説明

体組成測定装置

【課題】広範囲の体組成を連続的に且つ精度よく測定することができる体組成測定装置を提供する。または、体組成をより精度よく測定することのできる体組成測定装置を提供する。
【解決手段】この皮下脂肪測定装置10は、皮下脂肪を測定する光学式測定部30と、同測定部30が設けられるユニット本体21とを備える。そして、体表面上を移動するための球体22と、体表面への光学式測定部30の押圧力を測定するための押圧力測定部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体組成を測定する体組成測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体組成測定装置として、例えば特許文献1には生体の皮下脂肪量を測定するものが記載されている。
この体組成測定装置は、生体に対する光の照射及び生体からの光の受光を行う体組成測定部と、生体に対する体組成測定部の押し付け圧力を測定するセンサとを備えている。そして、体組成測定部の測定結果をセンサの測定結果により補正して皮下脂肪量を算出することにより、皮下脂肪量の測定精度を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−310575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(課題1)特許文献1の体組成測定装置により皮下脂肪量の広範囲の分布を測定しようとしたときには、1つの箇所についての皮下脂肪量の測定が終わる毎に体組成測定部を生体から離し、次の測定部位に体組成測定部を押し付ける動作がユーザに要求される。このため、体組成の分布を広範囲にわたり正確に測定することが困難なものとなっている。
【0005】
(課題2)特許文献1の体組成測定装置では、体組成測定部の測定結果をセンサの測定結果により補正することにより、皮下脂肪量の測定精度を高めるようにしているものの、補正が適切に行われるとは限らない。このため、皮下脂肪量をより正確に測定するためには、ユーザによる体組成測定部の押し付け圧力が適切な大きさに維持されることが望ましいものの、今のところこうした機能を備える体組成測定装置は提案されていない。
【0006】
本発明は、上記各課題の少なくとも一方を解決するためになされたものであり、第1の目的は、広範囲の体組成を連続的に且つ精度よく測定することのできる体組成測定装置を提供することにある。また第2の目的は、体組成をより精度よく測定することのできる体組成測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明は、体組成を測定する体組成測定部と、同測定部が設けられる測定装置本体とを備える体組成測定装置において、体表面上を移動するための可動部と、体表面への前記体組成測定部の押圧力を測定するための押圧力測定部とを備えることを要旨とする。
【0008】
この発明では、押圧力測定部を備えるようにしているため、この測定部の測定結果を利用して体組成の測定精度を高めることができる。また体表面上を移動するための可動部を備えるようにしているため、当該体組成測定装置を生体に対して移動させることにより、体組成の測定箇所を変更することができる。従って、広範囲の体組成を連続的に且つ精度よく測定することができる。すなわち、第1の目的を達成することができる。
【0009】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の体組成測定装置において、体表面に対する前記体組成測定部の押圧力が適正範囲内にあるときに体組成の測定が開始されることを要旨とする。
【0010】
この発明では、体表面に対する体組成測定部の押圧力が適正範囲内にあるときに体組成の測定が開始されるため、押圧力が適正範囲外にあるときに測定が行われることに起因して体組成の測定精度が低下することを抑制することができる。
【0011】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の体組成測定装置において、前記押圧力測定部による測定の結果をユーザに知らせる伝達部を備えることを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、押圧力測定部による測定の結果をユーザに知らせる伝達部を備えるようにしているため、ユーザが生体に対する測定部の押圧力を確認しながら体組成測定部の操作を行うことができる。これにより、押圧力が適切に維持された状態での体組成の測定が行われやすくなるため、体組成の測定精度をより高めることができる。
【0013】
(4)請求項4に記載の発明は、体組成を測定する体組成測定部と、同測定部が設けられる測定装置本体とを備える体組成測定装置において、体表面への前記体組成測定部の押圧力を測定するための押圧力測定部と、この押圧力測定部による測定の結果をユーザに知らせる伝達部とを備えることを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、押圧力測定部を備えるようにしているため、ユーザが生体に対する測定部の押圧力を確認しながら体組成測定部の操作を行うことができる。これにより、押圧力が適切に維持された状態での体組成の測定が行われやすくなるため、体組成をより精度よく測定することができる。すなわち、第2の目的を達成することができる。
【0015】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の体組成測定装置において、体表面に対する前記体組成測定部の押圧力を適正範囲内に維持する押圧力調整部を備えることを要旨とする。
【0016】
この発明では、体表面に対する体組成測定部の押圧力を適正範囲内に維持する押圧力調整部を備えるようにしているため、体組成の測定を精度良く行うために、ユーザに対して過度に精密な操作が要求されることを抑制することができる。
【0017】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の体組成測定装置において、可動部を体表面の変形に追従させるための補助部を備えることを要旨とする。
体組成測定部が体表面上の凹凸形状をなす部位にあるときには、体組成測定部が体表面に対して傾くことにより同測定部の測定面全体を体表面に適切に接触させることが困難となる。上記発明では、可動部を体表面の変形に追従させるための補助部を備えるようにしているため、体組成測定部に対する体表面の凹凸形状の影響が可動部により吸収されるようになる。これにより、体表面の凹凸形状のある部位においても体組成測定部を体表面に対して適切に接触させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、広範囲の体組成を連続的に且つ精度よく測定することができる体組成測定装置を提供することができる。または、体組成をより精度よく測定することのできる体組成測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の皮下脂肪測定装置について、その構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の皮下脂肪測定装置について、その底面構造を示す底面図。
【図3】同実施形態の皮下脂肪測定装置について、図2のA−A線に沿う断面構造を示す断面図。
【図4】生体の胴体の断面構造を模式的に示す断面図。
【図5】同実施形態の皮下脂肪測定装置について、図2のB−B線に沿う断面構造を示す断面図。
【図6】同実施形態の皮下脂肪測定装置を用いて皮下脂肪量の測定を行うときのユーザの状態を示す正面図。
【図7】同実施形態の皮下脂肪測定装置を用いて皮下脂肪量の測定を行うときのユーザの状態を示す平面図。
【図8】本発明の第2実施形態の皮下脂肪測定装置について、その断面構造を模式的に示す断面図。
【図9】本発明の第3実施形態の皮下脂肪測定装置について、その伝達部の外観を模式的に示す平面図。
【図10】本発明の第4実施形態の皮下脂肪測定装置について、その断面構造を模式的に示す断面図。
【図11】本発明の第5実施形態の皮下脂肪測定装置について、その断面構造を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1を参照して、皮下脂肪測定装置10の構造について説明する。
図1に示されるように、皮下脂肪測定装置10は、体表面4に対して光を照射するとともに生体1内を伝搬した光を受ける測定ユニット20と、同ユニット20の測定データに基づいて皮下脂肪量を算出する本体ユニット100とを含めて構成されている。
【0021】
測定ユニット20は、その本体をなすユニット本体21と、発光素子31及び第1受光素子32及び第2受光素子33を含む光学式測定部30と、体表面4に対する同光学式測定部30の押し付け圧力(以下、「押圧力」)を測定するための押圧力測定部40と、体表面4上において当該ユニット20を滑らかに移動させるための球体22とを含めて構成されている。
【0022】
押圧力測定部40は、体表面4に対する光学式測定部30の押圧力に応じて変形するひずみゲージ41と、同ゲージ41の変形にともなう電気信号の変化を検知する検知回路42と、ゲージ41と検知回路42とを接続するリード線43とを含めて構成されている。ユーザによる測定ユニット20の操作にともない押圧力測定部40の押圧力が増加したとき、検知回路42においてはこの押圧力の増加に対応した電気信号の変化が検知される。また、押圧力測定部40の押圧力が低下したとき、検知回路42においてはこの押圧力の低下に対応した電気信号の変化が検知される。
【0023】
本体ユニット100は、測定ユニット20の測定結果に基づく皮下脂肪量の演算、及び測定ユニット20に対する制御指令の送信を行う制御部101と、演算結果としての皮下脂肪量を表示する表示部102とを含めて構成されている。制御部101には、光学式測定部30の測定結果である各素子の受光量に相当する信号、及び押圧力測定部40の測定結果である光学式測定部30の押圧力に相当する信号がそれぞれ送信される。
【0024】
制御部101は、第1受光素子32の受光量、第2受光素子33の受光量、及び光学式測定部30の押圧力に基づいて、皮下脂肪量を算出する。皮下脂肪量としては、皮下脂肪面積と皮下脂肪体積と皮下脂肪厚と皮下脂肪重量の少なくとも1つを算出することができる。またこの他に、腹部皮下脂肪厚と腹筋厚と腹部皮下脂肪面積と内臓脂肪面積との少なくとも1つを算出することもできる。
【0025】
表示部102は、制御部101から送信される信号に基づいて、皮下脂肪量をはじめとする各種の情報を表示する。皮下脂肪測定装置10のユーザは、同表示部102に表示される情報を通じて皮下脂肪量の測定結果等を把握することができる。
【0026】
図2に測定ユニット20の底面構造を示す。
同図に示されるように、測定ユニット20には4つの球体22が設けられている。また、発光素子31及び第1受光素子32及び第2受光素子33は、ユニット本体21の底面上において一列に配置されている。
【0027】
図3に図2のA−A線に沿う断面構造を示す。
同図に示されるように、光学式測定部30及び各球体22は、その一部がユニット本体21から突出した状態で同本体21に設けられている。押圧力測定部40は、ユニット本体21内において光学式測定部30と対応するところに設けられている。
【0028】
図4に生体1の胴体2の断面構造を示す。
同図に示されるように、胴体2の内部には、筋肉7を取り囲むように皮下脂肪5が存在している。この皮下脂肪5の周囲は、皮膚3により覆われている。筋肉7により囲まれる部分には、内臓脂肪6が存在している。
【0029】
腹部2Aにおいては、全体にわたり皮下脂肪5が存在している。一方、背中2Bにおいては、脊椎8と対応する部分に筋肉7が存在していることにより、中央部分の皮下脂肪5の量は腹部2Aと比較して少ない。
【0030】
図5を参照して、皮下脂肪量の測定原理について説明する。
発光素子31から生体1に対して照射された光は、散乱及び吸収されながら生体1内を伝播して再び体表面4に現れる。この光は、第1受光素子32または第2受光素子33により受光される。
【0031】
皮下脂肪5は光の移動に対して抵抗となるため、生体1内の皮下脂肪5の量が多いときには生体1内から体表面4に伝搬する光量が少なくなるため、第1受光素子32または第2受光素子33の受光量が少なくなる。一方、皮下脂肪5が少ないときには生体1内から体表面4に伝搬する光量が多くなるため、第1受光素子32または第2受光素子33の受光量が多くなる。第1受光素子32においては、発光素子31から生体1内に照射された光のうち、主に筋肉7に到達する前に体表面4に伝搬した光が受けられる。第2受光素子33においては、発光素子31から生体1内に照射された光のうち、主に皮膚3及び皮下脂肪5を通過して筋肉7に到達した後に体表面4に伝搬した光が受けられる。
【0032】
制御部101は、第1受光素子32の受光量ZAに対する第2受光素子33の受光量ZBの比率(B/A)である受光量比率を算出し、この比率をさらに押圧力測定部40により測定された押圧力に基づいて補正し、その結果を皮下脂肪量として算出する。
【0033】
制御部101には、受光量比率と皮下脂肪量との関係、及び押圧力と皮下脂肪量との関係として、試験等を通じて予め確認されたものが記憶されている。押圧力と皮下脂肪量との関係としては、受光量比率と皮下脂肪量との関係を示す曲線(脂肪量曲線)が押圧力毎に異なるものとなることに基づいて、押圧力毎に脂肪量曲線が記憶されている。
【0034】
例えば、実際の体組成において許容することのできる押圧力の上限値及び下限値をそれぞれ上限押圧力Pmax及び下限押圧力Pminとしたとき、制御部101には上限押圧力Pmaxと下限押圧力Pminとの間における一定の押圧力毎の脂肪量曲線が記憶される。そして、押圧力測定部40により押圧力が測定されたときには、脂肪量曲線に対応する複数の押圧力のうち測定された押圧力に最も近いものを選択し、この押圧力に対応する脂肪量曲線と別途算出した受光量比率とに基づいて皮下脂肪量を算出する。
【0035】
図6及び図7を参照して、測定ユニット20による体組成の測定方法を説明する。
ユーザは、腹部2Aまわりの皮下脂肪量を測定するとき、例えば立位の状態で一方の腕に測定ユニット20を持ち、このユニット20を体表面4に押し付けつつ体表面4に沿って移動させる。このとき測定ユニット20は、各球体22及び光学式測定部30が体表面4に接触した状態で体表面4に対して移動する。そして、測定ユニット20により光の照射及び受光が行われ、この測定結果に基づいて算出された皮下脂肪量が表示部102に表示される。
【0036】
本実施形態の皮下脂肪測定装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態によれば、押圧力測定部40を備えるようにしている。これにより、この測定部40の測定結果を利用して皮下脂肪量の測定精度を高めることができる。また体表面4上を移動するための球体22を備えるようにしている。これにより、当該皮下脂肪測定装置10を生体1に対して移動させることにより、皮下脂肪5の測定箇所を変更することができる。従って、広範囲の皮下脂肪量を連続的に且つ精度よく測定することができる。
【0037】
(2)本実施形態によれば、測定ユニット20には、体表面4上を移動するための球体22が四方端部に4つ設けられている。これにより、球体が2つ設けられているものに比べて、例えば上下左右といった全方向に球体22を動かしやすくなり、ユーザがスムーズに皮下脂肪測定装置10を移動させることができる。
【0038】
(3)本実施形態によれば、制御部101が第1受光素子32の受光量ZAに対する第2受光素子33の受光量ZBの比率(B/A)である受光量比率を算出し、この比率をさらに押圧力測定部40により測定された押圧力に基づいて補正し、その結果を皮下脂肪量として算出する。これにより、制度良く皮下脂肪量を測定することができるようになる。
【0039】
(第2実施形態)
図8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお以下では、前記第1実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0040】
本実施形態では、第1実施形態のひずみゲージ41を含む押圧力測定部40に代えて、圧力センサ51を含む押圧力測定部50を備えるようにしている。
押圧力測定部50は、体表面4に対する光学式測定部30の押圧力に応じて変形する空気袋52と、同袋52の変形にともなう袋内の圧力の変化を検知する圧力センサ51と、同センサ51からの圧力に関する信号を受け取る検知回路53とを含めて構成されている。ユーザによる測定ユニット20の操作にともない押圧力測定部50の押圧力が増加したとき、空気袋52の内圧が増加するとともにこの内圧の増加が圧力センサ51により検知される。また、押圧力測定部50の押圧力が低下したとき、空気袋52の内圧が低下するとともに、この内圧の低下が圧力センサ51により検知される。
【0041】
本実施形態によれば、先の第1実施形態による前記(1)の効果、すなわち広範囲の皮下脂肪量を連続的に且つ精度よく測定することができる旨の効果に加えて、第1実施形態による前記(2)及び(3)の効果を奏することができる。
【0042】
(第3実施形態)
図9を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。なお以下では、前記第1実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0043】
本実施形態の皮下脂肪測定装置10には、押圧力測定部40の測定結果をユーザに伝達するための圧力表示部60がさらに設けられている。この圧力表示部60は、伝達線64を通じて本体ユニット100の制御部101に接続されている。また圧力表示部60には、押圧力が適正範囲内である旨を示す第1表示灯61と、押圧力が適正範囲を上回る旨を示す第2表示灯62と、押圧力が適正範囲を下回る旨を示す第3表示灯63とが設けられている。
【0044】
制御部101は、押圧力測定部40からの測定結果を受信したとき、これに基づいて第1表示灯61〜第3表示灯63のいずれかを点灯する。すなわち、押圧力測定部40により測定された押圧力が予め設定された適正範囲内にあるか否かを判定し、適正範囲内にある旨判定したときには第1表示灯61を点灯する。一方、押圧力測定部40により測定された押圧力が適正範囲外である旨判定したときには、押圧力が適正範囲を上回るか下回るかを判定する。そして、押圧力が適正範囲を上回る旨判定したときには、第2表示灯62を点灯し、押圧力が適正範囲を下回る旨判定したときには第3表示灯63を点灯する。
【0045】
なおここでいう適正範囲は、皮下脂肪測定装置10による皮下脂肪の測定を行ううえで必要とされる精度を確保することが可能となる押圧力の範囲を示すものであり、試験等を通じて予め設定される。その一例としては、先の第1実施形態における上限押圧力Pmax及び下限押圧力Pminが挙げられる。
【0046】
本実施形態によれば、先の第1実施形態による前記(1)の効果、すなわち広範囲の皮下脂肪量を連続的に且つ精度よく測定することができる旨の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
【0047】
(4)本実施形態によれば、押圧力測定部40による測定の結果をユーザに知らせる圧力表示部60を備えるようにしている。これにより、ユーザが生体1に対する押圧力測定部40の押圧力を確認しながら測定ユニット20の操作を行うことができる。これにより、押圧力が適切に維持された状態での皮下脂肪5の測定が行われやすくなるため、皮下脂肪量の測定精度をより高めることができる。
【0048】
(第4実施形態)
図10を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。なお以下では、前記第2実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0049】
本実施形態の皮下脂肪測定装置10には、押圧力測定部50の押圧力を自動的に調整するための調整機構70がさらに設けられている。この調整機構70は、供給路72を介して空気袋52に空気を供給するポンプ71と、排出路74を介して空気袋52内の空気を排出するためのバルブ73とを含めて構成されている。バルブ73が閉弁状態にあるとき、空気袋52内からの空気の排出は行われない。一方、バルブ73が開弁状態にあるとき、空気袋52内の空気がバルブ73を介して外部に排出される。
【0050】
制御部101は、押圧力測定部50からの測定結果を受信したとき、これに基づいてポンプ71及びバルブ73の制御を行うことにより、押圧力測定部50の押圧力を適正範囲内に維持する。すなわち、押圧力測定部50により測定された押圧力が予め設定された適正範囲内にあるか否かを判定し、適正範囲内にある旨判定したときにはバルブ73を閉弁状態に維持し且つポンプ71による空気の供給を停止することにより、空気袋52の内圧を維持する。一方、押圧力測定部50により測定された押圧力が適正範囲外である旨判定したときには、押圧力が適正範囲を上回るか下回るかを判定する。そして、押圧力が適正範囲を上回る旨判定したときには、バルブ73を開弁して空気袋52の空気を排出し且つポンプ71による空気の供給を停止することにより、空気袋52の内圧を適正範囲まで低下させる。一方、押圧力が適正範囲を下回る旨判定したときには、バルブ73を閉弁状態に維持し且つポンプ71による空気の供給を実行することにより、空気袋52の内圧を適正範囲まで増加させる。
【0051】
本実施形態によれば、先の第1実施形態による前記(1)の効果、すなわち広範囲の皮下脂肪量を連続的に且つ精度よく測定することができる旨の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
【0052】
(5)本実施形態では、体表面4に対する光学式測定部30の押圧力を適正範囲内に維持する調整機構70を備えるようにしている。これにより、皮下脂肪量の測定を精度良く行うために、ユーザに対して過度に精密な操作が要求されることを抑制することができる。
【0053】
(第5実施形態)
図11を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。なお以下では、前記第1実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0054】
本実施形態の皮下脂肪測定装置10には、ユーザが測定ユニット20を体表面4に沿って移動させるときに球体22を体表面4の形状に追従させるための球体追従機構80がさらに設けられている。この球体追従機構80は、体表面4に向けて押す力を球体22に付与するばね81と、球体22とは反対側のばね81の端部を支持する支持部82とを含めて構成されている。
【0055】
図11に示されるように、体表面4の凹凸形状のある部位に測定ユニット20を接触させたとき、各球体22に対応するばね81は押圧力に応じて変形する。また、体表面4の凸部に対応する球体22(図中右側)と、この凸部よりも窪んだ部位に対応する球体22(図中左側)との間においては、それぞれのばね81の変形量が次のように異なる。すなわち、凸部に対応する球体22のばね81の変形量は、窪んだ部位に対応する球体22のばね81の変形量よりも大きくなる。そして、このようにばね81の変形量に違いが生じることにより、光学式測定部30に対する体表面4の凹凸形状の影響が吸収される。これにより、凹凸形状がある部位においても光学式測定部30の測定面全体が体表面4に接触した状態に維持される。
【0056】
本実施形態によれば、先の第1実施形態による前記(1)の効果、すなわち広範囲の皮下脂肪量を連続的に且つ精度よく測定することができる旨の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
【0057】
(6)皮下脂肪測定装置10が体表面4上の凹凸形状をなす部位にあるときには、光学式測定部30が体表面4に対して傾くことにより同光学式測定部30の測定面全体を体表面4に適切に接触させることが困難となる。本実施形態では、球体22を体表面4の変形に追従させるための球体追従機構80を備えるようにしている。これにより、光学式測定部30に対する体表面4の凹凸形状の影響が球体22により吸収されるようになり、体表面4の凹凸形状のある部位においても皮下脂肪測定装置10を体表面4に対して適切に接触させることができる。
【0058】
(その他の実施形態)
本発明の体組成測定装置の実施態様は、上記各実施形態にて例示した実施態様に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また、以下に示される各変形例は、対応する実施形態にのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0059】
・上記第3実施形態では、測定ユニット20に圧力表示部60及び球体22を併せて備えるようにしたが、同ユニット20から球体22を省略することもできる。この場合にも、ユーザが押圧力を確認しつつ測定ユニット20の操作を行うことができることにより、押圧力が適切に維持された状態での皮下脂肪5の測定が行われやすくなるため、より精度の高い皮下脂肪量の測定を可能にする皮下脂肪測定装置10を実現することができる。なお、上記第3実施形態以外の各実施形態についても球体22を測定ユニット20から省略するとともに圧力表示部60を新たに追加することにより、少なくとも上記と同様の効果を奏する皮下脂肪測定装置10を実現することができる。
【0060】
・上記第3実施形態では、検出した押圧力をユーザに報知するための圧力表示部60を備えるようにしたが、押圧力をユーザに報知するための構成はこれに限られるものではない。すなわち、圧力表示部60への表示を通じての押圧力の伝達に代えて、音または光または振動により押圧力測定部40の測定結果をユーザに伝達することもできる。例えば、音により押圧力を伝達する構成においては、押圧力が適正範囲内にあるときにはその旨を示す第1の音声を、また押圧力が適正範囲を上回る強い圧力にあるときにはその旨を示す第2の音声を、また押圧力が適正範囲を下回る弱い圧力にあるときにはその旨を示す第3の音声をスピーカーから出力することにより、ユーザに対してそのときどきの押圧力が適正範囲内のものか否かを報知することができる。
【0061】
・上記第3実施形態では、上記第1実施形態の皮下脂肪測定装置10に対して圧力表示部60をさらに備える構成としたが、これに代えてまたは加えて、本体ユニット100に押圧力測定部40の測定結果を表示することもできる。またあるいは、測定ユニット20に表示部102を設けるとともに、この表示部102に押圧力測定部40の測定結果を表示することもできる。
【0062】
・上記第3実施形態では、制御部101により圧力表示部60の制御を行うようにしたが、本体ユニット100とともに制御部101を省略し、次のように圧力表示部60の制御を行うこともできる。すなわち、検知回路42上に押圧力に基づいて圧力表示部60を制御するための制御回路を設け、この制御回路と圧力表示部60とを互いに接続する。この場合、押圧力測定部40により測定された押圧力が適正範囲内にあるときには、第1表示灯61を点灯する旨の信号が制御回路から同表示灯61に送信される。また、押圧力測定部40により測定された押圧力が適正範囲を上回るときには、第2表示灯62を点灯する旨の信号が制御回路から同表示灯62に送信される。また、押圧力測定部40により測定された押圧力が適正範囲を下回るときには、第3表示灯63を点灯する旨の信号が制御回路から同表示灯63に送信される。
【0063】
・上記第4実施形態では、空気袋52の内圧を変更することにより光学式測定部30の押圧力を調整するようにしたが、空気袋52に代えて内部に液体が充填された液体袋を採用することもできる。この場合には、バルブの出口とポンプの入口とを接続する液体用流路と、この流路の途中において液体を貯留する液体貯留部とが新たに設けられる。そして制御部101は、押圧力測定部50により測定された押圧力が適正範囲を下回る旨判定したとき、液体貯留部の液体をポンプにより液体袋に供給し、これにより押圧力測定部50の押圧力を増加させる。一方、押圧力測定部50により測定された押圧力が適正範囲を上回る旨判定したとき、バルブを開弁して液体袋の液体を液体貯留部に戻し、これにより押圧力測定部50の押圧力を低下させる。
【0064】
・上記第4実施形態では、制御部101によりポンプ71及びバルブ73の制御を行うようにしたが、本体ユニット100とともに制御部101を省略し、次のようにポンプ71及びバルブ73の制御を行うこともできる。すなわち、検知回路53上に押圧力に基づいてポンプ71及びバルブ73を制御するための制御回路を設け、この制御回路とポンプ71及びバルブ73をそれぞれ接続する。この場合、押圧力測定部50により測定された押圧力が適正範囲内にあるときには、ポンプ71を停止する信号及びバルブ73を閉弁する信号が制御回路からポンプ71及びバルブ73のそれぞれに送信される。また、押圧力測定部50により測定された押圧力が適正範囲を上回るときには、ポンプ71を停止する信号及びバルブ73を開弁する信号が制御回路からポンプ71及びバルブ73のそれぞれに送信される。また、押圧力測定部50により測定された押圧力が適正範囲を下回るときには、ポンプ71を駆動する信号及びバルブ73を閉弁する信号が制御回路からポンプ71及びバルブ73のそれぞれに送信される。
【0065】
・上記第5実施形態では、球体22を体表面4に追従させるための構造として球体追従機構80を備えるようにしたが、球体追従機構80の構成はこれに限られるものではない。例えば、ばね81に代えて他の弾性体(ゴム等)を採用することもできる。
【0066】
・上記各実施形態に対して次の制御を追加することもできる。すなわち、押圧力測定部40(または50)により測定された押圧力が適正範囲内にあるときに限り測定ユニット20による体組成の測定を許可する制御を制御部101により行うこともできる。具体的には、ユーザにより測定ユニット20が体表面4に押し付けられたときに、押圧力の測定を行うとともに光学式測定部30による光の照射を保留し、制御部101において測定した押圧力が適正範囲内のものか否かを判定する。そして、押圧力が適正範囲内である旨判定したときに光学式測定部30からの光の照射を行う。一方、押圧力が適正範囲外である旨判定したときには、押圧力が適正範囲内である旨判定するまで光の照射を保留する。すなわち、押圧力が適正範囲外にあるときには光学式測定部30による皮下脂肪量の測定を禁止する。このような構成によれば、光学式測定部30の押圧力が適正範囲外にある状態で皮下脂肪量の測定が行われる頻度が低減されるため、皮下脂肪量の測定精度の低下を抑制することができる。
【0067】
・上記各実施形態では、測定ユニット20に4つの球体22が設けられる構成を採用したが、測定ユニット20に設ける球体22の数は1以上であれば適宜変更することができる。
【0068】
・上記各実施形態では、測定ユニット20を体表面4に沿って滑らかに移動させるための構造として球体22を採用したが、同構造の具体的な内容はこれに限られるものではない。例えば、球体22に代えてまたは加えて測定ユニット20にローラを設けることもできる。
【0069】
・上記各実施形態では、皮下脂肪測定装置10を用いた測定態様の例として腹部2Aの皮下脂肪5を測定する場合を示したが、同測定装置10により生体1の他の部位(脚や腕)の皮下脂肪5を測定することもできる。
【0070】
・上記各実施形態では、測定ユニット20に2つの受光素子を備える構成を採用したが、受光素子の一方を省略しても上記各実施形態に準じた態様をもって本発明を適用することができる。
【0071】
・上記各実施形態では、本体ユニット100と測定ユニット20とが各別に構成されるとともに、本体ユニット100に制御部101が設けられる皮下脂肪測定装置10としたが、本体ユニット100を省略して皮下脂肪測定装置10を構成することもできる。この場合には、制御部101に相当するものを測定ユニット20の検知回路42(または検知回路53)に設けることにより、各実施形態においての制御部101による制御と同様の制御を行うことができる。また、表示部102に相当するものをユニット本体21に設けることにより、各実施形態と同様に皮下脂肪量の測定結果をユーザに伝達することができる。
【0072】
・上記各実施形態では、測定ユニット20として光学式のものを採用したが、体表面4に接触して体組成の測定を行うものであれば、測定ユニットとしては光学式とは別のものを採用することもできる。例えば、生体インピーダンス法により体脂肪量を測定する測定ユニットを備えることもできる。この場合には、体脂肪量としては、具体的には次に挙げるものを算出することができる。すなわち皮下脂肪量として、皮下脂肪面積と皮下脂肪体積と皮下脂肪厚と皮下脂肪重量の少なくとも1つを算出することができる。また内臓脂肪量として、内臓脂肪面積と内臓脂肪体積と内臓脂肪厚と内臓脂肪重量との少なくとも1つを算出することができる。またこの他に、腹部皮下脂肪厚と腹筋厚と腹部皮下脂肪面積と内臓脂肪面積との少なくとも1つを算出することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1…生体、2…胴体、2A…腹部、2B…背中、3…皮膚、4…体表面、5…皮下脂肪、6…内臓脂肪、7…筋肉、8…脊椎、10…皮下脂肪測定装置(体組成測定装置)、20…測定ユニット、21…ユニット本体(測定装置本体)、22…球体(可動部)、30…光学式測定部(体組成測定部)、31…発光素子、32…第1受光素子、33…第2受光素子、40…押圧力測定部、41…ひずみゲージ、42…検知回路、43…リード線、50…押圧力測定部、51…圧力センサ、52…空気袋、53…検知回路、60…圧力表示部(伝達部)、61…第1表示灯、62…第2表示灯、63…第3表示灯、64…伝達線、70…調整機構(押圧力調整部)、71…ポンプ、72…供給路、73…バルブ、74…排出路、80…球体追従機構(補助部)、81…ばね、82…支持部、100…本体ユニット、101…制御部、102…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体組成を測定する体組成測定部と、同測定部が設けられる測定装置本体とを備える体組成測定装置において、
体表面上を移動するための可動部と、体表面への前記体組成測定部の押圧力を測定するための押圧力測定部とを備える
ことを特徴とする体組成測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の体組成測定装置において、
体表面に対する前記体組成測定部の押圧力が適正範囲内にあるときに体組成の測定が開始される
ことを特徴とする体組成測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の体組成測定装置において、
前記押圧力測定部による測定の結果をユーザに知らせる伝達部を備える
ことを特徴とする体組成測定装置。
【請求項4】
体組成を測定する体組成測定部と、同測定部が設けられる測定装置本体とを備える体組成測定装置において、
体表面への前記体組成測定部の押圧力を測定するための押圧力測定部と、この押圧力測定部による測定の結果をユーザに知らせる伝達部とを備える
ことを特徴とする体組成測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の体組成測定装置において、
体表面に対する前記体組成測定部の押圧力を適正範囲内に維持する押圧力調整部を備える
ことを特徴とする体組成測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の体組成測定装置において、
可動部を体表面の変形に追従させるための補助部を備える
ことを特徴とする体組成測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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