説明

作業用緊縛具

【課題】対象物の柱状部への着脱、緊縛および作業への移行、緊縛解除が簡易で、嵩低く、取り扱い易い安全なものとする。
【解決手段】一端部に連結部3を持ち、この連結部3から他端側に折り返し部4をなして延びる緊縛用紐条体5と、緊縛用紐条体5の連結部3側と折り返し部4との間の1か所以上で捻って形成された1つ以上のクロスした重なり部6を、緊縛用紐条体5が長手方向に移動できるように包み込み前記重なり状態を保持することにより、緊縛用紐条体5を前記重なり部6で区画し緊縛用紐条体5の長手方向の動きで拡縮し、通された柱状部2aを緊縛、緊縛解除する緊縛通し部を形成した、1つ以上の保持パッド8と、を備えたものとして、上記の目的を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の柱状部を紐条体で緊縛して対象物の、主として上げ下げ、持ち運び、場合によっては引き動かしなどの作業に供する作業用緊縛具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンで対象物を吊上げ、持ち運び、吊下げるのに、ワイヤ、ベルト、ロープなどの紐条体を掛けて安全に取り扱えるようにする作業が、いわゆる玉掛け作業などとして広く知られている。特に柱状対象物に対しては、ワイヤを電柱に上下に巻き掛け、吊上げ力またはおよび対象物の重力によって巻き締まるようにする手法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、吊上げ力が固定挟持アーム上から揺動支持アームに機械的に伝わってボンベの胴部丈端付近を挟持し、吊上げられ、トラック荷台への積み下ろしができるようにしたボンベの挟持吊下具も知られている(例えば、特許文献2参照。)。また、別に、幹線ケーブルを配線するのに幹線ケーブルを吊上げるのに用いるワイヤーロープで筒状に編まれたワイヤーネットを用いることも知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平9−263384号公報
【特許文献2】特開平9−20492号公報
【特許文献3】特開2004−135420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、柱状部を持った対象物には、ガスボンベなどの重量物であるが、電柱などに比して比較的短いものもある。このような柱状対象物では、特許文献1に記載の玉掛け技術を採用しようとすると、ワイヤの巻き掛け位置間が非常に短いこと、また、ガスボンベの表面は金属面で、固く滑りやすいこと、巻き締め部にワイヤが屈曲した扱き部を有していること、などが原因して、巻き締まりにくく滑り落ちる危険性は免れ切れず、人の身近で取り扱うには向かない。また、巻き付け回数や巻き掛け箇所を増大するには作業が煩雑になるし、それでも、初期の緊縛状態を吊り作業の開始によっては得にくく、吊り作業前に人為的に緊縛状態への引き締めを行っておくことが必要になるが、その引き締めもワイヤの一端側からワイヤ全体に一挙に及ぼすのは困難で、部分、部分の引き締めを順次に行っていくしかなく、作業が勢い面倒なものになる上、その緊縛状態をワイヤのスプリングバックに打ち勝って維持したまま吊り作業に移行するには引き締め力を掛け続ける必要があるといった課題がある。
【0004】
特許文献2に記載の挟持具は、吊り上げ機器に連結したまま繰り返し使用できる便利さはあるが、部品点数、可動部品の多い、重く高価なものとなり、簡易に持ち運べないので吊り上げ機器に連結したままの専用使用になりやすいといった課題がある。
【0005】
特許文献3に記載のワイヤーネットでは、着脱に不便であるし、重量物に対応する安心、安全な把持力を実現しにくく実用的でないという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、対象物の柱状部への着脱、緊縛および作業への移行、緊縛解除が簡易で、嵩低く、取り扱い易い安全な作業用緊縛具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の作業用緊縛具は、対象物の柱状部を紐条体で緊縛して対象物の上げ下げ、持ち運び、引き動かしなどの作業に供する作業用緊縛具であって、一端部に上げ下げのための把持または他との連結に供する連結部を持ち、この一端部の連結部から他端側に折り返し部をなして延びる緊縛用紐条体と、緊縛用紐条体の連結部側と折り返し部との間の1か所以上で捻って形成された1つ以上のクロスした重なり部を、緊縛用紐条体が長手方向に移動できるように包み込み前記重なり状態を保持することにより、緊縛用紐条体を前記重なり部で区画し緊縛用紐条体の長手方向の動きで拡縮し、通された柱状部を緊縛、緊縛解除する緊縛通し部を形成した、1つ以上の保持パッドと、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような構成では、緊縛用紐条体の折り返し部と1つの保持パッドとの間に、少なくとも1つの緊縛通し部ができ、連結部側を持ち上げると折り返し部が下となって全体が垂れ下がる自然な伸び状態になる。この伸び状態で緊縛通し部は、柔軟度、重力、保持パッドにクロスした重なり状態に保持されていることによる膨らみ保形に対する変形抵抗などの相互関係に見合って、真っ直ぐか、保持パッドを境に両側が屈曲して安定する。これによって、緊縛通し部は、対象物の柱状部に余裕のある大きさで嵌め合わせても、自然な伸び状態への安定力に見合った力で柱状部の外面に、折り返し部側および連結部側の2か所が接触するか、引き伸ばしによって接触する部分となる。ここで、連結部が反折り返し部側に引かれると、折り返し部および保持パッドは柱状部表面上で接触により移動に抵抗を示すが、保持パッドは緊縛用紐条体の長手方向の移動は制限しないので、連結部側の引っ張り力は対象物の柱状部に接触している折り返し部に及ぶ。このために、緊縛用紐条体は、折り返し部および保持パッドの柱状部への圧着および摩擦力を高めながら、従って、折り返し部および保持パッドの柱状部表面に対する滑りを低減されながら連結部側に緊張して絞られ緊縛通し部が縮小していく。これにより、緊縛用紐条体は折り返し部、保持パッドが圧着の基点として柱状部に対する締め付け限界に一挙に達して緊縛し、連結部側に働く作業力を滑りなく対象物に伝達できる状態になる。なお、緊縛用紐条体はロープ、ベルト、ワイヤの1つでよいが、ロープ、ベルトはワイヤに比して腰が弱く、対象物の柱状部外面に馴染ませやすく緊縛に有利であり、ベルトであると対象物の柱状部への接触面積、従って、緊縛時の摩擦抵抗による滑り止め作用、作業力の伝達作用を高めるのに有利である。
【0009】
上記において、さらに、連結部は、緊縛用紐条体の折り返し部から延びた両端部、この両端部どうしのループ繋ぎ部、前記両端部またはループ繋ぎ部に繋いだループ部、の少なくとも1つであることを特徴とすることができる。
【0010】
このような構成では、上記に加え、さらに、連結部が、緊縛用紐条体の折り返し部から延びた両端部であれば、構成が単純化し、両端部どうしのループ繋ぎ部であれば、そのままでも引っ掛け方式の連結ができるし、両端部またはループ繋ぎ部に繋いだループ部であれば、引っ掛け方式の連結をするのに適した形態としやすい。
【0011】
上記において、さらに、折り返し部側の緊縛通し部および保持パッドのうちの、少なくとも緊縛通し部に、対象物との間の滑りを防止する滑り防止部を設けたことを特徴とすることができる。
【0012】
このような構成では、上記に加え、さらに、折り返し部側の緊縛通し部が対象物との間の滑り止め作用が連結部側への引っ張りによる緊縛の起点となるところ、そこに設けられた滑り止め部が対象物に引っ張り初期から接触して、より早期に、引っ張り初期から、滑りを防止し、緊縛状態がより迅速かつ確実に得られるようになる。それには、折り返し部側の緊縛通し部のうちの、さらに緊縛の起点となる折り返し部側一部とするのが、折り返し部側の緊縛通し部自体の引っ張りによる縮小を邪魔しないので好適である。
【0013】
上記において、さらに、保持パッドは、緊縛用紐条体の重なり部を個別に通して保持する2つの紐通し部を持っていることを特徴とすることができる。
【0014】
このような構成では、上記に加え、さらに、保持パッドは、緊縛用紐条体の重なり部を個別に通して保持する2つの紐通し部を形成していることを特徴とすることができる。
【0015】
このような構成では、上記に加え、さらに、保持パッドが2つの紐通し部を有して、緊縛用紐条体の重なり部を個別に通すことによって、緊縛通し部を拡縮させるときの緊縛用紐条体の重なり部どうしが、単独での移動速度の倍の相対速度で擦れ合うのを防止することができる。
【0016】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明および図面によって明らかになる。本発明の各特徴は、それ自体単独で、あるいは可能な限り複合して種々な組み合わせで採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の作業用緊縛具によれば、緊縛用紐条体は、折り返し部と1つの保持パッドとの間に少なくとも1つある緊縛通し部を、対象物の柱状部に余裕のある大きさで嵌め合わせて連結部を反折り返し部側に引かれれば、折り返し部および1つ以上の保持パッドの柱状部の外面への接触圧を増すか、早期に接触した後接触圧を増すかして、柱状部面上での移動抵抗を増すのに併せ、緊縛用紐条体の全体では、折り返し部での移動抵抗位置を起点に、途中で移動抵抗を示す保持パッドに対しては自由に移動して連結側に緊張し緊縛通し部が絞られ縮小するので、緊縛用紐条体が作る1つ以上の緊縛通し部を対象物の柱状部よりも大きくして簡易に装着できるし、その後連結部を反折り返し部側に作業力にて引くだけで、初期滑りがあるにしても抜け外れない程度に十分に抑え、容易かつ迅速に緊縛状態として上げ下げや持ち運び、引き動かしといった作業が安全、確実に達成できる。また、作業後は、作業力の解除によって緊縛用紐条体は緊張状態が緩むし、緊縛通し部は拡張が自由になるので対象物から簡単に外せる。従って、作業時間が短縮する。さらに、作業用緊縛具は構造が簡単で安価に提供できるし、嵩低く取り扱い易いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の作業用緊縛具に係る実施の形態について、図を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載内容を限定するものではない。
【0019】
図1〜図4に示し、図5に使用例を示す本実施の形態の作業用緊縛具1は、図5に示すガスボンベのような対象物2の柱状部2aを紐条体3で緊縛して対象物2の上げ下げ、持ち運び、引き動かしなどの作業に供するものである。このために、作業用緊縛具1は、一端部に上げ下げのための把持または他との連結に供する連結部3を持ち、この一端部の連結部3から他端側に折り返し部4をなして延びる緊縛用紐条体5と、この緊縛用紐条体5の連結部3側と折り返し部4との間の1か所以上で捻って形成された1つ以上のクロスした重なり部6を、緊縛用紐条体5が長手方向に移動できるように包み込み前記重なり状態を保持することにより、緊縛用紐条体5を前記重なり部6で区画し緊縛用紐条体5の長手方向の動きで拡縮し、通された柱状部2aを緊縛、緊縛解除するほぼ輪状をした緊縛通し部7を形成した、1つ以上の保持パッド8と、を備えている。
【0020】
ここに、連結部3は、図示しないが、緊縛用紐条体5の折り返し部4から延びた両端部、この両端部どうしの図1に示すような緊縛用紐条体5をループ化するループ繋ぎ部11、または、前記両端部またはループ繋ぎ部11に繋いだループ部12、の少なくとも1つとすることができる。連結部3が、緊縛用紐条体5の折り返し部4から延びた両端部であれば、構成が単純化し、両端部どうしのループ繋ぎ部11であれば、そのままでも引っ掛け方式で作業機器側との連結ができるし、両端部またはループ繋ぎ部11に繋いだループ部12であれば、引っ掛け方式の連結をするのに適した形態としやすい。図示例では緊縛用紐条体5よりも強度のある素材で形成し、さらに作業機器のフッくなどと連結し接触し合う範囲にはさらに補強カバー13で覆ってある。緊縛用紐条体5のループ繋ぎ部11は、その折り返し部4側に隣接する保持パッド8との間にも疑似緊縛通し部7を形成する。
【0021】
なお、緊縛用紐条体5はロープ、ベルト、ワイヤの1つでよいが、ロープ、ベルトはワイヤに比して腰が弱く、対象物2の柱状部2a外面に馴染ませやすく緊縛に有利であり、ベルトであると対象物2の柱状部2aへの接触面積、従って、緊縛時の摩擦抵抗による滑り止め作用、作業力の伝達作用を高めるのに有利である。図示例では、樹脂ベルト、特に強力なポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニロンなどよりなる織ベルトがよく、強度的には平綾袋綴が適している。作業負荷に応じ材質、編織組織を選択すればよい。これに対応して、ループ部12は緊縛用紐条体5の厚みの倍程度のものを用いて、緊縛用紐条体5の両端部を縫い合わせてループ繋ぎ部11とするのに併せ、ループ部12の折り返し両端部を同時にベルとの編織糸に比し強靭な縫い糸14により縫合し、ループ部12の前記縫い合わせ部から折り返し部側は幅方向に折り返した二重構造として縫い合せ強度アップ、ボリュームアップを図っている。その際、ループ部12の両端部の一方、具体的には繋ぎループ部11を図5に示すように対象物2に嵌め合わせるのに、外側になる端部は内側に折り返して上向きとなった折り返し端部12aを含め縫い糸14にて同時に縫合し、縫合部の増厚による強度アップと同時に、端部に対する包み込み作用によりほつれ防止も図っている。補強カバー13は一重織の薄いものとしてループ部12の折り返し域に被せて縫い付け、ループ部12に直接外力が作用しないようにしている。
【0022】
図1、図5に示す例のクロスした重なり部6は、繋ぎループ部11を持ってループになった 緊縛用紐条体5の途中2か所に形成してある。これに伴い各重なり部6に保持パッド8が設けられている。この結果、緊縛通し部7は、連結部3と折り返し部4との間を2つの重なり部6(保持部8)により区切られて3つ形成されている。保持パッド8は、クロスした重なり部6の重なり状態を保持し、このクロスして重なり合う緊縛用紐条体5、5の図1に矢印を付して示す長手方向に移動できるようにするのに、クロスして重なる緊縛用紐条体5、5をそれが長手方向に移動できるように通す紐通し部9を形成して重なり部6を包み込む形態をなしている。また、保持パッド8は、重なり部6を一方向、具体的には折り返し部4と連結部3との繋がり方向に跨ぐように包み込んでいるが、これに直交する一方向に跨いで包み込む形態とすることができるし、それら両方向に跨いで包み込む形態としてもよい。保持パッド8の折り返し部4と連結部3との繋がり方向に跨ぐ形態では、クロスして重なり合う緊縛用紐条体5、5同士の保持パッド8から前記繋がり方向に直交する方向に引き出される側での離接の自由度を高めるのに有利である。
【0023】
以上のような作業用緊縛具1は、緊縛用紐条体5の折り返し部4と1つの保持パッド8との間に、少なくとも1つの緊縛通し部7ができるが、図示例では3つ形成されている。連結部3側を持ち上げると図1に示すように折り返し部4が下となって全体が垂れ下がる自然な伸び状態になる。しかし、向きを問わないそのような伸び状態で緊縛通し部7は、柔軟度、重力、保持パッドにクロスした重なり状態に保持されていることによる膨らみ保形に対する変形抵抗などの相互関係に見合って、真っ直ぐか、図1に示すように保持パッド8を境に両側が屈曲して安定する。図1に示すような屈曲形態は、緊縛用紐条体5が平坦なベルトよりなり、面方向の腰は弱く柔軟であるが、幅方向には腰がつよく屈曲しにくい形態と、保持パッド8によるクロスした重なり部を扁平に保持して各緊縛通し部7に外側に図1に示すような膨らみ、丸みを持たせることに起因している。
【0024】
これによって、緊縛通し部7は、保持パッド8内での緊縛用紐条体5の長手方向の移動を伴う拡縮操作で、対象物2の柱状部2aに対し余裕のある大きさ、換言すれば嵌め易い大きさに調節して嵌め合わせても、自然な伸び状態への安定力に見合った力で柱状部2aの外面に、折り返し部側および連結部側の2か所が接触するか、引き伸ばしによって接触する部分となる。図示したベルトよりなる緊縛用紐条体5の場合、図5に示すように連続した3つの緊縛通し部7が対象物2の柱状部2aにジグザグの向きで緩く嵌まり合って連結部3から垂れた状態では、特に、最下の緊縛通し部7が全くフリーな片持ち状体で折り返し部4が垂れて、その部分の幅方向が図2に示し、図5に破線で示すような低い傾斜の安定姿勢に戻ろうとして嵌め合わせ当初より柱状部2aの表面に単に当接するというよりは、ある程度の接触圧を持って接触する。しかし、他の段の緊縛通し部7もこれにほぼ同時に、あるいは少し遅れて同等の挙動を示す。
【0025】
ここで、連結部3が反折り返し部4側に引かれると、折り返し部4および保持パッド8は柱状部表面上で接触により移動に抵抗を呈するが、保持パッド8は緊縛用紐条体5の長手方向の移動は制限しないので、連結部3側の引っ張り力は対象物2の柱状部2aに接触している折り返し部4に及ぶ。このために、緊縛用紐条体5は、折り返し部4および保持パッド8の柱状部2aへの圧着および摩擦力を高めながら、従って、折り返し部4および保持パッド8の柱状部2a表面に対する滑りを低減されながら連結部3側に緊張して絞られ緊縛通し部7が縮小していく。この縮小は保持パッド8の柱状部2a表面への圧着が折り返し部4側から連結部側に順次強まる実情に照らせば、最下緊縛通し部7先行し、上段側へと移行する。この過程を経て、緊縛用紐条体5は折り返し部4、保持パッド8が圧着の基点として柱状部2aに対する締め付け限界に一挙に達して柱状部2aを緊縛し、連結部4側に働く作業力を滑りなく対象物2に伝達できる状態になる。
【0026】
この結果、緊縛用紐条体5は、折り返し部4と1つの保持パッド8との間になくとも1つある緊縛通し部7を、対象物2の柱状部2aに余裕のある大きさで嵌め合わせて連結部3を反折り返し部4側に引かれれば、折り返し部4および1つ以上の保持パッド8の柱状部2aの外面への接触圧を増すか、早期に接触した後接触圧を増すかして、柱状部2a面上での移動抵抗を増すのに併せ、緊縛用紐条体5の全体では、折り返し部4での移動抵抗位置を起点に、途中で移動抵抗を示す保持パッド8に対しては自由に移動して連結側に緊張し緊縛通し部が絞られ縮小するので、緊縛用紐条体5が作る1つ以上の緊縛通し部7を対象物2の柱状部よりも大きくして簡易に装着できるし、その後連結部3を反折り返し部4側に作業力にて引くだけで、初期滑りがあるにしても抜け外れない程度に十分に抑え、容易かつ迅速に緊縛状態として上げ下げや持ち運び、引き動かしといった作業が安全、確実に達成できる。また、作業後は、作業力の解除によって緊縛用紐条体5は緊張状態が緩むし、緊縛通し部7は拡張が自由になるので対象物2から簡単に外せる。従って、作業時間が短縮する。さらに、作業用緊縛具1は構造が簡単で安価に提供できるし、嵩低く取り扱い易いものとなる。
【0027】
なお、作業方法としては、作業用緊縛具1の各緊縛通し部7を対象物2の柱状部2aに嵌め合わせた後、連結部3を作業機器に連結して引き揚げなどの作業力を与えるだけで、緊縛状態とし実作業に移れることもできる。それには、少なくとも折り返し部4が対象物2の柱状部2aの表面上である程度の滑り止め状態となることが必要である。
【0028】
これを保証するのに本実施の形態の作業用緊縛具1は、折り返し部4側の緊縛通し部7および保持パッド8のうちの、少なくとも緊縛通し部7に、対象物2との間の滑りを防止する滑り防止部21を設けている。これにより、折り返し部4側の緊縛通し部7が対象物2との間の滑り止め作用が連結部3側への引っ張りによる緊縛の起点となるところ、そこに設けられた滑り止め部11が対象物2に引っ張り初期から接触して、より早期に、引っ張り初期から、滑りを防止し、緊縛状態がより迅速かつ確実に得られるようになる。それには、折り返し部4側の緊縛通し部7のうちの、さらに緊縛の起点となる折り返し部4側一部とするのが、折り返し部側の緊縛通し部7自体の引っ張りによる縮小を邪魔しないので好適である。また、本実施の形態では、保持パッド8にも対象物2に対面する滑り止め部11を設けてあるので、保持パッド8も、緊縛用紐条体5の連結部3側への引っ張りに際して、緊縛用紐条体5の全体の緊張に先立って対象物2の表面に圧着して滑り止め作用を発揮しやすくなり、緊縛用紐条体5の緊張に伴う緊縛用通し部7の縮小作用を高めるので、より高い緊縛状態を、初期滑りを効果的に抑えてより迅速に得やすい。
【0029】
また、緊縛用紐条体5の連結部3に繋がる左右の各部分を絞り寄せる絞り輪15を移動できるように嵌め合わせてある。これにより、絞り輪15は、緊絞用紐条体5の連結部3との繋がり部が個別の端部であるか、ループ繋ぎ部であるかに関係なく、対向している保持パッド8との間に1つの緊縛通し部7を形成して対象物2の緊縛に寄与する。しかも、絞り輪15は、緊縛用紐条体5が作る緊縛通し部7を対象物2に嵌め合わせた後、緊縛用紐条体5を折り返し部4側に引き下げることで、換言すると、絞り輪15を対象物2に近づけるように緊縛用紐条体を扱き上げることで、緊縛通し部7を対象物2に嵌め合わせただけでは対象物2との間に残る余裕分を、簡単に引き絞って緊縛状態に近い準緊縛状態にすることができる。これにより、連結部3に作業力を働かせれば対象物が重量物であるほど高い作業抵抗を示してほぼ即時に緊縛状態に達して作業を即刻開始できる利点がある。
【0030】
このような高い緊縛状態であっても、引っ張り力、作業力を解除すれば緊縛状態は解けるし、緊縛通し部7を一カ所に近寄せるなどして、緊縛用紐条体5の図5に示すような傾斜状態を緩和ないしは水平に近づけることで、対象物2の柱状部2aとの間に余裕のある嵌り合い状態に瞬時に戻るので、取り外しに手間は掛からない。
【0031】
さらに、本実施の形態の保持パッド8の紐通し部9は、図3、図4に示すように緊縛用紐条体5、5の重なり部を個別に通して保持する2つの紐通し部9a、9bをなしたものとしている。このように保持パッド8が2つの紐通し部9a、9bを有して、緊縛用紐条体5、5の重なり部を個別に通すことによって、緊縛通し部7を拡縮させるときの緊縛用紐条体5の重なり部どうしが、単独での移動速度の倍の相対速度で擦れ合うのを防止することができる。
【0032】
保持パッド8は、緊縛用紐条体5がベルト材よりなるのに合わせて、同じベルト材で形成してあり、3枚のベルト材8a〜8cを重ね合わせて強靭な縫い糸16により縫合することで形成している。縫合は、図3に示すように保持パッド8の上下において、上片および下辺に沿った縫合ラインを底辺として、内側に向けた三角形をなすライン状に行いっている。この縫合によって3枚のベルト材8a〜8cは上下端で強力に一体化される上、2つの紐通し部9a、9bに通した緊縛用紐条体5、5の緊縛通し部7を形成する側でのほぼ120°未満への寄り合いを防止し、緊縛通し部7に外側への膨らみ癖を与える保形機能を発揮するので、対象物2への嵌め合わせ作業が容易になる。また、緊縛用紐条体5のループ繋ぎ部11およびループ部12の縫い糸14による縫合において、緊縛用紐条体の両端部も緊縛通し部7側でほぼ120°の開き角度となるようにしている。
【0033】
また、滑り止め部11は、緊縛用紐条体5自体に編み込んだり、折り込んだりすることはできるが、本実施の形態では、生ゴムなどの摩擦度、耐久度の高い材料を貼着してある。貼着は接着によってもできるが、本実施の形態では、図3、図4に示すように、対象物2との摩擦を高めるために形成した凹凸摩擦面21bでの窪み部21aを利用して強靭な縫い糸17により縫合している。窪み部11aは、やや縦長な短冊形態を上下方向の中央部を横断する横長形態の滑り止め部21において、その上下2か所で長手方向に縦通するように形成された部分を利用しており、結果的に滑り止め部21の全長につき上下2か所で保持パッド8に縫合されている。
【0034】
因みに、本発明者等の実験によれば、緊縛用紐条体5に関し、ベルト材の厚さ2mm、幅50mm、長さ2500mm、保持パッド8に関し、ベルト材の厚さ2mm、高さ150mm、幅50mm、折り返し部4の滑り止め部21のゴム材に関し、厚さ4mm、凹凸のほぼU字状凹部の最深高さ2.5mm、凹凸摩擦面21aの表面凹凸ピッチ2mm、幅50mm、長さ200mm、保持パッド8の滑り止め部21のゴム材に関し、先のものと同種のもので、幅50mm、長さ100mmの条件において、荷重115kg(工業用の酸素ボンベ70kg+重り40kg、その他5kg)を掛けた結果、緊縛用紐条体5の全体に砂、水、オイルを塗付したいずれの場合にも、ボンべ外面に圧着した折り返し部4の位置にずれが生じなかった。
【0035】
また、工業用の酸素ボンベの中央部を境に折り返し部が向かい合、連結部が反対側に向く対称な装着状態にて、引っ張り力を100kg(約98.08N)、200kgf(約196.136N)、300kgf(約294.204N)、400kgf(約392.272N)、500kgf(約490.340N)と、段階的に負荷を上げて引っ張り試験に供したが、いずれの段階でも折り返し部の位置ずれは生じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の作業用緊縛具は、緊縛用紐条体よりなり、連結部とこの連結部から延びて形成する折り返し部との間に1つ以上形成されたクロスした重なり部を長手方向の移動ができるように保持する保持パッドと組み合されて、できた1つ以上の緊縛通し部が、対象物に嵌め合わせて、連結部を反折り返し部側に引き、また作業力を及ぼすだけで、緊縛用紐条体が対象物を緊縛し、以降連結部に作業力を働かせて、上げ下げ、持ち運び、引き動かしなどの作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る作業用緊縛具を自然な垂れ下がり状態で示す斜視図である。
【図2】同作業用緊縛具の下端部を示す正面図である。
【図3】同作業用緊縛具の緊縛用紐条体のクロスした重なり部とそれを通した保持具との関係を示す斜視図である。
【図4】同作業用緊縛具の緊縛用紐条体のクロスした重なり部とそれを通した保持具との断面図である。
【図5】同作業用緊縛具をガスボンベを対象物として吊上げに供する場合の嵌め合わせ状態および緊縛状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 作業用緊縛具
2 対象物
2a 柱状部
3 連結部
4 折り返し部
5 緊縛用紐条体
6 重なり部
7 緊縛通し部
8 保持パッド
9、9a、9b 紐通し部
11 ループ繋ぎ部
12 ループ部
13 補強カバー
14、16、17 縫い糸
15 絞り環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の柱状部を紐条体で緊縛して対象物の上げ下げ、持ち運び、引き動かしなどの作業に供する作業用緊縛具であって、
一端部に上げ下げのための把持または他との連結に供する連結部を持ち、この一端部の連結部から他端側に折り返し部をなして延びる緊縛用紐条体と、
緊縛用紐条体の連結部側と折り返し部との間の1か所以上で捻って形成された1つ以上のクロスした重なり部を、緊縛用紐条体が長手方向に移動できるように包み込み前記重なり状態を保持することにより、緊縛用紐条体を前記重なり部で区画し緊縛用紐条体の長手方向の動きで拡縮し、通された柱状部を緊縛、緊縛解除する緊縛通し部を形成した、1つ以上の保持パッドと、
を備えたことを特徴とする作業用緊縛具。
【請求項2】
連結部は、緊縛用紐条体の折り返し部から延びた両端部、この両端部どうしのループ繋ぎ部、前記両端部またはループ繋ぎ部に繋いだループ部、の少なくとも1つである請求項1に記載の作業用緊縛具。
【請求項3】
折り返し部側の緊縛通し部および保持パッドのうちの、少なくとも緊縛通し部に、対象物との間の滑りを防止する滑り防止部を設けた請求項1、2のいずれか1項に記載の作業用緊縛具。
【請求項4】
保持パッドは、緊縛用紐条体の重なり部を個別に通して保持する2つの紐通し部を形成している請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業用緊縛具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−228849(P2010−228849A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77188(P2009−77188)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(509086534)旭伸電設株式会社 (1)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】