体液サンプリング装置
【課題】刺激部材およびプッシャ部材を有する体液サンプリング装置を得る。
【解決手段】身体の流体を試料採取する装置は、先端にスリーブを有するハウジングを具え、ランセットの発射をトリガするため、使用者の皮膚に押しつけられるのに応動して、このスリーブは移動することができる。ランセットが切開部から除去された後、スリーブを繰り返し皮膚に押圧し、切開部に対し包囲する関係に環状の身体組織を沈下させ、切開部を通じ身体の液体を外方に搾り出す。次に、身体の流体を吸引するため、プッシャ部材を作動させて、ハウジングの前端を通じて毛細管を押し出す。ランセットは使い捨てランセットである。設置する時、又は除去する時、使い捨てランセットをランセットキャリヤの上端を通じて通す。毛細管は安全装置を非安全位置に押すように機能するから、使い捨てランセットがハウジング内に設置されるまで、この装置は発射準備状態になり得ない。
【解決手段】身体の流体を試料採取する装置は、先端にスリーブを有するハウジングを具え、ランセットの発射をトリガするため、使用者の皮膚に押しつけられるのに応動して、このスリーブは移動することができる。ランセットが切開部から除去された後、スリーブを繰り返し皮膚に押圧し、切開部に対し包囲する関係に環状の身体組織を沈下させ、切開部を通じ身体の液体を外方に搾り出す。次に、身体の流体を吸引するため、プッシャ部材を作動させて、ハウジングの前端を通じて毛細管を押し出す。ランセットは使い捨てランセットである。設置する時、又は除去する時、使い捨てランセットをランセットキャリヤの上端を通じて通す。毛細管は安全装置を非安全位置に押すように機能するから、使い捨てランセットがハウジング内に設置されるまで、この装置は発射準備状態になり得ない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
体液サンプリング装置及びその使用方法発明の分野 本発明は切開装置に関するものであり、分析、又は処理のため身体から血液、及びその他の体液の試料を採取する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、使用されている多くの医療処置には5〜50マイクロリットルの範囲の比較的少量の血液試料を必要とする。静脈血を採取するため瀉血医を使用する場合に比較し、1、又は2滴の血液を捕集し得るよう、指のような選択した位置の皮膚を切開し、即ち穿刺することによって、このような試料を得ることは患者にとって、価格的に一層有利であり、外傷も少なくて済む。血糖値の自己管理のような家庭用試験の出現により、試験を必要とする人によって任意に設定して行うことができる簡単な方法が要望されている。
【0003】
通常、使用されているランセットは一般に、剛強本体と、一端から突出する滅菌針とを有する。このランセットは皮膚を穿刺するのに使用され、生じた開口から血液試料を捕集することができる。捕集された血液は試験装置、又は捕集装置に移送される。血液は一般に指先から採取されることが多く、指先は血液の供給源として優れている。しかし、指先は神経が集中しているため、多くの患者には著しく苦痛である。耳たぶ、及び手足のような別の位置での試料採取は、敏感でない位置に接近できるため、時々実行されている。しかし、これ等の位置は優れた血液試料を提供しにくく、試験装置に血液を直接送るのを困難にしている。
【0004】
(指の先端のような)限定された表面区域において繰り返し切開を行うと硬結皮膚が形成される。このため、血液を採取するのが一層困難になり、苦痛も増大する。
【0005】
皮膚を穿刺される不安、及びそれに関連する苦痛を和らげるため、多くのばね負荷装置が開発されている。次の2つの特許はこのような装置の代表的なもので、家庭用診断試験用製品と共に使用するよう1980年代に開発された。
【0006】
Cornell 等の米国特許第4503856 号はばね負荷ランセット注射器を記載している。再使用可能な装置を使い捨てランセットに連結している。ランセットホルダを後退位置に掛止めさせている。使用者が釈放部に触れると、ばねはランセットを高速で皮膚に挿通し、次に後退させる。穿刺に関連する苦痛を減らすためには、この速度が重要である。
【0007】
Levin 等の米国特許第4517978 号は血液サンプリング器具を記載している。この装置もばねで負荷されていて、標準の使い捨てランセットを使用している。この装置の設計は指の先端に容易に正確な位置決めができ、そのため衝撃位置を容易に決定することができる。ランセットを皮膚に挿通した後、反発復帰ばねによってランセットを装置内の安全位置に後退させる。
【0008】
制度上の背景において、患者から試料を捕集し、次に制御された状態でこの試料を試験装置に導入するのが望ましいことが多い。若干の血糖値管理システムは例えば、試験機器に接触している試験装置に血液試料を加えることが必要である。そのような状態で、患者の指を試験装置に直接もたらすことは、前の患者の血液によって汚染する若干の危険がある。このようなシステムでは、特に病院の環境下で、患者の皮膚を切開し、毛細管現象によりマイクロピペット内に試料を捕集し、次にこの試料をピペットから試験装置に送る。
【0009】
Haynesの米国特許第4920977 号はランセット、及びマイクロ捕集管を有する血液捕集装置を記載している。この装置は単一装置内にランセット、及び捕集容器を組み込んでいる。切開と捕集とは2つの別個の作用であるが、この装置は、使用前の試料捕集が望ましい状態であるのに、通常の単一使い捨てユニットである。これに類似する装置がSarrine の米国特許第4360016 号、及びO'Brien の米国特許第4924879号に記載されている。
【0010】
Jordan等の米国特許第4850973 号、及び第4858607 号は、形態に応じて、注射器形式の注入器として、及び使い捨て密実針ランセットを使用する切開装置として、選択的に使用できるコンビネーション装置を開示している。
【0011】
Lange 等の米国特許第5318584 号は診断の目的で血液を採取するための血液ランセット装置を記載している。この発明は切開の苦痛を減らすため回転摺動伝動システムを使用している。使用者によって、穿刺深さを容易に精密に調整することができる。
【0012】
鈴木等の米国特許第5368047 号、Dombrowskiの米国特許第4654513 号、及び石橋等の米国特許第5320607 号はそれぞれ吸引形血液サンプリング装置を記載している。これ等の装置は、皮膚に挿通した後、ランセット保持機構が後退する時、切開位置と、装置の端部との間で吸引を発生させる。十分な試料が穿刺位置から吸引されるまで、即ち使用者が装置に試料を引き込むまで、装置の端部の周りの可撓性ガスケットが穿剌位置の周りの端部をシールするのを助ける。
【0013】
Garcia等の米国特許第4637403 号、及びHaber 等の米国特許第5217480 号は損傷位置の上に負圧を発生させるため、ダイアフラムを使用する切開装置と血液捕集装置との組合せを開示している。
【0014】
Erickson等の米国特許第5582184 号は身体の流体を捕集し測定する手段を記載している。このシステムはスペーサ部材内に配置された同軸注射毛細管を使用している。このスペーサ部材は注射貫入深さを制限し、注射管が皮膚の中にある間、注射管の周りの身体組織を圧迫し、介在流体の切開部までの流れを向上させるようにしている。しかし、切開部が注射管を閉じる傾向があるため、達成される筈の利点を制約してしまう。
【0015】
単一の使用の試験のため、即ち家庭でのコレステロール測定のため、及び多数の患者に使用することによる汚染を無くするための制度上の用途のため、単一使用装置も開発されている。Crossman等の米国特許第4869249 号、及びSwierczekの米国特許第5402798 号も使い捨ての単一使用切開装置を開示している。
【0016】
米国特許第5421816 号、第5445611 号、及び5458140 号は身体に貫入する試料採取に代わり、完全な皮膚(切開していない皮膚)から直接、介在流体を採取するため、ポンプのように作用する超音波の使用を開示している。しかし、この方法で得られる流体の量は非常に制約される。
【0017】
上述の特許に開示された発明は本明細書中に援用する。
これ等の既に開発された多くの装置でも、切開に関連する苦痛は、多くの患者に対して、依然として著しい苦痛である。血液の試料採取は必要であるのに、関連する苦痛の恐怖は診断される何百万という糖尿病患者にとって主要な障害であり、糖尿病患者は試験に伴う苦痛のため、血糖値を十分に管理することができない。更に、他の診断のために血液試料を得るための切開を行うことは通常のことであり、これ等の用途に適合し、これ等の技術を一層受け入れられるものにするため、苦痛が少なく、貫入が最小な装置が要望される。
【0018】
従って、本発明の目的は実際上、苦痛が無く、貫入が最小で、身体の流体の試料を得る装置と、方法とを提供するにある。
【0019】
更に、既知の切開装置は、使用者がその皮膚の上に装置を設置し、ランセット駆動機構をトリガするための手動ボタンを有する。使用者はランセットをトリガする正確な瞬間を知っているから、トリガの瞬間に、使用者が装置を急に引き、又は急に上昇させる傾向があり、皮膚への貫入が調和せず、又は貫入しない恐れがある。従って、本発明の他の目的は使用者の側に、このような傾向を無くした切開装置を得るにある。
【0020】
更に、使い捨てランセットを支持する既知のキャリヤは使い捨て部材の下端からのみ挿入し、除去し得る形態になっている。そのため、使い捨て部材を上方に押し、又は下方に引っ張るため、使用者は使い捨て部材の下部を握る必要がある。針は使い捨て部材の下端から突出しているから、使用者の手は針の直ぐ近くにあり、従って潜在的な負傷、及び/又は汚染に直面している。また、使い捨て部材は、通常、摩擦嵌着によってキャリヤ内に保持される。通常の製造公差では、使い捨て部材を十分緊密に嵌着することは困難である。そのため使い捨て部材はぐらつく傾向があり、このため、切開工程中、受ける苦痛は増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って本発明の他の目的は上述の欠点を除去したランセットキャリヤを得るにある。
本発明の付加的目的は使い捨て部材を挿入し終わるまでは、ランセット駆動機構が発射準備状態にならないようにして、切開装置を安全にするにある。
【0022】
本発明の他の目的は、試料位置、及び利用する貫入深さに従って、血液、又は介在流体の試料を得る方法を提供する。現在、介在流体(ISF)を利用する市販の装置は無く、全血液に対して比較したISF内の血糖値のような分析値の相互関係を確立するための活発な努力が払われている。もしもISFが容易に得られ、相互関係が確立すれば、赤血球細胞、即ち必要なヘマトクリット調整の干渉が無いため、ISFは試料として好適である。
本発明の他の目的は少量の調整可能な試料、即ち適切な値として、一方の試験装置では3マイクロリットル、他方の試験装置では8マイクロリットルのように、試料を採取することができる方法を得るにある。
【0023】
本発明の他の目的は身体の試料位置に関係なく、採取した試料を捕集し、試験装置に容易に提供し得る方法を得るにある。この方法は多くの患者を単一の試験機器に接触させず、使い捨ての患者接触部を有するサンプリング装置のみを試験機器に接触させるから、感染防止の制御の助けになる。代案として、試験装置の使い捨て部を物理的にサンプリング装置に結合し、試料採取中、試料を直接、試験装置にもたらし得るようにしてもよい。もしよければ、試験装置を試験機器内で読み取ってもよく、又は試験システムをサンプリング装置内に統合することができ、患者のために表示された直接の結果を試験装置が提供することができる。
【0024】
本発明の更に他の目的は再使用できるサンプリング装置、及び使い捨てランセットと、試料捕集装置とを具え、最小の貫入深さで試料採取する装置を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明の一態様は血液、又は介在流体を採取するため皮膚を切開する切開装置である。この装置はハウジングを具える。ハウジングに対し相対的に縦方向に移動するようハウジングの前端に隣接してランセットキャリヤを取り付ける。皮膚を切開するよう、ランセットキャリヤを前方に押圧するため、ばねで押圧される発射準備することができるハンマ機構を設ける。このハンマ機構を発射準備位置に釈放可能に保持するため、掛止めを設ける。掛止め釈放機構は、皮膚に押圧されるのに応動して、後方に移動せしめられる皮膚接触部と、この皮膚接触部の後方への移動に応動して掛金を釈放する掛金釈放部とを具える。
【0026】
本発明の他の態様では、安全機構を設けるが、この安全機構はハンマ機構が発射準備状態になるのを防止する安全位置に平素、配置され、また、ハンマ機構を発射準備状態にできるようにするため、ハウジング内にランセットキャリヤを設置したのに応動して、安全機構を非安全位置に移動可能にする。
【0027】
本発明の他の態様では、使い捨てランセットは皮膚切開部材と、毛細管とを収容する本体を具える。皮膚を切開した後、この切開した皮膚から流体を吸引するため、上記本体に対し相対的に毛細管を前方に押圧するためのプッシャ部材を設ける。
【0028】
本発明の更に他の態様は使い捨てランセットとそのキャリヤとの組合わせに関する。このキャリヤはハウジング内に取付けられるようにしたスリーブを具える。このスリーブはスリーブの上端から下端まで延びる貫通路を形成する内面を有する。使い捨てランセットを上記貫通路に着座させる。上端だけを通じて、使い捨てランセットを挿入、及び除去し得るように、この内面の形態を定める。この内面に、少なくとも1個の上方に向く肩部を設け、この肩部に使い捨てランセットを支持する。また、本発明はランセットキャリヤ自身に関するものである。
【0029】
本発明の他の態様は身体の流体を試料採取するサンプリング装置に関するものである。このサンプリング装置は縦軸線を画成するハウジングと、皮膚の表面に通して切開部を形成する切開部形成手段とを具える。ハウジングの前端に刺激部材を取り付け、切開部の開口端に身体の流体の滴を形成するよう切開部に向け、切開部を通じて外方に身体の流体を押圧するよう皮膚に対して包囲する関係に、環状の身体組織を沈下させるため、刺激部材を皮膚に沈下させ得るようにする。
【0030】
身体の流体を吸引するよう、キャリヤに対し相対的に毛細管を前方に動かすためのプッシャ部材を設ける。
【0031】
本発明方法の態様は使用者の身体の皮膚の表面にハウジングの前端を衝合させる工程と、皮膚の表面に通して切開部を形成する工程とを含む。ハウジングを皮膚の表面に押圧し、切開部に対し包囲する関係に環状の身体組織を繰り返し沈下させ、切開部に向け、切開部を通じて外方に身体の流体を押圧し、切開部の開口端に身体の流体の滴を形成する。キャリヤに対し相対的に毛細管を前方に突出させ、毛細管の先端を身体の流体の滴の中に挿入する。
【0032】
同一部分を同一符号にて示す添付図面に関連して説明する好適な実施例の次の詳細な記載から、本発明の目的、及び利点は明らかになるであろう。
【実施例1】
【0033】
図1に示す最少貫入サンプリング装置10は互いに取り付けられた2個の半部シェル12A、12B(図9、及び図10参照)から形成された管状ハウジング12を有する。ハウジング12は縦軸線Aと、下部開口端14とを画成しており、この下部開口端14は取り外し得るランセットキャリヤユニット16を収容することができる。このキャリヤユニットは使い捨てのランセット部材150(以後「使い捨て部材」と称する)を支持する役割を果たし、次に説明するように、皮膚穿刺位置を刺激する役割を果たす。
【0034】
また、皮膚への挿通方向に下方に使い捨て部材を移動させるためのハンマ18と、発射準備位置(即ち下方に押圧される位置)までハンマを上昇させるための手動ハンドル20と、皮膚の表面にこの装置を手動で押圧するのに応動してハンマを自動的に釈放するためのインタポーザ22と、血液収容毛細管を下方に押圧するための手動プッシャ24と、上述の部片を適切に設置し、移動させるための複数個のばねとをハウジング12(図3A参照)内に取り付ける。
【0035】
図3、及び図12に示すインタポーザ22はハウジング12内で縦方向に移動可能であり、下部円筒部30と、上部円筒部32とを有し、下部円筒部の直径は上部円筒部の直径より小さく、そのため上方に向く肩部34を形成している。キャリヤユニット16をハウジング12内に上方に摺動させ得るようにするため、1対の直径的に対向するスリット36を下部円筒部30内に形成する。
【0036】
上部円筒部32に溝孔40を形成し、ハウジングの半部シェル12Bの内面に一体に形成された3個の縦方向に平行な案内リブ42(図10参照)を溝孔40から突出させる。中心のリブ42は他の2個のリブ42より一層短く、その結果、空間を形成しており、以下に説明するように、この空間内に毛細管の端部を嵌着することができる。他の溝孔44を溝孔40から90度離間させ、溝孔44の壁にトリガ突起46を形成し、このトリガ突起46に傾斜した上部カム面47を設け、次に説明するように、この上部カム面47によってハンマ18を発射準備位置から釈放する作用を行わせる。
【0037】
プッシャ24に形成された肩部47とインタポーザ22の上端との間にコイル圧縮ばね45を配置し、インタポーザ22を下方に押圧する。
【0038】
図5に示す手動プッシャ24は縦方向に移動でき、このプッシャの半円筒部50にその上端から半径方向外方に突出するノブ52を設ける。ハウジング12に形成された縦スロット53に沿ってノブ52が摺動できるようノブ52の寸法を定める。半円筒部50の内面54の下端から半径方向内方に突出するロックリブ56を設け、更に作動リブ58を設ける。インタポーザ22に形成された溝孔40を通じて、ロックリブ56と、作動リブ58とを半径方向内方に突出させる。
【0039】
図4、及び図11に示すように、ハウジング12の案内リブ42の間に、作動リブ58を下方に延在させる。
【0040】
図7、及び図8に示すハンマ18はハウジング12内で縦方向に移動することができ、このハンマ18は内部にハンドル20を取り付けることができるよう上部開口72を有する頂壁70を具える。ハンマ18の上部74はコイル圧縮ばね76(図3A参照)を収容する。次に説明するように、この圧縮ばねはハンマとハンドル20との間に作用する復帰ばねとして働く。ハンマ18の下部は掛止めアーム82と、ハウジング12の案内リブ42に跨がる1対の平行な縦方向の衝撃脚80とを具える。掛止めアーム82を脚80の1個から離間し、その間にロックリブ56を収容する(図3A、及び図4参照)。掛止めアーム82の下端に半径方向外方に向く指片84を設け、この指片84の頂部を傾斜カム従動面86によって画成する。次に説明するように、ハンマ18が発射準備位置(図3E参照)まで引き上げられている際、ハウジング12の内面から半径方向内方に突出する止め88を通過して、指片84が垂直に移動した時、掛止めアーム82は半径方向に可撓性である。
【0041】
コイル圧縮ばね90はハウジング12の上壁92と、ハンマ18の頂壁70との間に作用し、ハンマを下方に押圧する(図3A参照)。ばね90を包囲しているコイル圧縮ばね93は上壁92とプッシャ24の上端縁94との間に作用し、プッシャを下方に押圧する。
【0042】
キャリヤユニット16は図2、及び図6に示すアダプタ100を有する。このアダプタ100はほぼ円筒形で、刺激スリーブ102内で抜き差しできるように配置されている。アダプタ100の下端縁と、スリーブ102の内面から半径方向内方に突出する環状フランジ106との間にコイル圧縮ばね104を介挿する。アダプタ100はこのアダプタを複数個のばね指片108に分割する複数個の縦溝孔107を有する。ばね指片108のうちの2個のばね指片はその上部に形成された円周溝110を有する。ハウジング12内にアダプタを釈放可能に取り付けるため、ハウジングの半部シェル12A、12Bの内面に一体に形成された突起112を収容するように円周溝110の形態を定める。即ち、アダプタに下方の力を加えると、ばね指片は屈撓して、ハウジング12からアダプタを除去することができる。
【0043】
また、アダプタ100は3個の半径方向外方に突出するキー113を有する。
ハウジングの半部シェル12A、12Bの内面に形成された突起115のそれぞれの側面114に掛合するようキー113を配置する。アダプタが一つの特定の円周方向にある時のみ、アダプタをハウジング12に入れることができるように、キー113と側面114とを指向させる。次に説明する理由により、アダプタの内面に縦キー溝117を形成する。
【0044】
スリーブ102内に抜き差しできるよう内側リング116を取り付ける。この内側リングの下端付近に半径方向外方に突出する肩部118を設け、上端付近には半径方向内方に突出する肩部120を設ける。フランジ106の下端に衝合するよう肩部118を配置する。リング116に環状凹所を設け、この環状凹所にアダプタ100の半径方向突起を収容し得るようにして、両者間にスナップ連結部を形成する(図2参照)。
【0045】
アダプタ100とリング116との内部に、図13〜図16に示すランセットキャリヤ130を軸線方向に位置させる。ランセットキャリヤ130はほぼ円筒スリーブの形状であり、この円筒スリーブは垂直貫通路131を有し、キャリヤユニット16がハウジング12から除去された時、この垂直貫通路内に使い捨て部材150を下方に挿入し得るようにする。ランセットキャリヤ130の半径方向外方フランジ134と、リング116に形成された半径方向内方肩部120との間にコイル圧縮ばね132を作用させる。
【0046】
ランセットキャリヤには、使い捨て部材を案内するため、ランセットキャリヤの内面に形成された下方に傾斜し、上方に向く1対の案内傾斜面140を設ける。これ等案内傾斜面140の下端は交差していて、上方に開く凹所142を形成している。これ等案内傾斜面と凹所とは使い捨て部材を支持する上方に向く座を形成している。キャリヤ130の上部環状フランジ135に、半径方向外方に突出するキー133を形成する。キー133をアダプタ100のキー溝117に入れ、アダプタに対する円周方向のキャリヤ130の位置を定める。
【0047】
使い捨て部材150を図2、及び図11に示し、この使い捨て部材150は下端から突出する針154を有するほぼ円筒形の円筒体152を有する。この使い捨て部材の外周縁から半径方向外方に突出する3個のボス156を円周方向、及び縦方向に離間して設ける。即ち、下部ボス156と、この下部ボスの上方に同一高さに配置された1対の上部ボス158とを設ける。使い捨て部材を縦方向に見た時、3個のボスは相互に円周方向に離間している。使い捨て部材をランセットキャリヤ130(図2参照)の上端に落下させた時、2個の上部突起は2個の案内傾斜面140のそれぞれに掛合し、使い捨て部材の下降運動を案内し、下部ボス156が凹所142に入るのを確実にする(図13をも参照)。
【0048】
更に、使い捨て部材に、それに沿って縦方向に延びる溝孔160を設ける。複数対の対向する保持指片162を溝孔160内に配置する。図11に仮想線で示すように、使い捨て部材の縦軸線に平行な方向に毛細管164を摩擦によって把持し、保持し得るよう保持指片162の形態を定める。次に説明する理由により、ユニット16をハウジング12内に挿入した時、使い捨て部材の突起156、158と、ランセットキャリヤ130の案内傾斜面140との間の協働により、プッシャ24の作動指片58に対し軸線方向に配列して毛細管を位置させることができる。
【0049】
ハンドル20(図3A、及び図4参照)は、ハンマ18の頂壁70を通して下方に突出する1対の縦方向に延びるリフト指片170を有する。リフト指片の下端は、ばね76の下端が圧着する半径方向外方に突出する脚172を構成している。手で握ることができるノブ174をこのハンドルの頂部に配置し、ハンドルを上昇させることができるようにする。
【0050】
切開装置10の操作を説明するため、キャリヤユニット16に使い捨て部材150を取り付けていない状態の装置10を示している図3Aに最初に注目する。
【0051】
使い捨て部材を設置するため、キャリヤユニット16をハウジングから下方に引っ張り、使い捨て部材150をキャリヤ130内に落下させる(図2参照)。そのようにすれば、使い捨て部材の下部ボス156がキャリヤの凹所142内に静止するに到るまで、使い捨て部材のボス156、158はランセットキャリヤの案内傾斜面140に沿って動く。その
【0052】
結果、使い捨て部材の毛細管164はユニット16に対し特別な関係に指向する。
次に、アダプタ100のばね指片108に形成された溝110がハウジング12の突起112にスナップ嵌着するまで、ユニット16をハウジング12の前端内に縦方向上方に押圧し、ユニット16を所定位置にロックする(図3B参照)。
【0053】
アダプタのキー113と、ハウジング12に形成された突起114の側部115との関係に起因し、ハウジング12に対する唯1つの円周(回転)関係に、アダプタを挿入することができる。更に、ホルダ130のキー133と、アダプタのキー溝117との間の掛合によって、ランセットホルダ130とアダプタ100との間の円周方向の関係を予め設定するから、毛細管164の上端をプッシャ24の作動指片、即ち作動リブ58に確実に配列することができる。毛細管の上端が使い捨て部材150の上端を過ぎて僅かに上方に突出するから(図3B参照)、この毛細管の上端が作動リブ58、従って全体のプッシャ24を僅かに上方に押圧する。図3Aのようにキャリヤユニット16に使い捨て部材150を取り付けていない状態ではプッシャ24のロックリブ56はハウジング12の止め88と同じレベルの位置をとるが、使い捨て部材150を取り付けると、毛細管164の上端が、作動リブ58を、従ってプッシャ24を僅かに上方に押圧し、これに伴ってこのプッシャ24に一体に設けたロックリブ56もハウジングの止め88よりも高いレベルに上昇させる。
【0054】
保護シースSが針54を覆っておれば(図2参照)、使用者は保護シースを引き出し、次にハンドル20のノブ174を握り、上方に引っ張る(図3C参照)。
【0055】
これにより、リフト指片170の脚172と、ハンマ18の頂壁70との間でばね76を圧縮する。ばね76がこれ以上圧縮できないところまで圧縮された時、ハンドル20を更に上昇させるとハンマ18は上昇する。従って、結果として、掛止め指片84の頂部の傾斜カム従動面86はトリガ突起46、及び止め88の下側に掛合し、掛止めアーム82を半径方向内方に撓ませ、突起46を越え、次に止め88を越えて指片84を通過させる。最後に、指片84は止め88を過ぎて移動し、半径方向外方にスナップ移動し、これにより、止め88の頂部によって指片の下降運動、従ってハンマの下降運動を防止する(図3C参照)。
【0056】
ロックリブが予め上昇していないと、掛止め指片は半径方向外方に撓むことはできない。従って、使い捨て部材150が設置されない限り、ハンマ18を装填位置、即ち発射準備位置に設置できないように、ロックリブ56が確実に防止する。
ハンマ18が上昇したため、ばね90は同時に圧縮され、これによりハンマ18は下方に押圧される。
【0057】
ハンドル20が釈放された時、現在上昇しているハンドル18の半径方向内方に突出する肩部180にハンドルの脚172が静止するに到るまで、ばね76はハンドルを下方に押圧する(図3D参照)。これにより、ノブ174はその以前の位置より距離Dだけ僅かに上昇して留まり、このノブの僅かな上昇はハンマが発射準備位置(装填位置)にあることを視覚的に示すのに役立つ。
【0058】
使用者の皮膚に剌激スリーブ102を下方に押し付ける時(図3E参照)、スリーブ102は、ばね104の押圧力に抗して上方に移動するようになり、ばね45の押圧力に抗してインタポーザ22、及びそのトリガ突起46を上昇させる。トリガ突起46は止め88に対して円周方向にずれているから、この突起は掛止め指片84の下側に接触することができ、突起46は掛止め指片84にカム作用を及ぼし、掛止め指片84を止め88から外して、半径方向内方に動かす。これにより、予め圧縮されているばね90によりハンマ18、及びその衝撃脚80をばね76の押圧力に抗して下方に、使い捨て部材150に向け動かし(図3F参照)、ばね132の押圧力に抗して、使い捨て部材150、及びキャリヤ130を下方に押圧し、これにより針を皮膚に穿剌し、即ち皮膚を切開する。ばね132の作用により、キャリヤ130、及び使い捨て部材150を直ちに上方に後退させる。ばね76によってハンマ18が直ちに後退しているから、キャリヤ、及び使い捨て部材のこのような後退は可能である。従って、穿刺作用、即ち切開作用と、ランセットの後退とは、ほぼ連続する運動として行われる。
【0059】
次に、使用者はハウジング12を繰り返して上下動させ、これにより刺激スリーブ102を皮膚に接触させて維持し、ばね45によって刺激スリーブ102を繰り返し加圧し、皮膚の表面まで(血液のような)流体にポンプ作用を加えて汲み出すように、繰り返し傷口を開いたり、閉じたりする。この血液のような流体を汲み出すことについては、ここに援用する出願(代理人処理番号018176-060)
に非常に詳細に説明されている。
【0060】
即ち、下方への力を加える度毎に、傷口、即ち切開部Iに対し包囲する関係に配置された皮膚、及び身体組織の環状の部分を押し下げるように外側の刺激スリーブの端面は作用し、傷口の側部を引っ張って離しながら、傷を受けた区域を膨らませる。従って、血液、又は組織間等に介在する介在流体のような流体を捕捉し、加圧する。従って流体は脹らむ傷口の引っ張られる開放端を経て上方に移動する。これは、沈下した皮膚、及び身体組織の包囲する環状部が流体の外方への流れを限定するからである。
【0061】
下方への力を解放した時、傷口の側部は閉じ、傷口を経て強制的に上方に移動させられた流体に代わり、新鮮な流体が傷口の区域に向け流れる。下方への力を再び加えると、上述の作用は繰り返され、付加的な流体が傷口を経て強制的に流される。この「ポンプ」作用により、身体の流体の適切に大きい滴Bが遂に形成される。
【0062】
スリーブ102の端面をほぼ環状に示したが、楕円形、又は多角形のような他の形態にすることができ、その場合、押圧される身体組織の環状部も同様の形態になる。
【0063】
皮膚の表面に流体の十分大きい滴Bが発達した時(図3G参照)、使用者は下方の力Fをプッシャ24のノブ52に加え、ばね38の押圧力に抗してプッシャ、及びその作動リブ58を下方に移動させる。これにより、毛細管164の下端がハウジング12の底部から突出するまで、毛細管164を下方に押圧する。この時点で、毛細管の下端は血液の滴の中に位置し、毛細管作用によって血液を毛細管内に吸引する。プッシャ24を釈放することができ、それ故、ばね38によりプッシャ24は上方に移動する。
【0064】
次に、ストリップ材料200を毛細管の底部に接触させ(図3H参照)、分析のため流体試料を抜き取る。
【0065】
次の穿刺操作、即ち切開操作と、試料採取操作とを行うため、使用者はスリーブ102を把持し、キャリヤユニット16を引き出す。次に、使い捨て部材150をキャリヤ130から引き上げて廃棄し、従って新しい使い捨て部材を挿入することができる。
針154、及びばね93、90、45、76、104、132を除き、切開装置10の部片をプラスチックで形成するのが好適である。
【0066】
装置10は、この装置を皮膚に押し付けるのに応動して、ハンマの自動的なトリガを行うことができる。これにより、トリガの瞬間に、使用者が装置を上方に急に押す傾向を無くし、一穿刺操作から次の穿剌操作まで一定深さの貫入を行うのを確実にする。
【0067】
使い捨て部材を配置するまではハンマを発射準備するのを防止する本発明装置の能力によって、キャリヤユニットを設置する際、使い捨て部材が事故で前方に移動するのを確実に防止することができる。このような事故は、キャリヤユニットを設置中に、ハンマが既に発射準備状態にあれば発生してしまう。従って、本発明によれば、使用者は事故による損傷に対し防護されている。
【0068】
流体試料を採取するため、毛細管を押し出す本発明装置の能力によって、試料採取操作を簡単化し、必要な毛細管の直接手動操作を最少にすることができる。
【0069】
実際上、本発明装置を使用する時、毛細管との直接接触の必要性は生じない。本発明のこの要旨は切開を行うためにランセットを使用する必要がない。切開を行うためにランセットを使用する位置で、皮膚に加圧ガス、又は加圧液体を注射する既知の形式の空気式、又は液圧式注射器を使用することができる。このような自動注射器は、例えばインシュリンを注射するために、Becton-Dickinson社から市販されている。インシュリンを除去し、約2.1kg/cm2(30psi)以上の圧力でガス(例えば空気、又は窒素)を、又は液体(例えば水)を単に注射することにより、身体の流体の試料を採取するため、皮膚に切開部を形成することができる。小さな粒子をガスに混合し、組織切開作用を促進させるのが有利である。この粒子は1ミクロンから0.25mm(0.01インチ)の直径の炭素粒子から構成することができる。
【0070】
このキャリヤユニットの上端からキャリヤユニットに使い捨て部材を装着し、取り外す能力は、使用者がその手を針から遠く保持し得ることを意味する。これにより、恐らく汚染した針によって事故で傷を受けるのを確実に防止する。使い捨て部材の3個の突起によって画成するように、キャリヤ内に使い捨て部材を3点で取り付けることにより、キャリヤユニット内に使い捨て部材を移動させず、安定して取り付けることができる。従って、穿刺工程中、即ち切開工程中、使い捨て部材は側方に移動する傾向が無く、これにより、使用者が受ける苦痛を減少させることができる。
【0071】
同時に出願した特許出願(代理人処理番号018176-060)に記載したように、血液、又は介在流体のような身体の流体を皮膚の表面までポンプ作用で汲み出すこの装置の能力によって、例えば腕のように、苦痛を感ずることが少ない身体の区域で皮膚を穿刺、即ち切開するのにこの装置を使用することができる。
【0072】
好適な実施例について本発明を説明したが、本発明は請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書中に特に記載していない追加、変更、置換、及び削除を本発明に加え得ることは当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明切開装置の側面図である。
【図2】縦断面図で示したランセットキャリヤユニット内に挿入しつつある使い捨て部材の側面図である。
【図3A】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3B】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3C】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3D】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3E】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3F】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3G】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3H】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図4】本発明切開装置の縦断面斜視図である。
【図5】本発明によるプッシャ部材の底部から見た斜視図である。
【図6】本発明によるアダプタ部材の底部から見た斜視図である。
【図7】本発明によるハンマ部材の底部から見た斜視図である。
【図8】図7に示したハンマ部材の底部から見た他の斜視図である。
【図9】本発明によるハウジングの半部の斜視図である。
【図10】本発明によるハウジングの他の半部の斜視図である。
【図11】毛細管を仮想線で示し、本発明による使い捨て部材の斜視図である。
【図12】本発明によるインタポーザ部材の底部から見た斜視図である。
【図13】設置した状態にある使い捨て部材の突起を仮想線で示した本発明による使い捨てキャリヤ部材の側面図である。
【図14】図13に示した使い捨てキャリヤの他の角度から見た斜視図である。
【図15】図13のキャリヤ部材の断面斜視図である。
【図16】図13のキャリヤ部材の底部から見た斜視図である。
【技術分野】
【0001】
体液サンプリング装置及びその使用方法発明の分野 本発明は切開装置に関するものであり、分析、又は処理のため身体から血液、及びその他の体液の試料を採取する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、使用されている多くの医療処置には5〜50マイクロリットルの範囲の比較的少量の血液試料を必要とする。静脈血を採取するため瀉血医を使用する場合に比較し、1、又は2滴の血液を捕集し得るよう、指のような選択した位置の皮膚を切開し、即ち穿刺することによって、このような試料を得ることは患者にとって、価格的に一層有利であり、外傷も少なくて済む。血糖値の自己管理のような家庭用試験の出現により、試験を必要とする人によって任意に設定して行うことができる簡単な方法が要望されている。
【0003】
通常、使用されているランセットは一般に、剛強本体と、一端から突出する滅菌針とを有する。このランセットは皮膚を穿刺するのに使用され、生じた開口から血液試料を捕集することができる。捕集された血液は試験装置、又は捕集装置に移送される。血液は一般に指先から採取されることが多く、指先は血液の供給源として優れている。しかし、指先は神経が集中しているため、多くの患者には著しく苦痛である。耳たぶ、及び手足のような別の位置での試料採取は、敏感でない位置に接近できるため、時々実行されている。しかし、これ等の位置は優れた血液試料を提供しにくく、試験装置に血液を直接送るのを困難にしている。
【0004】
(指の先端のような)限定された表面区域において繰り返し切開を行うと硬結皮膚が形成される。このため、血液を採取するのが一層困難になり、苦痛も増大する。
【0005】
皮膚を穿刺される不安、及びそれに関連する苦痛を和らげるため、多くのばね負荷装置が開発されている。次の2つの特許はこのような装置の代表的なもので、家庭用診断試験用製品と共に使用するよう1980年代に開発された。
【0006】
Cornell 等の米国特許第4503856 号はばね負荷ランセット注射器を記載している。再使用可能な装置を使い捨てランセットに連結している。ランセットホルダを後退位置に掛止めさせている。使用者が釈放部に触れると、ばねはランセットを高速で皮膚に挿通し、次に後退させる。穿刺に関連する苦痛を減らすためには、この速度が重要である。
【0007】
Levin 等の米国特許第4517978 号は血液サンプリング器具を記載している。この装置もばねで負荷されていて、標準の使い捨てランセットを使用している。この装置の設計は指の先端に容易に正確な位置決めができ、そのため衝撃位置を容易に決定することができる。ランセットを皮膚に挿通した後、反発復帰ばねによってランセットを装置内の安全位置に後退させる。
【0008】
制度上の背景において、患者から試料を捕集し、次に制御された状態でこの試料を試験装置に導入するのが望ましいことが多い。若干の血糖値管理システムは例えば、試験機器に接触している試験装置に血液試料を加えることが必要である。そのような状態で、患者の指を試験装置に直接もたらすことは、前の患者の血液によって汚染する若干の危険がある。このようなシステムでは、特に病院の環境下で、患者の皮膚を切開し、毛細管現象によりマイクロピペット内に試料を捕集し、次にこの試料をピペットから試験装置に送る。
【0009】
Haynesの米国特許第4920977 号はランセット、及びマイクロ捕集管を有する血液捕集装置を記載している。この装置は単一装置内にランセット、及び捕集容器を組み込んでいる。切開と捕集とは2つの別個の作用であるが、この装置は、使用前の試料捕集が望ましい状態であるのに、通常の単一使い捨てユニットである。これに類似する装置がSarrine の米国特許第4360016 号、及びO'Brien の米国特許第4924879号に記載されている。
【0010】
Jordan等の米国特許第4850973 号、及び第4858607 号は、形態に応じて、注射器形式の注入器として、及び使い捨て密実針ランセットを使用する切開装置として、選択的に使用できるコンビネーション装置を開示している。
【0011】
Lange 等の米国特許第5318584 号は診断の目的で血液を採取するための血液ランセット装置を記載している。この発明は切開の苦痛を減らすため回転摺動伝動システムを使用している。使用者によって、穿刺深さを容易に精密に調整することができる。
【0012】
鈴木等の米国特許第5368047 号、Dombrowskiの米国特許第4654513 号、及び石橋等の米国特許第5320607 号はそれぞれ吸引形血液サンプリング装置を記載している。これ等の装置は、皮膚に挿通した後、ランセット保持機構が後退する時、切開位置と、装置の端部との間で吸引を発生させる。十分な試料が穿刺位置から吸引されるまで、即ち使用者が装置に試料を引き込むまで、装置の端部の周りの可撓性ガスケットが穿剌位置の周りの端部をシールするのを助ける。
【0013】
Garcia等の米国特許第4637403 号、及びHaber 等の米国特許第5217480 号は損傷位置の上に負圧を発生させるため、ダイアフラムを使用する切開装置と血液捕集装置との組合せを開示している。
【0014】
Erickson等の米国特許第5582184 号は身体の流体を捕集し測定する手段を記載している。このシステムはスペーサ部材内に配置された同軸注射毛細管を使用している。このスペーサ部材は注射貫入深さを制限し、注射管が皮膚の中にある間、注射管の周りの身体組織を圧迫し、介在流体の切開部までの流れを向上させるようにしている。しかし、切開部が注射管を閉じる傾向があるため、達成される筈の利点を制約してしまう。
【0015】
単一の使用の試験のため、即ち家庭でのコレステロール測定のため、及び多数の患者に使用することによる汚染を無くするための制度上の用途のため、単一使用装置も開発されている。Crossman等の米国特許第4869249 号、及びSwierczekの米国特許第5402798 号も使い捨ての単一使用切開装置を開示している。
【0016】
米国特許第5421816 号、第5445611 号、及び5458140 号は身体に貫入する試料採取に代わり、完全な皮膚(切開していない皮膚)から直接、介在流体を採取するため、ポンプのように作用する超音波の使用を開示している。しかし、この方法で得られる流体の量は非常に制約される。
【0017】
上述の特許に開示された発明は本明細書中に援用する。
これ等の既に開発された多くの装置でも、切開に関連する苦痛は、多くの患者に対して、依然として著しい苦痛である。血液の試料採取は必要であるのに、関連する苦痛の恐怖は診断される何百万という糖尿病患者にとって主要な障害であり、糖尿病患者は試験に伴う苦痛のため、血糖値を十分に管理することができない。更に、他の診断のために血液試料を得るための切開を行うことは通常のことであり、これ等の用途に適合し、これ等の技術を一層受け入れられるものにするため、苦痛が少なく、貫入が最小な装置が要望される。
【0018】
従って、本発明の目的は実際上、苦痛が無く、貫入が最小で、身体の流体の試料を得る装置と、方法とを提供するにある。
【0019】
更に、既知の切開装置は、使用者がその皮膚の上に装置を設置し、ランセット駆動機構をトリガするための手動ボタンを有する。使用者はランセットをトリガする正確な瞬間を知っているから、トリガの瞬間に、使用者が装置を急に引き、又は急に上昇させる傾向があり、皮膚への貫入が調和せず、又は貫入しない恐れがある。従って、本発明の他の目的は使用者の側に、このような傾向を無くした切開装置を得るにある。
【0020】
更に、使い捨てランセットを支持する既知のキャリヤは使い捨て部材の下端からのみ挿入し、除去し得る形態になっている。そのため、使い捨て部材を上方に押し、又は下方に引っ張るため、使用者は使い捨て部材の下部を握る必要がある。針は使い捨て部材の下端から突出しているから、使用者の手は針の直ぐ近くにあり、従って潜在的な負傷、及び/又は汚染に直面している。また、使い捨て部材は、通常、摩擦嵌着によってキャリヤ内に保持される。通常の製造公差では、使い捨て部材を十分緊密に嵌着することは困難である。そのため使い捨て部材はぐらつく傾向があり、このため、切開工程中、受ける苦痛は増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って本発明の他の目的は上述の欠点を除去したランセットキャリヤを得るにある。
本発明の付加的目的は使い捨て部材を挿入し終わるまでは、ランセット駆動機構が発射準備状態にならないようにして、切開装置を安全にするにある。
【0022】
本発明の他の目的は、試料位置、及び利用する貫入深さに従って、血液、又は介在流体の試料を得る方法を提供する。現在、介在流体(ISF)を利用する市販の装置は無く、全血液に対して比較したISF内の血糖値のような分析値の相互関係を確立するための活発な努力が払われている。もしもISFが容易に得られ、相互関係が確立すれば、赤血球細胞、即ち必要なヘマトクリット調整の干渉が無いため、ISFは試料として好適である。
本発明の他の目的は少量の調整可能な試料、即ち適切な値として、一方の試験装置では3マイクロリットル、他方の試験装置では8マイクロリットルのように、試料を採取することができる方法を得るにある。
【0023】
本発明の他の目的は身体の試料位置に関係なく、採取した試料を捕集し、試験装置に容易に提供し得る方法を得るにある。この方法は多くの患者を単一の試験機器に接触させず、使い捨ての患者接触部を有するサンプリング装置のみを試験機器に接触させるから、感染防止の制御の助けになる。代案として、試験装置の使い捨て部を物理的にサンプリング装置に結合し、試料採取中、試料を直接、試験装置にもたらし得るようにしてもよい。もしよければ、試験装置を試験機器内で読み取ってもよく、又は試験システムをサンプリング装置内に統合することができ、患者のために表示された直接の結果を試験装置が提供することができる。
【0024】
本発明の更に他の目的は再使用できるサンプリング装置、及び使い捨てランセットと、試料捕集装置とを具え、最小の貫入深さで試料採取する装置を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明の一態様は血液、又は介在流体を採取するため皮膚を切開する切開装置である。この装置はハウジングを具える。ハウジングに対し相対的に縦方向に移動するようハウジングの前端に隣接してランセットキャリヤを取り付ける。皮膚を切開するよう、ランセットキャリヤを前方に押圧するため、ばねで押圧される発射準備することができるハンマ機構を設ける。このハンマ機構を発射準備位置に釈放可能に保持するため、掛止めを設ける。掛止め釈放機構は、皮膚に押圧されるのに応動して、後方に移動せしめられる皮膚接触部と、この皮膚接触部の後方への移動に応動して掛金を釈放する掛金釈放部とを具える。
【0026】
本発明の他の態様では、安全機構を設けるが、この安全機構はハンマ機構が発射準備状態になるのを防止する安全位置に平素、配置され、また、ハンマ機構を発射準備状態にできるようにするため、ハウジング内にランセットキャリヤを設置したのに応動して、安全機構を非安全位置に移動可能にする。
【0027】
本発明の他の態様では、使い捨てランセットは皮膚切開部材と、毛細管とを収容する本体を具える。皮膚を切開した後、この切開した皮膚から流体を吸引するため、上記本体に対し相対的に毛細管を前方に押圧するためのプッシャ部材を設ける。
【0028】
本発明の更に他の態様は使い捨てランセットとそのキャリヤとの組合わせに関する。このキャリヤはハウジング内に取付けられるようにしたスリーブを具える。このスリーブはスリーブの上端から下端まで延びる貫通路を形成する内面を有する。使い捨てランセットを上記貫通路に着座させる。上端だけを通じて、使い捨てランセットを挿入、及び除去し得るように、この内面の形態を定める。この内面に、少なくとも1個の上方に向く肩部を設け、この肩部に使い捨てランセットを支持する。また、本発明はランセットキャリヤ自身に関するものである。
【0029】
本発明の他の態様は身体の流体を試料採取するサンプリング装置に関するものである。このサンプリング装置は縦軸線を画成するハウジングと、皮膚の表面に通して切開部を形成する切開部形成手段とを具える。ハウジングの前端に刺激部材を取り付け、切開部の開口端に身体の流体の滴を形成するよう切開部に向け、切開部を通じて外方に身体の流体を押圧するよう皮膚に対して包囲する関係に、環状の身体組織を沈下させるため、刺激部材を皮膚に沈下させ得るようにする。
【0030】
身体の流体を吸引するよう、キャリヤに対し相対的に毛細管を前方に動かすためのプッシャ部材を設ける。
【0031】
本発明方法の態様は使用者の身体の皮膚の表面にハウジングの前端を衝合させる工程と、皮膚の表面に通して切開部を形成する工程とを含む。ハウジングを皮膚の表面に押圧し、切開部に対し包囲する関係に環状の身体組織を繰り返し沈下させ、切開部に向け、切開部を通じて外方に身体の流体を押圧し、切開部の開口端に身体の流体の滴を形成する。キャリヤに対し相対的に毛細管を前方に突出させ、毛細管の先端を身体の流体の滴の中に挿入する。
【0032】
同一部分を同一符号にて示す添付図面に関連して説明する好適な実施例の次の詳細な記載から、本発明の目的、及び利点は明らかになるであろう。
【実施例1】
【0033】
図1に示す最少貫入サンプリング装置10は互いに取り付けられた2個の半部シェル12A、12B(図9、及び図10参照)から形成された管状ハウジング12を有する。ハウジング12は縦軸線Aと、下部開口端14とを画成しており、この下部開口端14は取り外し得るランセットキャリヤユニット16を収容することができる。このキャリヤユニットは使い捨てのランセット部材150(以後「使い捨て部材」と称する)を支持する役割を果たし、次に説明するように、皮膚穿刺位置を刺激する役割を果たす。
【0034】
また、皮膚への挿通方向に下方に使い捨て部材を移動させるためのハンマ18と、発射準備位置(即ち下方に押圧される位置)までハンマを上昇させるための手動ハンドル20と、皮膚の表面にこの装置を手動で押圧するのに応動してハンマを自動的に釈放するためのインタポーザ22と、血液収容毛細管を下方に押圧するための手動プッシャ24と、上述の部片を適切に設置し、移動させるための複数個のばねとをハウジング12(図3A参照)内に取り付ける。
【0035】
図3、及び図12に示すインタポーザ22はハウジング12内で縦方向に移動可能であり、下部円筒部30と、上部円筒部32とを有し、下部円筒部の直径は上部円筒部の直径より小さく、そのため上方に向く肩部34を形成している。キャリヤユニット16をハウジング12内に上方に摺動させ得るようにするため、1対の直径的に対向するスリット36を下部円筒部30内に形成する。
【0036】
上部円筒部32に溝孔40を形成し、ハウジングの半部シェル12Bの内面に一体に形成された3個の縦方向に平行な案内リブ42(図10参照)を溝孔40から突出させる。中心のリブ42は他の2個のリブ42より一層短く、その結果、空間を形成しており、以下に説明するように、この空間内に毛細管の端部を嵌着することができる。他の溝孔44を溝孔40から90度離間させ、溝孔44の壁にトリガ突起46を形成し、このトリガ突起46に傾斜した上部カム面47を設け、次に説明するように、この上部カム面47によってハンマ18を発射準備位置から釈放する作用を行わせる。
【0037】
プッシャ24に形成された肩部47とインタポーザ22の上端との間にコイル圧縮ばね45を配置し、インタポーザ22を下方に押圧する。
【0038】
図5に示す手動プッシャ24は縦方向に移動でき、このプッシャの半円筒部50にその上端から半径方向外方に突出するノブ52を設ける。ハウジング12に形成された縦スロット53に沿ってノブ52が摺動できるようノブ52の寸法を定める。半円筒部50の内面54の下端から半径方向内方に突出するロックリブ56を設け、更に作動リブ58を設ける。インタポーザ22に形成された溝孔40を通じて、ロックリブ56と、作動リブ58とを半径方向内方に突出させる。
【0039】
図4、及び図11に示すように、ハウジング12の案内リブ42の間に、作動リブ58を下方に延在させる。
【0040】
図7、及び図8に示すハンマ18はハウジング12内で縦方向に移動することができ、このハンマ18は内部にハンドル20を取り付けることができるよう上部開口72を有する頂壁70を具える。ハンマ18の上部74はコイル圧縮ばね76(図3A参照)を収容する。次に説明するように、この圧縮ばねはハンマとハンドル20との間に作用する復帰ばねとして働く。ハンマ18の下部は掛止めアーム82と、ハウジング12の案内リブ42に跨がる1対の平行な縦方向の衝撃脚80とを具える。掛止めアーム82を脚80の1個から離間し、その間にロックリブ56を収容する(図3A、及び図4参照)。掛止めアーム82の下端に半径方向外方に向く指片84を設け、この指片84の頂部を傾斜カム従動面86によって画成する。次に説明するように、ハンマ18が発射準備位置(図3E参照)まで引き上げられている際、ハウジング12の内面から半径方向内方に突出する止め88を通過して、指片84が垂直に移動した時、掛止めアーム82は半径方向に可撓性である。
【0041】
コイル圧縮ばね90はハウジング12の上壁92と、ハンマ18の頂壁70との間に作用し、ハンマを下方に押圧する(図3A参照)。ばね90を包囲しているコイル圧縮ばね93は上壁92とプッシャ24の上端縁94との間に作用し、プッシャを下方に押圧する。
【0042】
キャリヤユニット16は図2、及び図6に示すアダプタ100を有する。このアダプタ100はほぼ円筒形で、刺激スリーブ102内で抜き差しできるように配置されている。アダプタ100の下端縁と、スリーブ102の内面から半径方向内方に突出する環状フランジ106との間にコイル圧縮ばね104を介挿する。アダプタ100はこのアダプタを複数個のばね指片108に分割する複数個の縦溝孔107を有する。ばね指片108のうちの2個のばね指片はその上部に形成された円周溝110を有する。ハウジング12内にアダプタを釈放可能に取り付けるため、ハウジングの半部シェル12A、12Bの内面に一体に形成された突起112を収容するように円周溝110の形態を定める。即ち、アダプタに下方の力を加えると、ばね指片は屈撓して、ハウジング12からアダプタを除去することができる。
【0043】
また、アダプタ100は3個の半径方向外方に突出するキー113を有する。
ハウジングの半部シェル12A、12Bの内面に形成された突起115のそれぞれの側面114に掛合するようキー113を配置する。アダプタが一つの特定の円周方向にある時のみ、アダプタをハウジング12に入れることができるように、キー113と側面114とを指向させる。次に説明する理由により、アダプタの内面に縦キー溝117を形成する。
【0044】
スリーブ102内に抜き差しできるよう内側リング116を取り付ける。この内側リングの下端付近に半径方向外方に突出する肩部118を設け、上端付近には半径方向内方に突出する肩部120を設ける。フランジ106の下端に衝合するよう肩部118を配置する。リング116に環状凹所を設け、この環状凹所にアダプタ100の半径方向突起を収容し得るようにして、両者間にスナップ連結部を形成する(図2参照)。
【0045】
アダプタ100とリング116との内部に、図13〜図16に示すランセットキャリヤ130を軸線方向に位置させる。ランセットキャリヤ130はほぼ円筒スリーブの形状であり、この円筒スリーブは垂直貫通路131を有し、キャリヤユニット16がハウジング12から除去された時、この垂直貫通路内に使い捨て部材150を下方に挿入し得るようにする。ランセットキャリヤ130の半径方向外方フランジ134と、リング116に形成された半径方向内方肩部120との間にコイル圧縮ばね132を作用させる。
【0046】
ランセットキャリヤには、使い捨て部材を案内するため、ランセットキャリヤの内面に形成された下方に傾斜し、上方に向く1対の案内傾斜面140を設ける。これ等案内傾斜面140の下端は交差していて、上方に開く凹所142を形成している。これ等案内傾斜面と凹所とは使い捨て部材を支持する上方に向く座を形成している。キャリヤ130の上部環状フランジ135に、半径方向外方に突出するキー133を形成する。キー133をアダプタ100のキー溝117に入れ、アダプタに対する円周方向のキャリヤ130の位置を定める。
【0047】
使い捨て部材150を図2、及び図11に示し、この使い捨て部材150は下端から突出する針154を有するほぼ円筒形の円筒体152を有する。この使い捨て部材の外周縁から半径方向外方に突出する3個のボス156を円周方向、及び縦方向に離間して設ける。即ち、下部ボス156と、この下部ボスの上方に同一高さに配置された1対の上部ボス158とを設ける。使い捨て部材を縦方向に見た時、3個のボスは相互に円周方向に離間している。使い捨て部材をランセットキャリヤ130(図2参照)の上端に落下させた時、2個の上部突起は2個の案内傾斜面140のそれぞれに掛合し、使い捨て部材の下降運動を案内し、下部ボス156が凹所142に入るのを確実にする(図13をも参照)。
【0048】
更に、使い捨て部材に、それに沿って縦方向に延びる溝孔160を設ける。複数対の対向する保持指片162を溝孔160内に配置する。図11に仮想線で示すように、使い捨て部材の縦軸線に平行な方向に毛細管164を摩擦によって把持し、保持し得るよう保持指片162の形態を定める。次に説明する理由により、ユニット16をハウジング12内に挿入した時、使い捨て部材の突起156、158と、ランセットキャリヤ130の案内傾斜面140との間の協働により、プッシャ24の作動指片58に対し軸線方向に配列して毛細管を位置させることができる。
【0049】
ハンドル20(図3A、及び図4参照)は、ハンマ18の頂壁70を通して下方に突出する1対の縦方向に延びるリフト指片170を有する。リフト指片の下端は、ばね76の下端が圧着する半径方向外方に突出する脚172を構成している。手で握ることができるノブ174をこのハンドルの頂部に配置し、ハンドルを上昇させることができるようにする。
【0050】
切開装置10の操作を説明するため、キャリヤユニット16に使い捨て部材150を取り付けていない状態の装置10を示している図3Aに最初に注目する。
【0051】
使い捨て部材を設置するため、キャリヤユニット16をハウジングから下方に引っ張り、使い捨て部材150をキャリヤ130内に落下させる(図2参照)。そのようにすれば、使い捨て部材の下部ボス156がキャリヤの凹所142内に静止するに到るまで、使い捨て部材のボス156、158はランセットキャリヤの案内傾斜面140に沿って動く。その
【0052】
結果、使い捨て部材の毛細管164はユニット16に対し特別な関係に指向する。
次に、アダプタ100のばね指片108に形成された溝110がハウジング12の突起112にスナップ嵌着するまで、ユニット16をハウジング12の前端内に縦方向上方に押圧し、ユニット16を所定位置にロックする(図3B参照)。
【0053】
アダプタのキー113と、ハウジング12に形成された突起114の側部115との関係に起因し、ハウジング12に対する唯1つの円周(回転)関係に、アダプタを挿入することができる。更に、ホルダ130のキー133と、アダプタのキー溝117との間の掛合によって、ランセットホルダ130とアダプタ100との間の円周方向の関係を予め設定するから、毛細管164の上端をプッシャ24の作動指片、即ち作動リブ58に確実に配列することができる。毛細管の上端が使い捨て部材150の上端を過ぎて僅かに上方に突出するから(図3B参照)、この毛細管の上端が作動リブ58、従って全体のプッシャ24を僅かに上方に押圧する。図3Aのようにキャリヤユニット16に使い捨て部材150を取り付けていない状態ではプッシャ24のロックリブ56はハウジング12の止め88と同じレベルの位置をとるが、使い捨て部材150を取り付けると、毛細管164の上端が、作動リブ58を、従ってプッシャ24を僅かに上方に押圧し、これに伴ってこのプッシャ24に一体に設けたロックリブ56もハウジングの止め88よりも高いレベルに上昇させる。
【0054】
保護シースSが針54を覆っておれば(図2参照)、使用者は保護シースを引き出し、次にハンドル20のノブ174を握り、上方に引っ張る(図3C参照)。
【0055】
これにより、リフト指片170の脚172と、ハンマ18の頂壁70との間でばね76を圧縮する。ばね76がこれ以上圧縮できないところまで圧縮された時、ハンドル20を更に上昇させるとハンマ18は上昇する。従って、結果として、掛止め指片84の頂部の傾斜カム従動面86はトリガ突起46、及び止め88の下側に掛合し、掛止めアーム82を半径方向内方に撓ませ、突起46を越え、次に止め88を越えて指片84を通過させる。最後に、指片84は止め88を過ぎて移動し、半径方向外方にスナップ移動し、これにより、止め88の頂部によって指片の下降運動、従ってハンマの下降運動を防止する(図3C参照)。
【0056】
ロックリブが予め上昇していないと、掛止め指片は半径方向外方に撓むことはできない。従って、使い捨て部材150が設置されない限り、ハンマ18を装填位置、即ち発射準備位置に設置できないように、ロックリブ56が確実に防止する。
ハンマ18が上昇したため、ばね90は同時に圧縮され、これによりハンマ18は下方に押圧される。
【0057】
ハンドル20が釈放された時、現在上昇しているハンドル18の半径方向内方に突出する肩部180にハンドルの脚172が静止するに到るまで、ばね76はハンドルを下方に押圧する(図3D参照)。これにより、ノブ174はその以前の位置より距離Dだけ僅かに上昇して留まり、このノブの僅かな上昇はハンマが発射準備位置(装填位置)にあることを視覚的に示すのに役立つ。
【0058】
使用者の皮膚に剌激スリーブ102を下方に押し付ける時(図3E参照)、スリーブ102は、ばね104の押圧力に抗して上方に移動するようになり、ばね45の押圧力に抗してインタポーザ22、及びそのトリガ突起46を上昇させる。トリガ突起46は止め88に対して円周方向にずれているから、この突起は掛止め指片84の下側に接触することができ、突起46は掛止め指片84にカム作用を及ぼし、掛止め指片84を止め88から外して、半径方向内方に動かす。これにより、予め圧縮されているばね90によりハンマ18、及びその衝撃脚80をばね76の押圧力に抗して下方に、使い捨て部材150に向け動かし(図3F参照)、ばね132の押圧力に抗して、使い捨て部材150、及びキャリヤ130を下方に押圧し、これにより針を皮膚に穿剌し、即ち皮膚を切開する。ばね132の作用により、キャリヤ130、及び使い捨て部材150を直ちに上方に後退させる。ばね76によってハンマ18が直ちに後退しているから、キャリヤ、及び使い捨て部材のこのような後退は可能である。従って、穿刺作用、即ち切開作用と、ランセットの後退とは、ほぼ連続する運動として行われる。
【0059】
次に、使用者はハウジング12を繰り返して上下動させ、これにより刺激スリーブ102を皮膚に接触させて維持し、ばね45によって刺激スリーブ102を繰り返し加圧し、皮膚の表面まで(血液のような)流体にポンプ作用を加えて汲み出すように、繰り返し傷口を開いたり、閉じたりする。この血液のような流体を汲み出すことについては、ここに援用する出願(代理人処理番号018176-060)
に非常に詳細に説明されている。
【0060】
即ち、下方への力を加える度毎に、傷口、即ち切開部Iに対し包囲する関係に配置された皮膚、及び身体組織の環状の部分を押し下げるように外側の刺激スリーブの端面は作用し、傷口の側部を引っ張って離しながら、傷を受けた区域を膨らませる。従って、血液、又は組織間等に介在する介在流体のような流体を捕捉し、加圧する。従って流体は脹らむ傷口の引っ張られる開放端を経て上方に移動する。これは、沈下した皮膚、及び身体組織の包囲する環状部が流体の外方への流れを限定するからである。
【0061】
下方への力を解放した時、傷口の側部は閉じ、傷口を経て強制的に上方に移動させられた流体に代わり、新鮮な流体が傷口の区域に向け流れる。下方への力を再び加えると、上述の作用は繰り返され、付加的な流体が傷口を経て強制的に流される。この「ポンプ」作用により、身体の流体の適切に大きい滴Bが遂に形成される。
【0062】
スリーブ102の端面をほぼ環状に示したが、楕円形、又は多角形のような他の形態にすることができ、その場合、押圧される身体組織の環状部も同様の形態になる。
【0063】
皮膚の表面に流体の十分大きい滴Bが発達した時(図3G参照)、使用者は下方の力Fをプッシャ24のノブ52に加え、ばね38の押圧力に抗してプッシャ、及びその作動リブ58を下方に移動させる。これにより、毛細管164の下端がハウジング12の底部から突出するまで、毛細管164を下方に押圧する。この時点で、毛細管の下端は血液の滴の中に位置し、毛細管作用によって血液を毛細管内に吸引する。プッシャ24を釈放することができ、それ故、ばね38によりプッシャ24は上方に移動する。
【0064】
次に、ストリップ材料200を毛細管の底部に接触させ(図3H参照)、分析のため流体試料を抜き取る。
【0065】
次の穿刺操作、即ち切開操作と、試料採取操作とを行うため、使用者はスリーブ102を把持し、キャリヤユニット16を引き出す。次に、使い捨て部材150をキャリヤ130から引き上げて廃棄し、従って新しい使い捨て部材を挿入することができる。
針154、及びばね93、90、45、76、104、132を除き、切開装置10の部片をプラスチックで形成するのが好適である。
【0066】
装置10は、この装置を皮膚に押し付けるのに応動して、ハンマの自動的なトリガを行うことができる。これにより、トリガの瞬間に、使用者が装置を上方に急に押す傾向を無くし、一穿刺操作から次の穿剌操作まで一定深さの貫入を行うのを確実にする。
【0067】
使い捨て部材を配置するまではハンマを発射準備するのを防止する本発明装置の能力によって、キャリヤユニットを設置する際、使い捨て部材が事故で前方に移動するのを確実に防止することができる。このような事故は、キャリヤユニットを設置中に、ハンマが既に発射準備状態にあれば発生してしまう。従って、本発明によれば、使用者は事故による損傷に対し防護されている。
【0068】
流体試料を採取するため、毛細管を押し出す本発明装置の能力によって、試料採取操作を簡単化し、必要な毛細管の直接手動操作を最少にすることができる。
【0069】
実際上、本発明装置を使用する時、毛細管との直接接触の必要性は生じない。本発明のこの要旨は切開を行うためにランセットを使用する必要がない。切開を行うためにランセットを使用する位置で、皮膚に加圧ガス、又は加圧液体を注射する既知の形式の空気式、又は液圧式注射器を使用することができる。このような自動注射器は、例えばインシュリンを注射するために、Becton-Dickinson社から市販されている。インシュリンを除去し、約2.1kg/cm2(30psi)以上の圧力でガス(例えば空気、又は窒素)を、又は液体(例えば水)を単に注射することにより、身体の流体の試料を採取するため、皮膚に切開部を形成することができる。小さな粒子をガスに混合し、組織切開作用を促進させるのが有利である。この粒子は1ミクロンから0.25mm(0.01インチ)の直径の炭素粒子から構成することができる。
【0070】
このキャリヤユニットの上端からキャリヤユニットに使い捨て部材を装着し、取り外す能力は、使用者がその手を針から遠く保持し得ることを意味する。これにより、恐らく汚染した針によって事故で傷を受けるのを確実に防止する。使い捨て部材の3個の突起によって画成するように、キャリヤ内に使い捨て部材を3点で取り付けることにより、キャリヤユニット内に使い捨て部材を移動させず、安定して取り付けることができる。従って、穿刺工程中、即ち切開工程中、使い捨て部材は側方に移動する傾向が無く、これにより、使用者が受ける苦痛を減少させることができる。
【0071】
同時に出願した特許出願(代理人処理番号018176-060)に記載したように、血液、又は介在流体のような身体の流体を皮膚の表面までポンプ作用で汲み出すこの装置の能力によって、例えば腕のように、苦痛を感ずることが少ない身体の区域で皮膚を穿刺、即ち切開するのにこの装置を使用することができる。
【0072】
好適な実施例について本発明を説明したが、本発明は請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書中に特に記載していない追加、変更、置換、及び削除を本発明に加え得ることは当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明切開装置の側面図である。
【図2】縦断面図で示したランセットキャリヤユニット内に挿入しつつある使い捨て部材の側面図である。
【図3A】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3B】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3C】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3D】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3E】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3F】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3G】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図3H】種々の作動位置に示す本発明切開装置の縦断面図である。
【図4】本発明切開装置の縦断面斜視図である。
【図5】本発明によるプッシャ部材の底部から見た斜視図である。
【図6】本発明によるアダプタ部材の底部から見た斜視図である。
【図7】本発明によるハンマ部材の底部から見た斜視図である。
【図8】図7に示したハンマ部材の底部から見た他の斜視図である。
【図9】本発明によるハウジングの半部の斜視図である。
【図10】本発明によるハウジングの他の半部の斜視図である。
【図11】毛細管を仮想線で示し、本発明による使い捨て部材の斜視図である。
【図12】本発明によるインタポーザ部材の底部から見た斜視図である。
【図13】設置した状態にある使い捨て部材の突起を仮想線で示した本発明による使い捨てキャリヤ部材の側面図である。
【図14】図13に示した使い捨てキャリヤの他の角度から見た斜視図である。
【図15】図13のキャリヤ部材の断面斜視図である。
【図16】図13のキャリヤ部材の底部から見た斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の流体を試料採取する体液サンプリング装置において、
縦軸線を画成するハウジングと、
皮膚の表面に通して切開部を形成するため前記ハウジング内に取り付けられた切開部形成手段と、
前記ハウジングの前端に取り付けられた刺激部材であって、皮膚の切開部の開口端に身体の流体滴を形成するため、この切開部に向け、この切開部を通じて外方に身体の流体を押圧するよう皮膚に対し包囲する関係に環状の身体組織を沈下させるため皮膚に対し沈下し得る刺激部材と、
身体の流体を吸引するため前記刺激部材に対し相対的に前記切開部形成手段を前方へ移動させるプッシャ部材とを具えることを特徴とする体液サンプリング装置。
【請求項2】
皮膚切開部材と毛細管とを有する使い捨てランセットを支持するランセットキャリヤであって、前記ハウジングに対し相対的に縦方向に移動し得るようこのハウジングの前端に隣接して取り付けられたランセットキャリヤと、
皮膚の表面に切開部を形成するため前記ランセットキャリヤを前方に駆動し、ほぼ連続する運動で後方に駆動し、前記ランセットを切開部から後退させる駆動手段とを前記切開部形成手段が具える請求項1に記載の体液サンプリング装置。
【請求項1】
身体の流体を試料採取する体液サンプリング装置において、
縦軸線を画成するハウジングと、
皮膚の表面に通して切開部を形成するため前記ハウジング内に取り付けられた切開部形成手段と、
前記ハウジングの前端に取り付けられた刺激部材であって、皮膚の切開部の開口端に身体の流体滴を形成するため、この切開部に向け、この切開部を通じて外方に身体の流体を押圧するよう皮膚に対し包囲する関係に環状の身体組織を沈下させるため皮膚に対し沈下し得る刺激部材と、
身体の流体を吸引するため前記刺激部材に対し相対的に前記切開部形成手段を前方へ移動させるプッシャ部材とを具えることを特徴とする体液サンプリング装置。
【請求項2】
皮膚切開部材と毛細管とを有する使い捨てランセットを支持するランセットキャリヤであって、前記ハウジングに対し相対的に縦方向に移動し得るようこのハウジングの前端に隣接して取り付けられたランセットキャリヤと、
皮膚の表面に切開部を形成するため前記ランセットキャリヤを前方に駆動し、ほぼ連続する運動で後方に駆動し、前記ランセットを切開部から後退させる駆動手段とを前記切開部形成手段が具える請求項1に記載の体液サンプリング装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−50274(P2007−50274A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278050(P2006−278050)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【分割の表示】特願平9−541160の分割
【原出願日】平成9年5月16日(1997.5.16)
【出願人】(397064195)ロシェ ダイアグノスティックス オペレイションズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【分割の表示】特願平9−541160の分割
【原出願日】平成9年5月16日(1997.5.16)
【出願人】(397064195)ロシェ ダイアグノスティックス オペレイションズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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