説明

体液処理用品およびこれを含む着用物品

【課題】 確実に体液を収容体内に流入させ、かつ、逆流を防止することができる体液処理用品と、これを含む着用物品とを提供する。
【解決手段】 体液処理用品1の収容体10は、第1および第2シート12,13がその周囲で接合され、袋状に形成されている。第1シート12には、厚さ方向に貫通する開口部11が形成されている。逆流防止手段20は、第1シート12の収容体10内部側に位置する平板状の弁体30と、弁体30が収容体10内部に脱落するのを防止するシート状の支持体40と、第1シート12と支持体40との間に介在するスペーサ50とを含む。弁体上面31の周縁部が、開口部11の収容体10内部側の開口部周縁で形成された弁座部14に水密に接触可能とされている。第1シート12と支持体40との間には、スペーサ開口53によってスペースが形成され、弁体30がスペーサ50の厚さ方向に移動可能に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体液処理用品およびこれを含む着用物品に関し、さらに詳しくは体液処理用品を有する使い捨てのおむつ、排泄トレーニングパンツ、失禁ブリーフ等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、おむつの表面シートから収容体内部へと排泄物が収容されるものとして、例えば、特許第4059374号公報(特許文献1)が公知である。特許文献1では、紙おむつは、表面シートと裏面シートと、これら表裏面シートの間に形成された吸収体とを含む。紙おむつの表面シートに多数の半開口を形成し、排泄された軟便等が半開口から吸収体側へと流入される。半開口を介して流入した軟便等は、吸収体によって吸収されるから、排泄物が表面シート上を流れておむつから漏れてしまうのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4059374号公報(JP 4059374 B2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような半開口は、表面シートの一部を切り欠かずに残したものであり、残した部分を基点にして半開口が開閉する。したがって、前記基点となる部分からは排泄物が流入されることがなく、基点となる部分の位置や範囲、着用者の排泄の場所、着用者の体勢によっては、排泄部が半開口から流入されずに、表面シート上に残ってしまう可能性がある。
また、半開口は、表面シートの一部を切り欠いたものであるので、その内側にも外側にも開閉可能であって、吸収体側から排泄物が逆流してきた際には、半開口は外側に開いてしまい、排泄物が表面シート上に流出する可能性がある。
【0005】
この発明では、確実に体液を収容体内に流入させ、かつ、逆流を防止することができる体液処理用品と、これを含む着用物品とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は第1の発明と第2の発明を含む。
第1の発明は、体液が流入する開口部を有するとともに、流入した体液を収容する収容体を含む体液処理用品の改良に関わる。
【0007】
この第1の発明は、前記体液処理用品において、前記収容体内部に収容された体液が、前記開口部から前記収容体外部へと流出するのを抑制する逆流防止手段を含み、前記開口部は、前記収容体の一部を厚さ方向に貫通するとともに複数形成され、前記逆流防止手段は、前記開口部に沿って形成された弁座部と、前記収容体内部から前記弁座部に対して水密に接触可能な弁体と、前記弁体が前記収容体内部に脱落するのを防止する支持体とを含み、前記弁座部と弁体との離間によって、前記体液が前記収容体内部へと流入可能であることを特徴とする。
【0008】
第1の発明の好ましい実施態様のひとつとして、前記弁座部と支持体との間には、スペースを維持するスペーサを形成し、前記弁体は、前記スペース内を移動可能に支持される。
【0009】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記弁体は、平板状であり、前記開口部の開口面積よりも広い面積を有する。
【0010】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記弁座部は、弁座体によって形成され、前記弁座体には、厚さ方向に貫通する弁孔が形成され、前記弁体は、前記弁孔の径よりも小さい小径部と、前記弁孔に水密に接触可能な接触部と、前記弁孔の径よりも大きい大径部とを含み、前記小径部と大径部との間に前記接触部が形成されるとともに、前記小径部が前記収容体外部側に位置し、前記大径部が前記収容体内部側に位置する。
【0011】
好ましい他の実施態様のひとつとして、上記弁体は、前記体液よりも比重が小さく設定される。
【0012】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記逆流防止手段は、前記開口部の周縁に重なって形成された弁体と、前記弁体と前記収容体とを接合する接合部とを含み、前記接合部は、前記開口部から外側へと延びる複数の線状を有し、前記接合部の間には前記開口部から前記収容体内部へと体液が流入可能な通路が形成される。
【0013】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記逆流防止手段は、作用機構が異なる複数種類が形成される。
【0014】
第2の発明は、縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前記縦方向に連なる前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを有するシャーシを含む着用物品の改良に関わる。
【0015】
この第2の発明は、前記着用物品において、少なくとも前記クロッチ域に位置する請求項1記載の体液処理用品を含み、前記体液処理用品の前記開口部が、前記身体側に開口することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明の体液処理用品において、収容体の開口部に収容体外部から内部への体液の流入が可能であるとともに、収容体内部から外部への体液の逆流を防止する逆流防止手段を形成することとしたので、体液処理用品から体液が漏れるのを抑制することができる。体液処理用品として、水密に接触可能な弁体と弁座部とを含むこととし、この弁体を開口部に形成することとしたので、弁体と弁座部とが接触したときには、収容体内部からの体液の漏れを抑制することができる。
【0017】
第2の発明の着用物品において、少なくともクロッチ域に体液処理用品を位置させ、収容体の開口部が、身体側に開口することとしたので、例えばおむつなどの着用物品を用いた場合には、排泄された尿を体液処理用品で保持することができる。したがって、着用物品からの尿等の漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の体液処理用品の平面図。
【図2】図1のII−II線断面の概要図。
【図3】図1の斜視図の一部。
【図4】体液処理用品の説明図。
【図5】おむつの斜視図。
【図6】おむつの展開平面図。
【図7】図6のVII−VII線断面の概要図。
【図8】実施例2の体液処理用品の平面図の一部。
【図9】図8のIX−IX線断面図。
【図10】実施例3の体液処理用品の平面図。
【図11】図10の斜視図の一部。
【図12】図11のXII−XII線断面の概要図。
【図13】体液処理用品の説明図。
【図14】実施例4の体液処理用品の平面図の一部。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図1〜4は、この発明の体液処理用品の一例を示したものであり、図1は、体液処理用品1の平面図、図2は図1のII−II線断面の概要図、図3は体液処理用品1の部分斜視図、図4は体液処理用品1の説明図である。図1および3では、説明のため、その一部を破断している。図示したように、体液処理用品1は、縦方向Yおよび横方向Xを有し、複数の開口部11を有する不透液性の収容体10と、開口部11に対応する位置に形成された逆流防止手段20とを含む。
【0020】
収容体10は、身体側に位置する第1シート12と、身体側とは反対側である着衣側に位置する第2シート13とを含み、これら第1および第2シート12,13がその周囲で接合され、袋状に形成されている。第1シート12には、厚さ方向に貫通するとともに、環状にくりぬかれた開口部11が形成され、この開口部11から体液である尿が流入するようにされている。隣接する開口部11は、縦方向Yおよび横方向Xにおいて互いに重ならないように配置されている。第1および第2シート12,13としては、不透液性のシート、例えば、プラスチックフィルムと繊維不織布とのラミネート、極細繊維の比較的高密度を有するメルトブロー繊維不織布等の繊維不織布を用いることができる。
【0021】
逆流防止手段20は、開口部11に対応するとともに、第1シート12の収容体10内部側に位置し尿等の体液よりも比重が小さい平板状の弁体30と、弁体30が収容体10内部に脱落するのを防止するシート状の支持体40と、第1シート12と支持体40との間に介在するスペーサ50とを含む。
【0022】
弁体30は、例えば、収容体10や支持体40よりも高剛性で、かつ、耐水性を有する繊維パネル、発泡プラスチック、紙質材料からなる不透液性シートを用いることができ、第1シート12側に位置する弁体上面31と、第2シート13側に位置する弁体下面32とを有する。弁体30は、複数の開口部11に対応させて、複数形成されるとともに、開口部11の開口面積よりもその面積が広く、弁体上面31の周縁部が、開口部11の収容体10内部側の開口部周縁で形成された弁座部14に水密に接触可能とされている。この実施形態において、開口部11の直径を約6mm、弁体30の直径を約12.5mmとしている。ただし、この寸法に限定されるものではなく、開口部11の数や位置、体液処理用品1の大きさ等に応じて適宜変更可能である。
【0023】
第1シート12と支持体40との間には、スペーサ50が配置されている。スペーサ50としては、例えば、繊維パネル、発泡プラスチック、紙質材料等、比較的保形性の高いものを用いることができる。スペーサ50は、ほぼ楕円形を有し、複数形成された開口部11のすべてを覆う面積を有し、長径方向を縦方向Yに一致させ、短径方向を横方向Xに一致させている。スペーサ50は、第1シート12側に位置するスペーサ上面51と、第2シート13側に位置するスペーサ下面52とを含み、スペーサ上面51が第1シート12に当接され、スペーサ下面52が支持体40に当接され、それぞれ接着剤等の接合手段によって接合されている。スペーサ50には、スペーサ上面51からスペーサ下面52へと貫通するスペーサ開口53が開口部11と対応させて形成され、スペーサ開口53には、弁体30がそれぞれ配置されている。支持体40としては、例えば、透液性の繊維不織布を用いることができる。
【0024】
第1シート12と支持体40との間には、スペーサ開口53によってスペース15が形成される。弁体30は、このスペース15においてスペーサ50の厚さ方向に移動可能に支持される。すなわち、スペーサ開口53の直径は、開口部11の直径よりも大きく、さらに、弁体30の直径よりも大きくされている。スペーサ50の厚さ寸法は、弁体30よりも大きくされている。具体的には、弁体30の厚さは、約0.5mmであり、スペーサ50の厚さ寸法は、約2mmである。
スペーサ下面52には、支持体40が接合されているので、弁体30が収容体10内部に脱落することがない。また、弁体30は、スペーサ50の周壁と、弁座部14と、支持体40とによって、その縦方向Yおよび横方向Xの移動が規制される。
【0025】
このような体液処理用品1の開口部11に、尿などの体液が排泄されると、体液の重量で弁体30が支持体40側に向かって押し下げられ、弁体下面32が支持体40に接触し支持される。弁座部14と、弁体上面31とが離間し、体液が弁体30の周囲を通ってスペース15へと流入する。さらに体液は、支持体40を通過して、収容体10の内部へと流入する。弁体30は、その全周囲において弁座部14と離間可能であり、その離間部分から体液を流入させることができる。したがって、速やかな体液の流入が可能であり、かつ、どの方向からも体液が流入可能であるので、体液が収容体10に流入されずにその外側に残ってしまうのを防止することができる。収容体10は、不透液性であり、袋状であるので、体液は、収容体10内で保持される。
【0026】
体液が収容体10内に保持された状態から、図4に示すように、収容体10がさかさまになったような場合では、体液が開口部11に向かって移動し、弁体30の弁体下面32は、支持体40を透過した体液に押圧されて、第1シート12側に移動する。弁体30は、弁体上面31が弁座部14に接触される。弁体30は、体液に押圧されているから、弁座部14との間で水密に接触可能であり、体液の収容体10外部への流出を防止することができる。
また、弁体30は、体液よりも比重が小さいので、体液に浮くことができる。収容体10が図2に示した状態で、尿などの体液が収容体10内に保持されている場合、弁体30は体液に浮くので、体液が開口部11から流出する前に、開口部11が弁体30で閉じられる。したがって、この場合でも体液が収容体10外部へ流出するのを防止することができる。
【0027】
弁体30と第1シート12との間に、わずかな体液が残存していたような場合には、体液の表面張力によって、弁体上面31と第1シート12の弁座部14とがより水密に接触可能であって、収容体10内部の体液が流出するのを防止する効果を向上させることができる。
開口部11および逆流防止手段20を複数形成することとしたので、何らかの理由でいずれかの弁体30が厚さ方向に移動不能となったとしても、逆流防止手段20の領域の全面的な機能不全を回避することができる。また、必要に応じて複数の開口部11および逆流防止手段20を広範囲に形成することも可能となり、確実に体液を収容体10内部に収容することができる。
【0028】
図5〜7は、上記のような体液処理用品1を含む着用物品の一例を示したものである。着用物品として、使い捨ておむつ2をその一例として説明する。
図5は、おむつ2の斜視図であり、図6は、図5の両側縁の接合を解いたときのおむつ2の平面図であり、図7は、図6のVII−VII線断面図である。図5および6において、説明のためその一部を破断し、各弾性部材をその収縮力に抗して伸長させ、おむつ2を平面状に保った状態を示している。おむつ2はシャーシ60と、吸液構造体70とを含む。シャーシ60は、縦方向Yに連なる前ウエスト域61、後ウエスト域62、これら前後ウエスト域61,62間に位置するクロッチ域63を含むとともに、横方向Xの寸法を二等分する縦仮想中心線P−Pと、縦方向Yの寸法を二等分する横仮想中心線Q−Qとを有している。
【0029】
シャーシ60は、身体側を形成するライナ64と、その反対側である着衣側を形成するアウタ65とを含み、縦方向Yに延びるシャーシ両側縁66と、横方向Xに延びるシャーシ前後端縁67,68とを含む。シャーシ両側縁66は、クロッチ域63において縦仮想中心線P−Pに向かって湾曲されている。ライナ64およびアウタ65は液透過性の繊維不織布等、当技術分野の慣用素材を用いることができる。
シャーシ両側縁66に沿って、少なくともクロッチ域63においてレッグ弾性体82が伸長状態で収縮可能に取り付けられている。レッグ弾性体82は、ライナ64とアウタ65との間であって、少なくともいずれか一方に接合されている。
【0030】
シャーシ前後端縁67,68に沿って、比較的幅広のウエスト弾性体81が横方向Xに伸長状態で収縮可能に取り付けられている。ウエスト弾性体81は、ライナ64のさらに身体側に接合されている。ウエスト弾性体81およびレッグ弾性体82として、伸縮性の繊維不織布を用いることができる。ただし、伸縮性繊維不織布に限られるものではなく、この種の物品の公知の弾性体を用いることができる。図5に示したように、シャーシ両側縁66は、前後ウエスト域61,62において互いに接合され、パンツ型のおむつ2が形成されている。
【0031】
シャーシ60には、少なくともクロッチ域63において、ライナ64およびアウタ65を厚さ方向に貫通するシャーシ開口69が形成されている。この実施形態では、シャーシ開口69は、クロッチ域63から前後ウエスト域61,62へと延びるほぼ楕円形に形成されている。これらライナ64とアウタ65との間には、シャーシ開口69を塞ぐようにトップシート17が配置されている。トップシート17には、横仮想中心線Q−Qよりもシャーシ前端縁67側に、ほぼ楕円形のトップ開口18が形成されている。トップ開口18は、トップシート17をその厚さ方向に貫通し、シャーシ開口69の開口面積よりも小さい面積を有している。
【0032】
アウタ65の着衣側には、シャーシ開口69を塞ぐように、すなわちトップシート17と重なるように吸液構造体70が形成されている。吸液構造体70は、身体側およびその反対側である着衣側と、吸液性芯材71と、この吸液性芯材71を覆う被覆シート72とを含み、横仮想中心線Q−Qよりもシャーシ前端縁67側であって、トップ開口18と重なるように吸液開口74が形成されている。吸液開口74は、吸液性芯材71をその厚さ方向に貫通している。吸液性芯材71はフラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物等、被覆シート72は液拡散性のティッシュペーパ等、それぞれ当技術分野の慣用素材を用いることができる。
吸液構造体70の着衣側には、体液処理用品1が取り付けられ、さらにその着衣側にはカバーシート73が取り付けられている。カバーシート73は、不透液性のフィルム等を用いることができる。また、カバーシート73のさらに着衣側に、繊維不織布を配置して肌触りを向上させることもできる。
【0033】
吸液構造体70と、カバーシート73との間に配置された体液処理用品1は、その第1シート12が吸液構造体70側に位置し、第2シート13がカバーシート73側に位置されている。体液処理用品1の開口部11は、横仮想中心線Q−Qよりもシャーシ前端縁67側に位置され、吸液構造体70の吸液開口74およびトップ開口18を介して、身体側に露出されている。開口部11は、着用者の外性器に対応するように位置している。
【0034】
上記のようなおむつ2では、着用者による排尿があった場合には、尿は開口部11から体液処理用品1の収容体10に収容される。体液処理用品1が図2の状態にあるときには、尿が弁体30の周囲を通って収容体10に収容され、着用者が横になったり、四つんばいになったりして図4の状態になったときには、弁体30と第1シート12の弁座部14とが水密に接触して、収容体10に収容された尿が着用者側に逆流するのを防止することができる。また、着用者が座ったりして体液処理用品1に体圧が作用した場合には、収容体10に収容された尿の水位が収容体10内で上昇するが、弁体30は、尿などの体液よりも比重を小さくしているので尿に浮くことができ、その結果、尿が収容体10から流出する前に弁体30の弁体上面21が第1シート12の弁座部14に接触する。したがって、この場合にも尿が身体側に逆流するのを防止することができる。体液処理用品1からの尿の逆流を防止することができるので、おむつ2からの尿漏れを抑制することができる。
【0035】
たとえ、尿が体液処理用品1の開口部11から外れて排泄されたり、収容体10から漏れたりしても、開口部11の周囲には吸液構造体70が存在するので、漏れた尿を吸液構造体70で吸収することができる。したがって、より一層おむつ1からの尿漏れを抑制することができる。また、弁体30を保持するスペース15は、スペーサ50によって形成されるが、弁体をシート片状にすることによりスペーサ50の厚さ方向の寸法を小さくすることができ、着用者に対する違和感を少なくすることができる。
【0036】
この実施形態で、おむつ2の吸液構造体70に吸液開口74を形成し、吸液開口74に体液処理用品1の開口部11を露出させる構成としているが、体液処理用品1全体を吸液構造体70の身体側に位置させるようにしてもよい。この場合には、シャーシ60と吸液構造体70との間に体液処理用品1を形成することができる。
【0037】
シャーシ60にはシャーシ開口69を形成することとしているが、必ずしもシャーシ開口69を形成しなくてもよい。この場合には、少なくとも体液処理用品1の開口部11が位置する部分を液透過性にすることによって、シャーシ60の着衣側に位置する体液処理用品1に尿などの体液を透過させることができる。また、シャーシ60の身体側に体液処理用品1を形成するようにしてもよい。いずれにしても体液処理用品1の開口部11を介して尿などの体液が収容体10に収容されるようにできればよい。収容体10として、不透液性のものを用いているが、必ずしも不透液性のものに限定されるものではない。開口部11を介して流入した体液を収容することができるものであれば透液性のものであってもよいし、例えば吸液性芯材で体液を保持するような場合も含む。ただし、第1シート12として透液性のシートを用いた場合であって、弁座部14を第1シート12の開口部周縁で構成する場合には、弁座部14と弁体30との水密な接触を可能とするために、少なくとも弁座部14は不透液性であることが必要である。例えば、第1シート12として透液性繊維不織布を用いた場合には、弁座部14を不透液性のフィルムを貼ることによって形成することができ、また、疎水性繊維不織布に親水処理を施したものを第1シート12として用いた場合には、弁座部14に親水処理を施さないことによっても形成することができる。
【実施例2】
【0038】
図8および9は、この発明の実施例2を示したものであり、図8は、体液処理用品1の部分平面図であって、説明のためにその一部を破断させたものであり、図9は、図8のIX−IX線断面図である。この実施例2では、体液処理用品1は、開口部11を第1シート12に直接形成するのではなく、開口部11を形成した保形部材90を別途備えることを特徴とする。この特徴以外の他の構成要素については、実施例1と同様であり、同様の構成要素については、詳細な説明を省略する。
【0039】
収容体10を形成する第1シート12には、保形部材90を取り付けるための取付開口16を形成している。取付開口16の第2シート13側には、開口部11を形成した保形部材90が、接着剤等の接合手段を介して接合されている。保形部材90は、例えば、繊維パネル、発泡プラスチック、紙質材料等、比較的保形性の高いものを用いて形成することができ、第1シート12よりも高い剛性を有する。保形部材90は、第1シート12側に位置する保形上面91と、第2シート13側に位置する保形下面92とを含み、保形上面91が第1シート12の取付開口16の周縁に接合され、保形下面92がスペーサ50のスペーサ上面51に接合されている。
【0040】
保形部材90に開口部11を形成し、これを第1シート12に形成することによって、第1シート12に直接開口部11を形成した場合に比べて、開口部11の形状を保持することができる。開口部11がゆがんだりしてその形状が崩れてしまった場合には、弁体30が弁座部14に密着し難く、それらの間に隙間ができてしまう可能性がある。隙間ができると、そこから尿などの体液が漏れる可能性があるが、開口部11の形状を保持することによって、弁体30がより確実に水密に接触し、体液の漏れを防止することができる。この実施例で、弁座部14は、保形部材90の保形下面91によって形成されている。
【0041】
保形部材90に開口部11を形成し、これを第1シート12に接合すればよいので、第1シート12に直接開口部11を形成する場合に比べて、その形成が容易になる。すなわち、保形部材90は第1シート12よりも狭い面積を有し、かつ、剛性が高いので、その扱いが容易であり、開口部11の形成も容易にできる。また、保形部材90とスペーサ50とは別部材としているが、これらを同一の部材で形成するようにしてもよい。
保形部材90は、第1シート12の第2シート13側、すなわち、収容体10内部側に取り付けられているが、その反対側である収容体10外部側に取り付けられていてもよい。このような体液処理用品1は、実施例1のようにおむつ2のような着用物品に使用することができる。
【実施例3】
【0042】
図10〜13は、この発明の実施例3を示したものであり、図10は体液処理用品1の全体平面図、図11は図10の部分斜視図、図12は図11のXII−XII線断面の概要図、図13は説明図である。図示したように、体液処理用品1は、不透液性の収容体10と、収容体10に形成された複数の開口部11と、開口部11に形成された逆流防止手段20とを含む。この実施形態では、逆流防止手段20の構成が実施例1と異なるものであって、その他の構成要素は実施例1と同様である。同様の構成要素については、その説明を省略する。
【0043】
逆流防止手段20は、弁座体21と、弁体30とを含む。弁座体21は、開口部11に沿って取り付けられ、弁座体21の外周面22で第1シート12に接合されている。弁座体21のほぼ中心には、それを厚さ方向に貫通する第1弁孔23と第2弁孔24とが形成されている。第1弁孔23は、第2弁孔24よりもその径が小さく、第2弁孔24が第1弁孔よりも第2シート13側に位置されている。第1弁孔23と第2弁孔24とはその径が異なるから、これらの間には、段差が形成され、この段差によって弁座部25が形成される。また、第2弁孔24は、収容体10内部に向かって延びる周壁を形成し、この周壁がスペース15を形成するスペーサ50として機能する。
【0044】
第2弁孔24の第2シート13側には、これを覆うように支持体40が接着剤等の接合手段によって接合されている。支持体40は透液性を有している。具体的には、樹脂製プレートに複数の透液孔41を形成して、透液性を付与している。この支持体40としては、透液性のものであれば特に限定するものではなく、例えば透液性の不織布等を用いてもよい。
【0045】
スペース15には、弁体30が厚さ方向に移動可能に支持されている。弁体30は、第2弁孔24から第1弁孔23に向かって延びる柱状を有している。弁体30は、第1弁孔23であって弁座部25の径よりも小さい小径部33と、弁座部25の径よりも大きく、小径部33よりも収容体10内部側に位置する大径部35と、これら小径部33と大径部35との間にあって、弁座部25に接触可能な接触部34とを含む。接触部34は、弁座部25に対して水密に接触可能としている。接触部34が、弁座部25に対して水密に接触可能とするために、例えばポリウレタン等の柔軟性を有する樹脂によって形成されることが望ましい。このような弁体30は、収容体10内部側に位置する平面な底部36を含む。
【0046】
上記のような弁体30は、体液よりも比重が小さいものを用いている。したがって、収容体10内部に体液が溜まったときには、体液から弁体30が浮上可能である。弁体30の接触部34から底部36までの高さ寸法h1は、第2弁孔24で形成されるスペーサ50の高さ寸法h2、すなわち弁座部25から支持体40までの高さ寸法よりも小さくなるようにしている。したがって、図12に示したように、支持体40を下方に、弁体30を上方に位置させたときには、弁体30の接触部34は、弁座部25から離間し、弁体30の底部36が支持体40に接触して載置される。
【0047】
弁座体21は、好ましくは開口部11の形状を保持可能な程度の硬度を有する樹脂等によって形成される。ここで、開口部11の形状を保持可能な程度の硬度とは、弁座体21に着用者の体圧が作用しても、少なくとも第1および第2弁孔23,24の形状が維持される程度ものをいう。第1および第2弁孔23,24の形状を維持することによって、弁体30と弁座部25とが接触したときに隙間を形成されにくく、水密な接触を可能とする。
【0048】
上記のような体液処理用品1において、図12に示した状態では、弁体30が弁座部25から離間しているから、第1弁孔23に向かって尿等の体液が排泄されると、これが弁体30の小径部33の周囲を通って、支持体40の透液孔41を介して収容体10内部に収容される。
【0049】
図12に示した状態から、図13に示したように、体液処理用品1が倒れた状態になった場合には、体液が支持体40の透液孔41を介して弁体30の底部36に到達し、この体液によって弁体30が収容体10外部側に押圧される。また、弁体30は、比重が体液よりも小さいことによって体液から浮上するように作用するから、この浮上によっても収容体10外部側に押圧される。弁体30が収容体10外部側へと押圧されると、接触部34が弁座部25に接触する。弁体30は、柔軟性を有するので、水密に弁座部25に接触可能であり、体液が収容体10内部から外部へと流出するのを防止することができる。
また、収容体10がさかさまになった場合には、弁体30の底部36が尿によって押圧されるとともに、収容体10の自重によって接触部34を弁座部25に接触させ、体液が収容体10外部に流出するのを防止することができる。
【0050】
上記のような体液処理用品1において、図12に示したように、小径部33の先端から接触部34までの高さ寸法h3は、第1弁孔23の高さ寸法h4よりも短くすることが好ましい。このような寸法関係にすることで、弁体30の接触部34が弁座部25に接触した場合であっても、その先端が第1弁孔23から突出することがなく、弁体30の先端が着用者の肌に接触して肌トラブルを引き起こすのを防止することができる。また、弁体30を、柔軟性のある樹脂製にしているので、仮に弁体30が着用者に接触した場合であっても、その衝撃を緩和することができる。
上記のような体液処理用品1は、例えば、実施例1に示した着用物品に取り付けて使用することができる。
【0051】
弁座体21と支持体40とは、それぞれ別々の部材によって形成されて接合されることとしているが、これらが一体化されて形成されていてもよい。弁座体21および支持体40が一体化されて形成される場合には、これらが同一の材料で形成される単一体とすることもできる。
【実施例4】
【0052】
図14は、この発明の実施例4を示したものであり、体液処理用品1の部分平面図であって、説明のためにその一部を破断させたものである。この実施例4では、体液処理用品1は、大きさの異なる開口部を形成し、異なる作用機構を有する複数種類の逆流防止手段を備えることを特徴とする。この特徴以外の他の構成要素については、実施例1および2と同様であり、同様の構成要素については、詳細な説明を省略する。
【0053】
収容体10を形成する第1シート12には、第1の開口部11aが形成されるとともに、開口部11aに対応する第1の逆流防止手段が形成されている。第1の逆流防止手段は、第1の開口部11aに対向して取り付けられたプラスチックフィルム等のシート状の弁体30aと、弁体30aと第1シート12とを互いに接合する接合部26とを含む。弁体30aと第1シート12とは、加熱・加圧によって熱溶着され接合部26を形成することができる。また、ホットメルト接着剤等によっても接合部26を形成することができる。
【0054】
接合部26は、弁体30aと第1シート12との積層部分であって、開口部11aの周縁に沿って全域に形成されている。接合部26は、開口部11aの縁からその外周側に向かって線状に延びるとともに、V字型を有している。具体的には、接合部26の内端26aでは、二本の接合線が互いに接触し、外端26bでは、それらが互いに離間している。隣接する接合部26の間には体液が収容体10内に流入可能する通路27が形成される。なお、接合部26は、二本の接合線の内端26aが接するようにされているが、必ずしもこれらが接する必要はなく、離間していてもよい。ただし、そのような場合であっても、内端26aが互いに接近するように傾斜していることが好ましい。
【0055】
弁体30aには、第2の開口部11bが複数形成されるとともに、これら開口部11bに対応する第2の逆流防止手段が形成されている。第2の逆流防止手段は、開口部11bに対応するとともに、第1シート12の収容体10内部側に位置し尿等の体液よりも比重が小さい平板状の弁体30bと、弁体30bが収容体10内部に脱落するのを防止するシート状の支持体40と、第1シート12と支持体40との間に介在するスペーサ50とを含む。弁体30bは、弁体30aの内面に接触可能であり、このように接触することによって、開口部11bを塞ぐことができる。支持体40およびスペーサ50は、第1の実施例と同様である。
【0056】
このような体液処理用品1に、尿などの体液が排泄されると、体液は、第1の開口部11aと、第2の開口部11bとの双方から収容体10内へと流入可能となる。すなわち、第1の開口部11aでは、体液の重量で第1シート12と弁体30aとが離間され、接合部26の間に複数の通路27が形成される。体液は、この通路27を介して収容体10へと流入される。通路27は、開口部11aの周囲全域に亘って形成されているから、着用者の体勢等にかかわらず、体液を収容体10内へと収容することができる。
【0057】
第2の開口部11bでは、体液の重量で弁体30bが支持体40側に向かって押し下げられ、弁体30bと弁体30aとが離間し、体液が弁体30bの周囲を通って収容体10内へと流入する。仮に、第2の開口部11bに収容されず、第1の弁体30a上に体液が残ってしまったとしても、この体液は第2の開口部11bの周囲に形成された第1の開口部11aによって収容体10内部へと流入可能である。このように大きさの異なる開口部11a,11bを形成することによって、収容体10内部へと体液を確実に流入させることができる。
【0058】
体液が収容体10内に保持された状態から、収容体10がさかさまになったような場合では、体液が開口部11に向かって移動し、第2の弁体30bは、支持体40を透過した体液に押圧されて、第1の弁体30a側に移動する。弁体30bが、体液に押圧されて弁体30aに水密に接触可能であり、これによって体液の収容体10外部への流出を防止することができる。
【0059】
収容体10内部側から外部側へと、第1の開口部11aを介して体液が流出しようとした場合には、通路27は、接合部26の外端26bによって流路が狭くされているから、その流出が妨げられる。また、弁体30aと第1シート12の間に僅かに残った体液によって、これらシートが互いに密着し、流路が閉じられるので、より一層体液の流出を防止することができる。上記のように、異なる作用機構を有する複数種類の逆流防止手段を形成することとしたので、それぞれの特性に応じた逆流防止の効果を発揮することができる。
【0060】
上記複数種類の逆流防止手段を形成する場合には、この実施例のタイプに限られることなく、さまざまな組み合わせが可能である。また、大きさの異なる開口部を形成することとしているが、逆流防止手段の選択によって、これも種々の組み合わせが考えられる。
【符号の説明】
【0061】
1 体液処理用品
2 おむつ(着用物品)
10 収容体
11 開口部
11a 開口部
11b 開口部
14 弁座部
15 スペース
20 逆流防止手段
25 弁座部
26 接合部
27 通路
30 弁体
30a 弁体
30b 弁体
33 小径部
34 接触部
35 大径部
40 支持体
50 スペーサ
60 シャーシ
61 前ウエスト域
62 後ウエスト域
63 クロッチ域
69 シャーシ開口
70 吸液構造体
74 吸液開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液が流入する開口部を有するとともに、流入した体液を収容する収容体を含む体液処理用品において、
前記収容体内部に収容された体液が、前記開口部から前記収容体外部へと流出するのを抑制する逆流防止手段を含み、前記開口部は、前記収容体の一部を厚さ方向に貫通するとともに複数形成され、
前記逆流防止手段は、前記開口部に沿って形成された弁座部と、前記収容体内部から前記弁座部に対して水密に接触可能な弁体と、前記弁体が前記収容体内部に脱落するのを防止する支持体とを含み、前記弁座部と弁体との離間によって、前記体液が前記収容体内部へと流入可能であることを特徴とする前記体液処理用品。
【請求項2】
前記弁座部と支持体との間には、スペースを維持するスペーサを形成し、前記弁体は、前記スペース内を移動可能に支持される請求項1記載の体液処理用品。
【請求項3】
前記弁体は、平板状であり、前記開口部の開口面積よりも広い面積を有する請求項1または2記載の体液処理用品。
【請求項4】
前記弁座部は、弁座体によって形成され、前記弁座体には、厚さ方向に貫通する弁孔が形成され、
前記弁体は、前記弁孔の径よりも小さい小径部と、前記弁孔に水密に接触可能な接触部と、前記弁孔の径よりも大きい大径部とを含み、前記小径部と大径部との間に前記接触部が形成されるとともに、前記小径部が前記収容体外部側に位置し、前記大径部が前記収容体内部側に位置する請求項1または2記載の体液処理用品。
【請求項5】
前記弁体は、前記体液よりも比重が小さく設定される請求項1〜4のいずれかに記載の体液処理用品。
【請求項6】
前記逆流防止手段は、前記開口部の周縁に重なって形成された弁体と、前記弁体と前記収容体とを接合する接合部とを含み、前記接合部は、前記開口部から外側へと延びる複数の線状を有し、前記接合部の間には前記開口部から前記収容体内部へと体液が流入可能な通路が形成される請求項1記載の体液処理用品。
【請求項7】
前記逆流防止手段は、作用機構が異なる複数種類が形成される請求項1〜6のいずれかに記載の体液処理用品。
【請求項8】
縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前記縦方向に連なる前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを有するシャーシを含む着用物品において、
少なくとも前記クロッチ域に位置する請求項1〜7のいずれかに記載の体液処理用品を含み、
前記体液処理用品の前記開口部が、前記身体側に開口することを特徴とする前記着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−246889(P2010−246889A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228680(P2009−228680)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】