説明

作業機

【課題】予備苗載台が前後方向に展開した状態で機体が傾いたり揺れたりしても予備苗載台から苗箱が落下することがない苗載台を備えた苗移植機を提供すること。
【解決手段】 複数設けた予備苗載台38a,38b,38cの各々に回動自在にそれぞれ連結して各予備苗載台を上下に重複した状態と、前後方向に展開した状態とに操作可能にした複数の移動リンク部材39a,39b,39cとを備え、各移動リンク部材にそれぞれ接続して、各予備苗載台を支持する支持部材37a,37b,37cと、各支持部材の前側と該前側に対して偏倚した後側に、苗箱の移動を規制する作用状態と苗箱の移動を妨げない非作用状態に切替自在にそれぞれ配置した前側と後側の規制部材47a,47b,47cを備えた苗移植機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置を有する機体の側部に予備苗載台を備えた苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗植付装置を機体後部に備えた苗移植機において、機体の側部に複数の予備苗載台を備えた苗移植機が知られている。
下記特許文献1に記載の苗移植機では機体の側部に固定した固定苗台を配置し、その上方と前方に配置位置を移動自在にした第1予備苗載台を配置する構成が開示されている。また下記特許文献1には、固定苗台の下方と後方に第2の予備苗載台を配置することができることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−232809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された苗移植機では、回動自在なリンク機構に予備苗載台を複数設け、該予備苗載台が上下方向に重複する状態と前後方向に展開する状態に変更することができる。しかしながら、苗箱の動きを規制する苗ストッパは、予備苗載台が前後方向に展開した状態で前側に位置する予備苗載台の前端部と、後側に位置する予備苗載台の後端部にしか設けられておらず、複数の予備苗載台が上下方向に重複する状態に操作した場合、機体が傾いたり揺れたりすると予備苗載台から苗箱が落下してしまい、作業者はこの苗箱を拾うために余分な労力を費やしてしまうという問題がある。
【0005】
また、苗箱が予備苗載台から落下する際の衝撃で苗箱が傷つき、そのまま立ち枯れてしまったり、生育不良を起こすなどして、収穫量が減少してしまうという問題がある。
本発明の課題は、予備苗載台が前後方向に展開した状態で機体が傾いたり揺れたりしても予備苗載台から苗箱が落下することがない苗載台を備えた苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、圃場を走行する走行車体(2)と、該走行車体(2)の後部に昇降可能に連結された苗を圃場に植え付けるための苗植付部(4)と、走行車体(2)に配置された予備の苗箱を載置する複数の予備苗載台(38a,38b,38c)と、複数の予備苗載台(38a,38b,38c)の各予備苗載台(38a,38b,38c)に回動自在にそれぞれ連結して各予備苗載台(38a,38b,38c)を上下に重複した状態と、前後方向に展開した状態とに操作可能にした複数の移動リンク部材(39a,39b,39c)とを備えた苗移植機において、各移動リンク部材(39a,39b,39c)にそれぞれ接続して、各予備苗載台(38a,38b,38c)を支持する支持部材(37a,37b,37c)と、各支持部材(37a,37b,37c)の前側と該前側に対して偏倚した後側に、苗箱の移動を規制する作用状態と苗箱の移動を妨げない非作用状態に切替自在にそれぞれ配置した前側と後側の規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)とを備えたことを特徴とする苗移植機である。
【0007】
請求項2記載の発明は、各支持部材(37a,37b,37c)の前後の外周縁部に突起体(37aa,37ba,37ca)をそれぞれ設け、各規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の基部に、支持部材(37a,37b,37c)に摺動自在になる取付孔(47aa,47ba,47ca,47da,47ea,47fa)と該取付孔(47aa,47ba,47ca,47da,47ea,47fa)の周囲に前記支持部材(37a,37b,37c)の突起体(37aa,37ba,37ca)が入り込む少なくとも2つの受け孔(47ab,47bb,47cb,47db,47eb,47fb)をそれぞれ形成し、各規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の端部に各支持部材(37a,37b,37c)の径とほぼ同径の切欠部(47ac,47bc,47cc,47dc,47ec,47fc)をそれぞれ形成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前後一対の隣接する規制部材(47b,47c及び47d,47e)の中の一方の規制部材(47b,47d)の取付孔(47ba,47da)と切欠部(47bc,47dc)との間にそれぞれ受け溝(47bd,47dd)を形成し、前後一対の隣接する規制部材(47b,47c及び47d,47e)の中の一方の規制部材(47c,47e)の取付孔(47ca,47ea)と切欠部(47cc,47ec)との間にそれぞれ前記受け溝(47bd,47dd)が入り込む連動突起体(連動ピン)(47c1,47e1)をそれぞれ設け、前記連動突起体(47c1,47e1)の径をそれぞれ対応する前記受け溝(47bd,47dd)の幅より小さく構成したことを特徴とする請求項1または請求後2の苗移植機である。
【0009】
請求項4記載の発明は、各支持部材(37a,37b,37c)の基部側を機体にそれぞれ片持ち支持させ、かつ各支持部材(37a,37b,37c)を基部側から端部側に向けた上方傾斜させ、さらに下段側より上段側ほど支持部材(37a,37b,37c)の上方への傾斜角度をゆるやかにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、複数の予備苗載台(38a,38b,38c)が上下方向に重複する状態にすると共に、規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)を作用状態にすることにより、予備苗載台(38a,38b,38c)に載置した苗が走行車体(2)の前後方向に移動することを防止できるので、苗が落下して傷つくことが防止され、苗の育成が安定する。
【0011】
また、複数の予備苗載台(38a,38b,38c)を前後方向に展開する状態にすると共に、規制部材(47b,47c,47d,47e)を非作用状態にすることにより、予備苗載台(38a,38b,38c)に載置された苗箱は前方から後方まで何かに引っかかることなく移動可能となり、圃場の外から投入する苗箱を容易に予備苗載台(38a,38b,38c)上に載置することができて作業能率が従来より向上し、しかも最前部の予備苗載台(38a)の前側の規制部材(47a)と最後部の予備苗載台(38c)の後側の規制部材(47f)が立ち上がってストッパ機能を果たすので、予備苗載台(38a,38b,38c)上に載置された苗箱が落下することがない。
【0012】
そして、各予備苗載台(38a,38b,38c)における前側の規制部材(47a,47c,47e)と後側の規制部材(47b,47d,47f)とをそれぞれ互い違いに左右方向に偏倚させて配置しているので、各予備苗載台(38a,38b,38c)を前後方向に展開する状態では、隣接し合う予備苗載台(38a,38b,38c)の前後の規制部材(47b,47c;47d,47e)同士が干渉し合うことがないので、規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の作用状態及び非作用状態を確実に切り替えることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の取付孔(47aa,47ba,47ca,47da,47ea,47fa)の周囲に少なくとも2つの受け孔(47ab,47bb,47cb,47db,47eb,47fb)を構成したことにより、規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の作用状態と非作用状態とを切り替える際、支持部材(37a,37b,37c)に設けた突起体(37aa,37ba,37ca)を受け孔(47ab,47bb,47cb,47db,47eb,47fb)に差し込んで規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の状態を固定することができるので、苗箱の接触や機体の振動等により規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の作用状態とが勝手に変わってしまうことが防止され、予備苗載台(38a,38b,38c)から苗が落下して傷つくことがなく、苗の育成が安定する。また、苗箱を前側から後側までスムーズに送ることができるので、苗の補充にかかる時間が短縮されて作業能率が従来より向上する。
【0014】
そして、規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の端部側に支持部材(37a,37b,37c)の径とほぼ同径の切欠部(47ac,47bc,47cc,47dc,47ec,47fc)を形成したことにより、この切欠部(47ac,47bc,47cc,47dc,47ec,47fc)を隣接する予備苗載台(38a,38b,38c)の支持部材(37a,37b,37c)に係止させると、支持部材(37a,37b,37c)をロックするので、苗箱の接触や走行車体(2)の振動により規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の作業状態と非作業状態とが勝手に切り替わることがいっそう防止される。
【0015】
なお、規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)は、突起体(37aa,37ba,37ca)が受け孔(47ab,47bb,47cb,47db,47eb,47fb)に押し込まれる方向に支持部材(37a,37b,37c)に設けたスプリング(49a,49b,49c,49d,49e,49f)で押圧することにより、よりいっそう勝手に状態が変わらない構成としている。このスプリング(49a,49b,49c,49d,49e,49f)の押圧方向とは逆方向に手で規制部材を押し、上下方向に回動させて突起体(37aa,37ba,37ca)に受け孔(47ab,47bb,47cb,47db,47eb,47fb)のいずれかを合わせて挿脱することにより、前記作用状態または非作用状態が決定される。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、連動突起体(47c1,47e1)を設けた一方の規制部材(47c,47e)を非作用部材状態に移動させ、この連動突起体(47c1,47e1)を他方の規制部材(47b,47d)に形成した受け溝(47bd,47dd)に入り込ませることにより、一方の規制部材(47c,47e)を非作用状態にすると他方の規制部材(47b,47d)も非作用状態とすることができるので、作業者が規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)を操作する回数を減少し、作業能率が向上する。
【0017】
また、連動突起体(47c1,47e1)の径を受け溝(47bd,47dd)の幅よりも小さく構成したことにより、受け溝(47bd,47dd)に入った連動突起体(47c1,47e1)は受け溝(47bd,47dd)の内部で前後及び左右方向に移動することができるので、多少のズレがあっても連動突起体(47c1,47e1)が受け溝(47bd,47dd)に入る込むため、作業能率が従来より向上する。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、支持部材(37a,37b,37c)の基部側から端部側に向けて上方傾斜させることにより、予備苗載台(38a,38b,38c)から走行車体(2)の外側に向かって苗が落下することを防止できるので、落下した苗を機体から降りて拾う作業が省略され、作業者の労力が軽減される。
また、予備苗載台(38a,38b,38c)を前後方向に展開したとき、予備苗載台(38a,38b,38c)の走行車体(2)の外側は、後ろ側へ向かうほど下方に位置するため、圃場の凹凸等で機体が前傾しても苗が前方に向かって移動することを防止できる。
さらに、支持部材(37a,37b,37c)の基部側は略同じ高さであることにより、予備苗載台(38a,38b,38c)の基部側も略同じ高さとなるので、予備苗載台(38a,38b,38c)の基部側に沿って苗を移動させるとスムーズに苗を前側から後ろ側に移動させることができるので、作業能率が従来より向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の苗移植機の側面図である。
【図2】図1の苗移植機の平面図である。
【図3】図1の苗移植機の予備苗載台を上下三段に配置した場合の側面図である。
【図4】図1の苗移植機の予備苗載台を同一平面に配置した場合の側面図である。
【図5】図4の予備苗載台部分の平面図である。
【図6】図1の苗移植機の予備苗載台の第2、第3ストッパの作用状態と非作用状態を示す側面図(図6(a)〜図6(c))である。
【図7】図6の予備苗載台のストッパの作用状態(図7(a))と非作用状態を示す平面図(図7(b))である。
【図8】図1の苗移植機の他の実施例の予備苗載台を展開した状態での平面図である。
【図9】図1の苗移植機の他の実施例のストッパの非作用状態の平面図である。
【図10】図9のストッパの作用状態と非作用状態の間の移動を説明する側面図(図10(a)〜図10(c))である。
【図11】図1の苗移植機の他の実施例の予備苗載台のストッパの非作用状態の平面図(図11(a))、作用状態の側面図(図11(b))及び非作用状態への移動時を示す側面図(図11(c))である。
【図12】図1の苗移植機の他の実施例の予備苗載台のストッパの作用状態と非作用状態の間の移動時を示す側面図(図12(a)〜図12(c))である。
【図13】図1の苗移植機の他の実施例の予備苗載台のストッパの作用状態を示す側面図(図13(a))とストッパの作用状態を示す平面図(図13(b))と非作用状態の平面図(図13(c))と非作用状態の側面図(図13(d))である。
【図14】図1の苗移植機の予備苗載台の部分の正面図である。
【図15】図1の苗移植機の機体への予備苗載台の取り付け状態の説明図(図15(a)、図15(b))である。
【図16】図1の苗移植機の他の実施例の予備苗載台と補助予備苗載台部分の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明の苗移植機の典型例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。搭乗オペレータが苗移植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0021】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0022】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力がベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0023】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0024】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0025】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト51b,…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された苗を圃場に植え付ける苗植付装置52,…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ48(図1)を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植え付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0026】
施肥装置5は肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた作溝体(図示せず),…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62,…に吹き込まれ、施肥ホース62,…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(第1ロータ27aと第2ロータ27bの組み合わせを単にロータ27ということがある)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗載台38,38が三段に分かれて鉛直方向に伸びた支柱66(図14参照)に支持されて中心に機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0027】
一方の機体側面にある第1予備苗載台38a,第2予備苗載台38b,第3予備苗載台38cを上下三段に配置した場合の側面図を図3(図5の矢印X方向から見た図)に示し、第1予備苗載台38a,第2予備苗載台38b,第3予備苗載台38cを同一平面に配置した場合の側面図を図4(図5の矢印S方向から見た図)に示し、第1予備苗載台38a,第2予備苗載台38b,第3予備苗載台38cを同一平面に配置した場合の平面図を図5に示し、第1予備苗載台38a,第2予備苗載台38b,第3予備苗載台38cの連結部の側面図と平面図を図6と図7にそれぞれ示す。
なお、本実施例では予備苗載台38a,38b,38cは三段配置の場合を示すが、予備苗載台38a,38b,38cの設置段数は三段以上あってもよい。
【0028】
図3〜図5に示すように、予備苗載台38は支柱66(図14参照)で支持されたリンク部材39a,39b,39cで上下三段に分けて配置され、最上段の第1予備苗載台38aと中央段の第2予備苗載台38b及び最下段の第3予備苗載台38cが設けられている。
【0029】
最上段の第1予備苗載台38aの中央部側面と第2予備苗載台38bの最前部側面がそれぞれ回動軸38a1,38b1の回りに回動自在に第1移動リンク部材39aの両端で支持され、また最上段の第1予備苗載台38aの最後部側面と最下段の予備苗載台38cの最前部側面が第2移動リンク部材39bの両端でそれぞれ回動軸38a2,38c1の回りに回動自在に支持され、また第2予備苗載台38bの中央部側面が回動軸38b2の回りに回動自在に前記第2移動リンク部材39bの中央部で支持されている。さらに第2予備苗載台38bの最後部側面と最下段の第3予備苗載台38cの中央部側面とがそれぞれ回動軸38b3,38c2の回りに回動自在に第3移動リンク部材39cの両端で支持されている。
【0030】
第2予備苗載台38bは機体に固定されており、第2予備苗載台38bを中心とし、その上下に第1予備苗載台38aと第3予備苗載台38cが配置され、第1移動リンク部材39a,第2移動リンク部材39b,第3移動リンク部材39cを広げて、全体にほぼ同一平面上に配置替えすることができる。
ここで、第2移動リンク部材39bは、その中央部が第2予備苗載台38bの中央部の両側に設けられた回動支点38b2により支持されているので、第2移動リンク部材39bを回動させて、第1、第3予備苗載台38a,38cを第2予備苗載台38bの前後に移動させて、第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cを同一平面上に配置することで広い苗箱載置平面が得られる。
【0031】
また、第1移動リンク部材39aの第2予備苗載台38bの前端部との連結部側、第2移動リンク部材39bの第1予備苗載台38aの後端部側の連結部側、第2移動リンク部材39bの第3予備苗載台38cの前端部側の連結部側及び第3移動リンク部材39cの第2予備苗載台38bの後端部側の連結部側は、それぞれ第2予備苗載台38b、第1予備苗載台38a、最下段の第3予備苗載台38c及び第2予備苗載台38bに立設された短い第1,第2,第3,第4補助リンク45a,45b,45c,45dを介して第1移動リンク部材39a,第2移動リンク部材39b,第3移動リンク部材39cに回動自在に連結している。
【0032】
また、第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cの左右両側面には苗箱の落下を防ぐ第1,第2,第3仕切板48a,48b,48cをそれぞれ配置し、さらに第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cの前後の側面と右側面に沿って配置され、それぞれ第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cに支持される平面視でコ字状の第1,第2,第3ステー37a,37b,37cが設けられている。
【0033】
そして第1,第2,第3ステー37a,37b,37cにはそれぞれ一対の第1ストッパ47a、第2ストッパ47b;第3ストッパ47c、第4ストッパ47d及び第5ストッパ47e、第6ストッパ47fが設けられている。
【0034】
なお、第1ステー37aの前後に平面視で第1予備苗載台38aの対角線上の偏倚させた位置にそれぞれ第1ストッパ47a、第2ストッパ47bが設けられ、第2ステー37bの前後に平面視で第2予備苗載台38bの対角線上の偏倚させた位置に一対の第3ストッパ47c、第4ストッパ47dが設けられ、第3ステー37cの前後に平面視で第3予備苗載台38cの対角線上の偏倚させた位置に一対の第5ストッパ47e、第6ストッパ47fが設けられる。
【0035】
図6に第2ストッパ47bと第3ストッパ47cを代表例として示すように第1ストッパ47a、第2ストッパ47b;第3ストッパ47c、第4ストッパ47d及び第5ストッパ47e、第6ストッパ47fの一端部にそれぞれ設けた取付孔47aa,47ba;47ca,47da及び47ea,47faに第1,第2,第3ステー37a,37b,37cをそれぞれ挿入することで第1ストッパ47a、第2ストッパ47b;第3ストッパ47c、第4トッパ47d及び第5ストッパ47e、第6ストッパ47fが第1,第2,第3ステー37a,37b,37cにそれぞれ摺動可能としている。
【0036】
なお、図6(a)には第2ストッパ47bのみを示し、第2ストッパ47bが作用状態(点線)から非作用状態(実線)に移動した場合を示し、図6(b)には第3ストッパ47cのみを示し、第3ストッパ47cが作用状態(点線)から非作用状態(実線)に移動した場合を示し、図6(c)には第2ストッパ47bと第3ストッパ47cが作用状態にある場合を示している。
【0037】
前記各ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fの各取付孔47aa,47ba;47ca,47da;47ea,47faの周囲に、ピン37aa,37ba,37caが入り込む少なくとも2つの受け孔47ab,47ab;47bb,47bb;47cb,47cb;47db,47db及び47eb,47eb;47fb,47fbが互いに90度の間隔で設けられている。各受け孔47ab,47bb;47cb,47db及び47eb,47fbに入り込むピン37aa,37ba,37caは各ステー37a,37b,37cの前後の側面にそれぞれ設けられた互いに90度の間隔で設けられた突起であり、当然受け孔47ab,47bb,47cb,47db,4747eb及び47fbの径よりは小さい径を持っている。
また、各ステー37a,37b,37cに前後一対ずつ設けられたピン37aa,37ba,37caはそれぞれ各ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fを作用状態と非作用状態にそれぞれ保持できる位置に設けられている。
【0038】
さらに、各ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fの各取付孔47aa,47ba;47ca,47da及び47ea,47faに設けられた端部とは反対側の端部に各ステー37a,37b,37cを係止できる切欠部47ac,47bc;47cc,47dc及び47ec,47fcを設けている。
ただし、ストッパ47a,47fの受け孔47ab,47fbはストッパ47a,47fを非作用状態に保持する必要がないので設けなくてもよい。
【0039】
そして各ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fの各受け孔47ab,47bb;47cb,47db及び47eb,47fbに各ステー37a,37b,37cの前後側面に設けられた一対のうちの一方のピン37aa,37aa;37ba,37ba及び37ca,37caを挿入すると各ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fは第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cの平面に対して垂直に立ち上がった方向を向いて各ステー37a,37b,37cに支持されることになる。この状態が作用状態であり、第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cの前後に各ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fが突出するので各予備苗載台38a,38b,38c上の苗が前後方向に飛び出して落下するおそれがない。
【0040】
またストッパ47b,47c,47d及び47eの切欠部47bc,47cc,47dc及び47ecをステー37a,37b,37cに係止させると、第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cはほぼ同一平面上に配置されることになる。この状態が作用状態であるが、ストッパ47aは予備苗載台38aの前側側面に,そしてストッパ47fは予備苗載台38cの後側側面に起立させておくことで、苗箱が予備苗載台38a,38b,38cから落下するおそれがなくなる。
【0041】
また図7に一部を平面図で示すように各ステー37a,37b,37cに取り付けた各ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fは各ステー37a,37b,37cの長手方向に対して各バネ49a,49b,49cによりそれぞれ付勢されている。該バネ49a,49b,49cは各ステー37a,37b,37cの一端にそれぞれ支持され、各ステー37a,37b,37cの周囲に巻き付けられた状態で常時、各ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fを付勢しているので、図7(a)に代表例で示す各ストッパ47b,47c,47d及び47eが予備苗載台38a,38b,38cの平面上に突出している場合(作用状態にある場合)でも図7(b)に示すストッパ47b,47c,47d及び47eが予備苗載台38a,38b,38cの平面とほぼ同一平面を形成するように、各ストッパ47b,47c,47d及び47eの各切欠部47ac,47bc;47cc,47dc及び47ec,47fcを各ステー37a,37b,37cにそれぞれ係止させる場合(非作用状態にある場合)でも、各受け孔47ab,47bb,47cb,47db及び47eb,47fbに対応する各ステー37a,37b,37cに取り付けたピン37aa,37ba,37caがそれぞれ入り込むので、ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fはステー37a,37b,37cに強く支持される。
【0042】
上記構成により、予備苗載台38a,38b,38cが上下方向に重複する状態に各予備苗載台38a,38b,38cを移動させると共にストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fを作用状態(ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fが予備苗載台38a,38b,38cの平面上に突出している起立状態)にすることにより、予備苗載台38a,38b,38cに載置した苗が走行車体(機体)2の前後方向に移動することを防止できるので、苗が落下して傷つくことが防止され、苗の育成が安定する。
【0043】
また、予備苗載台38a,38b,38cを前後方向に展開してステー37a,37b,37cをほぼ同じ高さにすると共に、ストッパ47a,47fを作用状態にし、他のストッパ47b,47c,47d及び47eを非作用状態として各切欠部47bc,47cc,47dc及び47ecを各ステー37a,37b,37cにそれぞれ係止させることにより、予備苗載台38a,38b,38cに載置された苗は前方から後方まで障害なく移動できるので、圃場の外から投入する苗を容易に予備苗載台38a,38b、38cに載置することができ、作業能率が向上する。
【0044】
そして、各予備苗載台38a,38b,38cのそれぞれ前側のストッパ47a,47c,47eと後ろ側のストッパ47b,47d,47fとを互い違いに左右方向に偏倚させた位置に配置したことにより、予備苗載台38a,38b,38cを前後方向に展開する状態にする際に、隣接し合う予備苗載台38aの後側のストッパ47bと予備苗載台38bの前側のストッパ47c及び予備苗載台38bの後側のストッパ47dと予備苗載台38cの前側のストッパ47dが互いに干渉し合うことがないので、ストッパ47b,47c,47d及び47eを前記非作用状態に確実に切り替えることができる。
【0045】
また、各ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fの各取付孔47aa,47ba;47ca,47da及び47ea,47faの周囲にそれぞれ少なくとも互いに90度ずれた位置にあるステー37a,37b,37cの前後片にそれぞれあるピン37aa,37ba,37caが入り込む一対の受け孔47ab,47ab;47bb,47bb;47cb,47cb,47db,47db,47eb,47eb及び47fb,47fbを設けたことにより、ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fの作用状態(各ステー37a,37b,37cに各ストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fを起立させた状態)と非作用状態(各切欠部47ac,47bc;47cc,47dc及び47ec,47fcを各ステー37a,37b,37cにそれぞれ係止させた状態)とを切り替える際、各ステー37a,37b,37cに設けたピン37aa,37ba,37ca又はピン37aa,37ba,37caを受け孔47ab,47bb;47cb,47db及び47eb,47fbにそれぞれ差し込んで各ステー37a,37b,37cを固定することができるので、苗の接触や機体の振動等によりストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fの作用状態と非作用状態が勝手に変わってしまうことが防止され、予備苗載台38a,38b,38cから苗が落下して傷つくことがなく、苗の育成が安定する。
【0046】
また、各ストッパ47b,47c,47d及び47eを非作用状態としたときは、苗を予備苗載台38a,38b,38cを前側から後側までスムーズに送ることができるので、苗の補充にかかる時間が短縮されて作業能率が向上する。
【0047】
そして、各ストッパ47b,47c,47d及び47eの端部側に各ステー37a,37b,37cの径とほぼ同径の切欠部47bc,47cc,47dc及び47ecを形成したことにより、これらの各切欠部47bc,47cc,47dc及び47ecを隣接する予備苗載台38a,38b,38cのステー37a,37b,37cに係止させるとステー37a,37b,37cをロックするので、苗の接触や機体の振動によりストッパ47a,47b;47c,47d及び47e,47fの作業状態と非作業状態とが勝手に切り替わることがいっそう防止される。
【0048】
図8〜図10に示すよう前後一対の隣接するストッパ(規制部材)47b,47c及び47d,47eの中の一方のストッパ(規制部材)47b,47dにそれぞれ取付孔47ba,47daと切欠部47bc,47dcと受け溝47bd,47ddを形成し、前後一対の隣接するストッパ(規制部材)47b,47c及び47d,47eの中の一方のストッパ(規制部材)47c,47eの取付孔47ca,47eaと切欠部47cc,47ecとの間に前記受け溝47bd,47ddが入り込む連動アーム47c1,47e1を設け、連動アーム47c1,47e1を他方のストッパ47b,47dの前記受け溝47bd,47ddに入り込ませることにより一方のストッパ47c,47eを非作用状態に移動させると、他方のストッパ47b,47dも非作用状態にすることができるので、作業者がストッパ47b,47c及び47d,47eを操作する回数を減少し、作業能率が向上する。
【0049】
また、連動アーム47c1,47e1の径を受け溝47bd,47ddの幅よりも小さく構成したことにより、受け溝47bd,47ddに入った連動アーム47c1,47e1は受け溝47bd,47edの内部で前後及び左右方向に移動することができるので、多少のズレがあっても連動突起体が受け溝に入る込むため、作業能率が向上する。
【0050】
図8〜図10には予備苗載台38a,38b,38cを広げてストッパ47b,47c,47d,47eを非作用状態にする際の誤操作を防止するためにストッパ47b,47c,47d,47eの解除順を確実にするための構成を示す。説明を簡単にするために2つの予備苗載台38b,38cを例にして予備苗載台38b,38cを広げた時のストッパ47b、47cの連結機構を示す。
【0051】
図8に示すように予備苗載台38b,38cを広げた際、例えば、図9の予備苗載台38bと予備苗載台38cの連結部の拡大図に示すようにそれぞれ設けたストッパ47bとストッパ47cの内でストッパ47cの側面にストッパ47bが倒れる途中で当たる位置にアーム47c1を取り付けている。従って、図10(a)に示すようにストッパ47cを倒し、次いでストッパ47bを倒すと図10(b)に示すように2つのストッパ47b,47cは非作用状態に倒れるが、図10(c)に示すようにストッパ47bをはじめに倒そうとすると、倒れる途中でストッパ47cのアーム47c1に当たるので倒れなくなり、2つのストッパ47b,47cを非作用状態に倒すことができなくなる。
【0052】
同様に図示していないが、予備苗載台38bと予備苗載台38cを広げた際にも、ストッパ47dをはじめに倒そうとすると、ストッパ47dが倒れる途中でストッパ47eの側壁面に設けたアーム47e1に当たって倒れなくなるようにする。
なお、このとき、後から倒すストッパ(側壁面にピンがないストッパ)47a又は47bの切欠部47ac又は47bcは、完全にストッパ47a又は47bを倒した際に相手方のストッパ47b又は47cの側壁面に設けたアーム47b1又は47c1に当たらないだけの大きさの切欠空間を有するようにする。
【0053】
こうして、手動にてストッパ47b,47cを倒す際、前記アーム47b1,47c1を設けていない側のストッパ47bを先に倒そうとすると相手側のストッパ47cのアーム47c1に当たり、倒すことができない。つまり、アーム47c1を設けた側のストッパ47cを先に倒さなければ、ストッパ47b,47cを共に倒すことができない。またストッパ47b,47cを起こす(ストッパ作用状態にする)際は、逆となる。
従って、予備苗載台38a,38b,38cを広げた状態をロックする機構としてアーム47b1又はアーム47c1を設けた側のストッパ47b又は47cを用いることで、最初にロック、最後にロック解除をすることが確実にでき、ストッパを起こし忘れたまま苗枠を回動させてしまう等の誤操作を防止することができる。
【0054】
図11には別実施例の2つの予備苗載台38a,38bを例にして予備苗載台38a,38b,38cを広げた時のストッパ47b、47cの連結機構を示す。
図11(a)の隣接する2つのストッパ47b,47cの平面図に示すように、2つの予備苗載台38a,38bを広げた時に2つのストッパ47b,47cは互いに重ならないように平面視で左右にずらしてステー37a,37bにそれぞれ取り付ける。そして、2つの予備苗載台38a,38bを広げた時に図11(b)の隣接する2つのストッパ47b,47cの側面図に示すように、ステー37aとステー37bを中心にストッパ47b,47cの切欠部47bc,47ccをそれぞれ相手方のステー37b,37aに係止させるときには、図11(c)の側面図に示すように、ストッパ47bの側壁面に設けたアーム47b1をストッパ47cに設けた溝47c2に挿入させて両方のストッパ47b、47cをしっかり係止する。このとき手動操作でアーム47b1を設けたストッパ47bを上方から押すと、相手のストッパ47cも倒れて2つの予備苗載台38a,38bが強固に連結する。こうしてストッパ47bだけを上方から押すことで2つのストッパ47b、47cを共に非作用状態とすることができ、両方のストッパ47b、47cを押す場合に比べて作業回数(個数)を半分にすることができる。
なお溝47c2の幅はアーム47b1の径に相当する大きさとするが、溝47c2の深さはアーム47b1の径より大きくすることで、両方のストッパ47b、47cを倒して2つの予備苗載台38b,38cが強固に連結するときにアーム47b1の逃げ代としておく。
【0055】
図12には別実施例の2つの予備苗載台38a,38bを例にして予備苗載台38a,38b,38cを広げた時のストッパ47b,47cの連結機構を示す。
図12(a)に隣接する2つのストッパストッパ47b,47cを作用状態(起立状態)にした場合の側面図を示し、図12(b)に隣接する2つのストッパ47b,47cを非作用状態(倒した状態)にした場合の側面図を示す。図12(b)に示すようにストッパ47b,47cを非作用状態(倒した状態)にした場合に、2つの予備苗載台38a,38bの上面より少し上側にストッパ47b,47cが突出する。このため、図12(c)に予備苗載台38a,38bに載置した苗箱を後方に滑らせながら送るときにストッパ47b,47cの予備苗載台38a,38bの上面より突出している部分で苗箱を少し持ち上げるので、予備苗載台38aの角部に引掛かることなくスムーズに滑らせることができる。
【0056】
図13には図12に示す予備苗載台38a,38bを例にして予備苗載台38a,38b,38cを広げた時のストッパ47b,47cの連結機構を示す。
図13(a)に隣接する2つのストッパ47b,47cを作用状態(起立状態)にした場合の側面図を示し、図13(b)にストッパ47b,47cを作用状態(起立状態)にした場合の平面図を示し、図13(c)にストッパ47b,47cを非作用状態(倒した状態)にした場合の平面図を示すように、ストッパ47b,47cがステー37a,37bに巻き付けられたスプリング49a,49bで付勢された状態でステー37a,37bにそれぞれ取り付けられたピン37aa,ピン37baがストッパ47b,47cの孔47bb,47cbに挿入された状態である。
【0057】
図13(d)の側面図に示すようにストッパ47b,47cを非作用状態(倒した状態)にした場合に、2つの予備苗載台38a,38bの上面より少し上側にストッパ47b,47cが突出する。このため、図12(c)に示す場合と同様に予備苗載台38a,38bに載置した苗箱を後方に滑らせながら送るときにストッパ47b,47cの予備苗載台38a,38bの上面より突出している部分で苗箱を少し持ち上げるので、予備苗載台38aの角部に引掛かることなくスムーズに滑らせることができる。
【0058】
また図13(a)に示すように、2つのストッパ47b,47cの一部を側面視で重ねることにより、ストッパ47bをスプリング49aの付勢力に抗して非作用状態方向へ押すと、側面視で重なっている部分によりストッパ47cも同時に押され、2つのストッパ47b,47cを同時にピン37aa,37baから外し、フリーの状態にして、図13(d)に示すようにそれぞれのストッパ47b,47cを倒すことができ、ストッパ47b、47cの手動による非作用状態とする作業回数(個数)を半分にすることができる。
【0059】
図14に車両正面から見た上下3段の予備苗載台38a,38b,38cを設置した構成を示すように、ステー37a,37b,37cの基部側から端部側に向けて上方傾斜させることにより、予備苗載台38a,38b,38cから機体外側に向かって苗が落下することを防止できるので、落下した苗を機体から降りて拾う作業が省略され、作業者の労力が軽減される。
【0060】
上段の予備苗載台38aの上方傾斜角度を中段の予備苗載台38bの上方傾斜角度よりも大きくする第1支持部材70と、下段の予備苗載台38cの上方傾斜角度を中段の予備苗載台38bの上方傾斜角度よりも小さくする第2支持部材71を第1移動リンク部材39aと第2移動リンク部材39bにそれぞれ取り付ける。
こうして、中段のステー37bを基部側から端部側に向けて上方傾斜させると共に、下段のステー37cを中段のステー37bよりも緩やかな傾斜角度で基部から後端部に向けて上方傾斜させる。また、中段のステー37bよりも上段のステー37aの基部側から端部側に向けて中段のステー37bよりも急な傾斜角度で上方に傾斜させる。
【0061】
上記構成により、予備苗載台38a,38b,38cが前後方向に広げてほぼ水平状態(非作用状態)としたとき、図15に予備苗載台38a,38b,38cの側面図の模式図を示すように、図15(a)に示す予備苗載台38a,38b,38cの機体内側はほぼ同じ高さとなるが、図15(b)に示す機体外側は後ろ側へ向かうほど下方に位置するため、圃場の凹凸等で機体が前傾しても苗が前方に向かって移動することを防止できる。 さらに、予備苗載台38a,38b,38cの基部側も略同じ高さとなるので、予備苗載台38a,38b,38cの基部側に沿って苗を移動させるとスムーズに苗を前側から後ろ側に移動させることができるので、作業能率が従来より向上する。
【0062】
7条植え田植機の予備苗載台の左右バランスを取る構成について図16の正面図により説明する。
操縦者から見て進行方向に向かって左側には3段の予備苗載台38a,38b,38cを設ける。この予備苗載台38a,38b,38cの中央の予備苗載台38bが機体に固定されており、上下段の予備苗載台38a、38cが平行リンク39a,39b,39c(図5参照)により中央段の前後に移動可能して、3つの予備苗載台38a,38b,38cをほぼ一段として広げられる構成にしたものである。右側には4段の補助予備苗載台68a〜68dを設けている。
【0063】
従来の7条植の田植機の予備苗載台は左右それぞれ4段であり計8段の予備苗載台とすることで左右バランスを取っているが、図16の田植機では3段の予備苗載台38a,38b,38cは、平行リンク39a,39b,39c等の構成部品があるため従来の回動式の予備苗載台よりも予備苗載台自体の重量が重くなってしまう。7条植えの田植機の右側の補助予備苗載台68a,68b,68c,68dに対して、左側の3段の予備苗載台38a,38b,38cが重いので機体の左右バランスが良くなり、安全性が保たれている。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は田植機の苗植付部を簡易な構成とすることができ利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0065】
1 施肥装置付き乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 粉粒体繰出し装置(施肥装置) 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース 20 エンジン
21 ベルト伝動装置 23 HST
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27a 第1ロータ 27b 第2ロータ
28 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 座席 32 フロントカバー
34 ハンドル 35 フロアステップ
36 リヤステップ
37a,37b,37c 第1〜第3ステー
37aa,37ba,37ca ピン
38a,38b,38c 第1〜第3予備苗載台
39a,39b,39c 第1〜第3移動リンク部材
40 上リンク 41下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸
45a,45b,45c,45d 第1〜第4補助リンク
46 昇降油圧シリンダ
47a,47b,47c,47d,47e,47f ストッパ
47aa,47ba,47ca,47da,47ea,47fa 取付孔
47ab,47bb,47cb,47db,47eb,47fb 受け孔
47ac,47bc,47cc,47dc,47ec,47fc 切欠部
47bd,47dd 受け溝
47c1,47e1 連動アーム 48 線引きマーカ
49a,49b,49c,49d,49e,49f スプリング
50 伝動ケース 51 苗載台
51a 苗取出口 51b 苗送りベルト
52 苗植付装置 53 ブロア用電動モータ
55 センターフロート 56 サイドフロート
58 ブロア 59 エアチャンバ
60 肥料ホッパ 61 繰出部
62 施肥ホース 65苗植付部支持枠体
65a 支持ローラ 66 支柱
68a,68b,68c,68d 補助予備苗載台
70 第1支持部材 71 第2支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行車体(2)と、該走行車体(2)の後部に昇降可能に連結された苗を圃場に植え付けるための苗植付部(4)と、走行車体(2)に配置された予備の苗を載置する複数の予備苗載台(38a,38b,38c)と、複数の予備苗載台(38a,38b,38c)の各予備苗載台(38a,38b,38c)に回動自在にそれぞれ連結して各予備苗載台(38a,38b,38c)を上下に重複した状態と、前後方向に展開した状態とに操作可能にした複数の移動リンク部材(39a,39b,39c)とを備えた苗移植機において、
各移動リンク部材(39a,39b,39c)にそれぞれ接続して、各予備苗載台(38a,38b,38c)を支持する支持部材(37a,37b,37c)と、
各支持部材(37a,37b,37c)の前側と該前側に対して偏倚した後側に、苗箱の移動を規制する作用状態と苗箱の移動を妨げない非作用状態に切替自在にそれぞれ配置した前側と後側の規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)と、
を備えたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
各支持部材(37a,37b,37c)の前後の外周縁部に突起体(37aa,37ba,37ca)をそれぞれ設け、
各規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の基部に、支持部材(37a,37b,37c)に摺動自在になる取付孔(47aa,47ba,47ca,47da,47ea,47fa)と該取付孔(47aa,47ba,47ca,47da,47ea,47fa)の周囲に前記支持部材(37a,37b,37c)の突起体(37aa,37ba,37ca)が入り込む少なくとも2つの受け孔(47ab,47bb,47cb,47db,47eb,47fb)をそれぞれ形成し、
各規制部材(47a,47b,47c,47d,47e,47f)の端部に各支持部材(37a,37b,37c)の径とほぼ同径の切欠部(47ac,47bc,47cc,47dc,47ec,47fc)をそれぞれ形成した
ことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前後一対の隣接する規制部材(47b,47c及び47d,47e)の中の一方の規制部材(47b,47d)の取付孔(47ba,47da)と切欠部(47bc,47dc)との間にそれぞれ受け溝(47bd,47dd)を形成し、
前後一対の隣接する規制部材(47b,47c及び47d,47e)の中の一方の規制部材(47c,47e)の取付孔(47ca,47ea)と切欠部(47cc,47ec)との間にそれぞれ前記受け溝(47bd,47dd)が入り込む連動突起体(47c1,47e1)をそれぞれ設け、
前記連動突起体(47c1,47e1)の径をそれぞれ対応する前記受け溝(47bd,47dd)の幅より小さく
構成したことを特徴とする請求項1または請求後2の苗移植機。
【請求項4】
各支持部材(37a,37b,37c)の基部側を機体にそれぞれ片持ち支持させ、かつ各支持部材(37a,37b,37c)を基部側から端部側に向けた上方傾斜させ、さらに下段側より上段側ほど支持部材(37a,37b,37c)の上方への傾斜角度をゆるやかにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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