説明

余剰汚泥の利用方法

【課題】汚泥が有する臭気をなくすことができ、かつ汚泥が有するエネルギを損なうことなく、さらに効率よく汚泥の水分を除去してバイオマス燃料を生成することができる余剰汚泥の利用方法を提供する。
【解決手段】活性汚泥法により発生された余剰汚泥に生石灰を加えて攪拌し、前記余剰汚泥中の水分を水酸化カルシウムとして除去し、乾燥有機物を生成するステップと、前記乾燥有機物をバイオマス燃料として利用するステップとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、余剰汚泥の利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の下水道廃液の処理方式は、下水処理場に集めた汚水に対し、微生物を含んだ活性汚泥により処理し、これを浄化した後放流している。その際、微生物の死骸等が堆積し、余剰汚泥となる。余剰汚泥は脱水した後、主に焼却処理されている。余剰汚泥の処理方法として、特許文献1が開示されている。特許文献1では、汚泥の濃縮や凝集のための補助剤として、使用済み活性炭を使用している。一方で、東京都では、余剰汚泥に対し、化石燃料を用いて炭化炉で炭化している。その後、炭化物を火力発電所で燃料と混合してバイオマス燃料として利用している。
【0003】
しかしながら、上記従来の汚泥処理は焼却を行うため、大規模な焼却炉建設が必要となり、ランニング費用も多大に必要となる。また、焼却炉で処理するときに化石燃料を必要とするので、二酸化炭素を排出することになり、さらに焼却灰を廃棄埋め立て等するので、環境にとっても好ましくない。また、特許文献1のように使用済み活性炭を利用しても、汚泥の異臭を取り除くことはできない。また、東京都で実施しているように炭化するにしても、余剰汚泥が有する発熱量が減少することになる。
【0004】
すなわち、下水処理場では活性汚泥法を使用して水を浄化させるため、微生物(活性汚泥)を用いている。この微生物の死骸が汚泥として溜まっていく。これが余剰汚泥となる。この余剰汚泥は、脱水嫌気状態で年間400万トン排出されている。このため、上記従来技術のように焼却して迅速に処理することにしている。この余剰汚泥には、燃料としてのエネルギ(カロリー)があることは分かっている。したがって、単に焼却するだけでは資源の無駄となる。しかし、特許文献1のように活性炭を利用しても、余剰汚泥が有する臭気の問題がある。東京都で実施しているように炭化することは、臭気を消せるが、そのためにはエネルギが必要である。この場合、汚泥が持っているエネルギが炭になることで減少してしまい、効率も悪い。しかしながら、現状では、臭気を消すために炭化が採用されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−260572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、汚泥が有する臭気をなくすことができ、かつ汚泥が有するエネルギを損なうことなく、さらに効率よく汚泥の水分を除去してバイオマス燃料を生成することができる余剰汚泥の利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、活性汚泥法により発生された余剰汚泥に生石灰を加えて攪拌し、前記余剰汚泥中の水分を水和反応とその反応熱により除去し、水酸化カルシウムを含む乾燥有機物を生成するステップと、前記乾燥有機物をバイオマス燃料として利用するステップとを備えたことを特徴とする余剰汚泥の利用方法を提供する。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記余剰汚泥に加える前記生石灰の重量は、前記余剰汚泥1に対して0.2〜1であることを特徴としている。
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記攪拌は、移動可能な攪拌装置を用いて行われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、余剰汚泥に生石灰を加えて攪拌するため、以下の水和反応が起こる。
CaO+HO=Ca(OH)
この水和反応で用いられる水は、余剰汚泥中の水分である。このため、効率よく余剰汚泥中の水分を除去することができる。また、水和反応は攪拌のみで実施できるので、加熱等を行う必要がなく、焼却のような火力を必要としない。また、水和反応の熱分解により、余剰汚泥の異臭を除去できる。そして、余剰汚泥は脱水されるのみであるため、余剰汚泥が有するエネルギが減少することはない。したがって、エネルギ効率的に高い乾燥有機物を得ることができ、バイオマス燃料として好適に利用できる。また、バイオマス燃料として用いた場合、廃棄物が産出されないゼロエミッションを実現できる。
【0010】
請求項2の発明によれば、重量比で余剰汚泥:生石灰が1:1であれば完全に余剰汚泥の異臭を除去できる。1:0.5であれば、人に耐え得る程度に異臭を除去できることが分かっている。したがって、この範囲であれば、余剰汚泥が有する異臭が作業や製品に影響を与えることはない。
【0011】
請求項3の発明によれば、移動可能な攪拌装置、例えば攪拌ローリー車等を用いて余剰汚泥と生石灰とを攪拌できるので、移動しながら水和反応を行い、乾燥有機物を生成することができる。また、余剰汚泥が発生する下水処理場に攪拌装置ごと移動できるので、その復路にて次なる乾燥有機物の生成を行うことができ、時間的に効率がよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る余剰汚泥の利用方法のフローチャートである。
【図2】本発明に係る余剰汚泥の利用方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る余剰汚泥の利用方法は、余剰汚泥に対し生石灰を加えて攪拌することからスタートするが、これに先立ち、まず活性汚泥法により下水処理して発生された余剰汚泥を収集してもよい(ステップS1)。活性汚泥法により下水処理される場所は、例えば、下水処理場である。このように余剰汚泥は、積極的に収集してもよいし、下水処理場等から搬入させてもよい。
【0014】
具体的に説明すると、図2に示すように、下水処理場1では、曝気槽2で汚水を曝気し、その後同じく下水処理場1に備わる脱水機3にてある程度脱水して水分の多い嫌気状の脱水汚泥を形成する。
【0015】
そして、余剰汚泥に生石灰を加えて攪拌する。この攪拌により水和反応が促進され、水和反応とその反応熱によって余剰汚泥中の水分が除去され、消石灰(水酸化カルシウム)を含む乾燥有機物が生成される。具体的には、以下の反応式で示される水和反応が起こる。
CaO+HO=Ca(OH)
【0016】
この水和反応で用いられる水は、余剰汚泥中の水分である。すなわち、生石灰を混合するだけで効率よく余剰汚泥中の水分を除去することができる。また、この水和反応は約100℃前後にコントロールされるので、焼却のような火力を必要としない。すなわち、攪拌による水和反応とその反応熱のみで余剰汚泥中の水分を除去できる。また、水和反応の熱分解により、余剰汚泥の異臭を除去できる。そして、余剰汚泥は脱水されるのみであるため、余剰汚泥が有するエネルギが減少することはない。このため、余剰汚泥は脱水され、エネルギ効率的に高い乾燥有機物を得ることができる(ステップS2)。この有機乾燥物を生成する工程に際し、COは発生しない。
【0017】
上記水和反応は、例えば10分〜60分間行われる。この水和反応における条件や攪拌に要する時間等は、余剰汚泥に量によって異なる。大量(大容量)であれば高速で数秒〜数分攪拌し、その後攪拌せずに放置して60分程度水和反応させる。少量(小容量)であれば低速で10分〜60分攪拌し、攪拌中に水和反応させる。大量か少量かは適宜決定されるものであるが、少量はおよそ5m/h程度以下である。
【0018】
また、余剰汚泥に加える生石灰の重量は、余剰汚泥1に対して0.2〜1(好ましくは0.3〜0.8)である。このように割合を規定したのは、重量比で余剰汚泥:生石灰が1:1であれば完全に余剰汚泥の異臭を除去でき、1:0.5であれば、人に耐え得る程度に異臭を除去できることが分かっている。したがって、この範囲であれば、余剰汚泥が有する異臭が作業や製品に影響を与えることはないからである。
【0019】
攪拌は、大型の固定攪拌装置を用いる。これにより、大量の余剰汚泥を処理することができる。一方、移動可能な攪拌装置を用いてもよい。例えば、攪拌ローリー車等が考えられる。これにより、移動しながら水和反応を行い、乾燥有機物を生成することができる。この移動式の攪拌装置は、少量の余剰汚泥を処理する際に適している。また、上記ステップS1のように積極的に余剰汚泥を収集する工程がある場合は、余剰汚泥が発生する下水処理場に攪拌装置ごと移動できるので、その復路にて次なる乾燥有機物の生成を行うことができ、時間的に効率がよい。
【0020】
具体的に説明すると、図2に示すように、余剰汚泥は、槽4に収容されて乾燥処理場5内に搬入される。そして、余剰汚泥が大量の場合、槽4内の余剰汚泥は処理場5内にて攪拌装置6に収容され、高速で数秒攪拌された後、コンベヤ7にて反応エリア8に搬送される。ここで60分程度水和反応が行われる。その後、トラック9に積載されて配送される。攪拌する余剰汚泥が少量の場合、攪拌ローリー車10にそのまま収容し、移動しながら低速で攪拌する。
【0021】
そして、乾燥有機物をバイオマス燃料として利用する(ステップS3)。この利用に際して、乾燥有機物をペレット状にしてもよいし、粉末状で利用してもよい。燃料として利用する際は、乾燥有機物と上記水和反応で生成された消石灰とが混合したまま用いてもよい。上述したように、余剰汚泥のエネルギは減少していないので、余剰汚泥から得られた乾燥有機物をバイオマス燃料として好適に利用できる。また、このようにバイオマス燃料として用いた場合、廃棄物が産出されないゼロエミッションを実現できることになる。また、このバイオマス燃料は自然由来であるので、RPS収入(4円/kwh)が期待でき、利用者に多大な利益をもたらす。
【0022】
本発明に係る余剰汚泥の利用方法は、生石灰との反応で余剰汚泥の異臭を取り除きつつ、かつ余剰汚泥のエネルギを減少させることなく燃料として利用できるものである。出発物質が異臭を放つ余剰汚泥であるが故、生石灰による水和反応を必ず行うこととしている。
【符号の説明】
【0023】
1 下水処理場
2 曝気槽
3 脱水機
4 槽
5 反応処理場
6 攪拌装置
7 コンベヤ
8 反応エリア
9 トラック
10 攪拌ローリー車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥法により発生された余剰汚泥に生石灰を加えて攪拌し、前記余剰汚泥中の水分を水和反応とその反応熱により除去し、水酸化カルシウムを含む乾燥有機物を生成するステップと、
前記乾燥有機物をバイオマス燃料として利用するステップとを備えたことを特徴とする余剰汚泥の利用方法。
【請求項2】
前記余剰汚泥に加える前記生石灰の重量は、前記余剰汚泥1に対して0.2〜1であることを特徴とする請求項1に記載の余剰汚泥の利用方法。
【請求項3】
前記攪拌は、移動可能な攪拌装置を用いて行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の余剰汚泥の利用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate