説明

体外循環回路用チャンバ

【課題】チャンバ本体内での血液等の液の滞留を抑制して、凝血等の発生を効果的に防止できる体外循環回路用チャンバを提供する。
【解決手段】このチャンバ10は、下方に血液等の液の貯留部が形成され、上方に空気層が形成されるチャンバ本体40と、このチャンバ本体40の底部51に設けられた血液等の液の流出口53と、前記チャンバ本体40の中心に配置されると共に、チャンバ本体40の上下方向に沿って筒状に伸び、その下端が前記流出口53に連通したフィルタ70と、前記チャンバ本体40内の底部51の前記フィルタ70の外周において、前記チャンバ本体40の周方向に沿った向きで開口するように設けられた血液等の液の流入口55と、前記空気層Fに連通するように前記チャンバ本体40の上部に連結された空気圧力測定ラインとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の液を体外循環させて処理する体外循環回路の途中に設置される、体外循環回路用チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血液透析回路、心肺用血液回路等のような体外循環回路においては、血液等の液の圧力を検出して流量を制御したり、患者に返血する際に気泡を分離したり、更には回路内の空気や、異物、凝血分を堰き止めて、体内への流入を阻止したりするために、ドリップチャンバと呼ばれるチャンバが配置されている。
【0003】
従来のこの種のチャンバとして、下記特許文献1には、チャンバ本体と、このチャンバ本体の底部に上方に向けて設けられた血液等の液の流入口と、前記チャンバ本体の底部に設けられた血液等の液の流出口とを有する体外循環回路用チャンバが開示されている。また、チャンバ本体内には、底部が円形状をなし上方へ向かって次第に縮径するような、概略三角錐形状をなしたフィルタが、チャンバ本体底部の流出口を囲むようにして配置されている。
【0004】
このチャンバによれば、血液が、チャンバ本体底部の流入口から上方に向けてチャンバ本体内に流入し、チャンバ本体上方へと流れ、チャンバ本体の上方で反転して、180度向きを変えて流下し、フィルタを通過して、流出口から流出する。それによって、血液中に気泡が混入しにくくなり、気泡によって血液の液面が上昇するのを抑制でき、体外循環を長時間に亘って安定して行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−200174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のチャンバの場合、チャンバ本体底部の流入口から上方に向けてチャンバ本体内に流入した血液が、チャンバ本体上方へ流れ、上方で反転して流下し、フィルタを通過して、流出口から流出するのであるが、チャンバ本体の底部のフィルタの周縁において、血液が滞留しやすい傾向があった。このため、血液の凝固や血漿分離の発生をより確実に防止できるチャンバの開発が望まれていた。
【0007】
したがって、本発明の目的は、チャンバ本体内での血液等の液の流れをよりスムーズにして、チャンバ本体内での血液等の液の滞留を抑制して、凝血等の発生を効果的に防止することができる、体外循環回路用チャンバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、血液等の液の体外循環回路におけるチャンバにおいて、
下方に血液等の液の貯留部が形成され、上方に空気層が形成されるチャンバ本体と、
このチャンバ本体の底部に設けられた血液等の液の流出口と、
前記チャンバ本体の中心に配置されると共に、チャンバ本体の上下方向に沿って筒状に伸び、その下端が前記流出口に連通したフィルタと、
前記チャンバ本体内の底部の前記フィルタの外周において、前記チャンバ本体の周方向に沿った向きで開口するように設けられた血液等の液の流入口と、
前記空気層に連通するように前記チャンバ本体の上部に連結された空気圧力測定ラインとを備えていることを特徴とする体外循環回路用チャンバを提供するものである。
【0009】
上記発明によれば、チャンバ本体内の底部に開口する流入口から、血液等の液がチャンバ本体の周方向に沿って流出するので、血液等の液がフィルタの外周を渦のように流れながら上昇し、その過程でフィルタ内に透過して流出口から流出する。このため、チャンバ本体内で血液等の液が滞留しにくくなり、凝血等の発生をより確実に防止することができる。
【0010】
なお、空気圧力測定ラインを通して供給される空気圧を測定することにより、チャンバ内の圧力、言い換えると血液等の液圧を測定することができ、それによって回路内の圧力の安全性を確保することができる。また、血液等の液を、フィルタを通して取出すことにより、血液等の液中に混入した気泡を除去することができる。
【0011】
本発明においては、前記チャンバ本体の底部には、前記流入口から前記フィルタ外周に沿って螺旋状をなして上昇する傾斜面が設けられていることが好ましい。これによれば、チャンバ底部の流入口から流入した血液等の液は、螺旋状をなす傾斜面に沿って流れながら上昇するので、フィルタの外周を回る渦流をより効果的に形成することができ、血液等の液の滞留やそれによる血液等の凝固をより効果的に防止できる。
【0012】
本発明においては、前記傾斜面の、前記フィルタ外周に沿った内側周縁部には、前記チャンバ本体の底部に設けられた流出口の中心に向けて斜め下方に傾斜する案内面が形成されていることが好ましい。これによれば、フィルタの下部外周に血液等の液が流動する空間を確保し、血液等の液の滞留を防止すると共に、傾斜面に沿って流れる血液等の液を、案内面でガイドしつつフィルタ内にスムーズに流入させることができる。
【0013】
本発明においては、前記チャンバ本体は円筒状をなしていると共に、前記フィルタも円筒状をなしていることが好ましい。これによれば、チャンバ底部の流入口から流入した血液等の液が、円筒状のチャンバ本体の内周と同じく円筒状のフィルタの外周との間の空間に沿って流れるので、渦流をより効果的に形成することができる。
【0014】
本発明においては、前記チャンバ本体の上部には、抗凝固剤を前記周壁の内周面を伝わって流下させるように配置された抗凝固剤注入部が設けられていることが好ましい。これによれば、抗凝固剤が、周壁の内周面を伝わって流下し、血液等の液に混入するので、血液等の液に気泡が混入することを防止できる。
【0015】
本発明においては、前記チャンバ本体は、筒状の周壁と、該周壁の下方開口部に装着される下部キャップと、前記周壁の上方開口部に装着される上部キャップとを有し、
前記下部キャップには、血液等の液の流入ラインが連結される導入管部と、この導入管部に連通する前記流入口と、血液等の液の流出ラインが連結される導出管部と、この導出管部に連通する前記流出口とが設けられ、
前記上部キャップには、前記空気圧力測定ライン連結部と、抗凝固剤注入部と、前記フィルタの支持部とが設けられており、
前記フィルタは、その下端部を前記下部キャップの導出管部に支持され、その上端部を前記上部キャップの支持部に支持されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、チャンバ本体が、筒状の周壁と、下部キャップと、上部キャップとで構成されるので、各部品の成形が容易となると共に組立作業が容易となる。また、上下のキャップにフィルタの上下端部を支持させて、フィルタをしっかりと固定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、チャンバ本体内の底部に開口する流入口から、血液等の液がチャンバ本体の周方向に沿って流出し、血液等の液がフィルタの外周を渦のように流れながら上昇し、その過程でフィルタ内に透過して流出口から流出するようになっているので、チャンバ本体内で血液等の液が滞留しにくくなって、凝血等の発生をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の体外循環回路用チャンバの分解斜視図である。
【図2】同チャンバの斜視図である。
【図3】同チャンバにおいて、一部を破断した場合の斜視図である。
【図4】同チャンバの要部を示しており、(A)は(B)のA−A矢示線における断面斜視図、(B)は要部の平面図である。
【図5】同チャンバのチャンバ本体の底部の形状を示す斜視図である。
【図6】同チャンバが配置される体外循環回路の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜6を参照して、本発明の体外循環回路用チャンバの一実施形態について説明する。
【0020】
本発明の体外循環回路用チャンバ(以下、「チャンバ」という)は、図6に示すような体外循環回路1(以下、「回路1」という)に配置されるものである。この実施形態におけるチャンバは、第1チャンバ10及び第2チャンバ20として、体外循環回路1の所定箇所に配置されるようになっている。また、この実施形態における回路1は、例えば、血液透析回路、心肺用血液回路等のように、体内から血液を取出して所定の処理をし、再び体内に戻す回路を意味し、特に血液透析回路に好適であり、更には長時間かけてゆっくりとした流速で透析を行う持続的血液ろ過装置に好適である。
【0021】
まず、上記回路1について説明する。図6には、回路1を血液透析回路に適用した場合の概略説明図が示されている。同図において、Aは患者からの血液を流入させる血液流入部(脱血部)、Bは浄化された血液を患者に戻す血液返送部(返血部)である。
【0022】
上記血液流入部Aは、ろ過器(ダイアライザ)3の血液流入部3aに接続されるチューブ4に連結されている。チューブ4の途中には、上流側から、ピロー6、血液ポンプ7、第1チャンバ10が配置されている。また、第1チャンバ10の上方には、血液中に抗凝固剤などを添加するためのシリンジポンプ5が配置されており、これが後述する第1チャンバ10の抗凝固剤注入部66にチューブ69を介して連結されている(図1参照)。更に、第1チャンバ10には、保護フィルタ11を介して圧力計12が接続されており、第1チャンバ10上部の空気層の圧力を測定し、血液ポンプ7を制御することにより、ろ過器3への送液圧力を調整するようにしている。
【0023】
上記チューブ4を通ってろ過器3に流入した血液は、ろ過器3内の図示しない中空糸内を通過し、血液流出部3bからチューブ14の端部に連結された、患者の血液返送部Bへと返送される。チューブ14の途中には、第2チャンバ20が配置されている。第2チャンバ20には、上記第1チャンバ10と同様に、保護フィルタ21を介して圧力計22が連結されており、患者への送液圧力を検出できるようにしている。
【0024】
更に、この回路1は、血液中の老廃物や電解質等を取り除き、また、電解質を補う透析液を供給する透析液ラインL1と、血液から取り除かれた老廃物や電解質、水等を含むろ液を体外へと排出するろ液ラインL2と、体内から除去された体液成分を補充する補液を供給する補液ラインL3とを有している。
【0025】
前記透析液ラインL1はチューブ23を有し、その一端が透析液を充填したパック24に接続され、他端がろ過器3の透析液流入部3cに接続されている。そして、透析液流入部3cを通ってろ過器3内に流入した透析液は、ろ過器3内の中空糸の外側空間を通過して、同ろ過器3の透析液流出部3dから、後述のろ液ラインL2のチューブ27を通して取出されるようになっている。また、チューブ23の途中には、透析液の流速を計測するための計量容器25と、透析液を送液するための透析液ポンプ26とが取付けられている。
【0026】
前記ろ液ラインL2はチューブ27を有し、その一端が前記ろ過器3の透析液流出部3dに接続され、他端が廃液容器35内に配置されている。チューブ27の上流側(ろ過器3側)の途中には、第3チャンバ30が配置されている。この第3チャンバ30には、保護フィルタ31を介して圧力計32が接続されており、ろ液の排液圧力を検出できるようになっている。そして、透析液流出部3dから流出したろ液は、チューブ27を通って廃液容器35に回収されるようになっている。また、チューブ27の下流側(廃液容器35側)の途中には、ろ液の流速を計測するための計量容器33と、ろ液を排液するためのろ液ポンプ34とが取付けられている。
【0027】
前記補液ラインL3はチューブ36を有し、その一端が補液を充填したパック37に接続され、他端が前記第2チャンバ20の上部に連結されており、補液がチューブ36を通って第2チャンバ20へと供給されるようになっている。また、チューブ36の途中には、補液の流速を計測するための計量容器38と、補液を送液するための補液ポンプ39とが取付けられている。
【0028】
上記回路1の基本的な動作について説明すると、患者の血液流入部Aから取出された血液が、血液ポンプ7により、チューブ4を通して、第1チャンバ10に供給され、この第1チャンバ10からろ過器3の中空糸内に流入する。
【0029】
一方、透析液は、パック24からチューブ23を通り、透析液ポンプ26によって、ろ過器3の下部から中空糸の外側空間に流入する。そして、ろ過器3内にて、中空糸膜を通して、血液中の老廃物が透析液側に移行し、血液が浄化される。
【0030】
ろ過器3を通過して浄化された血液は、チューブ14を通り、第2チャンバ20に流入する。また、パック37からチューブ36を通して、補液ポンプ39によって供給される補液が、第2チャンバ20に流入し、浄化された血液に補液が添加される。こうして浄化された血液は、チューブ14を通して患者の血液返送部Bに戻されるようになっている。
【0031】
次に、図1〜5を参照して、上記構造の回路1の途中に配置される、本発明の体外循環回路用チャンバについて説明する。この実施形態では、血液が通過する上記第1チャンバ10及び第2チャンバ20が、本発明によるチャンバをなしている。すなわち、これらのチャンバ10,20は血液が通過する部分となっているので、以下に説明する構造を採用することにより、血液を滞留しにくくして凝血等の発生を防止できるようになっている。なお、第1チャンバ10及び第2チャンバ20は、ほぼ同様の構造をなしているので、ここでは第1チャンバ10について詳細に説明することとする。
【0032】
図1、2に示すように、この第1チャンバ10(以下、単に「チャンバ10」という)は、下方に血液等の液の貯留部Eが形成され、上方に空気層Fが形成され(図2参照)、上方及び下方が閉塞した略円筒状のチャンバ本体40を有している。このチャンバ本体40は、円筒状の周壁41と、該周壁41の下方開口部43(図4(A)参照)に装着される下部キャップ50と、前記周壁41の上方開口部45(図4(A)参照)に装着される上部キャップ60とを有している。
【0033】
図4、5に示すように、前記下部キャップ50は、前記下方開口部43を覆う円板状の底部51と、同底部51の外周縁から上方に立設して、前記周壁41の下方外周に被さるカバー部52と、前記底部51の下面中央部から突設された筒状の導出管部54とを有している。上記導出管部54は、底部51の内面中央に開口した円形状の流出口53に連通している。また、流出口53の周囲の一箇所には、血液等の液をチャンバ本体40内に流入するための、円形状の流入口55が形成されており、この流入口55に筒状の導入管部56が、下部キャップ50の底面から突出するように連結されている。導入管部56が連結された前記流入口55は、下方開口55aが垂直に開口すると共に、上方開口55bがチャンバ本体40内の周方向に沿った向きで開口するように形成されている。
【0034】
図2,3に示すように、導出管部54には、血液等の液の流出ラインを構成するチューブ4aが連結され、導入管部56には、血液等の液の流入ラインを構成するチューブ4bが連結されるようになっている。
【0035】
また、導出管部54に連結されるチューブ4aの上端部には、後述するフィルタ70の下端部を支持するフィルタ支持筒15が装着されている。このフィルタ支持筒15は、チューブ14aの上端外周に装着される基部15aと、この基部15aよりも縮径した支持部15bとからなる。
【0036】
また、図3〜5に示すように、下部キャップ50の底部51には、前記流入口55から、チャンバ本体40の中心に配置される後述する円筒状のフィルタ70の外周に沿って、螺旋状に上昇する傾斜面57が設けられている。
【0037】
この実施形態の傾斜面57は、流入口55の上方開口55bの前方に位置する部分が最も低い面をなし、上方開口55bの前方から、流出口53の周方向に沿って徐々に高く突出しながら、螺旋状に一回りした形状となっている(図4(B)、図5参照)。そして、最も高く突出した面と、最も低い面との段差によって形成される端面58に、前記上方開口55bが開口している。
【0038】
このような傾斜面57を設けることにより、流入口55の上方開口55bから、チャンバ本体40内に流入した血液等の液が、図4(A)の矢印に示すように、周壁41の内周面及び傾斜面57に沿って螺旋状に流れながら上昇するようになっている。
【0039】
更に、図1〜5に示すように、この傾斜面57の、フィルタ70の外周に沿った内側周縁部には、チャンバ本体40を構成する下部キャップ50の底部51の流出口53の中心に向けて斜め下方に傾斜する案内面57aが形成されている。この実施形態における案内面57aは、螺旋状に上昇する傾斜面57の内側周縁から、流出口53の外周縁に至るように斜め下方にテーパ状に切欠かれた形状(すり鉢状)をなしている(図4(A)及び図5参照)。この案内面57aにより、フィルタ70の下部外周に、血液等の液が流入する空間を確保して、フィルタ70と傾斜面57との隙間に血液等の液が滞留するのを防止すると共に、傾斜面57に沿って流れる血液等の液をガイドしてフィルタ70内に流入させやすくすることができる。
【0040】
一方、周壁41の上方開口部45に装着される上部キャップ60は、前記上方開口部45を覆う円板状の天井部61と、同天井部61の外周縁から下方に垂設し、前記周壁41の上方外周に被さるカバー部62とを有している。前記天井部61の下面中央からは、フィルタ70の上端部を支持するための、円筒状のフィルタ支持部63が垂設されている。
【0041】
また、図2,3に示すように、円板状をなす天井部61の周縁に沿った位置には、筒状をなした補液ライン連結部64、空気圧力測定ライン連結部65、抗凝固剤注入部66が、天井部61上面から突出するように接続されている。補液ライン連結部64、空気圧力測定ライン連結部65、抗凝固剤注入部66の下端部は、上部キャップ60の天井部61を貫通して、チャンバ本体40内に連通している。なお、補液ライン連結部64、空気圧力測定ライン連結部65、抗凝固剤注入部66は、上部キャップ60と一体に成形することもできる。
【0042】
前記補液ライン連結部64にはチューブ8が連結されており、必要に応じてチャンバ本体40内に補液を供給可能となっている。なお、チューブ8から補液を供給する必要がない場合には、チューブ8を閉塞しておけばよい。また、前記空気圧力測定ライン連結部65には、前記保護フィルタ11及び前記圧力計12が接続されたチューブ67が連結されている。このチューブ67には、三方向弁68が設けられており、その一つの開口68aは、前記圧力計12に連結され、もう一つの開口68bは、図示しない注射器等を連結して、チャンバ本体40内に空気等を注入できるようになっている。
【0043】
一方、前記抗凝固剤注入部66にはチューブ69が連結され、このチューブ69に図6に示したシリンジポンプ5が接続されていて、へパリンやフサン等の抗凝固剤を、チャンバ本体40内に注入できるようになっている。
【0044】
また、上記補液ライン連結部64、抗凝固剤注入部66は、円板状をなした天井部61の周縁に沿った位置に設けられているので、補液や抗凝固剤が、周壁41の内周面を伝わって流下されるようになっている。
【0045】
上記の構造をなしたチャンバ本体40の中心には、同チャンバ本体40の上下方向に沿って筒状に伸び、その下端が流出口53に連通する、円筒状のフィルタ70が配置されている。このフィルタ70の下端部には、フィルタ枠71が装着されている(図1参照)。そして、図3に示すように、フィルタ70の上端部が、前記上部キャップ60のフィルタ支持部63で支持されると共に、前記フィルタ枠71が、導出管部54内に嵌入されたチューブ4a上端の、フィルタ支持筒15の支持部15b内に受け入れられて支持される。その結果、フィルタ70の上下両端部が支持されて、チャンバ本体40内にしっかりと固定できるようになっている。このとき、図3に示すように、支持部15bの上端部と、下部キャップ50の底部51の上端面とが合致するように、導出管部54内にフィルタ支持筒15が嵌入されるようになっている。なお、この実施形態では、フィルタ70の下端部を、チューブ14a上端のフィルタ支持筒15に連結し、該フィルタ支持筒15を下部キャップ50の導出管部54に挿入支持するようにしたが、フィルタ70の下端部を、導出管部54に直接連結して支持させてもよい。
【0046】
また、上記構造のチャンバ本体40は、筒状の周壁41と、下部キャップ50と、上部キャップ60との3つのパーツで構成されているので、各部品の成形が比較的容易となる。例えば、複雑な屈曲形状をなす螺旋状の傾斜面57も、下部キャップ50に一体形成することができる。また、筒状の周壁41の下方開口部43に下部キャップ50を装着すると共に、同周壁41の上方開口部45に上部キャップ60を装着するだけの作業で、チャンバ本体40を組立てることができ、組立作業性を向上させることができる。
【0047】
以上、第1チャンバ10の構造について説明したが、第2チャンバ20の場合は、抗凝固剤注入部66がなく、補液ライン連結部64に補液ラインL3を構成するチューブ36が連結されていて、チャンバ本体40内に補液を供給可能となっており、更に、流出ラインのチューブ4aがチューブ14aとなり、流入ラインのチューブ4bがチューブ14bとなるだけで、その他の構成はほぼ同じである。
【0048】
次に、上記チャンバ10の作用について説明する。
【0049】
すなわち、血液ポンプ7により送り出された血液が、流入ラインのチューブ4bを通して、流入口55の下方開口55aから流れ込むと共に、同流入口55の上方開口55bからチャンバ本体40内へと流入する。このとき、流入口55の上方開口55bは、図4(B)に示すように、チャンバ本体40の周方向に沿った向きで開口しているので、血液はチャンバ本体40の周方向に沿って流入する。流入した血液は、チャンバ本体40の底部51に設けた螺旋状をなした傾斜面57に沿って、フィルタ70の外周を渦のようにして流れながれながら上昇していき(図4,5参照)、その過程でフィルタ70を通してその内部に流入する。また、傾斜面57の内周には、流出口53の外周縁に至るように斜め下方にテーパ状に切欠かれた形状(すり鉢状)をなす案内面57aが形成されているので、フィルタ70の下部外周に、血液等の液が流入する空間が確保され、フィルタ70と傾斜面57との隙間に血液等の液が滞留するのを防止すると共に、傾斜面57に沿って流れる血液等の液をガイドしてフィルタ70内に流入させやすくすることができる。
【0050】
フィルタ70内に流入した血液等の液は、流出ラインのチューブ4aを通って、図2に示す回路1におけるろ過器3へと流れ込み、更に第2チャンバ20を通って、最終的に患者の血液返送部Bへと戻される。その結果、チャンバ本体40内の下方に血液等の液の貯留部Eが形成され、上方に空気層Fが形成される(図2参照)。
【0051】
このように、このチャンバ10においては、流入口55の上方開口55bをチャンバ本体40の周方向に沿った向きで開口するように設けたことにより、血液等の液がチャンバ本体40の周方向に沿って流出して、血液等の液がフィルタ70外周を渦のように流動することとなるので、チャンバ本体40内で血液が滞留しにくくなり、凝血の発生を防止することができる。
【0052】
また、チャンバ本体40の底部51に、螺旋状をなして上昇する傾斜面57が設けたことにより、血液がチャンバ本体40内を流動するときに、前記傾斜面57に沿って流れながら上昇するので、フィルタ70の外周を回る渦流をより効果的に形成することができ、血液の滞留やそれによる凝血をより効果的に防止することができる。
【0053】
なお、チャンバ10に設けた空気圧力測定ラインを通して供給される空気圧を測定することにより、チャンバ10内の圧力、言い換えると血液等の液圧を測定することができ、それによって回路1内の圧力の安全性を確保することができる。また、血液等の液を、フィルタ70を通して取出すことにより、血液等の液中に混入した気泡を除去することができる。
【0054】
また、前記チャンバ本体40は略円筒状をなすと共に、フィルタ70も円筒状をなしているので、流入口55から流入した血液が、円筒状のチャンバ本体40の内周と同じく円筒状のフィルタ70の外周との間の空間に沿ってスムーズに流れるので、渦流をより効果的に形成することができる。
【0055】
更に、このチャンバ10の上部キャップ60には、抗凝固剤注入部66が設けられていて、これにチューブ69及びシリンジポンプ5が連結されている。したがって、シリンジポンプ5からチューブ69、抗凝固剤注入部66を通して、へパリンやフサン等の抗凝固剤をチャンバ本体40内に注入できるようになっている。この場合、抗凝固剤は、周壁41の内周面を伝わって流下し、血液等の液に混入するので、血液等の液に気泡が混入することを防止できる。
【0056】
なお、従来は、シリンジポンプやチューブや抗凝固剤注入部を、チューブ4bのポンプ7の上流側に設けていたが、そのような態様では、ポンプ7によって発生する脈動流の作用で、シリンジポンプの流出口で血液等の液が止まったり動いたりする現象が発生し、それによって滞留に近い状態となり、抗凝固剤が血液内の電解質と反応して白濁が生じやすくなるという問題があった。
【0057】
この実施例では、上記のように、チャンバ10に抗凝固剤注入部66を設け、これにチューブ69及びシリンジポンプ5を連結したので、ポンプ7による脈動流の影響を受けることがなく、上記問題を解決することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 体外循環回路(回路)
3 ろ過器
3a 血液流入部
3b 血液流出部
3c 透析液流入部
3d 透析液流出部
4 チューブ
4a チューブ
4b チューブ
5 シリンジポンプ
6 ピロー
7 血液ポンプ
8 チューブ
10 第1チャンバ
11 保護フィルタ
12 圧力計
14 チューブ
14a チューブ
14b チューブ
15 フィルタ支持筒
15a 基部
15b 支持部
20 第2チャンバ
21 保護フィルタ
22 圧力計
23 チューブ
24 パック
25 計量容器
26 透析液ポンプ
27 チューブ
30 第3チャンバ
31 保護フィルタ
32 圧力計
33 計量容器
34 ろ液ポンプ
35 廃液容器
36 チューブ
37 パック
38 計量容器
39 補液ポンプ
40 チャンバ本体
41 周壁
43 下方開口部
45 上方開口部
50 下部キャップ
51 底部
52 カバー部
53 流出口
54 導出管部
55 流入口
55a 下方開口
55b 上方開口
56 導入管部
57 傾斜面
58 壁面
60 上部キャップ
61 天井部
62 カバー部
63 フィルタ支持部
64 補液ライン連結部
65 空気圧力測定ライン連結部
66 抗凝固剤注入部
67 チューブ
68 三方向弁
68a 開口
68b 開口
69 チューブ
70 フィルタ
71 フィルタ枠
A 血液流入部
B 血液返送部
E 貯留部
F 空気層
L1 透析液ライン
L2 ろ液ライン
L3 補液ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液等の液の体外循環回路におけるチャンバにおいて、
下方に血液等の液の貯留部が形成され、上方に空気層が形成されるチャンバ本体と、
このチャンバ本体の底部に設けられた血液等の液の流出口と、
前記チャンバ本体の中心に配置されると共に、チャンバ本体の上下方向に沿って筒状に伸び、その下端が前記流出口に連通したフィルタと、
前記チャンバ本体内の底部の前記フィルタの外周において、前記チャンバ本体の周方向に沿った向きで開口するように設けられた血液等の液の流入口と、
前記空気層に連通するように前記チャンバ本体の上部に連結された空気圧力測定ラインとを備えていることを特徴とする体外循環回路用チャンバ。
【請求項2】
前記チャンバ本体の底部には、前記流入口から前記フィルタ外周に沿って螺旋状をなして上昇する傾斜面が設けられている請求項1記載の体外循環回路用チャンバ。
【請求項3】
前記傾斜面の、前記フィルタ外周に沿った内側周縁部には、前記チャンバ本体の底部に設けられた流出口の中心に向けて斜め下方に傾斜する案内面が形成されている請求項2記載の体外循環回路用チャンバ。
【請求項4】
前記チャンバ本体は円筒状をなしていると共に、前記フィルタも円筒状をなしている請求項1〜3のいずれか1つに記載の体外循環回路用チャンバ。
【請求項5】
前記チャンバ本体の上部には、抗凝固剤を前記周壁の内周面を伝わって流下させるように配置された抗凝固剤注入部が設けられている請求項1〜4のいずれか1つに記載の体外循環回路用チャンバ。
【請求項6】
前記チャンバ本体は、筒状の周壁と、該周壁の下方開口部に装着される下部キャップと、前記周壁の上方開口部に装着される上部キャップとを有し、
前記下部キャップには、血液等の液の流入ラインが連結される導入管部と、この導入管部に連通する前記流入口と、血液等の液の流出ラインが連結される導出管部と、この導出管部に連通する前記流出口とが設けられ、
前記上部キャップには、前記空気圧力測定ライン連結部と、抗凝固剤注入部と、前記フィルタの支持部とが設けられており、
前記フィルタは、その下端部を前記下部キャップの導出管部に支持され、その上端部を前記上部キャップの支持部に支持されている請求項1〜5のいずれか1つに記載の体外循環回路用チャンバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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