させることにより、該各鳥害防止器がそれぞれ独立して回転自在なるように架空ケーブル23に取り付けられる。
【0015】
なお、この実施形態では一方のプラスチック成形体に成形された軸支部に他方のプラスチック成形体に成形された支軸を回転自在に嵌合することにより両プラスチック成形体を蝶番のように開閉可能に構成したが、プラスチック成形体に一体に連結ピンを成形し該連結ピンにより合着されるようにしてもよく、或いは、別体に成形された別部品の連結ピンを使用して合着してもよい。
【0016】
この鳥害防止器では、プラスチック成形体1aとプラスチック成形体1bとが合着されることで、両プラスチック成形体の棒状部4どうしおよび棒状部6どうしが重ね合わされて、図4に示されるように、棒状部が外観上4本であってそれぞれが横断面略円形のものとなるので、強度を損なうことなく、空気抵抗が減少し、強風時に受ける風圧を大幅に減少させ、架空ケーブルや電柱に与える負荷を軽減させることができる。しかも、4本が90度の等間隔で配設されるので、バランスがよく、大きな野鳥は勿論のこと、体重の少ない小型の野鳥であっても止まれば確実に回転し、多くの野鳥を寄せ付けないようにすることができる。
【符号の説明】
【0017】
1a,1b プラスチック成形体
2,3 半円弧状リム
4,5,6 棒状部
7〜11 連結部
12 支軸
13 軸受
14 起立片
15 連結ピン
16 先端部
18 係合部
19 係合孔
23 架空ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空ケーブルの外周に一対のプラスチック成形体が合着状態にて回転自在に取り付けられる回転式鳥害防止器であって、該各プラスチック成形体は、両端部の半円弧状リムと、該両円弧状リムの間に一体に成形された3本の平行な棒状部とを備え、該棒状部のうちの2本は半円弧状リムの両端部の外縁から延設された横断面略半円形のものであり、他の1本の棒状部は半円弧状リムの中間部の外縁から延設された横断面略円形のものであり、一対の該プラスチック成形体を合着状態とすることにより横断面略半円形の該各棒状部が横断面略円形に重ね合わされた状態で架空ケーブルの外周に取り付けられるようにしたことを特徴とする低風圧鳥害防止器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−105405(P2012−105405A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249915(P2010−249915)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000163408)近畿電機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】