体調判定装置
【課題】疾病以外の睡眠不足などによる被験者の体調不良状態を推定することが可能な体調判定装置を提供する。
【解決手段】体調判定装置は、温度センサ20と体調不良推定部36とタイマ37とを備える。温度センサ20は、被験者の体のうち、被験者の体調が良好である体調良好状態に対して被験者の体調が良好でない体調不良状態の温度が低下し易い特定部分の温度を検出する。タイマ37は、温度センサが検出した特定部分の温度が所定温度以下であるときに、その継続時間を計測する。体調不良推定部36は、タイマ37が計測した継続時間が所定時間以上であるときに、被験者が体調不良状態であると推定する。
【解決手段】体調判定装置は、温度センサ20と体調不良推定部36とタイマ37とを備える。温度センサ20は、被験者の体のうち、被験者の体調が良好である体調良好状態に対して被験者の体調が良好でない体調不良状態の温度が低下し易い特定部分の温度を検出する。タイマ37は、温度センサが検出した特定部分の温度が所定温度以下であるときに、その継続時間を計測する。体調不良推定部36は、タイマ37が計測した継続時間が所定時間以上であるときに、被験者が体調不良状態であると推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の体調不良状態を推定する体調判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9−28678号公報には、人体の体幹部の皮膚温度と抹消部の皮膚温度との温度差を測定し、温度差が1.49℃のときストレス度が50であり、温度差が2.98℃以上のときストレス度が100であると推定するストレス測定装置が記載されている。
【0003】
また、特開2006−231065号公報には、赤外線を検出するカメラが撮像した画像に基づいて被験者の額や鼻筋の温度を検出し、検出した温度が華氏99.6度を超えていたときにアラームを発するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−28678号公報
【特許文献2】特開2006−231065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特開平9−28678号公報のストレス測定装置や上記特開2006−231065号公報のシステムでは、疾病以外の睡眠不足などによる体調不良については、検知することができない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、疾病以外の睡眠不足などによる被験者の体調不良状態を推定することが可能な体調判定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様の体調判定装置は、温度検出手段と計時手段と体調不良推定手段とを備える。
【0008】
温度検出手段は、被験者の体のうち、被験者の体調が良好である体調良好状態に対して被験者の体調が良好でない体調不良状態の温度が低下し易い特定部分の温度を検出する。計時手段は、温度検出手段が検出した特定部分の温度が所定温度以下であるときに、その継続時間を計測する。体調不良推定手段は、計時手段が計測した継続時間が所定時間以上であるときに、被験者が体調不良状態であると推定する。
【0009】
特定部分としては、例えば鼻が設定される。ただし、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し易い部分であれば、鼻に限定されるものではない。
【0010】
なお、発熱により被験者の特定部分の温度が所定温度を超えている状態は、体調不良状態に含んでいない。
【0011】
上記構成では、被験者の特定部分の温度が所定時間以上継続して所定温度以下に低下すると、被験者が体調不良であると推定される。また、被験者の特定部分の温度が所定温度以下でないときや、被験者の特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であるときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0012】
従って、寝不足などにより被験者の特定部分の温度が所定時間以上継続して所定温度以下に低下しているときには、被験者が体調不良状態であると推定される。
【0013】
また、被験者の体調が良好であり被験者の特定部分の温度が所定温度を超えているときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0014】
また、緊張や集中などにより被験者の特定部分の温度が所定時間未満の間、所定温度以下に低下しているときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0015】
また、本発明の第2の態様の体調判定装置は、第1の態様の体調判定装置であって、所定温度は、体調良好状態における被験者の特定部分の温度に基づいて設定される。
【0016】
上記構成では、体調良好状態における被験者の特定部分の温度に基づいて所定温度が設定される。すなわち、被験者毎の体の温度の個人差に応じて所定温度が設定されるため、被験者が体調不良状態であるか否かが、より適確に推定される。
【0017】
また、本発明の第3の態様の体調判定装置は、第1の態様の体調判定装置であって、第2の温度検出手段を備える。
【0018】
第2の温度検出手段は、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い第2の特定部分の温度を検出する。所定温度は、第2の温度検出手段が検出した第2の特定部分の温度に基づいて設定される。
【0019】
第2の特定部分は、例えば、額が設定される。ただし、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い部分であれば、額に限定されるものではない。
【0020】
上記構成では、被験者の体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し易い特定部分の温度と比較される所定温度が、その被験者の体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い第2の特定部分の温度に基づいて設定される。
【0021】
ここで、被験者の体は、特定部分であるか第2の特定部分であるかにかかわらず、気温や湿度など周囲の環境が変化したときにはその変化に応じて温度が略一様に上昇又は低下する。このため、周囲の環境の変化により被験者の特定部分の温度が上昇又は低下したときには、被験者の特定部分の温度と同様に上昇又は低下した所定温度が設定される。
【0022】
従って、周囲の環境の変化に応じて被験者の特定部分の温度が上昇又は低下したときには、所定温度と特定部分の温度との温度差が維持され、特定部分の温度が所定温度以下になり難い。このため、特定部分の温度が所定温度以下でないこと又は特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であることを条件に、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0023】
なお、被験者が発熱したときには、被験者の体は、特定部分であるか第2の特定部分であるかにかかわらず、温度が略一様に上昇する。従って、被験者の周囲の環境の変化が生じた場合と同様に、所定温度と特定部分の温度との温度差が維持され、特定部分の温度が所定温度以下になり難い。このため、特定部分の温度が所定温度以下でないこと又は特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であることを条件に、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0024】
また、本発明の第4の態様の体調判定装置は、第3の態様の体調判定装置であって、所定温度は、第2の温度検出手段が検出した第2の特定部分の温度と、体調良好状態における被験者の特定部分及び第2の特定部分の温度に基づいて設定される。
【0025】
上記構成では、第2の温度検出手段が検出した第2の特定温度に基づいて所定温度が設定されるため、第3の態様の体調判定装置と同様に、周囲の環境の変化に応じて被験者の特定部分の温度が上昇又は低下したときや、被験者が発熱したときには、所定温度と特定部分の温度との温度差が維持され、特定部分の温度が所定温度以下になり難い。
【0026】
また、体調良好状態における被験者の特定部分及び第2の特定部分の温度に基づいて設定される。これにより、温度検出手段が検出した被験者の特定部分の温度の上昇や低下が、その被験者の体調良好状態における特定部分の温度を使用することにより適確に判るとともに、第2の温度検出手段が検出した被験者の第2の特定部分の温度の上昇や低下が、その被験者の体調良好状態における第2の特定部分の温度を使用することにより適確に判る。従って、所定温度が被験者毎の体の温度の個人差に応じて設定されることによって、被験者が体調不良状態であるか否かが、より適確に推定される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、疾病以外の睡眠不足などによる被験者の体調不良状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る体調判定装置を示す模式図である。
【図2】図1の体調判定装置を示すブロック図である。
【図3】図1の体調判定装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【図4】図3の処理の被験者設定処理を示すフローチャートである。
【図5】図3の処理の所定温度設定処理を示すフローチャートである。
【図6】図3の処理の体調不良状態判定処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る体調判定装置を示すブロック図である。
【図8】図7の体調判定装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【図9】図7の処理の被験者設定処理を示すフローチャートである。
【図10】図7の処理の基準温度差設定処理を示すフローチャートである。
【図11】図7の処理の体調不良状態判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0030】
図1は第1の実施形態に係る体調判定装置を示す模式図であり、図2は図1の体調判定装置を示すブロック図であり、図3〜図6は図1の体調判定装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【0031】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係る体調判定装置1は、温度センサ20とコントローラ30とを備える。また、体調判定装置1は、表示部40と入力部50とを備える。
【0032】
温度センサ20は、被験者の体のうち特定部分の温度を検出可能なサーモグラフィであり、温度検出手段を構成する。特定部分とは、被験者の体のうち、被験者の体調が良好である体調良好状態に対して被験者の体調が良好でない体調不良状態の温度が低下し易い部分である。本実施形態では、特定部分として、体調良好状態に対して体調不良状態のときに温度が比較的顕著に低下する鼻が設定される。図1に示すように、具体的には、温度センサ20は、着座した状態の被験者(図1に符号5で示す)の顔に向けて配置され、サーモグラフィで検出した画像を処理することによって、被験者の顔の目の位置を検知して、鼻の位置を推定して鼻の温度を検出する。本実施形態では、鼻と推定した領域の温度を平均したものを鼻の温度として検出する。
【0033】
体調不良状態とは、疾病以外の睡眠不足などにより特定部分の温度が低下する状態をいう。なお、本実施形態の体調不良状態は、発熱により被験者の特定部分の温度が所定温度を超えている状態を含まない。また、本実施形態の体調良好状態とは、体調不良状態と発熱状態とを除いた状態をいう。
【0034】
図2に示すように、コントローラ30は、記憶部31と被験者設定部32と所定温度設定部33と体調不良状態判定部34とタイマ37とを備える。
【0035】
記憶部31は、被験者の氏名と、被験者の体調良好状態における特定部分の温度の平均値とを関連付けて記憶する。
【0036】
被験者設定部32は、被験者設定処理を実行する。被験者設定部は、被験者設定処理において、被験者毎に氏名と、その被験者の体調良好状態における特定部分の温度の平均値とを関連付けて記憶部31に記憶させる。
【0037】
所定温度設定部33は、所定温度を設定する。所定温度は、体調良好状態における被験者の特定部分の温度に基づいて設定される。本実施形態では、所定温度設定部33は、被験者毎に、体調良好状態における被験者の特定部分の20分間の温度の平均値よりも2℃低い温度を所定温度として設定する。
【0038】
体調不良状態判定部34は、温度判定部35と体調不良推定部36とを備え、体調不良状態判定処理を実行する。温度判定部35は、温度センサ20が検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であるか否かを判定する。
【0039】
タイマ37は、計時手段を構成し、温度センサ20が検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であると温度判定部35が判定したときに、その継続時間を計測する。また、所定温度設定処理において被験者の体調良好状態を20分間計測する。
【0040】
体調不良推定部36は、体調不良推定手段を構成し、タイマ37が計測した継続時間が所定時間以上であるときに、被験者が体調不良状態であると推定する。また、体調不良判定部は、タイマ37が計測した継続時間が所定時間未満であるときや、温度センサ20が検出した被験者の特定部分の温度が所定温度を超えているときに、被験者が体調不良状態でないと推定する。本実施形態では、所定時間は30分間に設定される。
【0041】
表示部40は、モニタであり、被験者に対して、記憶部31に記憶された被験者の氏名の一覧を表示したり、質問を表示したりする。入力部50は、キーボードやタッチパネルであり、被験者による氏名や現在の体調の入力に使用される。また、入力部50は、被験者によって操作自在な、体調判定処理を開始させるスイッチと体調判定処理を終了させるスイッチとを備える。
【0042】
以下、図3〜図6に示すフローチャートに従って、本実施形態の体調判定装置1のコントローラ30が実行する処理を説明する。本処理は、被験者によって体調判定処理を開始させる入力部50のスイッチが入力されると実行される。
【0043】
まず、被験者設定処理を実行する(ステップS1)。図4に示すように、被験者設定処理では、被験者設定部32は、被験者が自己の氏名を既に登録している否かを被験者に質問する文章を表示部40に表示し(ステップS2)、自己の氏名を既に登録していると被験者が回答した場合には(ステップS3:YES)、登録されている被験者の一覧を表示部40に表示して(ステップS4)、被験者の氏名を被験者に選択させる(ステップS5)。また、自己の氏名を未だ登録していないと被験者が回答した場合には(ステップS3:NO)、被験者に氏名の入力を求める文章を表示部40に表示して被験者に氏名を入力させて(ステップS6)、その氏名を登録する。
【0044】
次に、図3に示すように、被験者設定部32は、登録された氏名の被験者の体調良好状態における特定部分の温度の平均値を記憶しているか否かを判定し(ステップS7)、体調良好状態における特定部分の温度の平均値を記憶していないときには(ステップS7:NO)、被験者に現在の体調が良好であるか否かを質問する文章を表示部40に表示する(ステップS8)。被験者の現在の体調が良好であると被験者が回答した場合には(ステップS9:YES)、所定温度設定処理を実行する(ステップS10)。また、被験者の現在の体調が良好でないと被験者が回答した場合には(ステップS9:NO)、本処理を終了する。
【0045】
図5に示すように、所定温度設定処理では、所定温度設定部33は、タイマ37により計時を開始し(ステップS11)、温度センサ20が逐次検出する被験者の特定部分の温度を取得して記憶する(ステップS12)。次に、ステップS11で計時を開始してから20分経過していないときには(ステップS13:NO)、ステップS12の処理を繰り返し、ステップS11で計時を開始してから20分経過すると(ステップS13:YES)、記憶した20分間の特定部分の温度の平均値を演算し(ステップS14)、算出した特定部分の平均値を被験者の氏名に関連付けて記憶部31に記憶させる(ステップS15)。
【0046】
次に、図3に示すように、ステップS7において体調良好状態における特定部分の温度の平均値を記憶しているとき(ステップS7:YES)、または所定温度設定処理(ステップS10〜S15)を終了したときには、記憶部31に記憶された体調良好状態における特定部分の温度の平均値よりも2℃低い温度を所定温度として設定し(ステップS16)、体調不良状態判定処理へ移行する(ステップS17)。
【0047】
図6に示すように、体調不良状態判定処理では、体調不良状態判定部34は、まず、被験者により体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されているか否かを判定し(ステップS18)、体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されていないときには(ステップS18:NO)、ステップS19へ移行する。また、ステップS18において、体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されているときには(ステップS18:YES)、本処理を終了する。ステップS19では、体調不良状態判定部34の温度判定部35は、温度センサ20により被験者の特定部分の温度を検出し、次いで、温度センサ20が検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であるか否かを判定する(ステップS20)。温度センサ20により検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であるときには(ステップS20:YES)、ステップS22における計時を開始しているか否か判定し(ステップS21)、計時が開始されていないときには(ステップS21:NO)、タイマ37により計時を開始して(ステップS22)、ステップS18へ戻る。また、ステップS21において計時が開始されていると判定すると(ステップS21:YES)、体調不良推定部36は、計時してから30分が経過したか否かを判定し(ステップS23)、計時してから30分が経過しているときには(ステップS23:YES)、被験者が体調不良状態であると推定し(ステップS24)、ステップS18へ戻る。また、ステップS23において計時してから30分が経過していないと判定したときには(ステップS23:NO)、ステップS18へ戻る。また、ステップS20において、温度センサ20により検出した被験者の特定部分の温度が所定温度を超えているときには(ステップS20:NO)、ステップS21における計時を開始しているか否か判定し(ステップS25)、計時が開始されているときには(ステップS25:YES)、計時を終了する(ステップS26)。体調不良推定部36は、ステップS25において計時が開始されていないと判定されたとき(ステップS25:NO)、またはステップS26において計時を終了したときには、被験者が体調不良状態ではないと推定し(ステップS27)、ステップS18へ戻る。
【0048】
次に、第1の実施形態の変形例を示す。
【0049】
本実施形態では、温度センサ20としてサーモグラフィを使用したが、これに限らず、例えば、接触によって温度を検出する温度計を被験者の皮膚に直接取り付けてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、サーモグラフィによって特定部分と推定した領域の温度を平均したものを特定部分の温度として検出するが、これに限らず、特定部分と推定した領域のうち一箇所の温度を特定部分の温度として検出したり、特定部分と推定した領域のうち複数箇所の温度を特定部分の温度として検出してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、特定部分として鼻が設定されるが、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し易い部分であれば、鼻に限定されるものではない。
【0052】
また、本実施形態では、体調良好状態における被験者の特定部分の温度を、20分間の平均値によって求めるが、これに限らず、20分以外の時間の平均値によって求めてもよい。また、体調良好状態における被験者の特定部分の温度を、例えば、1回の検出によって求めたり、複数回の検出に基づいた分散値などを使用して求めてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、被験者の体調良好状態を、被験者の自己申告によって判別するが、これに限らず、例えば、被験者の体調良好状態を長時間(例えば1時間)の特定部分の温度を検出し、検出した温度の変化に基づいて体調良好状態を推定し、推定した体調良好状態における特定部分の温度を所定温度の設定に使用してもよい。
【0054】
また、本実施形態では、所定温度は、被験者毎に、体調良好状態における被験者の特定部分の平均値よりも2℃低い温度に設定されるが、これに限らず、体調良好状態における被験者の特定部分の平均値から2℃未満低い温度に設定したり、2℃を超える温度に設定してもよい。
【0055】
また、本実施形態では、温度センサ20が検出する被験者の特定部分の温度が所定温度以下のときにタイマ37が計時する所定時間を30分に設定したが、30分以外の時間に設定してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、体調良好状態を、体調不良状態と発熱状態とを除いた状態に設定したが、これに限らず、例えば、体調良好状態を発熱状態を含む状態として設定してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、設定された所定温度が変更されないが、これに限らず、例えば、体調不良判定処理において温度センサ20が検出する被験者の特定部分の温度のうち、体調良好状態と推定されるときの温度を、体調良好状態の特定部分の温度の平均値のデータに加えることによって所定温度を逐次更新してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、所定温度は、体調良好状態における被験者の特定部分の平均値に基づいて設定するが、これに限らず、例えば、体調不良状態における被験者の特定部分の平均値よりも高い温度に設定してもよい。また、所定温度は、体調良好状態における被験者の特定部分の平均値と、体調不良状態における被験者の特定部分の平均値とに基づいて設定してもよい。
【0059】
また、本実施形態では、所定温度は、被験者毎にその被験者の体の温度に基づいて設定するが、これに限らず、例えば、固定の単一の温度が設定されて被験者を区別せずにその固定の単一の温度を使用してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、被験者の氏名や体調良好状態の特定部分の温度を体調判定装置1が記憶するが、これに限らず、例えば、被験者の氏名や体調良好状態の特定部分の温度を記憶させたIDカードを被験者毎に発行し、カードリーダを体調判定装置が備え、IDカードに記憶された情報を読み出す構成であってもよい。
【0061】
また、体調判定装置1は、環境センサを備えてもよい。環境センサは、被験者の周囲に配置され、例えば、気温や湿度や照度や気圧など、被験者の周囲の環境の状態を検知する。環境センサが検知した環境の状態は、そのときの被験者の特定部分の温度や第2の特定部分との温度に関連付けられて記憶され、温度センサが検出した被験者の特定部分の温度や第2の特定部分の温度が、そのときの環境の状態に基づいて複数の区分に分けられる。具体的には、例えば、気温に応じて、15℃以下、15℃を超えて18℃以下、18℃を超えて21℃以下、21℃を超えて23℃以下、23℃を超えて25℃以下、25℃を超えた温度の6つの区分に分けられ、体調不良状態判定処理においてそのときの環境の状態の区分における体調良好状態の特定部分の温度の平均値を読み出して使用してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、温度センサ20が固定されているが、温度センサ20を移動可能にし、被験者の特定部分が移動した場合には被験者の特定部分を追って温度センサ20を移動させる駆動部と制御部とを備えてもよい。この場合、例えば、被験者の特定部分が移動していると判定されると、温度センサ20が検出する温度の取得タイミングを短く設定し、温度センサ20が検出する検出範囲から被験者の特定部分が離れないように温度センサ20を移動制御してもよい。
【0063】
以上説明したとおり、本実施形態では、被験者の特定部分の温度が所定時間以上継続して所定温度以下に低下すると、被験者が体調不良であると推定される。また、被験者の特定部分の温度が所定温度以下でないときや、被験者の特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であるときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0064】
従って、寝不足などにより被験者の特定部分の温度が所定時間以上継続して所定温度以下に低下しているときには、被験者が体調不良状態であると推定される。
【0065】
また、被験者の体調が良好であり被験者の特定部分の温度が所定温度を超えているときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0066】
また、緊張や集中などにより被験者の特定部分の温度が所定時間未満の間、所定温度以下に低下しているときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0067】
また、体調良好状態における被験者の特定部分の温度に基づいて所定温度が設定される。すなわち、被験者毎の体の温度の個人差に応じて所定温度が設定されるため、被験者が体調不良状態であるか否かが、より正確に推定される。
【0068】
このように、被験者が体調不良状態であるか否かを推定することができるため、被験者の体調に合わせた環境の制御などを行うことができる。例えば、体調判定装置1を車両に備えて被験者(運転者)を検知する場合には、体調不良状態であると推定したときに、カーナビゲーションによって提供する情報の量を減らしたり、ACC(自動追従走行装置)による前方車両との車間距離を通常よりも長い距離に設定したり、音声によって休憩すべき情報を被験者に報知してもよい。また、体調判定装置1によって、パソコンで作業中の被験者を検知する場合には、例えば、被験者が料理のレシピを検索したときに体調不良状態であると推定すると、体調が悪い人用のメニューを優先的に提示するなど、体調に応じた検索結果を表示させてもよい。また、テレビやパソコンを視認している被験者を体調判定装置1によって検知し、被験者が体調不良状態であると推定したときに、テレビやパソコンの照度を変更してもよい。また、室内にいる被験者を体調判定装置1によって検知し、被験者が体調不良であると推定したときには、それに応じて被験者の周囲の環境(気温や照度など)を変更してもよい。また、室内の複数箇所に体調判定装置1を備えるとともに、それぞれの体調判定装置1の情報を共有することによって、被験者が移動した場所(例えば風呂やトイレ)の環境(気温や水温など)を被験者の体調に応じて設定してもよい。
【0069】
次に、本発明の第2の実施形態を、図7〜図11に基づいて説明する。
【0070】
図7は本発明の第2の実施形態に係る体調判定装置を示すブロック図であり、図8〜図11は図7の体調判定装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【0071】
図7に示すように、第2の実施形態に係る体調判定装置2は、温度センサ22とコントローラ60とを備える。また、体調判定装置1は、表示部40と入力部50とを備える。第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0072】
温度センサ22は、被験者の体のうち特定部分と第2の特定部分との温度とを検出可能なサーモグラフィであり、温度検出手段及び第2の温度検出手段を構成する。第2の特定部分は、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い部分である。本実施形態では、特定部分として鼻が設定されるとともに、第2の特定部分として体調良好状態に対して体調不良状態のときに温度が顕著に低下しない額が設定される。具体的には、温度センサは、被験者の顔に向けて配置され、サーモグラフィで検出した画像を処理することによって、被験者の顔の目の位置を検知して、鼻と額との位置を推定して鼻と額との温度を検出する。本実施形態では、鼻と推定した領域の温度を平均したものを鼻の温度として検出し、額と推定した領域の温度を平均したものを額の温度として検出する。
【0073】
コントローラ60は、記憶部61と被験者設定部62と限界温度設定部63と体調不良状態判定部64とタイマ37とを備える。
【0074】
記憶部61は、被験者の氏名と、被験者の基準温度差とを関連付けて記憶する。
【0075】
被験者設定部62は、被験者設定処理を実行する。被験者設定部62は、被験者設定処理において、被験者毎に氏名と基準温度差とを関連付けて記憶部61に記憶させる。基準温度差とは、体調良好状態における被験者の第2の特定部分の温度の平均値から、体調良好状態における被験者の特定部分の温度の平均値を引いた値である。
【0076】
限界温度差設定部63は、基準温度差に2℃加えた温度を限界温度差に設定する。
【0077】
体調不良状態判定部64は、体調不良状態判定処理を実行し、所定温度設定部65と温度判定部35と体調不良推定部36とを備える。所定温度設定部65は、温度センサ20が検出した被験者の第2の特定部分の温度から限界温度差を引いた温度を所定温度として設定する。
【0078】
以下、図8〜図11に示すフローチャートに従って、本実施形態のコントローラ60が実行する処理を説明する。本処理は、被験者によって体調判定処理を開始させる入力部50のスイッチが入力されると実行される。
【0079】
まず、被験者設定処理を実行する(ステップS31)。図9に示すように、被験者設定処理では、被験者設定部62は、被験者が自己氏名を既に登録しているか否かを被験者に質問する文章を表示部40に表示し(ステップS32)、自己の氏名を既に登録していると被験者が回答した場合には(ステップS33:YES)、登録されている被験者の一覧を表示部40に表示して(ステップS34)、被験者の氏名を被験者に選択させる(ステップS35)。また、自己の氏名を未だ登録していないと被験者が回答した場合には(ステップS33:NO)、被験者に氏名の入力を求める文章を表示部40に表示して被験者に氏名を入力させて(ステップS36)、その氏名を登録する。
【0080】
次に、図8に示すように、被験者設定部62は、登録された氏名の被験者の基準温度差を記憶しているか否かを判定し(ステップS37)、基準温度差を記憶していないときには(ステップS37:NO)、被験者に現在の体調が良好であるか否かを質問する文章を表示部に表示する(ステップS38)。被験者の現在の体調が良好であると被験者が回答した場合には(ステップS39:YES)、基準温度差設定処理を実行する(ステップS40)。また、被験者の現在の体調が良好でないと被験者が回答した場合には(ステップS39:NO)、本処理を終了する。
【0081】
図10に示すように、基準温度差設定処理では、被験者設定部62は、タイマ37により計時を開始し(ステップS41)、温度センサ22が逐次検出する被験者の特定部分の温度と第2の特定部分の温度とを取得して記憶する(ステップS42)。次に、ステップS41で計時を開始してから20分経過していないときには(ステップS43:NO)、ステップS42の処理を繰り返し、ステップS41で計時を開始してから20分経過すると(ステップS43:YES)、記憶した20分間の特定部分の温度の平均値と第2の特定部分の温度の平均値とを演算し(ステップS44)、算出した第2の特定部分の温度の平均値から特定部分の温度の平均値を引いた基準温度差を設定して被験者の氏名に関連付けて記憶部61に記憶させる(ステップS45)。
【0082】
次に、図8に示すように、ステップS36において基準温度差を記憶しているとき(ステップS37:YES)、または所定温度設定処理(ステップS40〜S45)を終了したときには、限界温度差設定部65は、基準温度差に2℃加えた温度を限界温度差として設定し(ステップS46)、体調不良状態判定処理へ移行する(ステップS47)。
【0083】
図11に示すように、体調不良状態判定処理では、体調不良状態判定部64は、まず、被験者により体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されているか否かを判定し(ステップS48)、体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されていないときには(ステップS48:NO)、ステップS49へ移行する。また、ステップS48において、体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されているときには(ステップS48:YES)、本処理を終了する。ステップS49では、体調不良状態判定部64の所定温度設定部65は、温度センサ22により被験者の特定部分の温度と第2の特定部分の温度とを検出し、次いで、温度センサ22が検出した被験者の第2の特定部分の温度から限界温度差を引いた温度を所定温度として設定する(ステップS50)。次に、温度判定部35は、温度センサ22が検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であるか否かを判定する(ステップS51)。温度センサ22により検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であるときには(ステップS51:YES)、ステップS53における計時を開始しているか否か判定し(ステップS52)、計時が開始されていないときには(ステップS52:NO)、タイマ37により計時を開始して(ステップS53)、ステップS48へ戻る。また、ステップS52において計時が開始されていると判定すると(ステップS52:YES)、体調不良推定部36は、計時してから30分が経過したか否かを判定し(ステップS54)、計時してから30分が経過しているときには(ステップS54:YES)、被験者が体調不良状態であると推定し(ステップS55)、ステップS48へ戻る。また、ステップS54において計時してから30分が経過していないと判定したときには(ステップS54:NO)、ステップS48へ戻る。また、ステップS51において、温度センサ22により検出した被験者の特定部分の温度が所定温度を超えているときには(ステップS51:NO)、ステップS53における計時を開始しているか否か判定し(ステップS56)、計時が開始されているときには(ステップS56:YES)、計時を終了する(ステップS57)。体調不良推定部36は、ステップS56において計時が開始されていないと判定されたとき(ステップS56:NO)、またはステップS57において計時を終了したときには、被験者が体調不良状態ではないと推定し(ステップS58)、ステップS48へ戻る。
【0084】
次に、第2の実施形態の変形例を示す。
【0085】
本実施形態では、第2の特定部分として額が設定されるが、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い部分であれば、額に限定されるものではない。
【0086】
また、本実施形態では、単一の温度センサ22によって特定部分の温度と第2の特定部分の温度とを検出するが、これに限らず、特定部分の温度と第2の特定部分の温度とを別の装置によって検出してもよい。
【0087】
また、本実施形態では、体調良好状態における特定部分の温度と、体調良好状態における第2の特定部分の温度とのそれぞれの平均値を算出し、2つの平均値の差分を算出することによって基準温度差を設定するが、基準温度差を設定するための算出の順序はこれに限らず、特定部分と第2の特定部分との温度差を逐次算出し、逐次算出した温度差の平均値を算出することによって基準温度差を設定してもよい。
【0088】
また、本実施形態では、基準温度差を設定して基準温度差に基づいて所定温度を設定するが、これに限らず、例えば、体調良好状態における第2の特定部分の温度から温度センサ22が検出した第2の特定部分の温度を引いた値に基づいて所定温度を設定してもよい。この場合、体調良好状態における特定部分の温度から温度センサ22が検出した特定部分の温度を引いた値が、所定温度以下であるかに応じて体調不良状態であるか否かを推定してもよい。
【0089】
また、本実施形態では、体調良好状態における特定部分の温度と第2の特定部分の温度とに基づいて所定温度を設定するが、これに限らず、例えば、温度センサ22が検出した第2の特定部分の温度から所定値を引いた差分の温度に所定温度を設定してもよい。
【0090】
また、第2の実施形態では、第1の実施形態の変形例を適用可能である。
【0091】
以上説明したとおり、本実施形態では、被験者の体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し易い特定部分の温度と比較される所定温度が、その被験者の体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い第2の特定部分の温度に基づいて設定される。
【0092】
ここで、被験者の体は、特定部分であるか第2の特定部分であるかにかかわらず、気温や湿度など周囲の環境が変化したときにはその変化に応じて温度が略一様に上昇又は低下する。このため、周囲の環境の変化により被験者の特定部分の温度が上昇又は低下したときには、被験者の特定部分の温度と同様に上昇又は低下した所定温度が設定される。
【0093】
従って、周囲の環境の変化に応じて被験者の特定部分の温度が上昇又は低下したときには、所定温度と特定部分の温度との温度差が維持され、特定部分の温度が所定温度以下になり難い。このため、特定部分の温度が所定温度以下でないこと又は特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であることを条件に、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0094】
なお、被験者が発熱したときには、被験者の体は、特定部分であるか第2の特定部分であるかにかかわらず、温度が略一様に上昇する。従って、被験者の周囲の環境の変化が生じた場合と同様に、所定温度と特定部分の温度との温度差が維持され、特定部分の温度が所定温度以下になり難い。このため、特定部分の温度が所定温度以下でないこと又は特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であることを条件に、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0095】
また、体調良好状態における被験者の特定部分及び第2の特定部分の温度に基づいて設定される。これにより、温度センサ22が検出した被験者の特定部分の温度の上昇や低下が、その被験者の体調良好状態における特定部分の温度を使用することにより適確に判るとともに、温度センサ22が検出した被験者の第2の特定部分の温度の上昇や低下が、その被験者の体調良好状態における第2の特定部分の温度を使用することにより適確に判る。従って、所定温度が被験者毎の体の温度の個人差に応じて設定されることによって、被験者が体調不良状態であるか否かが、より正確に推定される。
【0096】
また、第2の実施形態の体調判定装置は、第1の実施形態の体調判定装置と同様の効果を得ることができる。
【0097】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0098】
1,2:体調判定装置
20,22:温度センサ(温度検出手段,第2の温度検出手段)
36:体調不良推定部(体調不良推定手段)
37:タイマ(計時手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の体調不良状態を推定する体調判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9−28678号公報には、人体の体幹部の皮膚温度と抹消部の皮膚温度との温度差を測定し、温度差が1.49℃のときストレス度が50であり、温度差が2.98℃以上のときストレス度が100であると推定するストレス測定装置が記載されている。
【0003】
また、特開2006−231065号公報には、赤外線を検出するカメラが撮像した画像に基づいて被験者の額や鼻筋の温度を検出し、検出した温度が華氏99.6度を超えていたときにアラームを発するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−28678号公報
【特許文献2】特開2006−231065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特開平9−28678号公報のストレス測定装置や上記特開2006−231065号公報のシステムでは、疾病以外の睡眠不足などによる体調不良については、検知することができない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、疾病以外の睡眠不足などによる被験者の体調不良状態を推定することが可能な体調判定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様の体調判定装置は、温度検出手段と計時手段と体調不良推定手段とを備える。
【0008】
温度検出手段は、被験者の体のうち、被験者の体調が良好である体調良好状態に対して被験者の体調が良好でない体調不良状態の温度が低下し易い特定部分の温度を検出する。計時手段は、温度検出手段が検出した特定部分の温度が所定温度以下であるときに、その継続時間を計測する。体調不良推定手段は、計時手段が計測した継続時間が所定時間以上であるときに、被験者が体調不良状態であると推定する。
【0009】
特定部分としては、例えば鼻が設定される。ただし、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し易い部分であれば、鼻に限定されるものではない。
【0010】
なお、発熱により被験者の特定部分の温度が所定温度を超えている状態は、体調不良状態に含んでいない。
【0011】
上記構成では、被験者の特定部分の温度が所定時間以上継続して所定温度以下に低下すると、被験者が体調不良であると推定される。また、被験者の特定部分の温度が所定温度以下でないときや、被験者の特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であるときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0012】
従って、寝不足などにより被験者の特定部分の温度が所定時間以上継続して所定温度以下に低下しているときには、被験者が体調不良状態であると推定される。
【0013】
また、被験者の体調が良好であり被験者の特定部分の温度が所定温度を超えているときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0014】
また、緊張や集中などにより被験者の特定部分の温度が所定時間未満の間、所定温度以下に低下しているときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0015】
また、本発明の第2の態様の体調判定装置は、第1の態様の体調判定装置であって、所定温度は、体調良好状態における被験者の特定部分の温度に基づいて設定される。
【0016】
上記構成では、体調良好状態における被験者の特定部分の温度に基づいて所定温度が設定される。すなわち、被験者毎の体の温度の個人差に応じて所定温度が設定されるため、被験者が体調不良状態であるか否かが、より適確に推定される。
【0017】
また、本発明の第3の態様の体調判定装置は、第1の態様の体調判定装置であって、第2の温度検出手段を備える。
【0018】
第2の温度検出手段は、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い第2の特定部分の温度を検出する。所定温度は、第2の温度検出手段が検出した第2の特定部分の温度に基づいて設定される。
【0019】
第2の特定部分は、例えば、額が設定される。ただし、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い部分であれば、額に限定されるものではない。
【0020】
上記構成では、被験者の体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し易い特定部分の温度と比較される所定温度が、その被験者の体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い第2の特定部分の温度に基づいて設定される。
【0021】
ここで、被験者の体は、特定部分であるか第2の特定部分であるかにかかわらず、気温や湿度など周囲の環境が変化したときにはその変化に応じて温度が略一様に上昇又は低下する。このため、周囲の環境の変化により被験者の特定部分の温度が上昇又は低下したときには、被験者の特定部分の温度と同様に上昇又は低下した所定温度が設定される。
【0022】
従って、周囲の環境の変化に応じて被験者の特定部分の温度が上昇又は低下したときには、所定温度と特定部分の温度との温度差が維持され、特定部分の温度が所定温度以下になり難い。このため、特定部分の温度が所定温度以下でないこと又は特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であることを条件に、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0023】
なお、被験者が発熱したときには、被験者の体は、特定部分であるか第2の特定部分であるかにかかわらず、温度が略一様に上昇する。従って、被験者の周囲の環境の変化が生じた場合と同様に、所定温度と特定部分の温度との温度差が維持され、特定部分の温度が所定温度以下になり難い。このため、特定部分の温度が所定温度以下でないこと又は特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であることを条件に、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0024】
また、本発明の第4の態様の体調判定装置は、第3の態様の体調判定装置であって、所定温度は、第2の温度検出手段が検出した第2の特定部分の温度と、体調良好状態における被験者の特定部分及び第2の特定部分の温度に基づいて設定される。
【0025】
上記構成では、第2の温度検出手段が検出した第2の特定温度に基づいて所定温度が設定されるため、第3の態様の体調判定装置と同様に、周囲の環境の変化に応じて被験者の特定部分の温度が上昇又は低下したときや、被験者が発熱したときには、所定温度と特定部分の温度との温度差が維持され、特定部分の温度が所定温度以下になり難い。
【0026】
また、体調良好状態における被験者の特定部分及び第2の特定部分の温度に基づいて設定される。これにより、温度検出手段が検出した被験者の特定部分の温度の上昇や低下が、その被験者の体調良好状態における特定部分の温度を使用することにより適確に判るとともに、第2の温度検出手段が検出した被験者の第2の特定部分の温度の上昇や低下が、その被験者の体調良好状態における第2の特定部分の温度を使用することにより適確に判る。従って、所定温度が被験者毎の体の温度の個人差に応じて設定されることによって、被験者が体調不良状態であるか否かが、より適確に推定される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、疾病以外の睡眠不足などによる被験者の体調不良状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る体調判定装置を示す模式図である。
【図2】図1の体調判定装置を示すブロック図である。
【図3】図1の体調判定装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【図4】図3の処理の被験者設定処理を示すフローチャートである。
【図5】図3の処理の所定温度設定処理を示すフローチャートである。
【図6】図3の処理の体調不良状態判定処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る体調判定装置を示すブロック図である。
【図8】図7の体調判定装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【図9】図7の処理の被験者設定処理を示すフローチャートである。
【図10】図7の処理の基準温度差設定処理を示すフローチャートである。
【図11】図7の処理の体調不良状態判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0030】
図1は第1の実施形態に係る体調判定装置を示す模式図であり、図2は図1の体調判定装置を示すブロック図であり、図3〜図6は図1の体調判定装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【0031】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係る体調判定装置1は、温度センサ20とコントローラ30とを備える。また、体調判定装置1は、表示部40と入力部50とを備える。
【0032】
温度センサ20は、被験者の体のうち特定部分の温度を検出可能なサーモグラフィであり、温度検出手段を構成する。特定部分とは、被験者の体のうち、被験者の体調が良好である体調良好状態に対して被験者の体調が良好でない体調不良状態の温度が低下し易い部分である。本実施形態では、特定部分として、体調良好状態に対して体調不良状態のときに温度が比較的顕著に低下する鼻が設定される。図1に示すように、具体的には、温度センサ20は、着座した状態の被験者(図1に符号5で示す)の顔に向けて配置され、サーモグラフィで検出した画像を処理することによって、被験者の顔の目の位置を検知して、鼻の位置を推定して鼻の温度を検出する。本実施形態では、鼻と推定した領域の温度を平均したものを鼻の温度として検出する。
【0033】
体調不良状態とは、疾病以外の睡眠不足などにより特定部分の温度が低下する状態をいう。なお、本実施形態の体調不良状態は、発熱により被験者の特定部分の温度が所定温度を超えている状態を含まない。また、本実施形態の体調良好状態とは、体調不良状態と発熱状態とを除いた状態をいう。
【0034】
図2に示すように、コントローラ30は、記憶部31と被験者設定部32と所定温度設定部33と体調不良状態判定部34とタイマ37とを備える。
【0035】
記憶部31は、被験者の氏名と、被験者の体調良好状態における特定部分の温度の平均値とを関連付けて記憶する。
【0036】
被験者設定部32は、被験者設定処理を実行する。被験者設定部は、被験者設定処理において、被験者毎に氏名と、その被験者の体調良好状態における特定部分の温度の平均値とを関連付けて記憶部31に記憶させる。
【0037】
所定温度設定部33は、所定温度を設定する。所定温度は、体調良好状態における被験者の特定部分の温度に基づいて設定される。本実施形態では、所定温度設定部33は、被験者毎に、体調良好状態における被験者の特定部分の20分間の温度の平均値よりも2℃低い温度を所定温度として設定する。
【0038】
体調不良状態判定部34は、温度判定部35と体調不良推定部36とを備え、体調不良状態判定処理を実行する。温度判定部35は、温度センサ20が検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であるか否かを判定する。
【0039】
タイマ37は、計時手段を構成し、温度センサ20が検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であると温度判定部35が判定したときに、その継続時間を計測する。また、所定温度設定処理において被験者の体調良好状態を20分間計測する。
【0040】
体調不良推定部36は、体調不良推定手段を構成し、タイマ37が計測した継続時間が所定時間以上であるときに、被験者が体調不良状態であると推定する。また、体調不良判定部は、タイマ37が計測した継続時間が所定時間未満であるときや、温度センサ20が検出した被験者の特定部分の温度が所定温度を超えているときに、被験者が体調不良状態でないと推定する。本実施形態では、所定時間は30分間に設定される。
【0041】
表示部40は、モニタであり、被験者に対して、記憶部31に記憶された被験者の氏名の一覧を表示したり、質問を表示したりする。入力部50は、キーボードやタッチパネルであり、被験者による氏名や現在の体調の入力に使用される。また、入力部50は、被験者によって操作自在な、体調判定処理を開始させるスイッチと体調判定処理を終了させるスイッチとを備える。
【0042】
以下、図3〜図6に示すフローチャートに従って、本実施形態の体調判定装置1のコントローラ30が実行する処理を説明する。本処理は、被験者によって体調判定処理を開始させる入力部50のスイッチが入力されると実行される。
【0043】
まず、被験者設定処理を実行する(ステップS1)。図4に示すように、被験者設定処理では、被験者設定部32は、被験者が自己の氏名を既に登録している否かを被験者に質問する文章を表示部40に表示し(ステップS2)、自己の氏名を既に登録していると被験者が回答した場合には(ステップS3:YES)、登録されている被験者の一覧を表示部40に表示して(ステップS4)、被験者の氏名を被験者に選択させる(ステップS5)。また、自己の氏名を未だ登録していないと被験者が回答した場合には(ステップS3:NO)、被験者に氏名の入力を求める文章を表示部40に表示して被験者に氏名を入力させて(ステップS6)、その氏名を登録する。
【0044】
次に、図3に示すように、被験者設定部32は、登録された氏名の被験者の体調良好状態における特定部分の温度の平均値を記憶しているか否かを判定し(ステップS7)、体調良好状態における特定部分の温度の平均値を記憶していないときには(ステップS7:NO)、被験者に現在の体調が良好であるか否かを質問する文章を表示部40に表示する(ステップS8)。被験者の現在の体調が良好であると被験者が回答した場合には(ステップS9:YES)、所定温度設定処理を実行する(ステップS10)。また、被験者の現在の体調が良好でないと被験者が回答した場合には(ステップS9:NO)、本処理を終了する。
【0045】
図5に示すように、所定温度設定処理では、所定温度設定部33は、タイマ37により計時を開始し(ステップS11)、温度センサ20が逐次検出する被験者の特定部分の温度を取得して記憶する(ステップS12)。次に、ステップS11で計時を開始してから20分経過していないときには(ステップS13:NO)、ステップS12の処理を繰り返し、ステップS11で計時を開始してから20分経過すると(ステップS13:YES)、記憶した20分間の特定部分の温度の平均値を演算し(ステップS14)、算出した特定部分の平均値を被験者の氏名に関連付けて記憶部31に記憶させる(ステップS15)。
【0046】
次に、図3に示すように、ステップS7において体調良好状態における特定部分の温度の平均値を記憶しているとき(ステップS7:YES)、または所定温度設定処理(ステップS10〜S15)を終了したときには、記憶部31に記憶された体調良好状態における特定部分の温度の平均値よりも2℃低い温度を所定温度として設定し(ステップS16)、体調不良状態判定処理へ移行する(ステップS17)。
【0047】
図6に示すように、体調不良状態判定処理では、体調不良状態判定部34は、まず、被験者により体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されているか否かを判定し(ステップS18)、体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されていないときには(ステップS18:NO)、ステップS19へ移行する。また、ステップS18において、体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されているときには(ステップS18:YES)、本処理を終了する。ステップS19では、体調不良状態判定部34の温度判定部35は、温度センサ20により被験者の特定部分の温度を検出し、次いで、温度センサ20が検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であるか否かを判定する(ステップS20)。温度センサ20により検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であるときには(ステップS20:YES)、ステップS22における計時を開始しているか否か判定し(ステップS21)、計時が開始されていないときには(ステップS21:NO)、タイマ37により計時を開始して(ステップS22)、ステップS18へ戻る。また、ステップS21において計時が開始されていると判定すると(ステップS21:YES)、体調不良推定部36は、計時してから30分が経過したか否かを判定し(ステップS23)、計時してから30分が経過しているときには(ステップS23:YES)、被験者が体調不良状態であると推定し(ステップS24)、ステップS18へ戻る。また、ステップS23において計時してから30分が経過していないと判定したときには(ステップS23:NO)、ステップS18へ戻る。また、ステップS20において、温度センサ20により検出した被験者の特定部分の温度が所定温度を超えているときには(ステップS20:NO)、ステップS21における計時を開始しているか否か判定し(ステップS25)、計時が開始されているときには(ステップS25:YES)、計時を終了する(ステップS26)。体調不良推定部36は、ステップS25において計時が開始されていないと判定されたとき(ステップS25:NO)、またはステップS26において計時を終了したときには、被験者が体調不良状態ではないと推定し(ステップS27)、ステップS18へ戻る。
【0048】
次に、第1の実施形態の変形例を示す。
【0049】
本実施形態では、温度センサ20としてサーモグラフィを使用したが、これに限らず、例えば、接触によって温度を検出する温度計を被験者の皮膚に直接取り付けてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、サーモグラフィによって特定部分と推定した領域の温度を平均したものを特定部分の温度として検出するが、これに限らず、特定部分と推定した領域のうち一箇所の温度を特定部分の温度として検出したり、特定部分と推定した領域のうち複数箇所の温度を特定部分の温度として検出してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、特定部分として鼻が設定されるが、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し易い部分であれば、鼻に限定されるものではない。
【0052】
また、本実施形態では、体調良好状態における被験者の特定部分の温度を、20分間の平均値によって求めるが、これに限らず、20分以外の時間の平均値によって求めてもよい。また、体調良好状態における被験者の特定部分の温度を、例えば、1回の検出によって求めたり、複数回の検出に基づいた分散値などを使用して求めてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、被験者の体調良好状態を、被験者の自己申告によって判別するが、これに限らず、例えば、被験者の体調良好状態を長時間(例えば1時間)の特定部分の温度を検出し、検出した温度の変化に基づいて体調良好状態を推定し、推定した体調良好状態における特定部分の温度を所定温度の設定に使用してもよい。
【0054】
また、本実施形態では、所定温度は、被験者毎に、体調良好状態における被験者の特定部分の平均値よりも2℃低い温度に設定されるが、これに限らず、体調良好状態における被験者の特定部分の平均値から2℃未満低い温度に設定したり、2℃を超える温度に設定してもよい。
【0055】
また、本実施形態では、温度センサ20が検出する被験者の特定部分の温度が所定温度以下のときにタイマ37が計時する所定時間を30分に設定したが、30分以外の時間に設定してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、体調良好状態を、体調不良状態と発熱状態とを除いた状態に設定したが、これに限らず、例えば、体調良好状態を発熱状態を含む状態として設定してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、設定された所定温度が変更されないが、これに限らず、例えば、体調不良判定処理において温度センサ20が検出する被験者の特定部分の温度のうち、体調良好状態と推定されるときの温度を、体調良好状態の特定部分の温度の平均値のデータに加えることによって所定温度を逐次更新してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、所定温度は、体調良好状態における被験者の特定部分の平均値に基づいて設定するが、これに限らず、例えば、体調不良状態における被験者の特定部分の平均値よりも高い温度に設定してもよい。また、所定温度は、体調良好状態における被験者の特定部分の平均値と、体調不良状態における被験者の特定部分の平均値とに基づいて設定してもよい。
【0059】
また、本実施形態では、所定温度は、被験者毎にその被験者の体の温度に基づいて設定するが、これに限らず、例えば、固定の単一の温度が設定されて被験者を区別せずにその固定の単一の温度を使用してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、被験者の氏名や体調良好状態の特定部分の温度を体調判定装置1が記憶するが、これに限らず、例えば、被験者の氏名や体調良好状態の特定部分の温度を記憶させたIDカードを被験者毎に発行し、カードリーダを体調判定装置が備え、IDカードに記憶された情報を読み出す構成であってもよい。
【0061】
また、体調判定装置1は、環境センサを備えてもよい。環境センサは、被験者の周囲に配置され、例えば、気温や湿度や照度や気圧など、被験者の周囲の環境の状態を検知する。環境センサが検知した環境の状態は、そのときの被験者の特定部分の温度や第2の特定部分との温度に関連付けられて記憶され、温度センサが検出した被験者の特定部分の温度や第2の特定部分の温度が、そのときの環境の状態に基づいて複数の区分に分けられる。具体的には、例えば、気温に応じて、15℃以下、15℃を超えて18℃以下、18℃を超えて21℃以下、21℃を超えて23℃以下、23℃を超えて25℃以下、25℃を超えた温度の6つの区分に分けられ、体調不良状態判定処理においてそのときの環境の状態の区分における体調良好状態の特定部分の温度の平均値を読み出して使用してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、温度センサ20が固定されているが、温度センサ20を移動可能にし、被験者の特定部分が移動した場合には被験者の特定部分を追って温度センサ20を移動させる駆動部と制御部とを備えてもよい。この場合、例えば、被験者の特定部分が移動していると判定されると、温度センサ20が検出する温度の取得タイミングを短く設定し、温度センサ20が検出する検出範囲から被験者の特定部分が離れないように温度センサ20を移動制御してもよい。
【0063】
以上説明したとおり、本実施形態では、被験者の特定部分の温度が所定時間以上継続して所定温度以下に低下すると、被験者が体調不良であると推定される。また、被験者の特定部分の温度が所定温度以下でないときや、被験者の特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であるときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0064】
従って、寝不足などにより被験者の特定部分の温度が所定時間以上継続して所定温度以下に低下しているときには、被験者が体調不良状態であると推定される。
【0065】
また、被験者の体調が良好であり被験者の特定部分の温度が所定温度を超えているときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0066】
また、緊張や集中などにより被験者の特定部分の温度が所定時間未満の間、所定温度以下に低下しているときには、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0067】
また、体調良好状態における被験者の特定部分の温度に基づいて所定温度が設定される。すなわち、被験者毎の体の温度の個人差に応じて所定温度が設定されるため、被験者が体調不良状態であるか否かが、より正確に推定される。
【0068】
このように、被験者が体調不良状態であるか否かを推定することができるため、被験者の体調に合わせた環境の制御などを行うことができる。例えば、体調判定装置1を車両に備えて被験者(運転者)を検知する場合には、体調不良状態であると推定したときに、カーナビゲーションによって提供する情報の量を減らしたり、ACC(自動追従走行装置)による前方車両との車間距離を通常よりも長い距離に設定したり、音声によって休憩すべき情報を被験者に報知してもよい。また、体調判定装置1によって、パソコンで作業中の被験者を検知する場合には、例えば、被験者が料理のレシピを検索したときに体調不良状態であると推定すると、体調が悪い人用のメニューを優先的に提示するなど、体調に応じた検索結果を表示させてもよい。また、テレビやパソコンを視認している被験者を体調判定装置1によって検知し、被験者が体調不良状態であると推定したときに、テレビやパソコンの照度を変更してもよい。また、室内にいる被験者を体調判定装置1によって検知し、被験者が体調不良であると推定したときには、それに応じて被験者の周囲の環境(気温や照度など)を変更してもよい。また、室内の複数箇所に体調判定装置1を備えるとともに、それぞれの体調判定装置1の情報を共有することによって、被験者が移動した場所(例えば風呂やトイレ)の環境(気温や水温など)を被験者の体調に応じて設定してもよい。
【0069】
次に、本発明の第2の実施形態を、図7〜図11に基づいて説明する。
【0070】
図7は本発明の第2の実施形態に係る体調判定装置を示すブロック図であり、図8〜図11は図7の体調判定装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【0071】
図7に示すように、第2の実施形態に係る体調判定装置2は、温度センサ22とコントローラ60とを備える。また、体調判定装置1は、表示部40と入力部50とを備える。第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0072】
温度センサ22は、被験者の体のうち特定部分と第2の特定部分との温度とを検出可能なサーモグラフィであり、温度検出手段及び第2の温度検出手段を構成する。第2の特定部分は、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い部分である。本実施形態では、特定部分として鼻が設定されるとともに、第2の特定部分として体調良好状態に対して体調不良状態のときに温度が顕著に低下しない額が設定される。具体的には、温度センサは、被験者の顔に向けて配置され、サーモグラフィで検出した画像を処理することによって、被験者の顔の目の位置を検知して、鼻と額との位置を推定して鼻と額との温度を検出する。本実施形態では、鼻と推定した領域の温度を平均したものを鼻の温度として検出し、額と推定した領域の温度を平均したものを額の温度として検出する。
【0073】
コントローラ60は、記憶部61と被験者設定部62と限界温度設定部63と体調不良状態判定部64とタイマ37とを備える。
【0074】
記憶部61は、被験者の氏名と、被験者の基準温度差とを関連付けて記憶する。
【0075】
被験者設定部62は、被験者設定処理を実行する。被験者設定部62は、被験者設定処理において、被験者毎に氏名と基準温度差とを関連付けて記憶部61に記憶させる。基準温度差とは、体調良好状態における被験者の第2の特定部分の温度の平均値から、体調良好状態における被験者の特定部分の温度の平均値を引いた値である。
【0076】
限界温度差設定部63は、基準温度差に2℃加えた温度を限界温度差に設定する。
【0077】
体調不良状態判定部64は、体調不良状態判定処理を実行し、所定温度設定部65と温度判定部35と体調不良推定部36とを備える。所定温度設定部65は、温度センサ20が検出した被験者の第2の特定部分の温度から限界温度差を引いた温度を所定温度として設定する。
【0078】
以下、図8〜図11に示すフローチャートに従って、本実施形態のコントローラ60が実行する処理を説明する。本処理は、被験者によって体調判定処理を開始させる入力部50のスイッチが入力されると実行される。
【0079】
まず、被験者設定処理を実行する(ステップS31)。図9に示すように、被験者設定処理では、被験者設定部62は、被験者が自己氏名を既に登録しているか否かを被験者に質問する文章を表示部40に表示し(ステップS32)、自己の氏名を既に登録していると被験者が回答した場合には(ステップS33:YES)、登録されている被験者の一覧を表示部40に表示して(ステップS34)、被験者の氏名を被験者に選択させる(ステップS35)。また、自己の氏名を未だ登録していないと被験者が回答した場合には(ステップS33:NO)、被験者に氏名の入力を求める文章を表示部40に表示して被験者に氏名を入力させて(ステップS36)、その氏名を登録する。
【0080】
次に、図8に示すように、被験者設定部62は、登録された氏名の被験者の基準温度差を記憶しているか否かを判定し(ステップS37)、基準温度差を記憶していないときには(ステップS37:NO)、被験者に現在の体調が良好であるか否かを質問する文章を表示部に表示する(ステップS38)。被験者の現在の体調が良好であると被験者が回答した場合には(ステップS39:YES)、基準温度差設定処理を実行する(ステップS40)。また、被験者の現在の体調が良好でないと被験者が回答した場合には(ステップS39:NO)、本処理を終了する。
【0081】
図10に示すように、基準温度差設定処理では、被験者設定部62は、タイマ37により計時を開始し(ステップS41)、温度センサ22が逐次検出する被験者の特定部分の温度と第2の特定部分の温度とを取得して記憶する(ステップS42)。次に、ステップS41で計時を開始してから20分経過していないときには(ステップS43:NO)、ステップS42の処理を繰り返し、ステップS41で計時を開始してから20分経過すると(ステップS43:YES)、記憶した20分間の特定部分の温度の平均値と第2の特定部分の温度の平均値とを演算し(ステップS44)、算出した第2の特定部分の温度の平均値から特定部分の温度の平均値を引いた基準温度差を設定して被験者の氏名に関連付けて記憶部61に記憶させる(ステップS45)。
【0082】
次に、図8に示すように、ステップS36において基準温度差を記憶しているとき(ステップS37:YES)、または所定温度設定処理(ステップS40〜S45)を終了したときには、限界温度差設定部65は、基準温度差に2℃加えた温度を限界温度差として設定し(ステップS46)、体調不良状態判定処理へ移行する(ステップS47)。
【0083】
図11に示すように、体調不良状態判定処理では、体調不良状態判定部64は、まず、被験者により体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されているか否かを判定し(ステップS48)、体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されていないときには(ステップS48:NO)、ステップS49へ移行する。また、ステップS48において、体調判定処理を終了させる入力部50のスイッチが入力されているときには(ステップS48:YES)、本処理を終了する。ステップS49では、体調不良状態判定部64の所定温度設定部65は、温度センサ22により被験者の特定部分の温度と第2の特定部分の温度とを検出し、次いで、温度センサ22が検出した被験者の第2の特定部分の温度から限界温度差を引いた温度を所定温度として設定する(ステップS50)。次に、温度判定部35は、温度センサ22が検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であるか否かを判定する(ステップS51)。温度センサ22により検出した被験者の特定部分の温度が所定温度以下であるときには(ステップS51:YES)、ステップS53における計時を開始しているか否か判定し(ステップS52)、計時が開始されていないときには(ステップS52:NO)、タイマ37により計時を開始して(ステップS53)、ステップS48へ戻る。また、ステップS52において計時が開始されていると判定すると(ステップS52:YES)、体調不良推定部36は、計時してから30分が経過したか否かを判定し(ステップS54)、計時してから30分が経過しているときには(ステップS54:YES)、被験者が体調不良状態であると推定し(ステップS55)、ステップS48へ戻る。また、ステップS54において計時してから30分が経過していないと判定したときには(ステップS54:NO)、ステップS48へ戻る。また、ステップS51において、温度センサ22により検出した被験者の特定部分の温度が所定温度を超えているときには(ステップS51:NO)、ステップS53における計時を開始しているか否か判定し(ステップS56)、計時が開始されているときには(ステップS56:YES)、計時を終了する(ステップS57)。体調不良推定部36は、ステップS56において計時が開始されていないと判定されたとき(ステップS56:NO)、またはステップS57において計時を終了したときには、被験者が体調不良状態ではないと推定し(ステップS58)、ステップS48へ戻る。
【0084】
次に、第2の実施形態の変形例を示す。
【0085】
本実施形態では、第2の特定部分として額が設定されるが、被験者の体のうち、体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い部分であれば、額に限定されるものではない。
【0086】
また、本実施形態では、単一の温度センサ22によって特定部分の温度と第2の特定部分の温度とを検出するが、これに限らず、特定部分の温度と第2の特定部分の温度とを別の装置によって検出してもよい。
【0087】
また、本実施形態では、体調良好状態における特定部分の温度と、体調良好状態における第2の特定部分の温度とのそれぞれの平均値を算出し、2つの平均値の差分を算出することによって基準温度差を設定するが、基準温度差を設定するための算出の順序はこれに限らず、特定部分と第2の特定部分との温度差を逐次算出し、逐次算出した温度差の平均値を算出することによって基準温度差を設定してもよい。
【0088】
また、本実施形態では、基準温度差を設定して基準温度差に基づいて所定温度を設定するが、これに限らず、例えば、体調良好状態における第2の特定部分の温度から温度センサ22が検出した第2の特定部分の温度を引いた値に基づいて所定温度を設定してもよい。この場合、体調良好状態における特定部分の温度から温度センサ22が検出した特定部分の温度を引いた値が、所定温度以下であるかに応じて体調不良状態であるか否かを推定してもよい。
【0089】
また、本実施形態では、体調良好状態における特定部分の温度と第2の特定部分の温度とに基づいて所定温度を設定するが、これに限らず、例えば、温度センサ22が検出した第2の特定部分の温度から所定値を引いた差分の温度に所定温度を設定してもよい。
【0090】
また、第2の実施形態では、第1の実施形態の変形例を適用可能である。
【0091】
以上説明したとおり、本実施形態では、被験者の体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し易い特定部分の温度と比較される所定温度が、その被験者の体調良好状態に対して体調不良状態の温度が低下し難い第2の特定部分の温度に基づいて設定される。
【0092】
ここで、被験者の体は、特定部分であるか第2の特定部分であるかにかかわらず、気温や湿度など周囲の環境が変化したときにはその変化に応じて温度が略一様に上昇又は低下する。このため、周囲の環境の変化により被験者の特定部分の温度が上昇又は低下したときには、被験者の特定部分の温度と同様に上昇又は低下した所定温度が設定される。
【0093】
従って、周囲の環境の変化に応じて被験者の特定部分の温度が上昇又は低下したときには、所定温度と特定部分の温度との温度差が維持され、特定部分の温度が所定温度以下になり難い。このため、特定部分の温度が所定温度以下でないこと又は特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であることを条件に、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0094】
なお、被験者が発熱したときには、被験者の体は、特定部分であるか第2の特定部分であるかにかかわらず、温度が略一様に上昇する。従って、被験者の周囲の環境の変化が生じた場合と同様に、所定温度と特定部分の温度との温度差が維持され、特定部分の温度が所定温度以下になり難い。このため、特定部分の温度が所定温度以下でないこと又は特定部分が所定温度以下であってもその継続時間が所定時間未満であることを条件に、被験者が体調不良状態ではないと推定される。
【0095】
また、体調良好状態における被験者の特定部分及び第2の特定部分の温度に基づいて設定される。これにより、温度センサ22が検出した被験者の特定部分の温度の上昇や低下が、その被験者の体調良好状態における特定部分の温度を使用することにより適確に判るとともに、温度センサ22が検出した被験者の第2の特定部分の温度の上昇や低下が、その被験者の体調良好状態における第2の特定部分の温度を使用することにより適確に判る。従って、所定温度が被験者毎の体の温度の個人差に応じて設定されることによって、被験者が体調不良状態であるか否かが、より正確に推定される。
【0096】
また、第2の実施形態の体調判定装置は、第1の実施形態の体調判定装置と同様の効果を得ることができる。
【0097】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0098】
1,2:体調判定装置
20,22:温度センサ(温度検出手段,第2の温度検出手段)
36:体調不良推定部(体調不良推定手段)
37:タイマ(計時手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体のうち、当該被験者の体調が良好である体調良好状態に対して当該被験者の体調が良好でない体調不良状態の温度が低下し易い特定部分の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段が検出した前記特定部分の温度が所定温度以下であるときに、その継続時間を計測する計時手段と、
前記計時手段が計測した継続時間が所定時間以上であるときに、前記被験者が体調不良状態であると推定する体調不良推定手段と、を備えた
ことを特徴とする体調判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の体調判定装置であって、
前記所定温度は、前記体調良好状態における前記被験者の前記特定部分の温度に基づいて設定される
ことを特徴とする体調判定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の体調判定装置であって、
前記被験者の体のうち、前記体調良好状態に対して前記体調不良状態の温度が低下し難い第2の特定部分の温度を検出する第2の温度検出手段を備え、
前記所定温度は、前記第2の温度検出手段が検出した前記第2の特定部分の温度に基づいて設定される
ことを特徴とする体調判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の体調判定装置であって、
前記所定温度は、前記第2の温度検出手段が検出した前記第2の特定部分の温度と、前記体調良好状態における前記被験者の前記特定部分及び前記第2の特定部分の温度に基づいて設定される
ことを特徴とする体調判定装置。
【請求項1】
被験者の体のうち、当該被験者の体調が良好である体調良好状態に対して当該被験者の体調が良好でない体調不良状態の温度が低下し易い特定部分の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段が検出した前記特定部分の温度が所定温度以下であるときに、その継続時間を計測する計時手段と、
前記計時手段が計測した継続時間が所定時間以上であるときに、前記被験者が体調不良状態であると推定する体調不良推定手段と、を備えた
ことを特徴とする体調判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の体調判定装置であって、
前記所定温度は、前記体調良好状態における前記被験者の前記特定部分の温度に基づいて設定される
ことを特徴とする体調判定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の体調判定装置であって、
前記被験者の体のうち、前記体調良好状態に対して前記体調不良状態の温度が低下し難い第2の特定部分の温度を検出する第2の温度検出手段を備え、
前記所定温度は、前記第2の温度検出手段が検出した前記第2の特定部分の温度に基づいて設定される
ことを特徴とする体調判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の体調判定装置であって、
前記所定温度は、前記第2の温度検出手段が検出した前記第2の特定部分の温度と、前記体調良好状態における前記被験者の前記特定部分及び前記第2の特定部分の温度に基づいて設定される
ことを特徴とする体調判定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−125474(P2011−125474A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286085(P2009−286085)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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