説明

作業機のインターロツク装置

【目的】 本発明は、油圧アクチュエータを電動モータで駆動される油圧ポンプとエンジンで駆動される油圧ポンプを備え、いずれかの油圧ポンプによって油圧アクチュエータを駆動し両方の油圧ポンプによって油圧アクチュエータを駆動できないようにすることを目的とする。
【構成】 電動モータ10を駆動する場合を第1の検出手段R2で検出し、エンジン11で駆動する場合を第2の検出手段R3で検出するとともに、第1の検出手段R2が作動した時にエンジンの始動手段27を第1規制手段R2bで規制し、第2の検出手段R3が作動した時に電動モータの始動手段23を第2規制手段R3aで規制して、一度に両方の油圧ポンプによって油圧アクチュエータを駆動できないようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両上に適宜配置した油圧アクチュエータによってブームを起伏並びに旋回駆動自在に設けた作業機であって、特に、電動モータで駆動される油圧ポンプとエンジンで駆動される油圧ポンプを備え、これらの油圧ポンプを選択的に使用して前記油圧アクチュエータを駆動するようにした作業機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の作業機として図3に図示する高所作業車Aを例に以下に説明する。高所作業車Aは、車両1上に旋回台2を旋回自在に設けるとともに、その基端部を枢支され起伏自在に配置したブーム3を設けている。ブーム3は複数のブームを順次伸縮自在に嵌挿した伸縮ブーム4(以下ブーム3は複数のブームを順次伸縮自在に嵌挿した伸縮ブーム4として説明する。)で構成しており、この伸縮ブーム4の先端には旋回自在(以下首振り自在として説明する。)に作業者搭乗用のバケット5を備えている。
【0003】この高所作業車Aは、車両1と旋回台2間に適宜配置した旋回用油圧モータ6により車両1に対して旋回台2を旋回駆動するようにしている。また、伸縮ブーム4と旋回台2の適所間に起伏用油圧シリンダ7を配置し、伸縮ブーム4を旋回台2に対して起伏駆動できるようにしている。複数のブームを順次伸縮自在に嵌挿した伸縮ブーム4は、基端側のブーム間に伸縮用油圧シリンダ8を配置しその他のブーム間には適宜のワイヤロープ等で構成した伸縮装置(図示しない)が配置され、伸縮ブーム4を伸縮駆動できるようにしている。伸縮ブーム4の先端部とバケット5間には、適宜配置した油圧モータ9により伸縮ブーム4の先端部に対してバケット5を首振り駆動できるようにしている。
【0004】そしてこのような高所作業車Aは、近年船倉や屋内での作業に使用され、密閉された作業場でエンジンの動力で以て駆動するものにあっては、排ガス対策が必要になることから、電動モータによる動力で以て駆動する必要性が生じてきた。そこで、高所作業車Aの旋回台2上には、電動モータ10とエンジン11の両動力源を備え、電動モータ10の動力源で以て油圧ポンプ12を駆動し、エンジン11動力源で以て油圧ポンプ13を駆動できるようにしてある。そしてこれらの油圧ポンプ12、13を選択的に使用して前記油圧アクチュエータを駆動するようにしてある。
【0005】このように高所作業車Aに配置された前記各油圧アクチュエータおよび油圧ポンプ12、13は、図2に図示する如くの油圧回路によって制御されている。すなわち、油圧ポンプ12または油圧ポンプ13からの油圧源は、前記油圧アクチュエータにそれぞれ対応して配置した各制御弁14、15、16、17を操作することによって駆動制御するようになっている。前記油圧ポンプ12、13と各制御弁14、15、16、17間には、リリーフ弁18を配置し、油圧回路の最高圧力を規定させている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところがこのように構成された高所作業車Aは、うっかりして電動モータ10とエンジン11の両動力源を稼働してしまうことがあった。この場合、両油圧ポンプ11、12からの吐出量を受けて各アクチュエータの速度が速くなったり、大流量にともなってリリーフ弁18で設定圧の制御が不能になり油圧回路、各制御弁14、15、16、17、各油圧アクチュエータを破損させてしまう危険性を伴うものであった。本発明は、このように一度に両動力源を稼働してしまうことのない安全な作業機を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の作業機のインタロック装置は、車両上に適宜配置した油圧アクチュエータによってブームを起伏並びに旋回駆動自在に設けた作業機であって、特に、電動モータで駆動される油圧ポンプとエンジンで駆動される油圧ポンプを備え、これらの油圧ポンプを選択的に使用して前記油圧アクチュエータを駆動するようにした作業機において、前記電動モータの始動準備状態または稼働状態を検出する第1の検出手段と、前記エンジンの始動準備状態または稼働状態を検出する第2の検出手段を配置するとともに、第1の検出手段が前記電動モータの始動準備状態または稼働状態を検出した時にエンジンの始動手段を規制する第1の規制手段と、第2の検出手段が前記エンジンの始動準備状態または稼働状態を検出した時に電動モータの始動手段を規制する第2の規制手段を配置したことを特徴とするものである。
【0008】
【作用】以上の如く構成した本発明の作業機のインタロック装置は、第1の検出手段が電動モータの始動準備状態または稼働状態を検出した時には、第1の規制手段によってエンジンの始動手段を規制してエンジンの始動をできなくするものであるから、電動モータが稼働している時にエンジンを始動することはない。また、第2の検出手段がエンジンの始動準備状態または稼働状態を検出した時には、第2の規制手段によって電動モータの始動手段を規制して電動モータの始動をできなくするものであるから、エンジンが稼働している時に電動モータを始動することはない。よって、一度に両動力源を稼働してしまうことができないようにしたものだから、両油圧ポンプからの吐出量を受けて各アクチュエータを作動させることの防止を図れ、そのためのトラブルをなくすることができる。
【0009】
【実施例】以下本発明の作業機のインタロック装置について図1に図示し以下に説明する。なお、本発明の実施例を説明するにあたって、図2および図3に図示し従来の技術で説明した高所作業車Aに実施した場合を以下に説明する。したがって、従来の技術の説明で使用した符号1〜符号18ならびに符号Aは、以下の説明でも同じものとして同符号を用い説明を略する。
【0010】図1において、19は、電磁開閉器であって、商用電源から電源の供給を受ける時に手動で閉じ、この電磁開閉器19に流れる電流が所定以上に流れるとその回路を電磁力により自動的に開くようになっている。20は、インバータであって、高圧の3相交流電源のうちいずれかの1相から電源供給を受け、直流の低圧電源に変換するものである。
【0011】インバータ20から出力される直流の低圧電源は、ダイオード21を介してバッテリー22に接続され、バッテリー22を充電できるようにしてある。R2は、インバータ20とダイオード21間に接続したリレーであって、特許請求範囲に記載の第1の検出手段に相当し、前記電磁開閉器19を閉じた時に、作動して常閉接点R2bを開くように構成している。
【0012】23は、電動モータの始動手段であって、次のように構成している。24は、電動モータの運転スイッチであって、常開スイッチで構成している。25は、電動モータの停止スイッチであって、常閉スイッチで構成している。そして運転スイッチ24と停止スイッチ25は後述する常開接点R3a(特許請求の範囲に記載の第2の規制手段に相当する。)とリレーMS1の直列回路に直列に接続させ、高圧の3相交流電源のうちいずれかの1相から電源供給を受けるように接続するとともに、運転スイッチ24と常開接点R3aの直列回路に並列に常開接点MS1aを接続している。
【0013】26は、電動モータ10の稼働装置であって、リレーMS1の作動により高圧の3相交流電源にY結線して電動モータ10を始動し、内蔵するタイマーによりY結線して電動モータ10を始動した後所定時間を経過すると、Δ結線して電動モータ10を稼働し、停止時にはこの逆に結線して停止するように作動する装置である。
【0014】27は、エンジンの始動手段であって、次のように構成している。28は、セフティリレーであって、オールタネータ(不図示)からの発電電圧を検出し、発電電圧が発生している時には出力トランジスター29をOFFにし、発電電圧が発生していない時には出力トランジスター29をONにするようになっている。すなわち、エンジン11の回転中は出力トランジスター29をOFFにし、エンジン11の停止中は出力トランジスター29をONとするものである。
【0015】R5は、スタータリレーであって、出力トランジスター29がON状態になると作動するように、出力トランジスター29に直列に接続している。また、スタータリレーR5には、リレーR2の作動でその接点を開く常閉接点R2bと直列に接続している。したがって、スタータリレーR5は、前記電磁開閉器19を開き商用電源から電源の供給を受けていない状態でしかも、エンジン11が停止中の時にのみ作動するものである。
【0016】R3は、常閉接点R2bとスタータリレーR5の直列回路に並列に配置したリレーであって、特許請求範囲に記載の第2の検出手段に相当し、出力トランジスター29のONで作動して上述した常開接点R3aを閉じるようになっている。すなわち、リレーR3が作動しなければ(言いかえればエンジン11が停止状態になければ)第2の規制手段である常開接点R3aが閉じないので、運転スイッチ24を閉じてもリレーMS1は作動せず、電動モータ10の始動ができないようになっている。
【0017】30は、OFF、ON、STARTの3位置を2回路備えたキースイッチであって、ONとSTART位置では、バッテリー22からの電源を常閉接点R2bとリレーR3に供給するように接続している。また、START位置では、スタートリレーR4に電源を供給するように接続している。
【0018】31は、スタータモータであって、スタートリレーR4の作動により閉じる常開接点R4aと前記スタータリレーR5の作動により閉じる常開接点R5aの直列回路を介してバッテリー22に接続している。したがって、スタートリレーR4とスタータリレーR5の作動した時に、スタータモータ31によりエンジン11を始動させることができるようにしている。(言いかえれば、前記電磁開閉器19を開き商用電源から電源の供給を受けていない状態でしかも、エンジン11が停止中の時に、キースイッチ30をSTART位置にしてスタートリレーR4を作動させた時に、スタータモータ31によりエンジン11を始動させるようにしたものである。)
【0019】このように構成した高所作業車Aに実施した場合のインターロック装置は、キースイッチ30を必ず一旦OFF位置からON位置にした後からでないと、電動モータ10またはエンジン11を始動できないようにしている。すなわち、リレーR3またはスタータリレーR5の作動は、キースイッチ30をON位置にしないと作動しないからである。
【0020】次に作用を説明する。いま電磁開閉器19を手動で閉じ商用電源から電源の供給を受け、電動モータ10を駆動して油圧ポンプ12からの油圧源で高所作業車Aを作動させているとする。この時キースイッチ30は、勿論ON位置に位置させている。そして第1の検出手段であるリレーR2は、商用電源からインバータ20を介して電源が供給され作動している。すなわち、リレーR2によって電磁開閉器19を閉じ商用電源から電源の供給を受けていることを検出するものである。
【0021】ここで電動モータ10を駆動しているにもかかわらずエンジン11を駆動しょうとして、キースイッチ30をON位置から更にSTART位置にしたとする。しかし、リレーR2が作動しているものであるから、第1の規制手段である常開接点R2bが開いてスタータリレーR5は作動しない状態にある。したがって、キースイッチ30をON位置から更にSTART位置にし、スタートリレーR4を作動させ常開接点R4a接点を閉じても、スタータリレーR5の作動によって閉じる常開接点R5a接点が閉じないものであるから、スタータモータ31によりエンジン11を始動させることができない。
【0022】このように第1の検出手段であるリレーR2によって電磁開閉器19を閉じ商用電源から電源の供給を受けていることを検出し、第1の規制手段である常開接点R2bによりエンジンの始動手段27を規制するものである。
【0023】次に、エンジン11を駆動して油圧ポンプ13からの油圧源で高所作業車Aを作動させていたとする。この時キースイッチ30は、勿論ON位置に位置させている。そして第2の検出手段であるリレーR3は、エンジン11が回転しているものだから、出力トランジスター29がOFFとなり作動しない。すなわち、リレーR3により、エンジン11が停止状態にないことを検出するものである。
【0024】ここでエンジン11を駆動しているにもかかわらず電動モータ10を駆動しょうとして、運転スイッチ24を閉じたとする。しかし、第2の検出手段であるリレーR3が作動しているものであるから、第2の規制手段であるリレーR3aは開いたままでリレーMS1が作動せず電動モータ10を始動することができない。
【0025】このように第2の検出手段であるリレーR3によってエンジン11が停止状態にないことを検出し、第2の規制手段である常開接点R3aにより電動モータの始動手段23を規制するものである。
【0026】以上の如く一度に電動モータ10とエンジン11の両動力源を稼働してしまうことができないようにできるものだから、油圧ポンプ12と油圧ポンプ13の両油圧ポンプからの吐出量を受けて各アクチュエータを作動させることをの防止を図れ、そのためのトラブルをなくすることができる。
【0027】なお、上記実施例では、第1の検出器としてリレーR2によって電磁開閉器19を閉じ商用電源から電源の供給を受けていることを検出し電動モータ10の始動準備状態または稼働状態を検出するようにしたが、電動モータ10の回転検出器を設け、この回転検出器により電動モータ10が回転状態にある時に常閉接点R2bを開くようにしてもよい。
【0028】また、上記実施例では、セフティリレー28によってエンジン11の停止状態または稼働状態を第2の検出器であるリレーR3を介して検出するようにしたが、エンジン11のオイル圧力検出器によってエンジン11の停止状態または稼働状態を検出するようにしてもよい。更に、エンジン11の回転検出器を設けこれによりエンジン11の停止状態または稼働状態を検出するようにしてもよい。次に、キースイッチ30をON位置からSTART位置にするにあたって、この間に始動準備位置を追加し、この位置にキースイッチ30を位置させると第2の検出手段である前記リレーR3を作動させるようにし、エンジン11の始動準備状態を検出するようにしたものであってもよい。
【0029】更に、上記実施例では、高所作業車Aに実施した場合を説明したが、クレーン車、穴掘建柱車、掘削機、等の作業機に実施できること勿論である。
【発明の効果】以上の如く構成作用する本発明の作業機のインターロック装置は、一度に電動モータとエンジンの両動力源を稼働してしまうことができないようにしたものだから、電動モータによって駆動される油圧ポンプとエンジンによって駆動される油圧ポンプの両油圧ポンプからの吐出量を受けて各アクチュエータを作動させることをの防止を図れ、そのためのトラブルをなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作業機のインターロック装置を説明する説明図である。
【図2】高所作業車の油圧回路を説明する説明図である。
【図3】作業機の例として高所作業車を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 車両
3 ブーム
10 電動モータ
11 エンジン
23 電動モータの始動手段
27 エンジンの始動手段
R2 第1の検出手段
R3 第2の検出手段
R2b 第1の規制手段
R3a 第2の規制手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両上に適宜配置した油圧アクチュエータによってブームを起伏並びに旋回駆動自在に設けた作業機であって、特に、電動モータで駆動される油圧ポンプとエンジンで駆動される油圧ポンプを備え、これらの油圧ポンプを選択的に使用して前記油圧アクチュエータを駆動するようにした作業機において、前記電動モータの始動準備状態または稼働状態を検出する第1の検出手段と、前記エンジンの始動準備状態または稼働状態を検出する第2の検出手段を配置するとともに、第1の検出手段が前記電動モータの始動準備状態または稼働状態を検出した時にエンジンの始動手段を規制する第1の規制手段と、第2の検出手段が前記エンジンの始動準備状態または稼働状態を検出した時に電動モータの始動手段を規制する第2の規制手段を配置した作業機のインターロック装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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