説明

体液測定用の試験要素と測定法

本発明は、体液、特に血糖値を測定するため、体液に対する感受性のある試薬が充填された検出領域を備える試験要素に関するものである。本発明によれば、検出領域の中および/またはその隣接領域に、その検出領域に関する少なくとも1つの状態パラメータを検出するための機能要素が配置されていて、その機能要素は、状態測定によって評価することが可能である。本発明はさらに、試験要素を測定する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液測定用、特に血糖測定用の試験要素と、そのような試験要素の測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような試験要素は、体液の測定、特に体液そのもの、またはその中に含まれる1成分の検出に使用される。例えば体液の測定は、そのような試験要素について光学的評価をすることによってなされる。ここではさまざまな光学的測定パラメータ(例えば蛍光またはリン光の形態の発光や、光の吸収)を評価することが可能である。光学的測定法は、特にわずかな体積の血液を検査する際の試験ストリップの形態のいくつかの試験要素に適していることがわかっている。光学的測定法は、人間工学的な設計の試験ストリップでもうまくいく。
【0003】
体液、またはその中に含まれる1成分を検出するため、試験要素は通常はいわゆる検出領域を有する。その検出領域では、通常、体液またはその成分のうちの1つを化学的に検出する反応が試験要素の反応領域に存在する反応系との間で起こるため、その後、1種類以上の反応生成物を測定技術によって検出すること、特に光学的測定を利用して検出することができる。
【0004】
試験要素の評価によって体液を測定することに関して補正された結論を引き出すには、測定法の質と精度が特に重要である。したがって特別な試験要素の利用は、その試験要素に特化した温度範囲においてだけ許される。なぜなら体液の適切な測定は、その温度範囲においてだけ十分な精度が保証されるからである。血糖の測定では、例えばヘマクリット値は、したがって測定に対するその影響は、温度に依存する。したがって血糖測定用の試験要素については、測定値と、測定値を評価する際にそこから得られる補正値は、インピーダンス法を利用した電気化学または電流測定に基づいて提案された。
【0005】
文献EP 1 411 346 A2には、分析用試験要素の過小投与を検出する方法と、過小投与の検出に適したシステムおよび試験要素が記載されている。
【0006】
文献DE 10 2004 051 830 A1には、流体サンプル(例えば血液)に含まれる分析物のルミネッセンスを検出するためのシステムが記載されている。
【0007】
文献EP 0 819 943 A2では、分析用試験要素を評価するための分析系が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、体液測定用の改善された試験要素と、その試験要素の改善された測定法を提供し、体液の測定精度を最適にすることである。ここでは試験要素を評価する際の追加の労力をできるだけ少なくするか、その労力を回避さえすべきである。
【0009】
この目的は、独立請求項1に従い、体液測定用、特に血糖測定用の試験要素によって解決される。さらに、独立請求項12に従うと、体液を測定する設計の試験要素、特に血糖を測定する設計の試験要素を測定する方法が提供される。本発明の好ましい実施態様は従属請求項の対象である。
【0010】
本発明には、体液、特に血糖を測定するため、体液に対する感受性のある試薬が充填された検出領域を備える試験要素であって、検出領域および/またはその隣接領域に、状態測定によってその検出領域に関する少なくとも1つの状態パラメータの記録を評価することが可能な機能要素が配置されている試験要素というアイディアが含まれる。
【0011】
本発明にはさらに、体液を測定する設計の試験要素、特に血糖を測定する設計の試験要素を測定する方法であって、体液に対する感受性のある試薬を充填された検出領域の1個以上の状態パラメータが、検出領域および/またはその隣接領域に配置されていて状態測定によって測定される1つ以上の機能要素の測定信号によって記録される方法というアイディアが含まれる。
【0012】
本発明により、試験要素の検出領域に関する状態情報を効果的に実験で直接得る可能性が生まれる。その後、その状態情報はさまざまな方法で評価することができる。例えば状態情報により、試験要素の検出領域の特性に基づいてその試験要素がまだ体液の測定に適しているかどうかを判断できる。正常測定または最小測定と規定される状態からずれていることが確認された場合には、その試験要素を排除することができる。しかし状態情報は、体液を実際に測定する際にも、例えば記録された測定信号の補正の形態で考慮することができる。このようにすると、例えば検出反応に関するさまざまな反応経過を考慮することができる。検出領域に関する少なくとも1つの状態パラメータを記録するのに用いる状態測定によって機能要素を評価することが可能だが、この状態測定は、例えば上述の測定の補正を目的として、体液そのものの測定と合わせて実施することができる。しかし状態測定は独立して利用することもでき、例えば体液を測定する前に試験要素の品質を検査するのに利用される。
【0013】
機能要素は、1つの材料、1つの化合物、材料混合物のどれでもよい。機能要素は、試験要素の検出領域にだけ配置すること、またはその検出領域の隣接領域にだけ配置すること、または検出領域とその隣接領域の両方に配置することができる。
【0014】
状態測定では公知のどのような測定法でもそのまま利用でき、試験要素に含まれる機能要素の構成に従ってそれを呼び出すことができる。
【0015】
本発明の好ましい一展開例では、機能要素は、体液の測定に関する検出反応に対して反応化学に関して不活性な機能要素であるようにすることができる。この実施態様では、機能要素そのものが体液の検出に関する検出反応を通じて化学的に変化することはない。その代わりに、またはそれに加えて、機能要素のほうも検出反応の反応化学に影響を与えない設計にすることができる。
【0016】
本発明の好ましい一実施態様では、機能要素は、体液の測定に関する検出反応の反応パラメータに対する感受性がある機能要素である。検出反応の反応パラメータは、機能要素を実験で評価することによって検査できる。この反応パラメータは、例えば、検出領域での検出反応前の温度、または検出反応中の温度、または検出反応後の温度である。例えば発光性の機能要素を機能要素として用いる場合には、検出反応中の発光の様子を検出領域における温度の指標として評価することができる。例えばあらかじめ刺激した後の蛍光またはリン光の減衰の時間変化を温度の指標として評価することができる。いわゆるユーロピウム錯体(例えばユーロピウム・キレート)が、この文脈で使用できる機能要素の例として挙げられる。このようなユーロピウム錯体では、蛍光が減衰する様子は温度に依存する(例えばKatagiri他、J. Alloys and Comp.、第408巻〜第412巻、809〜812ページ、2006年;Wolfbeis他、Anal. Chem.、第78巻、5094〜5101ページ、2006年;Khalil他、Sens. Act. B. Chemical、第96巻、304〜314ページ、2003年;Wolfbeis他、Analyst、第132巻、507〜511ページ、2007年を参照)。この文脈では、ユーロピウム錯体をポリマー・マトリックス(例えばポリビニルメチルケトン・マトリックス)に埋め込むことが特に有利である。このようにすると、試験要素を製造する際に検出領域および/またはその隣接領域に導入できるポリマー球を製造することができる。使用する機能要素に応じ、体液の実験的測定に関する検出反応のための1つ以上の反応パラメータを直接的な測定によって評価することができる。
【0017】
本発明の好ましい一実施態様では、機能要素は、試験要素パラメータに対する感受性のある機能要素である。この実施態様では、試験要素は、他の設計の代わりに、またはそれに加えて、機能要素を利用して設計し、その試験要素のパラメータを機能要素の状態測定によって記録できるようにする。ここでは、試験要素の機能が完全であることをチェックできる。例えば1つの層または2つ以上の層の厚さを、その層に組み込まれる機能要素を用いた状態測定によって評価できる。例えば一実施態様では、機能要素として発光要素が可能である。状態測定の枠組において、測定された発光の強度により、試験要素の上に機能要素が位置している構成の層の厚さを導出することができる。また、状態測定の枠組において、測定された光の強度を、試験要素に関して以前に(例えば製造の直後に)記録された比較値と比較することができる。このようにすると、内部に機能要素が位置している層の中で、層の厚さに影響する変化が起こったかどうかを確認できる。その変化により、試験要素が例えば使用できなくなる可能性がある。変化が確認されたが、それでも試験要素が使用可能な状態である場合には、層の厚さに関する情報を利用し、体液測定の枠組で記録される測定結果を補正することができる。
【0018】
本発明の好ましい一実施態様では、機能要素は、光学的状態測定によって検出領域に関する少なくとも1つの状態パラメータの記録を評価することが可能な機能要素である。このようにすると、測定技術を利用して、すなわちこのような機能要素(例えば体液の測定において色を検出するための機能要素)の評価装置ですでに利用できる光学測定を利用して、状態測定を評価することが可能になる。機能要素は、蛍光またはリン光の形態の光を出す設計にすることができる。また、光学的測定信号を記録することもできる。光学的測定信号は、光学的状態測定の枠組で、時間分解式に、および/または分光式に、および/または強度依存式に記録される。光学的状態測定は、使用する機能要素と、その機能要素で評価することが可能な状態情報に適合させることができる。
【0019】
本発明の好ましい一実施態様では、機能要素は、時間分解式の光学的測定信号によって検出領域に関する少なくとも1つの状態パラメータの記録を評価することが可能な機能要素である。本発明の別の一展開例では、機能要素は、強度依存式の光学的状態測定を利用して検出領域に関する少なくとも1つの状態パラメータの記録を評価することが可能な機能要素である。必要な場合には、時間分解式の光学的状態測定と強度依存式の光学的状態測定を、記録された光学的測定信号が波長に依存して評価される分光式の光学的状態測定と組み合わせることができる。
【0020】
本発明の好ましい一展開例では、機能要素の少なくとも一部が試薬と混合されている。機能要素と試薬を混合することで、機能要素は、少なくとも一部が試薬の中に埋め込まれる。すると検出領域に関する状態パラメータの直接的な記録がさらに支援される。
【0021】
本発明の好ましい一実施態様では、機能要素は、検出領域またはその隣接領域に、空間的に互いに離れたいくつかの領域にして配置されている。このようにすると、検出領域またはその隣接領域にあるさまざまな空間領域に関する状態パラメータを記録することが可能になる。これに関連して、機能要素の評価に用いる測定技術では、空間的に互いに離れたいくつかの領域を実験で調べる目的で1つ以上の検出器を使用することができる。光学的状態測定の場合には、例えばセンサー・ダイオードの形態のいくつかの光学センサーを用意することができる。
【0022】
本発明の好ましい一実施態様では、検出領域またはその隣接領域に、別の状態測定によって検出領域に関する別の状態パラメータの記録を評価することが可能な別の機能要素が配置されている。さまざまな機能要素を使用すると、検出領域に関する異なる状態パラメータを記録するのに役立つ。しかしその代わりに、またはそれに加えて、さまざまな機能要素を用いて検出領域の同じ状態パラメータを記録することもできる。するとこの状態情報はさまざまなやり方で得られるため、信頼性が高くなる。別の機能要素は、必要な場合には、機能要素に関してすでに説明した可能なさまざまな設計に従って形成することができる。光学的状態測定とそれに適した機能要素の場合には、例えば、異なる機能要素がさまざまな色の光を出すようにできる。すると、それを記録し、波長フィルタリングを利用して単純なやり方で別々に評価することができる。
【0023】
本発明の好ましい一実施態様により、少なくとも検出領域に形成される多層構造が提供される。この多層構造では、機能要素は、1つの層の中、またはいくつかの層の中に配置することができる。また、一実施態様では、異なる機能要素を1つの層の中、またはいくつかの層の中に埋め込むことができる。このようにすると、試験要素は、検出領域に関する状態情報を記録するため、作業に合わせた構成にすることができる。
【0024】
体液測定用の設計にされた試験要素を測定する方法の好ましい実施態様を以下にさらに詳しく説明する。
【0025】
本発明の好ましい一実施態様では、検出領域内で体液を測定する際の検出反応に関する反応パラメータを状態パラメータとして記録することができる。例えばこのようにして評価できる試験要素の光学的状態測定を利用して検出反応の温度を検出領域に直接記録することができる。
【0026】
本発明の好ましい一展開例では、試験要素に関する試験要素パラメータを状態パラメータとして記録することができる。このようにして記録できる試験要素パラメータは、例えば、試験要素の層の厚さ、または試験要素の領域の力学的な完全さ、または層の厚さの変動である。異なる状態パラメータを記録するため、機能要素に関して記録される測定信号をさまざまな方法で評価することができる。試験要素内に配置された機能要素に関する光学的測定信号が記録される光学的状態測定の場合には、例えば蛍光信号またはリン光信号の形態の光学的信号を時間分解式かつ強度依存式に記録することで、例えば検出領域内の温度と試験要素の層の厚さに関する情報を得ることができる。
【0027】
本発明の好ましい一展開例では、測定信号を比較信号と比較する。比較信号として、例えば、試験要素に関して以前に記録した測定値、および/または他の環境条件下で記録した測定値を利用できる。例えば試験要素に関しては、それが乾燥した化学的試験要素であるときには、例えば製造直後の乾燥した初期状態で測定を行なうことができる。次に、測定する体液のサンプルを試験要素の上に位置させるか、そうすることが想定されている場合には、これら測定信号を現在記録された測定信号を比較することができる。検出反応に関する反応パラメータに関連して、測定信号を所定の値と比較することができる。この操作は、体液が正確に測定されるようにするために実行せねばならない。反応パラメータが所定の値の外にある場合(例えば反応パラメータが温度の形態であり、その温度が高すぎるか低すぎる場合)には、試験要素の評価装置の中で例えば試験要素を冷却または加熱して範囲内にすることができる。したがって典型的な試験要素に関しては、例えば約15℃〜約35℃の適用範囲があらかじめ決まる。ここで提案する技術を利用し、約5℃〜50℃の範囲の応用分野のための設計にされた試験要素を作り出す。
【0028】
試験要素パラメータに関連して、例えばバッチの変動が原因で比較値がずれている場合には、異なる検出反応を予定し、それを体液の測定を評価する際に考慮することができる。
【0029】
本発明の好ましい一実施態様では、検出領域に関する1個または数個の状態パラメータの記録に対する反応として、体液の測定に関する検出反応に影響を与える反応パラメータが変化するようにする。その1個または数個の状態パラメータの記録は体液を測定する前に実施し、その後、試験要素の評価装置の中で起こる検出反応に関する対応するパラメータを設定する。しかし、それに加えて、またはその代わりに、検出反応の間に状態パラメータを記録することもできる。
【0030】
本発明の好ましい一実施態様では、状態測定は光学的測定として実施され、光学的測定信号が測定される。光学的測定は、通常は、試験要素の検出領域に特定の色または混合色の励起光を照射して1個または数個の機能要素を刺激し、その機能要素自体に例えば蛍光またはリン光の形態の光を出させることによって実施される。次に、出た光を1個または数個の検出器を用いて空間分解式、および/または時間分解式、および/または強度依存式に記録し、さまざまな状態情報または測定情報を得ることができる。しかし電流を検出領域に作用させて発光させることもできる。化学発光を評価して状態情報を得ることもできる。
【0031】
図面を参照して好ましい実施態様により本発明を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】体液測定用の試験要素の多層構造の概略図である。
【図2】体液測定用の試験要素を光学的に測定するための測定配置の概略図である。
【図3】さまざまなグルコース濃度での蛍光の変化を時間の関数として示したグラフである。
【図4】さまざまな温度での蛍光の変化を時間の関数として示したグラフである。
【図5】図7に示したユーロピウム錯体についてさまざまな温度で蛍光の測定値が減衰する様子を時間の関数として示したグラフである。
【図6】図5の測定結果から決定した減衰時間を温度の関数として示したグラフである。
【図7】ユーロピウム錯体の構造式である。
【図8】実験で測定した血液サンプル中のグルコースの濃度を既知の参照濃度の関数として示したグラフである。
【図9】機能要素として使用できる別のユーロピウム錯体の構造式である。
【図10】機能要素として使用できる別のユーロピウム錯体の構造式である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は試験要素1の多層構造の概略図であり、この試験要素は、体液、特に血糖を測定する設計にされている。光透過性担持基板2は、一実施態様では、厚さ約30μm〜約150μmのポリカーボネートの担持フィルムで形成される。この光透過性担持基板2の上に、活性層3が位置している。活性層3のほうは、体液を測定するための反応性化学物質(例えば酵素系の形態になった試薬)を含んでいる。活性層3は、例えば約10μmの厚さに形成される。活性層3の中では、例えば着色反応の形態の検出反応が起こるため、それを、試験要素の評価装置で光学的測定によって評価することができる。評価すべき体液そのものとその体液の能力を測定するためのさまざまな反応系が知られている。測定は光学的に行なわれることが好ましいため、これ以上詳しくは説明しない。
【0034】
活性層3の上には、別の層4が形成されている。この別の層4は、一実施態様では、例えばTiO2またはZrO2の形態の顔料を含んでいる。この別の層4は、例えば約10μmの厚さにすることができる。試験要素1が血液を測定できる設計になっていると、別の層4は、赤血球の分離に役立つ。試験要素の光学的評価では、組み込まれている顔料が、照射される測定光を乱反射させる。最後に、別の層4の上には、網状層5が設けられている。この網状層は、血液を広げるのに役立つ。
【0035】
機能要素6が活性層3に組み込まれている。機能要素6は、可能な一実施態様ではポリマー球であり、その中にユーロピウム錯体が埋め込まれている。このようなユーロピウム錯体の2つの実施態様を図9aと図9bに示してある。ユーロピウム錯体は機能要素として機能し、光学的刺激を受けて光を出す。その光は、1個または数個の光学的センサーによって記録することができる。
【0036】
図2は、体液測定用の試験要素を光学的に測定するための測定配置の概略図である。波長365nmの測定光20を試験要素1に照射する。試験要素1は、図示した実施態様では、図1に関する説明に従う構成にされている。光22が試験要素1で乱反射され、測定チャネル21を通じて検出される。信号の記録は時間分解方式で行なわれる。乱反射された光22の強度の時間変化が、試験要素1においてさまざまなグルコー濃度について検出される。
【0037】
ユーロピウム錯体の蛍光24が別の受信チャネル23を通じて時間分解式かつ強度依存式に検出される。測定光20は、エッジ・フィルタ25を用いて波長選択式にマスクされる。例えば450nmよりも長い波長を透過させるエッジ・フィルタを使用できる。別の受信チャネル23を通じて測定された蛍光信号は、次に、電子式評価装置(図示せず)を用いて評価される。例えば蛍光が減衰する様子を評価することができる。ここでは、試験要素1の中にあるユーロピウム錯体が測定光20で刺激されて出す蛍光の1つ以上の減衰時間が測定される。その代わりに、またはそれに加えて、ロック-イン技術を利用して測定光20と蛍光24の間の位相シフトを測定することができる。次に、従来からの技術を利用して、蛍光が減衰する様子に関する情報を位相シフトから導出することができる。
【0038】
図3は、さまざまなグルコース濃度について強度の変化を時間の関数として示したグラフである。この強度の変化は、血液サンプルを充填した試験要素を図2の測定配置を利用して光学的に調べたときの乱反射についてのものである。ここでは、試験要素に時刻0で血液サンプルを充填したため、最初は乾燥していた試験要素が湿潤になる。その後、さまざまな化学種の形成反応が始まるため、それを例えば乱反射(拡散反射とも呼ばれる)を記録することによって光学的に調べる。異なるグルコース濃度に関するいくつかの強度変化を示してある。
【0039】
図4は、異なる温度での蛍光の変化を時間の関数として示したグラフである。異なる温度では、すなわち約10℃、約20℃、約30℃では、蛍光の時間変化が異なることがわかる。約360nmの励起光を用いて光学的に励起した後に測定された信号を記録した。検出器は、サンプルの垂直上方約3mmに位置させた。したがって蛍光の挙動の違いから、発光要素の環境における温度に関する結論を導くことができる。図1に示した試験要素1に関しては、これは、体液の測定に関する検出反応のためにこの領域がどのような温度になっているかを、検出領域に含まれる活性層3の機能要素6を用いて直接測定できることを意味する。そこから結論される蛍光条件と温度条件の時間変化の評価結果に応じ、体液を測定する条件を、評価装置での必要性に合わせて設定したり変化させたりすることができる。
【0040】
図5は、図7に示したユーロピウム錯体についてさまざまな温度で蛍光の測定値が減衰する様子を時間の関数として示したグラフである。このユーロピウム錯体の蛍光強度は、9℃(上の曲線)、25℃(中央の曲線)、37℃(下の曲線)で測定した。
【0041】
図6は、図5の測定結果から決定した減衰時間を温度の関数として示したグラフである。温度を上げると蛍光の減衰時間は短くなる。
【0042】
図8は、血液サンプルに含まれる実験的に決定したグルコースの濃度を既知の参照濃度の関数として示したグラフである。
【0043】
図8の大きな記号(三角形、正方形、円)は、調べた血液サンプルに関する補正されていないグルコースの濃度を示している。それと比較するため、グルコースの測定における実際の周囲温度を考慮してグルコースの濃度の測定値を補正し、小さな記号で示してある。実際の周囲温度は、添加したユーロピウム錯体の蛍光の挙動から、図5と図6を参照してすでに説明した方法に従って決定した。図8に大きな三角形で示したグルコースの濃度値に関しては、これは、最初に受け入れられていた周囲温度または温度測定値を25℃から5℃に補正したことを意味する。大きな円で示したグルコースの濃度値に関しては、この補正で25℃から35℃になり、大きな正方形で示したグルコースの濃度値に関しては、補正で25℃から45℃になった。補正されたグルコースの濃度値は、明らかに図8の中央の曲線により近い位置にあることがわかる。
【0044】
さまざまな方法を利用して算術的に補正することができる。例えばサンプリング点を実験で決定し、それらのサンプリング点の間で直線的な内挿を実施するか、単に非線形近似関数を決定することができる。非線形近似関数では、わずかなサンプリング点しか利用しない。
【0045】
図9a、図9bは、機能要素として使用できる別のユーロピウム錯体の構造式を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液に対する感受性のある試薬が充填された検出領域を備える、体液、特に血糖を測定するための試験要素であって、前記検出領域および/またはその隣接領域に、状態測定によって前記検出領域に関する少なくとも1つの状態パラメータの記録を評価することが可能な機能要素が配置されている試験要素。
【請求項2】
前記機能要素が、前記体液の測定に関する検出反応についての反応化学に対して、不活性な機能要素であることを特徴とする、請求項1に記載の試験要素。
【請求項3】
前記機能要素が、前記体液の測定に関する検出反応の反応パラメータに対して感受性がある機能要素であることを特徴とする、請求項1または2に記載の試験要素。
【請求項4】
前記機能要素が、試験要素パラメータに対する感受性のある機能要素であることを特徴とする、請求項1〜3の少なくとも1項に記載の試験要素。
【請求項5】
前記機能要素が、光学的状態測定によって前記検出領域に関する前記少なくとも1つの状態パラメータの記録を評価することが可能な機能要素であることを特徴とする、請求項1〜4の少なくとも1項に記載の試験要素。
【請求項6】
前記機能要素が、時間分解式の光学的状態測定によって前記検出領域に関する前記少なくとも1つの状態パラメータの記録を評価することが可能な機能要素であることを特徴とする、請求項5に記載の試験要素。
【請求項7】
前記機能要素が、強度依存式の光学的状態測定によって前記検出領域に関する前記少なくとも1つの状態パラメータの記録を評価することが可能な機能要素であることを特徴とする、請求項5または6に記載の試験要素。
【請求項8】
前記機能要素が、少なくとも部分的に試薬と混合されていることを特徴とする、請求項1〜7の少なくとも1項に記載の試験要素。
【請求項9】
前記機能要素が、空間的に互いに離れたいくつかの領域において、前記検出領域またはその隣接領域に配置されていることを特徴とする、請求項1〜8の少なくとも1項に記載の試験要素。
【請求項10】
前記検出領域および/またはその隣接領域に、別の状態測定によってその検出領域の別の状態パラメータの記録を評価することが可能な別の機能要素が配置されていることを特徴とする、請求項1〜9の少なくとも1項に記載の試験要素。
【請求項11】
少なくとも前記検出領域に形成された多層構造を特徴とする、請求項1〜10の少なくとも1項に記載の試験要素。
【請求項12】
体液を測定する設計の試験要素、特に血糖を測定する設計の試験要素を測定する方法であって、前記体液に対する感受性のある試薬を充填された検出領域の1個以上の状態パラメータが、前記検出領域および/またはその隣接領域に配置されていて状態測定によって測定される1つ以上の機能要素の測定信号によって記録される方法。
【請求項13】
状態パラメータとして、前記検出領域で前記体液を測定することに関する検出反応の反応パラメータを記録することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
状態パラメータとして、前記試験要素に関する試験要素パラメータを記録することを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記測定信号を比較信号と比較することを特徴とする、請求項12〜14の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項16】
前記検出領域の前記1個または数個の状態パラメータの記録に対する反応として、前記体液の測定に関する検出反応に影響を与える反応パラメータを変化させることを特徴とする、請求項12〜15の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項17】
前記状態測定を光学的測定として実施し、その測定において光学的測定信号を測定することを特徴とする、請求項12〜16の少なくとも1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【公表番号】特表2012−520994(P2012−520994A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500154(P2012−500154)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001752
【国際公開番号】WO2010/105850
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】