体外流体回路
体外流体システムにおいて用いるチャンバが記載される。チャンバは底部入口ポートと底部出口ポートとを備える。チャンバ頂部の微細孔フィルタは、流体中の空気をチャンバから放出させることを可能にする。使用時、チャンバは生理食塩水で満たされる。次に血液がチャンバ内に導入される。生理食塩水の層は、チャンバ内では血液層の上方にある。血液がチャンバを流れるとき、生理食塩水は停滞する。生理食塩水は血液がフィルタと接触しないようにすると共に、フィルタ上にタンパク質が沈着しないようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外液体回路に関する。血液透析は、血液の限外ろ過と拡散を行うように設計された要素を備えた体外回路を用いることによって、毒性物質と代謝廃棄物を血流から除去する。塞栓症を回避するために、血液を体内に戻す前に、気泡が血液から除去される。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、典型的な体外回路100は、血液が流れる配管と、血液のろ過及び透析を行う要素とを含む。血液は患者105から動脈血配管110を通って流れる。血液は滴下チャンバ115内に滴下し、滴下チャンバ115において空気と連通するセンサー125が回路100の動脈血側における血流圧を測定する。ポンプ120は血液を押し進め、同血液を回路100内の経路に沿って進み続けさせる。透析装置130は血液から廃棄物を分離する。
【0003】
透析装置130を通過した後、血液は静脈血配管140を通って滴下チャンバ150内に流れる。滴下チャンバ150は空気トラップとして機能することが可能である。血液中の遊離気体は、血液が患者に流入する前に滴下チャンバ150内に逃がすことが可能である。センサー170は管165を介して滴下チャンバ内の空気と連通する。センサー170は回路100の静脈血側で圧力を測定することが可能である。
【0004】
ヘパリン又は薬物160は滴下チャンバ150において血液に添加することが可能である。血液が酸素に暴露されると、血液は凝固し始める。凝固を防止すべく血液にヘパリンを添加しても、なお多少の凝固が起こり得る。滴下チャンバ150は、いかなる血餅も滴下チャンバ150から出て患者105内に進入しないようにするフィルタを含む。血液は、患者105に戻る前に、滴下チャンバから静脈血配管180と気泡検出器175とを通って進み続ける。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
体外血液回路における血液が空気に暴露されないようにする無空気(airless)滴下チャンバが記載されている。無空気チャンバは、独立型要素であるか、或いは血液を滴下チャンバに往復させるチャネルと、回路を通る圧力を測定できるポケットとを同様に含む一体型流体回路に組み込むことが可能である。一体化流体回路は、血液透析装置又は他の体外流体ラインにプラグで連結している一回使用の使い捨て要素である。
【0007】
概して一態様において本発明は体外回路において体液から空気を除去する装置に関する。同装置は底部領域と、頂部領域と、底部領域又はその付近に一対の流体入口ポート及び出口ポートと、を備える縦型チャンバを有する。微細孔フィルタが頂部領域又はその付近にある。流体は、チャンバから空気を除去しながら縦型チャンバを液体で満たすために、入口ポートから出口ポートまで同縦型チャンバを通過する。
【0008】
本発明の実施形態は、一つ又は複数の以下の特徴を含むことが可能である。微細孔フィルタは疎水性材料を含み得る。微細孔フィルタは縦型チャンバの頂面のうちの少なくとも一部分を形成し得る。流体入口ポート及び出口ポートは、縦型チャンバの底面に存在し得る。チャンバは入口ポートと出口ポートとの間にダムを備え得る。縦型チャンバは、第一と第二の液体が混和性であり、かつ第二の液体が縦型チャンバを通って流れている場合、同縦型チャンバにおいて第一の液体と第二の液体との間に界面を維持するのに十分な高さを備える。縦型チャンバは頂部領域よりも幅が広い底部領域を備え得る。血餅フィルタは流体が出口ポートを通過する前に同血餅フィルタを通過できるように設置し得る。微細孔フィルタはチャンバの頂部に連結されたハウジング内に嵌合し得る。チャンバの底面は入口管と出口管を収容するのに十分に幅広であり得、入口管は入口ポートに連結され、出口管は出口ポートに連結される。
【0009】
別の実施形態において、本発明は体外回路において体液から空気を除去する方法に関する。第一の液体は入口ポートから縦型チャンバの底部領域内に送られ、チャンバ内に空気が実質的に残存しないように同チャンバを満たす。第二の液体が入口ポートから送られるので、第一の液体のうちの一部を縦型チャンバの底部領域から出口ポートに押し出す。液−液界面が、第一の液体と第二の液体との間に形成される。第二の液体中の気泡は微細孔フィルタを通って縦型チャンバの頂部領域から押し出される。
【0010】
本発明の実施形態は一つ又は複数の以下の特徴を含むことが可能である。第一と第二の液体は混和性であるので、縦型チャンバは、第一の液体が停滞するため、第一と第二の液体が混合しないようにするために十分長いものであり得る。同方法は第二の液体中の空気が逃げてしまった後に同第二の液体を出口ポートに送る工程を含み、それにより、患者に送達するための実質的に空気を含まない第二の液体を出口ポートに送ることが可能になる。第一の液体は生理食塩水であり得る。第二の液体は血液であり得る。第二の液体はダムを超えて出口ポートから押し出され得る。前記方法は第二の液体を血餅フィルタと出口ポートに通す工程を含み得る。
【0011】
更に別の実施形態において、本発明は、体液浄化装置において着脱式に納まるように構成される一体化流体回路要素に関する。同要素は剛体と弾性バッキングを含む。剛体は実質的に平坦な主要部分と、同平坦な主要部分から延びる複数の凹部部分とを備える。弾性バッキングは凹部部分のうちの少なくとも一つを覆う。凹部部分のうちの一つは、縦型チャンバを形成する。縦型チャンバは頂部領域又はその付近に微細孔フィルタを備える。一つの凹部部分は縦型チャンバの底部領域と流体連通するチャネルを形成する。別の凹部部分は、縦型チャンバの底部領域と流体連通する別のチャネルを形成する。
【0012】
本発明の実施形態は、一つ又は複数の以下の特徴を含み得る。弾性バッキングは剛体の平らな主要部分に対して密閉され得るので、少なくとも部分的に凹部部分を取り囲む。一つの凹部部分はチャネルのうちの一つに重なり得る。前記凹部部分はチャネルよりも幅が広い。チャネルは剛体の縁部に延び得る。チャネルは管と流体連通し得る。縦型チャンバは第二チャネルに隣接した血餅フィルタを含み得る。微細孔フィルタは疎水性材料を含み得る。縦型チャンバは、第一の液体と第二の液体とが混和性の場合、縦型チャンバにおいて第一の液体と第二の液体の間に界面を維持するのに十分な高さを備え得るので、第二の液体が垂直チャンバを通って流れるとき、第一の液体は停滞する。同要素は例えばネオプレン・ガスケットなどの注入部位を含み得る。同要素は少なくともチャネルを支持する剛性バッキングを含み得る。
【0013】
本発明は一つ又は複数の以下の利点を実現すべく実施され得る。空気はチャンバ中で血液と接触しないようにすることが可能である。空気がチャンバ中に入らないようにすることによって、血液中で血餅が形成する可能性を減らすことができる。チャンバ頂部の疎水性微細孔フィルタは、チャンバに進入するいかなる遊離気体又は空気も逃がすことが可能である。チャンバは、例えば生理食塩水などの第一の液体がチャンバの頂部付近に位置し、血液がチャンバの底部付近に位置し、二つの液体の混合がほとんど生じないように十分な高さを備える。チャンバの長さは、生理食塩水が停滞できるようにするのに十分であり、かつ両液体の混合を防止するので、血液が微細孔フィルタと接触することを回避する。生理食塩水は血液中の大部分のタンパク質が微細孔フィルタと接触しないようにすることが可能である。タンパク質が微細孔フィルタ上に蓄積すると、フィルタは湿潤し得るのでフィルタの疎水性が阻害される恐れがある。即ち微細孔フィルタが湿潤すると、同フィルタは血液をチャンバ外に逃がす可能性がある。またフィルタは、タンパク質がフィルタ上に集まると、空気を通過させる効率が悪くなる恐れがある。チャンバ内の入口ポートと出口ポートとの間にあるダムは、気泡を微細孔フィルタに迂回させる。その結果、血液中の微小気泡は、出口ポートを通過するよりはむしろ微細孔フィルタを通って逃げることが可能となる。前記システムは血液−空気界面がないので、抗凝固剤の必要性を低減する。血餅形成を減らすことと、抗凝固剤の必要性を減らすことと、血液中の気体を減らすこととは、血液透析を受ける患者の安全対策として望ましい。
【0014】
例えば圧力測定を行うためのポケット、流体流動用のチャネルと無空気チャンバなどの要素を単一の一体化流体回路内に設置することによって、複数の別体の要素を排除することが可能である。要素が少ないほど、操作者は作業し易くなるので操作者の誤操作の危険性が低減され得る。一体化流体回路は、要素の一体性を維持する剛性側面と、変換器が例えば圧力測定又は温度測定などの測定を行えるようにする弾性側面と、を備え得る。弾性側面は剛性側面に対して密閉することができるので、剛性側面と弾性側面を共に密閉すべく一体化流体回路を機械にしっかりと保持しなければならない同機械を構築する必要性を潜在的に排除する。代替的に、一体化流体回路は、危険箇所にのみ膜を備えた二つの剛性側面を有することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のうちの一つ又は複数の実施形態の詳細を、添付の図面と以下の説明において示す。本発明の他の特徴、目的及び利点は、詳細な説明と図面から、更に特許請求項の範囲から明らかになるであろう。
【0016】
様々な図面における類似の参照記号は、類似の要素を示す。
図2、図2A、図2B及び図2Cを参照すると、幾らかの実施形態において、無空気チャンバ230は体外流体回路の構成要素として提供される。チャンバ230は、液体を満たすべく実質的に空洞である。チャンバ230は血液から気体を除去するために用いることが可能であるが、血漿を含む体液のような幾つかの他の流体で使用することも可能である。チャンバ230は底部領域234と頂部領域236を備え、底部と頂部は使用時のチャンバの方向に対するものである。入口ポート240及び出口ポート242は、チャンバ230の底部領域234にある。幾らかの実施形態において、ポート240,242はチャンバ230の底面に位置する。図2Fにおいて示されるような他の実施形態において、ポート240,242のうちの少なくとも一つは、チャンバ230の側面に配置される。一実施形態において、ダム248がポート240,242の間にある。ダム248は一側壁から対向する側壁に少なくとも部分的に延びる。一実施形態において、ダム268は各々の側壁に接触するので、入口ポート240に進入する全流体は、ダム248の頂部を越えた後、出口ポート242から流れ出る。一実施形態において、血餅フィルタ254は出口ポート242に隣接して設置される。流体は出口ポート242から流れ出る前に、血餅フィルタ254を流れる。一実施形態において血餅フィルタ254は約50〜500ミクロン(μm)の孔を備える。
【0017】
ポート240,242は、管状に成形された延長部と流体連通できるチャンバ内の孔である。延長部は、例えば圧力嵌合又はボンディングによって管に連結することが可能である。延長部は、チャンバと一体的に形成され得るか、或いは、後に例えばボンディング又は溶接等によってチャンバに取り付けられ得る。
【0018】
チャンバ230の頂部領域236に微細孔フィルタ260がある。微細孔フィルタ260は気体をチャンバ230から放出させる。微細孔フィルタ260における細孔は、異物粒子と微生物が外気からチャンバ230に進入しないようにするのに十分小さい。一実施形態において、フィルタ260は疎水性材料を含む。疎水性微細孔フィルタは、チャンバ230が液体で実質的に満たされる場合、液体がチャンバ230から漏出しないようにする。適切なフィルタは例えば約0.22ミクロン(μm)のような0.45ミクロン(μm)以下の細孔径を有する。フィルタはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は任意の他の適切な材料から形成され得る。
【0019】
チャンバ230が血液で満たされると、血液中のタンパク質がフィルタ260上に蓄積しないようにすることによって、フィルタ260の疎水性特性を維持することが可能である。全血液は、下記で更に述べるように例えば液体バリア268など血液とフィルタ260の間にバリアを提供することによって、フィルタから隔離することが可能である。チャンバ230の高さは、このバリア268を維持するのに十分であると共に、バリア268上の液体がバリア下の液体と実質的に混合しないようにする。
【0020】
チャンバの形状はほぼ細長である。例えば図2と図2Dにおいて示すような幾らかの実施形態において、チャンバ230,230’の底部領域234は、チャンバ230,230’が準円錐形か底部でフレアを有するように、頂部領域236より幅が広い。図2Eにおいて示すような幾らかの実施形態では、チャンバ230”の頂部と底部の寸法はほぼ等しいので、チャンバ230”は方形か円筒形を備える。底部領域234は頂部領域236よりも狭くすることも可能である。仮にポート240,242がチャンバの底面にある場合、底面は、ポート240,242と、チャンバに出入りするように流体を誘導するべく同ポートに連結される任意の管とを収容するのに十分大きな寸法を備える。例えば配管の外径が6.25mmである場合、底面の幅は少なくとも12.5mmである。チャンバ230の正確な寸法は、液体バリア268が維持される限りにおいて重要ではないが、チャンバ230の高さは少なくとも約50.8mm(2インチ)、好ましくは76.2〜101.6mm(3〜4インチ)であり得る。
【0021】
チャンバは医療機器に適した材料、即ち医療用グレードの材料から形成される。製造し易さ、入手し易さ、及び可処分性から、例えばポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチック又は他の適切な医療用グレードのプラスチックが使用され得る。チャンバは、例えば、押出加工、ブロー成形又は射出成形などの成形によって形成される。チャンバは光を通す材料又は透明な材料から形成されるので、チャンバを通って流れる液体を観察することが可能である。チャンバ頂部の微細孔フィルタは、幾らかの方法でチャンバに連結することが可能である。一実施形態において、フィルタはキャップ式ハウジングに嵌合し、ハウジングはチャンバの頂部にねじで締め付けられるか、又は溶接される。別の実施形態において、微細孔フィルタは、例えばエポキシ樹脂などでチャンバに接着によって取り付けられる。更に別の実施形態において、微細孔フィルタは射出成形工程中に同時成形される。
【0022】
図3と図4を参照すると、無空気チャンバ230は流体ろ過と空気除去を行うために、システムの体外流体回路において一直線に配置される。ろ過すべき流体(第二の流体)と混和性の第一の流体はシステムを準備すべくシステム内に導入される(ステップ404)。血液透析において、第一の流体は例えば生理食塩水などの血液混和性溶液である。生理食塩水は動脈血チャネル330を通って動脈血圧力センサー336に流れる。動脈血圧力センサー336は、動脈血側の回路324を通って流れる流体の圧力がモニターできるように変換器を含む。次に生理食塩水は、例えばペリスタポンプなどのポンプ120に当接するチャネルのうちの一部分を通って流れる。ポンプ120は生理食塩水をシステム324に推し進める。幾らかの実施形態において、圧力センサー336は、ポンプ120の後ろに配置される。代替的に、動脈血圧力センサーはポンプ120の前と後の両方に配置され得る。その結果、生理食塩水は透析装置130に流れ、その後静脈血圧力センサー360に流れる。
【0023】
次に生理食塩水又は第一の流体が、チャンバ230の入口ポートを通って流れ、チャンバを満たす(ステップ412)。生理食塩水がチャンバ内に導入されたら、チャンバを完全に満たすため、静脈血チャネル368をクランプで締めることによって、陽圧を生み出すことが可能である。生理食塩水がチャンバを満たすと、空気はチャンバの頂部から微細孔フィルタを通って押し出される。チャンバが完全に満たされたら、生理食塩水はフィルタと接触し、チャンバは実質的に空気を含んでいない。しかしながらフィルタは疎水性なので、生理食塩水はフィルタを通って放出されない。静脈血チャネル368のクランプを緩めた後、生理食塩水はチャンバの出口ポートを通って静脈血チャネル368から放出される。
【0024】
次に体液、例えば血液のような第二の液体がシステム内に導入される(ステップ418)。血液は生理食塩水と同じ経路をたどり、その大部分は生理食塩水を回路に押し出す。血液がチャンバ230に進入すると、血液はチャンバの底部で生理食塩水を出口ポートに押し出す(ステップ422)。しかしながら、血液はチャンバ230内の生理食塩水の全てと置き換わることはない。チャンバ230の高さのため、血液はチャンバ230に進入し、流路274に沿って出口ポートに戻る前にチャンバの高さのうちの一部を横切るだけである(図4Aの透明材料から形成された無空気チャンバにおいて示すように)。生理食塩水と血液の間の界面268は、チャンバ230内における大部分の血液の最遠範囲を描く。血液と生理食塩水の間の界面268は目視可能であり、かつチャンバの幅全体に広がる。血液と生理食塩水とは非混和性ではないので、界面268付近の二つの流体間ではある程度の混合が存在する。
【0025】
生理食塩水は血液がフィルタと接触しないようにする。しかしながら、一定割合の血液はシステムの作動を妨害することなく、生理食塩水中に存在し得る。即ちシステムから気体を放出させると共にシステムにおいて液体を保持させる無空気チャンバでは生理食塩水は完全に血液を含まない状態である必要はない。大部分が生理食塩水である溶液は、フィルタがタンパク質で実質的に被覆されないように同フィルタを保護する。チャンバが十分に細長であれば、血液はチャンバの頂部部分で生理食塩水と混合することはない。その理由は血液がチャンバを流れるとき、生理食塩水は比較的停滞しているからである。
【0026】
例えば透析装置によって導入される空気、又は血液の溶液から出てくる空気のような、血液中に存在する任意の非結合気体又は空気は、同空気が最終的に微細孔フィルタから外に排出されるまで、血液と生理食塩水内で微量の気泡として上昇する(ステップ430)。チャンバ230内部のダム248によって、血液はチャンバの底部を真っ直ぐ横切って出口ポートから出るよりはむしろ上昇しダムを越えて進む。血液流を上方に向けることによって、空気を含む血液は、ダムの高さよりも少なくとも高い高度まで上方に流れなければ、チャンバに流入し、そしてチャンバから直接流出することができない。ダムとチャンバの内壁の表面積は、微小気泡を含む空気が血液から分離され、微細孔フィルタを通って流体回路を出て行くことを可能にする。
【0027】
回路を通じて血液は実質的な空気−血液界面が存在することなく流れる。血液は空気と接触することがないので凝固が生じる可能性は少ないが、安全性を高めるため、血液はチャンバにおいて任意のフィルタを通過させることができる。幾らかの実施形態において、血液は、チャンバを出た後、更に別の安全対策として例えば温度センサー又は空気検出センサーなどの一つ又は複数のセンサーの近くを通過するか、又は同センサーを貫通して流れる。
【0028】
一実施形態において、無空気チャンバと一つ又は複数の他の要素を一体化流体回路内に組み込むことが可能である。一体化流体回路は、別体の個別デバイスかモジュラー式デバイスよりはむしろ一つの組立体か一体化成形で共に形成される無空気チャンバなどの上記の要素を備える。一体化流体回路は、例えば血液透析装置のような血液浄化装置などの機械内に着脱式で収容するように構成される。一体化流体回路は、操作者が一体化流体回路を前記機械に単にはめ込んで、更に極僅かの連結を行った後に作動を開始する、カセット又はカートリッジに類似している。
【0029】
図5を参照すると、一体化流体回路512は剛体518と弾性バッキング(図示しない)とを備える。剛体は実質的に平らな面520を備え、一つ又は複数の凹面(背面から見た場合)部か、剛体518の前面から突出する凹部部分を備える。弾性バッキングはバッキングが凹部部分だけを覆うように、或いはバッキングが凹部部分のみではなくそれよりも多く、剛体の背面全体に至るまで覆うように適用することが可能である。
【0030】
一体化流体回路は無空気チャンバ526として働く凹部部分を備える。上記のチャンバに関するように無空気チャンバ526は頂部領域に微細孔フィルタ528を含み、選択的にダム560と血餅フィルタ568とを含む。剛体518中の第一チャネル534は剛体518の縁部から無空気チャンバ526の底部領域に至る。チャネル534の一部分にわたって静脈血凹部又はポケット548が形成される。弾性バッキングは静脈血ポケット548を支持する。静脈血ポケット548は機械の変換器が弾力バッキングを通る静脈血流圧を測定できるような大きさに形成される。第二チャネル578は無空気チャンバ526の出口から剛体518の縁部に延びる。第一及び第二のチャネルは剛体518の同一の縁部又は異なる縁部に延びる。第一チャネル534及び第二チャネル578は無空気チャンバ526と流体連通する。
【0031】
幾らかの実施形態において、第三チャネル584が剛体518において形成される。一体化流体回路が機械に存在していないか、又は透析装置に連結されていない場合、第三チャネル584は第一チャネルとも第二チャネルとも流体連通していない。幾らかの実施形態において、動脈血ポケット588が第三チャネル584に沿って形成される。動脈血流圧は動脈血ポケット588の弾性バッキングによって測定することが可能である。図5において示すように、第三チャネル584のうちの一端は剛体518のうちの一方の縁部に延び、他端は同一の縁部又は異なる縁部に延びる。
【0032】
選択的に、第四チャネル592が剛体518を横切って延びる。二次ポンプの動脈血ポケット562は、第四チャネル592に重なる。幾らかの実施形態において、更に別の凹部とチャネルが剛体に形成される。
【0033】
幾らかの実施形態において、管594a,594b,594c,594d及び594eは、例えば第一、第二、第三及び第四のチャネルが縁部に延びる位置などで剛体518に連結される。管は当該分野において公知の技法を用いることによって剛体に連結される。幾らかの実施形態において、管は剛体518に予備形成された溝に嵌合する。管は溝内に圧力嵌めされ得る。他の実施形態において、管は剛体518上にクリップで挟まれる。選択的に、管594a,594b,594c及び594eの末端に、例えば透析装置などの機械の要素又は患者に管を連結するための締め具がある。管594dは機械のペリスタポンプを包囲する。管594a及び594eは透析装置に連結される。管594b及び594cは患者と連結される。
【0034】
各々の凹部は平面520からほぼ同じ距離に突出し得る。選択的に、チャネルなどのような凹部のうちの幾つかは、例えば無空気チャンバ526などの他の凹部よりも浅くすることもできる。図5Aを参照すると、一体化回路512の断面は、ポケット548と、チャネル534と、チャンバ526のうちの一部と、の外形を示す。剛体520は例えば約1mm未満など約2mm未満の全厚を備えることが可能である。弾性膜564は剛体520の裏側を覆う。
【0035】
幾らかの実施形態において、一つ又は複数のチャネルが剛体518において形成される代わりに、管が剛体における形状部に直接連結される。例えば第二チャネル578を形成する代わりに、管594bを無空気チャンバ526に直接連結することが可能である。
【0036】
幾らかの実施形態において、一体化回路512は二つの剛性側面を備える。第一剛性側面は上記の通りである。第二剛性側面は、実質的に平坦であり、第一側面に形成されたポケットに隣接して設置された開口を備える。開口は弾性膜で覆われる。
【0037】
幾らかの実施形態において、一体化回路512は回路の一つ又は複数の側面から延びるポストを備える。ポストは機械における凹部と嵌合し得るので、例えば機械中のセンサーなどの要素を備える一体化回路512の正確な位置あわせを確実にする。幾らかの実施形態において、一体化回路512は一体化回路512を機械と位置合わせさせるとともに、同一体化回路512を適所に固定するための、ラッチ、クリップ又は他のそのようなデバイスを備える。
【0038】
機械は一体化回路を適所に保持する機構を備え得る。同機構は、機械と緊密に接触して一体化回路を保持する、ドア、固定デバイス、又は吸引デバイスを含み得る。一体化回路が機械に配置される場合、圧力変換器は各々の対応位置で流圧を直接測定すべく弾性バッキングと連動する。機械と接触した状態にて一体化回路を保持することによって、圧力変換器は回路通過流を感知可能となる。一体化流体回路が機械にプラグで連結され、機械の要素と結合されたら、操作者は、上記の回路チャンバ230を用いる方法と類似の様式で一体化流体回路を用いる。
【0039】
無空気チャンバ230の場合と同様に、剛体518は医療用グレードの材料から構築される。弾性バッキングは、弾性であり、かつ医療用に適したポリマー、例えばシリコン・エラストマーを含むエラストマーなどのポリマーから構築される。他の適切な材料には、高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレン、高密度ポリプロピレンピ及び低密度ポリプロピレン、個々に共押出された単層又は多層のポリアミド、ナイロン、シリコーン、或いは弾性適用に対して当該分野において通常公知の他の材料が含まれる。バッキングは例えばレーザ、超音波、RF溶接又は接着剤などによって、剛体518の裏に取り付けられる。幾らかの実施形態において、バッキングは各々の凹部の縁部がバッキングに対して密閉されるように取り付けられる。代替的に、バッキングは剛体の縁部にのみ取り付けられる。仮にバッキングが平坦部分から凹部を密閉しなければ、一体化流体回路が納まる機械は、流体が凹部と、バッキング及び平面520との間と、から漏出して回路中を流れないようにすべく、十分な圧力を加えるように構築される。剛性部分518の裏に、凹部を包囲する突起部を形成し得る。突起部は、圧力が回路に加えられる場合、平坦部分518に対して弾性膜を密閉することを容易にし得る。
【0040】
幾らかの実施形態において、注入部位598は、一つ又は複数の凹部に形成される。注入部位598を用いることによって、薬物又は溶液を流体内に注入することが可能である。適切な注入部位598はネオプレン・ガスケットから形成される。前記ガスケットに針を導入し、針の除去後にガスケットが液漏れしないか又は滴を垂らさないように針を抜き取ることができる。
【0041】
図6は一体化流体回路512の斜視図を示す。図5におけるように、弾性膜は凹部を示すべく一体化流体回路512から除去されている。
図7を参照すると、血液ラインガイド700は機械の要素に対して配管組立体を正しく整列して保持するように構成される。配管組立体は例えば図3において示すようなものなど、無空気チャンバ230と管とを含み、幾らかの実施形態において、ガイド内の圧力検出を可能にする要素を含む。血液ラインガイド700は平面720を備えた剛体718を含む。無空気チャンバ230を嵌めるように構成される凹部726は、剛体718に形成される。凹部734,778,784及び792は配管を保持する大きさに形成される。凹部748,762及び788は圧力をモニターできる管又は同管の一部に取り付けられた要素を保持する大きさに形成される。血液ラインガイド700の実施形態は、一つ又は複数の凹部726,748,734,762,778,784,788及び792を含む。幾らかの実施形態において、凹部748,762及び788は剛体718において形成された穴である。
【0042】
幾らかの実施形態において、血液ラインガイド700はカバー(図示しない)を含む。カバーは例えば平らなプラスチック片などの平坦層である。カバーはガイドと別体であることが可能であり、例えばクリップなどで一時的に血液ラインガイドに取り付けられ得る。幾らかの実施形態において、カバーはカバーを曲げる蝶番で血液ラインガイド700の片側から血液ラインガイド700の裏にわたって延びることによって凹部を覆う。幾らかの実施形態において、カバーは凹部748,762,788と整列する穴を備える。穴は開放されているか、又は膜で被覆し得る。穴は、例えば圧力変換器などの感知装置が、凹部における要素中の液圧を検出することを可能にする。
【0043】
幾らかの実施形態において、血液ラインガイド700は正しい配置で管を保持すべく、例えば血液ラインガイド700の縁部などにクリップを含む。一体化回路500と類似して、血液ラインガイド700は、ガイド500を機械と正しく整列させるポストを含み得る。血液ラインガイド500は透明であり得るので、同ガイドが機械に装填されると、使用者はガイドにおいて要素と管が正しく整列されていることを確かめられる。
【0044】
無空気チャンバと管とを含む組立体が血液ラインガイド700において設置されたら、同血液ラインガイド700は機械に装填される。幾らかの実施形態において、血液ラインガイド700は機械との正しい整合を確保するポスト、ラッチ又は他の機構を含む。
【0045】
体外血液回路において本明細書に記載した無空気チャンバを用いることによって、空気が回路を流れる血液と接触することを回避できる。チャンバ中の空気を防ぐことによって、血液中で血餅を形成する可能性を減らすことが可能である。血液がチャンバを出る前に血液中に空気が存在する場合、チャンバ頂部の疎水性微細孔フィルタがチャンバに入る空気を逃がすことを可能にする。フィルタは無空気チャンバのうちの一部であるか、又は無空気チャンバに直接連結される。これによって空気が液体充填チャンバから容易に逃げられるようになる。従って回路から空気を引き抜くためのラインをチャンバ頂部に連結する必要はない。空気−血液界面を排除することによって、患者の治療安全性が増大する。血餅が血液中で形成すると、患者は重傷を負う可能性がある。血液凝固は、血栓、塞栓症、心臓麻痺又は心臓発作を引き起こす恐れがある。血液中の気泡は、例えば空気塞栓などを引き起こすことにより、患者を傷つける恐れもある。患者の血液が体外回路を流れる間に決して空気と接触することがないのであれば、血液中に空気が入り込まなくなるので、治療に起因する空気塞栓及び血液凝固を防止できる。血液凝固の可能性が減少するので、血液に添加される抗凝固剤の量を減らすことが可能である。患者の健康にとって有益であるため、治療中の血液における添加剤は少ないことが好ましい。
【0046】
チャンバはまず生理食塩水で満たされた後に血液が充填される。生理食塩水と血液がチャンバ内に導入された後、生理食塩水はチャンバの頂部付近に位置し、血液が底部付近に位置して、二つの液体がほとんど混合しないようにチャンバは十分な高さを備える。生理食塩水は血液中の大部分のタンパク質がチャンバ頂部でフィルタと接触しないようにするためのものである。仮にタンパク質がフィルタ上に蓄積すると、フィルタの疎水特性が阻害される恐れがある。即ちフィルタは湿潤し得るので、液体をチャンバ内部からチャンバ外に漏出させる。またタンパク質がフィルタ上に集まると、フィルタは空気を通過させる点においては不十分となる。従って十分に長いチャンバは生理食塩水を頂部に停滞させるので、タンパク質がフィルタと接触することを回避する。
【0047】
入口及び出口のポート間のチャンバにおけるダムは、微細気泡が蓄積する表面を提供し得る。その結果、血液中の微細気泡は、出口ポートを通過するよりはむしろチャンバを通って逃げることが可能となる。血餅形成を減少させることと血中の気体を低減させることは、血液透析を受ける患者にとってより安全である。ダムはまたチャンバ内にて液体を押し上げるので、液体及び液体と共に動く任意の気体は、直ちにチャンバから押し出されず、後にチャンバの頂部に逃げることが可能となる。
【0048】
例えば圧力測定を行うためのポケット、流体流動用のチャネル及び無空気チャンバなどの構成要素を単一の一体化流体回路内に設置することによって、複数の個別要素を排除することができる。構成要素が少ないほど操作者は作業し易くなるので、操作者が誤操作する危険性が低減される。一体化流体回路は構成要素の一体性を維持する剛性側面と、例えば圧力又は温度の測定等の測定を可能にする弾性部分とを備える。更に一体化回路におけるポケットは、チャンバ頂部と流体連通する圧力感知ラインの必要性を排除する。
【0049】
本発明の幾らかの実施形態を記載してきた。それでも当然のことながら本発明の趣旨と範囲から逸脱しなければ、様々な改変を行うことは可能であることが理解されよう。例えば本明細書において記載した構成要素を例えば血漿などの他の流体で使用することが可能である。更に生理食塩水以外の流体を用いることによってシステムを準備することが可能である。従って他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来型の血液透析システムの概略図である。
【図2】無空気チャンバの概略断面図である。
【図2A】無空気チャンバの概略平面図である。
【図2B】無空気チャンバの概略底面図である。
【図2C】無空気チャンバの概略斜視図である。
【図2D】無空気チャンバの概略断面図である。
【図2E】無空気チャンバの概略断面図である。
【図2F】無空気チャンバの概略断面図である。
【図3】体外回路における無空気チャンバの概略図である。
【図4】体外回路において無空気チャンバを用いるためのフローチャートである。
【図4A】無空気チャンバを通る血液流路の概略図である。
【図5】一体化体外回路の平面図である。
【図5A】図5の一体化体外回路の断面図である。
【図6】一体化体外回路の斜視図である。
【図7】図3において示す無空気チャンバを保持するように構成される配管組立体を保持する血液ラインガイドの斜視図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外液体回路に関する。血液透析は、血液の限外ろ過と拡散を行うように設計された要素を備えた体外回路を用いることによって、毒性物質と代謝廃棄物を血流から除去する。塞栓症を回避するために、血液を体内に戻す前に、気泡が血液から除去される。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、典型的な体外回路100は、血液が流れる配管と、血液のろ過及び透析を行う要素とを含む。血液は患者105から動脈血配管110を通って流れる。血液は滴下チャンバ115内に滴下し、滴下チャンバ115において空気と連通するセンサー125が回路100の動脈血側における血流圧を測定する。ポンプ120は血液を押し進め、同血液を回路100内の経路に沿って進み続けさせる。透析装置130は血液から廃棄物を分離する。
【0003】
透析装置130を通過した後、血液は静脈血配管140を通って滴下チャンバ150内に流れる。滴下チャンバ150は空気トラップとして機能することが可能である。血液中の遊離気体は、血液が患者に流入する前に滴下チャンバ150内に逃がすことが可能である。センサー170は管165を介して滴下チャンバ内の空気と連通する。センサー170は回路100の静脈血側で圧力を測定することが可能である。
【0004】
ヘパリン又は薬物160は滴下チャンバ150において血液に添加することが可能である。血液が酸素に暴露されると、血液は凝固し始める。凝固を防止すべく血液にヘパリンを添加しても、なお多少の凝固が起こり得る。滴下チャンバ150は、いかなる血餅も滴下チャンバ150から出て患者105内に進入しないようにするフィルタを含む。血液は、患者105に戻る前に、滴下チャンバから静脈血配管180と気泡検出器175とを通って進み続ける。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
体外血液回路における血液が空気に暴露されないようにする無空気(airless)滴下チャンバが記載されている。無空気チャンバは、独立型要素であるか、或いは血液を滴下チャンバに往復させるチャネルと、回路を通る圧力を測定できるポケットとを同様に含む一体型流体回路に組み込むことが可能である。一体化流体回路は、血液透析装置又は他の体外流体ラインにプラグで連結している一回使用の使い捨て要素である。
【0007】
概して一態様において本発明は体外回路において体液から空気を除去する装置に関する。同装置は底部領域と、頂部領域と、底部領域又はその付近に一対の流体入口ポート及び出口ポートと、を備える縦型チャンバを有する。微細孔フィルタが頂部領域又はその付近にある。流体は、チャンバから空気を除去しながら縦型チャンバを液体で満たすために、入口ポートから出口ポートまで同縦型チャンバを通過する。
【0008】
本発明の実施形態は、一つ又は複数の以下の特徴を含むことが可能である。微細孔フィルタは疎水性材料を含み得る。微細孔フィルタは縦型チャンバの頂面のうちの少なくとも一部分を形成し得る。流体入口ポート及び出口ポートは、縦型チャンバの底面に存在し得る。チャンバは入口ポートと出口ポートとの間にダムを備え得る。縦型チャンバは、第一と第二の液体が混和性であり、かつ第二の液体が縦型チャンバを通って流れている場合、同縦型チャンバにおいて第一の液体と第二の液体との間に界面を維持するのに十分な高さを備える。縦型チャンバは頂部領域よりも幅が広い底部領域を備え得る。血餅フィルタは流体が出口ポートを通過する前に同血餅フィルタを通過できるように設置し得る。微細孔フィルタはチャンバの頂部に連結されたハウジング内に嵌合し得る。チャンバの底面は入口管と出口管を収容するのに十分に幅広であり得、入口管は入口ポートに連結され、出口管は出口ポートに連結される。
【0009】
別の実施形態において、本発明は体外回路において体液から空気を除去する方法に関する。第一の液体は入口ポートから縦型チャンバの底部領域内に送られ、チャンバ内に空気が実質的に残存しないように同チャンバを満たす。第二の液体が入口ポートから送られるので、第一の液体のうちの一部を縦型チャンバの底部領域から出口ポートに押し出す。液−液界面が、第一の液体と第二の液体との間に形成される。第二の液体中の気泡は微細孔フィルタを通って縦型チャンバの頂部領域から押し出される。
【0010】
本発明の実施形態は一つ又は複数の以下の特徴を含むことが可能である。第一と第二の液体は混和性であるので、縦型チャンバは、第一の液体が停滞するため、第一と第二の液体が混合しないようにするために十分長いものであり得る。同方法は第二の液体中の空気が逃げてしまった後に同第二の液体を出口ポートに送る工程を含み、それにより、患者に送達するための実質的に空気を含まない第二の液体を出口ポートに送ることが可能になる。第一の液体は生理食塩水であり得る。第二の液体は血液であり得る。第二の液体はダムを超えて出口ポートから押し出され得る。前記方法は第二の液体を血餅フィルタと出口ポートに通す工程を含み得る。
【0011】
更に別の実施形態において、本発明は、体液浄化装置において着脱式に納まるように構成される一体化流体回路要素に関する。同要素は剛体と弾性バッキングを含む。剛体は実質的に平坦な主要部分と、同平坦な主要部分から延びる複数の凹部部分とを備える。弾性バッキングは凹部部分のうちの少なくとも一つを覆う。凹部部分のうちの一つは、縦型チャンバを形成する。縦型チャンバは頂部領域又はその付近に微細孔フィルタを備える。一つの凹部部分は縦型チャンバの底部領域と流体連通するチャネルを形成する。別の凹部部分は、縦型チャンバの底部領域と流体連通する別のチャネルを形成する。
【0012】
本発明の実施形態は、一つ又は複数の以下の特徴を含み得る。弾性バッキングは剛体の平らな主要部分に対して密閉され得るので、少なくとも部分的に凹部部分を取り囲む。一つの凹部部分はチャネルのうちの一つに重なり得る。前記凹部部分はチャネルよりも幅が広い。チャネルは剛体の縁部に延び得る。チャネルは管と流体連通し得る。縦型チャンバは第二チャネルに隣接した血餅フィルタを含み得る。微細孔フィルタは疎水性材料を含み得る。縦型チャンバは、第一の液体と第二の液体とが混和性の場合、縦型チャンバにおいて第一の液体と第二の液体の間に界面を維持するのに十分な高さを備え得るので、第二の液体が垂直チャンバを通って流れるとき、第一の液体は停滞する。同要素は例えばネオプレン・ガスケットなどの注入部位を含み得る。同要素は少なくともチャネルを支持する剛性バッキングを含み得る。
【0013】
本発明は一つ又は複数の以下の利点を実現すべく実施され得る。空気はチャンバ中で血液と接触しないようにすることが可能である。空気がチャンバ中に入らないようにすることによって、血液中で血餅が形成する可能性を減らすことができる。チャンバ頂部の疎水性微細孔フィルタは、チャンバに進入するいかなる遊離気体又は空気も逃がすことが可能である。チャンバは、例えば生理食塩水などの第一の液体がチャンバの頂部付近に位置し、血液がチャンバの底部付近に位置し、二つの液体の混合がほとんど生じないように十分な高さを備える。チャンバの長さは、生理食塩水が停滞できるようにするのに十分であり、かつ両液体の混合を防止するので、血液が微細孔フィルタと接触することを回避する。生理食塩水は血液中の大部分のタンパク質が微細孔フィルタと接触しないようにすることが可能である。タンパク質が微細孔フィルタ上に蓄積すると、フィルタは湿潤し得るのでフィルタの疎水性が阻害される恐れがある。即ち微細孔フィルタが湿潤すると、同フィルタは血液をチャンバ外に逃がす可能性がある。またフィルタは、タンパク質がフィルタ上に集まると、空気を通過させる効率が悪くなる恐れがある。チャンバ内の入口ポートと出口ポートとの間にあるダムは、気泡を微細孔フィルタに迂回させる。その結果、血液中の微小気泡は、出口ポートを通過するよりはむしろ微細孔フィルタを通って逃げることが可能となる。前記システムは血液−空気界面がないので、抗凝固剤の必要性を低減する。血餅形成を減らすことと、抗凝固剤の必要性を減らすことと、血液中の気体を減らすこととは、血液透析を受ける患者の安全対策として望ましい。
【0014】
例えば圧力測定を行うためのポケット、流体流動用のチャネルと無空気チャンバなどの要素を単一の一体化流体回路内に設置することによって、複数の別体の要素を排除することが可能である。要素が少ないほど、操作者は作業し易くなるので操作者の誤操作の危険性が低減され得る。一体化流体回路は、要素の一体性を維持する剛性側面と、変換器が例えば圧力測定又は温度測定などの測定を行えるようにする弾性側面と、を備え得る。弾性側面は剛性側面に対して密閉することができるので、剛性側面と弾性側面を共に密閉すべく一体化流体回路を機械にしっかりと保持しなければならない同機械を構築する必要性を潜在的に排除する。代替的に、一体化流体回路は、危険箇所にのみ膜を備えた二つの剛性側面を有することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のうちの一つ又は複数の実施形態の詳細を、添付の図面と以下の説明において示す。本発明の他の特徴、目的及び利点は、詳細な説明と図面から、更に特許請求項の範囲から明らかになるであろう。
【0016】
様々な図面における類似の参照記号は、類似の要素を示す。
図2、図2A、図2B及び図2Cを参照すると、幾らかの実施形態において、無空気チャンバ230は体外流体回路の構成要素として提供される。チャンバ230は、液体を満たすべく実質的に空洞である。チャンバ230は血液から気体を除去するために用いることが可能であるが、血漿を含む体液のような幾つかの他の流体で使用することも可能である。チャンバ230は底部領域234と頂部領域236を備え、底部と頂部は使用時のチャンバの方向に対するものである。入口ポート240及び出口ポート242は、チャンバ230の底部領域234にある。幾らかの実施形態において、ポート240,242はチャンバ230の底面に位置する。図2Fにおいて示されるような他の実施形態において、ポート240,242のうちの少なくとも一つは、チャンバ230の側面に配置される。一実施形態において、ダム248がポート240,242の間にある。ダム248は一側壁から対向する側壁に少なくとも部分的に延びる。一実施形態において、ダム268は各々の側壁に接触するので、入口ポート240に進入する全流体は、ダム248の頂部を越えた後、出口ポート242から流れ出る。一実施形態において、血餅フィルタ254は出口ポート242に隣接して設置される。流体は出口ポート242から流れ出る前に、血餅フィルタ254を流れる。一実施形態において血餅フィルタ254は約50〜500ミクロン(μm)の孔を備える。
【0017】
ポート240,242は、管状に成形された延長部と流体連通できるチャンバ内の孔である。延長部は、例えば圧力嵌合又はボンディングによって管に連結することが可能である。延長部は、チャンバと一体的に形成され得るか、或いは、後に例えばボンディング又は溶接等によってチャンバに取り付けられ得る。
【0018】
チャンバ230の頂部領域236に微細孔フィルタ260がある。微細孔フィルタ260は気体をチャンバ230から放出させる。微細孔フィルタ260における細孔は、異物粒子と微生物が外気からチャンバ230に進入しないようにするのに十分小さい。一実施形態において、フィルタ260は疎水性材料を含む。疎水性微細孔フィルタは、チャンバ230が液体で実質的に満たされる場合、液体がチャンバ230から漏出しないようにする。適切なフィルタは例えば約0.22ミクロン(μm)のような0.45ミクロン(μm)以下の細孔径を有する。フィルタはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は任意の他の適切な材料から形成され得る。
【0019】
チャンバ230が血液で満たされると、血液中のタンパク質がフィルタ260上に蓄積しないようにすることによって、フィルタ260の疎水性特性を維持することが可能である。全血液は、下記で更に述べるように例えば液体バリア268など血液とフィルタ260の間にバリアを提供することによって、フィルタから隔離することが可能である。チャンバ230の高さは、このバリア268を維持するのに十分であると共に、バリア268上の液体がバリア下の液体と実質的に混合しないようにする。
【0020】
チャンバの形状はほぼ細長である。例えば図2と図2Dにおいて示すような幾らかの実施形態において、チャンバ230,230’の底部領域234は、チャンバ230,230’が準円錐形か底部でフレアを有するように、頂部領域236より幅が広い。図2Eにおいて示すような幾らかの実施形態では、チャンバ230”の頂部と底部の寸法はほぼ等しいので、チャンバ230”は方形か円筒形を備える。底部領域234は頂部領域236よりも狭くすることも可能である。仮にポート240,242がチャンバの底面にある場合、底面は、ポート240,242と、チャンバに出入りするように流体を誘導するべく同ポートに連結される任意の管とを収容するのに十分大きな寸法を備える。例えば配管の外径が6.25mmである場合、底面の幅は少なくとも12.5mmである。チャンバ230の正確な寸法は、液体バリア268が維持される限りにおいて重要ではないが、チャンバ230の高さは少なくとも約50.8mm(2インチ)、好ましくは76.2〜101.6mm(3〜4インチ)であり得る。
【0021】
チャンバは医療機器に適した材料、即ち医療用グレードの材料から形成される。製造し易さ、入手し易さ、及び可処分性から、例えばポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチック又は他の適切な医療用グレードのプラスチックが使用され得る。チャンバは、例えば、押出加工、ブロー成形又は射出成形などの成形によって形成される。チャンバは光を通す材料又は透明な材料から形成されるので、チャンバを通って流れる液体を観察することが可能である。チャンバ頂部の微細孔フィルタは、幾らかの方法でチャンバに連結することが可能である。一実施形態において、フィルタはキャップ式ハウジングに嵌合し、ハウジングはチャンバの頂部にねじで締め付けられるか、又は溶接される。別の実施形態において、微細孔フィルタは、例えばエポキシ樹脂などでチャンバに接着によって取り付けられる。更に別の実施形態において、微細孔フィルタは射出成形工程中に同時成形される。
【0022】
図3と図4を参照すると、無空気チャンバ230は流体ろ過と空気除去を行うために、システムの体外流体回路において一直線に配置される。ろ過すべき流体(第二の流体)と混和性の第一の流体はシステムを準備すべくシステム内に導入される(ステップ404)。血液透析において、第一の流体は例えば生理食塩水などの血液混和性溶液である。生理食塩水は動脈血チャネル330を通って動脈血圧力センサー336に流れる。動脈血圧力センサー336は、動脈血側の回路324を通って流れる流体の圧力がモニターできるように変換器を含む。次に生理食塩水は、例えばペリスタポンプなどのポンプ120に当接するチャネルのうちの一部分を通って流れる。ポンプ120は生理食塩水をシステム324に推し進める。幾らかの実施形態において、圧力センサー336は、ポンプ120の後ろに配置される。代替的に、動脈血圧力センサーはポンプ120の前と後の両方に配置され得る。その結果、生理食塩水は透析装置130に流れ、その後静脈血圧力センサー360に流れる。
【0023】
次に生理食塩水又は第一の流体が、チャンバ230の入口ポートを通って流れ、チャンバを満たす(ステップ412)。生理食塩水がチャンバ内に導入されたら、チャンバを完全に満たすため、静脈血チャネル368をクランプで締めることによって、陽圧を生み出すことが可能である。生理食塩水がチャンバを満たすと、空気はチャンバの頂部から微細孔フィルタを通って押し出される。チャンバが完全に満たされたら、生理食塩水はフィルタと接触し、チャンバは実質的に空気を含んでいない。しかしながらフィルタは疎水性なので、生理食塩水はフィルタを通って放出されない。静脈血チャネル368のクランプを緩めた後、生理食塩水はチャンバの出口ポートを通って静脈血チャネル368から放出される。
【0024】
次に体液、例えば血液のような第二の液体がシステム内に導入される(ステップ418)。血液は生理食塩水と同じ経路をたどり、その大部分は生理食塩水を回路に押し出す。血液がチャンバ230に進入すると、血液はチャンバの底部で生理食塩水を出口ポートに押し出す(ステップ422)。しかしながら、血液はチャンバ230内の生理食塩水の全てと置き換わることはない。チャンバ230の高さのため、血液はチャンバ230に進入し、流路274に沿って出口ポートに戻る前にチャンバの高さのうちの一部を横切るだけである(図4Aの透明材料から形成された無空気チャンバにおいて示すように)。生理食塩水と血液の間の界面268は、チャンバ230内における大部分の血液の最遠範囲を描く。血液と生理食塩水の間の界面268は目視可能であり、かつチャンバの幅全体に広がる。血液と生理食塩水とは非混和性ではないので、界面268付近の二つの流体間ではある程度の混合が存在する。
【0025】
生理食塩水は血液がフィルタと接触しないようにする。しかしながら、一定割合の血液はシステムの作動を妨害することなく、生理食塩水中に存在し得る。即ちシステムから気体を放出させると共にシステムにおいて液体を保持させる無空気チャンバでは生理食塩水は完全に血液を含まない状態である必要はない。大部分が生理食塩水である溶液は、フィルタがタンパク質で実質的に被覆されないように同フィルタを保護する。チャンバが十分に細長であれば、血液はチャンバの頂部部分で生理食塩水と混合することはない。その理由は血液がチャンバを流れるとき、生理食塩水は比較的停滞しているからである。
【0026】
例えば透析装置によって導入される空気、又は血液の溶液から出てくる空気のような、血液中に存在する任意の非結合気体又は空気は、同空気が最終的に微細孔フィルタから外に排出されるまで、血液と生理食塩水内で微量の気泡として上昇する(ステップ430)。チャンバ230内部のダム248によって、血液はチャンバの底部を真っ直ぐ横切って出口ポートから出るよりはむしろ上昇しダムを越えて進む。血液流を上方に向けることによって、空気を含む血液は、ダムの高さよりも少なくとも高い高度まで上方に流れなければ、チャンバに流入し、そしてチャンバから直接流出することができない。ダムとチャンバの内壁の表面積は、微小気泡を含む空気が血液から分離され、微細孔フィルタを通って流体回路を出て行くことを可能にする。
【0027】
回路を通じて血液は実質的な空気−血液界面が存在することなく流れる。血液は空気と接触することがないので凝固が生じる可能性は少ないが、安全性を高めるため、血液はチャンバにおいて任意のフィルタを通過させることができる。幾らかの実施形態において、血液は、チャンバを出た後、更に別の安全対策として例えば温度センサー又は空気検出センサーなどの一つ又は複数のセンサーの近くを通過するか、又は同センサーを貫通して流れる。
【0028】
一実施形態において、無空気チャンバと一つ又は複数の他の要素を一体化流体回路内に組み込むことが可能である。一体化流体回路は、別体の個別デバイスかモジュラー式デバイスよりはむしろ一つの組立体か一体化成形で共に形成される無空気チャンバなどの上記の要素を備える。一体化流体回路は、例えば血液透析装置のような血液浄化装置などの機械内に着脱式で収容するように構成される。一体化流体回路は、操作者が一体化流体回路を前記機械に単にはめ込んで、更に極僅かの連結を行った後に作動を開始する、カセット又はカートリッジに類似している。
【0029】
図5を参照すると、一体化流体回路512は剛体518と弾性バッキング(図示しない)とを備える。剛体は実質的に平らな面520を備え、一つ又は複数の凹面(背面から見た場合)部か、剛体518の前面から突出する凹部部分を備える。弾性バッキングはバッキングが凹部部分だけを覆うように、或いはバッキングが凹部部分のみではなくそれよりも多く、剛体の背面全体に至るまで覆うように適用することが可能である。
【0030】
一体化流体回路は無空気チャンバ526として働く凹部部分を備える。上記のチャンバに関するように無空気チャンバ526は頂部領域に微細孔フィルタ528を含み、選択的にダム560と血餅フィルタ568とを含む。剛体518中の第一チャネル534は剛体518の縁部から無空気チャンバ526の底部領域に至る。チャネル534の一部分にわたって静脈血凹部又はポケット548が形成される。弾性バッキングは静脈血ポケット548を支持する。静脈血ポケット548は機械の変換器が弾力バッキングを通る静脈血流圧を測定できるような大きさに形成される。第二チャネル578は無空気チャンバ526の出口から剛体518の縁部に延びる。第一及び第二のチャネルは剛体518の同一の縁部又は異なる縁部に延びる。第一チャネル534及び第二チャネル578は無空気チャンバ526と流体連通する。
【0031】
幾らかの実施形態において、第三チャネル584が剛体518において形成される。一体化流体回路が機械に存在していないか、又は透析装置に連結されていない場合、第三チャネル584は第一チャネルとも第二チャネルとも流体連通していない。幾らかの実施形態において、動脈血ポケット588が第三チャネル584に沿って形成される。動脈血流圧は動脈血ポケット588の弾性バッキングによって測定することが可能である。図5において示すように、第三チャネル584のうちの一端は剛体518のうちの一方の縁部に延び、他端は同一の縁部又は異なる縁部に延びる。
【0032】
選択的に、第四チャネル592が剛体518を横切って延びる。二次ポンプの動脈血ポケット562は、第四チャネル592に重なる。幾らかの実施形態において、更に別の凹部とチャネルが剛体に形成される。
【0033】
幾らかの実施形態において、管594a,594b,594c,594d及び594eは、例えば第一、第二、第三及び第四のチャネルが縁部に延びる位置などで剛体518に連結される。管は当該分野において公知の技法を用いることによって剛体に連結される。幾らかの実施形態において、管は剛体518に予備形成された溝に嵌合する。管は溝内に圧力嵌めされ得る。他の実施形態において、管は剛体518上にクリップで挟まれる。選択的に、管594a,594b,594c及び594eの末端に、例えば透析装置などの機械の要素又は患者に管を連結するための締め具がある。管594dは機械のペリスタポンプを包囲する。管594a及び594eは透析装置に連結される。管594b及び594cは患者と連結される。
【0034】
各々の凹部は平面520からほぼ同じ距離に突出し得る。選択的に、チャネルなどのような凹部のうちの幾つかは、例えば無空気チャンバ526などの他の凹部よりも浅くすることもできる。図5Aを参照すると、一体化回路512の断面は、ポケット548と、チャネル534と、チャンバ526のうちの一部と、の外形を示す。剛体520は例えば約1mm未満など約2mm未満の全厚を備えることが可能である。弾性膜564は剛体520の裏側を覆う。
【0035】
幾らかの実施形態において、一つ又は複数のチャネルが剛体518において形成される代わりに、管が剛体における形状部に直接連結される。例えば第二チャネル578を形成する代わりに、管594bを無空気チャンバ526に直接連結することが可能である。
【0036】
幾らかの実施形態において、一体化回路512は二つの剛性側面を備える。第一剛性側面は上記の通りである。第二剛性側面は、実質的に平坦であり、第一側面に形成されたポケットに隣接して設置された開口を備える。開口は弾性膜で覆われる。
【0037】
幾らかの実施形態において、一体化回路512は回路の一つ又は複数の側面から延びるポストを備える。ポストは機械における凹部と嵌合し得るので、例えば機械中のセンサーなどの要素を備える一体化回路512の正確な位置あわせを確実にする。幾らかの実施形態において、一体化回路512は一体化回路512を機械と位置合わせさせるとともに、同一体化回路512を適所に固定するための、ラッチ、クリップ又は他のそのようなデバイスを備える。
【0038】
機械は一体化回路を適所に保持する機構を備え得る。同機構は、機械と緊密に接触して一体化回路を保持する、ドア、固定デバイス、又は吸引デバイスを含み得る。一体化回路が機械に配置される場合、圧力変換器は各々の対応位置で流圧を直接測定すべく弾性バッキングと連動する。機械と接触した状態にて一体化回路を保持することによって、圧力変換器は回路通過流を感知可能となる。一体化流体回路が機械にプラグで連結され、機械の要素と結合されたら、操作者は、上記の回路チャンバ230を用いる方法と類似の様式で一体化流体回路を用いる。
【0039】
無空気チャンバ230の場合と同様に、剛体518は医療用グレードの材料から構築される。弾性バッキングは、弾性であり、かつ医療用に適したポリマー、例えばシリコン・エラストマーを含むエラストマーなどのポリマーから構築される。他の適切な材料には、高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレン、高密度ポリプロピレンピ及び低密度ポリプロピレン、個々に共押出された単層又は多層のポリアミド、ナイロン、シリコーン、或いは弾性適用に対して当該分野において通常公知の他の材料が含まれる。バッキングは例えばレーザ、超音波、RF溶接又は接着剤などによって、剛体518の裏に取り付けられる。幾らかの実施形態において、バッキングは各々の凹部の縁部がバッキングに対して密閉されるように取り付けられる。代替的に、バッキングは剛体の縁部にのみ取り付けられる。仮にバッキングが平坦部分から凹部を密閉しなければ、一体化流体回路が納まる機械は、流体が凹部と、バッキング及び平面520との間と、から漏出して回路中を流れないようにすべく、十分な圧力を加えるように構築される。剛性部分518の裏に、凹部を包囲する突起部を形成し得る。突起部は、圧力が回路に加えられる場合、平坦部分518に対して弾性膜を密閉することを容易にし得る。
【0040】
幾らかの実施形態において、注入部位598は、一つ又は複数の凹部に形成される。注入部位598を用いることによって、薬物又は溶液を流体内に注入することが可能である。適切な注入部位598はネオプレン・ガスケットから形成される。前記ガスケットに針を導入し、針の除去後にガスケットが液漏れしないか又は滴を垂らさないように針を抜き取ることができる。
【0041】
図6は一体化流体回路512の斜視図を示す。図5におけるように、弾性膜は凹部を示すべく一体化流体回路512から除去されている。
図7を参照すると、血液ラインガイド700は機械の要素に対して配管組立体を正しく整列して保持するように構成される。配管組立体は例えば図3において示すようなものなど、無空気チャンバ230と管とを含み、幾らかの実施形態において、ガイド内の圧力検出を可能にする要素を含む。血液ラインガイド700は平面720を備えた剛体718を含む。無空気チャンバ230を嵌めるように構成される凹部726は、剛体718に形成される。凹部734,778,784及び792は配管を保持する大きさに形成される。凹部748,762及び788は圧力をモニターできる管又は同管の一部に取り付けられた要素を保持する大きさに形成される。血液ラインガイド700の実施形態は、一つ又は複数の凹部726,748,734,762,778,784,788及び792を含む。幾らかの実施形態において、凹部748,762及び788は剛体718において形成された穴である。
【0042】
幾らかの実施形態において、血液ラインガイド700はカバー(図示しない)を含む。カバーは例えば平らなプラスチック片などの平坦層である。カバーはガイドと別体であることが可能であり、例えばクリップなどで一時的に血液ラインガイドに取り付けられ得る。幾らかの実施形態において、カバーはカバーを曲げる蝶番で血液ラインガイド700の片側から血液ラインガイド700の裏にわたって延びることによって凹部を覆う。幾らかの実施形態において、カバーは凹部748,762,788と整列する穴を備える。穴は開放されているか、又は膜で被覆し得る。穴は、例えば圧力変換器などの感知装置が、凹部における要素中の液圧を検出することを可能にする。
【0043】
幾らかの実施形態において、血液ラインガイド700は正しい配置で管を保持すべく、例えば血液ラインガイド700の縁部などにクリップを含む。一体化回路500と類似して、血液ラインガイド700は、ガイド500を機械と正しく整列させるポストを含み得る。血液ラインガイド500は透明であり得るので、同ガイドが機械に装填されると、使用者はガイドにおいて要素と管が正しく整列されていることを確かめられる。
【0044】
無空気チャンバと管とを含む組立体が血液ラインガイド700において設置されたら、同血液ラインガイド700は機械に装填される。幾らかの実施形態において、血液ラインガイド700は機械との正しい整合を確保するポスト、ラッチ又は他の機構を含む。
【0045】
体外血液回路において本明細書に記載した無空気チャンバを用いることによって、空気が回路を流れる血液と接触することを回避できる。チャンバ中の空気を防ぐことによって、血液中で血餅を形成する可能性を減らすことが可能である。血液がチャンバを出る前に血液中に空気が存在する場合、チャンバ頂部の疎水性微細孔フィルタがチャンバに入る空気を逃がすことを可能にする。フィルタは無空気チャンバのうちの一部であるか、又は無空気チャンバに直接連結される。これによって空気が液体充填チャンバから容易に逃げられるようになる。従って回路から空気を引き抜くためのラインをチャンバ頂部に連結する必要はない。空気−血液界面を排除することによって、患者の治療安全性が増大する。血餅が血液中で形成すると、患者は重傷を負う可能性がある。血液凝固は、血栓、塞栓症、心臓麻痺又は心臓発作を引き起こす恐れがある。血液中の気泡は、例えば空気塞栓などを引き起こすことにより、患者を傷つける恐れもある。患者の血液が体外回路を流れる間に決して空気と接触することがないのであれば、血液中に空気が入り込まなくなるので、治療に起因する空気塞栓及び血液凝固を防止できる。血液凝固の可能性が減少するので、血液に添加される抗凝固剤の量を減らすことが可能である。患者の健康にとって有益であるため、治療中の血液における添加剤は少ないことが好ましい。
【0046】
チャンバはまず生理食塩水で満たされた後に血液が充填される。生理食塩水と血液がチャンバ内に導入された後、生理食塩水はチャンバの頂部付近に位置し、血液が底部付近に位置して、二つの液体がほとんど混合しないようにチャンバは十分な高さを備える。生理食塩水は血液中の大部分のタンパク質がチャンバ頂部でフィルタと接触しないようにするためのものである。仮にタンパク質がフィルタ上に蓄積すると、フィルタの疎水特性が阻害される恐れがある。即ちフィルタは湿潤し得るので、液体をチャンバ内部からチャンバ外に漏出させる。またタンパク質がフィルタ上に集まると、フィルタは空気を通過させる点においては不十分となる。従って十分に長いチャンバは生理食塩水を頂部に停滞させるので、タンパク質がフィルタと接触することを回避する。
【0047】
入口及び出口のポート間のチャンバにおけるダムは、微細気泡が蓄積する表面を提供し得る。その結果、血液中の微細気泡は、出口ポートを通過するよりはむしろチャンバを通って逃げることが可能となる。血餅形成を減少させることと血中の気体を低減させることは、血液透析を受ける患者にとってより安全である。ダムはまたチャンバ内にて液体を押し上げるので、液体及び液体と共に動く任意の気体は、直ちにチャンバから押し出されず、後にチャンバの頂部に逃げることが可能となる。
【0048】
例えば圧力測定を行うためのポケット、流体流動用のチャネル及び無空気チャンバなどの構成要素を単一の一体化流体回路内に設置することによって、複数の個別要素を排除することができる。構成要素が少ないほど操作者は作業し易くなるので、操作者が誤操作する危険性が低減される。一体化流体回路は構成要素の一体性を維持する剛性側面と、例えば圧力又は温度の測定等の測定を可能にする弾性部分とを備える。更に一体化回路におけるポケットは、チャンバ頂部と流体連通する圧力感知ラインの必要性を排除する。
【0049】
本発明の幾らかの実施形態を記載してきた。それでも当然のことながら本発明の趣旨と範囲から逸脱しなければ、様々な改変を行うことは可能であることが理解されよう。例えば本明細書において記載した構成要素を例えば血漿などの他の流体で使用することが可能である。更に生理食塩水以外の流体を用いることによってシステムを準備することが可能である。従って他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来型の血液透析システムの概略図である。
【図2】無空気チャンバの概略断面図である。
【図2A】無空気チャンバの概略平面図である。
【図2B】無空気チャンバの概略底面図である。
【図2C】無空気チャンバの概略斜視図である。
【図2D】無空気チャンバの概略断面図である。
【図2E】無空気チャンバの概略断面図である。
【図2F】無空気チャンバの概略断面図である。
【図3】体外回路における無空気チャンバの概略図である。
【図4】体外回路において無空気チャンバを用いるためのフローチャートである。
【図4A】無空気チャンバを通る血液流路の概略図である。
【図5】一体化体外回路の平面図である。
【図5A】図5の一体化体外回路の断面図である。
【図6】一体化体外回路の斜視図である。
【図7】図3において示す無空気チャンバを保持するように構成される配管組立体を保持する血液ラインガイドの斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外回路において体液から空気を除去する装置であって、該装置は、
底部領域と、頂部領域と、前記底部領域又はその付近に一対の流体入口ポート及び出口ポートと、を備える縦型チャンバと、
前記頂部領域又はその付近に配置される微細孔フィルタと、を備え、
それにより前記縦型チャンバから空気を除去しながら前記チャンバを液体で満たせるように、前記液体が前記入口ポートから前記出口ポートまで前記縦型チャンバを通過する、装置。
【請求項2】
前記微細孔フィルタは疎水性材料を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体入口ポートと出口ポートは前記縦型チャンバの底面にある請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記微細孔フィルタは前記縦型チャンバの頂面のうちの少なくとも一部を形成する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置は更に、前記入口ポートと前記出口ポートの間にダムを含む、装置。
【請求項6】
前記縦型チャンバは、第一の液体と第二の液体が混和性であると共に、前記第二の液体が前記縦型チャンバを通って流れるとき、前記縦型チャンバにおける前記第一の液体と、前記縦型チャンバにおける前記第二の液体との間に界面を維持するのに十分な高さを備える請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記縦型チャンバの前記底部領域は前記頂部領域よりも幅が広い請求項1に記載の装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置は更に、前記チャンバの前記底部領域に配置された血餅フィルタを含み、前記血餅フィルタは、前記液体が前記出口ポートを通過する前に前記血餅フィルタを通過できるように配置されている、装置。
【請求項9】
前記微細孔フィルタは前記チャンバの前記頂部領域で連結されたハウジング内に嵌合する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記底面は、入口管と出口管を収容するのに十分幅が広く、前記入口管は前記入口ポートに連結され、前記出口管は前記出口ポートに連結される請求項1に記載の装置。
【請求項11】
体外回路において体液から空気を除去する方法であって、該方法は、
第一の液体を入口ポートから縦型チャンバの底部領域内に通過させる工程と、
前記チャンバ内に空気が実質的に残存しないように前記チャンバを満たす工程と、
第二の液体を前記入口ポートから前記縦型チャンバの前記底部領域内に通過させる工程と、を含み、それにより、前記第一の液体のうちの一部が前記縦型チャンバの底部領域から出口ポートに押し出され、前記第一の液体及び前記第二の液体の間に液−液界面が形成され、かつ前記第二の液体中に含まれる任意の気泡が微細孔フィルタを通って前記縦型チャンバの頂部領域から押し出される方法。
【請求項12】
前記第二の液体は前記第一の液体と混和性であり、前記縦型チャンバは前記第一の液体が停滞するため、前記第一の液体と前記第二の液体とが混合しないように十分な長さである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法は更に、前記第二の液体中の任意の気体が逃げてしまった後に出口ポートに前記第二の液体を通過させる工程を含み、それにより患者に送達するために前記出口ポートに実質的に空気を含まない第二の液体を通す、方法。
【請求項14】
入口ポートに第一の液体を通す工程は、前記入口ポートに血液混和性成分を通すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
入口ポートに第一の液体を通す工程は、前記入口ポートに生理食塩水を通すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
入口ポートに第二の液体を通す工程は、前記入口ポートに血液を通すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法は更に、
前記入口ポートに前記第二の液体を通した後に前記ダムを越えて前記第二の液体を押し出す工程と、
前記ダムを越えて前記第二の液体を押し出した後に前記第二の液体を出口ポートから外へ放出させる工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法は更に、
前記第二の液体を血餅フィルタに通す工程と、
前記血餅フィルタに前記第二の液体を通した後に前記第二の液体を出口ポートに通す工程と、
を含む、方法。
【請求項19】
体液浄化装置において着脱式で収容するように構成される一体化流体回路要素であって、該要素は、
実質的に平坦な主要部分と、前記平坦な主要部分から延びる複数の凹部部分とを備える剛体と、
前記凹部部分のうちの少なくとも一つを覆う弾性バッキングと
を含み、
第一凹部部分は縦型チャンバを形成し、前記縦型チャンバは頂部領域又はその付近に微細孔フィルタを備え、第二凹部部分は前記縦型チャンバの底部領域と流体連通する第一チャネルを形成し、第三凹部部分は前記縦型チャンバの前記底部領域と流体連通する第二チャネルを形成する要素。
【請求項20】
前記弾性バッキングは前記剛体の前記平坦な主要部分に対して密閉され、前記凹部部分を少なくとも部分的に包囲する請求項19に記載の要素。
【請求項21】
前記複数の凹部部分は前記第一チャネルに重なる第四凹部部分を含み、前記第四凹部部分は前記第一チャネルよりも幅が広い請求項19に記載の要素。
【請求項22】
前記複数の凹部部分は第三チャネルを形成する第五凹部部分を含み、前記第三チャネルは前記剛体の縁部に延びると共に前記第一、第二、第三又は第四の凹部部分に直接接触しない請求項21に記載の要素。
【請求項23】
前記複数の凹部部分は第三チャネルに重なる第六凹部部分を含み、前記第六凹部部分は前記第三チャネルよりも幅が広い請求項22に記載の要素。
【請求項24】
前記第三チャネルは前記剛体に連結した第一管と流体連通する請求項22に記載の要素。
【請求項25】
前記複数の凹部部分は第四チャネルを形成する第七凹部部分を含み、前記第四チャネルは前記剛体のうちの少なくとも一つの縁部に延びると共に前記第一、第二、第三、第四、第五又は第六の凹部部分に直接接触しない請求項22に記載の要素。
【請求項26】
前記複数の凹部部分は前記第四チャネルに重なる第八凹部部分を含み、前記第八凹部部分は前記第四チャネルよりも幅が広い請求項25に記載の要素。
【請求項27】
前記第一及び第二のチャネルは前記剛体の縁部に延びる請求項19に記載の要素。
【請求項28】
請求項27に記載の要素は前記剛体と連結した管を更に含み、前記管は前記第一チャネル及び前記第二チャネルと流体連通する、要素。
【請求項29】
前記縦型チャンバは更に前記第二チャネルに隣接した血餅フィルタを含む請求項19に記載の要素。
【請求項30】
前記微細孔フィルタは疎水性材料を含む請求項19に記載の要素。
【請求項31】
前記縦型チャンバは、第一の液体と第二の液体が混和性の場合、前記縦型チャンバにおける前記第一の液体と、前記縦型チャンバにおける前記第二の液体との間に界面を維持する十分な高さを備えるので、前記第二の液体が前記縦型チャンバを流れるとき、前記第一の液体が実質的に停滞する請求項19に記載の要素。
【請求項32】
請求項19に記載の要素は一つ又は複数の注入部位を更に含み、前記注入部位は前記剛体上に形成され、かつ一つ又は複数の前記注入部位は凹部部分に重なる、要素。
【請求項33】
一つ又は複数の前記注入部位はネオプレン・ガスケットを含む請求項32に記載の要素。
【請求項34】
請求項19に記載の要素は剛性バッキングを更に含み、前記剛性バッキングは少なくとも前記第一チャネル及び前記第二チャネルを支持し、かつ前記剛性バッキングは前記弾性バッキングが位置する少なくとも一つの開口を含む、要素。
【請求項35】
体液浄化装置において用いる一体化流体回路要素であって、該要素は、
実質的に平坦な主要部分と、前記平坦な主要部分から延びる複数の凹部部分とを備える剛体と、
前記複数の凹部部分のうちの少なくとも一つを覆う弾性バッキングと、
複数の弾性管と、
を含み、第一凹部部分は縦型チャンバを形成し、前記縦型チャンバは頂部領域又はその付近に疎水性微細孔フィルタを備え、前記縦型チャンバは、前記第一と第二の液体が混和性である場合、前記縦型チャンバの第一の液体と前記縦型チャンバの第二の液体の間に界面を維持するのに十分な高さを備えるので、前記第二の液体が前記チャンバを流れるとき、前記第一の液体が実質的に停滞し、
第二凹部部分は前記第一凹部部分の底部領域と流体連通する第一チャネルを形成し、
第三凹部部分は前記第一凹部部分の前記底部領域と流体連通する第二チャネルを形成し、
前記第二及び第三の凹部部分は前記剛体の縁部に延びると共に、各々が前記複数の弾性管のうちの一つの管と流体連通し、
第四凹部部分は前記第三凹部部分のうちの一部に重なると共に、同第三凹部部分よりも幅が広く、
第五凹部部分は第三チャネルを形成すると共に、前記剛体の縁部から延び、同第五凹部部分は複数の前記弾性管のうちの一つの管と流体連通する、要素。
【請求項1】
体外回路において体液から空気を除去する装置であって、該装置は、
底部領域と、頂部領域と、前記底部領域又はその付近に一対の流体入口ポート及び出口ポートと、を備える縦型チャンバと、
前記頂部領域又はその付近に配置される微細孔フィルタと、を備え、
それにより前記縦型チャンバから空気を除去しながら前記チャンバを液体で満たせるように、前記液体が前記入口ポートから前記出口ポートまで前記縦型チャンバを通過する、装置。
【請求項2】
前記微細孔フィルタは疎水性材料を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体入口ポートと出口ポートは前記縦型チャンバの底面にある請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記微細孔フィルタは前記縦型チャンバの頂面のうちの少なくとも一部を形成する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置は更に、前記入口ポートと前記出口ポートの間にダムを含む、装置。
【請求項6】
前記縦型チャンバは、第一の液体と第二の液体が混和性であると共に、前記第二の液体が前記縦型チャンバを通って流れるとき、前記縦型チャンバにおける前記第一の液体と、前記縦型チャンバにおける前記第二の液体との間に界面を維持するのに十分な高さを備える請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記縦型チャンバの前記底部領域は前記頂部領域よりも幅が広い請求項1に記載の装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置は更に、前記チャンバの前記底部領域に配置された血餅フィルタを含み、前記血餅フィルタは、前記液体が前記出口ポートを通過する前に前記血餅フィルタを通過できるように配置されている、装置。
【請求項9】
前記微細孔フィルタは前記チャンバの前記頂部領域で連結されたハウジング内に嵌合する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記底面は、入口管と出口管を収容するのに十分幅が広く、前記入口管は前記入口ポートに連結され、前記出口管は前記出口ポートに連結される請求項1に記載の装置。
【請求項11】
体外回路において体液から空気を除去する方法であって、該方法は、
第一の液体を入口ポートから縦型チャンバの底部領域内に通過させる工程と、
前記チャンバ内に空気が実質的に残存しないように前記チャンバを満たす工程と、
第二の液体を前記入口ポートから前記縦型チャンバの前記底部領域内に通過させる工程と、を含み、それにより、前記第一の液体のうちの一部が前記縦型チャンバの底部領域から出口ポートに押し出され、前記第一の液体及び前記第二の液体の間に液−液界面が形成され、かつ前記第二の液体中に含まれる任意の気泡が微細孔フィルタを通って前記縦型チャンバの頂部領域から押し出される方法。
【請求項12】
前記第二の液体は前記第一の液体と混和性であり、前記縦型チャンバは前記第一の液体が停滞するため、前記第一の液体と前記第二の液体とが混合しないように十分な長さである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法は更に、前記第二の液体中の任意の気体が逃げてしまった後に出口ポートに前記第二の液体を通過させる工程を含み、それにより患者に送達するために前記出口ポートに実質的に空気を含まない第二の液体を通す、方法。
【請求項14】
入口ポートに第一の液体を通す工程は、前記入口ポートに血液混和性成分を通すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
入口ポートに第一の液体を通す工程は、前記入口ポートに生理食塩水を通すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
入口ポートに第二の液体を通す工程は、前記入口ポートに血液を通すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法は更に、
前記入口ポートに前記第二の液体を通した後に前記ダムを越えて前記第二の液体を押し出す工程と、
前記ダムを越えて前記第二の液体を押し出した後に前記第二の液体を出口ポートから外へ放出させる工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法は更に、
前記第二の液体を血餅フィルタに通す工程と、
前記血餅フィルタに前記第二の液体を通した後に前記第二の液体を出口ポートに通す工程と、
を含む、方法。
【請求項19】
体液浄化装置において着脱式で収容するように構成される一体化流体回路要素であって、該要素は、
実質的に平坦な主要部分と、前記平坦な主要部分から延びる複数の凹部部分とを備える剛体と、
前記凹部部分のうちの少なくとも一つを覆う弾性バッキングと
を含み、
第一凹部部分は縦型チャンバを形成し、前記縦型チャンバは頂部領域又はその付近に微細孔フィルタを備え、第二凹部部分は前記縦型チャンバの底部領域と流体連通する第一チャネルを形成し、第三凹部部分は前記縦型チャンバの前記底部領域と流体連通する第二チャネルを形成する要素。
【請求項20】
前記弾性バッキングは前記剛体の前記平坦な主要部分に対して密閉され、前記凹部部分を少なくとも部分的に包囲する請求項19に記載の要素。
【請求項21】
前記複数の凹部部分は前記第一チャネルに重なる第四凹部部分を含み、前記第四凹部部分は前記第一チャネルよりも幅が広い請求項19に記載の要素。
【請求項22】
前記複数の凹部部分は第三チャネルを形成する第五凹部部分を含み、前記第三チャネルは前記剛体の縁部に延びると共に前記第一、第二、第三又は第四の凹部部分に直接接触しない請求項21に記載の要素。
【請求項23】
前記複数の凹部部分は第三チャネルに重なる第六凹部部分を含み、前記第六凹部部分は前記第三チャネルよりも幅が広い請求項22に記載の要素。
【請求項24】
前記第三チャネルは前記剛体に連結した第一管と流体連通する請求項22に記載の要素。
【請求項25】
前記複数の凹部部分は第四チャネルを形成する第七凹部部分を含み、前記第四チャネルは前記剛体のうちの少なくとも一つの縁部に延びると共に前記第一、第二、第三、第四、第五又は第六の凹部部分に直接接触しない請求項22に記載の要素。
【請求項26】
前記複数の凹部部分は前記第四チャネルに重なる第八凹部部分を含み、前記第八凹部部分は前記第四チャネルよりも幅が広い請求項25に記載の要素。
【請求項27】
前記第一及び第二のチャネルは前記剛体の縁部に延びる請求項19に記載の要素。
【請求項28】
請求項27に記載の要素は前記剛体と連結した管を更に含み、前記管は前記第一チャネル及び前記第二チャネルと流体連通する、要素。
【請求項29】
前記縦型チャンバは更に前記第二チャネルに隣接した血餅フィルタを含む請求項19に記載の要素。
【請求項30】
前記微細孔フィルタは疎水性材料を含む請求項19に記載の要素。
【請求項31】
前記縦型チャンバは、第一の液体と第二の液体が混和性の場合、前記縦型チャンバにおける前記第一の液体と、前記縦型チャンバにおける前記第二の液体との間に界面を維持する十分な高さを備えるので、前記第二の液体が前記縦型チャンバを流れるとき、前記第一の液体が実質的に停滞する請求項19に記載の要素。
【請求項32】
請求項19に記載の要素は一つ又は複数の注入部位を更に含み、前記注入部位は前記剛体上に形成され、かつ一つ又は複数の前記注入部位は凹部部分に重なる、要素。
【請求項33】
一つ又は複数の前記注入部位はネオプレン・ガスケットを含む請求項32に記載の要素。
【請求項34】
請求項19に記載の要素は剛性バッキングを更に含み、前記剛性バッキングは少なくとも前記第一チャネル及び前記第二チャネルを支持し、かつ前記剛性バッキングは前記弾性バッキングが位置する少なくとも一つの開口を含む、要素。
【請求項35】
体液浄化装置において用いる一体化流体回路要素であって、該要素は、
実質的に平坦な主要部分と、前記平坦な主要部分から延びる複数の凹部部分とを備える剛体と、
前記複数の凹部部分のうちの少なくとも一つを覆う弾性バッキングと、
複数の弾性管と、
を含み、第一凹部部分は縦型チャンバを形成し、前記縦型チャンバは頂部領域又はその付近に疎水性微細孔フィルタを備え、前記縦型チャンバは、前記第一と第二の液体が混和性である場合、前記縦型チャンバの第一の液体と前記縦型チャンバの第二の液体の間に界面を維持するのに十分な高さを備えるので、前記第二の液体が前記チャンバを流れるとき、前記第一の液体が実質的に停滞し、
第二凹部部分は前記第一凹部部分の底部領域と流体連通する第一チャネルを形成し、
第三凹部部分は前記第一凹部部分の前記底部領域と流体連通する第二チャネルを形成し、
前記第二及び第三の凹部部分は前記剛体の縁部に延びると共に、各々が前記複数の弾性管のうちの一つの管と流体連通し、
第四凹部部分は前記第三凹部部分のうちの一部に重なると共に、同第三凹部部分よりも幅が広く、
第五凹部部分は第三チャネルを形成すると共に、前記剛体の縁部から延び、同第五凹部部分は複数の前記弾性管のうちの一つの管と流体連通する、要素。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図4A】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図4A】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2009−512501(P2009−512501A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536588(P2008−536588)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/036802
【国際公開番号】WO2007/050211
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(505324858)フレゼニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Holdings,Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/036802
【国際公開番号】WO2007/050211
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(505324858)フレゼニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Holdings,Inc.
【Fターム(参考)】
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