説明

体液吸引集液器

患者に装着しても嵩張らず携帯性に優れる利点を有し、輸送、保管時に包装、梱包された状態で外力によって容易にロック解除しない体液吸引集液器を提供するために、本発明によれば、柔軟な袋と、この袋を支持する2枚の板と、2枚の板の間に挟まれたバネとを有する体液吸引集液器であって、フックおよび解除部を有し且つ2枚の板とは別の部材からなるロックをさらに有しており、このロックによってバネを2枚の板で挟んで圧縮した状態に保持し、且つその保持状態が解除可能である体液吸引集液器が提供される。好ましくは、ロックは可撓性を有しており、一方の板にフックが係止した第1の状態からフックが係止しないような第2の状態まで変形可能に他方の板に保持されており、またロックは第1の状態をとるように付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、人体創腔から体液を吸引排出して創腔内組織の密着性を高め、それによって回復を早めるために使用される、携帯可能な体液吸引集液器に関するものである。
【背景技術】
人体創腔から体液を吸引排出するために体液吸引集液器を用いることは、従来からよく知られている。この場合、チューブの一端が体液を排出誘導するために創腔内に挿入され、またチューブの他端が吸引集液器に接続され、それによって吸引集液器内に発生させた陰圧によって創腔内の体液が吸引集液器内に集積、貯留される。
吸引集液器内に陰圧を発生させる機構として、伸縮自在な弾性部材(バネやゴムなど)を内蔵した容器を予め圧縮し、即ち弾性部材を収縮して予め内部容積を収縮し、弾性部材の復元力によって容器内に陰圧を発生させて体液を吸引集液する特開昭57−81346号公報に記載の機構や、剛性容器の内部に膨張収縮自在な弾性部材(バルーンあるいはダイヤフラム)を配置し、内部送気・排気あるいは他の力学的な手段を用いてこの剛性容器を排気せしめて弾性部材を予め膨張させておき、弾性部材の収縮力によって容器内に陰圧を発生させて体液を吸引集液する、例えば特開昭50−84090号公報および特開昭61−131751号公報に記載の機構などが知られている。
前者の機構は容器自体をつぶした状態から吸引を始めるので、後者の機構に比べて、特に吸引初期では非常にコンパクトであり、患者に装着しても嵩張らずに携帯性に優れる利点がある。また前者の機構は容器をつぶした状態を維持するロック手段を備えており、したがって輸送、保管のコスト低減にも寄与しうる。しかし、特開昭57−81346号公報に記載の吸引器は、板のヒンジ部を折り曲げることでロック手段を解除するようになされているため、輸送、保管時に、包装、梱包された状態でも外力によって容易にロックが解除されてしまう恐れがあった。また、2枚の板に設けたフックが互いに引っかかるような構造であるため、製造コストおよび省スペースの面で有利ではあるが、繰り返し使用しているとフックがクリープ変形してロックできなくなるという不具合があった。
【発明の開示】
本発明は、従来の体液吸引集液器のこのような欠点を解決するものであり、その目的は、患者に装着しても嵩張らず、携帯性に優れるという利点を有し、且つ輸送、保管の際の包装、梱包された状態で外力によって容易にロック解除されることのない体液吸引集液器を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点によれば、柔軟な袋と、この袋を支持する2枚の板と、2枚の板の間に挟まれたバネと、フック、解除部および2枚の板とは別の部材からなるロックとを有する体液吸引集液器であって、ロックによりバネが2枚の板の間で圧縮した状態に保持されており、またその保持状態が解除可能であることを特徴とする体液吸引集液器が提供される。
上述のロックは可撓性を有していてもよい。ロックは、板の一方にフックが係止している第1の状態から、フックが係止していない第2の状態まで変形可能に板の他方に保持されることができ、このロックは第1の状態となるように付勢されている。
上述のフックは、ロックが第1の状態から第2の状態に変形する間に、他方の板の面に対して平行に運動するようになされることができる。
また上述の各板の一部分は、ロックの解除部の周囲の少なくとも2ヵ所において、この解除部を押す方向と反対の方向に突き出していてもよい。
上述のロックのフックの係合面が、その先端側に、一方の板の係合面に向かって突出した部分を有していてもよく、その一方の板の係合面もまた、孔側に、フックの係合面に向かって突出した部分を有していてもよい。
また、上述のバネは、体液吸引集液器の長手方向に、2個以上一直線に並べて設けられていてもよい。
上述の袋は、排液口、排液口用蓋、および吊り下げ孔を有していてもよく、この排液口用蓋が、吊り下げ孔に保持されるための保持部を備えていてもよい。
また本発明の第2の観点によれば、体液を取り入れるための集液口を有する柔軟な袋要素と、この袋要素内に対向して配置される第1の板および第2の板と、第1の板および第2の板の間に配置される弾性部材と、第2の板に取り付けられるロック本体とを有する体液吸引集液器であって、ロック本体が、フック部分と、このフック部分を変位させるための操作部分(すなわち解除部)とを有しており、フック部分が第1の板のフック係合面に係合して第1の板と第2の板とを固定するようになされ、それによって弾性部材が第1の板と第2の板の間で圧縮保持されており、操作部分が操作されてフック部分を第2の板の表面と平行に変位させ、それによって第1の板と第2の板の固定が解除されて袋要素内に陰圧を発生させる体液吸引集液器が提供される。
上述のロック本体が弾性変形可能であってもよく、またその一部が第2の板に固定されることができ、したがって操作部分は、少なくともフック部分を第2の板の表面と平行に変位させるように操作され、フック部分は、操作後、元の位置に戻るようになされていてもよい。
第1の板および第2の板の少なくとも1つが切欠部分を有していてもよく、したがって操作部分は、体液吸引集液器の輪郭の内側に位置するように、切欠部分内に、あるいは切欠部分に対応して配置されることができる。
第1の板が、体液吸引集液器の輪郭の一部を形成する第1のシェル部と、このシェル部の第2の板に対向する側に設けられるコア部とを有していてもよく、また第2の板が、体液吸引集液器の輪郭の一部を形成する第2のシェル部を有していてもよい。この構成において、ロック本体の少なくとも一部が、第2のシェル部のコア部に対向する側に位置付けられており、それによって弾性部材がコア部とロック本体の少なくとも一部とによって圧縮保持されることができる。
ここで、コア部およびロック本体を、第1のシェル部および第2のシェル部よりそれぞれ硬質とすることができる。
あるいは、第1の板が、体液吸引集液器の輪郭の一部を形成する第1のシェル部と、このシェル部の第2の板に対向する側に設けられる第1のコア部とを有し、第2の板が、体液吸引集液器の輪郭の一部を形成する第2のシェル部と、このシェル部の第1の板に対向する側に設けられる第2のコア部とを有していてもよい。ロック本体は、第2のシェル部または第2のコア部に取り付けられることができ、フック部分が、第2の板と反対側にある第1のコア部の表面すなわちフック係合面に係止して、第1の板と第2の板とをロックする。弾性部材は、その両端を第1のコア部と第2のコア部とによって挟まれて、圧縮状態に保持される。この構成によれば、第1のコア部および第2のコア部を、第1のシェル部および第2のシェル部よりそれぞれ硬質とすることができ、したがって各部分を、各機能に適した材料から構成することができ、これは材料選択の幅を広げることを可能にする。
また上述のロック本体は、少なくとも2つのフック部分を有していてもよく、弾性部材はバネであってもよい。
本発明の体液吸引集液器は、弾性部材として、第1の板および第2の板の間で一列に並べられた少なくとも2つのバネを有していてもよい。
袋要素は、体液を排出するための排液口、排液口のための蓋、および吊り下げ孔を有していてもよく、この排液口用蓋は、吊り下げ孔に保持されるための保持部を備えていてもよい。あるいは袋要素は、吊り下げ孔とは別に、保持部を保持するための保持部取付孔を有していてもよい。
本発明の他の目的、特徴および利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
以下、図面により本発明を具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1実施形態の初期状態における外観図であり、
図2は、本発明の第1実施形態の初期状態における中央部の拡大断面図であり、
図3は、本発明の第1実施形態の吸引開始時における外観図であり、
図4は、本発明の第1実施形態の吸引開始時における中央部の拡大断面図であり、
図5は、本発明の第1実施形態の吸引終了時における外観図であり、
図6は、本発明の第1実施形態の吸引終了時における中央部の拡大断面図であり、
図7は、本発明の第1実施形態の初期状態におけるフックと第1の板の一部の拡大断面図であり、
図8は、本発明の第1実施形態の初期状態におけるフックと第1の板の一部の他の例の拡大断面図であり、
図9は、本発明の第1実施形態の初期状態における外観図の側面図であり、
図10は、本発明の第2実施形態の初期状態における外観図であり、
図11は、本発明の第2実施形態の初期状態における図10の線I−Iから見た拡大断面図であり、
図12は、本発明の第2実施形態の吸引開始時における外観図であり、
図13は、本発明の第2実施形態の吸引開始時における図12の線II−IIから見た拡大断面図であり、
図14は、本発明の第2実施形態の吸引終了時における外観図であり、
図15は、本発明の第2実施形態の吸引終了時における図14の線III−IIIから見た拡大断面図であり、
図16は、本発明の第3実施形態の初期状態における外観図であり、
図17は、本発明の第3実施形態の初期状態における中央部の拡大断面図であり、
図18は、本発明の第3実施形態の吸引開始時における外観図であり、
図19は、本発明の第3実施形態の吸引開始時における中央部の拡大断面図であり、
図20は、本発明の第3実施形態の吸引終了時における外観図であり、また
図21は、本発明の第3実施形態の吸引終了時における中央部の拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の体液吸引集液器の第1の実施形態によれば、図1に示すように、集液口5が袋1を貫通して取り付けられており、患者に留置したドレナージチューブ(図示せず)がここに接続されるようになっている。集液口5は、袋1に集められた液体が患者の体腔内に逆流しないように、集液口一方弁6を有していることが望ましい。同様に、袋1を貫通して排液口7が設けられており、この排液口7は、吸引集液時にこの排液口7に取り付けられる排液口用蓋8を備えている(図3)。したがって吸引集液が終了すると、排液口7から排液口用蓋8を取り外して体液が排出される。図1および図2から理解されるように、吸引集液前の状態において、袋1の内部には、バネ3と、バネ3を挟んでいる2枚の板(第1の板11および第2の板12)と、バネ3を圧縮した状態で2枚の板をロックするロック本体4とが配置されている。尚、図1、図3および図5では、ロック本体4の透視部分には斜めの破線を付して明瞭化しているので留意されたい。好適には、2個以上のバネ3が体液吸引集液器の長手方向に一直線に並べて設けられており、これは同じ吸引容量、吸引圧力を発生させるために、1つのバネ3を用いた場合よりスリムな形状をもたらし、したがって体液吸引集液器を、携帯時にポケット等に入れやすくすることができる。
バネ3は円錐台形であり、且つバネ材料の直径の1〜3倍程度の厚みまでバネの線材の干渉無く折り畳めることのが好ましく、これは保存時の省スペースを実現する。また円錐台形の小径側から大径側へと順に巻ピッチが広がるような形状とすれば荷重−たわみの関係の非線形性が抑えられるので、吸引初期における吸引圧の急激な低下を防ぐのにより好ましい。またバネ3の材質としては錆びが発生し難いステンレス鋼が好ましいが、体に直接触れる部分ではないので、十分な吸引力が確保できる弾性を有する材料であれば、特に限定されることはない。
ロック本体4は、第1の板11に対向する側の第2の板12の面上に、その面上の一方向にだけ摺動可能に公知の方法で取り付けられている。すなわち、ロック本体4は、板の面に対して平行に移動できるように、例えば横方向に移動可能であり、上下方向には固定されているといったように、第2の板12に保持されている。ロック本体4は、上記の横方向、すなわち体液吸引集液器の長手方向に垂直な方向に整列した4つのフック10を有しており、このフック10が、第1の板11の孔2内に形成された上向きの係合面13(図6および図7)に係止するように第2の板12の平面に対して垂直に延びており、それによって第1の板11および第2の板12をロックしている。
ロック本体4は、フック10のうちの1つに隣接して設けた解除部(あるいは操作部分)9をさらに有しており、この解除部9をフック10の整列方向に押し込むことによりロック本体4がスライドされて(図4参照)、第1の板11と第2の板12とのロックが解除される。ロックが解除されると、第1の板11および第2の板12はバネ3によって押圧されてその間隔を広げようとし、それによって体液吸引集液器の内部に陰圧を発生させる(図3〜図6)。
第1の板11および第2の板12は、ロック本体4の解除部9の周囲の少なくとも2ヵ所に、解除部9を押し込む方向と反対方向に突出している部分31を有していることが好ましい。換言すれば、この突出部分31は第1の板11および第2の板12に切欠部分32を形成しており、解除部9はこの切欠部分32に対応して収容されている。この構成により、輸送、保管時に体液吸引集液器が床に落下しても、板の突出した部分31が先に床にあたるので解除部9に直接荷重が掛からず、したがってロックが意図せず解除されるリスクは大幅に軽減される。
またロック本体4は、図2のようにフック10が第1の板11に係止した状態から図4のようにフック10が第1の板11に係止していない状態まで変形可能な可撓性(あるいは弾性)を有することが好ましく、一方、バネ3を圧縮状態で第1の板11と第2の板12とをロックするだけの強度を有することが必要である。このため、ロック本体4を単一部品として形成する場合には、ロック本体4の材質としてはポリアセタール等の高剛性のエンジニアリングプラスチックを用いるのが好ましい。ロック本体4が弾性を有しているので、フック10には、解除の際に、第1の板11に係止する方向に付勢する力(戻す力)が適用されるようになっている。
第1の板11および第2の板12はともに板肉薄部18を有しており(図5および図6)、バネ3の伸長にあわせて板肉薄部18を支点として曲がるような構造となっている。尚、ロック本体4もまた板肉薄部18の曲がりに対応して曲がるロック肉薄部19を有している。このロック肉薄部19が割れる危険性をより少なくするために、ロック本体4は解除部9をロック本体4の他の部分とは別部品とし、すなわちロック本体4と解除部9を蝶番のように接続してロック肉薄部19の無い構造にすることがより好ましい。あるいは、ロック肉薄部19を有する解除部9に、破断伸びが大きく割れ難い材質を用い、この解除部19を高剛性のエンジニアリングプラスチック製のロック4に嵌め込み等により接続することがより好ましい。
また、図7に示すように、フック10の係合面33と第1の板11の係合面13は平行に接していてもよいが、図8に示すように、係合面13および33のそれぞれの先端部20および14に突起部を設けている方が輸送、保管時のロック本体4解除のリスクが軽減される。
図1および図9に示すように、排液口用蓋8に近接して保持部16を設け、袋1の吊り下げ孔15に保持部16を引っ掛けて固定することができ、これは排液時に排液口用蓋8が邪魔にならないため、より好ましい。あるいは図16に示すように、袋1は、吊り下げ孔15の他に、保持部16を固定するための保持部取付孔40を有していてもよい。
第1の板11および第2の板12は、それらの長手方向端部において、板接続部材17によって互いに枢動可能に連結されていてもよい。
本発明の体液吸引集液器の使用方法としては、まず排液口用蓋8を用いて排液口7を閉じ、患者に留置したドレナージチューブを集液口5に接続する。次に図3および図4に示すように、ロック本体4の解除部9を吸引集液器の中心に向かって押し込み、フック10の第1の板11への係止を解除する。この段階で、バネ3の復元力により第1の板11および第2の板12には互いに離れようとする力が働き、袋1の内部に陰圧が生じる。この陰圧によって患者の体腔より吸引集液を行う。吸引集液終了後は排液口用蓋8を開け、袋1内に貯留された排液を捨てる。尚、ロック本体4は可撓性を有し、したがって第1の板11に係止する方向(図面右向き)にフックが付勢されているので、第1の板11と第2の板12を押さえつけてバネ3を圧縮し、再び図1のような初期状態とし、再吸引することも可能である。
第1の板11および第2の板12に求められる性質として、圧縮されたバネ3の応力に対して長期間にわたって十分に抗するだけの剛性(高弾性率、耐クリープ性)を有すること、および内容物の性状や量を確認するために半透明もしくは透明であることが挙げられ、さらに板薄肉部18が割れ難いこと(破断伸びが大)が重要である。これらの要求される物性から、第1の板11および第2の板12をそれぞれ単一部品として構成する場合の材料としては、高分子量のポリプロピレンが最も好ましい。
図10〜図15には、本発明の体液吸引集液器の第2の実施形態が示されている。この第2の実施形態は、第1の板11および第2の板12が、比較的軟質で破断伸びが大きい材料から作られたシェル部をそれぞれ有している点で、第1の実施形態とは異なっている。尚、図10〜図15において、第1の実施形態と同様の部品には同様の参照番号が付されている。
図11から理解されるように、第2の実施形態において、第1の板は、体液吸引集液器の外形を保持するように機能するシェル部分41と、このシェル部分41の内側に固定されてバネ3の応力を直接受けるように機能するコア部分42とから構成されている。シェル部分41はまた板肉薄部18を備えている(図15)。ロック本体4のフック10は、コア部分42の上面に係止されて第1の実施形態と同様に第1の板と第2の板とをロックする。このように機能毎に異なる部品とすることで、各部分を、各機能に適した材料から構成することができ、これは材料選択の幅を広げることを可能にする。
一方、第2の板12は、体液吸引集液器の外形を保持するように機能するシェル部分43のみから構成されており、このシェル部分43に取り付けられたロック本体4が、バネ3を直接的に支持するようになっている。第2の実施形態におけるロック本体4は、第1の実施形態におけるロック本体4と比較して、より広い範囲に亘って第2の板の上で広がっている。このためフック10は体液吸引集液器の中央部分に設けられる必要はなく、図11に示すように、それぞれのバネ3の周囲に2つ設けることができる。ロック本体4がバネ3を支持するこの構造は、部品点数をより少なくでき、コストを抑えられる点で有利である。したがってバネ3は、コア部分42とロック本体4とによって圧縮状態で保持されている。
第1の実施形態における第1の板11および第2の板12に使用したような高弾性率と耐クリープ性を具備するエンジニアリングプラスチックは、通常結晶性プラスチックもしくは繊維強化プラスチックであり、これらは不透明で破断伸びが小さい。しかしながら透明で破断伸びが大きい非晶性プラスチックは剛性が小さいのが普通であり、したがってコア部分42の材料としては、高弾性で耐クリープ性を具備するポリアセタール、フィラー強化プラスチック、繊維強化プラスチック等のエンジニアリングプラスチックもしくはアルミニウム、ステンレス鋼等の金属を用いることが好ましく、また板薄肉部18を備えたシェル部分41の材料としては、透明性を有し、破断伸びが大きいポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックを用いることが好ましい。
図16〜図21には、本発明の体液吸引集液器の第3の実施形態が示されている。この第3の実施形態は、第1の板11および第2の板12が、比較的軟質で破断伸びが大きい材料から作られたシェル部41および43と、このシェル部分の内面に固定されてバネ3の応力を直接受ける硬質のコア部分42および44とからそれぞれ構成されている点で、第1の実施形態とは異なっている。尚、図16〜図21において、第1および第2の実施形態と同様の部品には同様の参照番号が付されている。
図17に示すように、第1の板は、体液吸引集液器の外形を保持するように機能するシェル部分41と、バネ3の応力を直接受けるように機能するコア部分42とから構成され、このコア部分42の上面にロック本体4のフック10が係止するようになっている。この第3の実施形態では、第2の板もまた、体液吸引集液器の外形を保持するように機能するシェル部分43と、バネ3の応力を直接受けるように機能するコア部分44とから構成されている。換言すれば、第3の実施形態では、図2に示す第1の実施形態における第1の板11が、シェル部分41とコア部分42とから構成されており、第1の実施形態における第2の板12が、シェル部分43とコア部分44とから構成されている。
このように第1の板および第2の板を機能毎に完全に異なる部品から構成することで、各部分を、各機能に適した材料から構成することができ、これは材料選択の幅を広げることを可能にする。すなわち、この第3の実施形態では、バネ3が、コア部分42とコア部分44とによって支持されているので、コア部分42および43のみを硬質な材料から構成することができる。
したがって第2の実施形態と同様に、コア部分42および44の材料としては、高弾性で耐クリープ性を具備するポリアセタール、フィラー強化プラスチック、繊維強化プラスチック等のエンジニアリングプラスチックもしくはアルミニウム、ステンレス鋼等の金属を用いることが好ましく、シェル部分41および43の材料としては、透明性を有し、破断伸びが大きいポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックを用いることが好ましい。
この第3の実施形態では、コア部分42および43がバネ3を支持しているので、第2の実施形態のように板の表面に垂直な方向の加重がバネ3からロック本体4に対して直接作用することがなく、したがって第2の板の上におけるロック本体4のスライドをよりスムースにすることができる。
上記記載は実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の精神と添付の請求の範囲の範囲内で種々の変更および修正をすることができることは当業者に明らかである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な袋、該袋を支持する2枚の板、および2枚の板の間に挟まれたバネを有する体液吸引集液器において、フック、解除部、および前記2枚の板とは別の部材からなるロックをさらに有しており、該ロックにより前記バネが前記2枚の板の間で圧縮した状態に保持され、且つその保持状態が解除可能なことを特徴とする体液吸引集液器。
【請求項2】
前記ロックは可撓性を有し、前記板の一方に前記フックが係止している第1の状態から前記フックが係止していない第2の状態まで変形可能に前記板の他方に保持されており、前記ロックは第1の状態となるように付勢されている請求項1に記載の体液吸引集液器。
【請求項3】
前記フックは、前記ロックが前記第1の状態から前記第2の状態に変形する間に、前記他方の板の面に対して平行に運動する請求項2に記載の体液吸引集液器。
【請求項4】
前記ロックの解除部の周囲の少なくとも2ヵ所において、該解除部を押す方向と反対の方向に前記板の一部が突き出している請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の体液吸引集液器。
【請求項5】
前記ロックのフックの係合面が、その先端側に、前記一方の板の係合面に向かって突出した部分を有し、前記一方の板の係合面が、その孔側に、前記フックの係合面に向かって突出した部分を有している請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の体液吸引集液器。
【請求項6】
体液吸引集液器の長手方向に一直線に並べて設けた2個以上のバネを有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の体液吸引集液器。
【請求項7】
前記袋が、排液口、排液口用蓋、および吊り下げ孔を有しており、前記排液口用蓋が、前記吊り下げ孔に保持されるための保持部を備えている請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の体液吸引集液器。
【請求項8】
体液を取り入れるための集液口を有する柔軟な袋要素と、
前記袋要素内に対向して配置される第1の板および第2の板と、
前記第1の板および前記第2の板の間に配置される弾性部材と、
前記第2の板に取り付けられるロック本体とを有する体液吸引集液器において、
前記ロック本体が、フック部分と、該フック部分を変位させるための操作部分とを有しており、
前記フック部分が前記第1の板のフック係合面に係合して前記第1の板と前記第2の板とを固定するようになっており、それによって前記弾性部材が前記第1の板と前記第2の板の間で圧縮保持され、
前記操作部分が操作されて前記フック部分を前記第2の板の表面と平行に変位させ、それによって前記第1の板と前記第2の板の固定が解除されて前記袋要素内に陰圧を発生させる体液吸引集液器。
【請求項9】
前記ロック本体が弾性変形可能であり且つその一部が前記第2の板に固定されており、したがって前記操作部分は、少なくとも前記フック部分を前記第2の板の表面と平行に変位させるように操作され、該フック部分は、該操作後、元の位置に戻ることを特徴とする請求項8に記載の体液吸引集液器。
【請求項10】
前記第1の板および前記第2の板の少なくとも1つが切欠部分を有しており、前記操作部分が、体液吸引集液器の輪郭の内側に位置するように、前記切欠部分内に、あるいは前記切欠部分に対応して配置されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の体液吸引集液器。
【請求項11】
前記第1の板が、体液吸引集液器の輪郭の一部を形成する第1のシェル部と、該シェル部の前記第2の板に対向する側に設けられるコア部とを有しており、前記第2の板が、体液吸引集液器の輪郭の一部を形成する第2のシェル部を有しており、前記ロック本体の少なくとも一部が、前記第2のシェル部の前記コア部に対向する側に位置付けられており、それによって前記弾性部材が前記コア部と前記ロック本体の少なくとも一部とによって圧縮保持されている請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載の体液吸引集液器。
【請求項12】
前記コア部および前記ロック本体が、前記第1のシェル部および前記第2のシェル部よりそれぞれ硬質である請求項11に記載の体液吸引集液器。
【請求項13】
前記第1の板が、体液吸引集液器の輪郭の一部を形成する第1のシェル部と、該第1のシェル部の前記第2の板に対向する側に設けられる第1のコア部とを有しており、前記第2の板が、体液吸引集液器の輪郭の一部を形成する第2のシェル部と、該第2のシェル部の前記第1の板に対向する側に設けられる第2のコア部とを有しており、前記フック係合面が、前記第2の板と反対側にある前記第1のコア部の表面によって構成され、前記弾性部材が、前記第1のコア部と前記第2のコア部とによって圧縮保持されている請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載の体液吸引集液器。
【請求項14】
前記第1のコア部および前記第2のコア部が、前記第1のシェル部および前記第2のシェル部よりそれぞれ硬質である請求項12に記載の体液吸引集液器。
【請求項15】
前記ロック本体が、少なくとも2つのフック部分を有する請求項8に記載の体液吸引集液器。
【請求項16】
前記弾性部材がバネである請求項8に記載の体液吸引集液器。
【請求項17】
前記第1の板および前記第2の板の間で一列に並べられた少なくとも2つのバネを有する請求項14に記載の体液吸引集液器。
【請求項18】
前記袋要素が、体液を排出するための排液口、該排液口のための蓋、および吊り下げ孔または保持部取付孔を有しており、前記排液口用蓋が、前記吊り下げ孔または前記保持部取付孔に保持されるための保持部を備えている請求項8に記載の体液吸引集液器。

【国際公開番号】WO2004/047886
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555054(P2004−555054)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015100
【国際出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】