説明

作業用ライト

【課題】従来の発光ダイオードを光源とした作業灯においては、発光ダイオードの光は指向性が高く高照度であるため、透明のケースを使用した場合に作業者の視界に光線が入ると残像を引き起こし、作業続行がしばらくの間困難になるという問題があった。
【解決手段】光源として発光ダイオード3を用いた作業用ライト8において、光透過率を55%〜65%の範囲に調整したケース1を使用し、駆動回路7で照度を三段階に調整できるようにして、作業者の目に残像が残り難くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明を必要とする夜間あるいは昼間でも暗く入り組んだ場所や狭い場所などにおいて、容易に持ち運びができ、使用できる作業用ライトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、「ハンドランプ」と称する可搬式の作業用灯具は光源として白熱電球を用いていたが、蛍光灯と比べ寿命が短い点や明るさが劣る点などから、近年では光源として蛍光灯が用いられるようになってきた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
更に最近では、入り組んだ場所や狭い場所でも都合よく使用できるように本体を小型化できる発光ダイオードを光源とした作業灯も普及してきた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3024100号
【特許文献2】特許第3159382号
【特許文献3】実用新案登録第3084272号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、最近普及してきた発光ダイオードを光源とした作業灯においては、ケースを透明にしている物が多く、例えば上述の特許文献3では透明(ガラス)もしくは透明に近い(合成樹脂)ケースを使用しており、このような場合発光ダイオードは光の指向性が高く高照度であるため光線が視界に入ると作業者の目に残像(光源から目をそらしても光源の形状が視覚に残り対象物と重なって見えてしまい、対象物が見え難くなること)を引き起こし、作業続行がしばらくの間困難になるという問題があった。
本発明は、このような問題を解決しようとするものであり、ケースの光透過率を調整することで発光ダイオードの光線がケースを透過する割合を減少させ、且つ、発光ダイオードの照度を調整できるようにすることで、作業者の目に残像が残り難くした作業用ライトを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するためにケースは光透過率を55%〜65%の範囲内に調整したものを用い、且つ、発光ダイオードの照度(明るさ)は駆動回路を用いて最小出力・中間出力・最大出力の三段階に調整できるようにして、作業者の目に残像が残り難い作業用ライトを実現した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の作業用ライトは、光透過率を55%〜65%の範囲内に調整したケースを使用し、発光ダイオードの照度を三段階に調整できるようにしたことで、作業者の目に残像が残り難くなり作業続行が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態を示す作業用ライトの側面断面図
【図2】本発明の実施形態を示す作業用ライトの正面断面図
【図3】本発明の残像認識時間の測定方法を示す図
【図4】本発明の明るさの強弱の比較方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施形態を、図1と図2を用いて説明する。
複数個の発光ダイオード3と駆動回路7やスイッチ6を1枚のプリント基板2に実装(実装とはプリント基板に電子部品を半田付けにより接続、固定した状態)し両端開口で円筒状のケース1内に収納し、そのケース1の一端をキャップ18で塞ぎ、他端には持ち手4をはめ込み、電源供給ケーブル5を持ち手4の一端に空けた孔からケース1内に挿入して駆動回路7に接続し複数個の発光ダイオード3が点灯するようにした。
【0010】
駆動回路7は、マイクロコントローラ(制御用集積回路)、コンデンサ、チップ抵抗器などの電子部品で構成され、交流電源を直流電源に変換する整流回路と照度調整回路からなり、照度調整回路による照度調整方法は、複数個の発光ダイオード3に加える電圧をそれぞれ最大出力で18.5V、中間出力で15.2V、最小出力で13.0Vになるようにした3つの回路に切り替えることにより、三段階で照度を調整できるようにしたものである。
【0011】
スイッチ6はモメンタリー方式を使い、駆動回路7に実装されたスイッチ6を押す(ここでの「押す」とはスイッチ6を「押して離す」の一連動作をいう)と複数個の発光ダイオード3が点灯もしくは消灯するように構成されている。消灯の状態からスイッチ6を一度押すと複数個の発光ダイオード3が最大出力(第一段階)の照度で点灯し、消灯の状態から二度スイッチ6を押すと複数個の発光ダイオード3が中間出力(第二段階)の照度で点灯する。また消灯の状態から三度スイッチ6を押すと複数個の発光ダイオード3が最小出力(第三段階)の照度で点灯し、そこで更にスイッチ6を一度押すと複数個の発光ダイオード3が最大出力の照度で点灯する状態に戻る。なお、どの点灯段階からでもスイッチ6を1秒以上長押しすると複数個の発光ダイオード3が消灯する。
【実施例】
【0012】
ケース無しの状態で、長手方向に2列に並べた複数個(40個、1列20個)の発光ダイオード3を中間出力で点灯させた時の照度を照度計・欣宝瑞機器社製LX1010Bで測定したところ5700Luxあった。これを光透過率100%とした。
【0013】
ケース1は市販されている両端開口の円筒状でほぼ透明なポリカーボネート(ZEHAO社製の商品名ZH−A−500)を使用し、これをケースAとして、更に市販されている厚さ0.2mmで光透過率約94%のポリプロピレンのシート(アスクルスタンダードクリアホルダー)を短冊状に切断したシート16を、ケース1の発光面9側(発光ダイオードの光線がポリカーボネートを透過する側)の表面をすべて覆うように複数枚重ね合わせ、発光面9とは反対側のケース1の表面すなわち裏面10側で粘着テープ17によりケース1に接着固定してケースB〜Gを作製した。
【0014】
なおシート16の1枚の光透過率は、ケースAを使用して作製した作業用ライト8を中間出力で点灯させ、発光面9側の表面全てをシート16(1枚)で覆った時と覆っていない時の照度を照度計・欣宝瑞機器社製LX1010Bを使い測定し、その結果得られたシート16(1枚)で覆った時の照度値4900Luxと覆っていない時の照度値5200Luxとから計算し求めた。すなわち、シート16(1枚)の光透過率は4900/5200≒0.9423≒94%となった。
【0015】
また両端開口の円筒状でほぼ透明なポリカーボネート(ZEHAO社製の商品名ZH−A−500)より光透過率の低いポリカーボネート(ZEHAO社製の商品名ZH−A−506)単体を用いてケースHとした。
【0016】
作製したケースB〜Gと既成のケースAとケースHを用いて作業用ライト8を組み立て、複数個の発光ダイオード3を中間出力で点灯させた時の照度を、照度計・欣宝瑞機器社製LX1010Bを使い測定し、その時の値をケース無しの時の照度値5700Luxで割った値をそれぞれ各ケースの光透過率とした。その値を表1にまとめた。
【表1】

【0017】
残像認識時間の測定と明るさの強弱の比較は以下の様に行った。
・被験者:4名(成人男子)
・残像認識時間の測定:図3を用いて説明する。
窓の無い暗室において被験者13を椅子11に座らせ、被験者13から前方1m離れた 場所に作業用ライト8の発光面9を被験者13に向け、且つ、被験者13の目の高さと ほぼ同じになるようにスタンド12を用いて作業用ライト8を垂直に固定した後、作業 用ライト8を中間出力で点灯させ、この作業用ライト8を被験者13に1秒間直視して もらい消灯後残像が見えている時間(残像認識時間)をケース無しとケースA〜Hを使 い、それぞれ測定した。
・明るさの強弱の比較:図4を用いて説明する。
同じく暗室において被験者13を椅子11に座らせ、机15の上に置いた書類14から 上方1m離れた場所に作業用ライト8の発光面9を書類14に向けた状態でスタンド1 2を用いて作業用ライト8を固定し、ケース無しとケースA〜Hを使い、それぞれ作業 用ライト8を中間出力で点灯させた時に書類14を被験者13が読んで感じる明るさの 強弱の比較を行った。
【0018】
表2に、ケースA〜Hと残像認識時間との関係を示す。
なお、ここで「無し」とは透過率100%(ケース無し)の時のデータである。
【表2】

【0019】
表3にケースA〜Hと作業用ライト8を点灯させた時に感じる明るさの強弱との比較を示す。なお、「無し」とは透過率100%(ケース無し)の時のデータである。
【表3】

【0020】
以上の測定結果から、表2よりケースBすなわち光透過率85%以下のケースを用いた時に残像が残る時間が1分以内となり、表3よりケースCすなわち光透過率75%以上では作業用ライトとしては照度がとても明るい(眩しい)と感じる人が出始め、ケースFすなわち光透過率45%以下では作業用ライトとしては照度が暗いと感じる人が出始めることが分かった。これにより個人差があるが、光透過率は55%〜65%が適合範囲と思われる。
【0021】
よって、作業用ライト8のケース1の光透過率は発光ダイオード3の中間出力状態で55%〜65%とし、更に最大出力と最小出力の照度調整で個人差をカバーできる様にした。
【符号の説明】
1 ケース
2 プリント基板
3 発光ダイオード
4 持ち手
5 電源供給ケーブル
6 スイッチ
7 駆動回路
8 作業用ライト
9 発光面
10 裏面
11 椅子
12 スタンド
13 被験者
14 書類
15 机
16 ポリプロピレンのシート
17 粘着テープ
18 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の発光ダイオードと該発光ダイオードの照度を調整する駆動回路とを透明性を有するケース内に収納し、該ケースの一端に持ち手を取り付けたことを特徴とする作業用ライト。
【請求項2】
前記透明性を有するケースは、光透過率が55%〜65%の範囲内にあるポリカーボネートであることを特徴とする請求項1記載の作業用ライト。
【請求項3】
前記駆動回路による前記複数個の発光ダイオードの照度は三段階で調整できるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業用ライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−43761(P2012−43761A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192877(P2010−192877)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(505396970)安曇精工株式会社 (6)
【Fターム(参考)】