説明

体内管、特に冠静脈洞内に導入するためのバルーン・カテーテル

【課題】十分な曲げ強さおよび十分な可撓性を有するバルーン・カテーテルを提供すること。
【解決手段】体内管への導入及び体内管の間歇的な閉塞のためのバルーン・カテーテルが、遠位端部分に膨張可能バルーン122を担持するカテーテル・シャフト155と、このシャフト155を通して延びる複数の内腔とを有する。またシャフト155の中心を通して少なくとも1つの遠位開口127、128へと延びる圧力センサ内腔125が提供され、これら遠位開口127、128は、体内管中の流体と連絡するようにバルーン122の遠位に設けられる。さらにバルーン122を膨張及び収縮させるための膨張内腔158が提供される。カテーテルは、カテーテル・シャフト155に沿って延びる補剛要素123を有し、補剛要素123は、バルーン122の近位端に隣接して位置決めされた、補剛要素123の残りの部分に比べて曲げ強さが低い遠位端部分164を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内管(身体血管)、特に冠静脈洞内に導入するため、及び体内管を閉塞するためのバルーン・カテーテルであって、遠位端部分に膨張可能バルーンを担持するカテーテル・シャフトと、カテーテル・シャフトを通って延在する複数の内腔とを備えるバルーン・カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
膨張可能バルーンを含むバルーン・カテーテルが、例えば欧州特許第402964B1号に記載されている。既知のバルーン・カテーテルは、冠静脈洞閉塞のために使用され、複数のセンサによって診断に有用な信号を得ることができ、特に逆行性灌流の実現を意図してバルーンの膨張を制御することができる。そのようなバルーン・カテーテルは、マルチルーメン・カテーテルとしても知られており、カテーテルの遠位端が例えば心臓の冠静脈洞内に入る。一方、カテーテルの近位端は、バルーンを膨張させるためのポンプと接続される。伸張可能なバルーンを膨張させる働きをする内腔と同軸に又は平行に配置されたさらなる内腔に、センサを電気的に接触させるためのワイヤを通すことができる。そのようなさらなる内腔を通して、虚血組織内の逆行性灌流に適した心臓麻痺物質又は血栓溶解物質又は他の薬理学的に活性の物質を導入することもできる。
【0003】
逆行性灌流によって虚血組織に血液を供給するために、カテーテルの端部に固定された膨張可能バルーンを使用して冠静脈洞を間歇的に閉塞することが既に提案されている。閉塞中、冠静脈洞内の血圧は心臓拍動のたびに上昇し、心筋の健康な組織を通って冠静脈洞に達した血液を虚血組織内に流し戻す。間歇的閉塞の別の効果は、神経刺激効果のフィードバックメカニズムによる圧力調整に及ぼす影響である。そのような間歇的冠静脈洞閉塞に関して、カテーテルのバルーン端部は経皮的に又は外科的に挿入される。カテーテルの他端は、ポンプによって、バルーンを周期的に膨張及び収縮させるガス又は流体を供給される。冠静脈の逆行性灌流を行うためのデバイスは、例えば国際特許公開第WO2005/120602A1号から知られており、圧力制御された間歇的冠静脈洞閉塞を行うことができる。閉塞を開始及び解放する最適な回数を決定するためのそのデバイス及び対応する方法では、圧力増加及び圧力低下の速度など圧力パラメータが決定され、比較的複雑な処理が行われる。
【0004】
カテーテルの経皮的挿入に関して、カテーテルは、下大静脈又は上大静脈を通して心臓の右心房内に案内され、右心房内には冠静脈洞が延びている。冠静脈洞入口部に対するそれぞれ上大静脈又は下大静脈入口部の位置により、冠静脈洞内へのカテーテルの導入において、閉塞デバイスと共にカテーテルを後で導入できるようにカテーテルの先端又はガイド・ワイヤ若しくはガイド・スリーブを冠静脈洞に通すために外科医にはかなりの技術が要求される。実際、冠静脈洞内への導入を何度も試みなければならないことがよくあり、そのため、治療時間がかなり長くなり、したがって患者への負担も大きかった。
【0005】
冠静脈洞の間歇的閉塞のために使用されるバルーン・カテーテルに伴う別の問題は、閉塞中に停滞された血液がバルーン、したがってカテーテルに圧力を及ぼし、それにより最後にはカテーテルが血管内部で後退することである。したがって、バルーンを後退させることがある逆圧によりカテーテルが特定の点で例えば横方向に逸れるのを防止するために、十分な剛性でカテーテルを構成する必要がある。同時に、所望の適用部位、特に冠静脈洞にバルーンを位置決めすることができるように、曲率半径が小さな血管領域を通してカテーテルを前方に安全に押すことができるように、カテーテルの十分な可撓性を保証しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第402964B1号
【特許文献2】国際公開第2005/120602A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明は、体内管、特に冠静脈洞の間歇的閉塞に適したバルーン・カテーテルであって、そのために必要な内腔を備え、同時に、カテーテルの押込み性を高めるのに、また停滞された血液によって生じる圧力によりバルーンが後退しないことを保証するのに十分な曲げ強さを有し、しかもバルーンの導入を容易にするのに十分な可撓性を有するバルーン・カテーテルを提供することを狙いとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を解決するために、冒頭に定義した種類のバルーン・カテーテルであって、中心でカテーテル・シャフトを通って少なくとも1つの遠位開口まで延びる圧力センサ内腔が提供され、少なくとも1つの開口が、体内管中の流体と連絡するようにバルーンの遠位に設けられること、さらに、バルーンを膨張及び収縮させるための膨張内腔が提供されること、及びカテーテルが、カテーテル・シャフトに沿って延在する補剛要素を備え、補剛要素が、バルーンの近位端に隣接して位置決めされ、補剛要素の残りの部分に比べて曲げ強さが低い遠位端部分を有することを特徴とするバルーン・カテーテルが提供される。バルーンの遠位で体内管内の流体と連絡する遠位開口を有する中心内腔が提供されることにより、例えば、前記内腔を介して、バルーンによって閉塞される体内管、特に冠静脈洞内の圧力を測定することができる。また前記中心内腔は、閉塞された血管、特に冠静脈洞から血液を採取することを可能にする。さらに、ガイド・ワイヤ上で中心内腔を前進させることによって、中心内腔を使用してバルーン・カテーテルを血管内に導入し、バルーン・カテーテルを血管内でそれぞれの目標部位に前進させることができる。
【0009】
バルーン・カテーテルの曲げ強さは、本発明に従って提供される補剛要素によって得られ、補剛要素は、本発明の好ましい実施例によれば、カテーテル・シャフトを取り囲み、或いはカテーテル・シャフトの内部に配置される。また補剛要素は、バルーン・カテーテルの前進を容易にする。カテーテルの前進中に血管を傷付けないように、且つ曲率半径が小さい湾曲領域でも前進が可能であることを保証するために、本発明によれば、バルーンの近位端に隣接して位置決めされた補剛要素の遠位端部分が、補剛要素の残りの部分に比べて低い曲げ強さを有することが企図される。したがって、より高い可撓性をもつ領域が、補剛要素の遠位端部分に意図的に形成されて、カテーテルの前進中に体内管の湾曲路への適合を可能にし、それと同時に、血管壁が傷付かないように、それぞれの血管の長手方向長さとできるだけ平行にカテーテル・シャフトのバルーン担持遠位端部分を常に保つ。
【0010】
好ましくは、補剛要素は、カテーテル・シャフトを取り囲むハイポチューブによって形成される。この場合好ましくは、補剛要素は、バルーンと近位ハブの間のカテーテル・シャフトの部分のほぼ全体にわたって延在する。好ましい様式では、補剛要素の遠位端とバルーンの膨張可能領域の近位端との間にわずかな距離が与えられる。前記距離は、一方では、(距離が大きすぎる場合に)カテーテル・シャフトが補剛管の遠位端とバルーンの間で座屈しないように、他方では、(距離が短すぎる又は全くない場合に)この領域で可撓性及びしなやかさが制限されすぎないように寸法設定しなければならない。距離は、好ましくは4〜6mm、特に約5mmである。
【0011】
ハイポチューブは、個別のステンレス鋼管によって、或いはまたカテーテル・シャフトと共押出され、カテーテル・シャフトとは異なる合成材料から形成された少なくとも1つの外層によって形成することができる。或いは、ハイポチューブは、ナイロン組織によって形成することができ、又はそのような組織を備えることができる。
【0012】
好ましくは、曲げ強さが低い遠位端部分が、30〜120mm、好ましくは40〜90mmの長さにわたって延びていることが企図される。
【0013】
従来技術から、ハイポチューブの曲げ強さをその軸方向長さにわたって変える様々な方法が既に知られている。好ましい構成によれば、ハイポチューブが、曲げ強さに影響を与える少なくとも1つの切欠(すなわち切り込みまたはノッチ)を有することが企図される。好ましくは、切欠が螺旋線状で延在し、螺旋線は、曲げ強さが低い補剛要素の遠位端部分で、補剛要素の残りの部分よりも小さいピッチを有する。曲げ強さが低い補剛要素の遠位端部分で、螺旋線のピッチがハイポチューブの遠位端から連続的に増すことによって、さらなる最適化を実現することができる。上述した端部部分におけるハイポチューブの連続的に変わる曲げ強さにより、座屈部位がなくなる。
【0014】
螺旋線状の切欠の代わりに、それぞれハイポチューブの円周の一部にわたって延在し、軸方向でずらされた複数の切欠を補剛要素に提供することもでき、このとき曲げ強さは、個々の切欠間の軸方向距離に応じて決まる。
【0015】
体内管、特に冠静脈洞の間歇的閉塞のために、通常は複数の内腔が必要とされ、したがってカテーテル・シャフトの外径をできるだけ小さく保つために個々の内腔の特に場所を取らない構成が有用である。これに関して構成をさらに発展させることが好ましく、カテーテルの内腔が、互いに異なる断面幾何形状を有し、バルーンを膨張及び/又は収縮させる働きをする膨張内腔が、好ましくはリング・セグメント形状の断面であり、中央圧力センサ内腔の半径方向外側に配置される。
【0016】
バルーン内の流体圧を監視できるように、別個の内腔が有利となり、これに関して構成をさらに発展させることが好ましく、バルーン内の圧力を測定するためのバルーン圧力監視内腔がさらに提供され、この内腔は、断面でリング・セグメント形状であり、圧力センサ内腔の半径方向外側に配置され、バルーン圧力監視内腔の弧の中心角が、好ましくは、リング・セグメント形状の膨張内腔に比べて小さい。膨張内腔のリング・セグメント形状の断面がバルーン圧力監視内腔のリング・セグメント形状の断面よりも大きい中心角にわたって広がっていることにより、膨張内腔に関してできるだけ大きい断面が提供され、同時に別個の圧力測定が可能であり、それにより空間の最適な利用を保証すると共に、それに従って中央シャフトの外径を小さく保つことができる。
【0017】
個別の内腔による圧力測定は、例えば、曲げ荷重の下で起こり得る座屈を検出することができるという利点を有する。実際、膨張内腔内とバルーン圧力監視内腔内で測定される異なる圧力により、高い信頼性で座屈が認識され、それにより、適時にそれぞれの安全性測定を行う、例えば安全弁を作動させることが可能である。
【0018】
さらなる好ましい構成によれば、円形又は楕円形内腔が、膨張内腔とバルーン圧力監視内腔のリング・セグメント形状断面の隣接端部の間に提供されることが企図される。そのような比較的小さい内腔は、カテーテルの先端又はバルーンの領域に配置される電気センサの配線、又は光ファイバ・ラインの配置を可能にする。
【0019】
バルーンの膨張及び収縮中に生じ得る誤動作を回避するために、好ましいさらなる発展形態によれば、膨張内腔及び任意選択でバルーン圧力監視内腔がそれぞれ、カテーテル・シャフトの軸方向でずらされるように設けられた少なくとも2つの半径方向開口を介してバルーンの内部と接続されることが企図される。バルーンの膨張及び収縮がただ1つの半径方向開口のみによって行われた場合、これは、特に萎むときにバルーンがこの単一の開口を早まって覆い、すなわちバルーンの完全な排気の前に覆い、それによりさらなる排気が難しくなる又は不可能になる危険を伴う。
【0020】
さらなる好ましい構成は、カテーテルが、バルーンの領域で補剛手段、特に補剛ワイヤを有し、前記ワイヤが、好ましくは、バルーンの長さにわたって延在することを企図する。また、補剛手段が、前述したハイポチューブの内部の領域から、バルーンの遠位カラーの内部の遠位領域まで延びていることもある。そのような補剛手段、特に補剛ワイヤは、バルーン圧力がカテーテル・シャフトに対して軸方向アップセット力を及ぼすことにより、バルーンによって取り囲まれた領域内でカテーテル・シャフトが座屈又は他の変形をする可能性を減少させることができる。補剛手段、特に補剛ワイヤは、例えば上述した円形又は楕円形内腔内に受け入れることができる。代替実施例では、補剛ワイヤは、バルーンの内部領域内でカテーテル・シャフトの外周の周りに螺旋巻きで配置することができる。
【0021】
別の好ましい発展形態では、カテーテルは、中心でカテーテル・シャフトを通って延びる圧力センサ内腔と流体連絡するカテーテル先端要素を有し、カテーテル先端要素が、体内管内の流体と連絡するためにバルーンの遠位に位置決めされた複数の遠位ポートを有し、複数の遠位ポートが、複数の半径方向開口、好ましくは少なくとも2つ、特に3つの半径方向開口を有し、これら開口が、カテーテル先端要素の円周面にわたってほぼ均等に分布される。そのような個別のカテーテル先端構成要素は、適用の面で様々な利点を提供する。すなわち、例えば、血管壁を傷付けないようにカテーテル先端要素の遠位開口の遠位縁部を丸めることができる。さらに、カテーテル先端要素を、遠位開口に向けて円錐状にテーパさせることができ、特に可撓性になるように設計することができ、体内管内部で先端、したがってカテーテル全体をより良く案内できるようにする。これに関して、カテーテル先端要素は、適切な湾曲区域を提供するために最小限の長さを有するべきである。好ましい様式では、カテーテル先端要素の遠位端とバルーンの膨張可能部分の遠位端との距離が少なくとも30mm、好ましくは35〜45mmである。
【0022】
カテーテル先端要素の軸方向内腔が、カテーテル先端要素の遠位開口を介してだけでなく、カテーテル先端要素の壁の周面にわたって均等に分布された少なくとも2つ、好ましくは3つの半径方向開口を介して体内管と連絡することにより、体内管内の流体圧のより正確な測定が可能となっている。特に、測定エラーがなくなる。測定エラーは、例えば、遠位開口又は半径方向開口が血管の壁に当接した場合、又は開口が何らかの他の理由により血管内の全圧を受けなかった場合に生じることになる。
【0023】
以下、本発明を、図面に概略的に示す例示的実施例によって、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】いくつかの実施例に従って心臓組織を治療するためのシステムの一部分の斜視図である。
【図2】図1のシステムの別の部分の斜視図である。
【図3】図1のシステムのカテーテル・デバイスの概略図である。
【図4】図3のカテーテル・デバイスのバルーンの詳細図である。
【図5】図3のカテーテル・デバイスの断面図である。
【図6】図4のカテーテル・デバイスの一部分の断面図である。
【図7】図3のカテーテル・デバイスのカテーテル先端要素の断面図である。
【図8】図7のカテーテル先端要素の斜視図である。
【図9】バルーンが図面から取り除かれている図3のカテーテルの一部分の詳細図である。
【図10】図3のカテーテルに関する補剛要素の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
様々な図面における同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【0026】
図1及び図2を参照すると、心臓組織を治療するためのシステム100のいくつかの実施例は、冠静脈洞閉塞カテーテル120と、制御システム140(図2)とを含むことがある。特定の実施例では、制御システム140は、圧力制御された間歇的冠静脈洞閉塞(PICSO)を行うためにカテーテル120の動作を制御するように、且つ表示を行うために心臓センサ・データを受信するように構成することができる。冠静脈洞閉塞カテーテル120は、(図1に示される遠位端につながる)遠位先端部分121と、近位部分131とを含み、近位部分131は近位ハブ132を含み、近位ハブ132は、複数の流体ライン又はセンサ・ライン133、134、及び135を介して制御システム140に結合される。したがって、制御システム140を使用して、冠静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121にある1つ又は複数の構成要素を操作することができると共に、心臓特性を示すデータ(例えば冠静脈洞圧や心電図(ECG)情報など)を提供する1つ又は複数のセンサ信号を受信することもできる。
【0027】
簡潔には、使用時、冠静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121を心臓10の冠静脈洞20内に配置することができ、その後、冠静脈洞20から出て右心房11内に流れる血流を間歇的に閉塞するように作動させることができる。冠静脈洞20のそのような閉塞中、通常は冠静脈洞20から出る静脈血流を、血液欠乏により障害を受けている心筋組織30の一部分に再分配することができる。例えば、冠動脈40内の閉塞物35により、心筋組織30の一部分に血流が送られなくなることがある。その結果、局所動脈41を通ってその不全の心筋組織30に流れる動脈血流がかなり減少されることがあり、それにより心筋組織30が虚血又は他の障害を受ける。さらに、動脈血流が減少されるので、局所静脈21から出る静脈血流も同様に減少される。心臓10に沿って様々な領域に位置された他の分枝静脈22は、引き続き血流を受け取ることができ、それにより、冠静脈洞20を通って出る静脈血流を供給する。いくつかの実施例では、冠静脈洞閉塞カテーテル120を冠静脈洞20内に送り、その後、動脈側にある閉塞物35の治療前、治療中、又は治療後に冠静脈洞20を間歇的に閉塞するように作動させることができる。そのような閉塞によって、静脈血流を局所静脈21に再分配させ、次いで、冠動脈40内の閉塞物35により血流が送られていない可能性がある心筋組織30の部分に再分配させることができる。したがって、通常の冠動脈血流を回復するように閉塞物35が修復又は除去される前、その間、及びその後に、血流の再分配を心筋組織30が受け取ることにより、虚血又は他の何らかの障害を受けた心筋組織30を、再分配した静脈血流によって治療することができる。
【0028】
さらに、使用時、制御システム140(図2)は、冠静脈洞閉塞カテーテル120の閉塞構成要素(例えば膨張可能バルーン122など)の自動制御を提供するように構成される。以下により詳細に説明するように、制御システム140は、特定のパターンに従って冠静脈洞20内の閉塞を作動又は作動停止するために、コンピュータ・メモリ・デバイスに記憶されたコンピュータ可読命令を実行するコンピュータ・プロセッサを含む。例えば、制御システム140は、冠静脈洞圧とは無関係の閉塞期間と解放期間の所定のパターンの一部として、又は処置中の冠静脈洞圧の読取値によって少なくとも部分的に定義される圧力依存パターンに従って、冠静脈洞20内でカテーテル120の閉塞構成要素を作動させるように構成することができる。さらに、制御システム120は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを有するディスプレイ・デバイス142を装備され、グラフィカル・ユーザ・インターフェースは、心臓専門医又は他の使用者に、冠静脈洞閉塞処置の経過及び心臓10の状態を示す時間依存の関連データを提供する。したがって使用者は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを確認することによって、患者の状態、及び冠静脈洞20を間歇的に閉塞する効果を容易に監視することができ、それと同時に、冠静脈洞閉塞カテーテル120及び他の心臓治療器具(例えば血管形成術カテーテルやステント・デリバリ器具など)を取り扱うことができる。いくつかの実施例では、通常の冠動脈血流を回復するために閉塞物35が修復又は除去される前、その間、及びその後に、心筋組織を治療するためのシステムの一部として制御システム140及び冠静脈洞閉塞カテーテル120を使用することができることが、本明細書における説明から理解されよう。
【0029】
図1をより詳細に参照すると、冠動脈40内の閉塞物35を修復又は治療する前、その間、又はその後に、静脈系を介して冠静脈洞20に冠静脈洞閉塞カテーテル120を送ることができる。そのような状況では、(閉塞物35を修復又は除去することにより)通常の動脈血流を回復する一方で、(閉塞物により)動脈血流が送られていないことで障害を受けている心筋組織30の部分を、静脈血液の供給によって治療することができる。
【0030】
システム100は、ガイド部材110を含むことができ、ガイド部材110は、患者の静脈系を通して右心房11内に進められる。この実施例でのガイド部材110は、遠位端111(図1)と近位端の間で延びる内腔を有するガイド・シースを有する。代替実施例では、ガイド部材110は、遠位端と近位端の間で延びる外面を有するガイド・ワイヤを含むことができる。任意選択で、ガイド部材110は、静脈系を通して右心房11に遠位端111を進めるように遠位端の向きを制御するための操舵可能機構を含む。また、ガイド部材110は、前進中に遠位端111の位置を撮像デバイスを使用して監視することができるように、遠位端111に沿った1つ又は複数のマーカー・バンドを含むことができる。
【0031】
ガイド部材110が右心房11内に進められた後、遠位端111を冠静脈洞20内に一時的に位置決めすることができる。そこから、冠静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121を、ガイド部材110に沿って摺動可能に進めて、冠静脈洞20内部に位置決めすることができる。ガイド部材110がガイド・シースを有する実施例では、冠静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121は、冠静脈洞20に向かう前進中に内腔の内面と摺動可能に係合することができる。ガイド部材110がガイド・ワイヤ構造を有する代替実施例では、冠静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121は、冠静脈洞20に向かう前進中にガイド・ワイヤの外面に被さって摺動可能に進むことができる(例えばカテーテル120の内腔がガイド・ワイヤに被さって進む)。冠静脈洞閉塞カテーテル120が冠静脈洞20に達した後、ガイド部材110の遠位端111を冠静脈洞20から引き戻すことができ、冠静脈洞閉塞カテーテル120の使用中には右心房11内に留まることができる。
【0032】
引き続き図1を参照すると、冠静脈洞20内に位置決めされた冠静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121が閉塞構成要素122を含み、閉塞構成要素122は、この実施例では膨張可能バルーン・デバイスの形態である。閉塞構成要素122は、冠静脈洞20を閉塞するように作動させることができ、それにより、動脈血流が送られていないことにより障害を受けている心筋組織30内に静脈血液を再分配させることができる。以下により詳細に説明するように、膨張可能バルーン・デバイス122は、冠静脈洞閉塞カテーテル120の内腔と流体連絡することができ、内腔はさらに、制御システム140の空気圧サブシステム(図2)と連絡する。したがって、制御システム140を使用して、冠静脈洞内でバルーン・デバイス122を伸張又は収縮させることができる。
【0033】
また、遠位先端部分121は、膨張可能バルーン・デバイス122の前方遠位に位置決めされた1つ又は複数の遠位ポート(図7〜図8)を有する先端要素129を含む。図示される実施例では、先端要素129の遠位ポートは、半径方向開口127を有し、半径方向開口127は、概して半径方向外側に面し、遠位先端の円周に沿って互いにほぼ均等に離隔されており、また遠位ポートは、1つの遠位開口128をさらに有する。以下により詳細に説明するように、先端要素129の遠位ポートはすべて、冠静脈洞閉塞カテーテル120を通って延びる単一の圧力センサ内腔125と流体連絡することができる。したがって、先端要素129の遠位ポートと流体連絡する圧力センサ・デバイスによって、冠静脈洞圧を監視することができる。
【0034】
次に図2を参照すると、冠静脈洞閉塞カテーテル120の近位部分131及び制御システム140は患者の外部に位置決めされ、遠位先端部分121は冠静脈洞20内に進められる。近位部分131は近位ハブ132を含み、近位ハブ132は、1組の流体ライン又はセンサ・ライン133、134、及び135を介して制御システム140に結合される。したがって、制御システム140は、冠静脈洞閉塞カテーテル120の遠位先端部分121にある閉塞構成要素122を作動又は作動停止することができると共に、心臓特性を示すデータ(例えば冠静脈洞圧や心電図(ECG)情報など)を提供する1つ又は複数のセンサ信号を受信することもできる。
【0035】
冠静脈洞閉塞カテーテル120の近位ハブ132は、複数の流体ライン又はセンサ・ライン133、134、及び135を患者の静脈系内に延びる冠静脈洞閉塞カテーテル120の部分と接続する働きをする。例えば、制御システム140と近位ハブ132の間に延在する第1のライン133は、流体ラインを有し、この流体ラインを通して、閉塞構成要素を作動させるため(例えば膨張可能バルーン・デバイス122を膨張させるため)に加圧流体(例えば、ヘリウム、別のガス、又は安定な液体)を送ることができる。流体ライン133は、制御システム140の対応するポート143(例えばこの実施例ではドライブ・ルーメン・ポート)に接続され、それによりライン133は、制御システム140内に収容された空気圧制御サブシステムと流体連絡する。近位ハブ132は、第1のライン133を膨張内腔158(図5)とつなぎ、膨張内腔158は、冠静脈洞閉塞カテーテル120を通って膨張可能バルーン・デバイス122まで延びる。
【0036】
別の実例では、制御システム140と近位ハブ132の間に延在する第2のライン134がバルーン・センサ・ラインを有し、バルーン・センサ・ラインは、膨張可能バルーン・デバイス122の内部と流体連絡して、バルーン・デバイス122内部の流体圧を測定する。近位ハブ132は、第2のライン134をバルーン圧力監視内腔159(図5)とつなぎ、バルーン圧力監視内腔159は、冠静脈洞閉塞カテーテル120を通って膨張可能バルーン・デバイス122まで延びる。バルーン・デバイス122の圧力は、圧力が高まりすぎたバルーン・デバイス122から冠静脈洞20を保護するために採用される安全機構の一部としての制御システム140の内部制御回路によって監視することができる。バルーン・センサ・ライン134は、制御システム140の対応するポート144に接続され、それにより、制御システム140内部に配置された圧力センサがバルーン・デバイス122内の流体圧を検出することができる。或いは、圧力センサは遠位先端部分121内(例えばバルーン・デバイス122の内部)又は近位ハブ132内に配置することができ、それにより、制御システム140の対応するポート144にはセンサ・ワイヤのみが接続してもよい。
【0037】
また近位ハブ132は、制御システム140から延びる第3のライン135と接続する。第3のライン135は冠静脈洞圧ラインを有し、冠静脈洞圧ラインは、バルーン・デバイス122の膨張時と収縮時の両方に冠静脈洞の流体圧を測定するために使用される。近位ハブ132は、第3のライン135を圧力センサ内腔125(図5)とつなぎ、圧力センサ内腔125は、冠静脈洞閉塞カテーテル120を通って、バルーン・デバイス122の前方にあるカテーテル先端要素129の遠位開口127、128まで延びる。したがって、圧力センサ内腔125は冠静脈洞圧内腔でよく、第3のライン135の少なくとも一部分は、冠静脈洞20内の血圧を第3のライン135の近位部分を通して圧力センサ・デバイス136に送るための、流体(例えば、生理的食塩水、別の生体適合性液体、又はそれらの組合せ)を充填された経路とすることができる。圧力センサ・デバイス136は、(冠静脈洞圧を示す)圧力測定値を抽出し、冠静脈洞圧を示すセンサ信号を制御システム140の対応するポート145に出力して、内部制御回路に入力する(内部制御回路は1つ又は複数の処理装置を含むことができ、処理装置は、制御システム140内に収容された1つ又は複数のコンピュータ・メモリ・デバイスに記憶された命令を実行する)。冠静脈洞圧データは、グラフィカル・ユーザ・インターフェース142によってグラフとして表示することができ、それにより心臓専門医又は他の使用者は、冠静脈洞20が閉塞状態及び非閉塞状態にある間に、冠静脈洞圧の傾向を容易に監視することができる。任意選択で、制御システム140のグラフィカル・ユーザ・インターフェース142は、画面上に圧力測定値を数値で出力することもでき、それにより心臓専門医が最大冠静脈洞圧、最小冠静脈洞圧、又はそれら両方を容易に確認することができる。代替実施例では、圧力センサ・デバイス136を制御システム140の筐体内に一体化することができ、それにより第3のライン135は、対応するポート145まで延びる流体充填経路となり、内部圧力センサ・デバイス(デバイス136に類似)が、圧力測定値を抽出し、冠静脈洞圧を示す信号を出力することができる。
【0038】
引き続き図2を参照すると、システム100は、ECG信号を制御システム140に出力するために1つ又は複数のECGセンサ148を含むことができる。この実施例では、システム100は、1対のECGセンサ・パッド148を含み、これらが、心臓10に近い患者の皮膚に貼着される。ECGセンサ148は、ケーブルを介して制御システム140に接続され、ケーブルは、制御システム140の筐体にある対応するポート149に嵌まる。以下により詳細に説明するように、ECGデータは、グラフィカル・ユーザ・インターフェース142によってグラフとして表示することができ、それにより心臓専門医又は他の使用者は、冠静脈洞は閉塞状態及び非閉塞状態にある間に、患者の心拍数及び他の特性を容易に監視することができる。任意選択で、制御システム140のグラフィカル・ユーザ・インターフェース142は、画面上に(ECGセンサ・データに基づいて)心拍数データを数値で出力することもでき、それにより心臓専門医が心拍数(例えばbpm(毎分の拍動数)単位で)を容易に確認することができる。制御システム140によって受信されるECGセンサ信号は、内部制御回路でも使用されて、閉塞期間の開始(例えばバルーン・デバイス122が膨張される開始時間)及び非閉塞期間の開始(例えばバルーン・デバイス122が収縮される開始時間)を適切にタイミング調整する。
【0039】
図2に示されるように、冠静脈洞閉塞カテーテル120は、いくつかの静脈アクセス点の任意の1つを使用して、静脈系を通して心臓10に送られる。冠静脈洞閉塞カテーテル120が冠静脈洞20内に位置決めされている時間の少なくとも一部にわたってPISCO処置を行うようにカテーテル120が制御されるいくつかの実施例では、そのようなアクセス点はPICSOアクセス点と呼ばれることがある。例えば、ガイド部材110及び遠位先端部分121は、上腕静脈でのアクセス点12、鎖骨静脈でのアクセス点13、又は頚静脈でのアクセス点14から静脈系内に挿入することができる。これらのアクセス点の任意の1つから、上大静脈を通して右心房11内にガイド部材110を進めることができる。好ましくは、ガイド部材110は、冠静脈洞20の入口部分に進められ、次いで、カテーテル120の遠位先端部分121が、ガイド部材110に沿って冠静脈洞20内に摺動可能に進められ、その後、ガイド部材110は引き戻されて右心房11内に留まる。別の実例では、ガイド部材110及び遠位先端部分121は、大腿静脈でのアクセス点18から静脈系内に挿入することができる。この実例では、下大静脈を通して右心房11内にガイド部材110を進めることができる。前述したように、カテーテル120の遠位先端部分121は、ガイド部材110に沿って冠静脈洞20内に摺動可能に進められ、その後、ガイド部材110は引き戻されて右心房11内に留まる。
【0040】
いくつかの実施例では、心臓内の閉塞物35は、血管形成術バルーン・カテーテルやステント・デリバリ器具などの経皮的冠動脈形成術(PCI)器具を使用して修復又は除去することができる。図2に示されるように、PCI器具は、複数のPCIアクセス点の任意の1つを通して動脈系に達することができる。いくつかの実装形態では、PCI器具は、大腿動脈でのアクセス点15、橈骨動脈でのアクセス点16、又は鎖骨動脈でのアクセス点17から動脈系内に挿入することができる。したがって、前述したように、システム100のいくつかの実施例は、静脈系へのPICSOアクセス点を使用することができ、一方、動脈系内にPCI器具を挿入するためにPCIアクセス点が使用される。
【0041】
次に図3を参照すると、カテーテル・デバイス120は、その遠位端部に沿ってバルーン・デバイス122を担持する。カテーテル120は、その近位端にハブ部分132を有し、ハブ部分132において、各近位接続ライン133、134、及び135(図示せず)が、Y字形コネクタ139を介してカテーテル120のそれぞれの内腔と接続される。或いは、複数のフィード・ラインのための複数の出口を提供することができる。2つの近位接続ラインの一方133は、バルーン122を膨張及び収縮させる働きをする内腔(例えば膨張内腔158)と接続され、また近位接続部片137を担持し、近位接続部片137に流体源を接続することができる。近位接続ラインの他方134は、バルーン122内部の圧力を測定する働きをする内腔(バルーン圧力監視内腔159)と接続され、また近位接続部片137を担持し、近位接続部片137は適切な圧力測定手段と接続させることができる。最後に、カテーテル120の中心内腔125(例えば圧力センサ内腔)と接続するために、ルアー・ロック138をハブ部分132の外に案内することができる。
【0042】
カテーテル先端要素129の先端とハブ部分132の間の距離が符号aで表され、頚静脈を介してでも、大腿静脈又は上腕静脈を介してでもカテーテルを導入できるように例えば約1メートルである。カテーテル120の保管中にバルーン122を保護するために、カテーテル先端要素129及びバルーン122に被せて矢印119の方向ですべらせることができる保護ホース118が提供される。
【0043】
図4による詳細図から明らかなように、バルーン122は、膨張状態では、ほぼ円筒形の中央部分152を有し、中央部分152の各側に円錐部分153が隣接し、前記円錐部分153はそれぞれ、カラー形状の端部部片154を介してカテーテル・シャフト155と接続される。膨張状態では、円筒形部分152の領域でのバルーン122の直径は、例えば約12mm〜約22mmの間でよく、好ましくは約15mmである。バルーン122の膨張部分の長さbは、例えば約20mm〜約30mmの間でよく、好ましくは約25mmである。バルーン122内に位置決めされたマーカー・バンド156は、適切な撮像プロセスによって手術中に見ることができるように、X線適合性材料を担持することができる。
【0044】
いくつかの実施例によれば、カテーテル・シャフト155は、ハブ部分132から遠位部分121(例えばバルーン122又は先端要素129)まで延びる複数の内腔を含むことができる。図5による断面図に示されるように、カテーテル120は、中心内腔125(例えばこの実施例では圧力センサ内腔)と、2つのリング・セグメント形状の内腔158及び159とを有する。リング・セグメント形状の内腔158(例えばこの実施例では膨張内腔)は、リング・セグメント形状の内腔159(例えばこの実施例ではバルーン圧力監視内腔)よりも大きい中心角にわたって広がり、したがってリング・セグメント形状の内腔159よりも大きい弧の長さを提供する。先と同様に、膨張内腔158は、バルーン122の内部と連絡し、バルーン122を膨張及び収縮させる働きをする。先と同様に、バルーン圧力監視内腔159は、バルーン122の内部と連絡し、バルーン122の内部の圧力を測定する働きをする。
【0045】
図9(バルーン122の内部にあるカテーテル120の一部分を示し、この図ではバルーン122は取り除かれている)から明らかなように、内腔158及び159はそれぞれ、軸方向でずらされてそれぞれ提供される2つの開口160及び161を介してバルーンの内部と連絡する。バルーン122の内部に通じる少なくとも2つの半径方向開口160及び161を使用することにより、特に萎むときにバルーンがすべての開口を早まって覆い、すなわちバルーンの完全な排気の前に覆い、それによりさらなる排気が難しくなる又は不可能になる危険を減少させることができる。リング・セグメント形状の内腔158及び159の互いに隣接する端部の間に、円形断面を有する内腔157が設けられる。内腔157には電気配線やセンサなどを通すことができる。また、以下により詳細に説明するように、いくつかの実施例では、バルーン122の領域で、内腔157内に補剛ワイヤ(図7のワイヤ165参照)を配置することができる。さらに又は代わりに、電気配線やセンサなどを中心内腔157に通すこともできる。
【0046】
したがって、カテーテル・デバイス120の内腔125、157、158、及び159は、互いに異なる断面幾何形状を有することができる。例えば、バルーンを膨張及び/又は収縮させる働きをする膨張内腔158は、断面でリング・セグメント形状を有し、中心内腔125の半径方向外側に配置することができる。第2の内腔159(例えばこの実施例ではバルーン圧力監視内腔)は、断面でリング・セグメント形状を有し、中心内腔125の半径方向外側に配置することができ、弧の中心角は、リング・セグメント形状の膨張内腔158に比べて小さいことが好ましい。膨張内腔158のリング・セグメント形状の断面がバルーン圧力監視内腔159のリング・セグメント形状の断面よりも大きい中心角にわたって広がっていることにより、膨張内腔158に関する断面積のほうが大きく、同時に別個の圧力測定が可能になる。別個の内腔159によって圧力測定を行うことができることには、例えば曲げ荷重(又はねじれ)の下で生じ得る座屈を検出することができるという利点がある。膨張内腔158内と別個の内腔159内で測定される異なる圧力により、高い信頼性で座屈を検出することができる。したがって、そのような状況では、即時にそれぞれの安全性測定を行うこと、例えば安全弁を作動させることが可能である。図6による断面図から明らかなように、カテーテル・シャフト155を取り囲むハイポチューブの形態での補剛要素123が、バルーン2の近位端から距離c(図4)の位置に配置される。ハイポチューブ23の例示的実施例が、図10に示される。図7に示されるように、例えばニチノールからなる補剛ワイヤ165を内腔157内に配置することができる。バルーン圧力がカテーテル・シャフト155に対して軸方向アップセット力を及ぼすことにより、バルーン122によって取り囲まれた領域内でカテーテル・シャフト155が座屈又は他の変形をする可能性を減少させるために、補剛ワイヤ165はバルーン122の長さにわたって延在することができる。
【0047】
カテーテル先端要素129の例示的実施例が、図7に詳細に示される。この図には、カテーテルの遠位端へのバルーン122のカラー154の取付けが特に示されている。接続は、挿間された遠位充填部材166によって実現され、カラー154とカテーテルの材料接着は、充填部材166の挿間後、熱接合又は接着によってこの領域内で行われる。カテーテル先端要素129の遠位開口128から距離d(例えばこの実施例では約6.5mm)の位置にさらなるマーカー・バンド167を配置することができる。カテーテル先端要素129は、移行部片169によってカテーテルの遠位端と接続される。カテーテル先端要素129の軸方向内腔126が、カテーテルの中心内腔125に直接連続して配置されていることが明らかである。カテーテル先端要素129は、遠位開口128に向かって円錐状にテーパしており、その周面に均等に分布された3つの半径方向開口127を含む部分を備える。
【0048】
図8による斜視図から明らかなように、遠位開口128の縁部162は、血管内壁を傷付けないように丸められている。
【0049】
図10は、螺旋線状の切欠163を備えるハイポチューブ123を示す。遠位端部分164での螺旋163のピッチが、より近位の領域165よりも小さいことが明らかである。これにより、遠位端部分164で曲げ強さが低くなり、カテーテルは、その導入中に体内管の様々な湾曲に、より良く従うことができるようになる。いくつかの実施例では、近位の領域165での螺旋ピッチに対する遠位端部分164での螺旋163のピッチは、曲げ強さがバルーンまで延びるカテーテルの長さに応じて変化するように選択することができる。
【0050】
したがって、本明細書で説明するように、カテーテル120は、閉塞された血管の逆圧により閉塞カテーテル・デバイスが閉塞位置から後退する可能性を減らすために、十分な剛性を提供するように構成することができる。同時に、カテーテル120は、カテーテル120にある膨張可能バルーン122を所望の適用部位(例えば冠静脈洞20)に位置決めすることができるように、小さな曲率半径を有する血管領域を通してカテーテル120を前方に安全に押すことができるようにするために、十分な可撓性を提供することができる。
【0051】
いくつかの実施例では、バルーン・カテーテル120の曲げ強さは、カテーテル・シャフト155を取り囲む補剛要素123によって得られる。また、補剛要素123は、バルーン・カテーテルの前進を容易にする。カテーテルの前進中に血管を傷付ける可能性を減らすため、及び小さな曲率半径を有する湾曲領域での前進を可能にするために、補剛要素123の遠位端部分164をバルーン122の近位端に隣接して位置決めすることができ、この遠位端部分164は、補剛要素の残りの部分に比べて低い曲げ強さを提供することができる。したがって、より高い可撓性をもつ領域が補剛要素123の遠位端部分164に意図的に形成されて、カテーテル120の前進中に体内管の湾曲路への適合を可能にし、それと同時に、好ましくは、血管壁が傷付かないように、それぞれの血管の長手方向長さとほぼ平行にカテーテル120のバルーン担持遠位部分121を保つ。
【0052】
特定の実施例では、補剛要素123は、バルーン122と近位ハブ部分132の間のカテーテル・シャフト155の部分のほぼ全体にわたって延びていてよい。好ましい実施例では、補剛要素123の遠位端と、バルーン122の膨張可能領域の近位端との間に距離cが与えられる。本明細書で説明する実施例では、距離cは、一方では、(距離が大きすぎる場合に)カテーテル・シャフトが補剛管の遠位端とバルーンの間で座屈しないように、他方では、(距離が短すぎる又は全くない場合に)この領域で可撓性及びしなやかさが制限されすぎないように寸法設定される。いくつかの好ましい実施例では、距離cは約4〜6mmであり、特に約5mmである。
【0053】
図10に示されるように、補剛要素123は、単独のステンレス鋼管によって形成することができ、又は、カテーテル・シャフト155と共押出され、カテーテル・シャフト155のものとは異なる合成材料からなる少なくとも1つの外層によって形成することもできる。或いは、補剛要素123は、ナイロン組織によって形成することができ、又はそのような組織を有することができる。いくつかの実施例では、低い曲げ強さを有する補剛要素の部分は、補剛要素の遠位端から約30〜120mm、好ましくは約40〜90mmの長さにわたって延びている。
【0054】
好ましい構成によれば、ハイポチューブ123は、曲げ強さに影響を与える少なくとも1つの切欠を有することができる。図10に示される実施例では、切欠163は、好ましくは螺旋線状に延在し、螺旋線又は螺旋は、低い曲げ強さのハイポチューブ部分で、残りの部分よりもピッチが小さい。本明細書で説明するように、曲げ強さが低いハイポチューブ部分で、螺旋163のピッチがハイポチューブの遠位端から連続的に増すことによって、さらなる最適化を実現することができる。上述した端部部分におけるハイポチューブの連続的に変わる曲げ強さにより、座屈部位がなくなる。
【0055】
代替実施例では、螺旋線状の切欠163ではなく、軸方向でずらされた複数の切欠を補剛要素に提供することもできる。各切欠は、ハイポチューブの円周の一部にわたって延在していてもよく、曲げ強さは、個々の切欠の間の軸方向距離に応じて決まる。本発明のいくつかの実施例を説明してきた。それにも関わらず、本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正を加えることができることを理解されたい。したがって、他の実施例が添付の特許請求の範囲の範囲内にある。
【符号の説明】
【0056】
10 心臓
11 右心房
20 冠静脈洞
21 局所静脈
30 心筋組織
35 閉塞物
40 冠動脈
41 局所動脈
100 システム
110 ガイド部材
120 冠静脈洞閉塞カテーテル
121 遠位先端部分
122 膨張可能バルーン
123 補剛要素
127 半径方向開口
129 先端要素
131 近位部分
132 近位ハブ
133、134、135 流体ライン、流体センサ
140 制御システム
142 ディスプレイ・デバイス
148 ECGセンサ
155 カテーテル・シャフト
158 膨張内腔
164 遠位端部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内管、特に冠静脈洞内に導入するため、及び前記体内管を間歇的に閉塞させるためのバルーン・カテーテルであって、遠位端部分に膨張可能バルーン(122)を担持するカテーテル・シャフト(155)と、前記カテーテル・シャフト(155)を通して延びる複数の内腔とを有するバルーン・カテーテルにおいて、
前記カテーテル・シャフト(155)の中心を通して少なくとも1つの遠位開口(127、128)へと延びる圧力センサ内腔(125)が提供され、前記少なくとも1つの遠位開口(127、128)は、前記体内管中の流体と連絡するように前記バルーン(122)の遠位に設けられていること、また
さらに、前記バルーン(122)を膨張及び収縮させるための膨張内腔(158)が提供されること、及び
前記カテーテルが、前記カテーテル・シャフト(155)に沿って延びる補剛要素(123)を有し、該補剛要素(123)が、前記バルーン(122)の近位端に隣接して位置決めされる遠位端部分(164)であって、該補剛要素(123)の残りの部分に比べて曲げ強さが低い遠位端部分(164)を有すること
を特徴とするバルーン・カテーテル。
【請求項2】
前記補剛要素が、前記カテーテル・シャフト(155)を取り囲むハイポチューブ(123)を有することを特徴とする請求項1に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項3】
前記補剛要素(123)が、前記バルーン(122)と近位ハブ(132)の間の前記カテーテル・シャフト(155)の部分のほぼ全体にわたって延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項4】
曲げ強さが低い前記補剛要素(123)の前記遠位端部分(164)が、30〜120mmの長さ、好ましくは40〜90mmの長さにわたって延びていることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項5】
前記ハイポチューブ(123)が、前記曲げ強さに影響を与える少なくとも1つの切欠(163)を有することを特徴とする請求項2、3、又は4に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項6】
前記切欠(163)が螺旋線状に延び、前記螺旋線が、曲げ強さの低い前記補剛要素(123)の遠位端部分(164)において前記補剛要素(123)の残りの部分よりも小さいピッチを有することを特徴とする請求項5に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項7】
曲げ強さの低い前記補剛要素(123)の前記遠位端部分(164)において、前記螺旋線の前記ピッチが、前記補剛要素(123)の前記遠位端から連続的に増していることを特徴とする請求項6に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項8】
前記カテーテルの前記内腔(125、157、158、159)が、互いに異なる断面幾何形状を有することを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項9】
前記膨張内腔(158)が、断面でリング・セグメント形状を有し、前記圧力センサ内腔(125)の半径方向外側に配置されることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項10】
前記バルーン(122)内の圧力を測定するためのバルーン圧力監視内腔(159)がさらに提供され、該内腔(159)が、断面でリング・セグメント形状であり、前記圧力センサ内腔(125)の半径方向外側に配置され、また前記バルーン圧力監視内腔(159)の弧の中心角が、好ましくは前記リング・セグメント形状の膨張内腔(158)に比べて小さいことを特徴とする請求項9に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項11】
円形又は楕円形内腔(157)が、前記膨張内腔(158)のリング・セグメント形状断面と前記バルーン圧力監視内腔(159)のリング・セグメント形状断面の隣接端部の間に提供されることを特徴とする請求項10に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項12】
前記膨張内腔(158)及び任意選択で前記バルーン圧力監視内腔(159)がそれぞれ、前記カテーテル・シャフト(155)の軸方向にずらされるように配置された少なくとも2つの半径方向開口(160、161)を介して前記バルーン(122)の内部と接続されることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一項に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項13】
前記カテーテルが、前記バルーン(122)の領域で補剛手段、特に補剛ワイヤ(165)を有し、該ワイヤ(165)が、好ましくは前記バルーン(122)の長さにわたって延びていることを特徴とする請求項1から12までのいずれか一項に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項14】
前記カテーテル・シャフト(155)の中心を通して延びる前記圧力センサ内腔(125)と流体連絡するカテーテル先端要素(129)をさらに有し、該カテーテル先端要素(129)が、前記体内管内の流体と連絡するために前記バルーン(122)の遠位に位置決めされた複数の遠位ポートを有し、該複数の遠位ポートが、複数の、好ましくは少なくとも2つ、特に3つの半径方向開口(127)を有し、該開口(127)が、前記カテーテル先端要素(129)の円周面にわたってほぼ均等に分布される請求項1から13までのいずれか一項に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項15】
前記カテーテル先端要素(129)の遠位開口(128)の遠位縁部が丸み付けされていることを特徴とする請求項14に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項16】
前記カテーテル先端要素(129)が、前記遠位開口(128)に向けて円錐状にテーパしていることを特徴とする請求項14又は15に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項17】
前記カテーテル先端要素(129)が可撓性であることを特徴とする請求項14、15、又は16に記載のバルーン・カテーテル。
【請求項18】
前記カテーテル先端要素(129)の遠位端と前記バルーン(122)の前記膨張可能部分の遠位端との距離が少なくとも30mm、好ましくは35〜45mmであることを特徴とする請求項14から17までのいずれか一項に記載のバルーン・カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−245300(P2011−245300A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−115381(P2011−115381)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(510049746)ミラコー メディカル システムズ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】