説明

体表面モニタ及び表面放射能汚染測定方法

【課題】被検者の前後方向の厚みを容易に検知して表面放射能汚染を測定できる体表面モニタ及び表面放射能汚染測定方法を提供する。
【解決手段】被検者1の表面放射能汚染を測定する体表面モニタであって、背面検出ユニットと、開閉可能な一対の扉7,7にそれぞれ支持され、扉7,7が閉じた状態で隙間を形成した位置と隙間を閉じた位置をとる各頭部検出器ユニット11,11と、隙間に対応して天井部及び床部に配置され、隙間を通過した光線を被検者1が遮ることによって被検者1の位置を計測する複数個の光電センサ15と、計測した被検者1の位置により背面検出ユニットを移動する駆動機構とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力施設において従事者の人体表面の放射能汚染を測定する近接型の体表面モニタ及び表面放射能汚染測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に従来の体表面モニタは、モニタ本体に固定設置された放射線検出器により被検者の前背面、側面、手部、足部及び頭部の体表面における放射能汚染を測定する。ここで、頭部測定用の放射線検出器においては、被検者の身長に応じて昇降動作を行うことにより、被検者との距離を一定に保つことができる。しかし、その他の部位については、放射線検出器が固定設置されているために、被検者の体型によって放射線検出器と体表面の距離は大きく異なることとなる。例えば、体型が痩せている被検者は、放射線検出器と被検者の体表面との距離が、放射性線源を用いた校正試験時の線源から放射線検出器の距離に比較して大きくなってしまい、測定結果の信頼性は高いとはいえない。
【0003】
この対策として、下記特許文献1の体表面モニタにおいては、背面検出器側に設けた被検者の背部に接触する接触型のセンサにより背部の位置を検知し、背面検出器を被検者に接近させるように移動して停止している。
【0004】
また、下記特許文献2の体表面モニタにおいては、光電センサを具備した背面検出器を被検者に接近させ、背部の位置を検知した時点で停止している。この光電センサは、被検者の背面側に設置された左右に一対の投光側スイッチ、受光側スイッチからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭49−40978号公報
【特許文献2】実願昭59−59236号(実開昭60−173088号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した体表面モニタにおいて、被検者の前後方向の放射線検出器と被検者の距離が被検者の体型によって変わるので、放射線検出器を移動させて、被検者と放射線検出器の距離を調整していた。しかし、接触型センサを用いる例では、そのセンサによりクロスコンタミネーション(二次汚染)を起こすという問題と、放射線検出器が4π方向に被検者を囲んでいる状況においては、センサの配置が難しいという問題と、また、被検者にとって装置が接触してくるということは多少なりとも圧迫感を感じるという問題がある。一方、非接触の光電センサを用いる例では、身長や体型を考慮すると、被検者の高さ方向に小さいピッチにて多数組配置させなければならない。放射線検出器が4π方向に被検者を囲んでいる状況においては、同様に光電センサの配置が難しいという問題がある。
このように、装置の構造上、被検者の位置、特に前後方向の厚みを検知することが難しいという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題を解決するために、被検者の前後方向の厚みを容易に検知して表面放射能汚染を測定できる体表面モニタ及び表面放射能汚染測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の体表面モニタは、被検者の表面放射能汚染を測定する体表面モニタであって、
背面検出ユニットと、開閉可能な一対の扉にそれぞれ支持され、前記扉が閉じた状態で隙間を形成した位置と隙間を閉じた位置をとる各頭部検出器ユニットと、前記隙間に対応して天井部及び床部に配置され、前記隙間を通過した光線を被検者が遮ることによって被検者の位置を計測する複数個の光電センサと、計測した被検者の位置により前記背面検出ユニットを移動する駆動機構とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の表面放射能汚染測定方法は、体表面モニタを用いた被検者の表面放射能汚染を測定する方法であって、体表面モニタ本体への被検者の入室を検知したとき、開閉可能な一対の扉が閉じる工程と、前記一対の扉が閉じたときに前記扉にそれぞれ支持された各頭部検出器ユニットが隙間を形成する工程と、前記隙間に対応して天井部及び床部に配置された複数個の光電センサが発光し、前記隙間を通過した光線を被検者が遮ることによって被検者の後部の位置を計測する工程と、前記各頭部検出器ユニットを被検者の頭頂付近まで下降させ、かつ前記各頭部検出器ユニットの前記隙間を閉じる工程と、計測された被検者の後部の位置により、背面検出ユニットを移動する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、被検者の前後方向の厚みを容易に検知して表面放射能汚染の測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る体表面モニタの扉が開いている状態で入口側から見た図。
【図2】同じく扉が閉じている状態で入口側から見た図。
【図3】図1のA−A線から下方に向かって見た断面図。
【図4】図2のB−B線から下方に向かって見た断面図。
【図5】本発明の実施形態に係る体表面モニタの本体内部から背面側を見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る体表面モニタ及び表面放射能汚染測定方法について、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係る体表面モニタの入口側から見た図であり、図1は扉が開いた状態、図2は扉が閉じた状態を示している。
【0013】
図3は、図1のA−A線から下方に向かって見た断面図、図4は、図2のB−B線から下方に向かって見た断面図である。
図5は、体表面モニタの本体内部から背面側を見た斜視図である。
なお、放射線検出器は単に「検出器」ともいう。
【0014】
本実施形態の体表面モニタは、被検者1の前面、背面、側面、手部、足部及び頭部の表面放射能汚染密度を測定するものである。その本体は、床部2、天井部3、被検者1の前面側に複数個の前面用検出器4、手部用検出器10及び背面側に背面検出ユニット5を有し、更に、被検者1が本体に入った後に閉じる動作を行い、検査が終わった後に開く動作を行うように回転軸8,8の回りに回動する出入り口用の扉7,7を有する。各扉7,7には、複数個の側面用検出器9が設置され、その回転軸上部に頭部検出ユニット11,11が支持されている。各頭部検出器ユニット11,11は、それぞれに頭部上面を測定する頭上用検出器12,12、及び頭部側面を測定する側頭用検出器13,13を有する。また、頭部検出ユニット11,11は、身長に応じて異なる被検者1の頭頂の位置を検知する、例えば光電センサのようなセンサ(不図示)を備えている。
【0015】
図4に示されるように、扉7,7が閉じた後、各頭部検出器ユニット11,11は、連動して下降し頭頂から一定の距離で停止する。また、扉7,7が閉じた時点においては、各頭部検出器ユニット11,11は出入り方向(被検者1の左右方向)の隙間が大きい。このため、被検者1の頭部の放射線検出を行うためには、各頭部検出器ユニット11,11は、その隙間を閉じるように互いに接近するように駆動を行う。これら昇降及び接近動作の駆動機構(不図示)が各頭部検出器ユニット11,11に取り付けられている。
【0016】
各頭部検出器ユニット11,11は、扉7,7が閉じた時点では、各頭上用検出器11,11に隙間が形成され、その隙間に対応して光線が通過するように天井部3及び床部2に対向して直線状に配列された複数個の透過型の光電センサ15が被検者1の中央部、前後方向に配置される。床部2には2つの足部用検出器14が設置されているが、光電センサ15の他方はこれら2つの足部用検出器13の間に配置すればよい。ここで、この光電センサ15は、一方が発光部、他方が受光部のような透過型であるが、一方が発受光部、他方が反射部のような回帰反射型でも代用可能である。光電センサ15の代わりに透過型又は回帰反射型の超音波センサを用いてもよい。
【0017】
図5に示すように、複数個の背面用検出器6を有する背面検出ユニット5は、床部2内に設置された駆動機構、例えばボールネジと電動機を組み合わせた駆動機構16に取り付けられる。駆動機構16を用いて、光電センサ15により計測された被検者1の前後方向の位置により背面検出ユニット5を本体内部へ向かう方向へ移動させ、被検者1の後部から所定の距離で停止させることができる。ここで、駆動機構16の動力源は床部2ではなく、天井部3に設けることも可能である。また、駆動機構16は、床部2に配置する場合には足部用検出器14を避けて配置させる必要があり、駆動方向を支持する駆動用ガイドは床部2及び天井部3にも設置する必要がある。ここで、背面検出ユニット5の位置決めピッチは光電センサ15のピッチと等しくなるため、光電センサ15のピッチはできるだけ小さくすることが望ましい。
【0018】
以下、本実施形態の体表面モニタ及び表面放射能汚染測定方法における、被検者1の前後方向の位置計測、放射線検出の動作を説明する。
【0019】
被検者1が本体に入室したことを検知し、扉7,7が閉じると、同時に各頭部検出器ユニット11,11が回動し、図1から図2に示される状態となる。その後、各頭部検出器ユニット11,11は、連動して下降し、被検者1の頭頂の位置を検知して頭頂から一定の距離で停止する。また、扉7,7が閉じた時点において形成された各頭部検出器ユニット11,11の出入り方向の隙間を閉じるように互いに接近するように駆動を行う。2つの頭上用検出器11,11が接するまでの間に、光電センサ15により被検者1の前後方向の位置を計測する。被検者1の後部の位置検知データを基に、被検者1に接近するよう、駆動機構16により背面検出ユニット5を移動させる。
【0020】
背面検出ユニット5の移動は、被検者1の後部の位置を検知した後なので、移動速度の制御は容易であり迅速に停止させることができる。
【0021】
また、検知した被検者1の後部だけでなく前部の位置も検知しているので、それらの位置に応じて音声ガイダンスやアラームブザーのような音声又は視覚的手段により被検者の立ち位置についての変更、例えば「少し前に進んで下さい」とか、「後ろに下がって下さい」ということを指示することもできる。このような指示を被検者1に行い、立ち位置を修正させた後、背面検出ユニット5を移動させてもよい。
【0022】
このように、被検者1に対して、各検出器は、適正な位置に配置させて、前面、背面、側面、手部、足部及び頭部の表面放射能汚染を正確に測定することができる。
上述のように構成された本実施形態は、その放射線検出器の構造を生かして被検者1の位置、特に前後方向の位置である厚みを測定するための光電センサ15を配置することができる。
【0023】
更に、光電センサ15の検知データにより、被検者1自らがその位置を確認しながら手動にて装置内部から駆動機構16により背面検出ユニット5を移動させることも可能である。また、体型別に複数の体表面モニタが用意されている場合には、別のモニタを使用しての測定を促すなどの案内が可能である。
【0024】
本実施形態によれば、被検者の位置、特に体型のうち、前後方向の厚みに応じて、放射線検出器の位置を変えることができる。また、ガイダンスやアラームによる指示により、被検者自らが放射線検出器に接近することも可能である。このため、厳密な放射線検査及び出入り管理を行うことができる。
【符号の説明】
【0025】
1…被検者、2…床部、3…天井部、4…前面用検出器、5…背面検出ユニット、6…背面用検出器、7,7…扉、8,8…回転軸、9…側面用検出器、10…手部用検出器、11,11…頭部検出ユニット、12,12…頭上用検出器、13,13…側頭用検出器、14…足部用検出器、15…光電センサ、16…駆動機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の表面放射能汚染を測定する体表面モニタであって、
背面検出ユニットと、開閉可能な一対の扉にそれぞれ支持され、前記扉が閉じた状態で隙間を形成した位置と隙間を閉じた位置をとる各頭部検出器ユニットと、前記隙間に対応して天井部及び床部に配置され、前記隙間を通過した光線を被検者が遮ることによって被検者の位置を計測する複数個の光電センサと、計測した被検者の位置により前記背面検出ユニットを移動する駆動機構とを有することを特徴とする体表面モニタ。
【請求項2】
前記光電センサの代わりに超音波センサを天井部及び床部に配置し、前記隙間を通過した超音波を被検者が遮ることによって被検者の位置を計測することを特徴とする請求項1に記載の体表面モニタにおける被検者の位置計測装置。
【請求項3】
測定された被検者の位置に応じて被検者に対して位置調整を指示する音声又は視覚的手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の体表面モニタにおける被検者の位置計測装置。
【請求項4】
体表面モニタを用いた被検者の表面放射能汚染測定方法であって、
体表面モニタ本体への被検者の入室を検知したとき、開閉可能な一対の扉が閉じる工程と、
前記一対の扉が閉じたときに前記扉にそれぞれ支持された各頭部検出器ユニットが隙間を形成する工程と、
前記隙間に対応して天井部及び床部に配置された複数個の光電センサが発光し、前記隙間を通過した光線を被検者が遮ることによって被検者の後部の位置を計測する工程と、
前記各頭部検出器ユニットを被検者の頭頂付近まで下降させ、かつ前記各頭部検出器ユニットの前記隙間を閉じる工程と、
計測された被検者の後部の位置により、背面検出ユニットを移動する工程と、
を有することを特徴とする表面放射能汚染測定方法。
【請求項5】
前記背面検出ユニットを移動する工程の前に、被検者の前方位置の修正を行う工程を有することを特徴とする請求項4に記載の表面放射能汚染測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223603(P2010−223603A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68242(P2009−68242)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】