説明

体液処理用品およびその製法

【課題】 着用状態におけるよれを抑制することができる体液処理用品およびその製法を提供する。
【解決手段】 パンティライナ1は、内外面シート2,3と、これらの間に位置する吸液性の芯材4と、外面シート3を覆う漏れ防止シート5とを含む。内外面シート2,3として熱可塑性合成樹脂を含む繊維不織布を用い、芯材4としてフラッフパルプを用いている。内面シート2には、外面シート3に向かい、縦方向Yおよび横方向Xにそれぞれ交差するように延び、格子模様を形成している複数の圧搾条溝7が形成される。圧搾条溝7は、内面シート2から芯材4に向かって形成された第1部分と、第1部分の下部から外面シート3に向かって両側面の間隔が次第に小さくなるように形成された有底の第2部分とを有し、第2部分の底部では、内面シート2を形成する繊維と外面シート3を形成する繊維との少なくとも一部が互いに接触し、これらが溶着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生理用ナプキン、尿吸収パッド、パンティライナ等の体液処理用品であって、特にその表面から厚さ方向に凹条が形成された体液処理用品、および、その製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキンなど体液処理用品に溝を形成したものが知られている。例えば、特許文献1によれば、体液処理用品は、表面シートと、裏面シートと、これら表裏面シートに挟まれた吸収体と、表面シートから吸収体へと圧縮して形成された溝とを有している。表面シートと吸収体との間には、ホットメルト接着剤が塗布されている。
【0003】
上記のような体液処理用品は、エンボスロールによって溝が形成される。すなわち、凸部を有するエンボスロールとこれに対向するバックアップロールとの間に体液処理用品を通過させることによって、溝が形成される。このような溝では、ホットメルト接着剤が溶融し、表面シートと吸収体とが接合されている。表面シートと吸収体との接合によって、これらの密着性を高め、表面シート上の液をより効率的に吸収体側に受け渡すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2005−218648号公報(JP 2005−218648 A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような特許文献1によれば、溝は、裏面シートまで到達することなく、溝の底部と裏面シートとの間には、吸収体の芯材が介在されている。このような体液処理用品は、芯材が縦方向および横方向に移動可能であるから、その着用状態において芯材が移動し、吸収体のよれが生じる可能性がある。
【0006】
この発明は、着用状態におけるよれを抑制することができる体液処理用品およびその製法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、第1および第2の発明を有する。
第1の発明は、縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前記身体側に位置する透液性の内面シートと、前記反対側に位置する外面シートと、これらシートの間に位置する吸液性の芯材とを含み、前記内面シートには圧搾条溝が形成される体液処理用品の改良に関わる。
前記吸液性の芯材は、特別な手段により、互いに交絡、溶着または融着等されることがなく、また、他のシート等で覆われることがないものである。
【0008】
第1の発明は、前記体液処理用品において、前記内面シートおよび前記外面シートは、繊維不織布によって形成され、前記圧搾条溝は、前記内面シートの前記縦方向および前記横方向の全域に亘って形成されるとともに、前記内面シートから前記外面シートに向かって形成された第1部分と、前記第1部分から前記外面シートに向かって前記第1部分に連なるように形成された第2部分とを含み、前記第2部分では、前記内面シートの繊維と前記外面シートの繊維との少なくとも一部が互いに溶着されていることを特徴とする。
【0009】
この発明の実施態様のひとつとして、前記内面シートおよび前記外面シートは、熱可塑性合成樹脂を含む繊維不織布によって形成される。
【0010】
この発明の実施態様のひとつとして、前記第2部分は、前記圧搾条溝において前記縦方向および前記横方向の少なくともいずれかに間欠的に複数並んで形成される。
【0011】
この発明の実施態様のひとつとして、前記圧搾条溝は、前記横方向の長さ寸法を二等分する仮想縦中心線および前記縦方向の長さ方向を二等分する仮想横中心線に対して傾斜する。
【0012】
この発明の実施態様のひとつとして、前記圧搾条溝は、前記第1部分の少なくとも一部に重なる凹部をさらに有する。
【0013】
他の実施態様のひとつとして、前記芯材は、単位面積当たりの質量が70〜350g/mである。
【0014】
他の実施態様のひとつとして、前記圧搾条溝は、前記内面シートの面積の10〜30%である。
【0015】
他の実施形態のひとつとして、前記内面シートは、短繊維を含む。
【0016】
第2の発明は、熱可塑性合成樹脂を含む繊維不織布によって形成される第1および第2ウェブと、これらウェブの間に配置された吸液性の芯材とを含む積層ウェブに、圧搾条溝を形成する製法の改良に関わる。
【0017】
第2の発明は、前記製法において、前記第1ウェブに、前記芯材および前記第2ウェブを積層する工程と、溝形成手段によって、前記第1および第2ウェブと芯材とによって形成された積層ウェブを圧縮するとともに前記圧搾条溝を形成する工程と、シール手段によって、前記第1および第2ウェブを前記芯材の周囲で互いに接合しシール部を形成する工程と、切断手段によって、前記第1および第2ウェブを前記シール部の周囲で切断する工程とを含み、前記溝形成手段は、第1凸部および前記第1凸部から突出する第2凸部が形成されたエンボスロールと、これに対向するとともに表面が平滑なバックアップロールとを有し、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールによって、前記積層ウェブが加圧・加熱され、前記第2凸部が対応する位置で前記第1および第2ウェブの繊維の少なくとも一部が熱溶着されることを特徴とする。
前記吸液性の芯材は、溝形成手段によって圧搾条溝を形成する工程の前においては、特別な手段により、互いに交絡、溶着または融着等されることがなく、また、他のシート等で覆われることがないものである。さらに、芯材は、前記溝形成手段によって圧搾条溝を形成する工程の前に、プレス等の特別な処理がされないものである。
【発明の効果】
【0018】
体液処理用品を形成する内外面シートの繊維の一部は、第2部分において互いに溶着される。したがって、これら内外面シートの間に位置する吸液性の芯材の移動が規制され、体液処理用品がよれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態の体液処理用品の一例であるパンティライナの平面図。
【図2】(a)図1のIIで示した領域の拡大概要図。(b)図2(a)のIIB−IIB線断面概要図。(c)図2(b)のIICで示した領域の拡大概要図。
【図3】体液処理用品の製法を説明するための説明図。
【図4】エンボスロールのパターン図。
【図5】(a)図4のVで示した領域の一部拡大図。(b)図4(a)のVB−VB線断面図。
【図6】他の実施形態のパンティライナの平面図。
【図7】他の実施形態のパンティライナの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の体液処理用品の一例としてパンティライナ1を用いて説明する。図1は、パンティライナ1の平面図、図2(a)は、図1のIIで示した領域の拡大であってその概要を示す図、図2(b)は、図2(a)のIIB−IIB線断面であってその概要を示す図、図2(c)は、図2(b)のIICで示した領域の拡大であってその概要を示す図である。パンティライナ1は、縦方向Yおよび横方向Xと、横方向Xの長さ寸法を二等分する仮想縦中心線P−Pと、縦方向Yの長さ寸法を二等分する仮想横中心線Q−Qとを有し、仮想縦中心線P−Pおよび仮想横中心線Q−Qに対してほぼ対称に形成されている。
【0021】
パンティライナ1は、着用者の身体側に位置する内面シート2と、その反対側である着衣側に位置する外面シート3と、これら内外面シート2,3の間に位置する吸液性の芯材4と、外面シート3を覆う漏れ防止シート5とを含む。内面シート2、外面シート3および漏れ防止シート5は、ほぼ同形同大を有し、芯材4は、それらよりもひと回り小さくされている。内面シート2と芯材4との間、芯材4と外面シート3との間、外面シート3と漏れ防止シート5との間には、それぞれ図示しないホットメルト接着剤が適宜パターン、例えば、縞、格子、平行線、散点等のパターンで塗布されている。また、縞、格子、平行線の場合には、ジグザグ、スパイラル等のパターン要素であってもよい。
【0022】
内面シート2は、透液性を有するとともに、熱可塑性合成樹脂を含む繊維不織布であって、エアスルー繊維不織布、ポイントボンド繊維不織布、スパンボンド繊維不織布などを用いることができる。熱可塑性合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらの複合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることができる。内面シート2の単位面積当たりの質量は、約15〜60g/m、好ましくは約18〜45g/m、厚さを約0.15〜0.60mmとすることができる。
【0023】
外面シート3は、熱可塑性合成樹脂を含む繊維不織布であって、スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)繊維不織布、エアスルー繊維不織布、ポイントボンド繊維不織布、スパンボンド繊維不織布等を用いることができ、単位面積当たりの質量は約15〜60g/m、好ましくは約18〜45g/mとすることができる。熱可塑性合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレンを用いることができるが、好ましくは内面シート2に使用した樹脂と同種のものとする。外面シート3は、透液性であっても不透液性であってもよい。
【0024】
芯材4は、単位面積当たりの質量が約70〜350g/m、好ましくは約80〜200g/m、この実施形態では約150g/mのフラッフパルプを用いている。芯材4としては、平均繊維長が約0.5〜3.0mmのパルプ繊維を用いることが望ましく、天然パルプ繊維のほか、合成パルプ繊維を用いることもできる。また、これらパルプに超吸収性ポリマー粒子等の吸収性材料を混合することもできる。さらには、保形性、毛管作用促進等のため、熱可塑性合成繊維(ステープルファイバー)を適宜量、例えば5〜25質量%を用いることもできる。この場合、熱可塑性合成繊維の平均繊維長は、パルプ繊維の平均繊維長よりも長く、かつ、約50mm以下とすることが好ましい。上記のような芯材4は、特別な手段により、互いに交絡、溶着または融着等されることがなく積層されたものであって、また、他のシート等で覆われることがないものである。
【0025】
漏れ防止シート5としては、単位面積あたりの質量が約21g/mの非通気性ポリエチレンフィルムを用いている。この漏れ防止シート5は、芯材4に吸収された体液の漏れを防止するためのものであって、例えば単位面積当たりの質量が約30〜60g/mの透湿性プラスチックフィルムや、単位面積当たりの質量が約25〜50g/mのスパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)繊維不織布等を用いることもできる。
【0026】
芯材4の周囲では、内面シート2の外周に沿ってシール部6が形成され、内面シート2、外面シート3および漏れ防止シート5が互いに接合されている。シール部6は、内面シート2、外面シート3および漏れ防止シート5が、それぞれ熱溶着することによって形成されるとともに、各シートの間に位置するホットメルト接着剤(図示せず)によってその接合強度が強化されている。
【0027】
内面シート2には、外面シート3に向かって複数の圧搾条溝7が形成されている。圧搾条溝7は、縦方向Yおよび横方向Xにそれぞれ交差するように延び、格子模様を形成している。図2(a)(b)に示したように、圧搾条溝7は、内面シート2から芯材4に向かって形成された第1部分8と、第1部分8の下部8aから外面シート3に向かって両側面の間隔が次第に小さくなるように形成された有底の第2部分9とを有している。第1および第2部分8,9が形成されていない部分の厚さ方向の長さ寸法t1は、約1.4〜1.6mmであって、第1部分8の下部8aから外面シート3までの長さ寸法、すなわち第2部分9の深さ寸法t2は約0.55〜0.70mm、第2部分9の底面9aから外面シート3までの長さ寸法、すなわち深さ寸法t3は約0.09〜0.15mmである。寸法t3は、寸法t1の約1/10とされている。これら寸法は、パンティライナ1を液体窒素に含浸させ、凍結させた後、剃刀で切断して、切断面における各厚さを電子顕微鏡(キーエンス社製 VE7800)で測定して求めた。測定は凍結したサンプルを常温に戻して解凍した後に行った。
【0028】
第2部分9の底部9aでは、圧搾条溝7の長さおよび幅方向に隆起部9bが形成されている。この隆起部9bは、底部9aよりもフラッフパルプ繊維等の圧縮密度が低く、体液が圧搾条溝7に沿って流動しすぎるのを抑制することができる。図2(c)に例示したように、第2部分9の底部9aでは、内面シート2を形成する繊維と外面シート3を形成する繊維との少なくとも一部が互いに接触し、これらが溶着された溶着部Wが形成されている。第2部分9が形成された部分では、溶着部Wによって内外面シート2,3が接合されているから、芯材4の移動が妨げられ、パンティライナ1の着用時において、芯材が外面シート3に対して移動し、よれるのを防止することができる。なお、寸法t3は、内外面シート2,3が互いに溶着している部分では、ゼロとなるから、上述した値は、溶着部分および非溶着部分の寸法の平均値である。また、芯材4として、熱可塑性合成繊維を含む場合には、これら繊維が互いに溶着し、網目を構成するから、より一層、フラッフパルプ等の芯材4の移動が規制される。
【0029】
上記のような圧搾条溝7が形成された部分では、圧搾条溝7が形成されていないその周囲に比べて、芯材4が圧縮されて密度が高くなっている。したがって、内面シート2に排泄された体液は、芯材4の密度の高い圧搾条溝7に流入しやすく、速やかに芯材4の底面側へと体液を移行することができる。
また、第2部分9が形成された部分では、芯材4がその周囲に押し退けられるようにされて、第2部分9の周囲では、芯材4の密度がさらに高くなっている。したがって、体液は、芯材4へと速やかに吸収される。すなわち、内面シート2の体液は、圧搾条溝7に集中して流れるとともに、第2部分9ではその周囲に拡散するようになる。したがって、速やかに身体から体液を遠ざけ、その遠ざけられたところで保持される。
【0030】
第2部分9では、内面シート2と外面シート3との一部が互いに溶着されているが、溶着部W以外の部分であってシート2,3の間には、少量の芯材が位置している。したがって、第2部分9の底面9aにおいても体液を吸収することができ、さらに、その周囲の領域の芯材へと体液を拡散することができるから、第2部分9に体液が留まるのを防止することができる。特に芯材4として、疎水性繊維を含む場合には、毛細管作用を促進させ、底面9aで体液の流れを遮ることなく、繊維に沿って体液を拡散することができる。さらに、これら繊維が隣接する底部9aにまたがって位置する場合には、体液の拡散をより一層促進することができる。
【0031】
第1および第2部分8,9によって形成された圧搾条溝7は、仮想縦中心線P−Pおよび仮想横中心線Q−Qのそれぞれに対して交差するように、格子模様に形成されている。すなわち、仮想縦中心線P−Pおよび仮想横中心線Q−Qには平行になっていない。パンティライナ1の着用時には、横方向Xの両側が鼠蹊部によってその内側へと押し付けられるので、圧搾条溝7が仮想縦中心線P−Pに平行に形成された場合には、パンティライナ1が圧搾条溝7に沿って曲がり易く、着用者の肌との間に隙間を形成してしまうことがある。また、圧搾条溝7が仮想横中心線Q−Qに平行に形成された場合には、上記のような鼠蹊部の押し付けに対して剛性が大きくなり、違和感を与えてしまうことがある。しかし、この実施形態のパンティライナ1では、仮想縦中心線P−Pおよび仮想横中心線Q−Qに平行にならないようにすることによって、着用者に密着するとともに、着用感を良好にすることができる。
【0032】
圧搾条溝7は、内面シート2の縦方向Yおよび横方向Xのほぼ全域に形成されるとともに、内面シート2の面積の約10〜30%であることが望ましい。約10%よりも小さい場合には、芯材14の固定が不十分となり、約30%よりも大きい場合には、剛性が大きくなって製品が硬くなる可能性がある。第2部分9は、圧搾条溝7の面積の約10〜70%であることが望ましい。約10%よりも小さい場合には、内外面シート2,3の接着強度が不足し、約70%よりも大きい場合には、内外面シート2,3が破断しやすくなる。
第2部分9は、圧搾条溝7において間欠的に形成されることとしている。このように間欠的に形成することによって、内外面シート2,3の破断を防止することができる。さらに、第2部分9が圧搾条溝7において、横方向Xに複数並んで形成され、または、縦方向Yに複数並んで形成されることによって、内外面シート2,3が部分的に強く接合されるのを防止することができ、より一層、これらシート2,3の破断を防止することができる。
【0033】
なお、漏れ防止シート5の着衣側に、着用者の下着等にパンティライナ1を仮止めするための仮止め手段を形成し、これを被覆シートで覆うようにすることもできる。仮止め手段としては、ホットメルト接着剤等を用いることができ、被覆シートとしてプラスチックフィルム等を用いることができる。
【0034】
図3は、上記のようなパンティライナ1の製造装置10の概略を例示したものである。これら製造装置10では、第1〜第5工程によって、パンティライナ1を製造することができる。第1工程では、パンティライナの内面シート2を形成する内面ウェブ12に、パンティライナ1の芯材4を形成する芯材14が機械方向MDに一定間隔で積層されるとともに、搬送ローラ16によって機械方向MDに搬送されたパンティライナ1の外面シート3を形成する外面ウェブ13が積層される。芯材14は、特別な手段により、互いに交絡、溶着または融着等されることなく図示しない積層手段によって積層されたものであって、また、他のシート等で覆われることがないものである。内面ウェブ12、芯材14、外面ウェブ13のそれぞれの間には、図示しないホットメルト接着剤が塗布されている。
【0035】
第2工程では、内外面ウェブ12,13と芯材14との積層体に、溝形成手段17によって圧搾条溝7が形成される。溝形成手段17は、エンボスロール20と、これに対向するとともに表面が平滑なバックアップロール21とを有する。エンボスロール20およびバックアップロール21は、図示しないヒータで約80〜140℃、好ましくは約90〜130℃に加熱されている。この実施形態では約115〜120℃に加熱されている。これらエンボスロール20とバックアップロール21との間に、芯材14が挟持された内外面ウェブ12,13の積層体が通過される。これら積層体は、約0.10〜0.5MPa、好ましくは約0.15〜0.40MPa、この実施形態では約0.25MPaの圧力で、エンボスロール20とバックアップロール21とによって加圧される。なお、上記圧力は、175mm幅のロール軸1本に対する圧力値である。
【0036】
図4は、エンボスロール20のパターンを例示した図であり、図5(a)は、図4のエンボスロール20のVで示した領域の拡大図であり、図5(b)は、図5(a)のVB−VB線断面図である。エンボスロール20の表面20aには、凸条40が複数形成されている。凸条40は、エンボスロール20の表面20a全体において機械方向MDおよびこれに交差する交差方向CDに離間して複数形成され、全体的に格子模様を形成している。凸条40は、エンボスロール20の表面20aから突出する第1凸部18と、第1凸部18からさらに突出する第2凸部19とを有している。
【0037】
第1凸部18は一辺が約1.0mmの矩形を有し、第2凸部19は、一辺が約0.5mmの矩形を有している。第1凸部18と第2凸部19とは、互いの中心を一致させて形成され、傾斜面22によって連続されている。このようなエンボスロール20とバックアップロール21とによって、内外面ウェブ12,13および芯材14の積層体には、第1および第2凸部18,19に対応する第1および第2部分8,9が形成される。
【0038】
第1凸部18および第2凸部19は、エンボスロール20の全体に形成されているが、エンボスロール20とバックアップロール21との間に搬送される内外面ウェブ12,13には、芯材14が挟持され、この芯材14が位置する部分が厚くなっているから、芯材14が位置する部分のみが加熱・加圧される。第1凸部18では、内面ウェブ12が熱溶融し隣接する芯材14と溶着し、これらの間にあるホットメルト接着剤も溶融され、より強固に内面ウェブ12と芯材14とを接合する。第2凸部19ではその面積が小さく、かつ、第1凸部18との間で傾斜面22を形成しているから、芯材14をその周囲に押し退けるようにしながら、内面ウェブ12と外面ウェブ13とが接触し、これらが加熱・加圧される。第2凸部19では、芯材14の全てを押し退けるものではないが、少なくともその一部を押し退けることによって芯材14の間には空隙が形成され、この空隙で内面ウェブ12と外面ウェブ13とを接触可能とすることができる。特に芯材14は、その単位面積当たりの質量が約80〜200g/mと、比較的疎な状態にされているから、第2凸部19によって容易にその周囲に押し退けられる。なお芯材14の単位面積当たりの質量が約80g/mよりも小さい場合には、量産の際に均一になりにくく、約200g/mよりも大きい場合には、第2凸部19で芯材14を押し退けることが困難となるからである。
【0039】
図3に示したように、第3工程では、漏れ防止シート5を形成する漏れ防止ウェブ15を搬送ロール16によって搬送し、外面ウェブ13に接合する。漏れ防止ウェブ15は、外面ウェブ13の芯材14積層面とは反対側の面に供給される。漏れ防止ウェブ15には、図示しないホットメルト接着剤が塗布されて、外面ウェブ13に漏れ防止ウェブ15を接合することができる。
【0040】
第4工程では、シール手段23によって、内面ウェブ12と外面ウェブ13と漏れ防止ウェブ15とを互いに接合し、パンティライナ1のシール部6を形成する。シール手段23は、突起部24を有するシールロール25と、これに対向するバックアップロール26とを有し、これら両ロール25,26は図示しないヒータで約80〜140℃に加熱されている。突起部24は、芯材14の周囲に対応するように形成され、内面ウェブ12、外面ウェブ13、漏れ防止ウェブ15を互いに加熱・加圧して、接合し、シール部6を形成する。
【0041】
第5工程では、切断手段27によって、内面ウェブ12、芯材14、外面ウェブ13、漏れ防止ウェブ15の積層ウェブを、シール部6の周囲において切断する。切断手段27は、刃28が形成されたカッターロール29と、これに対向するバックアップロール30とを有し、これらロール29,30の間で積層体を挟持することによって、積層ウェブを切断し、図1に示したパンティライナ1を得ることができる。
【0042】
上記のような製法において、芯材14をティッシュペーパ等の被覆シートで被覆していない。したがって、被覆した場合に比べて、芯材14は、エンボスロールの第2凸部19によってその周囲に押し退けられ易い。また芯材14は、溝形成手段17によって、圧搾条溝7が形成される前には、特別な手段により、互いに交絡、溶着または融着等されることがないから、より一層第2凸部19によって押し退けられやすい。さらに、芯材14を被覆シートで被覆しないことによって、芯材14の隙間で内外面ウェブ12,13の繊維が互いに接触し易く、これらを容易に溶着し、溶着部を形成することができる。内外面ウェブ12,13を熱溶着することによって、芯材14が体液等を吸収した場合であっても、剥離しにくくすることができる。
【0043】
内面ウェブ12、外面ウェブ13、芯材14の積層ウェブは、溝形成手段17によってその全体が厚さ方向に圧縮され、さらに、シール手段23によって圧縮されることによって、圧搾条溝7が形成された部分だけでなく、その全体において厚さ方向の寸法が小さくされ、その密度が高くなっている。具体的には、圧縮前の積層ウェブの厚さ方向の寸法は、約12.0〜16.0mmであったのに対して、圧縮後のそれは、約1.4〜1.6mmであった。これら寸法は、圧搾条溝7が形成されていない部分を測定したものである。また、圧縮後において、圧搾条溝7の周囲における芯材の密度は、約0.08〜0.30g/cm、好ましくは約0.10〜0.25g/cmとすることができる。
【0044】
上記のように溝形成手段17およびシール手段23によって、芯材14が厚さ方向に圧縮され、その密度が高くなるから、体液の吸収を促進することができる。特に、圧搾条溝7では密度がより高くなるから、圧搾条溝7での速やかな体液吸収が可能となる。
【0045】
内面ウェブ12、芯材14および外面ウェブ13の間には、ホットメルト接着剤が塗布されているから、加熱された溝形成手段17によって、これらホットメルト接着剤が溶融し、芯材14の間に流入することができる。このように、ホットメルト接着剤によって、内面ウェブ12と芯材14との接合、外面ウェブ13と芯材14との接合を強化することができる。したがって、形成されたパンティライナ1は、芯材14が内外面シート2,3に対して移動しにくく、よれにくくすることができる。
【0046】
内面ウェブ12は、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布などの繊維不織布であって、平均繊維長が約20〜60mmの短繊維を含むこととしている。溝形成手段17で内面ウェブ12を押圧した際には、短繊維が他の繊維から解けて、外面ウェブ13へと接触しやすく、この外面ウェブ13の繊維と熱溶着しやすいからである。
【0047】
この実施形態の製法においては、圧搾条溝7の形成と、製品全体の圧縮とを同時におこなうことができる。すなわち、圧搾条溝7を形成する前に、あらかじめ芯材14を圧縮する必要がないので、その分、工程を簡略化することができる。また、圧搾条溝7を形成する前にあらかじめ芯材14を圧搾していないので、圧搾条溝7を形成する際に、芯材14が移動しやすく、これら芯材14を第2凸部19によって容易に押し退けることができる。なお、第5工程の切断の前に、漏れ防止ウェブ15に仮止め接着剤を塗布し、剥離ウェブを積層させることもできる。
【0048】
図6は、パンティライナ1に形成された圧搾条溝7の他の形態を例示するものである。図示したように、例えば、圧搾条溝7の交差部に、花柄の凹部31を形成することとしてもよい。凹部31の厚さ方向の長さ寸法は、第1部分8のそれとほぼ同様である。このように、凹部31を形成することによって、着用者に対して、視覚的な楽しさを与えることができる。凹部31を形成することによって、圧搾条溝7の総面積を広くすることができる。また、凹部31を圧搾条溝7の延長線上に形成することによって、パンティライナ1が圧搾条溝7に沿って折れ曲がるのを防止することもできる。なお、凹部31は、圧搾条溝7に重なるように形成してもよいし、これから外れて形成されるものがあってもよい。
【0049】
図7は、パンティライナ1に形成された圧搾条溝7の他の形態を例示するものである。図示したように、例えば圧搾条溝7を縦方向Yに延びる波線形にしてもよい。このように波線形にする場合であっても、第1部分および第2部分を形成する。また、波線形にすることによって、圧搾条溝7は、仮想縦中心線P−Pおよび仮想横中心線Q−Qにほぼ重ならないようにすることができ、これら中心線に沿ってパンティライナ1が折れ曲がるのを防止することができる。
【0050】
上記の波線形の圧搾条溝7上に凹部31を形成することもできる。また、この発明の圧搾条溝7は、パンティライナ1の縦方向Yおよび横方向Xの中央部分で、他の領域よりもその面積が大きくなるようにすることもできる。中央部分で圧搾条溝7の面積を大きくすることによって、最もよれ易い中央部分の剛性を向上させて、よれを防止することができる。このように圧搾条溝7の各領域における面積率を変更することによって、部分的に剛性を変更することもできる。
【0051】
圧搾条溝7の第1部分8、第2部分9および凹部31の、形状、大きさ等は、適宜変更可能であり、これら実施形態に限定されるものではない。また、パンティライナ1を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。本発明の明細書および特許請求の範囲において、用語「第1」および「第2」は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いられている。
【符号の説明】
【0052】
1 パンティライナ(体液処理用品)
2 内面シート
3 外面シート
4 芯材
6 シール部
7 圧搾条溝
8 第1部分
9 第2部分
12 内面ウェブ(第1ウェブ)
13 外面ウェブ(第2ウェブ)
14 芯材
17 溝形成手段
18 第1凸部
19 第2凸部
20 エンボスロール
21 バックアップロール
23 シール手段
27 切断手段
X 横方向
Y 縦方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前記身体側に位置する透液性の内面シートと、前記反対側に位置する外面シートと、これらシートの間に位置する吸液性の芯材とを含み、前記内面シートには圧搾条溝が形成される体液処理用品において、
前記内面シートおよび前記外面シートは、繊維不織布によって形成され、
前記圧搾条溝は、前記内面シートの前記縦方向および前記横方向の全域に亘って形成されるとともに、前記内面シートから前記外面シートに向かって形成された第1部分と、前記第1部分から前記外面シートに向かって前記第1部分に連なるように形成された第2部分とを含み、
前記第2部分では、前記内面シートの繊維と前記外面シートの繊維との少なくとも一部が互いに溶着されていることを特徴とする前記体液処理用品。
【請求項2】
前記内面シートおよび前記外面シートは、熱可塑性合成樹脂を含む繊維不織布によって形成される請求項1記載の体液処理用品。
【請求項3】
前記第2部分は、前記圧搾条溝において前記縦方向および前記横方向の少なくともいずれかに間欠的に複数並んで形成される請求項1または2記載の体液処理用品。
【請求項4】
前記圧搾条溝は、前記横方向の長さ寸法を二等分する仮想縦中心線および前記縦方向の長さ方向を二等分する仮想横中心線に対して傾斜する請求項1〜3のいずれかに記載の体液処理用品。
【請求項5】
前記圧搾条溝は、前記第1部分の一部および前記圧搾条溝の延長線上のいずれかに重なる凹部をさらに有する請求項1〜4のいずれかに記載の体液処理用品。
【請求項6】
前記芯材は、単位面積当たりの質量が70〜350g/mである請求項1〜5のいずれかに記載の体液処理用品。
【請求項7】
前記圧搾条溝は、前記内面シートの面積の10〜30%である請求項1〜6のいずれかに記載の体液処理用品。
【請求項8】
前記内面シートは、短繊維を含む請求項1〜7のいずれかに記載の体液処理用品。
【請求項9】
熱可塑性合成樹脂を含む繊維不織布によって形成される第1および第2ウェブと、これらウェブの間に配置された吸液性の芯材とを含む積層ウェブに、圧搾条溝を形成する製法において、
前記第1ウェブに、前記芯材および前記第2ウェブを積層する工程と、溝形成手段によって、前記第1および第2ウェブと芯材とによって形成された積層ウェブを圧縮するとともに前記圧搾条溝を形成する工程と、シール手段によって、前記第1および第2ウェブを前記芯材の周囲で互いに接合しシール部を形成する工程と、切断手段によって、前記第1および第2ウェブを前記シール部の周囲で切断する工程とを含み、
前記溝形成手段は、第1凸部および前記第1凸部から突出する第2凸部が形成されたエンボスロールと、これに対向するとともに表面が平滑なバックアップロールとを有し、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールによって、前記積層ウェブが加圧・加熱され、前記第2凸部が対応する位置で前記第1および第2ウェブの繊維の少なくとも一部が熱溶着されることを特徴とする前記製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−200337(P2011−200337A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68957(P2010−68957)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】