説明

作業機械の表示装置

【課題】 作業速度及びエンジン回転速度を、作業者の好みに応じた適切な状態で表示することが可能となる作業機械の表示装置を提供する。
【解決手段】 運転席の前部に設けられた表示パネルに、作業速度及びエンジン回転速度を表示するように構成された作業機械の表示装置であって、作業速度及びエンジン回転速度を表示する一対の速度表示部12、14が左右方向に並ぶ状態で備えられ、前記一対の速度表示部12、14のうちの右側の速度表示部12に作業速度を表示し且つ左側の速度表示部14にエンジン回転速度を表示する第1表示状態と、一対の速度表示部12、14のうちの右側の速度表示部14にエンジン回転速度を表示し且つ左側の速度表示部14に作業速度を表示する第2表示状態とに切り換え可能な状態で、各速度表示部12、14の表示状態を制御する表示制御手段を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席の前部に設けられた表示パネルに、作業速度及びエンジン回転速度を表示するように構成された作業機械の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の作業機械の表示装置の従来例としては、作業機械の一例であるコンバインに適用したものとして次のように構成されたものがあった。
すなわち、運転席の前部に設けられた表示パネルに、液晶表示装置が備えられ、その液晶表示部に、刈取作業時等のように作業を行うときの車体の走行速度である作業速度とエンジン回転速度とを上下方向に並べて表示する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、例示した上記特許文献1では、上記エンジン回転速度を表示する表示部は、非作業中においてエンジン回転速度を表示するが、作業中においては、エンジン回転速度に代えてエンジン負荷を表示する構成となっているものであるが、作業中においてもエンジン回転速度を表示することが望まれるものである。
【0004】
つまり、作業機械の一例であるコンバインにおいては、作業開始前にエンジンの回転速度が基準回転速度になるようにアクセル操作位置を調整してその後の作業を行うことが一般的に行われるものであるから、特許文献1では、非作業中においてエンジン回転速度を表示してアクセル操作位置の調整作業を行えるようにしている。そして、作業中は、エンジン回転速度に代えてエンジン負荷を表示することで、作業の実行に伴うエンジン負荷の状況を確認することによって過大負荷にならないようにしながら、しかも、エンジン負荷と並べて表示している作業速度の表示内容を確認しながら、作業能率のよい適正な作業速度に調整する等の操作を行えるようにしている。
【0005】
しかし、作業中においてエンジン回転速度に代えてエンジン負荷を表示するものでは、エンジン回転速度が例えば基準回転速度からどの程度離れた状態で推移しているのか、あるいは、大きく変動しているかあるいは変動が少なく安定しているか等、作業中におけるエンジンの運転状態がどのようになっているかについて確認することができないものとなるから、作業中においてもエンジン回転速度を表示することが望まれるものである。
【0006】
又、表示装置に作業速度が表示されていると、例えば作業速度として変更調整可能な範囲の最大値に対して現在の作業速度がどの程度異なっているかが判るので、作業速度を変更させて、できるだけ変更調整可能な範囲の最大値に近づけることにより、作業能率の向上を図ることが可能になるものであり、作業速度は作業を行う上で重要な情報である。
【0007】
【特許文献1】特開2005−80549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
作業速度とエンジン回転速度とを表示するにあたり、上記従来構成のように、それらを上下方向に並べて配置するものでは、作業者が表示装置を目視するときに作業速度とエンジン回転速度とを読み取り難いものであり、改善が望まれていた。
【0009】
本発明の目的は、作業速度及びエンジン回転速度を読み取り易い状態で表示することが可能となる作業機械の表示装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る作業機械の表示装置は、運転席の前部に設けられた表示パネルに、作業速度及びエンジン回転速度を表示するように構成されたものであって、その第1特徴構成は、左右方向に並ぶ一対の速度表示部と、それら速度表示部の作動を制御する表示制御手段とが備えられ、前記表示制御手段が、前記一対の速度表示部のうちの右側の速度表示部に前記作業速度を表示し且つ左側の前記速度表示部に前記エンジン回転速度を表示するように、前記一対の速度表示部を作動させる第1表示状態と、前記一対の速度表示部のうちの右側の速度表示部に前記エンジン回転速度を表示し且つ左側の前記速度表示部に前記作業速度を表示するように、前記一対の速度表示部を作動させる第2表示状態とに切り換え自在に構成されている点にある。
【0011】
第1特徴構成によれば、表示制御手段が前記第1表示状態に切り換えられると、左右方向に並ぶ状態で備えられる一対の速度表示部のうちの右側の速度表示部に作業速度が表示され、左側の速度表示部にエンジン回転速度が表示されることになる。又、表示制御手段が第2表示状態に切り換えられると、前記一対の速度表示部のうちの右側の速度表示部にエンジン回転速度が表示され、左側の速度表示部に作業速度が表示されることになる。つまり、作業速度とエンジン回転速度とが左右方向に並ぶ状態で表示されることになる。
【0012】
ところで、並べて表示される複数の表示対象物を目視する場合において、人間は、左右方向の視野角が広い等により、本来、上下方向に並べる場合に比べて左右方向に並べた方が見易いものであるが、上記したように、作業速度とエンジン回転速度とを左右方向に並ぶ状態で表示する構成としたから、上下方向に並べるものに比べて、作業速度とエンジン回転速度とを読み取り易い状態で表示することができる。
【0013】
しかも、上記したように表示状態を第1表示状態と第2表示状態とに切り換え自在に構成することで、例えば、エンジン回転速度と作業速度のうちのいずれかを作業者が見易い位置になるように表示状態を切り換えることにより、作業者の好みに応じた適切な状態でエンジン回転速度と作業速度とを表示することが可能となる。
【0014】
従って、作業速度及びエンジン回転速度を読み取り易い状態で表示することが可能となる作業機械の表示装置を提供できるに至った。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記一対の速度表示部の夫々が、最低速度表示位置と最高速度表示位置とに亘り且つ上向き突出の円弧状の速度表示用設定経路に沿って表示用指示部を移動させる形態で、前記作業速度及び前記エンジン回転速度を表示するように構成されている点にある。
【0016】
第2特徴構成によれば、一対の速度表示部の夫々は、最低速度表示位置と最高速度表示位置とに亘り且つ上向き突出の円弧状の速度表示用設定経路に沿って表示用指示部を移動させる形態で作業速度及びエンジン回転速度を表示するように構成されているので、作業者は、表示用指示部の移動状態を目視することによって作業速度を感覚的に判別し易いものになる。例えば、作業速度及びエンジン回転速度のうちのいずれかの表示対象速度を数値で表す表示形態であれば、作業者が表示対象速度の大きさを感覚的に判り難いものとなるが、上記構成であれば、このような不利がなく、表示用指示部が最低速度表示位置と最高速度表示位置との間のうちのどの位置にあるのか、言い換えると、表示対象速度が最低速度と最高速度との間の速度調整可能範囲の中でどの程度の割合の速度であるのかを感覚的に判り易いものとなる。
【0017】
しかも、上向き突出の円弧状に形成された速度表示用設定経路に沿って表示用指示部を移動させるので、例えば直線状の経路等に比べて、限られた表示スペースを有効に利用して速度表示用設定経路の経路長を極力長くすることができ、表示対象である速度が単位量変化するときの表示用指示部の単位移動量を極力大きくすることで分解能を高くした状態で表示することが可能となる。
【0018】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記一対の速度表示部の夫々が、前記表示用指示部としての指示針を前記速度表示用設定経路に沿って移動させるように構成され、前記一対の速度表示部のうちのいずれか一方の速度表示部の前記速度表示用設定経路の外方側に並ぶ状態で上向き突出の円弧状に形成され且つ最小負荷表示位置と最大負荷表示位置とに亘る負荷表示用設定経路に沿って負荷表示用指示部をエンジン負荷に応じて移動させる形態でエンジン負荷を表示するエンジン負荷表示部を備えて構成されている点にある。
【0019】
第3特徴構成によれば、一対の速度表示部の夫々が、前記表示用指示部としての指示針を前記速度表示用設定経路に沿って移動させるように構成されているので、作業者は、作業速度及びエンジン回転速度を指示針の位置と背景に備えられる目盛とを対比することにより極力精度よく読み取ることができる。
【0020】
又、前記エンジン負荷表示部は、最低負荷表示位置と最高負荷表示位置とに亘る負荷表示用設定経路に沿って負荷表示用指示部をエンジン負荷に応じて移動させる形態でエンジン負荷を表示する構成であるから、作業者は、負荷表示用指示部が最小負荷表示位置と最大負荷表示位置との間のうちのどの位置にあるのか、言い換えると、現在のエンジン負荷が最小速度と最大速度との間の範囲の中でどの程度の割合のエンジン負荷であるのかを感覚的に判り易いものとなる。
【0021】
しかも、前記負荷表示用設定経路が上向き突出の円弧状に形成されて前記速度表示用設定経路の外方側に並ぶ状態で備えられているので、速度表示用設定経路の外方側のスペースを有効利用して、表示装置全体を大型にすることなく、エンジン負荷表示手段を合理的に配置することができる。
【0022】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、燃料残量を表示する燃料残量表示部が備えられ、前記一対の速度表示部が互いに隣接する状態で左右方向に並び、且つ、それら一対の速度表示部に対して直列状に左右方向に沿って並ぶ状態で前記燃料残量表示部が並設され、前記一対の速度表示部及び前記燃料残量表示部の中で左右方向の中央に位置する速度表示部が、他の速度表示部並びに前記燃料残量表示部よりも大型に形成されている点にある。
【0023】
第4特徴構成によれば、エンジンに供給すべき燃料の残量は、作業速度やエンジン回転速度と共に、作業を適正に且つ継続して行うために作業者が適宜確認する必要があるが、そのような報知情報を作業速度を表示する速度表示部とエンジン回転速度を表示する速度表示部に直列状に左右方向に沿って並ぶ状態で表示することで、作業者は、作業の継続に必要となる作業速度、エンジン回転速度、及び、燃料残量の夫々を容易に確認することが可能となる。
【0024】
そして、一対の速度表示部及び燃料残量表示部の中で左右方向の中央に位置する速度表示部が、他の速度表示部並びに燃料残量表示部よりも大型に形成されているから、その中央部に位置して大型に形成される速度表示部に、作業速度とエンジン回転速度のうちの作業者が最も重要であると考えるものを表示させる状態にすることで、作業者の好みに応じて、作業者が重要であると考える情報が判り易く表示することができる適切な表示状態にすることが可能であり、使い勝手のよいものとなる。
【0025】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成のいずれかに加えて、作業速度、エンジン回転速度、及び、燃料残量以外の複数種の報知情報を並べて表示する画像表示式の補助表示部を備えて構成されている点にある。
【0026】
第5特徴構成によれば、画像表示式の補助表示部により、作業速度、エンジン回転速度、及び、燃料残量以外の複数種の報知情報を並べて表示する構成としたから、表示状態を切り換えることにより複数種の報知情報を順次表示させる等の煩わしい手間のない状態で、作業者に知らせるべき報知情報を適切に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る作業機械の表示装置の実施形態を作業機械としてのコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置30を備えた機体Vの前部に、刈取昇降シリンダ5によって横軸心X周りに上下揺動操作自在な状態で刈取部1が設けられ、機体Vには、運転部31、刈取穀稈の扱処理並びに穀粒選別処理を行う脱穀部2、脱穀部2から供給される穀粒を貯留する貯留部としてのグレンタンク3、及び、グレンタンク3から穀粒を排出するための排出用のアンローダ32等が装備されて構成されている。前記グレンタンク3にはその内部に貯留されている穀粒(もみ)の量を検出するモミセンサS6が設けられている。
【0028】
刈取部1は、先端部に付設された分草具33、穀稈の引き起こし装置34、引き起こした穀稈の株元を切断する刈り刃35、先端側で刈取穀稈を受け取って脱穀部2のフィードチェーン52に受け渡す縦搬送装置36等を備えている。又、刈取部1の地面に対する高さを検出するための超音波センサS1と、刈取穀稈の存在を検知してオン作動することにより刈取り作業中であることを検出する株元センサS2とが設けられている。そして、超音波センサS1の情報に基づいて、刈取部1の対地高さが目標設定高さに維持されるように刈取昇降シリンダ5の作動を制御する刈高制御が実行される。
【0029】
前記アンローダ32は、先端部に下向き姿勢の排出口32aを備え、基端側が横軸心Z周りに上下揺動自在な状態で支持部32bに支持され、その支持部32bが縦軸心Y周りに旋回操作自在な状態で機体Vに支持されている。そして、前記アンローダ32を上下揺動駆動するためのアンローダ用油圧シリンダ62、旋回駆動用のアンローダ旋回用モータM3、その支持部32bの旋回位置を検出するためのポテンショメータ式のアンローダ位置センサS3が設けられている。そして、上記アンローダ位置センサS3以外にも上昇方向や左右方向への旋回操作の限界位置を検出するリミットスイッチ(図示しない)等も備えられ、それらの情報に基づいてアンローダ32の作動を制御するアンローダ制御が実行されるように構成されている。
【0030】
脱穀部2は、図2に示すように、扱胴51を収納する扱室A、刈取部1から供給される穀稈を搬送するフィードチェーン52、トウミ53及び揺動選別板54等からなる選別装置B、穀粒回収用の一番口55、及び、穀粒と藁屑との混合物(二番物)を回収するための二番口56等を備えている。そして、扱室Aで扱処理された処理物は、扱室Aの下部に設けられた受網57から選別装置Bに漏下し、それ以外の処理物は受網57の後端部より選別装置Bに落下する。尚、上記一番口55にて回収された穀粒は、図示しないスクリュー式の搬送装置によってグレンタンク3に搬送され、二番口56にて回収された二番物は、スクリュー式の二番搬送装置63によって、上記揺動選別板54の始端側に戻されるように構成されている。又、脱穀部2の後方側には、脱穀部2から排出される排藁を切断する排ワラカッタ部64が設けられ、その排ワラカッタ部64の詰まりを検出するための排ワラ詰まり検出スイッチS15が設けられている。
【0031】
選別装置Bの揺動選別板54は、トウミ53の上方に位置するグレンパン58、そのグレンパン58の後方に位置するチャフシーブ59、そのチャフシーブ59の下方に位置するグレンシーブ61等を備えている。チャフシーブ59は、処理物移送方向に並置された複数個の帯板状部材からなり、その隣接する帯板状部材の間隔(チャフ開度)がチャフ開度調節モータM4によって変更されるように構成されている。尚、S8は、揺動選別板54上の選別処理物量を検出するシーブセンサである。トウミ53は、選別風を送風するためのものであり、後方側のファンケースカバー53aをトウミ風力調節モータM5にて開閉操作することにより、揺動選別板54上の処理物に及ぼす風力(トウミ風力)が変更されるように構成されている。
【0032】
そして、選別装置Bでの選別処理が適正に行われるように、扱室Aからの漏下処理物量に応じて、チャフ開度調節モータM4及びトウミ風力調節モータM5の作動を制御する脱穀制御が実行される。
【0033】
次に、動力伝達系を図3に示す。機体Vに搭載されたエンジンEの出力は、脱穀クラッチ37を介して脱穀部2に伝達されるとともに、走行クラッチ38及び無段変速装置39を介してミッション部40に伝達される。ミッション部40に伝達された出力は、ミッション部40内に設けられた副変速装置42を介してクローラ走行装置30に伝達される一方、刈取変速装置43及び刈取クラッチ41を介して刈取部1に伝達される。そして、副変速装置42にて変速された後の動力にて駆動されるクローラ走行装置30の入力軸の回転速度に基づいて作業速度を検出する車速センサS4、エンジンEの回転速度を検出するエンジン回転速度センサS5、エンジンEの冷却水の水温を検出する水温センサS7等が設けられている。
【0034】
前記車速センサS4は、詳述はしないが、電磁ピックアップコイルの作用によりクローラ走行装置30の入力軸に備えられたギアの歯部と溝部との間での近接距離の変化に対応するパルス信号をギアの回転速度に対応した信号として出力するように構成されており、そのパルス信号のパルス周期の長さに基づいて作業速度を検出する構成となっている。
【0035】
前記エンジン回転速度センサS5についても、車速センサS4と同様に、電磁ピックアップコイルの作用によりエンジンEの出力軸と一体的に回転するように備えられたギアの歯部と溝部との間での近接距離の変化に対応するパルス信号を出力するように構成されており、そのパルス信号のパルス周期の長さに基づいて作業速度を検出する構成となっている。
【0036】
前記無段変速装置39は、運転部31の運転席29の前部左側に設けられた手動操作式の主変速レバー7の操作に基づいて変速操作可能であり、又、変速モータM6によっても無段変速操作可能に構成されている。前記副変速装置42は、副変速用油圧シリンダ65の操作により、路上走行用の高速状態、刈取作業用の低速状態、クローラ走行装置30への動力伝達を断つ中立状態の3つの変速状態に切り換え自在に構成されている。そして、副変速装置42がどの変速位置にあるかを検出する副変速センサS10が設けられている。
【0037】
前記刈取変速装置43は、刈取変速用油圧シリンダ66の操作により高速状態と低速状態とに切り換え自在に構成され、コンバインの作業速度に対する刈取部1の刈取作業速度の相対速度を作物の種類の違いや植立穀稈の倒伏状態の違い等に応じて高低2段階に切り換えることができる。そして、刈取変速装置43がどの変速状態にあるかを検出する刈取変速センサS11が設けられている。
【0038】
前記副変速装置42は、取り付け構成については図示しないが、主変速レバー7の握り部に指操作可能に設けられたトグル操作式の副変速切換スイッチ9及び運転部31における主変速レバー7とは別の箇所に設けられた副変速中立スイッチ10による指令に基づいて変速状態が切り換わる構成であり(図11参照)、副変速中立スイッチ10を切操作している状態で副変速切換スイッチ9を切り換え操作することで高速状態と低速状態とに切り換え自在であり、副変速中立スイッチ10を入操作することで中立状態に切り換える構成となっている。
【0039】
又、刈取変速装置43は、副変速切換スイッチ9と同様に、主変速レバー7の握り部に指操作可能に設けられたトグル操作式の刈取変速切換スイッチ11を切り換え操作することで高速状態と低速状態とに切り換え自在に構成されている(図11参照)。
【0040】
運転部31の運転席29の前部右側には、刈取部1を昇降操作する刈取昇降指令具と機体Vを左右に旋回操作する旋回操作指令具とに兼用構成された十字操作式の刈高操向レバー8が設けられている。つまり、この刈高操向レバー8を後方側に揺動操作すると刈取部1が上昇し、前方側に揺動操作すると刈取部1が下降する。又、刈高操向レバー8を左側に揺動操作すると機体が左旋回し、右側に揺動操作すると機体が右旋回するように構成されている。
【0041】
すなわち、この刈高操向レバー8の前後揺動操作量をポテンショメータ式の刈高設定器44にて検出し、その検出情報に基づいて制御部28が刈取昇降シリンダ5の作動を制御し、刈高操向レバー8の左右揺動操作量をポテンショメータ式の旋回量設定器45にて検出し、その検出情報に基づいて制御部28が旋回用アクチュエータ46の作動を制御するように構成されている(図11参照)。
【0042】
旋回操作構成について簡単に説明すると、ミッション部40内に前記無段変速装置39とは別に、旋回操作専用の無段変速装置(図示せず)が設けられ、旋回時には、旋回外側のクローラ走行装置30は前記無段変速装置39で駆動し、旋回内側のクローラ走行装置30は旋回操作専用の別の無段変速装置にて駆動する構成として、前記旋回量設定器45の検出値から求めた目標速度になるように、この旋回操作専用の別の無段変速装置を制御する構成である。尚、直進走行時には、前記無段変速装置39の動力が左右のクローラ走行装置30に伝達される。
【0043】
図16に示すように、刈高操向レバー8と主変速レバー7とは、運転席29の左右中央位置から左右方向の略等距離の箇所に位置し、且つ、主変速レバー7が最大速度位置又はその近傍にまで操作したときに、その主変速レバー7の握り部と刈高操向レバー8の握り部とが、車体前後方向に略同じ位置にあり、且つ、上下方向の高さも略同じになるように位置関係でそれらが配置される構成となっている。
【0044】
そして、このコンバインでは、左右方向に並ぶ一対の速度表示部と、それら速度表示部の作動を制御する表示制御手段とが備えられ、前記表示制御手段が、一対の速度表示部のうちの右側の速度表示部に作業速度を表示し且つ左側の速度表示部にエンジン回転速度を表示するように、一対の速度表示部を作動させる第1表示状態と、一対の速度表示部のうちの右側の速度表示部にエンジン回転速度を表示し且つ左側の速度表示部に作業速度を表示するように、一対の速度表示部を作動させる第2表示状態とに切り換え自在に構成されている。
【0045】
そして、前記一対の速度表示部の夫々が、最低速度表示位置と最高速度表示位置とに亘り且つ上向き突出の円弧状の速度表示用設定経路に沿って表示用指示部を移動させる形態で、前記作業速度及び前記エンジン回転速度を表示するように構成されている。
【0046】
以下、前記作業速度及び前記エンジン回転速度を含む複数の報知情報を表示するための具体的な構成について説明する。
運転部31における運転席29の前部に、コンバインの運転において作業者に知らせるべき複数種の報知情報を表示する表示ユニットCが設けられている。
この表示ユニットCは、左右方向の中央部に位置する主表示部C1と、主表示部C1の左右両側に並設される一対の副表示部C2、C2と、主表示部C1の下方側に並設される状態で備えられる補助表示部C3とを備えて構成されている。
【0047】
そして、前記主表示部C1は、作業速度又はエンジン回転速度を表示する速度表示部としての速度表示計12が備えられている。この速度表示計12は、最低速度表示位置と最高速度表示位置とに亘る速度表示用設定経路Q1に沿って表示用指示部を移動させて、作業速度又はエンジン回転速度を表示するように構成されている。そして、この速度表示計12の外周部には、最小負荷表示位置と最大負荷表示位置とに亘る負荷表示用設定経路Q2に沿って負荷表示用指示部をエンジン負荷に応じて移動させるエンジン負荷用表示部としてのエンジン負荷表示計13が設けられている。
【0048】
説明を加えると、図4に示すように、前記速度表示計12は、速度表示用設定経路Q1を上向き突出の円弧状として、作業速度表示用指示部として機能する指示針12aを速度表示用設定経路Q1に沿って移動させるように構成されている。
【0049】
すなわち、指示針12aがその長手方向一端側を回動支点として長手方向他端側が上向き突出の円弧状の軌跡を描くように回動する構成となっており、その回動支点となる箇所における背面パネルの内奥側には、図示はしないが、車速センサS4にて検出される作業速度又はエンジン回転速度センサS5にて検出されるエンジン回転速度が大きいほど大きい回動角となるように指示針12aを回動駆動する回動駆動部が備えられている。そして、背面パネルに表示した目盛12bと対応させて指示針12aの長手方向他端側がどの位置にあるかを判別することにより、作業速度及びエンジン回転速度を読み取ることができる構成となっている。
【0050】
又、前記速度表示計12の背面パネル部には、作業速度を表示するときに、「m/sec」という文字を照明表示する作業速度用の速度単位表示部47と、エンジン回転速度を表示するときに、「×1000r/min」という文字を照明表示するエンジン回転速度用の速度単位表示部48とが設けられている。これらの速度単位表示部47,48は、図8に示すように、背面側から照明ランプ49により照明する状態と照明ランプ49を消灯する状態で表示を切り換える構成となっている。因みに、作業速度を表示するときの最大値は4m/secであり、エンジン回転速度を表示するときの最大値は4000r/minとなる。
【0051】
前記エンジン負荷表示計13は、負荷表示用設定経路Q2を速度表示用設定経路Q1の外方側に並ぶ上向き突出の円弧状とし、且つ、点灯状態と消灯状態とに切り換え自在な複数の点灯部としてのセグメント表示部13aを負荷表示用指示部として前記負荷表示用設定経路Q2に沿って並設して、最小負荷表示位置から最大負荷表示位置に向けて並ぶ複数のセグメント表示部13aのうちで負荷が増大するほど前記最大負荷表示位置に近い側のセグメント表示部13aを消灯状態から点灯状態に切り換える形態で、点灯状態とするセグメント表示部13aの位置を前記負荷表示用設定経路Q2に沿って移動させるように構成されている。
【0052】
すなわち、エンジン負荷表示計13は、複数(具体的には13個)のセグメント表示部13aを一列に並べる状態で備えており、複数のセグメント表示部13aは、夫々に発光ダイオ−ド(LED)が各別に内装されており、各別に点灯状態と消灯状態とに切り換え自在な構成となっている。
【0053】
説明を加えると、エンジン負荷表示計13は、図6、図7に示すように、作業速度計12の円弧状の外周部に沿うように円弧状に屈曲する状態で一体的に形成されたケーシング70が設けられ、このケーシング70には、13個のセグメント表示部13aを形成するための13個の光透過用開口部が円弧状に一列に並ぶ状態で区画形成されている。そして、ケーシング70にて区画形成された光透過用開口部の夫々に、その内奥側箇所に位置させて発光ダイオード71が各別に設けられ、表面側箇所に位置させて発光ダイオード71が発光した光を拡散させる拡散板72が設けられる構成となっている。そして、このエンジン負荷表示計13は、後述するように、反時計方向側端部に位置する1番目のものから点灯表示するセグメント表示部13aの個数を順次多くする形態でエンジン負荷を表示する構成となっている。
【0054】
又、13個のセグメント表示部13aのうち反時計方向側端部に位置する1番目のものから時計方向に向けて8番目に位置するものまでは表示色が緑色(G)となり、9番目から11番目までのものは表示色が黄色(Y)となり、12番目と13番目のものは表示色が赤色(R)となるように夫々異なる色の発光ダイオード71を用いて構成されている。
【0055】
前記主表示部C1の左右両側に位置する副表示部C2のうち主表示部C1の左側に位置する副表示部C2は、主表示部と同様にして、作業速度及びエンジン回転速度を表示する速度表示部としての速度表示計14が備えられている。この速度表示計14は、最低速度表示位置と最高速度表示位置とに亘る速度表示用設定経路Q3に沿って表示用指示部としての指示針14aを移動させて、作業速度及びエンジン回転速度を表示するように構成されている。
【0056】
前記速度表示計14は、速度表示用設定経路Q3を上向き突出の円弧状として、指示針14aを速度表示用設定経路Q3に沿って移動させるように構成されている。すなわち、指示針14aがその長手方向一端側を回動支点として長手方向他端側が上向き突出の円弧状の軌跡を描くように回動する構成となっており、その回動支点となる箇所における背面パネルの内奥側には、図示はしないが、車速センサS4にて検出される作業速度又はエンジン回転速度センサにて検出されるエンジン回転速度が大きいほど大きい回動角となるように指示針14aを回動駆動する回動駆動部が備えられている。そして、背面パネルに表示した目盛14bと対応させて指示針14aの長手方向他端側がどの位置にあるかを判別することにより、作業速度又はエンジン回転速度を読み取ることができる構成となっている。
【0057】
又、前記速度表示計14の背面パネル部には、速度表示計12と同様に、作業速度を表示するときに、「m/sec」という文字を照明表示する作業速度用の速度単位表示部47と、エンジン回転速度を表示するときに、「×1000r/min」という文字を照明表示するエンジン回転速度用の速度単位表示部48とが設けられている。これらの速度単位表示部47、48は、図8に示すように、背面側から照明ランプ49により照明する状態と照明ランプ49を消灯する状態で表示を切り換える構成となっている。
【0058】
前記主表示部C1の右側に位置する副表示部C2には、燃料タンク内の燃料残量を表示する燃料残量表示部としての指示針式の燃料計15が設けられている。前記燃料タンクは図示は省略しているが、この燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料残量センサS9が設けられている(図11参照)。前記燃料計15は、最大残量表示位置と最小残量表示位置とに亘る残量表示用設定経路Q4に沿って燃料残量表示用指示部としての指示針15aを燃料残量に応じて移動させる形態で燃料残量を表示するように構成されている。
【0059】
すなわち、前記燃料計15は、作業速度計12と同様に、指示部の一例である指示針15aがその長手方向一端側を回動支点として長手方向他端側が円弧状の軌跡を描くように回動する構成となっており、その回動支点となる箇所における背面パネルの内奥側には、図示はしないが、燃料残量センサS9にて検出される燃料残量が残り少ないほど大きい回動角となるように指示針15aを回動駆動する回動駆動部が備えられている。そして、背面パネルに表示した目盛15bと対応させて指示針15aの長手方向他端側がどの位置にあるかを判別することにより現在の燃料残量を読み取ることができる構成となっている。
【0060】
燃料残量が満量であるときは指示針15aは最も反時計方向に回動した最大残量表示位置にあり、燃料残量が減少するとその減少量に応じて指示針15aが時計方向に回動する構成となっており、指示針15aは最も時計方向に回動した最小残量表示位置になると、燃料残量が零又は略零であることを示すことになる。
【0061】
前記主表示部C1に対してその下方側に並ぶ状態で、作業者に報知すべき複数の報知情報のうちの燃料残量、エンジン回転速度、エンジン負荷、作業速度を除く他の報知情報を並べて表示する補助表示部C3が設けられている。この補助表示部C3は、画像情報を表示可能なドットマトリクス形式の液晶表示装置にて構成され、画像表示により報知情報を表示するように構成されている。
【0062】
そして、この補助表示部C3は、複数種の報知情報を並べて表示する複数情報表示状態と、複数種の報知情報のうちの複数情報表示状態にて表示する報知情報の数よりも少ない数の報知情報を表示する少数情報表示状態とに切り換え自在に構成され、且つ、少数情報表示状態において、表示する報知情報を複数情報表示状態にて表示する複数種の報知情報のうちから変更自在に構成されている。尚、補助表示部C3の表示状態の切り換えは、後述するようなモード切換スイッチ80の操作により行われる。
【0063】
具体的な表示形態について説明すると、前記複数情報表示状態においては、図12(イ)に示すように、前記グレンタンク3内に貯留される穀粒(図では「もみ」と表記している)の貯留量、シーブセンサS8にて検出される揺動選別板54上の選別処理物量(図では「シーブ」と表記している)、及び、水温センサS7にて検出されるエンジンEにおける冷却水の温度(図では「水温」と表記している)の各情報が表示される。又、補助表示部C3には、それらの情報に加えて、左右のウインカー表示74、コンバインの累計稼動時間を示すアワーメータ75、バッテリーの充電量が残り少ないことを表す充電警報表示76、オイルの異常を表示するオイル警報表示77も並べて表示されることになる。
【0064】
前記少数情報表示状態においては、図14に示すように、穀粒貯留量、選別処理物量、エンジン冷却水の水温のうちの1つの情報を複数情報表示状態のときよりも拡大させた状態で表示する。表示する情報の切り換えは、後述する表示切換スイッチ81の操作により行われる。
【0065】
又、前記補助表示部C3は、コンバインに異常が発生している異常状態においては、上記したような各種の報知情報に代えて、前記異常に対応するためのメッセージ情報を表示するように構成されている。
【0066】
そして、前記エンジン回転速度計14に対してその下方側に並ぶ状態で、副変速装置42の現在の変速状態を表示する副変速表示部C4が設けられている。
この副変速表示部C4は、高速状態を示す高速表示部分16、低速状態を示す低速表示部分17、中立状態を示す中立表示部分18の夫々を横方向に並べて備えており、それらの3つの各表示部分16、17、18にはLEDランプ等からなる照明ランプ73が内装されており、3つの各表示部分のうちの現在の変速状態に対応する表示部分の照明ランプ73を点灯して、それ以外の表示部分の照明ランプ73を消灯することで、副変速装置42の現在の変速状態を表示するように構成されている。
【0067】
具体的には、図9に示すように、副変速表示部C4の表示面は、光を透過しない遮光性のパネル19にて覆われる構成となっており、高速表示部分16は、その表示面部分のパネル19の一部が照明ランプ73が点灯すると「H」の文字が明るく表示されるようなH字状の透光性部材20にて構成され、照明ランプ73を消灯すると「H」の文字が陰影表示となるように構成されている。低速表示部分17も同様に、その表示面部分のパネル19の一部が照明ランプ73が点灯すると「L」の文字が明るく表示されるようなL字状の透光性部材21にて構成され、照明ランプ73を消灯すると「L」の文字が陰影表示となるように構成されている。又、中立表示部分18は、その表示面部分のパネル19の一部が照明ランプ73が点灯すると「N」の文字が明るく表示されるようなN字状の透光性部材22にて構成され、照明ランプ73を消灯すると「N」の文字が陰影表示となるように構成されている。
【0068】
このように横方向に並べて備えられる高速表示部分16、低速表示部分17、中立表示部分18は、夫々、照明ランプ73が点灯すると文字情報が明るく表示される表示状態となり、照明ランプ73を消灯すると陰影表示となるように切り換わる構成となっており、しかも、それらのうちのいずれかのものが表示状態となり、それ以外のものは陰影表示となるように表示状態が制御されることで、作業者は、明るく表示される表示部分は勿論、陰影表示される表示部分もその存在は判るので、変速操作される変速段数がいくつ存在し、現在はそのうちのどの変速状態にあるかが判り易い状態で表示できるものになる。
【0069】
前記燃料計15に対してその下方側に並ぶ状態で、刈取変速装置43の現在の変速状態を表示する刈取変速表示部C5が設けられている。
この刈取変速表示部C5は、副変速表示部C4と同様に、高速状態を示す高速表示部分23及び低速状態を示す低速表示部分24の夫々を照明ランプ73を内装する状態で備えており、現在の変速状態に対応する表示部分の照明ランプ73を点灯し、それ以外の表示部分の照明ランプ73を消灯することで、刈取変速装置43の現在の変速状態を表示するように構成されている。
【0070】
具体的には、図8に示すように、刈取変速表示部C5は、表示面が遮光性のパネル25にて覆われる構成となっており、高速表示部分23は、そのパネル25の一部が照明ランプ73が点灯すると「H」の文字が明るく表示されるようなH字状の透光性部材26にて構成され、照明ランプ73を消灯すると「H」の文字が陰影表示となるように構成されている。低速表示部分24も同様に、パネル25の一部が照明ランプ73が点灯すると「L」の文字が明るく表示されるようなL字状の透光性部材27にて構成され、照明ランプ73を消灯すると「L」の文字が陰影表示となるように構成されている。
【0071】
又、表示ユニットCの横側方には、補助表示部C3における表示状態の切り換えを指令するモード切換スイッチ80と、表示内容の切り換えを指令する表示切換スイッチ81とが設けられ、この両スイッチ80,81は、押し操作されているときだけオン状態になり、押し操作されないときはオフ状態となる押ボタン式のスイッチに構成されている。
【0072】
図11に示すように、マイクロコンピュータを利用して構成された制御部28が設けられ、この制御部28に、超音波センサS1、株元センサS2、アンローダ位置センサS3、車速センサS4、エンジン回転速度センサS5、シーブセンサS8の各検出情報が入力され、モミセンサS6、水温センサS7、燃料残量センサS9、副変速センサS10、刈取変速センサS11の各検出情報も制御部28に入力されている。又、副変速切換スイッチ9、副変速中立スイッチ10、刈取変速切換スイッチ11、モード切換スイッチ80、表示切換スイッチ81の情報も制御部28に入力されている。
【0073】
一方、前記制御部28からは、刈取昇降シリンダ5、アンローダ用油圧シリンダ62、アンローダ旋回用モータM3、チャフ開度調節モータM4、トウミ風力調節モータM5、変速モータM6、副変速用油圧シリンダ65、刈取変速用油圧シリンダ66、表示ユニットCに対する各駆動信号が出力されている。そして、制御部28が、上記各センサの情報に基づいて、上記各シリンダや各モータを駆動して、刈高制御、アンローダ制御、脱穀制御等の各種制御を実行するように構成されている。
【0074】
前記制御部28は、モード切換スイッチ80と表示切換スイッチ81とが同時に操作される状態が設定時間(数秒間)継続すると、主表示部と左側の副表示部の表示対象を変更させるべく表示状態を切り換えるための表示切換用設定モードに切り換わるように構成されている。この表示切換用設定モードでは、表示モードを切り換えることができる構成となっている。
【0075】
すなわち、制御部28は、主表示部C1に備えられる速度表示計12にて作業速度を表示し、主表示部C1の左側に位置する副表示部C2に備えられる速度表示計14にてエンジン回転速度を表示するように第1表示モードと、主表示部C1に備えられる速度表示計12にてエンジン回転速度を表示し、主表示部C1の左側に位置する副表示部C2に備えられる速度表示計14にて作業速度を表示するように第2表示モードとの間で表示モードが切り換わる。従って、モード切換スイッチ80と表示切換スイッチ81とにより、制御部28に対して表示モードの変更を指令する切換指令手段が構成されている。
【0076】
そして、前記制御部28は、表示ユニットCにおける表示状態を制御する表示制御を実施する構成となっている。以下、制御部28による表示制御の具体内容について説明する。
【0077】
図15に示すように、制御部28は、そのときの表示モードが第1表示モードであれば、車速センサS4の検出情報に基づいて現在の作業速度に対応するように主表示部C1の速度表示計12を作動させ、エンジン回転速度センサS5の検出情報に基づいてエンジンEの回転速度に対応するように副表示部C2の速度表示計14を作動させ、燃料残量センサS9の検出情報に基づいて燃料タンクの燃料残量に対応するように燃料計15を作動させる(ステップ1、2)。又、主表示部C1の速度表示計12における作業速度用の速度単位表示部47の照明ランプ49を点灯して照明表示し、エンジン回転速度用の速度単位表示部48の照明ランプ49を消灯させる。一方、副表示部C2の速度表示計14におけるエンジン回転速度用の速度単位表示部48の照明ランプ49を点灯して照明表示し、作業速度用の速度単位表示部47の照明ランプ49を消灯させる。
【0078】
このときの表示ユニットCの表示状態が第1表示状態に対応している。つまり、速度表示計12にて作業速度を表示し、速度表示計12の左側に位置する速度表示計14にてエンジン回転速度を表示する(図4参照)。
【0079】
表示モードが第2表示モードであれば、エンジン回転速度センサS5の検出情報に基づいてエンジンEの回転速度に対応するように主表示部C1の速度表示計12を作動させてエンジン回転速度を表示し、車速センサS4の検出情報に基づいて現在の作業速度に対応するように副表示部C2の速度表示計14を作動させて作業速度を表示し、燃料残量センサS9の検出情報に基づいて燃料タンクの燃料残量に対応するように燃料計15を作動させて燃料残量を表示する(ステップ3)。又、主表示部C1の速度表示計12におけるエンジン回転速度用の速度単位表示部48の照明ランプ49を点灯して照明表示し、作業速度用の速度単位表示部47の照明ランプを消灯させる。一方、副表示部C2の速度表示計14における作業速度用の速度単位表示部47の照明ランプ49を点灯して照明表示し、エンジン回転速度用の速度単位表示部48の照明ランプ49を消灯させる。
【0080】
このときの表示状態が第2表示状態に対応している。つまり、速度表示計12にてエンジン回転速度を表示し、速度表示計12の左側に位置する速度表示計14にて作業速度を表示する(図5)。
【0081】
例えば第1表示モードを例にとって作業速度の表示について説明を加えると、制御部28は、速度表示計12の指示針12aの回動角が車速センサS4にて検出される現在の作業速度に対応する回動角になるように、作業速度計12の回動駆動部の作動を制御するのである。
【0082】
エンジン回転速度についても同様にして、例えば第1表示モードでは、速度表示計14の指示針14aの回動角が、エンジン回転速度センサS5にて検出される現在のエンジン回転速度に対応する回動角になるようにエンジン回転速度計14の回動駆動部の作動を制御する。又、燃料計についても同様に、燃料計15の指示針15aの回動角が、燃料残量センサS9にて検出される現在の燃料残量に対応する回動角になるように燃料計15の回動駆動部の作動を制御する。
【0083】
又、副変速切換スイッチ9及び副変速中立スイッチ10の指令情報に基づいて対応する変速状態になるように副変速用油圧シリンダ65の作動を制御して副変速装置42を変速操作することになるが、そのとき副変速センサS10の検出情報に基づいて現在の副変速装置42がどの変速状態であるかを判別することができるから、その判別結果に基づいて副変速表示部C4にて現在の副変速装置42がどの変速状態であるかを表示する(ステップ4)。つまり、副変速表示部C4の高速表示部分16、低速表示部分17、中立表示部分18のいずれか対応するものについて照明ランプ73を点灯して明るく表示し、それ以外のものは照明ランプ73を消灯して暗くする。
【0084】
又、制御部28は、刈取変速切換スイッチ11の指令情報に基づいて対応する変速状態になるように刈取変速用油圧シリンダ66の作動を制御して刈取変速装置43を変速操作することになるが、刈取変速センサS11の検出情報に基づいて現在の刈取変速装置43がどの変速状態であるかを判別することができるから、その判別結果に基づいて刈取変速表示部C5にて現在の刈取変速装置43がどの変速状態であるかを表示する(ステップ4)。具体的には、刈取変速表示部C5の高速表示部分19及び低速表示部分20のいずれか対応するものの照明ランプ73を点灯し、それ以外のものの照明ランプ73を消灯する。
【0085】
そして、制御部28は、コンバインが正常に作動している通常状態においては、例えば図6に示すように、エンジン負荷表示計13における複数のセグメント表示部13aをその並び方向の一端側から点灯表示するセグメント表示部13aの個数を順次多くさせることによりエンジン負荷を表示する(ステップ5、6)。
【0086】
エンジン負荷を検出する構成について説明を加えると、このコンバインにおいては、エンジンEに負荷が掛かっていない無負荷状態になっているときに、作業者がアクセル操作を行うことによって、エンジン回転速度が予め設定されている基準回転速度になるようにエンジンEのアクセル操作位置が調整され、エンジン回転速度が基準回転速度になると、そのアクセル操作位置にて位置固定して、その後の作業を行う構成となっている。
【0087】
そして、エンジンEに負荷が掛かると、エンジン負荷の大きさに応じてエンジン回転速度がこの基準回転速度から低下することになるので、予め実験データ等により基準回転速度からのエンジン回転速度低下量とエンジン負荷の大きさとが対応付けた状態でマップデータとして設定されている。そこで、制御部28は、エンジン回転速度センサS5により検出されるエンジン回転速度と前記基準回転速度との差、つまり、エンジン回転速度低下量を演算にて求めて、そのエンジン回転速度低下量と前記マップデータとに基づいてエンジン負荷を求める構成となっている。
【0088】
このようにして求めたエンジン負荷を表示するときは、制御部28は、13個のセグメント表示部13aをその並び方向の一端側、すなわち、反時計方向側端部に位置する1番目のものから点灯表示するセグメント表示部13aの個数を順次多くする形態でエンジン負荷を表示するのである。従って、エンジン負荷が適正負荷であるときには緑色のセグメント表示部13aが点灯することになり、エンジン負荷が大きくなり設定値を越えて注意負荷状態になると、8個の緑色のセグメント表示部13aに加えて黄色のセグメント表示部13aが点灯する。さらに、エンジン負荷が大きくなり上限値を超えて過大負荷になると、8個の緑色のセグメント表示部13a、3個の黄色のセグメント表示部13aに加えて赤色のセグメント表示部13aが点灯することになる。
【0089】
さらに、制御部28は、コンバインが正常に作動している通常状態においては、補助表示部C3にて、上記したような各種の報知情報を表示する表示処理を実行する(ステップ7)。
【0090】
この表示処理では、モード切換スイッチ80が押し操作される毎に前記複数情報表示状態と前記少数情報表示状態とに交互に切り換わることになる。
具体的には、前記複数情報表示状態では、複数種の報知情報として、図12(イ)に示すように、前記グレンタンク3内に貯留される穀粒(図では「もみ」と表記している)の量、シーブセンサS8にて検出される揺動選別板54上の選別処理物量(図では「シーブ」と表記している)、及び、水温センサS7にて検出されるエンジンEにおける冷却水の水温の各情報が表示される。又、それらの情報に加えて、左右のウインカー表示74、コンバインの累計稼動時間を示すアワーメータ75、バッテリーの充電量が残り少ないことを表す充電警報表示76、オイルの異常を表示するオイル警報表示77も並べて表示する。又、前記少数情報表示状態に切り換わっている状態では、表示切換スイッチ81が押し操作される毎に、図13に示すような、選別処理物量、穀粒貯留量、冷却水の温度のうちのいずれかの情報が拡大表示された状態で、予め設定された順序で表示内容が順次切り換わることになる。
【0091】
尚、前記少数情報表示状態としては、前記複数の報知情報のうちのいずれか1つを拡大させた状態で表示させる構成に限らず、図14に示すように、エンジンの冷却水の温度(水温)と穀粒貯留量(モミ)とを並べて表示する状態、揺動選別板上の選別処理物量(シーブ)と穀粒貯留量(モミ)とを並べて表示する状態等、前記複数の報知情報のうちの2つの報知情報を表示する状態にて、表示切換スイッチを操作する毎に予め設定される順序で切り換わる構成としてもよい。
【0092】
そして、制御部28は、コンバインに異常が発生している異常状態においては、エンジン負荷表示計13における13個のセグメント表示部13aの全てのものを点滅表示させる(ステップ8)。ここでいう異常状態とは、コンバインのいずれかの箇所において、刈取作業を継続して実行することが困難となるような異常が発生しているような場合であり、例えば、排ワラ詰り検出スイッチS15がオンして排ワラカッタ部64において排ワラが詰まっている排ワラ詰り異常等がある。前記異常には、この排ワラ詰り以外にも、刈取部1における刈取穀稈の詰まり異常やエンジンがオーバーヒートしている異常等がある。
【0093】
又、制御部28は、コンバインに異常が発生している異常状態においては、上記したような貯留穀粒量、選別処理物量、水温等の複数種の報知情報に代えて、前記異常に対応するためのメッセージ情報を補助表示部C3に表示する(ステップ9)。上記したような排ワラが詰まっている異常が発生したときには、図12(ロ)に示すように、そのときに発生した異常に対応するためのメッセージ情報、例えば、「排ワラカッタにワラが詰まっています。ワラを取り除いて下さい。」というようなメッセージ情報を表示する。
【0094】
そして、モード切換スイッチ80と表示切換スイッチ81とが同時に操作される状態が設定時間(数秒間)継続して、表示状態の切り換えが指令されると、表示切換設定モードに切り換わる(ステップ10、11)。この表示切換用設定モードでは、補助表示部C3が表示状態を設定するための表示に切り換わる。このとき第1表示モードであれば、「現在は、中央部が車速を表示し、左側がエンジン回転速度を表示しています。表示状態を切り換えるときは、スイッチAを押してください。そのままで作業するときは、スイッチBを押してください。」と表示する。そして、スイッチA、すなわち、モード切換スイッチ80が操作されると、「中央部がエンジン回転速度を表示し、左側が車速を表示する表示状態に切り換わりました。スイッチBを押してください。」と表示して、制御部28の表示モードが第2表示モードに切り換わることになる。そして、その後、スイッチB、すなわち、表示切換スイッチ81を押すか、又は、設定時間が経過すると、表示切換用設定モードを終了する。
従って、この実施形態では、制御部28が各速度表示部としての前記各速度表示計12、14の表示状態を制御する表示制御手段を構成する。
【0095】
〔別実施形態〕
次に、別実施形態について説明する。
【0096】
(1)上記実施形態では、前記一方の速度表示部としての主表示部の速度表示計が、設定経路に沿って指示針を移動させる形式の表示構成を例示したが、このような構成に限らず、上記実施形態におけるエンジン負荷表示部のように、点灯状態と消灯状態に切り換わる複数の点灯部を並べて構成するものでもよい。又、このような指示部が移動する形式の表示構成に代えて、数値情報によって表示するものでもよい。
【0097】
(2)上記実施形態では、前記他方の速度表示部としての副表示部の速度表示計が、設定経路に沿って指示針を移動させる形式の表示構成を例示したが、このような構成に限らず、上記実施形態におけるエンジン負荷表示部のように、点灯状態と消灯状態に切り換わる複数の点灯部を並べて構成するものでもよい。又、このような指示部が移動する形式の表示構成に代えて、数値情報によって表示するものでもよい。
【0098】
(3)上記実施形態では、前記主表示部及び副表示部の夫々が針式の表示計を用いる構成としたが、このような構成に代えて、前記表示ユニット全体を大型の液晶表示装置又はCRT表示装置等の画像表示装置によって構成して、表示制御手段としての制御部によりその画像表示内容を変更させることにより、前記第1表示状態と前記第2表示状態とに切り換え自在な構成としてもよい。
【0099】
(4)上記実施形態では、エンジン負荷を検出する構成として、無負荷時のエンジン回転速度(基準回転速度)からの回転速度低下量によって、エンジンの負荷を検出する構成を例示したが、このような構成に限らず、エンジン負荷を検出する構成としては種々の構成が適用可能である。例えば、エンジンの回転速度を予め定めた目標値になるように燃料供給量を自動調整するように制御する構成として、そのときの燃料供給量からエンジン負荷を求める構成としたり、エンジンの出力軸に掛かる軸トルクを検出してその軸トルクから負荷を求める等、種々の構成を用いることができる。
【0100】
(5)上記実施形態では、前記エンジン負荷表示部が、コンバインに異常が発生している異常状態においては、複数の点灯部の全てのものが点滅表示する構成としたが、このような異常用の点滅表示を行わない構成としてもよい。
【0101】
(6)上記実施形態では、前記補助表示部が、複数種の報知情報として、揺動選別板上の選別処理物量(シーブ)、グレンタンクにおける穀粒貯留量(モミ)、及び、エンジンの冷却水の温度(水温)の情報等を並べて表示するようにしたが、複数種の報知情報としては、例示したこれらの報知情報に限るものではなく、これらの報知情報並びに作業速度以外の他の各種の報知情報を表示するようにしてもよい。
【0102】
(7)上記実施形態では、本発明を作業機械としての刈取収穫用のコンバインに適用したが、本発明はコンバイン以外のトラクタや建設機械などの作業機械に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】全体側面図
【図2】脱穀部の構成図
【図3】動力伝達系を示す図
【図4】表示ユニットの正面図
【図5】表示ユニットの正面図
【図6】エンジン負荷表示部の表示状態を示す図
【図7】エンジン負荷表示部の構成を示す図
【図8】速度単位表示部の構成を示す図
【図9】副変速表示部の表示状態を示す図
【図10】刈取変速表示部の表示状態を示す図
【図11】制御ブロック図
【図12】補助表示部の表示状態を示す図
【図13】補助表示部の表示状態を示す図
【図14】補助表示部の表示状態を示す図
【図15】制御動作のフローチャート
【図16】運転部の平面図
【符号の説明】
【0104】
12、14 速度表示部
12a,14a 指示針
13 エンジン負荷表示部
15 燃料残量表示部
28 表示制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の前部に設けられた表示パネルに、作業速度及びエンジン回転速度を表示するように構成された作業機械の表示装置であって、
左右方向に並ぶ一対の速度表示部と、それら速度表示部の作動を制御する表示制御手段とが備えられ、
前記表示制御手段が、
前記一対の速度表示部のうちの右側の速度表示部に前記作業速度を表示し且つ左側の前記速度表示部に前記エンジン回転速度を表示するように、前記一対の速度表示部を作動させる第1表示状態と、前記一対の速度表示部のうちの右側の速度表示部に前記エンジン回転速度を表示し且つ左側の前記速度表示部に前記作業速度を表示するように、前記一対の速度表示部を作動させる第2表示状態とに切り換え自在に構成されている作業機械の表示装置。
【請求項2】
前記一対の速度表示部の夫々が、最低速度表示位置と最高速度表示位置とに亘り且つ上向き突出の円弧状の速度表示用設定経路に沿って表示用指示部を移動させる形態で、前記作業速度及び前記エンジン回転速度を表示するように構成されている請求項1記載の作業機械の表示装置。
【請求項3】
前記一対の速度表示部の夫々が、前記表示用指示部としての指示針を前記速度表示用設定経路に沿って移動させるように構成され、
前記一対の速度表示部のうちのいずれか一方の速度表示部の前記速度表示用設定経路の外方側に並ぶ状態で上向き突出の円弧状に形成され且つ最小負荷表示位置と最大負荷表示位置とに亘る負荷表示用設定経路に沿って負荷表示用指示部をエンジン負荷に応じて移動させる形態でエンジン負荷を表示するエンジン負荷表示部を備えて構成されている請求項1又は2に記載の作業機械の表示装置。
【請求項4】
燃料残量を表示する燃料残量表示部が備えられ、
前記一対の速度表示部が互いに隣接する状態で左右方向に並び、且つ、それら一対の速度表示部に対して直列状に左右方向に沿って並ぶ状態で前記燃料残量表示部が並設され、
前記一対の速度表示部及び前記燃料残量表示部の中で左右方向の中央に位置する速度表示部が、他の速度表示部並びに前記燃料残量表示部よりも大型に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械の表示装置。
【請求項5】
作業速度、エンジン回転速度、及び、燃料残量以外の複数種の報知情報を並べて表示する画像表示式の補助表示部を備えて構成されている請求項4記載の作業機械の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−82449(P2007−82449A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273806(P2005−273806)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】