説明

作業車のクローラ式走行装置

【課題】周長が変化するクローラベルトに対して適正な張力の付与が可能な作業車のクローラ式走行装置を提供する。
【解決手段】複数の転輪12を支持するトラックフレーム10と、トラックフレーム10の前後一側に設けた誘導輪と、前後他側に設けた駆動輪と、誘導輪と駆動輪と転輪12とに亘って巻回されたクローラベルト11と、トラックフレーム10の上方のクローラベルト11を上方に押圧するキャリアローラ13と、を備え、トラックフレーム10を支持する機体フレームに、キャリアローラ13と、キャリアローラ13をクローラベルト11の上方への張り方向に付勢する弾性体32とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車のクローラ式走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるコンバインにおけるクローラ式走行装置は、トラックフレームの前側に駆動輪が取付けられ、トラックフレームの後側にクローラベルトに対して緊張力を与える後方誘導輪が取付けられている。後方誘導輪は、前後にスライド調節可能に構成され、クローラベルトに対する緊張力を変更調節可能に構成されている。また、遊転輪の上方にクローラベルトを支持するキャリアローラが主フレームの側部フレームに取付けてある。このクローラ式走行装置では、脱穀装置、グレンタンク、刈取装置等を搭載する機体を、ローリング作動及びピッチング作動可能に構成してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−262134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クローラ式走行装置がローリング作動またはピッチング作動することで、クローラ式走行装置の高さが上下に変更されると、クローラベルトの周長が変化し、クローラベルトに大きな張力が掛かることや、反対にクローラベルトに緩みが生ずることがある。また、クローラの長期間の使用により、クローラに緩みが生ずることもある。クローラベルトに大きな張力が掛かるとクローラベルトに破損が生じる場合があり、クローラベルトに緩みが生じるとクローラの脱輪を引起す場合が考えられる。
【0005】
本発明は、周長が変化するクローラベルトに対して適正な張力の付与が可能な作業車のクローラ式走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業車のクローラ式走行装置の第2特徴構成は、複数の転輪を支持するトラックフレームと、前記トラックフレームの前後一側に設けた誘導輪と、前後他側に設けた駆動輪と、前記転輪と前記誘導輪と前記駆動輪とに亘って巻回されたクローラベルトと、前記トラックフレームの上方の前記クローラベルトを上方に押圧するキャリアローラと、を備え、前記トラックフレームを支持する機体フレームに、前記キャリアローラと、前記キャリアローラを前記クローラベルトの上方への張り方向に付勢する弾性体とを備えた点にある。
【0007】
〔作用効果〕本構成の如く、トラックフレームを支持する機体フレームに、クローラベルトを上方に押圧するキャリアローラと、キャリアローラをクローラベルトの上方への張り方向に付勢する弾性体とを備えると、クローラベルトの周長が変化した際に、クローラベルトの張力の変化をキャリアローラと弾性体により吸収することができる。
【0008】
例えば、機体に対してトラックフレームを下降させると、クローラ式走行装置の高さが高くなって、クローラベルトには緩みがなくなり、大きな張力が発生することがある。この場合、クローラベルトの張力は機体フレームに備えられた弾性体によって吸収されて、キャリアローラは機体下方に移動する。
また、例えば、機体に対してトラックフレームを上昇させると、クローラ式走行装置の高さは低くなり、クローラベルトには緩みが発生することがある。その他、クローラ式走行装置の長期間の使用によっても、クローラベルトに緩みが発生することがある。こういった場合には、キャリアローラをクローラベルトの上方への張り方向に付勢する弾性体がそのまま作用し、キャリアローラが上方移動することでクローラベルトの張力は増すこととなる。
【0009】
トラックフレームの前後一側に設けた誘導輪を用い、クローラベルトの張力の調整をすることも可能である。しかしながら、誘導輪を頂点とするクローラベルトの角度は通常小さいため、誘導輪はクローラベルトの反力を受け易く、誘導輪によってクローラベルトの張力を調整するには大きな弾性力が必要となることが多い。一方、キャリアローラの場合は、キャリアローラを頂点とするクローラベルトの角度は誘導輪の場合よりも通常大きい。このため、キャリアローラではクローラベルトの反力を受け難く、誘導輪よりも小さな弾性力でクローラベルトの張力の調整が可能となる。
【0010】
この結果、クローラベルトに対する過大な張力によるクローラ足回りの破損を防ぐことができ、また、クローラベルトの緩みに対しては適正な張力を付与することができ、クローラの脱輪を防ぐことができる。
【0011】
本発明に係る作業車のクローラ式走行装置の第2特徴構成は、複数の転輪を支持するトラックフレームと、前記トラックフレームの前後一側に設けた誘導輪と、前後他側に設けた駆動輪と、前記転輪と前記誘導輪と前記駆動輪とに亘って巻回されたクローラベルトと、前記トラックフレームの上方の前記クローラベルトを上方に押圧するキャリアローラと、を備え、前記トラックフレームに、前記キャリアローラと、前記キャリアローラを前記クローラベルトの上方への張り方向に付勢する弾性体とを備えた点にある。
【0012】
〔作用効果〕本構成の如く、トラックフレームに、クローラベルトを上方に押圧するキャリアローラと、キャリアローラをクローラベルトの上方への張り方向に付勢する弾性体とを備えると、クローラベルトの周長が変化した際に、クローラベルトの張力の変化をキャリアローラと弾性体により吸収することができる。
【0013】
例えば、機体に対してトラックフレームを下降させると、クローラ式走行装置の高さが高くなって、クローラベルトには緩みがなくなり、大きな張力が発生することがある。この場合、クローラベルトの張力はトラックフレームに備えられた弾性体によって吸収されて、キャリアローラは機体下方に移動する。
また、例えば、機体に対してトラックフレームを上昇させると、クローラ式走行装置の高さは低くなり、クローラベルトには緩みが発生することがある。その他、クローラ式走行装置の長期間の使用によっても、クローラベルトに緩みが発生することがある。こういった場合には、キャリアローラをクローラベルトの上方への張り方向に付勢する弾性体がそのまま作用し、キャリアローラが上方移動することでクローラベルトの張力は増すこととなる。
【0014】
トラックフレームの前後一側に設けた誘導輪を用い、クローラベルトの張力の調整をすることも可能である。しかしながら、誘導輪を頂点とするクローラベルトの角度は通常小さいため、誘導輪はクローラベルトの反力を受け易く、誘導輪によってクローラベルトの張力を調整するには大きな弾性力が必要となることが多い。一方、キャリアローラの場合は、キャリアローラを頂点とするクローラベルトの角度は誘導輪の場合よりも通常大きい。このため、キャリアローラではクローラベルトの反力を受け難く、誘導輪よりも小さな弾性力でクローラベルトの張力の調整が可能となる。
【0015】
この結果、クローラベルトに対する過大な張力によるクローラ足回りの破損を防ぐことができ、また、クローラベルトの緩みに対しては適正な張力を付与することができ、クローラの脱輪を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】クローラ式走行装置とフレーム構造を示す側面図
【図3】クローラ式走行装置とフレーム構造を示す平面図
【図4】クローラ式走行装置の要部を示す側面図
【図5】ローリング作動状態を示す作用図
【図6】ピッチング作動状態を示す作用図
【図7】クローラ式走行装置とフレーム構造を示す正面視左側部の部分断面図
【図8】運転部の平面図
【図9】操縦レバーの構造を示す図
【図10】第2実施形態におけるクローラ式走行装置とフレーム構造を示す正面視左側部の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、作業車の一例であるコンバインは、左右のクローラ式走行装置1,1の上方に機体フレーム2が配置されている。機体フレーム2の前部に昇降自在に刈取前処理部3を取り付けるとともに、機体フレーム2の上部には脱穀装置4、運転部5、穀粒貯留部6が設けられている。
【0018】
図2及び図3に示すように、機体フレーム2は、平面視で枠体を矩形状に配置した主フレーム7を備える。主フレーム7は、機体前後方向の縦フレーム7A,7Aと機体左右方向の横フレーム7B,7Bとで構成されている。前側の横フレーム7Bの中間位置に走行用のミッションケース8を取り付けるとともに、横フレーム7Bを伝動ケースに兼用し、その左右両端にクローラ式走行装置1用の駆動輪9を取り付けてある。
【0019】
主フレーム7の縦フレーム7A,7Aよりさらに左右外側には昇降自在なトラックフレーム10,10を配置してあり、トラックフレーム10,10にクローラベルト11を案内する複数個の転輪12を設けてある。転輪12の上方にクローラベルト11に緊張力を与えるキャリアローラ13が備えられている。左右のトラックフレーム10,10の夫々の後端には、後方に向けて出退自在なスライドフレーム10A,10Aを設けてある。スライドフレーム10A,10Aにクローラベルト11に対して緊張力を与える誘導輪14,14を取り付けられている。誘導輪14,14をネジ軸15によってスライド調節することで、クローラベルト11に対する緊張力を変更調節可能に構成してある。
【0020】
主フレーム7とトラックフレーム10との間には、左右のトラックフレーム10のいずれかを上下させて圃場の機体の左右傾斜に対して機体フレーム2を水平にさせるローリング機構と、トラックフレーム10の前後いずれかを上下させて圃場の前後傾斜に対して機体フレーム2を水平にさせるピッチング機構とを設ける。
【0021】
主フレーム7の前側下方に支持メタル16を設け、支持メタル16に機体左右方向の軸部17を回転自在に設ける。軸部17の内側の端部に前方操作アーム18の基部を固定し、前方操作アーム18の基部とは反対側の端部は機体後方側に位置させる。軸部17の外側の端部に前方昇降アーム19の基部を固定し、前方昇降アーム19の下端はクローラベルト11を掛け回した転輪12を取付けたトラックフレーム10に軸部20を介して固着する。
【0022】
主フレーム7の後側下方に支持メタル21を設け、支持メタル21に機体左右方向の軸部22を回動自在に設ける。軸部22の内側の端部に後方操作アーム23の基部を固定し、後方操作アーム23の基部とは反対側の端部は機体後方側に位置させる。軸部22の外側の端部に後方昇降第1アーム24の一端を固定し、後方昇降第1アーム24の他端は横軸25に取付けられている。横軸25には後方昇降第2アーム26の一端が揺動自在に取り付けられており、後方昇降第2アーム26の他端はトラックフレーム10に軸部27を介して固着する。
【0023】
前方操作アーム18の端部にローリング用の単動型の油圧シリンダ28のピストンロッド28aを軸着する。前方操作アーム18と主フレーム7に亘り油圧シリンダ28が鉛直方向に配置されている。また、後方操作アーム23の端部にローリング兼ピッチング用の単動型の油圧シリンダ29のピストンロッド29aを軸着する。後方操作アーム23と主フレーム7に亘り油圧シリンダ29が鉛直方向に配置されている。
【0024】
図2〜図4に示すように、左右のトラックフレーム10,10に対して夫々前後に、油圧シリンダ28,29が夫々2つ配置してある。各油圧シリンダ28,29を独立して作動させ、作動量を制御することによって、機体をピッチング作動及びローリング作動するよう構成してある。ローリング用の油圧シリンダ28とローリング兼ピッチング用の油圧シリンダ29の断面積を同一構成とし、機体をローリング作動させるときは右又は左の油圧シリンダ28,29を同量伸縮させ、機体をピッチング作動させるときは左右の油圧シリンダ29のみを伸縮させる。
【0025】
図5は、左右のトラックフレーム10の機体に対する相対高さを異なる状態に設定するローリング作動の制御形態を示す。機体をローリング作動させるときは、前方操作アーム18,前方昇降アーム19は軸部17を中心に回動し、後方操作アーム23,後方昇降第1アーム24は軸部22を中心に回動して、機体フレーム2とトラックフレーム10を相対的に上下させてローリングする。この場合、ローリング用の油圧シリンダ28とローリング兼ピッチング用の油圧シリンダ29とを同量伸縮させることで、前方操作アーム18及び前方昇降アーム19と、後方操作アーム23及び後方昇降第1アーム24とがほぼ平行するリンク部材となってトラックフレーム10の前後が同じ距離だけ変位してローリングする。
【0026】
図6は、左右のトラックフレーム10の長手方向の前後端の機体に対する高さを異なる状態に設定するピッチング作動の制御形態を示す。機体をピッチング作動させるときは、ローリング兼ピッチング用の油圧シリンダ29のみ伸縮させることで、後方操作アーム23及び後方昇降第1アーム24が軸部22を中心に回動し、さらに、後方昇降第2アーム26が横軸25を中心に回動する。そうなると、ローリング時に前方昇降アーム19と後方昇降第1アーム24とが平行リンク部材のように作用した構成は崩され、横軸25の位置が上下に移動してトラックフレーム10の後部のみを上下させる。こうして、トラックフレーム10の後部が下降すると機体フレーム2の前部は下降し、トラックフレーム10の後部が上昇すると機体フレーム2の前部は上昇する。
【0027】
図7に示すように、主フレーム7の前後方向中途部から下方に支持ブラケット30が突設されている。支持ブラケット30に軸部32の一端が固着され、軸部32の他端にはキャリアローラ13が軸受(不図示)を介して回動自在に支持されている。主フレーム7から外側方に延設される軸部32は弾性を有する材料(弾性体)で構成されており、キャリアローラ13をクローラベルト11の上方への張り方向に付勢するよう構成されている。
【0028】
機体フレーム2(主フレーム7)に、クローラベルト11を上方に押圧するキャリアローラ13と、キャリアローラ13をクローラベルト11の上方への張り方向に付勢する軸部32とを備えると、クローラベルト11の周長が変化した際に、クローラベルト11の張力の変化をキャリアローラ13と軸部32により吸収することができる。
【0029】
機体に対してトラックフレーム10を下降させると、クローラ式走行装置1の高さが高くなって、クローラベルト11には緩みがなくなり、大きな張力が発生することがある。この場合、クローラベルト11の張力は機体フレーム2に配設された弾性を有する軸部32によって吸収されて、キャリアローラ13は機体下方に移動する。
また、機体に対してトラックフレーム10を上昇させると、クローラ高さは低くなり、クローラベルト11には緩みが発生することがある。その他、クローラ式走行装置の長期間の使用によっても、クローラベルト11に緩みが発生することがある。こういった場合には、キャリアローラ13を上方付勢する弾性を有する軸部32がそのまま作用し、キャリアローラ13が上方移動することによりクローラベルト11の張力は増すこととなる。
【0030】
トラックフレーム10の後方に設けた誘導輪14を用い、クローラベルト11の張力の調整をすることも可能である。しかしながら、誘導輪14を頂点とするクローラベルト11の角度は小さいため、誘導輪14はクローラベルト11の反力を受け易く、誘導輪14によってクローラベルト11の張力を調整するには大きな弾性力が必要となることが多い。一方、キャリアローラ13の場合は、キャリアローラ13を頂点とするクローラベルト11の角度は誘導輪14の場合よりも大きい。このため、キャリアローラ13ではクローラベルト11の反力を受け難く、誘導輪14よりも小さな弾性力でクローラベルト11の張力の調整が可能となる。
【0031】
この結果、クローラベルト11に対する過大な張力によるクローラ足回りの破損を防ぐことができ、また、クローラベルト11の緩みに対しては適正な張力を付与することができ、クローラ式走行装置1の脱輪を防ぐことができる。
【0032】
図8に示すように、運転部5には、単一の操縦レバー51や表示パネル等を備えたフロントパネル52と、主変速レバーAや副変速レバーB等を備えたサイドパネル53と、フロントパネル52とその後方に配備されたエンジンボンネット54との間に敷設した運転ステップ55、エンジンボンネット54の上部に配備された運転席56等によって構成されている。
【0033】
フロントパネル52に配備されている操縦レバー51は、図9に示すように、直立された状態でレバー支持部57に固定されている。操縦レバー51は十字操作式に構成され、操縦レバー51を支持するレバー支持部57には、運転者が操縦レバー51を操作する際に掛かる荷重を検出する荷重センサ58が設けられている。荷重センサ58は、例えばロードセルを用い、荷重の有無だけでなく、荷重量も検出し、検出信号を出力する。すなわち、荷重センサ58が操作検出手段として機能する。
【0034】
操縦レバー51の左右方向への操作によって、その操作方向の荷重量が検出されると、検出された荷重量に見合う旋回半径で機体が旋回するように、ミッションケース8に内装した左右の操向クラッチ(図示せず)及び操向ブレーキ(図示せず)が操作される。また、操縦レバー51の前後方向への操作によって、その操作方向への所定の荷重量が検出されると、刈取前処理部3が所定の上限位置又は下限位置に向けて昇降するように、昇降シリンダ3aの作動を制御する昇降用制御弁(図示せず)が操作されている。
【0035】
以上のように、操縦レバー51はほとんど揺動させずに、荷重センサ58により操縦レバー51を操作する際に掛かる荷重を検出することで操向操作及び刈取前処理部3の昇降操作を行う。このため、操縦レバー51は揺動ストロークがほとんど発生せず、操縦者のレバー操作は簡便となる。また、操縦レバー51に可動部が存在しないため、構造自体が簡素となって耐久性が向上する。さらに、荷重センサ58によって検出される荷重が大きい場合には、操作力をより大きくより速くすることが可能であるため、より直感的に操作することができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
【0037】
図10に示すように、トラックフレーム10の前後方向中途部に支持アーム60が上方突設されている。支持アーム60の下部はブラケット61を介してトラックフレーム10に固着され、支持アーム60の上部にキャリアローラ13が回動自在に支持される。支持アーム60は下部の外筒部60aと上部の内筒部60bとを備え、外筒部60aの下部内面から内筒部60bの上部内面に亘ってバネ等で構成され、上下方向に伸縮可能な弾性体62が設けられている。弾性体62が上下方向に伸縮することで、外筒部60aに対して内筒部60bが上下動する。弾性体62は、内筒部60bを介してキャリアローラ13をクローラベルト11の上方への張り方向に付勢する。
【0038】
このように、トラックフレーム10に、クローラベルト11を上方に押圧するキャリアローラ13と、キャリアローラ13をクローラベルト11の上方への張り方向に付勢する弾性体62とを備えると、クローラベルト11の周長が変化した際のクローラベルト11の張力の変化をキャリアローラ13と弾性体62により吸収することができる。
【0039】
機体に対してトラックフレーム10を下降させると、クローラ式走行装置1の高さは高くなって、クローラベルト11には緩みがなくなり、大きな張力が発生することがある。この場合、クローラベルト11の張力はトラックフレーム10に備えられた弾性体62によって吸収されて、キャリアローラ13は支持アーム60の内筒部60bと共に機体下方に移動する。
また、機体に対してトラックフレーム10を上昇させると、クローラ式走行装置1の高さは低くなり、クローラベルト11には緩みが発生することがある。その他、クローラ式走行装置1の長期間の使用によっても、クローラベルト11に緩みが発生することがある。こういった場合には、キャリアローラ13を上方へ付勢する弾性体62がそのまま作用し、内筒部60bを介してキャリアローラ13を押し上げることによりクローラベルト11の張力が増すこととなる。
【0040】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態のクローラ式走行装置1では、キャリアローラ13を左右のクローラベルト11に対して2つずつ配置した構成を例に説明したが、キャリアローラ13は各クローラベルト11に対して1つ備えてもよい。
左右のクローラベルト11に対してキャリアローラ13を複数配置する場合、キャリアローラ13及び弾性体(弾性を有する軸部32あるいは弾性体62)は、全てトラックフレーム10及び機体フレーム2の一方に備えるよう構成してもよいし、トラックフレーム10に備えるものと機体フレーム2に備えるものとを混在させてもよい。
【0041】
(2)トラックフレーム10又は機体フレーム2に備えられる弾性体(弾性を有する軸部32あるいは弾性体62)には、キャリアローラ13をクローラベルト11の上方の張り方向へ付勢する力を調整する機構を付加してもよい。また、クローラ式走行装置1には、ローリング機構及びピッチング機構を備えなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、クローラ式走行装置を備える作業車に広く適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 クローラ式走行装置
2 機体フレーム
7 主フレーム
9 駆動輪
10 トラックフレーム
11 クローラベルト
12 転輪
13 キャリアローラ
14 誘導輪
18 前方操作アーム
19 前方昇降アーム
23 後方操作アーム
24 後方昇降第1アーム
26 後方昇降第2アーム
28,29 油圧シリンダ
30 支持ブラケット
32 軸部(弾性体)
60 支持アーム
62 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の転輪を支持するトラックフレームと、前記トラックフレームの前後一側に設けた誘導輪と、前後他側に設けた駆動輪と、前記転輪と前記誘導輪と前記駆動輪とに亘って巻回されたクローラベルトと、前記トラックフレームの上方の前記クローラベルトを上方に押圧するキャリアローラと、を備え、
前記トラックフレームを支持する機体フレームに、前記キャリアローラと、前記キャリアローラを前記クローラベルトの上方への張り方向に付勢する弾性体とを備えた作業車のクローラ式走行装置。
【請求項2】
複数の転輪を支持するトラックフレームと、前記トラックフレームの前後一側に設けた誘導輪と、前後他側に設けた駆動輪と、前記転輪と前記誘導輪と前記駆動輪とに亘って巻回されたクローラベルトと、前記トラックフレームの上方の前記クローラベルトを上方に押圧するキャリアローラと、を備え、
前記トラックフレームに、前記キャリアローラと、前記キャリアローラを前記クローラベルトの上方への張り方向に付勢する弾性体とを備えた作業車のクローラ式走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−56626(P2013−56626A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196252(P2011−196252)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)