説明

体積ホログラムが組み込まれた成形品

成形品であって、ホログラム記録媒体から、物品の機能によって定まる形状に成形することにより製造され、成形品に体積ホログラムが形成されている。成形品の一部分だけをホログラム記録媒体から成形され、又は熱可塑性材料を物品の機能によって定まる形状に成形して成形品を製造した後、例えばディップコーティングによりホログラム記録媒体で成形品をコーティングし、体積ホログラムが成形品のコーティングに形成されている。体積ホログラムは、イメージを表示するように適切に問い合わせると、肉眼で直接判読できるイメージを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の成形構造中又はその表面のコーティングに、特にセキュリティー及び認証性のための、体積ホログラムが組み込まれた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、ブランド保護及び真正品の認証のための機構として普及しつつある。こうした目的にホログラムが用いられるのは、主に、その複製が比較的難しいためである。ホログラムは、2つのコヒーレント光ビームを干渉させて干渉縞を生じさせ、干渉縞をホログラム記録媒体に記録することによって作られる。2つのコヒーレントビームを干渉させる前にその一方にデータ又はイメージを付与することによって、ホログラムに情報及びイメージを記録することができる。ホログラムは、最初にホログラム作成に用いた2つのビームのいずれかと一致するビームで照射することによって読み取ることができ、ホログラムに記録されたデータ又はイメージが表示される。ホログラムの記録には複雑な方法が必要とされるため、認証のためのホログラムの使用は、例えばクレジットカード、ソフトウェア、衣料品のような物品で見受けられる。
【0003】
ホログラムには、表面レリーフ構造と体積ホログラムとの2種類の異なる構造が知られている。セキュリティー又は認証用途に使用されるホログラムの多くは表面レリーフ型のものであり、縞及びそれらに含まれるデータ又はイメージは、記録媒体の表面に加えられた構造又は変形(deformation)に記録される。その結果、最初に記録されたホログラムは2つのコヒーレントビームの干渉によって生成できるが、エンボスのような技術を用いて表面構造をコピーすることによって複製を作ることができる。ホログラムの複製はクレジットカードやセキュリティーラベルのような物品の大量生産には好都合であるが、原型から同じメカニズムを用いて偽造品にホログラムを許可なく複製及び/又は変更できてしまうという短所がある。
【0004】
表面型ホログラムとは異なり、体積ホログラムは記録媒体の大部分に形成される。体積ホログラムは多重化することができ、記録媒体の様々な深さ及び様々な角度に情報を記録できるので、大量の情報を記録することができる。さらに、ホログラムを構成する縞が埋め込まれるので、表面レリーフホログラムのように同じ技術を用いてもコピーすることができない。
【0005】
「Covert Hologram Design, Fabrication, and Optical Reconstruction For Security Applications」と題する米国特許出願公開第2005/0248817号には、セキュリティー用の隠し(covert)ホログラム付き物品の製造方法が開示されている。この米国特許出願によれば、物品は複数の層からなるラミネートであり、その1以上の層は感光性樹脂材料からなるホログラム記録媒体であり、他の層は保護層である。ホログラム記録媒体には、二次元ページ形式にフォーマットされたデジタルデータを含む体積ホログラムを記録することができる。データの読取りに用いられる光が肉眼で視認できない波長であるか或いはホログラムの回折効率が低くすぎてデジタルデータを含む回折光が肉眼で検知できるほど強くないため、デジタルデータを含む体積ホログラムは肉眼では視認できない。物品は、視認できるホログラムと視認できない(つまり隠し)ホログラムとを含んでいてもよく、デジタルデータは機械可読である。さらに、ホログラム記録層は多重化ホログラムを含んでいてもよい。この米国特許出願に記載されているように、ホログラムを含む物品認証システムは、例えば多数の光学素子からなる球面アフォーカル望遠系のような複雑な中間光学系を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0248817号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0101168号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0136333号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0073392号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0072208号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特殊な読取装置を必要とせず、コンピュータ読取機なしで判断することができる、真正性の確認その他のセキュリティー用途に体積ホログラムを使用する簡単な方法を提供する。
【0008】
本発明の第一の実施形態では、物品の機能によって定まる形状にホログラム記録材料を成形することによって成形品を形成し、成形品に体積ホログラムを形成する。
【0009】
本発明の第二の実施形態では、成形品の一部分だけをホログラム記録媒体から形成する。本発明の第三の実施形態では、物品の機能によって定まる形状に熱可塑性材料を成形して成形品を形成し、次いで成形品を例えばディップコーティングなどによってホログラム記録媒体でコーティングし、成形品のコーティングに体積ホログラムを形成する。本発明の第四の実施形態では、成形品の一部分だけをホログラム記録媒体でコーティングする。
【0010】
この4つの実施形態の各々において、ホログラムは、イメージを表示するように適切に問い合わせると、肉眼で直接判読できるイメージを表示する。従って、ホログラムは、記録された情報の内容及び意味を判読するのに機械読取装置が必要とされるデジタルデータを表示するだけではない。ホログラムは、例えば画像、又はシリアルナンバーのように標準的な英数字で表された情報のイメージを与える。
【0011】
本発明のある実施形態では、ホログラムは、問合せビーム(interrogating beam)の非存在下では視認することができない隠しホログラムである。別の実施形態では、ホログラムは、記録媒体の体積の表面近傍で形成され、肉眼で視認できる。
【0012】
本発明のある実施形態では、ホログラムは、位相変調暗号化イメージ、又は暗号化イメージと非暗号化イメージを共に含む。
【0013】
本発明のある実施形態では、ハンドヘルドレーザー(レーザーポインターなど)を手で用いて位置調整することによってデバイスからホログラムを読み取ることができるようにホログラムを表示する角度許容差が高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1A及び1Bはそれぞれホログラム材料から成形した部材及びホログラム材料でコーティングした成形部材を示す。
【図2】図2は製造プロセスにおけるインラインでの透過型のホログラム記録装置を示すとともに、参照ビームのコーディングのための任意の位相マスクを示す。
【図3】図3は製造プロセスにおけるインラインでの反射型のホログラム記録装置を示すとともに、参照ビームのコーディングのための任意の位相マスクを示す。
【図4】図4A及び4Bはそれぞれ被覆部材及び成形部材におけるホログラムの厚さを制限する方法を示す。
【図5】図5A及び5Bは多層ホログラムセキュリティ構造を示しており、非コード化参照ビームでは回折しか示さないのに対して、コード化参照ビームではシリアルナンバーを示す。
【図6】図6は、認証のため射出成形ディスクでのロゴイメージホログラムの記録に用いられるホログラム記録装置を示す。
【図7】図7は、図6に示す真正射出成形ディスクに形成されたロゴホログラムを見るのに用いられる簡単な認証システムを示す。
【図8】図8は体積ホログラムのブラック離調曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、物品の機能によって定まる形状を有する成形品に関する。一般に、成形品は成形可能なポリマー材料(例えばポリカーボネート、ポリエステルなど)から作られたもので、製品の真正性を確認できるようにすることが望まれるものであればよい。非限定的な例として、かかる成形品は、ラジオ、携帯電話などの通信機器のハウジング、試験装置、音楽プレーヤー及びレコーダーなどの電子機器のハウジングとすることができる。認証は、媒体ディスク自体(例えばCD、DVDなど)、メガネ類(例えばサングラス)のフレーム、及びブランド/ロゴタグ用のプラスチック部品へと拡張することができ、さらにはハンドバック又は靴のような商品のジッパー又は金具として秘かに使用することもできる。
【0016】
本発明の成形品は、少なくとも部分的にホログラム記録媒体から形成されているか或いはホログラム記録媒体で少なくとも部分的にコーティングされ、ホログラム記録媒体に体積ホログラムが形成される。図1Aは、成形ハウジング全体がホログラム記録媒体10から形成された携帯電話ハウジングを示している。図1Bは、ホログラム記録媒体10でコーティングされた携帯電話ハウジングを示す。
【0017】
本発明での使用に適したホログラム記録媒体の一つのタイプは、色素ドープした熱可塑性ホログラム材料である。デジタルデータの記録に用いられるこの種の材料は、本願出願人による米国特許公開出願公開第2005/0136333号、同第2006/0078802号及び同第2006/0073392号に記載されており、それらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0018】
ある実施形態では、ホログラム記録媒体は基板と色素材料とを含んでおり、色素材料は、露光による色素材料の屈折率の変化、光で生じる変化の効率、及び色素の最大吸収とイメージの書込み及び/読取りに用いられる所望の波長との分離を始めとする幾つかの重要な特性に基づいて選択及び利用される光学特性を有する。この実施形態のホログラム記録媒体に利用される基板は、ホログラム記録媒体のデータが読み取れるように十分な光学的品質(例えば、低い散乱、低い複屈折、及び対象波長での無視できる損失)の材料からなる。概して、これらの性質を示すプラスチック材料であれば基板として使用できる。しかし、プラスチックは、加工パラメーター(例えば、色素の配合、コーティング又は追加の層の塗工、最終フォーマットへの成形など)及びその後の保存条件に耐えることができるものであるべきである。可能なプラスチックとしては、ガラス転移温度が100℃以上の熱可塑性樹脂が挙げられ、ガラス転移温度が150℃以上のものが好ましい。ある実施形態では、プラスチック材料はガラス転移温度が200℃超のもの、例えばポリエーテルイミド、ポリイミド、これらのプラスチックの1種以上を含む組合せなどである。かかるプラスチック材料の例としては、特に限定されないが、非晶質及び半結晶質熱可塑性材料及びブレンド、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(特に限定されないが、線状及び環状ポリオレフィン、例えばポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン(特に限定されないが、水素化ポリスルホンなど)、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、ポリスチレン(特に限定されないが、水素化ポリスチレン、シンジオタクチック及びアタクチックポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、スチレン−コ−アクリロニトリル、スチレン−コ−無水マレインなど)、ポリブタジエン、ポリアクリレート(特に限定されないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート−ポリイミド共重合体など)、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル(特に限定されないが、2,6−ジメチルフェノール由来のもの及び2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン及びポリ塩化ビニリデンが挙げられる。
【0019】
本発明のこの実施形態で用いられる色素材料は、好適には、ある「書込み」波長の光に露光したときに不可逆的な化学変化を起こし、色素の示す吸収帯を消す有機色素である。光化学活性な狭帯域色素と「書込み」波長の光との相互作用によって生成した1種以上の光分解生成物は、通例、照射前の色素とは全く異なる吸収スペクトルを示す。書込み波長の光との相互作用によって生じる色素の不可逆的化学変化によって、色素の分子構造に変化が生じ、「光分解生成物」が生成するが、これは開裂型の光分解生成物であることも又は転位型の光分解生成物であることもある。こうした色素分子の構造の変化及び狭帯域色素に対する光分解生成物の光吸収特性の変化は、基板内で屈折率の大きな変化を生じさせ、その変化を別個の「読取り」波長で観察できる。本発明で用いる狭帯域色素は、振動子強度の保存による強い光学特性を有する。すなわち、吸収が狭いスペクトル領域に局在化しているため、曲線(振動子強度)下の領域が保存されるので吸収の大きさが強い。かかる色素の具体例は、4−ジメチルアミノ−2′,4′−ジニトロスチルベン、4−ジメチルアミノ−4′−シアノ−2′−ニトロスチルベン、4−ヒドロキシ−2′,4′−ジニトロスチルベン及び4−メトキシ−2′,4′−ジニトロスチルベンのようなニトロスチルベン誘導体である。これらの色素の合成及びそれらの光誘起転位については、反応体及び生成物の化学の観点、併せてそれらの活性化エネルギー及びエントロピー因子に関して研究がなされている。J. S. Splitter and M. Calvin, "The Photochemical Behavior of Some o-Nitrostilbenes," J. Org. Chem., vol. 20, pg. 1086(1955)。最近の報文では、このような光誘起変化による屈折率の変調を、色素ドープポリマーに導波路を書き込むのに使用することに焦点が当てられている。McCulloch, I. A., "Novel Photoactive Nonlinear Optical Polymers for Use in Optical Waveguides," Macromolecules, vol. 27, pg. 1697 (1994)。
【0020】
ホログラム記録組成物は、光活性材料と、光増感剤と、成形性又は塗工性有機バインダーとの混合物であってもよく、光活性材料は光増感剤との反応で色の変化を起こす。
【0021】
かかる混合物における光活性材料として適した材料としては、特に限定されないが、アントラキノン及びその誘導体、クロコニン及びその誘導体、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾ及びそれらの誘導体、ベンズイミダゾロン及びその誘導体、ジケトピロロピロール及びその誘導体、ジオキサジン及びその誘導体、ジアリーライド(diarylide)及びその誘導体、インダントロン及びその誘導体、イソインドリン及びその誘導体、イソインドリノン及びその誘導体、ナフトール及びその誘導体、ペリノン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、アンサントロン及びその誘導体、ジベンズピレンキノン及びその誘導体、ピラントロン及びその誘導体、ビオラントロン及びその誘導体、イソビオラントロン及びその誘導体、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン型顔料、シアニン及びアゾメチン型顔料、インジゴイド型顔料、ビスベンゾイミダゾール型顔料、アズレニウム塩、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ベンゾピリリウム塩、フタロシアニン及びその誘導体、ピラントロン及びその誘導体、キナクリドン及びその誘導体、キノフタロン及びその誘導体、スクアライン及びその誘導体、スクアリリウム及びその誘導体、ロイコ色素及びその誘導体、重水素化ロイコ色素及びその誘導体、ロイコ−アジン色素、アクリジン、ジ−及びトリ−アリールメタン色素、キノンアミン、o−ニトロ−置換アリーリデン色素、アリールニトロン色素、並びにこれらの材料の組合せが挙げられる。
【0022】
光増感剤は、好適には、光活性化可能なオキシダント、一光子光増感剤、二光子光増感剤、三光子光増感剤、多光子光増感剤、酸性光増感剤、塩基性光増感剤、塩、色素、フリーラジカル光増感剤、カチオン光増感剤、又はこれらの光増感剤の1種以上を含む組合せである。非限定的な例として、光増感剤は、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、半導体ナノ粒子、第一のハロゲンをフリーラジカルとして生成するのに有効な結合解離エネルギーが40kcal/モル以上であるハロゲン化化合物、ハロゲン化スルホニルR−SO−X(式中、Rはアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルカリール基又はアラルキルからなる群のいずれかであり、Xが塩素又は臭素である。)、式式R′−S−X′(式中、R′及びX′はR−SO−XにおけるR及びXと同じ意味である。)のハロゲン化スルフェニル、テトラアリールヒドラジン、ベンゾチアゾリルジスルフィド、ポリメタクリルアルデヒド、アルキリデン−2,5−シクロヘキサジエン−1−オン、アゾベンジル、ニトロソ、アルキル(T1)、過酸化物、ハロアミン又はこれらの光増感剤の1種以上を含む組合せでよい。光増感剤は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アリールグリオキサレート、アシルホスフィンオキシド、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、チオキサントン、クロロアルキルトリアジン、ビスイミダゾール、トリアシルイミダゾール、ピリリウム化合物、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、メルカプト化合物、キノン、アゾ化合物、有機過酸化物又はこれらの光増感剤の1種以上を含む組合せであってもよい。
【0023】
有機バインダーは、好適には、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーとの組合せである。例えば、有機バインダーとしては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステル又はこれらの組合せが挙げられる。有機バインダーは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートのような熱硬化性ポリマー又はこれらの熱硬化性ポリマーの1種以上を含む組合せを含んでいてもよい。ホログラム記録媒体は、フォトクロミック化合物と上述の成形性又は硬化性バインダー材料との組合せであってもよい。フォトクロミック色素の非限定的な例は、ジアリールエテン、ニトロン又はそれらの組合せである。ジアリールエテンの具体例としては、特に限定されないが、ジアリールペルフルオロシクロペンテン、ジアリールマレイン酸無水物、ジアリールマレイミドがあがられる。ニトロンの具体例としては、特に限定されないが、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−フェニルニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−クロロフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(3,4−ジクロロフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−カルボエトキシフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−アセチルフェニル)−ニトロン、α−(4−ジメチルアミノフェニル)−N−(4−シアノフェニル)−ニトロン、α−(4−メトキシフェニル)−N−(4−シアノフェニル)ニトロン、α−(9−ジュロリジニル)−N−フェニルニトロン、α−(9−ジュロリジニル)−N−(4−クロロフェニル)ニトロン、α−[2−(1,1−ジフェニルエテニル)]−N−フェニルニトロン、α−[2−(1−フェニルプロペニル)]−N−フェニルニトロンなど、又はこれらのニトロンの1種以上を含む組合せが挙げられる。
【0024】
本発明の成形品において、体積ホログラムはホログラム記録媒体に形成される。この体積ホログラムは、有効な問合せビームで問い合わせたときに肉眼で直接判読できるイメージを表示する。本明細書で用いる「肉眼で直接判読できる」という記載は、読取装置/コンピューターがなければ実際には判読できないようなデータの表示とは対照的に、ホログラムが、画像、英数字の文字列その他の配列、容易に識別できる記号のようなイメージの形態を有することを意味する。「有効な問合せビームで問い合わせる」という記載は、ホログラムの記録に用いた波長に基づく適当な波長のレーザービーム(イメージが位相変調されている場合には、適当な位相のもの)をイメージが表示される角度で照射することをいう。
【0025】
図2は、透過型の携帯電話ハウジングにホログラフィックイメージを記録するための構成を示す。レーザー21からのコヒーレント光ビームはビームスプリッター22に当たって、2つのビームに分割されてミラー23と空間光変調器24に向けられ、そこで方向転換されてホログラムの記録のため成形品25のような目標に向けられる。位相変調暗号化ホログラムが望まれる場合には、任意要素としての位相マスク26を、参照ビーム経路のビームスプリッター22の後に挿入してもよい。ビームを所望の方向に向けるためミラー27で表される任意要素としての光学素子をビーム経路に挿入してもよいが、必須ではない。当技術分野で公知の通り、空間光変調器24は、その表面から反射されるビームのホログラムにイメージを付与する。
【0026】
図3は、図2と同様のホログラム記録装置を示すが、透過型ではなく反射でホログラムを形成するように構成されている。図3の符号は、図2と同じである。
【0027】
用途によっては、肉眼では視認できないホログラフィックイメージ又は肉眼で視認できるホログラフィックイメージのいずれかが望ましいことがあるし、イメージが視認できる成分と視認できない成分との組合せを与えるのが望ましいこともある。これは一般に材料の厚さによって制御される。ブラッグ離調曲線(図8の式を参照)は、体積ホログラムの角度(及び波長)許容差を決定する。ホログラムを肉眼で簡単に見えるようにするには、広い範囲の波長及び角度で光に応答できるようにホログラムを薄くする必要がある。図8のグラフは、90度で交差する(図6を参照)2本のビームを用いて記録した体積ホログラムの3つの異なる厚さ1.5mm、0.25mm及び0.05mmでの計算された角度許容差を示す。
【0028】
ホログラムの厚さは、数多くの方法で制御することができる。図4A及び4Bに、被覆部材及び成形部材におけるホログラムの厚さを制限する方法を示す。図4Aに示すように、ホログラム記録材料のコーティングのようにホログラム材料が決まった厚さを有しているときは、ビーム同士がさらに厚く重なったとしても、ホログラムの最大厚さは上記層の厚さによって決まる。逆に、(ホログラム記録媒体から形成された成形品のように)厚い材料で形成された体積ホログラムでは、記録用ビーム同士の重なりが制限されるように記録条件を変更することによって、厚さを制御することができる。例えば、図4Bに示すように、所望の厚さで記録されるように2本の集束ビームの重なりを制御すればよい。
【0029】
ホログラムが視認できない場合、ホログラムを、参照ビームと波長、入射角及び位相変化が一致する適当なビームで問い合わせたときに限り、イメージは適切に表示される。高価な追加の装置なしでのホログラムの読取りを容易にするため、参照ビームの波長を、HeNe赤色レーザーポインターのような一般に入手可能なハンドヘルドレーザーポインターと一致させるのが望ましい。また、特殊な位置合わせツールを使用なくてもすむように、表示のための角度許容差が最大となるようにホログラムを記録するのが望ましい。上述の通り、これはホログラムの厚さを制御することによって達成される。ハンドヘルドレーザーポインターの使用を簡単にするため、角度許容差(入射角が実際の記録角度から外れても依然としてイメージを生成できる角度)が0.5度以上であるのが望ましい。図8に示すように、かかる角度許容差は、ホログラムが約0.1mmの厚さのときに達成できる。0.05mmのホログラム厚さは、±1度を超える角度許容差(null−to−null)を生じる。
【0030】
本発明の成形品に付与されるホログラムの具体的な内容はユーザーのニーズに応じて決まるが、本発明の成形品において、その内容がイメージを表示させるため適切に問い合わせたときに肉眼で直接判読できるイメージを常に含んでいることを条件とする。このイメージに加えて、ホログラムにデータを含んでいてもよいし、複数のイメージを含んでいてもよい
図5Bに示すように、本発明の成形品は、適切に問い合わせると、英数字識別子のイメージを表示することができる。図5Bでは、イメージはシリアルナンバーであるが、ロット番号、部品番号又は処理条件のような他のタイプの識別子又は情報が英数字フォーマットに含まれていてもよい。
【0031】
図5Bでは、イメージはレーザーポインターに適当な位相マスクが固定されているときだけに表示されるものであり、位相変調又は暗号化読取りイメージである。この場合、ホログラム記録は非暗号化読取りを与えるようにしてもよく、これは全く情報を含んでいない(回折ボックスを生ずる)か又は別のイメージを含んでいて、そのいずれかを図5Aの反射のように、真正性の証明に用いることができる。位相変調は、米国特許第6002773号、同第6744909号及び米国特許出願公開第2004/0101168号に記載されているように、参照ビーム又は物体ビームのいずれかに位相マスクを挿入することによって達成することができ、上記文献の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0032】
本発明は、体積ホログラムが組み込まれた成形品の製造方法であって、当該方法が、(a)ホログラム記録媒体から成形品を成形する段階と、(b)成形品に体積ホログラムを書き込む段階とを含んでおり、体積ホログラムが、有効な問合せビームで問い合わせたときに肉眼で直接判読できるイメージを表示する方法も提供する。成形品の成形は、特に限定されないが、射出成形を始めとする当技術分野で公知の数多くの成形法のいずれで行ってもよい。
【0033】
本発明は、体積ホログラムが組み込まれた成形品の製造方法であって、当該方法が、(a)熱可塑性材料から成形品を成形する段階と、(b)成形品をホログラム記録媒体でコーティングする段階と、(c)ホログラム記録媒体のコーティングに体積ホログラムを書き込む段階とを含んでおり、体積ホログラムが、有効な問合せビームで問い合わせたときに肉眼で直接判読できるイメージを表示する方法も提供する。コーティングプロセスは、成形品に再生可能な皮膜厚さをもたらすことができれば、例えばスプレーコーティング及びディップコーティングを始め、どのような方法で行ってもよい。
【実施例】
【0034】
本発明の一実施例として、ホログラム記録材料から光学品質の表面と裏面をもつ直径120mm、厚さ1.2mmのディスク60を射出成形した。記録材料は、以下に示す伸長CEM−388ニトロン色素を1重量%含む光学品質のポリスチレンであった。
【0035】
【化1】

ディスク60を、図6に示す記録装置のサンプル位置に配置した。ダイオード励起固体(DPSS)単一縦モード(SLM)内部共振器型2倍高調波発生Nd:YAGレーザー61を光源として使用し、最大300mWの532nmコヒーレントレーザー光を発生させた。レーザー源によるビーム出力は約0.8mmのビーム直径を有しており、ビーム直径を約8mmまで拡大するため拡大望遠鏡62を用いた。記録露光時間の制御のため機械シャッター63を用いた。拡大ビームは次いで記録設備に入射する光のパワーレベルを制御するため半波長板64及び偏光ビームスプリッター65を通過し、パワーレベルを1/10に素早く調整するために減光フィルター66を用いた。第二の半波長板64′及び第二の偏光ビームスプリッター65′を用いて入射ビームを同じパワーの2つのビームに分割した。参照ビームの偏光が信号ビームと同じになるように調整するため、参照ビーム経路に追加の半波長板64″を用いた。ロゴのネガマスク(ここでは透明ロゴを有する暗視野)67を、信号ビーム経路にレーザービームと垂直にかつディスク60にできるだけ近く設けた。ミラー68を、様々な光学部品間でのビームの方向付けに用いた。
【0036】
信号ビーム及び参照ビームをディスク60に対して45度の角度でディスク60に入射させた。光のパワーレベルは、信号ビーム及び参照ビームが共に14mWのパワーをもつように調整した。次いでシャッター63を開いて、ディスク60を記録光に12〜15秒間露光した。評価のため、1〜3mWの633nmレーザー光を発生する赤色HeNeレーザー69を用いて、記録ホログラムの効率を測定した。上述の記録条件下で、12%〜15%の回折効率のホログラムが得られた。次いでホログラムの位置をディスク60上に表示し、記録装置からディスクを取り外した。
【0037】
ロゴホログラムを読み取るため、第二のシステムを用いた。読取り又は認証システムを図7に示す。このシステムでは、5mWの650nmレーザー光を発生する電池式レーザーポインターを照射光源として用いた。認証すべきディスクを、回転ステージ上のサンプルマウントに載せ、記録プロセスの際に予めマークしておいたホログラムの位置にレーザービームが当たるようにレーザーポインターの位置を調整した。回転ステージを用いて、ホログラムの読取りに適した角度にディスクを調整した。レーザーポインターで適切に位置合わせして照射すると、真正ディスクは、ディスクのレーザーポインターとは反対側にGE社のロゴイメージを生成した。ロゴイメージは直径約3mmであった。ロゴイメージが肉眼でもっと簡単に視認できるように、認証すべきディスクのすぐ裏に一枚の結像レンズを適宜設けてもよい。ディスクからロゴイメージを観察できることは、真正ディスクであることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の機能によって定まる形状を有する成形品であって、
当該成形品が、少なくとも部分的にホログラム記録媒体から形成されているか或いはホログラム記録媒体で少なくとも部分的にコーティングされており、
(a)体積ホログラムが上記ホログラム記録媒体に形成されているとともに、
(b)体積ホログラムが、有効な問合せビームで問い合わせたときに肉眼で直接判読できるイメージを表示する、成形品。
【請求項2】
前記体積ホログラムが、英数字識別子のイメージを含む、請求項1記載の成形品。
【請求項3】
前記英数字識別子のイメージが、有効な問合せビームの非存在下では視認することができない、請求項2記載の成形品。
【請求項4】
前記英数字識別子のイメージが位相変調暗号化イメージである、請求項3記載の成形品。
【請求項5】
前記イメージが、有効な問合せビームの非存在下では視認することができない、請求項1記載の成形品。
【請求項6】
前記イメージが位相変調暗号化イメージである、請求項5記載の成形品。
【請求項7】
非暗号化イメージをさらに含む、請求項6記載の成形品。
【請求項8】
前記非暗号化イメージが、有効な問合せビームの非存在下では視認することができない、請求項7記載の成形品。
【請求項9】
前記ホログラムを表示する角度許容差が0.5度以上である、請求項1記載の成形品。
【請求項10】
前記体積ホログラムが英数字識別子のイメージを含む、請求項9記載の成形品。
【請求項11】
前記英数字識別子のイメージが、有効な問合せビームの非存在下では視認することができない、請求項10記載の成形品。
【請求項12】
前記英数字識別子のイメージが位相変調暗号化イメージである、請求項11記載の成形品。
【請求項13】
前記イメージが、有効な問合せビームの非存在下では視認することができない、請求項9記載の成形品。
【請求項14】
前記イメージが位相変調暗号化イメージである、請求項13記載の成形品。
【請求項15】
非暗号化イメージをさらに含む、請求項14記載の成形品。
【請求項16】
前記非暗号化イメージが、有効な問合せビームの非存在下では視認することができない、請求項15記載の成形品。
【請求項17】
当該成形品が、少なくとも部分的にホログラム記録媒体から形成されている、請求項9記載の成形品。
【請求項18】
当該成形品が、ホログラム記録媒体で少なくとも部分的にコーティングされている、請求項9記載の成形品。
【請求項19】
当該成形品が、少なくとも部分的にホログラム記録媒体から形成されている、請求項1記載の成形品。
【請求項20】
当該成形品が、ホログラム記録媒体で少なくとも部分的にコーティングされている、請求項9記載の成形品。
【請求項21】
体積ホログラムが組み込まれた成形品の製造方法であって、当該方法が、
(a)ホログラム記録媒体から成形品を成形する段階と、
(b)成形品に体積ホログラムを書き込む段階と
を含んでおり、体積ホログラムが、有効な問合せビームで問い合わせたときに肉眼で直接判読できるイメージを表示する、方法。
【請求項22】
前記体積ホログラムが英数字識別子のイメージを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記英数字識別子のイメージが、有効な問合せビームの非存在下では視認することができない、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記英数字識別子のイメージが位相変調暗号化イメージである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
体積ホログラムが組み込まれた成形品の製造方法であって、当該方法が、
(a)熱可塑性材料から成形品を成形する段階と、
(b)成形品をホログラム記録媒体でコーティングする段階と、
(c)ホログラム記録媒体のコーティングに体積ホログラムを書き込む段階と
を含んでおり、体積ホログラムが、有効な問合せビームで問い合わせたときに肉眼で直接判読できるイメージを表示する、方法。
【請求項26】
前記体積ホログラムが英数字識別子のイメージを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記英数字識別子のイメージが、有効な問合せビームの非存在下では視認することができない、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記英数字識別子のイメージが位相変調暗号化イメージである、請求項27記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−506212(P2010−506212A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531502(P2009−531502)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/076350
【国際公開番号】WO2008/045625
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】