説明

作業機

【課題】圃場面の土を掘削して回収するにあたり、土を選別するとともに選別した状態の土を効率良く回収することを課題とする。
【解決手段】少なくとも圃場面の土を掘削して後方へ送るローター3と、後方へ送られる途中の土を選別する選別手段38と、該選別手段38で選別された土を収納する収納手段4を一体的に連結して作業機2を構成し、該作業機2を車両1本体に対して昇降自在に構成し、前記車両1を走行させながらローター3で圃場面の土を掘削して後方へ送り、後方へ送られる途中の土を選別手段38で選別し、選別された土を収納手段4内に収納するように構成したことを特徴とする作業機の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。特に、車両に装着され、走行しながら圃場面の土を掘削して選別し、選別後の土を収納する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009−159880号公報には、トラクタの後部にロータリを昇降自在に設け、このロータリの後方には、ロータリで耕うんした土を掬い入れ、運搬、放出を行う作業機を連結する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−159880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記作業機においては、ロータリで耕うんした土を選別する選別手段が設けられていないので、作物を育てるような細かい土を回収できないという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、少なくとも圃場面の土を掘削して後方へ送るローター(3)と、後方へ送られる途中の土を選別する選別手段(38)と、該選別手段(38)で選別された土を収納する収納手段(4)を一体的に連結して作業機(2)を構成し、該作業機(2)を車両(1)本体に対して昇降自在に構成し、前記車両(1)を走行させながらローター(3)で圃場面の土を掘削して後方へ送り、後方へ送られる途中の土を選別手段(38)で選別し、選別された土を収納手段(4)内に収納するように構成したことを特徴とする作業機とした。
【0006】
ローター(3)を回転駆動するとともに圃場面に接地させた状態で車両(1)を走行すると、土は掘削されて後方へと飛ばされる。土が後方へと送られる途中で選別手段(38)を通過すると、粒の細かい土のみが後方へと移動し、収納手段(4)に収納される。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記収納手段(4)の底板(41)を開閉可能に構成し、該底板(41)に左右の車輪(42,42)を設けて収納手段(4)を支持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業機とした。
【0008】
収納手段(4)は、左右の車輪(4)で支持される。そして、底板(41)を回動して開けると、車輪(42,42)も一緒に回動するので、土を放出するときも、収納手段(4)は車輪(42,42)で支持される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記底板(41)をロックするロック手段(R)を解除して作業機(2)を上昇させると、前記底板(41)が開いて収納手段(4)内の土が放出されるように構成したことを特徴とする請求項2に記載の作業機とした。
【0010】
収納手段(4)内に土を収納中は、底板(41)はロック手段(R)でロックされている。収納手段(4)内の土を放出するときは、ロック手段(R)を解除して作業機(2)を上昇させると、土が放出される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、ローター(3)によって土が後方へと送られる途中において、選別手段(38)で土が選別されるので、粒の細かい土の回収が一気に容易に可能となる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、収納手段(4)は、土を収納するときも、土を放出するときも車輪(42,42)で支持されるので、作業機(2)は車両(1)に連結された状態で容易に移動可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、収納手段(4)を適宜位置に容易に移動可能である、移動後ロック手段(R)を解除すると、容易に土を放出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トラクタに作業機を連結した状態の右側面図
【図2】ホッパーを省略したローター部分の斜視図
【図3】作業機の左側面図
【図4】(a)ローターの一部の断面図、(b)格子の背面図
【図5】作業機の斜視図
【図6】作業機の背面図
【図7】作業機の一部の右側面図
【図8】土を放出する状態でのトラクタに作業機を連結した状態の右側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、農用トラクター1の機体後部に作業機2を昇降自在に取り付けて、土壌表面をローター3の回転力で飛散させながら走行し、飛散した土塊をローター3の後方に設けているホッパー4内に収納するものである。
【0016】
農用トラクター1は機体の前後に左右一対の前輪5と後輪6を設けており、左右の前輪5,5間上方の機枠部にエンジン7を搭載し、その周りをボンネット8やフロントグリル9や左右のサイドカバー10,10等で覆う構成としている。11は計器盤、12はステアリングハンドルである。左右の後輪6,6上方と両者間の内方はフェンダー13,13で覆われ、この左右のフェンダー13,13間の機体部上には座席14が設けられ、運転者が着座して運転する。
【0017】
作業機2は、農用トラクター1の機体後端に設けた、左右方向中央のヒッチ15部にトップリンク16の前端を枢支しており、該トップリンク16の後端にはマストである上部支枠17の前端上部を枢支している。また、農用トラクター1の機体後端下方には左右のロワーリンク18,18の前端部を枢支している。
【0018】
該ロワーリンク18の後端には、左右方向中央の中央伝動ケース19から左右側方に突出する左右のビーム20,21に一体固設した、支持プレート22,22の取付ピン23部を取り付けている。また、ロワーリンク18,18には、左右のリフトロッド24,24の下端を取り付けている。該リフトロッド24の上端は、機体の後部上方に備えた左右のリフトアーム25,25の突設後端に取り付けており、リフトアーム25を図示しないアクチュエータ(油圧シリンダ)によって上下回動することにより、作業機2を昇降可能としている。
【0019】
そして、図2の斜視図に示しているが、右方のビーム20側端にはサイドプレート26の上端部が固設され、左方のビーム21側端には、サイド伝動ケース27の上端部が固設されている。該サイドプレート26とサイド伝動ケース27下端間には、ローター3が左右方向に軸架されている。該ローター3は、左右方向のパイプ28と、その外周に複数の耕うん爪29,29……を取り付けたホルダー30,30……とから成っており、ローター3の回転で土壌表面を掘削したり、掘削後の土を砕土したりする。図2については、ホッパー4を省略している。
【0020】
また、前記耕うん爪29の先端は、土の飛散と掬いを強くするために曲げを大きくしている。そして、ローター3の回転方向はAの方向(逆転ローター)としており、従って、土もAの方向に飛散する。
【0021】
前記パイプ28の駆動は農用トラクター1の機体であるリヤ伝動ケース31後端に突出したPTO軸32から、自在継手33を介して後方中央の中央伝動ケース19の入力軸34に伝達される回転力により駆動している。図示しないが、入力軸34より入力した駆動力は、ベベルギヤを介して左方のビーム21内の伝動軸からサイド伝動ケース27内上部のスプロケットに伝わり、上部のスプロケットからチェーンを介して下方のパイプ28側端部の下部スプロケットを駆動する構成としている。
【0022】
図3〜図7に基づき作業機2の具体構成について説明する。
パイプ28の駆動回転(約800rpm)に伴い、耕うん爪29での掘削による耕うん土の周辺への飛散を防止するため、耕うん爪29の先端の回転軌跡上方を主カバー35(図3参照)で覆う構成としている。また、耕うん爪29の左右両側においても、左右カバー35a,35bで覆う構成としている。主カバー35の前面には土量調整用シャッター36を設けている。この土量調整用シャッター36を上方向にスライドさせると、耕うん爪29で掘削される土の量が多くなり、下方向にスライドさせると、耕うん爪29で掘削される土の量が少なくなる構成である。土量調整用シャッター36の上下方向のスライド調整は、ボルトを緩めて手動で調節する構成であるが、電動や油圧方式でもよい。
【0023】
そして、主カバー35の一部を切り欠いており、この切り欠き部分にゴム板37を取り付ける構成としている。主カバー35の切り欠き部分は、左右方向に3カ所構成しているが、状況によっては2カ所や4カ所等にしてもよい。このように、ゴム板37にすることで、飛散する土の衝撃音を減少させることができ、さらに、ゴム板37が少し伸びることで、土の詰まりを防止できるようになる。また 二点鎖線Cは、耕うん爪29の先端軌跡を示しているが、前記ゴム板37は耕うん爪29の先端軌跡Cに対して、耕うん爪29の回転方向下手側ほど離れるように構成している。これにより、土の後方への移動がスムーズになる。
【0024】
前記主カバー35における耕うん爪29の回転方向下手側には、格子体38を構成している。この格子体38は複数の丸棒材39,39……(直径約6mm)から構成されており、複数の丸棒材39,39……のそれぞれの間隔は、耕うん爪29の回転方向下手側ほど離れる構成で、その間隔は8〜9mm程度としている。これにより、作業能率が向上するようになる。前記複数の丸棒材39,39……の間を通り抜けた土のみが後方のホッパー4方向へと移動する構成であるので、細かな土のみが選別される。前記格子体38の幅や間隔を変えることで、選別する土の細かさを変更可能である。
【0025】
複数の丸棒材39,39……については、第一丸棒群39a,39a……と、第二丸棒群39b,39b……を交互に配置している。そして、第一丸棒群39a,39a……と第二丸棒群39b,39b……については、図4(a)の側面の断面図に示しているように、上下方向に段差を構成しているので、飛散した土が細かく砕けるようになる。
【0026】
第一丸棒群39a,39a……は、その取付位置が作業機本体側であるので、作業機2全体からの振動を受ける。これに対して、第二丸棒群39b,39b……は、主カバー35に取り付けているので、主カバー35からの振動を受ける。従って、第一丸棒群39a,39a……の方が振動が大きくなる。このように、丸棒材39,39……の振動が交互に異なることで、棒材39,39……に対する土付着を防止できるようになる。丸棒材39,39……の振動については、例えば偏心カム等の起振装置で強制的に振動を起こすように構成してもよい。
【0027】
また、前記複数の丸棒材39,39……は、耕うん爪29の先端軌跡Cに対して、耕うん爪29の回転方向下手側ほど離れるように構成しているので、土の詰まりを防止できるようになる。
【0028】
前記複数の丸棒材39,39……の間を通過して選別された土は、図3に示す区間Dの間から矢印Eのような軌跡を描きながらホッパー4内へと収納されていく。ホッパー4内の容積は約200リットルとしており、大容量の土を収納可能としている。そして、約5秒でホッパー4が満量状態となり、効率の良い土の選別を回収作業が可能となっている。40は収納量調整用シャッターであり、前記区間Dの間において出退することで、収納量を調節する構成としている。
【0029】
図6の背面図及び図5に示すように、ホッパー4の底板41の両側は上方に向かって折り曲げられて折り曲げ部41aを構成しており、この折り曲げ部41aにホッパー4を支持する左右の車輪42,42を設けている。そして、底板41は前部の回動支点43を回動中心として、車輪42と共に下方に回動する構成としている。
【0030】
底板41を下方に回動するには、左右のロック装置R,Rを解除する必要がある。このロック装置Rについて説明する(図7)。底板41の折り曲げ部41aにプレート48を立設して設け、このプレート48にピン47を固着して構成している。一方、ホッパー4の側面板4aには、プレート45が回動支点45aを回動中心として回動可能に設けられており、さらに、プレート45にはフック部45bを形成している。そして、プレート45はバネ46で常時引っ張られているので、プレート45のフック部45bは、底板41側のピン47に係合する構成としている。この状態がロック状態である。
【0031】
図5に示している紐44の一側は、トラクター1の座席14に座っている運転者が余裕で引ける位置まで構成している。紐44の多側は、左右の紐44a,44bに分岐している。この左右の紐44a,44bは、前記プレート45に連結している。
【0032】
そこで、紐44をF方向に引くと、左右に分岐している左右の紐44a,44bもF方向に移動するので、左右の紐44a,44bが連結しているプレート45もF方向に回動する。すると、フック部45bがピン47から外れる。そして、ローター3とともにホッパー4を上昇させると、底板41は回動支点43を回動中心として回動することになる。このとき、底板41は左右の車輪42,42で支持されているので、トラクター1を移動させることも可能である。この回動状態を図8に示している。
【0033】
ホッパー4が上昇しているときにおいては、フック部45bとピン47が大きな力で係合しているので、紐44を引っ張ってもロックの解除ができない。そこで、車輪42が地面に接地しているときにおいて、紐44を引っ張ってロックの解除を行う。そして、車輪42が地面に接地しているときにおいては、図3に示すように、フック部45bとピン47との間に少しの隙間Gを設けている。これにより、軽い力で紐44を引くことでフック部45bがピン47から外れることになり、操作性が向上するようになる。
【0034】
しかしながら、隙間Gを構成すると、走行しながら土をホッパー4内に収納する場合にはホッパー4自体が振動するので、底板41も隙間Gの分振動することになる。すると、瞬間的に底板41が回動することになり、土が漏れてしまう。そこで、図5に示すように、ホッパー4の背面板4bに対して、ゴム板49をボルト50で取り付ける構成とする。これにより、土こぼれを防止できるようになる。
【0035】
前記底板41の回動については、モーターによる電動でもよいし、油圧シリンダー等を用いての油圧で行うように構成してもよい。この場合は、ホッパー4を上昇させてから底板41を回動させることができる。
【0036】
前述のごとく、図8の状態になると、ホッパー4内に収納していた土は機外へと放出される。作業としては、ホッパー4の上昇高さHを約70cm上昇させて土を放出する。さらに、同じ場所に土を放出する場合は、ホッパー4の上昇高さHを約70cm+αの状態で土を放出する。ホッパー4の上昇高さには限界があるが、同じ場所に土を放出するには3工程程度までは可能である。このような土の回収は、土を圃場面に撒いて一定期間(半年から1年)寝かせておいて、再び回収するときなどに用いると便利である。
【0037】
前記ホッパー4には多量の土が収納されるため、ホッパー4自体の取り付け強度を強固にする必要がある。そこで、ホッパー4の左右前部に左右の支柱51,51を構成し、この左右の支柱51,51を上部をフレーム52で連結する。そして、フレーム52に対して左右のプレート53,53を固着し、左右のプレート53,53を前方へ伸ばして、前記左右のビーム20,21等に連結する構成とする。左右の支柱51,51には、前述した左右の紐44a,44bを案内するリング54,54を構成している。
【0038】
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの説明順序・表現等によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0039】
R ロック手段(ロック装置)
1 車両(トラクター)
2 作業機
3 ローター
4 収納手段(ホッパー)
38 選別手段(格子体)
41 底板
42 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも圃場面の土を掘削して後方へ送るローター(3)と、後方へ送られる途中の土を選別する選別手段(38)と、該選別手段(38)で選別された土を収納する収納手段(4)を一体的に連結して作業機(2)を構成し、該作業機(2)を車両(1)本体に対して昇降自在に構成し、前記車両(1)を走行させながらローター(3)で圃場面の土を掘削して後方へ送り、後方へ送られる途中の土を選別手段(38)で選別し、選別された土を収納手段(4)内に収納するように構成したことを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記収納手段(4)の底板(41)を開閉可能に構成し、該底板(41)に左右の車輪(42,42)を設けて収納手段(4)を支持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記底板(41)をロックするロック手段(R)を解除して作業機(2)を上昇させると、前記底板(41)が開いて収納手段(4)内の土が放出されるように構成したことを特徴とする請求項2に記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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