体外血液処理を最適化するための方法および装置
本発明は、体外血液処理装置によって体外血液処理を最適化するための方法および装置に関する。該体外血液処理装置は、半透膜(2)によって第1のチャンバ(3)および第2のチャンバ(4)に区分された透析器(1)またはフィルムを有し、透析器またはフィルムの第1のチャンバは、体外血液回路Iの部分であり、第2のチャンバは、透析液システムIIの部分である。更に、本発明は、体外血液処理を最適化するための装置を有する体外血液処理装置と、体外血液処理を最適化するための方法を実施するためのデータ処理装置上で実行するためのコンピュータプログラム製品とに関する。本発明に係わる方法および本発明に係わる装置は、異なったタイプの透析器またはフィルタのための演算ユニットによって、各々の透析器またはフィルタを用いて処理を実行するための少なくとも1つの機械固有の治療パラメータが決定され、かつ、演算ユニットによって、決定された機械固有の治療パラメータから各々の透析器またはフィルタを用いて生じるコストが決定され、かつ、表示ユニット上に、すべてのタイプの透析器またはフィルタのための決定されたコストが表示されることに基づいている。このことによって、主治医に、透析器またはフィルタのなされるべき選択のために必要な情報が提供される。次に、医師は、血液処理のコストができる限り低いように、透析器またはフィルタを選択することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液処理装置によって体外血液処理を最適化するための方法および装置に関する。該体外血液処理装置は、半透膜によって第1のチャンバおよび第2のチャンバに区分された透析器またはフィルムを有し、透析器またはフィルムの第1のチャンバは、体外血液回路の部分であり、第2のチャンバは、透析液システムの部分である。更に、本発明は、体外血液処理を最適化するための装置を有する体外血液処理装置に関する。本発明は、体外血液処理装置を最適化するための方法を実施するためのデータ処理装置上で実行するためのコンピュータプログラム製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎不全の場合に、尿毒症物質を除去するためにおよび流体を除去するために、体外血液処理または洗浄のための異なった方法が用いられる。血液透析の際に、患者の血液は、身体の外で、透析器の中で洗浄される。透析器は、半透膜によって区分されている血液チャンバおよび透析液チャンバを有する。治療中に、患者の血液は、血液チャンバを通って流れ、他方、透析液は、透析液チャンバを通って流れる。その目的は、患者の血液の尿毒症物質を取り除くためである。
【0003】
血液透析(HD)の場合に、透析器の膜を通っての低分子物質の移送が、実質的に、透析液と血液の間の濃度差(拡散)によって決定されるのに対し、血液濾過(HF)の場合には、血漿水中に溶けた物質、特に高分子物質は、透析器の膜を通っての高い液流(対流)によって効果的に除去される。血液濾過では、透析器がフィルタとして機能する。2つの方法の組み合わせが、血液透析濾過(HDF)である。
【0004】
体外血液処理を実行するための種々の透析器またはフィルタが知られている。該知られた透析器またはフィルタは、いわゆる高流量型のおよび低流量型の透析器またはフィルタを含む。高流量型の透析器は、低流量型の透析器よりも高い限外濾過係数を特徴とする。
【0005】
体外血液処理のために、主治医は、一連の治療パラメータを予め設定しなければならない。該治療パラメータは、一方では、患者に関し、他方では、血液処理の実行のために用いられる血液処理装置に関する。従って、医師によって予め設定される治療パラメータを、以下、患者固有のまたは機械固有の治療パラメータと呼ぶ。
【0006】
以下、患者固有の治療パラメータは、治療目的および/または治療される患者に特徴的であるパラメータを意味する。主治医は、まず、患者のために、各々の治療法を予め設定する。例えば、血液透析(HD)と、血液濾過(HF)と、血液透析濾過(HDF)との間で区別がなされる。更に、医師は、患者の個別的な循環安定性を考慮しつつ、治療時間tを決定する。更に、医師は、治療に関する目標値として、透析量kt/Vを設定する。一般的には、1.4の透析量kt/Vの値が、適切な治療の目標値として、認められる。女性または特に軽量の患者に関して、文献には、平均的な患者よりも高い目標値が議論される。他の患者固有の治療パラメータは、体外血液回路中の血流量である。血流量を、治療中に、医師によって、ある限度内で変化させることができるが、最終的には、調整可能な血流量は、患者のブラッドアクセスの種類および特徴に依存している。
【0007】
以下、機械固有の治療パラメータは、医師自身が、体外治療を実行するための患者固有の治療パラメータに従って自由に選択することができるパラメータを意味する。機械固有の治療パラメータは、特に、知られた血液処理装置ではある限度内で自由に調整されることができる透析液流量である。
【0008】
体外血液処理を実行するために、主治医が、例えば上記の高流量型および低流量型の透析器を含む異なったタイプの透析器またはフィルタを使用することができるので、医師は、治療の前に、特定の透析器またはフィルタを選択しなければならない。しかし、特定の透析器の選択は、同様に、治療目的を達成するために医師が調整せねばならない機械固有の治療パラメータへの影響を有する。血流量が変わらないときは、少ない透析液流量の場合でも、大きい有効面を特徴とする透析器を用いて、小さい有効面を特徴とする透析器を用いるのと同じクリアランスを達成することができる。
【0009】
主治医は、患者および機械固有の治療パラメータを、血液処理が各々の患者にとって最適に実行されるように、選択するだろう。しかし、主治医が、異なったタイプの透析器またはフィルタを使用するとき、血液処理を最適に実行することができる際の異なった治療パラメータが生じるかもしれない。
【発明の概要】
【0010】
体外血液処理装置によって体外血液処理を最適化するための方法であって、主治医に、1つのグループの透析器またはフィルタのグループからの各々の透析器またはフィルタの選択を容易化する方法を提供するという課題が、本発明の基礎になっている。更に、医師が透析器またはフィルタを容易に選択する、体外血液処理を最適化するための装置を提供することが、本発明の課題である。本発明の他の課題は、体外決席処理を最適化するための装置を有する体外血液処理装置と、体外血液処理装置を最適化するための方法を実施するためのデータ処理装置上で実行するためのコンピュータプログラム製品とを使用することである。
【0011】
上記課題の解決は、本発明によれば、請求項1,7,13および14の特徴によってなされる。本発明の好ましい実施の形態は、従属請求項の主題である。
【0012】
体外血液処理を最適化するための、本発明に係わる方法および本発明に係わる装置は、種々のタイプの透析器またはフィルタのための演算ユニットによって、各々の透析器またはフィルタを用いて治療を実行するための少なくとも1つの機械固有の治療パラメータが決定され、かつ、演算ユニットによって、決定された機械固有の治療パラメータから各々の透析器またはフィルタを用いて生じるコストが決定され、かつ、表示ユニット上に、すべてのタイプの透析器またはフィルタの決定されたコストが表示されることに基づいている。このことによって、主治医に、透析器またはフィルタのなされるべき選択のために必要な情報が提供される。次に、医師は、血液処理のコストができる限り低いように、透析器またはフィルタを選択することができる。
【0013】
体外血液処理を最適化するための本発明に係わる装置は、体外血液処理装置のほかに作動される別個のモジュールを形成することができる。最適化のための本発明に係わる装置は、患者および機械に固有の治療パラメータを入力するための入力ユニットと、演算ユニットと、体外血液処理のために生じるコストを表示するための表示ユニットとを具備する。しかしまた、本発明に係わる装置が体外血液処理装置の構成要素であることも可能である。本発明に係わる装置が体外血液処理装置の構成部分であるときは、本発明に係わる装置は、体外血液処理装置の入力ユニット、表示ユニットおよび/または演算ユニットを使用することができる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態では、異なったタイプの透析器またはフィルタに関して決定される機械固有の治療パラメータは、主治医が血液処理の実行のために調整する透析液流量である。しかし、基本的には、体外血流量とは異なる機械固有の治療パラメータを、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関して決定することもできる。
【0015】
すべてのタイプの透析器またはフィルタに関する、体外血液処理のコストを決定するために、本発明に係わる方法および本発明に係わる装置が、記憶ユニットに、異なったタイプの透析器またはフィルタに関するコストおよび消耗材料に関するコストおよび/またはエネルギコストを記憶することを提案することは好ましい。異なったコストを入力ユニット上に入力し、次に、記憶ユニットに読み込むことができることは好ましい。その目的は、コストをいつでも変更することができるためである。コストを決定する際に、消耗材料のコストおよびエネルギコスト双方を考慮することは好ましい。しかしまた、消耗材料のコストまたはエネルギコストのみを考慮することも可能である。
【0016】
本発明に係わる方法および本発明に係わる装置が、演算ユニットによって、決定された機械固有の治療パラメータに従っての体外血液処理の実行の際に消費される各々の消耗材料の量および/またはエネルギの量を計算することは好ましい。一方では消耗材料のコストおよび/またはエネルギコストからおよび他方では消耗材料および/またはエネルギの計算された量から、演算ユニットでは、体外血液処理の際に消費された消耗材料および/またはエネルギのコストが計算される。演算ユニットによって、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関して、更に、総コストを、夫々、各々の透析器またはフィルタの記憶されたコスト、および血液処理の際に消費された消耗材料および/またはエネルギの計算されたコストの合計から、計算する。
【0017】
他の好ましい実施の形態は、異なった透析器またはフィルタに関する機械固有の治療パラメータの異なった値と、各々の透析器の使用および各々の機械固有の治療パラメータの調整から生じる、体外血液処理の総コストとが、表示ユニットに表示され、それ故に、主治医が、治療の総コストを考慮して、異なった透析器またはフィルタの間の選択をすることができることを提案する。総コストが、表示ユニット上で、透析器またはフィルタ、消耗材料および消費されたエネルギから生じるコストに分類されることは好ましい。
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】体外血液処理装置の重要な構成要素および血液処理の最適化のための装置の非常に簡略化した略図を示す。
【図2】血液処理を最適化するための装置の表示ユニットを示す。表示ユニット上には、処理の総コストが最小にされている透析器またはフィルタが表示される。
【図3】血液処理を最適化するための装置の表示ユニットを示す。異なったタイプの透析器またはフィルタに関する血流量の際の血液処理のためのコストが表示される。
【図4】第1の血流量よりも大きい第2の血流量の際の血液処理に関する、血液処理のコストが、異なったタイプの透析器またはフィルタに関して表示されてなる表示ユニットを示す
【図5】他の治療パラメータの予備設定の場合の表示ユニットを示す。表示ユニット上には、血液処理のコストが最小になっている透析器またはフィルタが表示される。
【図6】図5の表示ユニットを示す。第1の血流量の際の血液処理の、異なったタイプの透析器またはフィルタに関するコストが表示される。
【図7】第1の血流量よりも大きい第2の血流量の際の血液処理の、異なったタイプの透析器またはフィルタに関するコストが表示される、図5の表示ユニットを示す。
【図8】表示ユニットを示す。治療目的は達成されない。
【図9】最適化段階後の表示ユニットを示す。該最適化段階のために、達成されていない治療目的が、目標値として挙げられる。
【図10】表示ユニットを示す。治療目的は、血流量の増加により達成される。
【図11】表示ユニットを示す。治療目的は、血流量および治療時間の増加により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、体外血液処理装置の、本発明に関連のある構成要素を、非常に簡略化した略図で示す。体外血液処理装置を、血液透析装置および/または血液濾過装置として操作させることができる。従って、以下、体外血液処理装置を、血液透析濾過装置と呼ぶ。血液透析濾過装置は、透析器またはフィルタ1を有する。透析器またはフィルタは、半透膜2によって、血液チャンバ3と、透析液チャンバ4とに区分されている。血液チャンバの入口3aは、血液ポンプ6が接続されている相手である、動脈の血液供給ライン5の、その端部に接続されている。他方、血液チャンバの出口3bは、ドリップチャンバ8が接続されている相手である、静脈の血液供給ライン7の、その端部に接続されている。動脈および静脈の血液ライン5,7の他端には、患者に接続するための、図示しない、動脈および静脈のカニューレが位置している。流体システムのこの部分は、血液透析濾過装置の体外血液回路Iである。
【0021】
血液透析濾過装置の透析液システムIIは、新鮮な透析液を提供するための装置9を有する。この装置は、透析液供給ライン10を介して、透析器1またはフィルタの透析液チャンバ4の入口4aに接続されている。透析器1またはフィルタの透析液チャンバ4の出口4bからは、透析液戻りライン11が分岐している。透析液戻りラインは出口12に通じている。透析液を運ぶためには、透析液戻りライン11に設けられている透析液ポンプ13が用いられる。
【0022】
更に、血液透析濾過装置は、置換液源14を有する。置換液源からは、置換液ポンプ16が接続されている置換液ライン15が、静脈のドリップチャンバ8に通じている。置換液ポンプ16によって、所定量の置換液を、置換液源14から、体外血液回路Iに供給することができるのは、液体が、透析器1を介して、血液回路から除去されるときである。
【0023】
血液透析濾過装置は、更に、中央制御演算ユニット17を有する。中央制御演算ユニットは、制御ライン18,19,20を介して、血液ポンプ6と、透析液ポンプ13と、置換液ポンプ16とに接続されている。中央制御演算ユニット17は、体外血液回路Iに、特定の血液流量Qbが調整され、かつ、透析液システムIIに、特定の透析液量Qdが調整されるように、ポンプ6,13および16を制御する。制御演算ユニットは、予め定められた置換液量を予め設定し、かつ、限外濾過量を調整する。限外濾過量によって、液体が、患者から除去される。体外血液処理を行なうことを意図するための個々の治療パラメータは、主治医によって、図示しない入力ユニット上で入力される。
【0024】
以下、独立ユニットを形成するか、あるいは、体外血液処理装置の構成要素であってもよい、血液処理を最適化するための本発明に係わる装置を、記述する。血液処理を最適化するための装置が、血液処理装置の構成要素であるとき、血液処理を最適化するための装置は、血液処理装置に既存する構成要素を用いることができる。例えば、血液処理を最適化するための装置は、中央制御演算ユニット17を用いることができる。
【0025】
血液処理を最適化するための装置24は、本実施の形態では、独自の演算ユニット24Aと、独自の記憶ユニット24Bと、別個の入力ユニット24Cと、別個の表示ユニットとを有する。これらのユニットは、データライン24Eを介して、互いに接続されている。中央制御演算ユニット17には、装置24が、他のデータライン23を介して接続されている。
【0026】
演算記憶ユニット24A,24Bは、データ処理プログラムが実行されてなる中央データ処理システムの一部であってもよい。入力ユニット24Cは、キーボードであり、表示ユニット24Dはディスプレー画面であってもよい。
【0027】
図2は、本発明に係わる装置のディスプレー画面24Dを示す。ディスプレー画面上には、治療パラメータが表示される。該治療パラメータは、主治医によって、入力ユニット24C上で入力され、または、演算ユニット24Aによって計算される。これらのパラメータは、ディスプレー画面上に、マスク25によって表示される。
【0028】
本実施の形態では、主治医は、まず、治療目的および治療される患者に特徴的である、患者固有の治療パラメータを予め設定する。治療目的に特徴的な治療パラメータは、ディスプレー画面上で、第1の行25Aの入力マスク25に表示される。他方、患者に特徴的なパラメータは、第2の行25Bに表示される。医師は、治療目的を、透析量Kt/V、治療時間Tおよび治療方法すなわち血液透析HD、後希釈HDFpostまたは前希釈HDPpreがなされる血液透析濾過HDFという治療パラメータに従って、予め設定する。患者のために、医師は、特定の血流量Qb、特定の尿素分布容積Vならびに種々の他の実験室データを予め設定する。該実験室データは、例えば、ヘマトクリットHKTを含むことができる。透析量Kt/Vに関して、目標値からの許容される偏差を予め設定することができる。
【0029】
本実施の形態では、透析量Kt/Vに対しては、1.4が、治療時間Tに対しては、240minが、治療法に対しては、血液透析HDが、血流量Qbに対しては、290ml/minが、尿素分布容積Vに対しては35lが予め設定される。更に、透析量Kt/Vに関する目標値からの許容偏差として、2%が予め設定される。
【0030】
更に、医師が、高流量型透析器またはフィルタを用いるか、あるいは低流量型透析器またはフィルタを用いるほうが好ましいか否かを、予め設定することができる。更に、医師は、血液処理装置の型を予め設定することができる。このことは、マスク25のカラム25Cに設定される。ここでは、医師は、高流量型透析器またはフィルタを予め設定し、かつ、5008型の透析機械を選択した。このことを、個々の領域の色つきの背景によって表示することができる。医師を励まして血流量の増加を熟考させるために、第1の数値よりも大きい、血流量に関する他の数値を、入力することができる。次に、後の計算は、低いほうのおよび高いほうの血流量のためになされる。ここでは、医師は、高い血流量Qbに対して、320ml/minを入力した。2つの血流は、カラム25Dに表示される。
【0031】
透析液流量の増加が、予め定められた上限値を越えて、クリアランスKの大幅な増加を実際にもたらさないので、透析液流量に関して、上限値を予め設定することができる。小さい分布容積Vを有する患者の場合には、透析量Kt/Vに関する目標値が、血流量よりも少ない透析液流量をもって、既に達成されることが、生じることがある。このような場合には、血流量に等しい透析液流量を予め設定することができる。実際また、透析液流量に関する予め定められた下限値を予め設定することができる。しかし、透析液流量または血流量に関する上限値および下限値の予備設定は、1つの選択にすぎない。
【0032】
血液処理を最適化するための、本発明に係わる装置24は、今や、290および320ml/min夫々の、予め定められた低い血流量および高い血流量に関する、特定の透析液流量Qdの場合に透析のコストが最小限であってなる透析器またはフィルタのタイプを決定する。本実施の形態で、血液処理を最適化するための装置が、透析液流量が500ml/minである場合、FX100型のフィルタを提案するのは、血流量Qbが290ml/minであるときである。血流量Qbが320ml/minであるとき、装置は、同様に、X100型のフィルタを提案する。しかしながら、透析液流量Qdは400ml/minである。以下に、データの評価が如何になされるかを詳述する。
【0033】
記憶ユニット24Bには、特定の血流量範囲Qb1ないしQb2が、夫々、1グループの透析器またはフィルタからなる種々の透析器またはフィルタに割り当てられている。グループの透析器またはフィルタは、高流量型フィルタおよび低流量型フィルタを含む2つの種類のフィルタを有する。高流量型フィルタは、例えば、型シリーズFX50,FX60,FX80およびFX100を含む。
【0034】
まず、医師によって選択された、透析器またはフィルタ、例えば高流量型フィルタの種類と、所望の血流量Qbと基づいて、所望の血流量Qbに基本的に適切なフィルタが、各々の型シリーズから選択される。
【0035】
例1:選択されたFX高流量、Qb=220ml/min:FX50ないしFX100は可能である。
【0036】
例2;選択されたFX高流量、Qb=370ml/min:FX60ないしFX100は可能である。
【0037】
演算ユニット24Aは、透析量KT/Vの予め定められた値、例えば1.40と、入力された治療時間Tと、入力された尿素分布容量Vとから、まず、クリアランスKに関する目標値を計算する。クリアランスKに関する目標値を計算する際に、透析量KT/Vの目標値が予め設定されているときは、予め定められた許容差、例えば2%が考慮される。それ故に、治療のコストの後の計算の際に、透析量KT/Vの値を、予め定められた許容差内で受け入れることができる。このことによって、個々の場合に、コストが節約される。しかし、このことは、治療の成功への証明可能な作用を有するものではない。
【0038】
クリアランスKに関する目標値が決定されているときは、演算ユニット24Aは、予め定められた治療法、例えばHD,HDFpost,HDPpre、予め定められた血流量Qb、ならびに例えばヘマトクリットHKTを含む他のパラメータを用いて、予め決定されたすべての透析器またはフィルタに関して、治療のためにその都度必要な透析液流量Qdを計算する。この場合、演算ユニットは、予め決定されたクリアランスKおよび予め定められた血流量Qbから、所望のクリアランスKを達成するために必要である透析液流量Qdを計算する。必要な透析液流量Qdの計算は、以下の式に基づいて、係数k0Aが予め定められてなるHD治療のためになされる。
【数1】
【0039】
他の治療法、例えばHDFに関しては、Kを計算するために、他の式が用いられることができる。係数k0Aは、各々の透析器またはフィルタに特徴的な大きさである。この大きさは、実質的に、透析器またはフィルタの半透膜の活性表面および活性表面の拡散抵抗に依存している。
【0040】
記憶ユニット24Bには、すべての透析器またはフィルタに対して、各々の係数k0Aが記憶されている。該係数は、透析液流量Qdを計算するための演算ユニット24Aによって、記憶装置から読み出される。透析液流量を決定するための上記方法は、WO2007/140993 A1に詳記されている。該公報の開示内容を明示的に引き合いに出す。しかし、本発明にとっては、どの方法で透析液流量が決定されるかは、結局のところ重要でない。
【0041】
記憶ユニット24Bには、更に、種々の消耗材料のコストおよびエネルギコストが記憶されている。すべての必要なコスト(売買価格)を、適切なメニューによって入力することができる。本実施の形態では、消耗材料のコストは、透過物、酸および重炭酸塩のコストを含み、エネルギコストは、電流のコストを含む。記憶ユニット24Bには、個々の透析器またはフィルタのコスト(売買価格)も記憶されている。
【0042】
血液処理のために提案されるすべての透析器またはフィルタに関して、演算ユニット24Bが、各々の透析液流量Qdおよび予め定められた血流量Qbを用いて、各々の消耗材料(透過物、酸、重炭酸塩)の量と、血液処理のために使用されるエネルギ(電流)の量とを計算する。
【0043】
消耗材料の計算された量と、消耗材料の記憶されたコストと、消費されたエネルギと、エネルギコストとから、記憶ユニット24Bは、今や、すべての消耗材料のコストおよび処理によって消費されたエネルギのコストを計算する。最後に、演算ユニットは、処理の際に消費された消耗材料の予め決定されたコストと、消費されたエネルギのコストと、透析器またはフィルタのコストとの合計から、すべての型の透析器またはフィルタの総コストを計算する。
【0044】
透析器またはフィルタの最終的な選択は、次に、総コストが最小であるという前提の下でなされる。
【0045】
医師は、「コスト」というメニューアイテムを介して、提案された透析器またはフィルタの個々のコストが表示されてなるサブメニューを呼び出すことができる。図3は、本実施の形態のためのサブメニューを示している。この実施の形態では、290ml/min(Qb1)の血流量Qbが、予め設定されている(図2)。
【0046】
コストの表示の際に、常に、意図された血流量に適切であるすべての透析器またはフィルタが、カラム毎に、表示される。これは、290ml/minの血流量が予め設定されていてなる本実施の形態では、高流量型透析器FX50ないしFX100である。この場合、透析量Kt/Vの目標値を達成することができず、比較的高い透析液流量または比較的低い透析液流量によってのみ透析量の目標値を達成することができるために用いる透析器またはフィルタは、メニューアイテムの色つきの背景を特徴とする。本実施の形態では、フィルタFX50には、赤の色が付される。何故ならば、1.40の透析量の目標値を、このフィルタでは、達成することができないからである。フィルタFX60には、黄色い色が付されている。何故ならば、このフィルタによって、血流量の1.5倍より多い比較的高い透析液流量によってのみ、透析量の目標値を達成することができるからである。これに対し、フィルタFX80およびFX100には、緑の色が付されている。何故ならば、これらのフィルタによって、比較的低い透析液流量の際に、透析量の目標値を達成することができるからである。本実施の形態では、フィルタの価格および他のコストからなるコストの合計が、透過物、酸、重炭酸塩および電流のコストを含み、フィルタFX100の場合には最小であることが明らかである。従って、計算ユニット24Aは、異なった総コストの比較後に、透析器FX100を選択する。該透析器では、総コストは最小である。結果は、メインメニューに表示されている(図2:Qb290,フィルタFX100Qd500)。
【0047】
図4は、320ml/min(Qb2)の、代替の、Qb1より高い血流量のためのサブメニューを示す。血流量の増加の場合には、フィルタFX50が最早適切でないことが明らかである。従って、このフィルタは、マスクに最早表示されない。血流量の増加の際には、透析量Kt/Vに関する目標値を、400ml/minの透析液流量によって、達成することができるのは、フィルタFX100を使用する場合である。このフィルタの場合には、処理の総コストも最も低い。従って、演算ユニットは、治療のために、320ml/minの血流量の増加の際にも、再度、フィルタFX100を提案する(図2:Qb320,フィルタFX100Qd400)。今や、血流量の増加または減少の際におよび高いまたは低い透析液流量の際に、自らがフィルタFX100を用いて治療を行なうか否かが、医師に委ねられる。従って、実施の形態は、本発明に係わる装置が、血流量のまたは治療時間の変更が如何なる作用を有するかを、医師に特に明らかにすることを示す。
【0048】
図5ないし7は、メインメニューおよび2つのサブメニューを示す。メインメニューおよびサブメニューは、HD処理でなく、後希釈(HDFpost)がなされる際のHDF処理(血液透析濾過)が、予め設定されるとき、血液処理を最適化するための本発明に係わる装置の表示ユニット24D上に表示される。そうでないときは、治療パラメータは、治療を第1の実施の形態で行なうために用いるパラメータと等しい。
【0049】
メインメニュー(図5)で、290ml/minの血流量Qbに対して、300ml/minの透析液流量が設定されている際のフィルタFX100が提案され、320ml/minの血流量に対して、同様に300ml/minの透析液流量が設定されている際のフィルタFX80が、提案される。その目的は、透析量の目標値を放棄することなく、処理のコストをできる限り低く保つためである。
【0050】
290ml/minの血流量Qbのためのサブメニュー(図6)は、治療が、原則的に、フィルタFX60ないしFX100によって可能であることを示す。これらのフィルタに関しては、演算ユニットは、600と300ml/minの間にある透析液流量を計算する。すべてのフィルタによって、1.40の透析量の目標値を達成することができる。しかしながら、治療の総コストは、フィルタFX100の場合には最小である。実際また、透析液流量はフィルタFX100によって最小である。320ml/minへの血流量の増加は、治療の総コストが、フィルタFX80によって、最小であること(図7)をもたらす。FX80によって、透析液流量も、最小である。この透析液流量は、血流量がより低い場合のフィルタFX100による透析液流量に対応する。
【0051】
図8ないし11を参照して、透析量KT/Vの予め定められた許容差内で治療目標を達成することができない場合を記載する。
【0052】
図8は、透析量KT/Vの所定値が表示されてなるディスプレー画面24Dを示す。医師は、1.4の透析量KT/Vを予め設定した。例えば、低い血流量Qbまたは大きい分布容積Vの場合に、治療目標が達成されないときは、医師は、指示を受け取る。本実施の形態では、1.4の予め定められた値より下にあり、すなわち、2%の予め定められた許容差の外にある、1.24の透析量KT/Vの達成可能な数値は、赤い背景に表示される。このことによって、治療目標が達成されないことが知らされる。
【0053】
この場合には、目標値にできる限り近づくように、常に、最大の透析器および最高の透析液流量Qdを選択せねばならないだろう。しかし、これによっては、材料の有効利用は与えられていない。
【0054】
演算ユニット24Aは,この場合、自動的に他の最適化段階を行なう。該最適化段階では、透析量KT/Vの、第1の最適化段階で達成された値、例えば1.24を、新たな目標値として予め設定する。新たな目標値に対しても、演算ユニット24Aは、再度、予め定められた許容誤差、例えば2%を考慮する。
【0055】
図9は、ディスプレー画面24Dを示す。このディスプレー画面上では、第2の最適化段階における計算の結果が、1.24の透析量KT/Vの目標値をもって表示されている。再度予め定められた許容誤差の外にあるが、1.24の予め定められた目標値よりもわずかに少ない、1.22の透析量KT/Vが生じることが明らかである。透析KT/Vの計算された値が、再度、許容範囲外にあるので、その値は、再度、赤い背景上に表示される。演算ユニット24Aは、ディスプレー画面24Dに表示される予め定められたパラメータにおいて生じるコストを計算する。コストは、本実施の形態では、21.30ユーロになる。
【0056】
図10および11は、1.4への透析量KT/Vの増加を、血流量Qbおよび/または治療時間Tの増加によって達成することができることを示す。例えば、許容範囲内にある、1.39の透析量KT/Vを、血流量Qbが、240minの同じ治療時間Tで、300から350ml/minに増加されることによって達成することができる(図10)。しかしまた、1.39の透析量KT/Vを、320ml/minの血流量Qbにより255の治療時間Tで達成することができる(図11)。演算ユニット24Aは、異なった予備設定のために、どのパラメータで治療を行なうべきかを医師が決定することができるように、21.42ユーロ(図10)および22.22ユーロ(図11)になるコストを計算する。
【符号の説明】
【0057】
1 透析器
2 半透膜
3 第1のチャンバ
4 第2のチャンバ
I 体外血液回路
II 透析液システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液処理装置によって体外血液処理を最適化するための方法および装置に関する。該体外血液処理装置は、半透膜によって第1のチャンバおよび第2のチャンバに区分された透析器またはフィルムを有し、透析器またはフィルムの第1のチャンバは、体外血液回路の部分であり、第2のチャンバは、透析液システムの部分である。更に、本発明は、体外血液処理を最適化するための装置を有する体外血液処理装置に関する。本発明は、体外血液処理装置を最適化するための方法を実施するためのデータ処理装置上で実行するためのコンピュータプログラム製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎不全の場合に、尿毒症物質を除去するためにおよび流体を除去するために、体外血液処理または洗浄のための異なった方法が用いられる。血液透析の際に、患者の血液は、身体の外で、透析器の中で洗浄される。透析器は、半透膜によって区分されている血液チャンバおよび透析液チャンバを有する。治療中に、患者の血液は、血液チャンバを通って流れ、他方、透析液は、透析液チャンバを通って流れる。その目的は、患者の血液の尿毒症物質を取り除くためである。
【0003】
血液透析(HD)の場合に、透析器の膜を通っての低分子物質の移送が、実質的に、透析液と血液の間の濃度差(拡散)によって決定されるのに対し、血液濾過(HF)の場合には、血漿水中に溶けた物質、特に高分子物質は、透析器の膜を通っての高い液流(対流)によって効果的に除去される。血液濾過では、透析器がフィルタとして機能する。2つの方法の組み合わせが、血液透析濾過(HDF)である。
【0004】
体外血液処理を実行するための種々の透析器またはフィルタが知られている。該知られた透析器またはフィルタは、いわゆる高流量型のおよび低流量型の透析器またはフィルタを含む。高流量型の透析器は、低流量型の透析器よりも高い限外濾過係数を特徴とする。
【0005】
体外血液処理のために、主治医は、一連の治療パラメータを予め設定しなければならない。該治療パラメータは、一方では、患者に関し、他方では、血液処理の実行のために用いられる血液処理装置に関する。従って、医師によって予め設定される治療パラメータを、以下、患者固有のまたは機械固有の治療パラメータと呼ぶ。
【0006】
以下、患者固有の治療パラメータは、治療目的および/または治療される患者に特徴的であるパラメータを意味する。主治医は、まず、患者のために、各々の治療法を予め設定する。例えば、血液透析(HD)と、血液濾過(HF)と、血液透析濾過(HDF)との間で区別がなされる。更に、医師は、患者の個別的な循環安定性を考慮しつつ、治療時間tを決定する。更に、医師は、治療に関する目標値として、透析量kt/Vを設定する。一般的には、1.4の透析量kt/Vの値が、適切な治療の目標値として、認められる。女性または特に軽量の患者に関して、文献には、平均的な患者よりも高い目標値が議論される。他の患者固有の治療パラメータは、体外血液回路中の血流量である。血流量を、治療中に、医師によって、ある限度内で変化させることができるが、最終的には、調整可能な血流量は、患者のブラッドアクセスの種類および特徴に依存している。
【0007】
以下、機械固有の治療パラメータは、医師自身が、体外治療を実行するための患者固有の治療パラメータに従って自由に選択することができるパラメータを意味する。機械固有の治療パラメータは、特に、知られた血液処理装置ではある限度内で自由に調整されることができる透析液流量である。
【0008】
体外血液処理を実行するために、主治医が、例えば上記の高流量型および低流量型の透析器を含む異なったタイプの透析器またはフィルタを使用することができるので、医師は、治療の前に、特定の透析器またはフィルタを選択しなければならない。しかし、特定の透析器の選択は、同様に、治療目的を達成するために医師が調整せねばならない機械固有の治療パラメータへの影響を有する。血流量が変わらないときは、少ない透析液流量の場合でも、大きい有効面を特徴とする透析器を用いて、小さい有効面を特徴とする透析器を用いるのと同じクリアランスを達成することができる。
【0009】
主治医は、患者および機械固有の治療パラメータを、血液処理が各々の患者にとって最適に実行されるように、選択するだろう。しかし、主治医が、異なったタイプの透析器またはフィルタを使用するとき、血液処理を最適に実行することができる際の異なった治療パラメータが生じるかもしれない。
【発明の概要】
【0010】
体外血液処理装置によって体外血液処理を最適化するための方法であって、主治医に、1つのグループの透析器またはフィルタのグループからの各々の透析器またはフィルタの選択を容易化する方法を提供するという課題が、本発明の基礎になっている。更に、医師が透析器またはフィルタを容易に選択する、体外血液処理を最適化するための装置を提供することが、本発明の課題である。本発明の他の課題は、体外決席処理を最適化するための装置を有する体外血液処理装置と、体外血液処理装置を最適化するための方法を実施するためのデータ処理装置上で実行するためのコンピュータプログラム製品とを使用することである。
【0011】
上記課題の解決は、本発明によれば、請求項1,7,13および14の特徴によってなされる。本発明の好ましい実施の形態は、従属請求項の主題である。
【0012】
体外血液処理を最適化するための、本発明に係わる方法および本発明に係わる装置は、種々のタイプの透析器またはフィルタのための演算ユニットによって、各々の透析器またはフィルタを用いて治療を実行するための少なくとも1つの機械固有の治療パラメータが決定され、かつ、演算ユニットによって、決定された機械固有の治療パラメータから各々の透析器またはフィルタを用いて生じるコストが決定され、かつ、表示ユニット上に、すべてのタイプの透析器またはフィルタの決定されたコストが表示されることに基づいている。このことによって、主治医に、透析器またはフィルタのなされるべき選択のために必要な情報が提供される。次に、医師は、血液処理のコストができる限り低いように、透析器またはフィルタを選択することができる。
【0013】
体外血液処理を最適化するための本発明に係わる装置は、体外血液処理装置のほかに作動される別個のモジュールを形成することができる。最適化のための本発明に係わる装置は、患者および機械に固有の治療パラメータを入力するための入力ユニットと、演算ユニットと、体外血液処理のために生じるコストを表示するための表示ユニットとを具備する。しかしまた、本発明に係わる装置が体外血液処理装置の構成要素であることも可能である。本発明に係わる装置が体外血液処理装置の構成部分であるときは、本発明に係わる装置は、体外血液処理装置の入力ユニット、表示ユニットおよび/または演算ユニットを使用することができる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態では、異なったタイプの透析器またはフィルタに関して決定される機械固有の治療パラメータは、主治医が血液処理の実行のために調整する透析液流量である。しかし、基本的には、体外血流量とは異なる機械固有の治療パラメータを、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関して決定することもできる。
【0015】
すべてのタイプの透析器またはフィルタに関する、体外血液処理のコストを決定するために、本発明に係わる方法および本発明に係わる装置が、記憶ユニットに、異なったタイプの透析器またはフィルタに関するコストおよび消耗材料に関するコストおよび/またはエネルギコストを記憶することを提案することは好ましい。異なったコストを入力ユニット上に入力し、次に、記憶ユニットに読み込むことができることは好ましい。その目的は、コストをいつでも変更することができるためである。コストを決定する際に、消耗材料のコストおよびエネルギコスト双方を考慮することは好ましい。しかしまた、消耗材料のコストまたはエネルギコストのみを考慮することも可能である。
【0016】
本発明に係わる方法および本発明に係わる装置が、演算ユニットによって、決定された機械固有の治療パラメータに従っての体外血液処理の実行の際に消費される各々の消耗材料の量および/またはエネルギの量を計算することは好ましい。一方では消耗材料のコストおよび/またはエネルギコストからおよび他方では消耗材料および/またはエネルギの計算された量から、演算ユニットでは、体外血液処理の際に消費された消耗材料および/またはエネルギのコストが計算される。演算ユニットによって、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関して、更に、総コストを、夫々、各々の透析器またはフィルタの記憶されたコスト、および血液処理の際に消費された消耗材料および/またはエネルギの計算されたコストの合計から、計算する。
【0017】
他の好ましい実施の形態は、異なった透析器またはフィルタに関する機械固有の治療パラメータの異なった値と、各々の透析器の使用および各々の機械固有の治療パラメータの調整から生じる、体外血液処理の総コストとが、表示ユニットに表示され、それ故に、主治医が、治療の総コストを考慮して、異なった透析器またはフィルタの間の選択をすることができることを提案する。総コストが、表示ユニット上で、透析器またはフィルタ、消耗材料および消費されたエネルギから生じるコストに分類されることは好ましい。
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】体外血液処理装置の重要な構成要素および血液処理の最適化のための装置の非常に簡略化した略図を示す。
【図2】血液処理を最適化するための装置の表示ユニットを示す。表示ユニット上には、処理の総コストが最小にされている透析器またはフィルタが表示される。
【図3】血液処理を最適化するための装置の表示ユニットを示す。異なったタイプの透析器またはフィルタに関する血流量の際の血液処理のためのコストが表示される。
【図4】第1の血流量よりも大きい第2の血流量の際の血液処理に関する、血液処理のコストが、異なったタイプの透析器またはフィルタに関して表示されてなる表示ユニットを示す
【図5】他の治療パラメータの予備設定の場合の表示ユニットを示す。表示ユニット上には、血液処理のコストが最小になっている透析器またはフィルタが表示される。
【図6】図5の表示ユニットを示す。第1の血流量の際の血液処理の、異なったタイプの透析器またはフィルタに関するコストが表示される。
【図7】第1の血流量よりも大きい第2の血流量の際の血液処理の、異なったタイプの透析器またはフィルタに関するコストが表示される、図5の表示ユニットを示す。
【図8】表示ユニットを示す。治療目的は達成されない。
【図9】最適化段階後の表示ユニットを示す。該最適化段階のために、達成されていない治療目的が、目標値として挙げられる。
【図10】表示ユニットを示す。治療目的は、血流量の増加により達成される。
【図11】表示ユニットを示す。治療目的は、血流量および治療時間の増加により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、体外血液処理装置の、本発明に関連のある構成要素を、非常に簡略化した略図で示す。体外血液処理装置を、血液透析装置および/または血液濾過装置として操作させることができる。従って、以下、体外血液処理装置を、血液透析濾過装置と呼ぶ。血液透析濾過装置は、透析器またはフィルタ1を有する。透析器またはフィルタは、半透膜2によって、血液チャンバ3と、透析液チャンバ4とに区分されている。血液チャンバの入口3aは、血液ポンプ6が接続されている相手である、動脈の血液供給ライン5の、その端部に接続されている。他方、血液チャンバの出口3bは、ドリップチャンバ8が接続されている相手である、静脈の血液供給ライン7の、その端部に接続されている。動脈および静脈の血液ライン5,7の他端には、患者に接続するための、図示しない、動脈および静脈のカニューレが位置している。流体システムのこの部分は、血液透析濾過装置の体外血液回路Iである。
【0021】
血液透析濾過装置の透析液システムIIは、新鮮な透析液を提供するための装置9を有する。この装置は、透析液供給ライン10を介して、透析器1またはフィルタの透析液チャンバ4の入口4aに接続されている。透析器1またはフィルタの透析液チャンバ4の出口4bからは、透析液戻りライン11が分岐している。透析液戻りラインは出口12に通じている。透析液を運ぶためには、透析液戻りライン11に設けられている透析液ポンプ13が用いられる。
【0022】
更に、血液透析濾過装置は、置換液源14を有する。置換液源からは、置換液ポンプ16が接続されている置換液ライン15が、静脈のドリップチャンバ8に通じている。置換液ポンプ16によって、所定量の置換液を、置換液源14から、体外血液回路Iに供給することができるのは、液体が、透析器1を介して、血液回路から除去されるときである。
【0023】
血液透析濾過装置は、更に、中央制御演算ユニット17を有する。中央制御演算ユニットは、制御ライン18,19,20を介して、血液ポンプ6と、透析液ポンプ13と、置換液ポンプ16とに接続されている。中央制御演算ユニット17は、体外血液回路Iに、特定の血液流量Qbが調整され、かつ、透析液システムIIに、特定の透析液量Qdが調整されるように、ポンプ6,13および16を制御する。制御演算ユニットは、予め定められた置換液量を予め設定し、かつ、限外濾過量を調整する。限外濾過量によって、液体が、患者から除去される。体外血液処理を行なうことを意図するための個々の治療パラメータは、主治医によって、図示しない入力ユニット上で入力される。
【0024】
以下、独立ユニットを形成するか、あるいは、体外血液処理装置の構成要素であってもよい、血液処理を最適化するための本発明に係わる装置を、記述する。血液処理を最適化するための装置が、血液処理装置の構成要素であるとき、血液処理を最適化するための装置は、血液処理装置に既存する構成要素を用いることができる。例えば、血液処理を最適化するための装置は、中央制御演算ユニット17を用いることができる。
【0025】
血液処理を最適化するための装置24は、本実施の形態では、独自の演算ユニット24Aと、独自の記憶ユニット24Bと、別個の入力ユニット24Cと、別個の表示ユニットとを有する。これらのユニットは、データライン24Eを介して、互いに接続されている。中央制御演算ユニット17には、装置24が、他のデータライン23を介して接続されている。
【0026】
演算記憶ユニット24A,24Bは、データ処理プログラムが実行されてなる中央データ処理システムの一部であってもよい。入力ユニット24Cは、キーボードであり、表示ユニット24Dはディスプレー画面であってもよい。
【0027】
図2は、本発明に係わる装置のディスプレー画面24Dを示す。ディスプレー画面上には、治療パラメータが表示される。該治療パラメータは、主治医によって、入力ユニット24C上で入力され、または、演算ユニット24Aによって計算される。これらのパラメータは、ディスプレー画面上に、マスク25によって表示される。
【0028】
本実施の形態では、主治医は、まず、治療目的および治療される患者に特徴的である、患者固有の治療パラメータを予め設定する。治療目的に特徴的な治療パラメータは、ディスプレー画面上で、第1の行25Aの入力マスク25に表示される。他方、患者に特徴的なパラメータは、第2の行25Bに表示される。医師は、治療目的を、透析量Kt/V、治療時間Tおよび治療方法すなわち血液透析HD、後希釈HDFpostまたは前希釈HDPpreがなされる血液透析濾過HDFという治療パラメータに従って、予め設定する。患者のために、医師は、特定の血流量Qb、特定の尿素分布容積Vならびに種々の他の実験室データを予め設定する。該実験室データは、例えば、ヘマトクリットHKTを含むことができる。透析量Kt/Vに関して、目標値からの許容される偏差を予め設定することができる。
【0029】
本実施の形態では、透析量Kt/Vに対しては、1.4が、治療時間Tに対しては、240minが、治療法に対しては、血液透析HDが、血流量Qbに対しては、290ml/minが、尿素分布容積Vに対しては35lが予め設定される。更に、透析量Kt/Vに関する目標値からの許容偏差として、2%が予め設定される。
【0030】
更に、医師が、高流量型透析器またはフィルタを用いるか、あるいは低流量型透析器またはフィルタを用いるほうが好ましいか否かを、予め設定することができる。更に、医師は、血液処理装置の型を予め設定することができる。このことは、マスク25のカラム25Cに設定される。ここでは、医師は、高流量型透析器またはフィルタを予め設定し、かつ、5008型の透析機械を選択した。このことを、個々の領域の色つきの背景によって表示することができる。医師を励まして血流量の増加を熟考させるために、第1の数値よりも大きい、血流量に関する他の数値を、入力することができる。次に、後の計算は、低いほうのおよび高いほうの血流量のためになされる。ここでは、医師は、高い血流量Qbに対して、320ml/minを入力した。2つの血流は、カラム25Dに表示される。
【0031】
透析液流量の増加が、予め定められた上限値を越えて、クリアランスKの大幅な増加を実際にもたらさないので、透析液流量に関して、上限値を予め設定することができる。小さい分布容積Vを有する患者の場合には、透析量Kt/Vに関する目標値が、血流量よりも少ない透析液流量をもって、既に達成されることが、生じることがある。このような場合には、血流量に等しい透析液流量を予め設定することができる。実際また、透析液流量に関する予め定められた下限値を予め設定することができる。しかし、透析液流量または血流量に関する上限値および下限値の予備設定は、1つの選択にすぎない。
【0032】
血液処理を最適化するための、本発明に係わる装置24は、今や、290および320ml/min夫々の、予め定められた低い血流量および高い血流量に関する、特定の透析液流量Qdの場合に透析のコストが最小限であってなる透析器またはフィルタのタイプを決定する。本実施の形態で、血液処理を最適化するための装置が、透析液流量が500ml/minである場合、FX100型のフィルタを提案するのは、血流量Qbが290ml/minであるときである。血流量Qbが320ml/minであるとき、装置は、同様に、X100型のフィルタを提案する。しかしながら、透析液流量Qdは400ml/minである。以下に、データの評価が如何になされるかを詳述する。
【0033】
記憶ユニット24Bには、特定の血流量範囲Qb1ないしQb2が、夫々、1グループの透析器またはフィルタからなる種々の透析器またはフィルタに割り当てられている。グループの透析器またはフィルタは、高流量型フィルタおよび低流量型フィルタを含む2つの種類のフィルタを有する。高流量型フィルタは、例えば、型シリーズFX50,FX60,FX80およびFX100を含む。
【0034】
まず、医師によって選択された、透析器またはフィルタ、例えば高流量型フィルタの種類と、所望の血流量Qbと基づいて、所望の血流量Qbに基本的に適切なフィルタが、各々の型シリーズから選択される。
【0035】
例1:選択されたFX高流量、Qb=220ml/min:FX50ないしFX100は可能である。
【0036】
例2;選択されたFX高流量、Qb=370ml/min:FX60ないしFX100は可能である。
【0037】
演算ユニット24Aは、透析量KT/Vの予め定められた値、例えば1.40と、入力された治療時間Tと、入力された尿素分布容量Vとから、まず、クリアランスKに関する目標値を計算する。クリアランスKに関する目標値を計算する際に、透析量KT/Vの目標値が予め設定されているときは、予め定められた許容差、例えば2%が考慮される。それ故に、治療のコストの後の計算の際に、透析量KT/Vの値を、予め定められた許容差内で受け入れることができる。このことによって、個々の場合に、コストが節約される。しかし、このことは、治療の成功への証明可能な作用を有するものではない。
【0038】
クリアランスKに関する目標値が決定されているときは、演算ユニット24Aは、予め定められた治療法、例えばHD,HDFpost,HDPpre、予め定められた血流量Qb、ならびに例えばヘマトクリットHKTを含む他のパラメータを用いて、予め決定されたすべての透析器またはフィルタに関して、治療のためにその都度必要な透析液流量Qdを計算する。この場合、演算ユニットは、予め決定されたクリアランスKおよび予め定められた血流量Qbから、所望のクリアランスKを達成するために必要である透析液流量Qdを計算する。必要な透析液流量Qdの計算は、以下の式に基づいて、係数k0Aが予め定められてなるHD治療のためになされる。
【数1】
【0039】
他の治療法、例えばHDFに関しては、Kを計算するために、他の式が用いられることができる。係数k0Aは、各々の透析器またはフィルタに特徴的な大きさである。この大きさは、実質的に、透析器またはフィルタの半透膜の活性表面および活性表面の拡散抵抗に依存している。
【0040】
記憶ユニット24Bには、すべての透析器またはフィルタに対して、各々の係数k0Aが記憶されている。該係数は、透析液流量Qdを計算するための演算ユニット24Aによって、記憶装置から読み出される。透析液流量を決定するための上記方法は、WO2007/140993 A1に詳記されている。該公報の開示内容を明示的に引き合いに出す。しかし、本発明にとっては、どの方法で透析液流量が決定されるかは、結局のところ重要でない。
【0041】
記憶ユニット24Bには、更に、種々の消耗材料のコストおよびエネルギコストが記憶されている。すべての必要なコスト(売買価格)を、適切なメニューによって入力することができる。本実施の形態では、消耗材料のコストは、透過物、酸および重炭酸塩のコストを含み、エネルギコストは、電流のコストを含む。記憶ユニット24Bには、個々の透析器またはフィルタのコスト(売買価格)も記憶されている。
【0042】
血液処理のために提案されるすべての透析器またはフィルタに関して、演算ユニット24Bが、各々の透析液流量Qdおよび予め定められた血流量Qbを用いて、各々の消耗材料(透過物、酸、重炭酸塩)の量と、血液処理のために使用されるエネルギ(電流)の量とを計算する。
【0043】
消耗材料の計算された量と、消耗材料の記憶されたコストと、消費されたエネルギと、エネルギコストとから、記憶ユニット24Bは、今や、すべての消耗材料のコストおよび処理によって消費されたエネルギのコストを計算する。最後に、演算ユニットは、処理の際に消費された消耗材料の予め決定されたコストと、消費されたエネルギのコストと、透析器またはフィルタのコストとの合計から、すべての型の透析器またはフィルタの総コストを計算する。
【0044】
透析器またはフィルタの最終的な選択は、次に、総コストが最小であるという前提の下でなされる。
【0045】
医師は、「コスト」というメニューアイテムを介して、提案された透析器またはフィルタの個々のコストが表示されてなるサブメニューを呼び出すことができる。図3は、本実施の形態のためのサブメニューを示している。この実施の形態では、290ml/min(Qb1)の血流量Qbが、予め設定されている(図2)。
【0046】
コストの表示の際に、常に、意図された血流量に適切であるすべての透析器またはフィルタが、カラム毎に、表示される。これは、290ml/minの血流量が予め設定されていてなる本実施の形態では、高流量型透析器FX50ないしFX100である。この場合、透析量Kt/Vの目標値を達成することができず、比較的高い透析液流量または比較的低い透析液流量によってのみ透析量の目標値を達成することができるために用いる透析器またはフィルタは、メニューアイテムの色つきの背景を特徴とする。本実施の形態では、フィルタFX50には、赤の色が付される。何故ならば、1.40の透析量の目標値を、このフィルタでは、達成することができないからである。フィルタFX60には、黄色い色が付されている。何故ならば、このフィルタによって、血流量の1.5倍より多い比較的高い透析液流量によってのみ、透析量の目標値を達成することができるからである。これに対し、フィルタFX80およびFX100には、緑の色が付されている。何故ならば、これらのフィルタによって、比較的低い透析液流量の際に、透析量の目標値を達成することができるからである。本実施の形態では、フィルタの価格および他のコストからなるコストの合計が、透過物、酸、重炭酸塩および電流のコストを含み、フィルタFX100の場合には最小であることが明らかである。従って、計算ユニット24Aは、異なった総コストの比較後に、透析器FX100を選択する。該透析器では、総コストは最小である。結果は、メインメニューに表示されている(図2:Qb290,フィルタFX100Qd500)。
【0047】
図4は、320ml/min(Qb2)の、代替の、Qb1より高い血流量のためのサブメニューを示す。血流量の増加の場合には、フィルタFX50が最早適切でないことが明らかである。従って、このフィルタは、マスクに最早表示されない。血流量の増加の際には、透析量Kt/Vに関する目標値を、400ml/minの透析液流量によって、達成することができるのは、フィルタFX100を使用する場合である。このフィルタの場合には、処理の総コストも最も低い。従って、演算ユニットは、治療のために、320ml/minの血流量の増加の際にも、再度、フィルタFX100を提案する(図2:Qb320,フィルタFX100Qd400)。今や、血流量の増加または減少の際におよび高いまたは低い透析液流量の際に、自らがフィルタFX100を用いて治療を行なうか否かが、医師に委ねられる。従って、実施の形態は、本発明に係わる装置が、血流量のまたは治療時間の変更が如何なる作用を有するかを、医師に特に明らかにすることを示す。
【0048】
図5ないし7は、メインメニューおよび2つのサブメニューを示す。メインメニューおよびサブメニューは、HD処理でなく、後希釈(HDFpost)がなされる際のHDF処理(血液透析濾過)が、予め設定されるとき、血液処理を最適化するための本発明に係わる装置の表示ユニット24D上に表示される。そうでないときは、治療パラメータは、治療を第1の実施の形態で行なうために用いるパラメータと等しい。
【0049】
メインメニュー(図5)で、290ml/minの血流量Qbに対して、300ml/minの透析液流量が設定されている際のフィルタFX100が提案され、320ml/minの血流量に対して、同様に300ml/minの透析液流量が設定されている際のフィルタFX80が、提案される。その目的は、透析量の目標値を放棄することなく、処理のコストをできる限り低く保つためである。
【0050】
290ml/minの血流量Qbのためのサブメニュー(図6)は、治療が、原則的に、フィルタFX60ないしFX100によって可能であることを示す。これらのフィルタに関しては、演算ユニットは、600と300ml/minの間にある透析液流量を計算する。すべてのフィルタによって、1.40の透析量の目標値を達成することができる。しかしながら、治療の総コストは、フィルタFX100の場合には最小である。実際また、透析液流量はフィルタFX100によって最小である。320ml/minへの血流量の増加は、治療の総コストが、フィルタFX80によって、最小であること(図7)をもたらす。FX80によって、透析液流量も、最小である。この透析液流量は、血流量がより低い場合のフィルタFX100による透析液流量に対応する。
【0051】
図8ないし11を参照して、透析量KT/Vの予め定められた許容差内で治療目標を達成することができない場合を記載する。
【0052】
図8は、透析量KT/Vの所定値が表示されてなるディスプレー画面24Dを示す。医師は、1.4の透析量KT/Vを予め設定した。例えば、低い血流量Qbまたは大きい分布容積Vの場合に、治療目標が達成されないときは、医師は、指示を受け取る。本実施の形態では、1.4の予め定められた値より下にあり、すなわち、2%の予め定められた許容差の外にある、1.24の透析量KT/Vの達成可能な数値は、赤い背景に表示される。このことによって、治療目標が達成されないことが知らされる。
【0053】
この場合には、目標値にできる限り近づくように、常に、最大の透析器および最高の透析液流量Qdを選択せねばならないだろう。しかし、これによっては、材料の有効利用は与えられていない。
【0054】
演算ユニット24Aは,この場合、自動的に他の最適化段階を行なう。該最適化段階では、透析量KT/Vの、第1の最適化段階で達成された値、例えば1.24を、新たな目標値として予め設定する。新たな目標値に対しても、演算ユニット24Aは、再度、予め定められた許容誤差、例えば2%を考慮する。
【0055】
図9は、ディスプレー画面24Dを示す。このディスプレー画面上では、第2の最適化段階における計算の結果が、1.24の透析量KT/Vの目標値をもって表示されている。再度予め定められた許容誤差の外にあるが、1.24の予め定められた目標値よりもわずかに少ない、1.22の透析量KT/Vが生じることが明らかである。透析KT/Vの計算された値が、再度、許容範囲外にあるので、その値は、再度、赤い背景上に表示される。演算ユニット24Aは、ディスプレー画面24Dに表示される予め定められたパラメータにおいて生じるコストを計算する。コストは、本実施の形態では、21.30ユーロになる。
【0056】
図10および11は、1.4への透析量KT/Vの増加を、血流量Qbおよび/または治療時間Tの増加によって達成することができることを示す。例えば、許容範囲内にある、1.39の透析量KT/Vを、血流量Qbが、240minの同じ治療時間Tで、300から350ml/minに増加されることによって達成することができる(図10)。しかしまた、1.39の透析量KT/Vを、320ml/minの血流量Qbにより255の治療時間Tで達成することができる(図11)。演算ユニット24Aは、異なった予備設定のために、どのパラメータで治療を行なうべきかを医師が決定することができるように、21.42ユーロ(図10)および22.22ユーロ(図11)になるコストを計算する。
【符号の説明】
【0057】
1 透析器
2 半透膜
3 第1のチャンバ
4 第2のチャンバ
I 体外血液回路
II 透析液システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外血液処理装置によって体外血液処理を最適化するための方法であって、該体外血液処理装置は、半透膜によって第1のチャンバおよび第2のチャンバに区分された透析器またはフィルムを有し、前記透析器またはフィルムの前記第1のチャンバは、体外血液回路の部分であり、前記第2のチャンバは、透析液システムの部分であり、
以下の工程段階、すなわち、
治療目的および/または治療される患者に特徴的である1つまたは複数の患者固有の治療パラメータを入力ユニット上で入力すること、
異なったタイプの透析器またはフィルタのグループから、前記複数の透析器またはフィルタのうちの各々を用いて、治療を実行するための前記1つのまたは複数の患者固有の治療パラメータから、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関して、演算ユニットによって機械固有の治療パラメータを決定すること、
前記各々の透析器またはフィルタを用いて、前記決定された機械固有の治療パラメータから生じる、すべてのタイプの透析器に関する前記体外血液処理のコストを、前記演算装置によって決定すること、
前記各々の透析器またはフィルタを用いて前記機械固有の治療パラメータから生じる、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関するコストを、表示ユニット上に表示すること、を有する方法。
【請求項2】
前記体外血液処理のコストを決定する段階が、以下の段階、すなわち、
前記異なったタイプの透析器またはフィルタのコストを記憶ユニットに記憶すること、
消耗材料のコストおよび/またはエネルギコストを前記記憶ユニットに記憶すること、
前記体外血液処理の実行の際に前記決定された機械固有の治療パラメータによって消費される各々の消耗材料の量および/またはエネルギの量を、前記演算ユニットの中で計算すること、
前記体外血液処理の際に消費される前記消耗材料および/またはエネルギのコストを、一方では、前記消耗材料のコストおよび/またはエネルギのコストから、および他方では消耗材料および/またはエネルギの計算された量から計算すること、であり、
前記演算ユニットによって、すべてのタイプの透析器またはフィルタの総コストを、その都度、前記各々の透析器またはフィルタの前記記憶されるコストと、前記体外血液処理の際に消費された消耗材料および/またはエネルギの計算されたコストとの合計から計算すること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異なった透析器またはフィルタに関する前記機械固有の治療パラメータの異なった数量と、前記各々の透析器またはフィルタの使用および前記各々の機械固有の治療パラメータの調整から生じる、前記体外血液処理の総コストとを、前記表示ユニットに表示することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
機械固有の治療パラメータが、透析液が前記透析器またはフィルタの前記第2のチャンバを通って流れる際の透析液流量であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
患者固有のパラメータが、複数のパラメータのグループからの1つのパラメータであり、該グループは、血液分布容積V、前記体外血液処理の期間T、透析量、クリアランスKまたは血流量Qbを、前記体外血液回路Iに有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記演算ユニットによって、前記治療のために生じるコストが最小であってなる透析器またはフィルタを選択すること、および、前記表示ユニット上に、この透析器またはフィルタを表示することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
体外血液処理装置によって体外血液処理を最適化するための装置であって、該体外血液処理装置は、半透膜によって第1のチャンバおよび第2のチャンバに区分された透析器またはフィルムを有し、前記透析器またはフィルムの前記第1のチャンバは、体外血液回路の部分であり、前記第2のチャンバは、透析液システムの部分であり、
体外血液処理を最適化するための装置(24)は、
治療目的および/または治療される患者に特徴的である1つまたは複数の患者固有の治療パラメータを入力するための入力ユニット(24C)と、
機械固有の治療パラメータが、異なったタイプの透析器またはフィルタのグループからの複数の透析器またはフィルタの各々を用いて治療を実行するための前記1つのまたは複数の患者固有の治療パラメータから、すべてのタイプの透析器またフィルタに関して決定可能であるように、および、
前記各々の透析器またはフィルタを用いて前記機械固有の前記治療パラメータから生じる、前記体外血液処理のコストが、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関して決定可能であるように、
かように、デザインされている演算ユニット(24A)と、
前記各々の透析器またはフィルタを用いて前記機械固有の前記治療パラメータから生じる、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関するコストを、表示するための表示ユニット(24D)と、を有する。
【請求項8】
前記装置(24)は、前記異なったタイプの透析器またはフィルタのコスト、消耗材料のコストおよび/またはエネルギコストを記憶するための記憶ユニット(24B)を有し、前記演算ユニット(24A)は、
前記機械固有の治療パラメータの特定の数値に従っての前記体外血液処理の実行の際に消費される前記各々の消耗材料の量および/またはエネルギの量が計算されるように、
前記体外血液処理の際に消費された消耗材料および/またはエネルギのコストが、一方では前記消耗材料のコストおよび/またはエネルギコストから、他方では消耗材料および/またはエネルギの計算された量から計算されるように、および、
すべてのタイプの透析器またはフィルタの総コストが、夫々、前記各々の透析器またはフィルタの記憶されたコストと、前記体外血液処理の際に消費された消耗材料および/またはエネルギの計算されたコストとの合計から、計算されるように、
デザインされていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記演算ユニット(24A)は、異なった領域を有し、該フィールドには、前記異なった透析器またはフィルタのための前記機械固有の治療パラメータの異なった数値と、前記各々の透析器またはフィルタの使用および前記各々の機械固有の治療パラメータの調整から生じる、前記体外血液処理の総コストとが表示されることを特徴とする請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
機械固有の治療パラメータは、透析液が前記透析器またはフィルタの前記第2のチャンバを通って流れる際の透析液流量であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記演算ユニット(24A)は、治療のために生じるコストが最小であってなる透析器またはフィルタが選択されるように、デザインされていること、および、前記表示ユニット(24D)は、該透析器またはフィルタが表示されるように、デザインされていることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
患者固有のパラメータが、複数のパラメータのグループからの1つのパラメータであって、該グループは、前記血液分布容積Vと、前記体外血液処理の期間Tと、前記透析量と、前記クリアランスKまたは血流量Qbとを前記体外血液回路Iに有することを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
半透膜(2)によって第1のチャンバ(3)および第2のチャンバ(4)に区分された透析器(1)またはフィルタを有する体外血液処理装置であって、前記透析器(1)またはフィルタの前記第1のチャンバ(3)は、体外血液回路(I)の部分であり、前記第2のチャンバ(4)は、透析液システム(II)の部分であってなる体外血液処理装置において、
該体外血液処理装置は、請求項7ないし12のいずれか1項に記載の体外血液処理を最適化するための装置を有することを特徴とする体外血液処理装置。
【請求項14】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の体外血液処理装置を最適化するための方法を実施するためのデータ処理装置上で実行するためのコンピュータプログラム製品。
【請求項1】
体外血液処理装置によって体外血液処理を最適化するための方法であって、該体外血液処理装置は、半透膜によって第1のチャンバおよび第2のチャンバに区分された透析器またはフィルムを有し、前記透析器またはフィルムの前記第1のチャンバは、体外血液回路の部分であり、前記第2のチャンバは、透析液システムの部分であり、
以下の工程段階、すなわち、
治療目的および/または治療される患者に特徴的である1つまたは複数の患者固有の治療パラメータを入力ユニット上で入力すること、
異なったタイプの透析器またはフィルタのグループから、前記複数の透析器またはフィルタのうちの各々を用いて、治療を実行するための前記1つのまたは複数の患者固有の治療パラメータから、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関して、演算ユニットによって機械固有の治療パラメータを決定すること、
前記各々の透析器またはフィルタを用いて、前記決定された機械固有の治療パラメータから生じる、すべてのタイプの透析器に関する前記体外血液処理のコストを、前記演算装置によって決定すること、
前記各々の透析器またはフィルタを用いて前記機械固有の治療パラメータから生じる、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関するコストを、表示ユニット上に表示すること、を有する方法。
【請求項2】
前記体外血液処理のコストを決定する段階が、以下の段階、すなわち、
前記異なったタイプの透析器またはフィルタのコストを記憶ユニットに記憶すること、
消耗材料のコストおよび/またはエネルギコストを前記記憶ユニットに記憶すること、
前記体外血液処理の実行の際に前記決定された機械固有の治療パラメータによって消費される各々の消耗材料の量および/またはエネルギの量を、前記演算ユニットの中で計算すること、
前記体外血液処理の際に消費される前記消耗材料および/またはエネルギのコストを、一方では、前記消耗材料のコストおよび/またはエネルギのコストから、および他方では消耗材料および/またはエネルギの計算された量から計算すること、であり、
前記演算ユニットによって、すべてのタイプの透析器またはフィルタの総コストを、その都度、前記各々の透析器またはフィルタの前記記憶されるコストと、前記体外血液処理の際に消費された消耗材料および/またはエネルギの計算されたコストとの合計から計算すること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異なった透析器またはフィルタに関する前記機械固有の治療パラメータの異なった数量と、前記各々の透析器またはフィルタの使用および前記各々の機械固有の治療パラメータの調整から生じる、前記体外血液処理の総コストとを、前記表示ユニットに表示することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
機械固有の治療パラメータが、透析液が前記透析器またはフィルタの前記第2のチャンバを通って流れる際の透析液流量であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
患者固有のパラメータが、複数のパラメータのグループからの1つのパラメータであり、該グループは、血液分布容積V、前記体外血液処理の期間T、透析量、クリアランスKまたは血流量Qbを、前記体外血液回路Iに有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記演算ユニットによって、前記治療のために生じるコストが最小であってなる透析器またはフィルタを選択すること、および、前記表示ユニット上に、この透析器またはフィルタを表示することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
体外血液処理装置によって体外血液処理を最適化するための装置であって、該体外血液処理装置は、半透膜によって第1のチャンバおよび第2のチャンバに区分された透析器またはフィルムを有し、前記透析器またはフィルムの前記第1のチャンバは、体外血液回路の部分であり、前記第2のチャンバは、透析液システムの部分であり、
体外血液処理を最適化するための装置(24)は、
治療目的および/または治療される患者に特徴的である1つまたは複数の患者固有の治療パラメータを入力するための入力ユニット(24C)と、
機械固有の治療パラメータが、異なったタイプの透析器またはフィルタのグループからの複数の透析器またはフィルタの各々を用いて治療を実行するための前記1つのまたは複数の患者固有の治療パラメータから、すべてのタイプの透析器またフィルタに関して決定可能であるように、および、
前記各々の透析器またはフィルタを用いて前記機械固有の前記治療パラメータから生じる、前記体外血液処理のコストが、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関して決定可能であるように、
かように、デザインされている演算ユニット(24A)と、
前記各々の透析器またはフィルタを用いて前記機械固有の前記治療パラメータから生じる、すべてのタイプの透析器またはフィルタに関するコストを、表示するための表示ユニット(24D)と、を有する。
【請求項8】
前記装置(24)は、前記異なったタイプの透析器またはフィルタのコスト、消耗材料のコストおよび/またはエネルギコストを記憶するための記憶ユニット(24B)を有し、前記演算ユニット(24A)は、
前記機械固有の治療パラメータの特定の数値に従っての前記体外血液処理の実行の際に消費される前記各々の消耗材料の量および/またはエネルギの量が計算されるように、
前記体外血液処理の際に消費された消耗材料および/またはエネルギのコストが、一方では前記消耗材料のコストおよび/またはエネルギコストから、他方では消耗材料および/またはエネルギの計算された量から計算されるように、および、
すべてのタイプの透析器またはフィルタの総コストが、夫々、前記各々の透析器またはフィルタの記憶されたコストと、前記体外血液処理の際に消費された消耗材料および/またはエネルギの計算されたコストとの合計から、計算されるように、
デザインされていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記演算ユニット(24A)は、異なった領域を有し、該フィールドには、前記異なった透析器またはフィルタのための前記機械固有の治療パラメータの異なった数値と、前記各々の透析器またはフィルタの使用および前記各々の機械固有の治療パラメータの調整から生じる、前記体外血液処理の総コストとが表示されることを特徴とする請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
機械固有の治療パラメータは、透析液が前記透析器またはフィルタの前記第2のチャンバを通って流れる際の透析液流量であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記演算ユニット(24A)は、治療のために生じるコストが最小であってなる透析器またはフィルタが選択されるように、デザインされていること、および、前記表示ユニット(24D)は、該透析器またはフィルタが表示されるように、デザインされていることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
患者固有のパラメータが、複数のパラメータのグループからの1つのパラメータであって、該グループは、前記血液分布容積Vと、前記体外血液処理の期間Tと、前記透析量と、前記クリアランスKまたは血流量Qbとを前記体外血液回路Iに有することを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
半透膜(2)によって第1のチャンバ(3)および第2のチャンバ(4)に区分された透析器(1)またはフィルタを有する体外血液処理装置であって、前記透析器(1)またはフィルタの前記第1のチャンバ(3)は、体外血液回路(I)の部分であり、前記第2のチャンバ(4)は、透析液システム(II)の部分であってなる体外血液処理装置において、
該体外血液処理装置は、請求項7ないし12のいずれか1項に記載の体外血液処理を最適化するための装置を有することを特徴とする体外血液処理装置。
【請求項14】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の体外血液処理装置を最適化するための方法を実施するためのデータ処理装置上で実行するためのコンピュータプログラム製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−526569(P2012−526569A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510168(P2012−510168)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002945
【国際公開番号】WO2010/130449
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(501276371)フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (31)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002945
【国際公開番号】WO2010/130449
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(501276371)フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (31)
【Fターム(参考)】
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