説明

作業機械

【課題】作業時に椰子等の葉がオペレータに当たるのを効果的に抑制できる、簡素な構造のキャノピを備えた作業機械を提供する。
【解決手段】上部旋回体3に運転席7とキャノピ8とが設けられた作業機械である。キャノピ8は、運転席7の上方を覆うルーフ20と、ルーフ20を支持する複数の支柱31,32と、運転席7の周囲を覆うリーフガード40とを有している。リーフガード40は、揺動可能なドア部46を有し、ドア部46にはその揺動を規制するストッパー50が設けられている。ストッパー50は、外側挟持部51bや内側挟持部56、開閉レバー57を有している。開閉レバー57の操作により、内側挟持部56は、支柱32に接触可能な閉じ位置と接触不能な開き位置とに変位する。閉じ位置において、外側挟持部51bと内側挟持部56との間に支柱32が挟み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に関し、その中でも特にキャノピの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業機械では、運転席の周囲に、窓やドアなどが配置された箱状のキャブが設けられているのが一般的である。更に、岩石等がキャブにぶつかるのを防止するため、金網などで構成されたガードをキャブの周りに配置した機種もある(特許文献1)。
【0003】
また、小型の作業機械などでは、キャブを採用せずに、運転席の上方のみを覆うキャノピが設けられた機種もある(特許文献2)。
【0004】
例えば、特許文献2では、運転席の前後及び左右に4本の柱が離間して立設され、各柱の上側にキャノピルーフが設けられている。そして、左右の前側の柱の間には、オペレータの足元の前方を保護する保護カバーがボルト止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9ー228422号公報
【特許文献2】特開2001−90116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、熱帯地域や亜熱帯地域では、椰子等の背の高い植物が繁茂している場所が多く存在する。そのような場所で、作業機械を用いて開拓作業や農作業などを行う場合、作業機械がキャノピを採用した機種であると、作業中に運転スペースに葉が入り込むため、オペレータに葉が当たって作業の邪魔になる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡素な構造でありながら、作業時に椰子等の葉がオペレータに当たるのを効果的に抑制でき、作業性の向上が図れるキャノピを備えた作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の作業機械は、下部走行体と、下部走行体の上に旋回可能に設けられた上部旋回体とを備える。上部旋回体には、運転席と、キャノピとが設けられている。
【0009】
キャノピは、運転席の上方を覆うルーフと、ルーフを支持する複数の支柱と、支柱に支持され、運転席の周囲の少なくとも一部を覆う保護カバーとを有している。保護カバーは、横側の一方の縁を支点に外側に向かって揺動可能なドア部を有している。ドア部の他方の縁に、ドア部の揺動を規制するストッパーが設けられている。
【0010】
ストッパーは、ドア部に固定され、支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位に接触してドア部の内側への揺動を規制する外側挟持部と、外側挟持部よりも内側の位置でドア部に支持され、横軸回りに回動可能な内側挟持部と、内側挟持部と一体に設けられた開閉レバーとを有している。前記開閉レバーは、前記ドア部の内側に位置する内側レバーと、前記ドア部に形成された開口部を通って前記ドア部の外側に位置する外側レバーとを有している。
【0011】
前記内側レバー及び前記外側レバーのいずれかの操作により、内側挟持部は、支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位に接触可能な閉じ位置と、支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位に接触不能な開き位置とに変位する。そして、閉じ位置において、外側挟持部と内側挟持部との間に支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位が挟み込まれる。
【0012】
このように構成された作業機械によれば、まず、キャノピに保護カバーが設けられ、この保護カバーによって運転席の周囲の必要な部分が覆われているので、葉が作業スペースに侵入するのを抑制できる。従って、作業性の向上が図れる。
【0013】
そして、保護カバーは揺動するドア部を有しているので、キャノピの大きな範囲が保護カバーで覆われていても、ドア部を開閉することによって容易にキャノピに出入りできる。ドア部には、支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位を挟み込む外側挟持部及び内側挟持部を有するストッパーが設けられ、ドア部の内外に位置する内側レバー及び外側レバーのいずれかの操作により、内側挟持部を閉じ位置と開き位置とに変位操作できる。なお、支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位とは、支柱自体や、支柱に固定されたその周辺部位、及びこれら双方を含む概念である。
【0014】
これら開閉レバーは内側挟持部と一体に設けられ、特に外側レバーは、ドア部に形成された開口部を通してドア部の外側に位置させられている。すなわち、この作業機械では、ストッパーの構造が極めて簡素に構成されているので、生産性や耐久性に優れる。
【0015】
例えば、外側挟持部と内側挟持部とは、上下方向に離れて位置させるのが好ましい。そうすれば、支柱等との接触点が上下にずれるため、ドア部のがたつきや傾きをより安定して抑制できる。
【0016】
また、ストッパーは、ドア部の他方の縁における下端部に設け、そのストッパーの上方の部分に補助ストッパーを設けるようにしてもよい。そうすれば、上下でドア部をロックすることができので、より安定してドア部の揺動を規制することができる。しかも、上部旋回体は比較的高い位置にあるので、ストッパーをドア部の下端部に設けることで、オペレータが作業機械に搭乗する際に操作し易くできる。
【0017】
更に、開閉レバーと内側挟持部との間における力のモーメント差を利用して、無負荷の状態において、内側挟持部が閉じ位置に自動的に変位するように設定するのが好ましい。そうすれば、内側挟持腕は常に閉じ位置に戻るようになるので、ドア部を閉めた状態に安定して保持できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の作業機械によれば、作業時に葉等がオペレータに当たるのを効果的に抑制できるので、作業性の向上が図れる。しかも、既存の構造を活用して簡素な構造で実現できるので、生産性や耐久性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の作業機械の概略を示す側面図である。
【図2】右斜め前方から見た、上部旋回体の要部の概略を示す斜視図である。
【図3】左斜め前方から見た、上部旋回体の要部の概略を示す斜視図である。
【図4】キャノピの部分の概略を示す左側面図である。
【図5】キャノピの要部(ストッパーの部分)の概略を示す斜視図である。
【図6】ストッパーの分解図である。
【図7】左側ガードの部分の概略を示す右側面図である。
【図8】キャノピの要部(補助ストッパーの部分)の概略を示す斜視図である。
【図9】補助ストッパーの分解図である。
【図10】補助ストッパーの要部の分解図である。
【図11】保持機構の仕組みを説明するための図である。
【図12】変形例を示す要部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0021】
図1に、本発明を適用した油圧ショベル1(作業機械の例示)を示す。油圧ショベル1は、油圧ショベルの中では比較的小型の機種であり、クローラ式の下部走行体2の上に、小旋回型の上部旋回体3が旋回可能に設けられている。下部走行体2の前側には、ドーザ4が設けられている。上部旋回体3には、アタッチメント5や機械室6、運転席7、キャノピ8などが設けられている。
【0022】
なお、以下の説明において前後左右や上下等の方向を示す場合には、便宜上、同図における油圧ショベル1を基準に説明する。具体的には、図面左側を前とし、図面の右側を後、図面の上側を上、図面の下側を下、図面の手前側を左、図面の奥側を右とする。前後方向は車体の長さ方向に相当し、左右方向は車体の幅方向に相当する。
【0023】
アタッチメント5は、ブーム5aやアーム5b、バケット5cなどで構成されている。この機種の場合、アタッチメント5は、上部旋回体3における基部3aの前側の略中央部分に起伏自在、かつ、左右に揺動自在に設けられている。上部旋回体3の後部には、アタッチメント5との間で前後のバランスを保つために、カウンターウエイト9が配置されている。
【0024】
図2に示すように、機械室6は、主に基部3aの右側部から後部に至る部分の上に配置されている。機械室6の内部には、エンジンや油圧ポンプ、燃料タンク、コントロールバルブなど、油圧ショベル1を駆動制御する各種装置が収容されている(図示せず)。
【0025】
オペレータが着座する運転席7は、上部旋回体3の中央部における左寄りの部分に配置されている。運転席7は、上下方向には、基部3aの上面から所定寸法上方に離れて配置されている。運転席7の周囲には操作スペース10が確保され、操作スペース10に操作レバー11やペダル12等の操作機器が配置されている。上部旋回体3の左側における前寄りの部分には、オペレータが操作スペース10に出入りするためのスペース(昇降口13)が確保されている。
【0026】
キャノピ8は、ルーフ20と、ルーフ20を支持する支柱からなる基本構造を有している。支柱は、右側支柱31と左側支柱32とからなる左右一対の支柱で構成され、上部旋回体3に立設されている。各支柱31,32は、運転席7の両側のそれぞれに前後方向に並んで配置されている。各支柱31,32は、金属管をアーチ状に屈曲して形成されている。
【0027】
詳しくは、右側支柱31は、運転席7の右前方に位置して上下方向に延びる右支柱前部31aと、運転席7の右後方に位置して上下方向に延びる右支柱後部31bと、右支柱前部31aの上端及び右支柱後部31bの上端に連なって前後方向に延びる右支柱上部31cとを有している。同様に、左側支柱32は、運転席7の左前方に位置して上下方向に延びる左支柱前部32aと、運転席7の左後方に位置して上下方向に延びる左支柱後部32bと、左支柱前部32aの上端及び左支柱後部32bの上端に連なって前後方向に延びる左支柱上部32cとを有している。
【0028】
右支柱前部31a及び左支柱前部32aのそれぞれの下側部分には、左右方向に延びる2本の横支柱33が上下方向に離間して連結されている。ルーフ20は、矩形板状に形成されている。ルーフ20は、右支柱上部31cと左支柱上部32cとの間に配置され、これらに固定されている。従って、運転席7を含めた操作スペース10の上方はルーフ20によって覆われている。
【0029】
そして、この油圧ショベル1の場合、図3に詳しく示すように、操作スペース10への葉の侵入を防止するため、キャノピ8にリーフガード40(保護カバー)が取り付けられている。
【0030】
リーフガード40は、運転席7の前後左右を囲むように支柱に取り付けられ、運転席7の全周囲を覆っている。具体的には、リーフガード40は、運転席7の前方を覆う前ガード41と、運転席7の左側方を覆う左ガード42と、運転席7の右側方を覆う右ガード43と、運転席7の後方を覆う後ガード44とを有している。
【0031】
また、リーフガード40は、上下方向では、運転席7よりも下方の部分は覆わず、運転席7よりも上方の部分だけを覆うように設けられている。このように、運転席7の上方だけを覆ったのは、足元であれば、葉が操作スペース10に侵入しても作業性を大きく損なうことはないし、材料コストを抑制できる利点があるからである。
【0032】
本実施形態のリーフガード40は、枠状のフレーム40aと、フレーム40aに固定された金網40b(ネット部材の例示)とを有している。金網40bは、葉の侵入が防止できればよいため、岩石等の侵入防止を目的としたものと比べて線径は細く、線材間のピッチも大きく形成されている。リーフガード40を設けても良好な作業視野を確保することができる。
【0033】
図4に示すように、左ガード42は、キャノピ8に固定される固定部45と、揺動開閉式のドア部46とで構成されている。
【0034】
具体的には、前後方向における左支柱前部32aと左支柱後部32bとの間には、上下方向に延びるサポート部材47が配置されている。サポート部材47の下端は基部3aに固定され、サポート部材47の上端は左支柱上部32cに固定されている。そして、サポート部材47と左支柱後部32bとの間に、固定部45が配置され、サポート部材47と左支柱前部32aとの間に、ドア部46が配置されている。
【0035】
ドア部46は、略矩形形状のドア用のフレーム40a(ドアフレーム46aともいう)と、ドアフレーム46aに固定されたドア用の金網46bとを有している。ドアフレーム46aの後側の部分はヒンジ48を介してサポート部材47に支持されている。ドア部46は、図3に矢印線で示すように、その後側の部分を支点に外側に向かって揺動可能であり、ドアフレーム46aの前側の部分(揺動端46cともいう)が前後方向から見て固定部45と重なる状態(閉めた状態)と、揺動端46cが固定部45よりも左側に位置する状態(開いた状態)とにすることができる。
【0036】
そして、揺動端46cの下端部には、ドア部46の揺動を規制するストッパー50が設けられている。更に、揺動端46cの上端部には、補助ストッパー70が設けられている。
【0037】
図5や図6に詳しく示すように、ストッパー50は、規制片51やロック部材52などで構成されている。
【0038】
規制片51は、鋼板のプレス加工品からなる、締結座51aと、締結座51aの一端から締結座51aに略直交して延びる外側挟持腕51b(外側挟持部)とを有している。締結座51aには、平行に延びる複数の長孔51cが形成されている。外側挟持腕51bには、弾性を有する樹脂カバー53が装着されている。
【0039】
一方、揺動端46cの下端部には、雌ねじを有し、揺動方向に直交して貫通する締結孔54が設けられている。そして、長孔51cに差し込んだボルト55が締結孔54に締結され、締結座51aは揺動端46cに固定されている。このとき、長孔51cの存在により、締結座51aの固定位置を揺動方向にずらすことができるので、ドア部46等に寸法誤差が生じても外側挟持腕51bを簡単かつ適切に位置決めできる。
【0040】
規制片51が揺動端46cに固定された状態では、外側挟持腕51bは、左支柱前部32aと揺動方向に部分的に重なる位置まで揺動端46cから側方に突出している。従って、ドア部46が閉まる方向に揺動した場合、外側挟持腕51bが左支柱前部32aに衝突し、閉めた状態よりも内側へドア部46が揺動するのを規制できる。
【0041】
ロック部材52は、内側挟持腕56(内側挟持部)や開閉レバー57、円筒状の筒軸58などで構成されている。内側挟持腕56は、筒軸58に固定され、筒軸58の半径方向に延びている。開閉レバー57は、ドア部46の内側に位置する内側レバー57aと、ドア部46の外側に位置する外側レバー57bとを有し、これら各開閉レバー57も筒軸58に固定されている。
【0042】
各開閉レバー57a、57bは、筒軸58の軸方向(回動軸線J1の方向)に離れて位置し、筒軸58の半径方向の同じ方向に延びている。筒軸58の軸方向から見た場合、各開閉レバー57a、57bは、筒軸58に対して内側挟持腕56の反対側に偏向して配置され、各開閉レバー57a、57bと内側挟持腕56とは「く」の字状に配置されている。内側挟持腕56や各開閉レバー57a、57bにも弾性を有する樹脂カバー53が装着されている。
【0043】
一方、揺動端46cの下端部位には軸受部59が設けられている。軸受部59は、軸方向を揺動方向(左右方向)に一致させた状態で筒軸58を挟持する一対の軸支部59aを有している。各軸支部59aには軸孔59bが開口している。金網46bの揺動端46c側の下隅部には、金網46bを切り欠いて開口部60が形成されている。
【0044】
外側レバー57bが開口部60を通じてドア部46の外側に出され、筒軸58が両軸支部59aの間に挿入された状態で、シャフト61が軸孔59b及び筒軸58に挿入される。そして、シャフト61の両端にピン62が嵌め込まれる。こうしてドア部46にロック部材52が組み付けられている。
【0045】
ロック部材52は、横方向に延びる回動軸線J1回りに回動可能であり、図7に示すように、開閉レバー57の操作により、内側挟持腕56を閉じ位置と開き位置とに変位させることができる。
【0046】
閉じ位置(図4や同図で仮想線で示す位置)では、内側挟持腕56は、左右方向(揺動方向)から見て、揺動端46cから側方に突出した状態となり、左支柱前部32aと接触可能になる。開き位置(同図で実線で示す位置)では、内側挟持腕56は、左右方向から見て、ドア部46に重なって隠れた状態となり、左支柱前部32aと接触不能になる。
【0047】
そして、図5に示したように、ドア部46を閉めた状態にして、内側挟持腕56を閉じ位置に変位させることにより、外側挟持腕51bと内側挟持腕56との間に左支柱前部32aが挟み込まれる。従って、ドア部46は揺動が規制され、閉めた状態に保持される。なお、閉めた状態では外側挟持腕51b及び内側挟持腕56の両方が左支柱前部32aに接しているのが好ましいが、多少の隙間があって一方が接する状態であってもよい。
【0048】
図5等に示したように、閉じ位置の状態では、外側挟持腕51bと内側挟持腕56とは、上下方向に離して配置するのが好ましい。本実施形態では、外側挟持腕51bが内側挟持腕56の下側に配置されている。対向状に配置するのに比べて、接触点が上下にずれるため、ドア部46のがたつきや傾きをより安定して抑制できる。
【0049】
また、内側挟持腕56は、常に閉じ位置に戻るように設定するのが好ましい。例えば、開閉レバー57と内側挟持腕56との間における力のモーメント差を利用することができる。具体的には、内側挟持腕56の回動軸線J1に対する力のモーメントよりも、内側レバー57a及び外側レバー57bの両方の回動軸線J1に対する力のモーメントの総和を大きくする。
【0050】
そうすれば、無負荷の状態になると、ロック部材52は自動的に内側挟持腕56が上昇する方向に回動する。そして、所定の閉じ位置で停止するように回動を規制すれば(例えば、後述する補助ストッパー70の第1保持機構のように軸受部59で内側挟持腕56を受け止める等)、内側挟持腕56を閉じ位置に変位させることができる。
【0051】
閉じ位置で内側挟持腕56が左支柱前部32aに圧着するようにしてあっても、作業中の振動によって内側挟持腕56が左支柱前部32aから離れて無負荷の状態になる場合がある。そのような場合でも、内側挟持腕56が常に閉じ位置に戻るようにすることで、ドア部46を閉めた状態に安定して保持できる。
【0052】
力のモーメント差を利用する方法によれば、特に複雑な機構を設ける必要がないので、耐久性に優れ、製造コストを抑制できる利点がある。その他にも、バネ(弾性部材の一例)を用いて、内側挟持腕56が閉じ位置に変位するようにロック部材52を回動付勢させることもできる。
【0053】
図8や図9に詳しく示すように、補助ストッパー70は、補助規制片71や補助ロック部材72などで構成されている。
【0054】
補助規制片71は、上述した規制片51と同様の部材及び構造を有している。具体的には、補助規制片71は、長孔71cが形成された締結座71aと、樹脂カバー53が装着された外側補助挟持腕71b(外側補助挟持部)とを有している。一方、揺動端46cの上端部には締結孔74が設けられていて、長孔71cに差し込んだボルト55が締結孔74に締結され、締結座71aは揺動端46cに固定されている。
【0055】
外側補助挟持腕71bは、外側挟持腕51bと同様に、左支柱前部32aと揺動方向に部分的に重なる位置まで揺動端46cから側方に突出している。従って、ドア部46が閉まる方向に揺動した場合、外側挟持腕51bとともに、外側補助挟持腕71bも左支柱前部32aに衝突し、閉めた状態よりも内側へドア部46が揺動するの規制する。
【0056】
補助ロック部材72は、内側補助挟持腕76(内側補助挟持部)や補助開閉レバー77、円筒状の第2筒軸78などで構成されている。内側補助挟持腕76は、第2筒軸78に固定され、第2筒軸78の半径方向に延びている。補助開閉レバー77は、ドア部46の内側に位置するように第2筒軸78に固定されている。
【0057】
第2筒軸78の軸方向(回動軸線J2の方向)から見た場合、補助開閉レバー77は、第2筒軸78に対して内側補助挟持腕76の反対側に配置されている。内側補助挟持腕76や補助開閉レバー77にも弾性を有する樹脂カバー53が装着されている。
【0058】
一方、揺動端46cの上端部位にも、軸受部59と同様の構造の第2軸受部79が設けられている。第2軸受部79は、軸孔79bが開口した、第2筒軸78を挟持する一対の第2軸支部79aを有している。第2筒軸78が第2軸支部79aの間に挿入された状態で、シャフト61が軸孔79b及び第2筒軸78に挿入され、シャフト61の両端にピン62が嵌め込まれている。
【0059】
補助ロック部材72は、横方向に延びる回動軸線J2回りに回動可能であり、図7に示したように、補助開閉レバー77の操作により、内側補助挟持腕76を閉じ位置と開き位置とに変位させることができる。
【0060】
閉じ位置(図4や同図で仮想線で示す位置)では、内側補助挟持腕76は、揺動端46cから側方に突出した状態となり、左支柱前部32aと接触可能になる。開き位置(同図で実線で示す位置)では、内側補助挟持腕76は、ドア部46に重なって隠れた状態となり(図8参照)、左支柱前部32aと接触不能になる。
【0061】
ドア部46を閉めた状態にして、内側補助挟持腕76を閉じ位置に変位させることにより、外側補助挟持腕71bと内側補助挟持腕76との間に左支柱前部32aの上側部分が挟み込まれる。従って、ドア部46は、ストッパー50による下側部分の揺動規制とともに、上側部分も揺動が規制されるので、閉めた状態をより安定して保持することができる。
【0062】
なお、図8等に示したように、閉じ位置の状態では、外側補助挟持腕71bと内側補助挟持腕76とについても、上下方向に離して配置するのが好ましい。本実施形態では、外側補助挟持腕71bは内側補助挟持腕76の上側に配置されている。
【0063】
内側補助挟持腕76は、第1保持機構により、所定の閉じ位置で停止するように回動が規制される。
【0064】
また、内側補助挟持腕76は、第2保持機構により、所定の開き位置で停止するように回動が規制される。補助ストッパー70の場合、ドア部46を開閉する際に、内側補助挟持腕76が閉じ位置以外の位置にあると、内側補助挟持腕76が邪魔になるからである。特に、キャノピ8の外側からドア部46を開閉する時に邪魔になり易い。第2保持機構があれば、内側補助挟持腕76を開き位置に保持できるので、そのような不具合を防ぐことができる。
【0065】
図10に第1保持機構及び第2保持機構の具体例を示す。第1保持機構は、第1係合部81や第1被係合部84によって構成されている。第2保持機構は、第2係合部82や第2被係合部85によって構成されている。
【0066】
具体的には、補助ロック部材72は、内側補助挟持腕76の基端部分に設けられた第1係合部81と、補助開閉レバー77の基端部に設けられた第2係合部82とを有している。一方、第2軸受部79は、一対の第2軸支部79aを両端に有する支持壁79cに設けられた第1被係合部84と、支持壁79cの一方の側部に連なる略L形状のレバー保持腕79dに設けられた第2被係合部85とを有している。
【0067】
一対の第2軸支部79aの間に位置する第2筒軸78は、回動軸線J2の方向の方向にスライド可能に構成されている。また、ストッパー50と同様に、内側補助挟持腕76よりも補助開閉レバー77の方が回動軸線J2に対する力のモーメントが大きく、内側補助挟持腕76が常に閉じ位置に戻るように設定されている。
【0068】
図11に示すように、無負荷の状態では、補助ロック部材72が自動的に内側補助挟持腕76が上昇する方向に回動する。そして、第1係合部81が第1被係合部84に受け止められるため、内側補助挟持腕76は所定の閉じ位置に保持される(同図において実線で示す)。
【0069】
内側補助挟持腕76を所定の開き位置に保持する場合には、補助開閉レバー77を持ち上げて、補助ロック部材72を回動軸線J2の方向にスライドさせる。そして、同図に仮想線で示すように、第2係合部82を第2被係合部85の上に載せ置く。そうすることで、内側補助挟持腕76を所定の開き位置に保持することができる。
【0070】
油圧ショベル1にオペレータが搭乗する際には、まず、外側レバー57bを操作して内側挟持腕56を開き位置に変位させる。このとき、外側レバー57bはリーフガード40の下端部に配置されているので、手が届き易く容易に操作できる。そうすると、ドア部46は開閉可能になるので、オペレータはドア部46を開き、昇降口13を通じて操作スペース10に入り込めばよい。
【0071】
搭乗後は、内側レバー57aを操作して内側挟持腕56を閉じ位置に変位させる。これにより、揺動端46cの下側部分は揺動が規制され、ドア部46は閉めた状態に保持される。また、補助開閉レバー77を操作して内側補助挟持腕76を閉じ位置に変位させる。このとき、補助開閉レバー77がリーフガード40の内側にあって上端部に配置されていても、オペレータは既に搭乗しているので容易に操作できる。これにより、揺動端46cの上側部分も揺動が規制され、ドア部46は閉めた状態によりいっそう安定して保持される。
【0072】
運転席7に着座したオペレータの上半身の周囲はリーフガード40で覆われる。従って、例えば、椰子が繁茂した現場で作業する場合でも、リーフガード40で椰子の葉が操作スペース10に入り込むのを抑制でき、快適に操作することができる。
【0073】
そして、油圧ショベル1からオペレータが降りる際には、補助開閉レバー77を操作して内側補助挟持腕76を開き位置に変位させる。そして、第2保持機構により、内側補助挟持腕76を開き位置に保持する。更に、内側レバー57aを操作して内側挟持腕56も開き位置に変位させる。そうすることで、ドア部46は開閉可能になるので、オペレータはドア部46を開き、昇降口13を通じて油圧ショベル1から降りればよい。
【0074】
なお、本発明にかかる作業機械は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0075】
例えば、作業機械は、油圧ショベル1に限らず、ホイールローダ等であってもよい。下部走行体2もクローラ式に限らない。要は、キャノピ8を備えた機種であれば適用できる。
【0076】
リーフガード40(保護カバー)は、運転席7の周囲の一部、例えば、前面と側面のみに設けてもよい。また、上下方向においても、保護カバーは、運転席7の上方だけを覆うのでなく、運転席7の下方も覆うようにしてあってもよい。保護カバーの金網は、透明な樹脂板やガラス板に代替できる。
【0077】
図12に示すように、ストッパー50や補助ストッパー70は、支柱の周辺部位で規制してもよい。同図では、左支柱前部32a等の内側に枠体90が固定され、枠体90で各ストッパー50,70を規制している。枠体90は保護カバー40と同じ構造にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の作業機械は、椰子等の背の高い植物が繁茂する熱帯地域や亜熱帯地域での開拓作業や農作業などに好適である。
【符号の説明】
【0079】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
7 運転席
8 キャノピ
20 ルーフ
31 右側支柱
32 左側支柱
40 リーフガード(保護カバー)
40a フレーム
40b 金網(ネット部材)
46 ドア部
46c 揺動端
50 ストッパー
51b 外側挟持腕(外側挟持部)
56 内側挟持腕(内側挟持部)
57 開閉レバー
70 補助ストッパー
71b 外側補助挟持腕(外側補助挟持部)
76 内側補助挟持腕(内側補助挟持部)
77 補助開閉レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体の上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、
を備え、
前記上部旋回体に、運転席と、キャノピと、が設けられた作業機械であって、
前記キャノピは、
前記運転席の上方を覆うルーフと、
前記ルーフを支持する複数の支柱と、
前記支柱に支持され、前記運転席の周囲の少なくとも一部を覆う保護カバーと、
を有し、
前記保護カバーは、横側の一方の縁を支点に外側に向かって揺動可能なドア部を有し、
前記ドア部の他方の縁に、当該ドア部の揺動を規制するストッパーが設けられ、
前記ストッパーは、
前記ドア部に固定され、前記支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位に接触して当該ドア部の内側への揺動を規制する外側挟持部と、
前記外側挟持部よりも内側の位置で前記ドア部に支持され、横軸回りに回動可能な内側挟持部と、
前記内側挟持部と一体に設けられた開閉レバーと、
を有し、
前記開閉レバーは、
前記ドア部の内側に位置する内側レバーと、
前記ドア部に形成された開口部を通って前記ドア部の外側に位置する外側レバーと、
を有し、
前記内側レバー及び前記外側レバーのいずれかの操作により、前記内側挟持部は、前記支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位に接触可能な閉じ位置と、前記支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位に接触不能な開き位置とに変位し、
前記閉じ位置において、前記外側挟持部と前記内側挟持部との間に前記支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位が挟み込まれる作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記外側挟持部と前記内側挟持部とが上下方向に離れて位置している作業機械。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の作業機械において、
前記ストッパーは、前記ドア部の他方の縁における下端部に設けられ、
前記ドア部の他方の縁における前記ストッパーの上方の部分に、補助ストッパーが設けられ、
前記補助ストッパーは、
前記ドア部に固定され、前記支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位に接触して当該ドア部の内側への揺動を規制する外側補助挟持部と、
前記外側補助挟持部よりも内側の位置で前記ドア部に支持され、横軸回りに回動可能な内側補助挟持部と、
前記内側補助挟持部と一体に設けられ、前記ドア部の内側のみから操作可能な補助開閉レバーと、
を有し、
前記補助開閉レバーの操作により、前記内側補助挟持部は、前記支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位に接触可能な閉じ位置と、前記支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位に接触不能な開き位置とに変位し、
前記閉じ位置では、前記外側補助挟持部と前記内側補助挟持部との間に前記支柱及び/又は支柱に固定されたその周辺部位が挟み込まれる作業機械。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の作業機械において、
前記開閉レバーと前記内側挟持部との間における力のモーメント差の利用により、無負荷の状態において、前記内側挟持部が閉じ位置に自動的に変位するように設定されている作業機械。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載の作業機械において、
前記保護カバーに、ネット部材が用いられている作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−193511(P2012−193511A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56681(P2011−56681)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】