説明

体躯接触具

【課題】身体に密着することができ、しかも身体をしっかり支持することができる体躯接触具を提供する。
【解決手段】クッション1の凹部7を車椅子Kに座った人の腹部に嵌めて、クッション1を身体Sに装着する。接触部9は全方向へ伸縮自在な布によって構成され、しかも外皮3には流動可能なビーズ15が充填されているので、クッション1を腹部に嵌めるとき、接触部9が伸縮すると共にビーズ15が外皮3内で流動し、接触部9が腹部に沿った形状に変形して、クッション1が身体Sに装着される。従って、クッション1が身体Sにしっかり装着されて不用意にずれてしまうのを防止できる。また、非接触部11は身体Sの前後方向へ伸縮自在であるので、非接触部11に載せた指を曲げたり伸ばしたりする際に、非接触部11が伸縮する。従って、非接触部11は指の曲げ伸ばし運動を補助することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体躯接触具に係り、クッション、枕、マットレス等の身体の一部に接触して支持する体躯接触具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
身体を支持する体躯接触具としては、例えば特許文献1、2に記載されたものがある。
特許文献1に記載されたマットレスは、充填材料としてのウレタンフォーム製のクッション材と、このクッション材を収容する外皮とから成り、全体的に均一な弾性力を有するクッション材がある程度弾性変形して身体を支持する。
また、特許文献2に記載されたクッションは、伸縮性生地で構成された外皮としての外袋と、この外袋に充填された充填材料としての発泡樹脂粒子とから成り、身体の重さに応じて外袋が伸縮すると共に発泡樹脂粒子が流動して、身体に密着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100986号公報
【特許文献2】特開2005−230137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたマットレスのウレタンフォーム製のクッション材は、いずれの部分においても同じ弾性力しか発揮できないので、身体の形状に完全に対応して変形することができない。従って、このマットレスは、身体に密着して身体全体を支持することができないという問題がある。
また、特許文献2に記載されたクッションは、全体が伸縮性生地で構成された外袋と、流動性を有する発泡樹脂粒子とから成っているので、ウレタンフォーム製のクッション材のような大きな弾性力を持たない。従って、このクッションは、身体に密着するが、身体をしっかり支持できないという問題がある。
例えば、介護用の体躯接触具としてのクッション等には、身体に密着して、しかも身体をしっかり支持することが要求されるが、上記した特許文献1、2いずれの体躯接触具もこの要求を満たすことができない。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、身体に密着することができ、しかも身体をしっかり支持することができる体躯接触具を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、袋状の外皮と、前記外皮に充填された変形可能な充填材料とから成る体躯接触具において、前記外皮の身体に接触する接触部は全方向へ伸縮自在な材料によって構成され、且つ外皮の身体に接触しない非接触部は伸縮しないか特定の方向へのみ伸縮する材料によって構成されていることを特徴とする体躯接触具である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した体躯接触具において、充填材料は流動体であることを特徴とする体躯接触具である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載した体躯接触具において、流動体は粒状体であることを特徴とする体躯接触具である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載した体躯接触具において、粒状体は直径0.5mm〜1.5mmのビーズであることを特徴とする体躯接触具である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した体躯接触具において、外皮は人の腹部に嵌る程度の大きさの凹部を有し、前記凹部周辺に接触部が形成されていることを特徴とする体躯接触具である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載した体躯接触具において、接触部を囲む部位に非接触部が設けられていることを特徴とする体躯接触具である。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載した体躯接触具において、非接触部は凹部を腹部に嵌め体躯接触具を身体に装着した状態で身体の前後方向に伸縮自在であることを特徴とする体躯接触具である。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1から7に記載した体躯接触具において、接触部の伸び率は30%以上であることを特徴とする体躯接触具である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の体躯接触具によれば、外皮の身体に接触する接触部は全方向へ伸縮自在な材料によって構成されているので、身体に密着することができる。しかも外皮の身体に接触しない非接触部は伸縮しないか特定の方向へのみ伸縮する材料によって構成されているので、外皮に流動性を有する充填材料を充填しても身体をしっかり支持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る体躯接触具としてのクッションの斜視図である。
【図2】図1のクッションの底面図である。
【図3】図1のクッションの身体に装着した状態を示す斜視図である。
【図4】図1のクッションの身体に装着した状態を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る体躯接触具としてのマットレスの斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る体躯接触具としての枕の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態1に係る体躯接触具としてのクッション1を図1から図4にしたがって説明する。後述するように介護用として使用する。
クッション1は袋状の外皮3と、後述する充填材料としてのビーズ15とによって構成されている。
【0017】
外皮3の詳細な構成について説明する。
外皮3は人の腹部に嵌る程度の大きさの凹部7を有している。
凹部7の周辺には接触部9が設けられており、この接触部9は全方向へ伸縮自在な布によって構成されている。この布は、例えばポリアミド系繊維(混紡率89%)とポリウレタン系繊維(混紡率11%)とから成り、布の伸び率は34.6%〜59.6%である。
接触部9を囲む部位には非接触部11が設けられており、この非接触部11は前後方向(図2において矢印の示す方向)へのみ伸縮自在で他の方向には伸縮しない布によって構成されている。この布は、例えば綿糸(混紡率97%)とポリウレタン系繊維(混紡率3%)とから成り、布の伸び率は28.8%以下である。
【0018】
符号15は充填材料である粒状体としてのビーズを示し、このビーズ15は流動体として機能する。ビーズ15はポリスチレン製で、このビーズ15の直径は0.5mm〜1.5mmである。ビーズ15は外皮3に充填されており、このビーズ15は外皮3内で流動可能となっている。
【0019】
次に、クッション1の使用方法について説明する。
図3に示すようにクッション1の凹部7を車椅子Kに座った人の腹部に嵌めて、クッション1を身体Sに装着する。
前述したように接触部9は全方向へ伸縮自在な布によって構成され、しかも外皮3には流動可能なビーズ15が充填されているので、クッション1を腹部に嵌めるとき、接触部9が伸縮すると共にビーズ15が外皮3内で流動し、接触部9が腹部に沿った形状に変形して、クッション1が身体Sに装着される。従って、クッション1が身体Sにしっかり装着されて不用意にずれてしまうのを防止できる。
【0020】
腹部に装着したクッション1は太ももの上に載った状態となり、使用者はクッション1の上に前腕部をついて身体Sを支えることができる。前述したように非接触部11は前後方向へのみ伸縮自在で他の方向には伸縮しない布によって構成されている。従って、クッション1全体ではある程度の高い弾性力を有しており、荷重に対する十分な支持力を発揮して身体Sをしっかりと支持することが可能である。
【0021】
また、非接触部11は身体Sの前後方向へ伸縮自在であるので、非接触部11に載せた指を曲げたり伸ばしたりする際に、非接触部11が伸縮する。従って、非接触部11は指の曲げ伸ばし運動を補助することが可能である。
なお、上記したようにクッション1は車椅子Kに乗った者の身体Sを支える言わば介護用として用いるが、普通のクッションとして用いることもできる。
【0022】
本発明の実施の形態2に係る体躯接触具としてのマットレス21を図5にしたがって説明する。
マットレス21は袋状の外皮23と、この外皮23に充填された図示しないビーズとによって構成されている。
外皮23の上部は接触部25となっており、この接触部25は実施の形態1に係るクッション1の接触部9と同様の全方向へ伸縮自在な布によって構成されている。また外皮23の側部と下部は非接触部27となっており、この非接触部27はいずれの方向へも伸縮しない布によって構成されている。
外皮23に充填された図示しないビーズは、実施の形態1に係るクッション1のビーズ15と同じものである。
【0023】
次に、マットレス21の使用方法について説明する。
図5に示すようにマットレス21上に身体Sを横たえる。すると身体Sの重さに応じて接触部25が伸縮すると共に外皮23内のビーズが流動し、接触部25が身体Sに沿った形状に変形して身体Sに密着する。
前述したように非接触部27はいずれの方向へも伸縮しない布によって構成されている。従って、マットレス21全体ではある程度の高い弾性力を有しており、荷重に対する十分な支持力を発揮して身体S全体をしっかりと支持することが可能である。
従って、マットレス使用者の体格、寝る姿勢等が異なっても、常に使用者が楽な状態で身体S全体をしっかりと支持することができる。
【0024】
本発明の実施の形態3に係る体躯接触具としての枕31を図6にしたがって説明する。
枕31は袋状の外皮33と、この外皮33に充填された図示しないビーズとによって構成されている。
外皮33の上部の略中心部は接触部35となっており、この接触部35は実施の形態1に係るクッション1の接触部9と同様の全方向へ伸縮自在な布によって構成されている。また外皮33の接触部35以外の部分は非接触部37となっており、この非接触部37はいずれの方向へも伸縮しない布によって構成されている。
外皮33に充填された図示しないビーズは、実施の形態1に係るクッション1のビーズ15と同じものである。
【0025】
次に、枕31の使用方法について説明する。
図6に示すように枕31に頭Aを載せる。すると頭Aの重さに応じて接触部35が伸縮すると共に外皮33内のビーズが流動し、接触部35が頭Aに沿った形状に変形して頭Aに密着する。
前述したように非接触部37はいずれの方向へも伸縮しない布によって構成されている。従って、枕31全体ではある程度の高い弾性力を有しており、荷重に対する十分な支持力を発揮して頭Aをしっかりと支持することが可能である。
よって、枕使用者の頭部の大きさ、形状に拘わらず、常に枕使用者が楽な状態で頭部全体をしっかりと支持することができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態1では体躯接触具をクッション1とし、上記実施の形態2では体躯接触具をマットレス21とし、上記実施の形態3では体躯接触具を枕31としたが、体躯接触具は身体に接触して支持するものであればよく、例えば体躯接触具を座布団としてもよい。
上記実施の形態1では、ビーズ15をポリスチレンによって構成したが、ビーズ15の材質はポリスチレンに限定されない。
また、充填材料をビーズ15によって構成したが、充填材料を例えば空気や水等の流動体で構成してもよい。
上記実施の形態1では、非接触部11を前後方向へのみ伸縮自在な布によって構成したが、非接触部11を左右方向へのみ伸縮自在な布または伸縮しない布等によって構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、クッションやマットレス等の体躯接触具の製造業に利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…クッション 3…外皮 7…凹部
9…接触部 11…非接触部 15…ビーズ
21…マットレス 23…外皮 25…接触部
27…非接触部
31…枕 33…外皮 35…接触部
37…非接触部
K…車椅子 S…身体 A…頭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状の外皮と、前記外皮に充填された変形可能な充填材料とから成る体躯接触具において、前記外皮の身体に接触する接触部は全方向へ伸縮自在な材料によって構成され、且つ外皮の身体に接触しない非接触部は伸縮しないか特定の方向へのみ伸縮する材料によって構成されていることを特徴とする体躯接触具。
【請求項2】
請求項1に記載した体躯接触具において、充填材料は流動体であることを特徴とする体躯接触具。
【請求項3】
請求項2に記載した体躯接触具において、流動体は粒状体であることを特徴とする体躯接触具。
【請求項4】
請求項3に記載した体躯接触具において、粒状体は直径0.5mm〜1.5mmのビーズであることを特徴とする体躯接触具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した体躯接触具において、外皮は人の腹部に嵌る程度の大きさの凹部を有し、前記凹部周辺に接触部が形成されていることを特徴とする体躯接触具。
【請求項6】
請求項5に記載した体躯接触具において、接触部を囲む部位に非接触部が設けられていることを特徴とする体躯接触具。
【請求項7】
請求項6に記載した体躯接触具において、非接触部は凹部を腹部に嵌め体躯接触具を身体に装着した状態で身体の前後方向に伸縮自在であることを特徴とする体躯接触具。
【請求項8】
請求項1から7に記載した体躯接触具において、接触部の伸び率は30%以上であることを特徴とする体躯接触具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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